説明

銃の複合型安全装置

【課題】本発明は銃の複合型安全装置に関し、元折れ式猟銃の保管時等の安全を確保するために、薬室に挿入されて弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機能と、撃針による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機能との二つの機能を発揮する。
【解決手段】チャンバーロック機構部Aが、治具3の係合部4が係脱する係合凹部5を一側内部に設けたロックケース6と、該ロックケース内のスライドシャフト収容孔7内に主スプリング8の付勢力に抗して押し込み可能にスライダー11を先端に有するスライドシャフト9と、他端側の外周、対向面にスライドシャフトの押し込み操作と復帰操作に連繋して拡張・縮小手段10を介して半径方向Rに拡張可能、縮小可能に薬室に圧接可能な圧接管12と、で形成され、スナップキャップ機構部Bが、ロックケースの一端側に臨まれ、クッション材14が装着されたニップル15を押し込み可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銃の複合型安全装置に関し、例えば元折れ式猟銃の保管時等の安全を確保するために最適に適用され、薬室に挿脱可能に挿入されて弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機能と、銃の撃針による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機能との二つの機能を発揮する安全装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、銃の暴発等の外部衝撃に対する安全機構として、例えば、撃針の後部を筒体に形成し、該筒体の筒体壁から外側方に出没しうる係止爪を有するロック部材を該筒体壁の一部に揺動自在に軸止し、前記筒体内に限定範囲内で前後にのみ滑動可能な慣性柱体を挿嵌し、該慣性柱体の前端と該ロック部材との間に該慣性柱体を後方へ押圧すると共に該係止爪が没入する方向へ該ロック部材を付勢するばねを設け、該慣性柱体の後端面が該撃針の後端面より陥入した位置では該係止爪の没入を許容するロック部材支枕を該柱体の前端部に設けてあり、一方該撃針を収容する遊底に該撃針が後退位置にあるときに該係止爪と係合する係合凹部と係合するものがあり、常時は撃針が遊底に係止されて撃針が不用意に移動しないように拘束され、また、撃鉄が正規に撃針の後端を打撃した場合にのみ係止が外れる機構を撃針の後部に設けるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−73098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の上記従来の銃の暴発等の外部衝撃に対する安全機構は、
銃を落下させた場合等に、撃針を遊底に係止させて撃針が不用意に移動するのを拘束することにより、暴発を防止しようとするものであるが、不使用時には、弾そのものの薬室内の装填につき制約を加えるものではなく、本人以外の者が引金を引いて撃鉄にて撃針の後端を打撃する場合を想定し、それらに起因する弾の撃発を未然に防止するものではなく、特に元折れ式猟銃の保管時等の安全性に改善の余地を残すものであった。
【0004】
本発明は上記従来の問題点を解決し、元折れ式猟銃の保管時等に最適に適用され、弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機能と、銃の撃針による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機能との二つの機能を確実に発揮するようにして信頼性を高め、取扱い操作が簡単であり、構造が簡単で製作、組立も容易に多量に製作が可能であり、製作コストを安価にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされ請求項1に記載の発明は、
銃身の薬室に挿脱可能に挿入されて弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機構部と、銃身の撃針による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機構部とを備え、
前記チャンバーロック機構部が、
治具の先端に設けた係合部が係脱可能となる係合凹部が一側の内部に設けられたロックケースと、
該ロックケース内に貫通されたスライドシャフト収容孔内に主スプリングの付勢力に抗して押し込み可能に設けられたスライドシャフトと、
該スライドシャフトの先端に取付けられるスライダーと、
前記ロックケースの他端側の外周と該スライダーの外周との間に前記スライドシャフトの押し込み操作、および、復帰操作に連繋して拡張・縮小手段を介して半径方向に拡張可能、且つ縮小可能に薬室の内壁に圧接可能に設けられる圧接管と、で形成され、
前記スナップキャップ機構部が、
前記スライドシャフト収容孔に隣接して前記ロックケースの一端側に設けられたニップル収容孔内にニップルを治具により押込可能に収容させるとともに、該ニップルが前記スライドシャフトを押込可能に設けられ、前記ニップルには前記ロックケースの一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材が装着された、
ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記拡張・縮小手段が、前記ロックケースの他側端に主スプリングの付勢力により接離自在とされる前記スライダー、および該スライダーが対向する前記ロックケースの外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部と、該テーパ斜面部相互にテーパ内面部が密接可能に外嵌されて前記薬室の内壁面に外周面が圧接可能に設けられた鋼よりも硬度が低く摩擦抵抗が大きい材料によりなる前記圧接管と、で形成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記スライドシヤフトが、前記スライダーに螺入される先端ねじ部と、基端側には頭部とを設けたボルトであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1−3において、前記圧接管が、鋼材より硬度が低く、摩擦抵抗が大きい非鉄金属、または、合成樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1−4において、前記ニップルが、一端に前記クッション材が嵌着されるクッション収容凹部を有し、他端には前記主スプリングよりもばね付勢力が弱い副スプリングを介装する副スプリング収容凹部を有し、中間部には前記ニップル収容孔の内部一端に突設されたストッパ壁に前記副スプリングの付勢力により弾性的に係脱可能にニップルピンが径方向に貫通されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1−5において、前記係合部が前記ニップル収容孔の開口端よりも僅かに径小の係合鍔部であり、前記係合凹部が環状溝であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、請求項1に記載の発明によれば、銃身の薬室に挿脱可能に挿入されて弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機構部と、銃身の撃針による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機構部とを備え、前記チャンバーロック機構部が、治具の先端に設けた係合部が係脱可能となる係合凹部が一側の内部に設けられたロックケースと、該ロックケース内に貫通されたスライドシャフト収容孔内に主スプリングの付勢力に抗して押し込み可能に設けられたスライドシャフトと、該スライドシャフトの先端に取付けられるスライダーと、前記ロックケースの他端側の外周と該スライダーの外周との間に前記スライドシャフトの押し込み操作、および、復帰操作に連繋して拡張・縮小手段を介して半径方向に拡張可能、且つ縮小可能に薬室の内壁に圧接可能に設けられる圧接管と、で形成され、前記スナップキャップ機構部が、前記スライドシャフト収容孔に隣接して前記ロックケースの一端側に設けられたニップル収容孔内にニップルを治具により押込可能に収容させるとともに、該ニップルが前記スライドシャフトを押込可能に設けられ、前記ニップルには前記ロックケースの一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材が装着されたので、治具の先端に設けた係合部を略筒状のロックケースの一側の外端部付近に設けられた係合凹部内に係合すると、ロックケースのスライドシャフト収容孔内に基端部側が収容されているスライドシャフトは、主スプリングの付勢力に抗して押し込まれる。このように、スライドシャフトが押し込み操作されると、これに伴ってスライドシャフトの先端部に装着されたスライダーが、ロックケースの他端側の外周、対向面から離れる。そして、ロックケースの他端側の外周、対向面に設けられた圧接管は、拡張・縮小手段を介して半径方向に縮小される。従って、治具にてロックケースを支持し、薬室内にロックケースを挿入することができる。このようにして銃身の薬室内にロックケースが挿入された後に、治具の先端に設けた係合部をロックケースの係合凹部から脱係合すると、主スプリングの付勢力によりスライドシャフトがスライドシャフト収容孔内に旧位に引戻されるので、このスライドシャフトの先端部に設けられたスライダーがロックケースの他端側に接触する。このため、ロックケースの他端側の外周、対向面に設けられた圧接管が、拡張・縮小手段を介して半径方向に拡大されて薬室の内壁に密接するので、ロックケースは薬室内に固定される。従って、薬室内へ弾を装填しようとしてもロックケースが薬室内に固定されていることにより弾の装填は邪魔されて阻止されるというチャンバーロック機能が発揮される。また、空撃ち目的等で銃の引金を引いて撃鉄にて撃針の後端を打撃すると、スライドシャフト収容孔に隣接してロックケースの他端側に設けられたニップル収容孔内に、収容されたニップルには、ロックケースの一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材が装着されているので、撃針がクッション材を打撃するため、クッション材により衝撃は緩衝され、スナップキャップ機能が発揮される。このように、チャンバーロック機能と、スナップキャップ機能との二つの機能が発揮されるので、安全性は向上し、本人以外の者による弾の撃発を未然に防止することができ、特に元折れ式猟銃の保管時等の安全性を確保するのに最適に適用できる。しかも、上記のように、取扱い操作が簡単であり、しかも、構造が簡単で製作、組立も容易に多量に製作が可能であり、製作コストは安価になる。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記拡張・縮小手段が、前記ロックケースの他側端に主スプリングの付勢力により接離自在とされる前記スライダー、および該スライダーが対向する前記ロックケースの外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部と、該テーパ斜面部相互にテーパ内面部が密接可能に外嵌されて前記薬室の内壁面に外周面が圧接可能に設けられた鋼よりも硬度が低く摩擦抵抗が大きい材料によりなる前記圧接管と、で形成されるので、治具の先端に設けた係合部を略筒状のロックケースの一側の外端部付近に設けられた係合凹部内に係合すると、ロックケースのスライドシャフト収容孔内に収容されたスライドシャフトは主スプリングの付勢力に抗して押し込まれる。このように、スライドシャフトが押し込み操作されると、これに伴ってスライドシャフトの先端部に装着されたスライダーが、ロックケースの他端側の外周、対向面から離れ、ロックケースの他端側の外周、対向面に外嵌された圧接管は、拡張・縮小手段としてスライダー、および該スライダーが対向するロックケースの外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部が、該テーパ斜面部相互にテーパ内面部が密接して摺動して行くため、半径方向に縮小される。従って、治具にてロックケースを支持し、薬室内にロックケースを挿入することができる。
【0013】
このようにして薬室内にロックケースが挿入された後に、治具の先端に設けた係合部をロックケースの係合凹部から脱係合すると、主スプリングの付勢力によりスライドシャフトがスライドシャフト収容孔内に旧位に引戻されるので、このスライドシャフトの先端部に設けられたスライダーがロックケースの他端側に移動して接触する。このため、スライダーとロックケースの他端側の外周、対向面とに外嵌された圧接管が、拡張・縮小手段としてスライダー、および該スライダーが対向するロックケースの外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されているテーパ斜面部は、該テーパ斜面部相互にテーパ内面部が密接して摺動して行くため、半径方向に拡大されて薬室の内壁に密接され、ロックケースは薬室内に固定される。従って、薬室内へ弾を装填しようとしてもロックケースが薬室内に固定されていることにより弾の装填は邪魔されて阻止できるというチャンバーロック機能が発揮される。また、空撃ち目的等で引金を引いて撃鉄にて撃針の後端を打撃する場合に、スナップキャップ機構部が、スライドシャフト収容孔に隣接してロックケースの一他端側に設けられたニップル収容孔内に、収容されたニップルには、ロックケースの一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材が装着されているので、撃針がクッション材を打撃するため、クッション材により衝撃は緩衝され、スナップキャップ機能が発揮される。このように、チャンバーロック機能と、スナップキャップ機能との二つの機能が発揮されるので、安全性は向上され、本人以外の者による弾の撃発を未然に防止でき、特に元折れ式猟銃の保管時等の安全性が最適に適用できる。しかも、上記のように、取扱い操作が簡単であり、構造が簡単で製作、組立も容易になり、多量に製作が可能であり、製作コストは安価になる。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2において、前記スライドシヤフトが、前記スライダーに螺入される先端ねじ部と、基端側には頭部とを設けたボルトであるので、スライドシャフトをロックケースに設けたスライドシャフト収容孔内に摺動可能に基端側を容易に組み込むことができるとともに、スライドシャフトの先端部にスライダーを取付け、スライダー、および該スライダーが対向するロックケースの外周、対向面に跨がるように圧接管を外嵌させることができ、製作および組付けは容易になる。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1−3において、前記圧接管が、鋼材より硬度が低く、摩擦抵抗が大きい非鉄金属、または、合成樹脂により形成されているので、銃の薬室内にロックケースを挿入後に、治具の先端に設けた係合部をロックケースの係合凹部に係合すると、治具によりニップルを介して主スプリングの付勢力に抗してスライドシャフトは押し込まれる。そして、このスライドシャフトの先端に取付けられているスライダーは、ロックケースの他端側の対向端から離れ、間隔があく。このように、スライダーが、ロックケースの他端側の対向端から離れ、間隔があくのに伴って、スライダー、および該スライダーが対向するロックケースの外周、対向面に、跨るように外嵌された圧接管のテーパ内面部に、圧接管が外嵌されているスライダー、およびロックケースの外周、対向面に次第に対向方向に小径に形成されているテーパ斜面部が密接して摺動されて行くので、圧接管は半径方向に縮小され、薬室の内壁に傷付けることなく、ロックケースを薬室内に挿入することができる。
【0016】
そして、ロックケースの挿入後に、治具の先端に設けた係合部をロックケースの一側の外端部付近に設けられた係合凹部内から脱係すると、主スプリングの付勢力によりスライドシャフトがロックケース内のスライドシャフト収容孔内に旧位に引戻されるので、スライドシャフトの先端部に設けられたスライダーがロックケースの他端側に接触する。このため、スライダーと、ロックケースの他端側との外周、対向面に外嵌されている圧接管のテーパ内面部に、圧接管が外嵌されているスライダー、およびロックケースの外周、対向面に次第に対向方向に小径に形成されているテーパ斜面部が、ロックケースにスライダーが接近するのに応じて密接して摺動されて行くので、圧接管は半径方向に拡大され、薬室の内壁に大きな摩擦抵抗にて係合するため、ロックケースは薬室内に強固に固定される。
【0017】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1−4において、前記ニップルが、一端に前記クッション材が嵌着されるクッション収容凹部を有し、他端には前記主スプリングよりもばね付勢力が弱い副スプリングを介装する副スプリング収容凹部を有し、中間部には前記ニップル収容孔の内部一端に突設されたストッパ壁に前記副スプリングの付勢力により弾性的に係脱可能にニップルピンが径方向に貫通されたので、空撃ち目的等で引金を引いて撃鉄にて撃針の後端を打撃すると、ロックケースの一端側に設けられたニップル収容孔内に、収容されているニップルには、ロックケースの一端側に臨まれ、露出側の外端に装着されたクッション材を撃針が打撃するため、クッション材により衝撃は緩衝されるとともに、副スプリングの緩衝も加わり、スナップキャップ機能が確実に発揮される。
【0018】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、請求項1−5において、前記係合部が前記ニップル収容孔の開口端よりも僅かに径小の係合鍔部であり、前記係合凹部が環状溝であるので、治具を使用してロックケースを薬室内に挿入したり、ロックケースを薬室から抜き取る場合、ロックケースに対する治具の係脱操作を簡単な取り扱いにより迅速かつ確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に従って本発明を実施するための最良の形態ににつき、詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の銃の複合型安全装置を単発銃に適用した場合の一実施形態を示し、治具にて銃の薬室内に挿入する状態の断面図、図2は同じく使用前の状態を示す断面図、図3は同じく撃針にて緩衝部材を打撃する状態を示す断面図、図4は同じく図3の楕円P内を示す拡大断面図、図5は同じく側面図、図6は同じく正面図である。
【0021】
本実施形態は、銃身1の薬室1aに挿脱可能に挿入されて弾の薬室1aへの装填を阻止するチャンバーロック機構部Aと、銃身1の撃針2による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機構部Bとを備え、前記チャンバーロック機構部Aが、治具3の先端に設けた係合部4が係脱可能となる係合凹部5が一側の内部に設けられたロックケース6と、該ロックケース6内に貫通されたスライドシャフト収容孔7内に主スプリング8の付勢力に抗して押し込み可能に設けられたスライドシャフト9と、該スライドシャフト9の先端に取付けられるスライダー11と、前記ロックケース6の他端側の外周と該スライダー11の外周との間に前記スライドシャフト9の押し込み操作、および、復帰操作に連繋して拡張・縮小手段10を介して半径方向Rに拡張可能、且つ縮小可能に薬室1aの内壁に圧接可能に設けられる圧接管12と、で形成され、前記スナップキャップ機構部Bが、前記スライドシャフト収容孔7に隣接して前記ロックケース6の一端側に設けられたニップル収容孔13内にニップル15を治具3により押込可能に収容させるとともに、該ニップル15が前記スライドシャフト9を押込可能に設けられ、前記ニップル15には前記ロックケース6の一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材14が装着された、ことを特徴とする。
【0022】
銃身1は本実施形態1では、元折れ式猟銃が最適に使用される。この元折れ式猟銃としては、図1乃至図6に示すような単発銃や図7および図8に示すような二連銃がある。
【0023】
前記係合部4が前記ニップル収容孔13の開口端よりも僅かに径小の係合鍔部4aであり、前記係合凹部5が環状溝5aである。
【0024】
6aは前記ロックケース6の外周の一部、図6では上部に設けられたリム部であり、このリム部6aはロックケース6を薬室1a内に挿入した場合に、薬室1aの開口端に係合し、それ以上の押し込みが阻止するためのものであり、ロックケース6の挿入に際しては銃身1に設けられたエキストラクター16に当たらないことを確認してロックケース6を挿入する。
【0025】
前記拡張・縮小手段10が、前記ロックケース6の他側端に主スプリング8の付勢力により接離自在に前記スライダー11と、該スライダー11が対向する前記ロックケース6との外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部19a,19bと、該テーパ斜面部19a,19bにテーパ内面部20a,20bが密接可能に外嵌されて前記薬室1aの内壁面に外周面12aが圧接可能に設けられた鋼よりも硬度が低く摩擦抵抗が大きい材料によりなる前記圧接管12と、で形成される。
【0026】
前記スライドシヤフト9が、前記スライダー11に螺入される先端ねじ部9aと、基端側には頭部9bとを設けたボルトである。このように、スライドシヤフト9が、ボルトであるので、スライドシャフト9をロックケース6に設けたスライドシャフト収容孔7内に摺動可能に基端側を容易に組み込むことができるとともに、スライドシャフト9の先端ねじ部9aにスライダー11を取付け、スライダー11、および該スライダー11が対向するロックケース6の外周、対向面に跨がるように圧接管12を容易に外嵌させることができ、製作および組付けは容易になる。
【0027】
また、前記圧接管12が、鋼材より硬度が低く、摩擦抵抗が大きい非鉄金属、または、合成樹脂により形成される。このように、圧接管12を鋼材より硬度が低く、摩擦抵抗が大きい非鉄金属、または、合成樹脂により形成したのは、圧接管6を縮小させてロックケース6を薬室1a内に挿入したり、抜き取る場合に、薬室1a内に傷が付くのを防止するとともに、ロックケース6を薬室1a内に固定する場合に大きな摩擦抵抗力により固定を強固にするためである。
【0028】
また、前記ニップル15が、一端に前記クッション材14が嵌着されるクッション収容凹部15aを有し、他端には前記主スプリング8よりもばね付勢力が弱い副スプリング22を介装する副スプリング収容凹部15bを有し、中間部には前記ニップル収容孔13の内部一端に突設されたストッパ壁23に前記副スプリング22の付勢力により弾性的に係脱可能にニップルピン24が径方向に貫通されている。前記クッション材14は、例えばポリウレタン、硬質ゴム等のクッション性が大きい素材により形成される。
【0029】
本発明の銃の複合型安全装置の一実施形態は以上の構成からなり、この複合型安全装置を使用するのには、専用の治具3を用いて例えば図1乃至図7に示すような単発銃や図7および図8に示すような二連銃よりなる元折れ式猟銃の保管時に、銃の薬室1a内に押し込んで固定する。
【0030】
すなわち、先ず、治具3の先端に設けた係合部4を略筒状のロックケース6の一側の内部に設けられた係合凹部5内に係合する。これには、前記係合部4がニップル収容孔13の開口端よりも僅かに径小の係合鍔部4aであるので、ニップル収容孔13の開口端内に係合鍔部4aを挿入し、径方向に変位することにより、係合部4を係合凹部5内に係合させ、治具3の先端にロックケース6は支持される。この際、係合凹部5は環状溝5aであるので、開口の周囲何れの方向に係合鍔部4aを変位しても、容易に係合鍔部4aを係合凹部5内に容易かつ確実に変位することができる。
【0031】
このように、係合部4を係合凹部5内に係合させることによって係合部4にてニップル15をニップル収容孔13内に押し込むと、この押込まれた係合部4を介してロックケース6のスライドシャフト収容孔7内に収容されているスライドシャフト9は主スプリング8の付勢力に抗してさらに押し込まれる。
【0032】
このように、スライドシャフト9がスライドシャフト収容孔7内に押し込み操作されると、これに伴ってスライドシャフト9の先端部に取付けられたスライダー11が、ロックケース6の他端面から軸長方向へ離れ、間隙K1が確保されるので、ロックケース6の他端側の外周と、ロックケース6に対向するスライダー11との外周に外嵌された圧接管12は、拡張・縮小手段10としてスライダー11、および該スライダー11が対向するロックケース6の外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部19a,19bが、圧接管12のテーパ内面部20a,20bに密接して摺動して行くため、半径方向Rに縮小される。従って、治具3にて支持されたロックケース6を薬室1a内に挿入することができる(図1参照)。
【0033】
このようにして銃身1の薬室1a内にロックケース6が挿入された後に、治具3の先端に設けた係合部4を径方向に変位することによってロックケース6の係合凹部5から脱係合すると、主スプリング8の付勢力によりスライドシャフト9がロックケース6内のスライドシャフト収容孔7内に旧位に引戻されようとするので、このスライドシャフト9の先端ねじ部9aに螺着して取付けられたスライダー11がロックケース6の他端側に対向して移動し、間隙K2は狭まる。このため、スライダー11とロックケース6の他端側の外周との間に外嵌された圧接管12が、拡張・縮小手段10としてスライダー11、および該スライダー11が対向するロックケース6の外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されているテーパ斜面部19a,19bは、外嵌されている圧接管12のテーパ内面部20a,20bに密接して摺動して行くので、圧接管12は半径方向Rに拡大されることによって銃身1の薬室1aの内壁に圧接され、ロックケース6は薬室1a内に強固に固定される(図3、図4参照)。この際、薬室1aの内壁への圧接管12による圧接は、主スプリング8の付勢力により設定される。従って、ロックケース6を棒等を挿入して無闇に薬室1aから引き抜こうとしても引き抜くことはできない。このため、本人以外の者が薬室1a内へ弾を装填しようとしてもロックケース6が薬室1a内に固定されていることにより弾の装填は邪魔されて阻止されるというチャンバーロック機能が発揮される。このため、悪戯に引金を引く等して弾が暴発することは、本来的に生ずる余地がない。
【0034】
また、本実施形態の銃の複合型安全装置が銃の薬室1aに装填されている場合には、空撃ち目的等で引金を引いて撃鉄にて撃針2の後端を打撃すると、ロックケース6のスライドシャフト収容孔7に隣接してロックケース6の他端側に設けられたニップル収容孔13内に収容されたニップル15には、ロックケース6の一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材14が装着されているので、撃針2がクッション材14を打撃するため、クッション材14により衝撃は緩衝される。しかも、ニップル15は副スプリング22により付勢されることもあって撃針2の打撃は緩衝される。そして、銃身1の撃針収容部の撃針停止面と撃針2の当り面の損耗を軽減することができる。こうして、スナップキャップ機能が発揮される(図3参照)。
【0035】
そして、ロックケース6を薬室1aから抜き取る場合には、前述のように、治具3の先端の係合部4を係合凹部5に係合させることにより、ニップル15を介してスライドシャフト9を主スプリング8の付勢力に抗して押し込むと、スライドシャフト9の先端部に装着されたスライダー11が、ロックケース6の他端側の対向面から離れ、圧接管12は、拡張・圧縮手段10としてスライダー11、およびロックケース6の外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部19a,19bが、圧接管12のテーパ内面部20a,20bに密接して摺動して行くことにより、半径方向Rに縮小される。こうして、治具3にて支持されているロックケース6を、薬室1a内から引き抜くことができる(図1参照)。
【0036】
このように、本実施形態の複合型安全装置は、チャンバーロック機能と、スナップキャップ機能との二つの機能が発揮されるので、特に元折れ式猟銃の保管時等の安全性を確保するのが最適になる。しかも、本実施形態の銃の複合型安全装置は、上記のように、取扱い操作が簡単であり、構造が簡単で製作、組立も容易になり、多量に製作が可能であり、製作コストは安価になる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、元折れ式猟銃の保管時等に最適に適用され、弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機能と、銃の空撃ちによる打撃等の撃針を緩衝するスナップキャップ機能との二つの機能を確実に発揮するようにして信頼性を高め、取扱い操作が簡単であり、構造が簡単で製作、組立も容易に多量に製作を可能であり、製作コストを安価にする用途・機能に適する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明の銃の複合型安全装置を単発銃に適用した場合の一実施形態を示し、治具にて銃の薬室内に挿入する状態の断面図である。
【図2】図2は同じく使用前の状態を示す断面図である。
【図3】図3は同じく撃針にて緩衝部材を打撃する状態を示す断面図である。
【図4】図4は同じく図3の楕円P内を示す拡大断面図である。
【図5】図5は同じく側面図である。
【図6】図6は同じく正面図である。
【図7】図7は本発明の銃の複合型安全装置を2連銃に適用した場合の他の変形例を示す正面図である。
【図8】図8は銃身側を示す正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 銃身
1a 薬室
2 撃針
3 治具
4 係合部
5 係合凹部
6 ロックケース
7 スライドシャフト収容孔
8 主スプリング
9 スライドシャフト
10 拡張・縮小手段
11 スライダー
12 圧接管
13 ニップル収容孔
14 クッション材
15 ニップル
16 エキストラクター
19a テーパ斜面部
19b テーパ斜面部
20a テーパ内面部
20b テーパ内面部
22 副スプリング
23 ニップルピン
24 ストッパ壁
A チャンバーロック機構部
B スナップキャップ機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銃身の薬室に挿脱可能に挿入されて弾の薬室への装填を阻止するチャンバーロック機構部と、銃身の撃針による打撃等の衝撃を緩衝するスナップキャップ機構部とを備え、
前記チャンバーロック機構部が、
治具の先端に設けた係合部が係脱可能となる係合凹部が一側の内部に設けられたロックケースと、
該ロックケース内に貫通されたスライドシャフト収容孔内に主スプリングの付勢力に抗して押し込み可能に設けられたスライドシャフトと、
該スライドシャフトの先端に取付けられるスライダーと、
前記ロックケースの他端側の外周と該スライダーの外周との間に前記スライドシャフトの押し込み操作、および、復帰操作に連繋して拡張・縮小手段を介して半径方向に拡張可能、且つ縮小可能に薬室の内壁に圧接可能に設けられる圧接管と、で形成され、
前記スナップキャップ機構部が、
前記スライドシャフト収容孔に隣接して前記ロックケースの一端側に設けられたニップル収容孔内にニップルを治具により押込可能に収容させるとともに、該ニップルが前記スライドシャフトを押込可能に設けられ、前記ニップルには前記ロックケースの一端側に臨まれ、露出側の外端にクッション材が装着された、
ことを特徴とする銃の複合型安全装置。
【請求項2】
前記拡張・縮小手段が、前記ロックケースの他側端に主スプリングの付勢力により接離自在とされる前記スライダー、および該スライダーが対向する前記ロックケースの外周、対向面に、次第に対向方向に小径に形成されたテーパ斜面部と、該テーパ斜面部相互にテーパ内面部が密接可能に外嵌されて前記薬室の内壁面に外周面が圧接可能に設けられた鋼よりも硬度が低く摩擦抵抗が大きい材料によりなる前記圧接管と、で形成されることを特徴とする請求項1に記載の銃の複合型安全装置。
【請求項3】
前記スライドシヤフトが、前記スライダーに螺入される先端ねじ部と、基端部側には頭部とを設けたボルトであることを特徴とする請求項1または2に記載の銃の複合型安全装置。
【請求項4】
前記圧接管が、鋼材より硬度が低く、摩擦抵抗が大きい非鉄金属、または、合成樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1−3の何れかの請求項に記載の銃の複合型安全装置。
【請求項5】
前記ニップルが、一端に前記クッション材が嵌着されるクッション収容凹部を有し、他端には前記主スプリングよりもばね付勢力が弱い副スプリングを介装する副スプリング収容凹部を有し、中間部には前記ニップル収容孔の内部一端に突設されたストッパ壁に前記
副スプリングの付勢力により弾性的に係脱可能にニップルピンが径方向に貫通されたことを特徴とする請求項1−4の何れかの請求項に記載の銃の複合型安全装置。
【請求項6】
前記係合部が前記ニップル収容孔の開口端よりも僅かに径小の係合鍔部であり、前記係合凹部が環状溝であることを特徴とする請求項1−5の何れかの請求項に記載の銃の複合型安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−156506(P2009−156506A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334533(P2007−334533)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(303066699)株式会社ミロク製作所 (7)