説明

銅−スズ合金の、シアン化物を使用しない堆積のためのピロリン酸塩含有浴

2級モノアミンとジグリシジルエーテルとの反応生成物を含有する、シアン化物を使用せずに基体表面上へ銅合金を堆積するためのピロリン酸塩含有浴が開示される。この電解質浴は、光沢のある白色の平滑であって均一な銅−スズ合金被覆の電気的堆積に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2級モノアミンとジグリシジルエーテルとの反応生成物を添加剤として含有する、シアン化物を使用せずに基体表面上へ銅−スズ合金を堆積するためのピロリン酸塩含有浴に関する。
電解質中に使用する金属塩比によってその合金比を直接調節できる、均質な、光沢のある銅−スズ合金層を、シアン化物を使用せずに上記浴から堆積することができる。
【背景技術】
【0002】
ニッケル堆積の代替として、スズ合金および特に銅−スズ合金が注目の的となっている。ニッケル層の電気的堆積は、装飾のためのみならず機能的な利用のためにも一般的に使用されている。
ニッケル層は、良好な特性を有するにもかかわらずその感作的特性のために、健康面、特に皮膚への直接接触、に関して問題を孕んでいる。
電子部門において確立されているが、しかし経済的な問題を孕むスズ−鉛合金以外に、ここ数年は銅−スズ合金が代用品として考えられている。Manfred Jordanによる刊行物”The Electrodeposition of Tin and its Alloys”(Eugan G.Leuze Publ.,1st Ed.,1995)の第13章(155〜163ページ)は、銅−スズ合金堆積のための公知の浴タイプの総説を記載している。
シアン化物を含有する銅−スズ合金浴は工業的に確立されている。益々厳しくなる規則ならびにこれらシアン化物含有浴の高い毒性および問題があり金のかかる廃棄のため、シアン化物を含有しない銅−スズ電解質の必要が増大しつつある。
【0003】
この目的のため、シアン化物を含有しないピロリン酸含有の電解質が散発的に開発されている。JP10−102278Aには、添加剤として、アミンとエピハロドリン誘導体(モル比1:1)との反応生成物、アルデヒド誘導体、および利用法によっては任意的に添加剤として界面活性剤を含有するピロリン酸系銅−スズ合金浴が記載されている。US6416571B1にも、添加剤としてやはりアミンとエピハロヒドリン誘導体(モル比1:1)との反応生成物、カチオン系界面活性剤および任意的にさらなる表面活性化界面活性剤ならびに酸化防止剤を含有するピロリン酸系浴が記載されている。
上述の浴の欠点は、特にドラムメッキを考えたときに、一様ではない合金層が得られ、従って製品が一様な色彩および光沢を有さないことである。
【0004】
この問題を解決するためWO2004/005528は、添加剤として、アミン誘導体、特に好ましくはピペラジン、とエピハロヒドリン誘導体、特にエピクロルヒドリン、とグリシジルエーテルとの反応生成物を含有する、ピロリン酸塩含有の銅−スズ合金メッキ浴を示唆している。この反応混合物を製造するには、ピペラジン水溶液にエピクロロヒドリンおよびグリシジルエーテルからなる混合物を、厳格な温度制御によって65〜80℃の温度を必要的に維持しつつゆっくりと加える。反応温度および/または貯蔵温度が高すぎると上記生成物がさらなる反応を起こす傾向にあり、従って高分子量の、従って部分的に水不溶性の、効力を有さないポリマーを生成する傾向にあることから、特に高温において制御が困難な反応方法がこの添加剤の欠点である。この苦境からの脱出は、極めて高い希釈下(<1重量%)における反応方法によってのみ達成することができる。このような低濃度の添加剤溶液では、数種類の薬品が添加される場合の電解質の溶液構造が不利となる。このことにより、かかる電解質をより長い時間使用するとばらつきのある堆積となる。
さらにこの電解質は、ラックメッキへの適用において弱点を有する。例えば、しばしば濁りを示す異なる堆積層の品質は電気分解中の基体の動き方に極めて強く依存する。従ってさらに、得られる銅−スズ被覆は、装飾用被覆を考えた場合に特に問題となる多孔性を示す。
【0005】
WO2004/005528第26頁の実施例A−11には、ジアミンピペラジンとエチレングリコールジグリシジルエーテルとの反応生成物の使用が記載されている。この反応生成物は、くすんだ白銅色の層を与えるのみである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、光学的に魅力ある銅−スズ合金層の製造を可能とする銅−スズ合金のための電気浴を開発することである。
これに加えて、より均質な銅−スズ合金の金属分布および最適の銅/スズ金属比の調節がなされた。さらに、高光沢で被覆中の合金成分分布の規則性が高い一様な層厚が、広い電流密度範囲にわたって維持される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主題は、2級モノアミンとジグリシジルエーテルとの反応生成物を含有する、基体表面上への銅合金の、シアン化物を使用しない堆積のためのピロリン酸塩含有浴である。
ここで、上記2級モノアミンおよび上記ジグリシジルエーテルは個別にまたは混合物として使用して、上記反応生成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい2級アミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、ジイソプロピルマイン、ピペリジン、チオモルホリン、モルホリンおよびこれらの混合物である。モルホリンの使用が特に好ましい。特に好ましいジグリシジルエーテルは、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテルおよびこれらの混合物である。
本発明の浴に使用される特に好ましい反応生成物は、モルホリンとグリセロールジグリシジルエーテルとの反応生成物である。
【0009】
有機添加剤は、各アミン成分と各ジグリシジルエーテルとを、例えば水、水溶性アルコール性溶媒、例えばエーテル、NMP、NEP、DMF、DMAcの如き非プロトン性溶媒の如き適当な溶媒中で、もしくは無溶媒下(in substance)においても、常圧または加圧下にて、室温または加熱下で反応させたものとして容易に描写することができる。無溶媒下における製造に関し、反応終了後に反応生成物を水で希釈することは意味のあることである。そのため、必要な反応時間は、使用する材料によって数分から数時間の間である。古典的な熱源のほか、電子レンジもここで使用することができる。溶媒として水を使用する場合または無溶媒製造の場合には、結果物である反応生成物を直接使用することができ、これにより水性媒体中または無溶媒の生成物とすることが好ましい製造プロセスである。本発明の反応生成物を製造する温度は15〜100℃であることが好ましく、20〜80℃であることが特に好ましい。ジグリシジルエーテル/アミンのモル比は0.8〜2であり、好ましくは0.9〜1.5である。これらの添加剤の極めて単純な製造は、WO2004/005528の添加剤と比較した場合に特に有利な点である。
本発明の反応生成物は、単独でまたは上述したタイプの数種の異なる反応生成物の混合物として、0.0001〜20g/L、好ましくは0.001〜1g/Lおよび特に好ましくは0.01〜0.6g/Lの濃度で使用することができる。
【0010】
好ましい実施態様によると、本発明の浴は、オルトリン酸、有機スルホン酸、ホウ酸、酸化防止剤および上記反応生成物とは異なる有機光沢剤を含有する。
本発明の電解質浴は、ピロリン酸銅を、銅イオン源として0.5〜50g/Lの濃度で含有することができ、1〜5g/Lの濃度が特に好ましい。
本発明の浴は、ピロリン酸スズを、0.5〜100g/Lの濃度で含有してもよく、10〜40g/Lの濃度が特に好ましい。
【0011】
上述のピロリン酸スズおよびピロリン酸銅以外に、例えば硫酸スズ、メタンスルホン酸スズ、硫酸銅、メタンスルホン酸銅の如き、適当なアルカリ金属のピロリン酸塩の添加によって電解質中で対応するピロリン酸塩に再錯化することのできる他の水溶性スズ塩および銅塩を使用してもよい。このことに関し、ピロリン酸塩のスズ/銅に対する濃度比は3〜80であり、特に好ましくは5〜50である。
【0012】
本発明の浴が含有してもよいアルカリ金属のピロリン酸塩としては、50〜500g/L、特に好ましくは100〜400g/Lの濃度のピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムおよびピロリン酸アンモニウムが特に好ましい。
本発明の浴が含有してもよい酸化防止剤としては、0.1〜1g/Lの濃度の例えばカテコール、レゾルシノール、ブレンツカテキン、ヒドロキノン、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトール、フロログルシンの如きヒドロキシル化芳香族化合物および例えばアスコルビン酸、ソルビトールの如き糖系システムを挙げることができる。
【0013】
アルキルスルホン酸としては、例えばメタンスルホン酸、メタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、へキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸の如きポリスルホン酸およびモノスルホン酸のほかこれらの塩およびヒドロキシル化誘導体も使用することができる。特に好ましくはメタンスルホン酸を0.01〜1g/Lの濃度で使用することである。
本発明の浴のpH値は3〜9、特に好ましくは6〜8である。
【0014】
本発明の添加剤、すなわち2級モノアミンとジグリシジルエーテルとの反応生成物は、WO2004/005528による公知の添加剤とは対照的に、被覆中の合金成分の分布が規則的であり、高光沢で一様な層厚の合金を基体上へ堆積することを、広い電流密度範囲にわたって可能とするものである。さらに、本発明の添加剤の使用は、孔の発生を来たさない。最後にラックメッキにおける曇りを回避することができる。
上述の効果はN−メチルピロリドンの添加によってさらに向上することができる。N−メチルピロリドンは、好ましくは0.1〜50g/L、特に好ましくは0.5〜15g/Lの濃度で使用される。
【0015】
本発明の浴は、通常の方法、例えば上述の成分の特定量を水に加えること、によって製造することができる。塩基成分、酸成分およびピロリン酸ナトリウム、メタンスルホン酸および/またはホウ酸の如き緩衝剤成分の量は、好ましくは少なくとも6から8までのpH範囲を実現するように選択されるべきである。
本発明の浴は、約15〜50℃、好ましくは20℃〜40℃、特に好ましくは20℃〜30℃のそれぞれ通常の温度において、平滑で展性のある銅−スズ合金層を変色することなく堆積する。本発明の浴は、これらの温度において安定であり、0.01〜2A/dm、特に好ましくは0.25〜0.75A/dmの電流密度の広い設定範囲にわたって有効である。
【0016】
本発明の浴は、連続的または断続的な方法で運転することができ、浴の成分はときどき補充しなければならないであろう。浴の成分は、個別にまたは組み合わせて添加することができる。これらはさらに、個々の成分の消費量および現在の濃度に応じて広い範囲にわたって変量することができる。
表1に、好ましい実施態様による本発明の電解質中におけるスズ−銅合金層の堆積結果を、刊行物WO2004/005528の電解質と比較して示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表1から明らかなように、本発明の添加剤を使用した場合、外観および実効濃度についてより良好な結果が得られた。従って本発明の添加剤は、WO2004/005528の特許明細書に記載された添加剤と比較した場合の活性が、1.75倍に達するほど高い。
WO2004/005528の電解質と比較した場合の本発明のスズ−銅浴の利点は、本発明の添加剤の消費量が、ピペラジンとエピクロルヒドリンおよびグリシジルエーテルとの反応生成物と比較して驚くほど低いことである。
一般に、本発明の水性浴は、銅−スズ合金が堆積されるすべてのタイプの基体に使用することができる。合目的的な基体の例としては、銅−スズ合金、化学銅または化学ニッケルで被覆されたABSプラスチック表面、軟鋼、高級鋼、バネ鋼、クロム鋼、クロム−モリブデン鋼、銅およびスズを挙げることができる。
【0019】
従って、さらなる主題は、本発明の浴を使用して通常の基体上に銅−スズ合金を電気堆積するための方法である。従って、被覆される基体は電解質浴中に導入される。
本発明の方法における被覆の堆積は、15〜50℃、好ましくは20〜30℃の温度において0.25〜0.75A/dmの設定電流密度で行われることが好ましい。
【0020】
本発明の方法は、大量生産部品への適用において、例えばドラムメッキ法として、およびより大きな加工品上への堆積のためのラックメッキ法として、実施することができる。このことに関し、アノードとしては、同時に銅イオン源および/またはスズイオン源として使用される銅アノード、スズアノードまたは適当な銅−スズアノードの如き可溶性アノードを使用して、カソード上へ堆積した銅および/またはスズを、アノードにおける銅および/またはスズの溶解によって置き換えることができる。
一方、不溶性アノード(例えばプラチナ化チタン混合酸化物アノード)を使用して、電解質から減少した銅イオンおよびスズイオンを他の方法、例えば対応する可溶の金属塩の添加、による再添加を必須としてもよい。電気堆積中に可能であるならば、窒素注入またはアルゴン注入をしつつ、製品を動かしつつまたは動かさないで、得られる被覆に不利益なく本発明の方法を運転することができる。添加した添加剤またはスズ(II)イオンの酸化を回避しまたは減ずるために、電極室を離隔し、あるいは膜アノードを使用することによって電解質の十分な安定を実現することが有効であろう。
電流源としては、市販の連続電流整流器またはパルス整流器が使用される。
【実施例】
【0021】
調製例1:
丸底フラスコ中で、モルホリン4g(0.0455モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル9.29g(0.0455モル)を水19.84g中に溶解し、反応混合物を80℃に1時間加熱した。33.13gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0022】
調製例2:
丸底フラスコ中で、モルホリン1.67g(0.0190モル)およびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(分子量526.6g/モル)10g(0.0190モル)を水17.44g中に溶解し、反応混合物を80℃に1時間加熱した。29.11gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0023】
調製例3;
丸底フラスコ中で、モルホリン2.50g(0.0287モル)ならびにグリセロールジグリシジルエーテル2.92g(0.0143モル)およびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル7.53g(0.0143モル)を水19.43g中に溶解し、反応混合物を80℃に1時間加熱した。32.38gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0024】
調製例4:
丸底フラスコ中で、モルホリン1.67g(0.0190モル)およびポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル12.16g(0.019モル;平均分子量:640g/モル)を水15.28mL中に溶解し、反応混合物を80℃に1時間加熱した。21.22gの液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0025】
調製例5:
丸底フラスコ中で、チオモルホリン4.97g(0.0472モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル9.64g(0.0472モル)を水21.92g中で乳化し、反応混合物を80℃に2時間加熱した。反応終了後、黄色のオイルが沈積した。反応混合物に2モル濃度の塩酸23.60mLを加え、30分間撹拌した。58.15gの黄色無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0026】
調製例6:
丸底フラスコ中で、ピペリジン4.90mL(0.0490モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル10g(0.0490モル)を水15g中に溶解し、反応混合物を80℃に2時間加熱した。35.43gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0027】
調製例7:
丸底フラスコ中で、ジメチルアミン6.20mL(0.0490モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル10g(0.0490モル)を水15g中に溶解し、反応混合物を80℃に2時間加熱した。30.52gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0028】
調製例8:
丸底フラスコ中で、モルホリン5g(0.0574モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル10g(0.0490モル)を水22.50g中に溶解し、反応混合物を80℃に1時間加熱した。37.50gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0029】
調製例9:
丸底フラスコ中で、モルホリン5.69g(0.0653モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル10g(0.0490)を水23.54g中に溶解し、反応混合物を80℃に1時間加熱した。39.23gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0030】
調製例10:
丸底フラスコ中で、モルホリン4g(0.0455モル)およびグリセロールジグリシジルエーテル9.29g(0.0455モル)を水19.84中に溶解し、反応混合物を60℃に1時間加熱した。33.13gの無色の液体が得られた。これを後の適用技術試験に使用した。
【0031】
WO2004/005528に準拠した比較調製例11
丸底フラスコ中にポリ(エチレン)ジグリシジルエーテル131.65mL(0.250モル)を仕込み、撹拌下、エピクロルヒドリン19.75mL(0.250モル)を滴下により15分以内で加え、さらに15分間撹拌した。この溶液を、水75mL中のピペラジン21.535gの溶液に、冷却せずに強く撹拌しながら滴下により1時間以内でゆっくりと加えた。この添加により、温度がこれを超過すべきではない80℃となった。添加終了後、反応混合物を80℃においてさらに1時間撹拌し、極めて高粘度の溶液を得た。この反応の1回分を室温まで冷却し、水229.81gで希釈した。15分後に反応した500gの溶液(40重量%)を得た。固体状の塊をUltra−Turrax撹拌機手段により分解し、さらに水を加えて10重量%のポリマーエマルジョンに調節した。この添加剤を適用の共通試験に準じて試験した。
【0032】
WO2004/005528に準拠した比較調製例12
丸底フラスコ中にポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル3.3mL(0.00625モル)を仕込み、撹拌下、エピクロルヒドリン0.5mL(0.00625モル)を滴下により15分以内で加え、さらに15分間撹拌した。この溶液を、水75mL中のピペラジン(0.55g(0.00625モル))の溶液に、冷却せずに強く撹拌しながら80℃において滴下により1時間以内でゆっくりと加えた。添加終了後、反応混合物を80℃においてさらに1時間撹拌し、極めて高粘度の溶液を得た。この反応の1回分を室温まで冷却し、水420gで希釈した。500gの溶液(<1重量%)を得た。この添加剤を適用の共通試験に準じて試験した。
【0033】
適用の共通試験:
下記の組成の電解質を使用した。
300g/L ピロリン酸4カリウム
3g/L ピロリン酸銅1水塩
30g/L ピロリン酸スズ
40mL/L 70%メタンスルホン酸
12.5mL/L 85%リン酸
4mL/L N−メチルピロリドン
0.2mL/L 調製例1〜10のうちの1つによる本発明の添加剤のうちの1つの40%溶液。
pH値7の電解質250mLをハルセル中に充填した。アノードとしてチタン混合酸化物電極を使用した。1Aにて10分間、カソードプレートを被覆した。被覆終了後、プレートをすすぎ、圧縮空気で乾燥した。光沢のある堆積物を得た。
【0034】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2級モノアミンとジグリシジルエーテルとの反応生成物を含有する、シアン化物を使用せずに基体表面上へ銅−スズ合金を堆積するためのピロリン酸塩含有浴。
【請求項2】
上記2級モノアミンがジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン、チオモルホリン、モルホリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1のピロリン酸塩含有浴。
【請求項3】
上記ジグリシジルエーテルがグリセロールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルおよびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1または2のピロリン酸塩含有浴。
【請求項4】
上記2級モノアミンがモルホリンであり、上記ジグリシジルエーテルがグリセロールジグリシジルエーテルである、請求項1〜3のいずれか一項のピロリン酸塩含有浴。
【請求項5】
上記反応生成物が、2級モノアミンとジグリシジルエーテルとを、水中、非プロトン性溶媒中または無溶媒下、15〜100℃の温度において常圧下で反応させることによって製造されるものである、請求項1〜4のいずれか一項のピロリン酸塩含有浴。
【請求項6】
上記反応生成物が20〜80℃の温度で製造されるものである、請求項5のピロリン酸塩含有浴。
【請求項7】
ジグリシジルエーテルの2級モノアミンに対するモル比が0.8〜2である、請求項1のピロリン酸塩含有浴。
【請求項8】
上記モル比が0.9〜1.5である、請求項7のピロリン酸塩含有浴。
【請求項9】
上記反応生成物を0.0001〜20g/Lの濃度で含有する、請求項1〜8のいずれか一項のピロリン酸塩含有浴。
【請求項10】
上記反応生成物を0.001〜1g/Lの濃度で含有する、請求項9のピロリン酸塩含有浴。
【請求項11】
オルトリン酸、有機スルホン酸、ホウ酸、酸化防止剤および有機光沢剤よりなる群から選択される添加剤をさらに含有する、請求項1〜10のいずれか一項のピロリン酸塩含有浴。
【請求項12】
N−メチルピロリドンをさらに含有する、請求項1〜11のピロリン酸塩含有浴。
【請求項13】
N−メチルピロリドンを0.1〜50g/Lの濃度で含有する、請求項12のピロリン酸塩含有浴。
【請求項14】
N−メチルピロリドンを0.5〜15g/Lの濃度で含有する、請求項13のピロリン酸塩含有浴。
【請求項15】
pH値が3〜9である、請求項1〜14のピロリン酸塩含有浴。
【請求項16】
pH値が6〜8である、請求項15のピロリン酸塩含有浴。
【請求項17】
被覆されるべき基体を、請求項1〜16のシアン化物を含有しない水性浴中に導入することを含む、光沢があり平滑な銅−スズ合金被覆を電気堆積するための方法。
【請求項18】
上記浴を0.01〜2A/dmの設定電流密度にて運転する、請求項17の方法。
【請求項19】
上記浴を0.25〜0.75A/dmの設定電流密度にて運転する、請求項18の方法。
【請求項20】
上記浴を15〜50℃の温度において運転する、請求項17の方法。
【請求項21】
上記浴を20〜30℃の温度において運転する、請求項17の方法。
【請求項22】
上記被覆がラックメッキ法の手段によって導電性基体上に堆積される、請求項17〜21の方法。
【請求項23】
アノードとして膜アノードを使用する、請求項17〜22の方法。
【請求項24】
請求項1〜8において定義されている反応生成物。
【請求項25】
請求項24の反応生成物の光沢剤としての使用。

【公表番号】特表2011−522116(P2011−522116A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510900(P2011−510900)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003886
【国際公開番号】WO2009/146865
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】