説明

銅−亜鉛−アルミニウム触媒、その製造方法、一酸化炭素変成方法、及び水素製造方法

【課題】燃料電池のように温度の昇降が繰り返される条件でも、活性及び耐久性の高い銅−亜鉛−アルミニウム触媒、その製造方法等を提供する。
【解決手段】銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒であって、銅がCuO換算で60〜90質量%、亜鉛がZnO換算で2〜15質量%、及びアルミニウムがAl23換算で5〜30質量%であり、比表面積が50〜200m2/g、CuOの結晶子径が200Å以下、嵩密度が0.6〜2.0g/cm3、細孔容積が0.30〜0.60cm3/g、平均細孔半径が45〜120Åであり、X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.44±0.05及び2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有し、格子面間隔d(Å)2.48±0.05、2.81±0.05及び2.60±0.05のいずれにもピークを有しない銅−亜鉛−アルミニウム触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅−亜鉛−アルミニウム触媒、その製造方法、一酸化炭素変成方法、及び水素製造方法に係り、特に、燃料電池用触媒として好適な銅−亜鉛−アルミニウム触媒、その製造方法、この触媒を用いた一酸化炭素変成方法、及びこの触媒を用いた水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、燃料電池の原料水素を炭化水素から製造する際の水性ガスシフト反応用触媒等として好適に用いられている。
すなわち、炭化水素は水蒸気改質反応により水素に変換されるが、この水蒸気改質反応により得られる改質ガスには一酸化炭素が含まれている。この改質ガス中の一酸化炭素濃度は、100ppm(容積)以下、好ましくは50ppm以下に低減される必要があり、通常、水性ガスシフト反応によって1容積%以下に低減された後、一酸化炭素選択酸化反応によりさらに低減される。水性ガスシフト反応には、多くの場合、高温シフト触媒と低温シフト触媒とが使用される。この水性ガスシフト反応の触媒、特に低温シフト触媒として、銅−亜鉛−アルミニウム触媒が好適に使用される。
【0003】
この銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、白金等の貴金属をチタニアやセリア等に坦持した貴金属触媒と比べて、低温での活性に優れるが、耐久性に劣るという問題がある。
すなわち、この水性ガスシフト反応は、化学平衡による制約を受け、低温になるほど一酸化炭素濃度を低減させることができる。銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、白金等の貴金属をチタニアやセリア等に坦持した貴金属触媒と比べて比較的低温で作動することができるため、一酸化炭素濃度を1%以下にまで低減させることができる。また、この銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、一定条件で運転を行う工業装置では長期間使用することができる。しかし、この銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、燃料電池のように頻繁に起動停止を行い、温度の昇降が繰り返される条件では、水の蒸発に伴う酸化及び改質ガスによる還元が生じ、その結果銅のシンタリングによる粒成長が生じ、触媒が失活し易い。
【0004】
そこで、銅−亜鉛−アルミニウム触媒の活性及び耐久性(特に起動・停止を繰り返す条件で、触媒が実用上満足できる活性を維持できる時間。以下、単に耐久性を称することがある。)を改良するために、種々の検討がなされている。
特許文献1には、銅−亜鉛−アルミニウム触媒を、沈殿剤として水酸化ナトリウムを用いた共沈法により製造することが開示されている。特許文献2には、銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、特定のX線回折パターンを有する触媒前駆体物質を焼成することにより、銅−亜鉛−アルミニウム触媒を製造することが開示されている。これらの銅−亜鉛−アルミニウム触媒は活性及び耐久性に優れる。
特許文献3には、ハイドロタルサイト形態のアルミニウムとハイドロタルサイトとは異なるアルミニウムとを含む触媒前駆体を用いて製造された銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、活性が高いことが開示されている。
特許文献4には、一定の粒度分布に揃えた銅−亜鉛−アルミニウム触媒粒子をタブレット化してタブレット型触媒を製造することが開示されている。但し特許文献4には、銅−亜鉛−アルミニウム触媒粒子の製造条件の記載はない。
特許文献5には、Cu/Zn系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒において、平均細孔径を12〜25nmとすることによりメタノール合成効率が向上することが開示されている。但しCu/Zn/Al系触媒に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/044707号公報
【特許文献2】WO2008/126743号公報
【特許文献3】特表2005-520689号公報
【特許文献4】特開平11−151442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銅−亜鉛−アルミニウム触媒にあっては、活性及び耐久性のさらなる改善、特に200℃以下の低温における活性のさらなる改善が求められている。
特許文献1および2の触媒の低温活性は高いものの成型すると細孔径、細孔容積が比較的小さくなりやすいため、触媒成型体内部の反応物質の拡散性に乏しく期待されたほど反応成績を示さなかった。
【0007】
本発明は、燃料電池のように頻繁に起動停止を行い、温度の昇降が繰り返される条件においても、活性(特に200℃以下の低温における活性)及び耐久性の高い銅−亜鉛−アルミニウム触媒及びその製造方法と、この触媒を用いた一酸化炭素変成方法及び水素製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような状況に鑑みて鋭意検討した結果、Cu-Al-Zn系シフト触媒の前駆体となる沈殿物を生成させる際のNaOHとNO3のモル比NaOH/NO3を制御することにより、触媒の細孔容積および細孔径を向上でき、活性(特に200℃以下の低温における活性)及び耐久性の高い銅−亜鉛−アルミニウム触媒が得られることを見出し、本発明を完成させた。
また本発明者らは、Cu−Al−Zn系シフト触媒のAl原子とZn原子のモル比(Al/Zn)を高めることにより、Cu−Al−Zn系シフト触媒の細孔容積および細孔径をより向上することができ、あるいはCu−Al−Zn系シフト触媒の活性及び耐久性をより高くできることを見出し、上記発明の改良発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)の発明を提供するものである。
(1) 銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒であって、銅がCuO換算で60〜90質量%、亜鉛がZnO換算で2〜15質量%、及びアルミニウムがAl23換算で5〜30質量%であり、比表面積が50〜200m2/g、CuOの結晶子径が200Å以下、嵩密度が0.6〜2.0g/cm3、細孔容積が0.30〜0.60cm3/g、平均細孔半径が45〜120Åであり、X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.44±0.05及び2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有し、格子面間隔d(Å)2.48±0.05、2.81±0.05及び2.60±0.05のいずれにもピークを有しない銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
(2)一酸化炭素転換用触媒である(1)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
(3)銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、X線回折パターンが格子面間隔d(Å)5.3±0.5、3.73±0.3、2.63±0.2、2.26±0.2及び1.71±0.1にピークを有する触媒前駆体を乾燥、成型及び焼成して得られる(1)又は(2)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
(4)前記触媒前駆体が、X線回折パターンにおける格子面間隔d(Å)8.7±0.5及び7.60±0.5の範囲内に、5.3±0.5のピーク強度より大きいピークを有しない(3)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
(5)銅、亜鉛及びアルミニウムを含む硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液を混合して共沈させてなる触媒前駆体を用いて銅−亜鉛−アルミニウム触媒を製造する方法において、前記硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液とを、NaOHとNO3のモル比NaOH/NO3が0.94〜1.0となるように混合する(1)〜(4)のいずれかに記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
(6)前記硝酸塩溶液中の銅、亜鉛及びアルミニウムの原子比が、Cu/(Cu+Zn+Al)=0.5〜0.9、Zn/(Cu+Zn+Al)=0.01〜0.15、Al/(Cu+Zn+Al)=0.1〜0.5、及びAl/Zn=2.5〜5.0の範囲である(5)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
(7)前記硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液を混合して共沈させた後、洗浄、乾燥、成型、焼成をこの順に行う(5)又は(6)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
(8)前記成型が打錠成型または押出成型である(7)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
(9)無機バインダを用いずに押出成型する(8)に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
(10)(1)〜(4)のいずれかに記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒を用いて、150〜500℃において水性ガスシフト反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
(11)(5)〜(9)のいずれかに記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法によって製造された銅−亜鉛−アルミニウム触媒を用いて、150〜500℃において水性ガスシフト反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
(12)(10)又は(11)に記載の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、一酸化炭素選択酸化反応以外の反応により低下させる水素製造方法。
(13)(10)又は(11)に記載の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、一酸化炭素選択メタン化反応により低下させる水素製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は細孔容積、細孔径が大きく成型体触媒内部の反応物の拡散性に優れ、COシフト反応に高活性を示す。本発明の触媒は200℃以下の低温での活性および耐久性にも優れており、燃料電池用改質器に搭載すると、起動・停止を繰り返しても活性の低下が少なく長期間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例及び比較例の触媒前駆体のXRD測定結果を示す図面である。
【図2】実施例1の触媒のXRD解析結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒>
本発明の銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒は、銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含んでおり、銅がCuO換算で60〜90質量%、亜鉛がZnO換算で2〜15質量%、及びアルミニウムがAl23換算で5〜30質量%である。
【0013】
銅がCuO換算で60〜90質量%の下限値を外れると、活性種の銅原子が少なくて触媒活性が低下し、逆に上限値を外れると、相対的に亜鉛原子、アルミニウム原子が少なくなるため、触媒の耐久性(特に起動・停止を繰り返して使用する状態で、触媒が実用上満足できる活性を維持できる時間。以下、単に耐久性と呼ぶ場合もある)が低下するおそれがある。銅はCuO換算で、好ましくは60〜75質量%であり、更に好ましくは70〜74質量%である。
亜鉛がZnO換算で2〜15質量%の下限値を外れると、亜鉛原子が少なくなることで触媒の活性が低下し、逆に上限値を外れると、触媒の耐久性が低下するおそれがあるので、いずれも好ましくない。亜鉛はZnO換算で、好ましくは6〜15質量%であり、更に好ましくは8〜11質量%である。
アルミニウムがAl23換算で5〜30質量%の下限値を外れると、触媒強度が低下したり、触媒の耐久性が低下したりするおそれがある。また、上限値を外れると、相対的に銅原子が少なくて触媒活性が低下するおそれがあるので、いずれも好ましくない。アルミニウムはAl23換算で、好ましくは13〜20質量%であり、更に好ましくは15〜20質量%である。
【0014】
本発明の銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒は、X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.44±0.05及び2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有する。このX線回折パターンは、以下のピークを有する亜鉛アルミネートスピネル(ZnAl23)のX線回折パターンに相当するものである。
d=2.442、d=2.863、d=1.432、d=1.559、d=1.653、d=1.281
ここで半値幅とは、ベースラインからピークの最高点までの高さ(h)の半分の高さ(h/2)におけるピークの幅(すなわち、半値全幅)を意味する。
また、本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.48±0.05、2.81±0.05及び2.60±0.05のいずれにもピークを有しないものである。このX線回折パターンは、以下のピークを有するジンサイト(zincite、ZnO)のX線回折パターンに相当するものである。
d=2.475、d=2.814、d=2.602、d=1.625、d=1.477、d=1.378
【0015】
すなわち、本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、亜鉛アルミネートスピネルを有すると共に、ジンサイトを実質的に有しない。この亜鉛アルミネートスピネルは、水蒸気存在下でも安定に存在するため、銅のシンタリングが抑制される。また、ジンサイトは水蒸気存在下でジンサイト自体がシンタリングすることにより、銅のシンタリングをも促進するが、本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒はジンサイトを実質的に有しないため、銅のシンタリングが抑制される。これらにより、この触媒を水性ガスシフト反応用の触媒として燃料電池用改質器に搭載すると、起動・停止を繰り返しても活性の低下が少なく、長期間の使用が可能である。また、この触媒は耐熱性にも優れており、500℃までの高温においても使用することができるため、水性ガスシフト反応において、低温シフト触媒として使用できるのみならず、高温シフト触媒を兼ねることもできる。
亜鉛アルミネートスピネルの上記X線回折パターンはブロードなピークを有しており、これは粒径が小さいことを意味する。これにより、亜鉛アルミネートスピネルをCuOの近傍に存在させ、銅のシンタリングを良好に抑制することができる。
【0016】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、比表面積が50〜200m2/gである。比表面積がこの範囲を外れると、触媒活性が低下したり、銅のシンタリング抑制効果が低下する。この比表面積は、好ましくは90〜170m2/gであり、更に好ましくは110〜150m2/gである。
【0017】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、CuOの結晶子径が200Å以下である。CuOの結晶子径が200Åを超えると、反応に有効な銅の活性点数が不足し、活性が低下する。CuOの結晶子径は、好ましくは130Å以下であり、更に好ましくは90Å以下である。
【0018】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、嵩密度が0.6〜2.0g/cm3である。嵩密度が下限値を外れると活性が低くなり、上限値を外れると強度が低くなる。嵩密度がこの範囲内であると、この触媒を収容する反応器も小さくてすみ、家庭用燃料電池や燃料電池車に搭載するコンパクトは改質システムが可能となる。この嵩密度は、好ましくは0.6〜1.3g/cm3であり、更に好ましくは0.9〜1.2g/cm3である。
【0019】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、細孔容積が0.30〜0.60cm3/gである。細孔容積が下限値を外れると、触媒内部への一酸化炭素の拡散速度が遅くなり、触媒の反応性が低下する。細孔容積が上限値を外れると、触媒の圧壊強度が低くなる。この細孔容積は、好ましくは0.32〜0.54cm3/gであり、より好ましくは0.37〜0.52cm3/gである。
【0020】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、平均細孔半径が45〜120Åである。平均細孔半径がこの範囲を外れると、細孔容積が小さくなり、あるいは圧壊強度が低くなる。この平均細孔半径は、好ましくは60〜80Åである。
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、一酸化炭素転換用触媒として好適に用いられる。すなわち、前述のとおり、炭化水素の水蒸気改質反応により得られる改質ガスには、水素の他に一酸化炭素が含まれている。この改質ガス中の一酸化炭素を水性ガスシフト反応によって除去する際のシフト触媒、特に低温シフト触媒として、この銅−亜鉛−アルミニウム触媒が好適に使用される。ただし、本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の用途は一酸化炭素転換用触媒に限定されるものではなく、例えば、水素製造触媒、メタノール合成触媒、メタノールのスチームリフォーミング触媒等として用いることも可能である。
【0021】
<銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒前駆体>
上記の銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒は、以下の銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒前駆体を用いて製造することができる。
この触媒前駆体は、銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、spertiniite(Cu(OH)2)のX線回折パターンに類似したブロードなX線回折パターンを示す物質を有する。
すなわち、この触媒前駆体は、X線回折パターンが格子面間隔d(Å)5.3±0.5、3.73±0.3、2.63±0.2、2.26±0.2及び1.71±0.1にピークを有する。一方、spertiniite(Cu(OH)2)のX線回折パターンは、以下に回折線を有する。
d=2.63、d=3.73、d=5.29、d=2.266、d=1.718、d=2.50、d=2.361
【0022】
なお、この触媒前駆体は、上記のspertiniiteに類似するX線回折ピークの他に、格子面間隔d(Å)8.7±0.5、7.60±0.5及び5.3±0.5にピークを有していてもよい。この場合、格子面間隔d(Å)8.7±0.5及び7.60±0.5のピーク強度が5.3±0.5のピーク強度よりも大きいピークを有しないことが好ましい。この格子面間隔d(Å)8.7±0.5にピークを有する物質はscarbroiteであり、格子面間隔d(Å)7.60±0.5にピークを有する物質はハイドロタルサイト(hydrotalcite)であり、格子面間隔d(Å)5.3±0.5にピークを有する物質はspertiniiteである。このようにspertiniiteを多く含み、且つscarbroite及びハイドロタルサイトのような不純物の少ない触媒前駆体を用いることにより、上記の本発明に係る銅−亜鉛−アルミニウム触媒を得ることが可能となる。
【0023】
<銅‐亜鉛‐アルミニウム触媒前駆体の製造方法>
前記触媒前駆体は、銅、亜鉛及びアルミニウムを含む硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液とを混合して共沈させることにより、製造される。
【0024】
銅及び亜鉛の塩種としては、硝酸塩が好ましい。アルミニウム塩は硝酸塩、水酸化物、アルミン酸ナトリウム、プソイドベーマイトなどを用いることができ、硝酸塩、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0025】
前記硝酸塩溶液中の銅、亜鉛及びアルミニウムの原子比としては、Cu/(Cu+Zn+Al)が好ましくは0.5〜0.9、より好ましくは0.5〜0.7、更に好ましくは0.58〜0.7である。また、Zn/(Cu+Zn+Al)は好ましくは0.01〜0.15、より好ましくは0.05〜0.13、更に好ましくは0.07〜0.1である。Al/(Cu+Zn+Al)は好ましくは0.1〜0.5、より好ましくは0.2〜0.4、更に好ましくは0.2〜0.3である。Al/Znは好ましくは2.5〜5.0、より好ましくは2.5〜4.1、更に好ましくは2.5〜3.5である。
金属の原子比を上記のような範囲とすると、この触媒前駆体を焼成したときにZnAl24が生成する。これにより、触媒の耐久性(特に起動・停止を繰り返して使用する状態で、触媒が実用上満足できる活性を維持できる時間)の低下が防止されると共に、亜鉛原子が多すぎてジンサイト(zincite)等が生成することが防止される。その結果、触媒の耐久性が向上する。
【0026】
本発明では、沈殿工程において、沈殿剤として水酸化ナトリウム含有液を用いる。従来技術では、炭酸ナトリウムを沈殿剤とするのが好ましいとする場合が多かった。最適組成と考えられていた高ZnO、低Al23組成領域では、確かに、炭酸ナトリウムを用いた触媒が活性に優れるが、低ZnO、高Al23組成領域においては、炭酸ナトリウムを用いて製造した触媒は性能に劣る。一方、低ZnO、高Al23組成領域において、沈殿剤として水酸化ナトリウムを用いることによって、微細な結晶の酸化アルミニウムスピネルが生成し、活性および耐久性に優れる触媒が得られる。
【0027】
本発明は、これら硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液とを、NaOHとNO3のモル比NaOH/NO3が好ましくは0.94〜1.0となるように混合することに大きな特徴を有する。
モル比NaOH/NO3が0.94〜1.0の範囲内であると、触媒前駆体がspertiniiteを含み、且つscarbroite及びハイドロタルサイト(hydrotalcite)に類似した不純物をほとんど含まないものとなり、この触媒前駆体を用いて得られる触媒は、活性及び耐久性に優れたものとなる。このモル比NaOH/NO3は、より好ましくは0.95〜0.98であり、更に好ましくは0.95〜0.96である。
特に、アルミニウム及び亜鉛の原子比Al/Znを上記範囲すなわち2.5〜5.0とし、且つこのモル比NaOH/NO3を0.95〜0.98として共沈を行うと、細孔容積及び平均細孔半径の大きい触媒を得ることができる。
【0028】
上記硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液を混合して触媒前駆体を共沈させる場合には、これらの溶液のいずれか一方を撹拌しながらもう一方を混合してもよい。また、それぞれの溶液をポンプなどで同時に供給して混合してもよい。
【0029】
<銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法>
上記のようにして触媒前駆体を共沈させた後、洗浄、乾燥、成型、焼成を行うことにより、銅−亜鉛−アルミニウム触媒を製造することができる。
すなわち、上記沈殿工程で得られた触媒前駆体は、ゲル状のスラリーとなる。この触媒前駆体を、熟成後又は熟成することなく直ぐに、洗浄及び濾過する。このように洗浄及び濾過すると、微粒子間に水を多く含んで膨潤したケーキが得られる。これを乾燥させると、粒子が収縮して硬く稠密な固形物が得られる。この乾燥させる際の温度は特に制限はないが、好ましくは室温から250℃、より好ましくは室温から200℃、更に好ましくは室温から150℃の温度で乾燥するまで実施すればよい。
この固形物を、成型後に焼成又は焼成後に成型することにより、上記の銅−亜鉛−アルミニウム触媒となる。
【0030】
本発明では、成型後に焼成することが好ましい。従来は、上記固形物を焼成後に成型していた。これに対し、成型後に焼成した場合、銅の凝集を抑制することができると共に、細孔容積及び平均細孔半径の大きい銅−亜鉛−アルミニウム触媒を得ることができることがわかった。
【0031】
成型方法としては、押出成型、転動造粒、打錠成型など特に制限はないが、成型の容易性から(成型が容易な)、打錠成型が好ましい。前述した固形物(上記沈殿工程で得られた触媒前駆体を洗浄、濾過、乾燥させた固形物)を12メッシュ以下に粉砕して成型用の孔(金型)に充填し、圧壊強度が20〜40Nの範囲になるよう成型後、焼成すると、嵩密度が0.6〜2.0g/cm3になりやすい。通常、打錠成型圧力を高くすると、圧壊強度は高くなり、成型触媒の嵩密度は大きくなるが、あまり高くすると触媒性能が低下することがあるので、圧壊強度が20〜40N程度になるよう打錠成型するのが好ましい。
成型する際には、触媒にバインダを加えても良い。通常、アルミナのような無機バインダや、セルロースのような有機バインダ等、周知のバインダを用いることができ、添加量は触媒中5質量%以下であることが好ましい。このバインダは加えなくてもよい。
【0032】
焼成条件は特に制限はないが、200〜650℃程度で0.1時間〜10時間程度実施すればよい。650℃以下で焼成すると、CuO結晶子及び亜鉛アルミネートスピネル結晶子の径の増大が防止される。
【0033】
<一酸化炭素変成方法>
本発明の一酸化炭素変成方法では、上記の触媒を用いて150〜500℃、好ましくは150〜300℃において水性ガスシフト反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる。
【0034】
この一酸化炭素を含む水素含有ガスとしては、炭化水素燃料を脱硫処理後、炭化水素を改質触媒の存在下に部分酸化改質、自己熱改質、水蒸気改質等の改質処理して得られた改質ガス、水性ガス、水添工程における排ガス等が好適に用いられる。炭化水素燃料としては、LPG、都市ガス、天然ガス、ナフサ、灯油および軽油のいずれも使用できる。
本発明の一酸化炭素変成方法において、ガス時空間速度(GHSV、ガス体積流量/触媒体積)は、好ましくは2000〜60000h-1、より好ましくは3000〜10000h-1の条件で行なわれる。
本発明の一酸化炭素変成方法において、前記銅−亜鉛−アルミニウム触媒は使用前に水素還元により還元するのが好ましい。水素還元は、通常、水素(例えば、水素/窒素混合ガス)気流下、150〜300℃程度の温度で、1〜10時間、好ましくは1〜3時間行う。
【0035】
本発明の一酸化炭素変成方法により、一酸化炭素濃度が1%以下、場合によっては0.2%以下に低減された水素含有ガスを製造することができる。
本発明の前記銅−亜鉛−アルミニウム触媒を使用すると、一酸化炭素濃度が低い(0.6容量%未満)原料ガス及び一酸化炭素濃度が比較的高い(0.6〜2.0容量%)原料ガスのいずれにおいても、一酸化炭素濃度を良好に低減することができ、水性ガスシフト反応器をよりコンパクトにすることができる。
【0036】
<水素製造方法>
本発明の水素製造方法では、上記の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、さらに一酸化炭素選択酸化反応以外の反応により低下させる。
上記の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスとして、一酸化炭素を0.2%以下まで低減させた水素含有ガスを用いた場合、この水素含有ガスは、一酸化炭素選択酸化反応以外の反応により一酸化炭素の除去を行うことができる。これにより、一酸化炭素選択酸化反応器を必要とせず、他の種類の反応器を用いることができるため、装置をよりコンパクトにすることができる。なお、他の種類の反応としては、一酸化炭素選択メタン化反応、膜分離等が挙げられるが、一酸化炭素選択メタン化反応を行うことが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
なお、各例における諸特性は下記の方法に従って測定した。
(1)組成
触媒のCu、Zn、Al量は、プラズマ発光(ICP)法で定量した。Cu、Zn、Alの定量値からCuO、ZnO、Al23量を求め、合計を100質量%になるよう換算した。
(2)比表面積
ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置を用い、試料約100mgを試料管に充填し、前処理として200℃で20分間窒素気流中で加熱脱水した。次に液体窒素温度で窒素(30%)/ヘリウム(70%)混合ガスを流通させ窒素を吸着させた後、脱離させTCD(熱伝導度)検出器で測定した窒素の吸着量から比表面積を求めた。
(3)XRD測定
XRD測定はリガク社製のX線回折装置を用いて行なった。試料をガラス製試料セルに充填し、X線源としてCu−Kα(1.5406Å、グラファイトモノクロメーターにより単色化)を使用し、2θ−θ反射法により測定した。CuO、ZnAl24、ZnOの結晶子径はシェラー式から算出した。
(4)嵩密度
JISK3362に準じて評価した。
(5)細孔容積及び平均細孔半径
水銀ポロシメーターを用い、水銀圧入法により、細孔容積及び平均細孔半径を求めた。
【0039】
(6)触媒の性能評価(出口CO濃度及び転化率)
触媒9cm3を内径12mmの反応管に充填した。反応管内で触媒をH2/N2=20/80(容量比)の気流中で、230℃で2時間、触媒の還元処理を行なった後、GHSV:1,500h-1の条件でH2/CO/CO2/H2O=50/10/10/30(容量%)のガスを導入し、180℃で1時間CO転化反応を行った。得られたガスをサンプリングしてガスクロマトグラフィーにてその濃度を測定した。この結果をもとに、CO転化率を下記式により求めた。結果を第1表に示す。
CO転化率(%)=[(A−B)/A)]×100
上記式において、Aは反応器入口側のCO量[転化前のCO濃度(容量%)×転化前のガス量(cm3/分)]、Bは反応器出口側のCO量[転化後のCO濃度(容量%)×転化後のガス量(cm3/分)]である。
【0040】
実施例1
硝酸銅三水和物(純度99質量%以上)133.0g、硝酸亜鉛六水和物(純度99質量%以上)15.5g、硝酸アルミニウム九水和物(純度99質量%以上)79.0gを水に溶解し、900mlの溶液(A液)とした。また、水酸化ナトリウム(純度95質量%)75.4g(水酸化ナトリウムのみの質量71.6g)を水に溶解し、900mlの溶液(B液)とした。表1に、A液及びB液中の各物質の質量(g)、金属原子比(モル比)、NaOH/NO3比(モル比)を示す。
A液とB液を、それぞれ30ml/分ずつの速度で、200mlの50℃の水の入った容器に同時に滴下した。滴下中、沈殿物を攪拌しながら50℃に維持したこの沈殿物を3時間熟成した後、濾過し、十分水洗を行った。取り出した沈殿物を120℃で20時間乾燥し、触媒前駆体を得た。この触媒前駆体について、XRD測定を行った。その結果を図1に示す。
【0041】
この乾燥した沈殿物(触媒前駆体)にグラファイトを3質量%加え、打錠成型機で3φ×3mmの成型体を調製した。次いで350℃で3時間焼成し、触媒とした。成型及び焼成に関する主な条件を表1に示し、触媒の諸特性の測定結果を表2に示し、触媒のXRD測定結果及び解析結果を図2に示す。なお、触媒のXRD測定は、上記「(6)触媒の性能評価」に示した触媒の還元処理後に実施した。触媒は、CuOとZnAl24 からなっており、ZnOのピークは存在しないことがわかる。
なお、後述する実施例2〜6及び比較例1〜5においても、表1にA液及びB液中の各物質の質量、金属原子比(モル比)、NaOH/NO3比(モル比)、及び成型と焼成に関する主な条件を示す。また、実施例2〜6及び比較例1〜5においても、触媒前駆体についてXRD測定を行い、そのうち実施例2〜4,6及び比較例1,2の結果を図1に示す。さらに、実施例2〜6及び比較例1〜5においても、触媒の諸特性の測定を行い、その結果を表2に示す。
【0042】
実施例2
硝酸銅三水和物133.0 g、硝酸亜鉛六水和物18.3g、硝酸アルミニウム九水和物73.6g、95%濃度水酸化ナトリウム72.7g(水酸化ナトリウムのみの質量69.1g)としたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0043】
実施例3
硝酸銅三水和物133.0 g、硝酸亜鉛六水和物21.0g、硝酸アルミニウム九水和物68.1g、95%濃度水酸化ナトリウム71.6g(水酸化ナトリウムのみの質量68.0g)としたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRDは実施例1と同様であった。
【0044】
実施例4
硝酸銅三水和物114.0 g、硝酸亜鉛六水和物28.3g、硝酸アルミニウム九水和物90.1g、95%濃度水酸化ナトリウム74.9g(水酸化ナトリウムのみの質量71.2g)としたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRDは実施例1と同様であった。
【0045】
実施例5
実施例3と同様にして得られた触媒前駆体73.8gに、アルミナバインダー(カタロイドAP1、アルミナ含有量71質量%)10.0gおよびメチルセルロース(メトローズSM−4000)1.8g(触媒前駆体に対するバインダ添加量:2.4質量%)を添加、混合、風乾した後、押出成型を行い、2φ×5mmの成型体を調製した。成型体を120℃で乾燥後、350℃で焼成して触媒とした。
触媒前駆体のXRD測定結果及び触媒のXRD測定結果は実施例3と同様であった。
【0046】
実施例6
A液中の硝酸アルミニウム九水和物を68.1gに代えて95.7gとし、B液中の95%濃度水酸化ナトリウムを71.6gに代えて80.6g(水酸化ナトリウムのみの質量76.6g)としたこと以外は実施例5と同様にして、触媒前駆体を調製した。
この触媒前駆体について、アルミナバインダーを添加しなかった(メチルセルロース1.8gのみを添加した)こと以外は実施例5と同様にして触媒とした。
触媒のXRDは実施例1と同様であった。
【0047】
比較例1
A液中の硝酸銅三水和物133.0 g、硝酸亜鉛六水和物21.9g、硝酸アルミニウム九水和物66.2g、B液中の95%濃度水酸化ナトリウム68.1g(水酸化ナトリウムのみの質量64.7g)としたこと以外は実施例1と同様にして触媒前駆体を調製した。この触媒前駆体を350℃で3時間焼成し、その後、焼成物にグラファイトを3質量%加えて打錠成型を行い、3φ×3mmの成型体を調製した。
比較例1ではNaOH/NO3モル比が0.91と低い値であり、触媒前駆体のXRD測定結果は図1に示すようにd=8.7のピークがd=5.29のピークより大きかった。触媒のXRDは実施例1と同様であった。性能評価において出口CO濃度が十分低下せず、1.7%と高かった。
【0048】
比較例2
95%濃度水酸化ナトリウム75.6g(水酸化ナトリウムのみの質量71.8g)を用いたこと以外は比較例1と同様に調製した。
比較例2ではNaOH/NO3モル比が1.01と高い値であり、触媒前駆体のXRDは図1に示すようにd=7.6のピークがd=5.29のピークより大きかった。性能評価において出口CO濃度が十分低下せず、1.1%と高かった。
【0049】
比較例3
硝酸銅三水和物94.4g、硝酸亜鉛六水和物37.4g、硝酸アルミニウム九水和物110.0g、95%濃度水酸化ナトリウム75.0g(水酸化ナトリウムのみの質量71.3g)を用いたこと以外は比較例1と同様に調製した。
触媒前駆体のXRDおよび触媒のXRDは実施例3と同様であった。比較例3では、CuOが53.1質量%であり60質量%未満であるので、性能評価結果において出口CO濃度が十分低下せず、1.2%と高かった。
【0050】
比較例4
硝酸銅三水和物152.0g、硝酸亜鉛六水和物14.6g、硝酸アルミニウム九水和物44.1g、95%濃度水酸化ナトリウム72.0g(水酸化ナトリウムのみの質量68.4g)を用いたこと以外は比較例1と同様に調製した。
触媒前駆体のXRDは比較例2と同様であった。また触媒のXRDは実施例1と同様であった。CuO量は84.2質量%と大きいが細孔容積および細孔径が小さく、性能評価結果において出口CO濃度が十分低下せず、1.5%と高かった。
【0051】
比較例5
焼成後に打錠成型することに代えて、打錠成型後に焼成したこと以外は比較例3と同様にして調製した。
打錠成型後に焼成する方法で調製したことにより、比較例3に比べて細孔容積及び細孔半径が増加した。これによって比較例3より出口CO濃度は多少改善された。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、活性及び耐久性ともに優れているため、コンパクトなシステムが可能となり、家庭用燃料電池や燃料電池車に搭載するコンパクトな改質システムが可能である。本発明の銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、水性ガスシフト反応の低温シフト触媒の他、水性ガスシフト反応の高温シフト触媒、水素製造触媒、メタノール合成触媒、メタノールのスチームリフォーミング触媒等として利用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒であって、
銅がCuO換算で60〜90質量%、亜鉛がZnO換算で2〜15質量%、及びアルミニウムがAl23換算で5〜30質量%であり、
比表面積が50〜200m2/g、CuOの結晶子径が200Å以下、嵩密度が0.6〜2.0g/cm3、細孔容積が0.30〜0.60cm3/g、平均細孔半径が45〜120Åであり、
X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.44±0.05及び2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有し、格子面間隔d(Å)2.48±0.05、2.81±0.05及び2.60±0.05のいずれにもピークを有しない銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
【請求項2】
一酸化炭素転換用触媒である請求項1に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
【請求項3】
銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、X線回折パターンが格子面間隔d(Å)5.3±0.5、3.73±0.3、2.63±0.2、2.26±0.2及び1.71±0.1にピークを有する触媒前駆体を乾燥、成型及び焼成して得られる請求項1又は2に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
【請求項4】
前記触媒前駆体が、X線回折パターンにおける格子面間隔d(Å)8.7±0.5及び7.60±0.5の範囲内に、5.3±0.5のピーク強度より大きいピークを有しない請求項3に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒。
【請求項5】
銅、亜鉛及びアルミニウムを含む硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液を混合して共沈させてなる触媒前駆体を用いて銅−亜鉛−アルミニウム触媒を製造する方法において、
前記硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液とを、NaOHとNO3のモル比NaOH/NO3が0.94〜1.0となるように混合する請求項1〜4のいずれかに記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
【請求項6】
前記硝酸塩溶液中の銅、亜鉛及びアルミニウムの原子比が、
Cu/(Cu+Zn+Al)=0.5〜0.9、
Zn/(Cu+Zn+Al)=0.01〜0.15、
Al/(Cu+Zn+Al)=0.1〜0.5、及び
Al/Zn=2.5〜5.0
の範囲である請求項5に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
【請求項7】
前記硝酸塩溶液と水酸化ナトリウム含有溶液を混合して共沈させた後、洗浄、乾燥、成型、焼成をこの順に行う請求項5又は6に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
【請求項8】
前記成型が打錠成型または押出成型である請求項7に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
【請求項9】
無機バインダを用いずに押出成型する請求項8に記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒を用いて、150〜500℃において水性ガスシフト反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれかに記載の銅−亜鉛−アルミニウム触媒の製造方法によって製造された銅−亜鉛−アルミニウム触媒を用いて、150〜500℃において水性ガスシフト反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、一酸化炭素選択酸化反応以外の反応により低下させる水素製造方法。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、一酸化炭素選択メタン化反応により低下させる水素製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−139637(P2012−139637A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293904(P2010−293904)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係わる特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/基盤技術開発/定置用燃料電池システムの低コスト化のためのMEA高性能化(高耐久性CO変成触媒およびCO選択メタン化触媒開発)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】