説明

銅の製造方法

【課題】大型の設備を使用せずとも鉄、砂鉄粉を原料として銅を製造乃至元素変換する。
【解決手段】塩酸液に鉄を投入し、加熱下で攪拌しながら塩化第二鉄液を作る工程と、鉄の一部が銅に変換され、変換された銅は比重差を利用して抽出する工程と、抽出した銅を水洗浄して塩酸を除去する工程と、水洗浄した銅は硫酸銅液を電解質として銅を陰極側に抽出する工程とを備える、塩酸液濃度は、20%〜45%であって、鉄を投入した塩酸液の加熱温度は80℃〜100℃で加熱、攪拌する。厚さ1.5mm以下の鉄板の裁断片及び又は砂鉄粉を塩化第二鉄液に混合、撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄から銅を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の銅の製造方法として、黄銅鉱に石灰石・コークスを加えて強熱する工程と、硫化銅を転炉に入れて空気を吹き込む工程と、粗銅を陽極、純銅を陰極として、硫酸を加えた硫酸銅の溶液を電気分解する工程によって純銅が得られることが一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献として、粗銅粉を、酸化剤及び硫酸を含む液に溶解させて銅溶解液を作製する銅粉溶解工程と、前記銅溶解液を濾過し、濾液と貴金属を含む一次残渣を得る濾過工程と、前記濾液を銅電解液とし、該銅電解液を電解して電気銅を製造する電解工程と、を含む銅の製造方法がある。
【0004】
【特許文献1】特開2009−35801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記黄色銅鉱から銅を得る方法は、選鉱、溶鉱炉及び転炉を使用するために設備が大変である。
また、前記特許文献1においては、粗銅粉を硫酸液に溶解させて銅溶解液を作製するものであり、粗銅粉の原料を確保する必要がある。
【0006】
本発明者は大型の設備を使用せずとも鉄、砂鉄粉を原料として銅を製造乃至元素変換する方法を開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る銅の製造方法は、塩酸液に鉄を投入し、加熱下で攪拌しながら塩化第二鉄液を作る工程と、鉄の一部が銅に変換され、変換された銅は比重差を利用して抽出する工程と、抽出した銅を水洗浄して塩酸を除去する工程と、水洗浄した銅は硫酸銅液を電解質として銅を陰極側に抽出する工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る銅の製造方法において使用する塩酸液濃度は、20%〜45%であって、鉄を投入した塩酸液の加熱温度は80℃〜100℃で加熱、攪拌することを特徴とする。
【0009】
請求項1に使用する鉄は、厚さ1.5mm以下の鉄板の裁断片及び又は砂鉄粉であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は薄い鉄板の裁断片や砂鉄粉を原料として銅が得られるという画期的な銅の製造方法乃至元素変換法であるので、安価に良質の銅が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】銅の製造工程を示す概略説明図である。
【図2】試料#5の測定部位を示す写真である。
【図3】試料#7の測定部位を示す写真である。
【図4】試料#14の測定部位を示す写真である。
【図5】試料#15の測定部位を示す写真である。
【図6】本発明に係る試料の放射線測定器によるスペクトルを示す。
【図7】本発明に係る試料の放射線測定器によるスペクトルを示す。
【図8】本発明に係る試料の放射線測定器によるスペクトルを示す。
【図9】本発明に係る試料の放射線測定器によるスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
1リットルの35%塩酸液に、厚さ1mmの鉄板を小片に裁断した生鉄0.5kgを投入し、塩化第二鉄液を作製した。次に容器に35%塩酸液1リットルに500gの砂鉄を入れた。この容器を30分間、95℃で加熱した。この加熱した容器に最初に得られた塩化第二鉄液を0.1リットル加えた。この塩化第二鉄液を加えた状態で容器を約2時間、95℃で加熱した。この時、容器中の塩酸液と砂鉄が混ざり合うよう十分に攪拌する。約2時間後、砂鉄が銅色に変化してきた。2時間の間に色は何回か変わった。比重が銅と砂鉄では2から3違うので、容器の中で上下に分離してきた。容器の底の方に銅が堆積し、上部には鉄から銅に変換されていない砂鉄が残存した。自重の違いにより銅を抽出し、別の容器に移し、銅に付着している塩酸分を水洗浄により除去した。塩酸分を除去した銅粉に硫酸を添加し、硫酸銅を得た。銅粉は硫酸に溶けやすく容易に硫酸銅が得られた。電解精錬により、この硫酸銅液を電解質として陰極に銅を抽出することができた。この得られた銅は99.99%の純銅であることが判明した。
【実施例2】
【0013】
図1は本発明に係る銅の製造工程を示す概略説明図である。
1は塩酸液を貯蔵する塩酸タンク、2は塩酸溶液調整タンクで、ここで塩酸濃度の調整が行われる。塩酸溶液調整タンク2はパイプラインで塩酸タンク1に接続し、かつ循環ラインを介してコンデンサー3に接続している。コンデンサー3には水が供給される。4は反応容器で、塩酸溶液調整タンク2に接続する塩酸溶液注入ラインと接続するとともにコンデンサー3にも接続している。反応容器4は濃度調整された塩酸液と砂鉄や薄い鉄板の裁断小片が投入される。反応容器4はボイラー5で例えば塩酸液を95℃等の温度に加熱する。反応容器4内の処理液はコンデンサー3及び処理液移送ラインを介して処理液濾過・電解製錬槽5に移送される。処理液はNaOHタンク6で中和されてNaOHラインを介して排水ピット7に流される。最終的に純銅製品が得られる。塩酸を含んだガスは排気ライン及びスクラバー装置8を介して大気中に放出する。
安全対策として、貯蔵タンクには漏えい防止塀を設置し、漏えいしても拡散しない対策を施す。塩酸・塩化水素・塩素ガスに対しては自動的な安全管理システムを設置する。
【0014】
Olympus InnovX社製、ハンドヘルド蛍光X線分析計、デルタプレミアム DP−2000(合金分析ソフトウエア仕様)を使用して本実施例1に基づく試料の成分分析を行った。
図2の銅板試料#5の中央部、直径10mmの○で囲まれた範囲について、試料の成分分析の結果は、Cuが92.09%、Feが7.33%、Znが0.31%、Tiが0.12%、Niが0.08%、Pbが0.030%、Mnが0.026%、Zrが0.019%であった。
【0015】
実施例1で得られた図3の銅板試料#7の右側部位、直径10mmの○で囲まれた範囲について放射線分析器で分析を行った元素の成分分析はCuが100.00%であった。
【0016】
実施例1で得られた図4の銅欠片試料#14の中央部、直径10mmの○で囲まれた範囲について放射線分析器で分析を行った元素の成分分析はFeが44.98%、Cuが35.79%、Alが7.77%、Tiが5.86%、Siが4.11%、Crが0.57%、Mnが0.034%、Vが0.27%、Pbが0.18%、Zrが0.122%であった。
【0017】
実施例1で得られた図5の銅欠片試料#15の中央部、直径10mmの○で囲まれた範囲について放射線分析器で分析を行った元素の成分分析はFeが40.12%、Cuが35.14%、Alが7.94%、Tiが5.09%、Zrが4.34%、Siが3.29%、Yが3.08%、Crが0.39%、Mnが0.25%、Vが0.20%、Pbが0.15%であった。
【0018】
実施例1で得られた各試料においての分析結果から、Cu以外にFeやAl等の金属が含まれている合金の状態から徐々にCuを主成分とした金属に変換され、最終的にCu100%の金属に変換されたことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、従来不可能とされていた鉄から銅を製造するものであり、原料となる薄い鉄板や砂鉄は比較的安価に入手できるので、高価な純銅が得られるという優れた効果を奏し、原料資源不足の日本において大型の設備投資をしないで達成でき、あらゆる産業分野に利用される。
【符号の説明】
【0020】
1 塩酸タンク
2 塩酸溶液調整タンク
3 コンデンサー
4 反応容器
5 ボイラー
6 NaOHタンク
7 排水ピット
8 スクラバー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸液に鉄を投入し、加熱下で攪拌しながら塩化第二鉄液を作る工程と、鉄の一部が銅に変換され、変換された銅は比重差を利用して抽出する工程と、抽出した銅を水洗浄して塩酸を除去する工程と、水洗浄した銅は硫酸銅液を電解質として銅を陰極側に抽出する工程とを備えたことを特徴とする銅の製造方法。
【請求項2】
請求項1に係る銅の製造方法において使用する塩酸液濃度は、20%〜45%であって、鉄を投入した塩酸液の加熱温度は80℃〜100℃で加熱、攪拌することを特徴とする請求項1記載の銅の製造方法。
【請求項3】
請求項1に使用する鉄は、厚さ1.5mm以下の鉄板の裁断片及び又は砂鉄粉であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−201903(P2012−201903A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65071(P2011−65071)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(511100992)株式会社メタルアース (1)
【Fターム(参考)】