説明

銅を担持したチャバザイト型ゼオライト及びこれを用いた触媒

【課題】窒素酸化物を還元除去する触媒として、水熱耐久処理の後に、従来の銅が担持されているチャバザイト型ゼオライト触媒と比べ、低温における窒素酸化物浄化率が同等である上に、高温における窒素酸化物浄化率が高い、銅が担持されたチャバザイト型ゼオライトからなる触媒、及び、これに用いられる銅が担持されたチャバザイト型ゼオライトを提供する。
【解決手段】SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であり、銅が担持されていて、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.15〜0.30であるチャバザイト型ゼオライト。
【効果】水熱耐久処理の後に、150℃及び500℃において高い触媒活性を持続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅が担持されているチャバザイト型ゼオライト、及び、そのチャバサイト型ゼオライトからなる触媒、並びに、チャバザイト型ゼオライトに銅が担持されている触媒を用いた自動車排ガス中の窒素酸化物を還元除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のチャバザイト型ゼオライトには、銅のアルミニウムに対する原子割合が約0.25を超える範囲で銅が担持されている触媒がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来のチャバザイト型ゼオライトには、SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であることを特徴とする触媒がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−519038号公報
【特許文献2】特開2010−168269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、窒素酸化物を還元除去する触媒として、水熱耐久処理の後に、従来の銅が担持されているチャバザイト型ゼオライト触媒と比べ、低温における窒素酸化物浄化率が同等である上に、高温における窒素酸化物浄化率が高い、銅が担持されたチャバザイト型ゼオライトからなる触媒、及び、これに用いられる銅が担持されたチャバザイト型ゼオライトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は下記に存する。即ち、
(1)SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であり、銅が担持されていることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
(2)銅のアルミニウムに対する原子割合が0.15〜0.30であることを特徴とする上記(1)に記載のチャバザイト型ゼオライト。
(3)チャバザイト型ゼオライトがH型チャバザイト型ゼオライトであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のチャバザイト型ゼオライト。
(4)チャバザイト型ゼオライトがNH型チャバザイト型ゼオライトである上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする窒素酸化物還元触媒。
(6)上記(5)に記載の触媒を使用して、窒素酸化物を還元除去する方法。
【0007】
以下、本発明のチャバザイト型ゼオライトについて説明する。
【0008】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であり、銅が担持されている。これにより、高温における窒素酸化物(以下、NOxと表記する)浄化率が、従来の銅が担持されているチャバザイト型ゼオライト触媒と比べて高くなる。
【0009】
本発明のチャバザイト型ゼオライトはSiO/Alモル比が15〜50であり、SiO/Alモル比が20〜50であることが好ましく、SiO/Alモル比が22〜40であることがより好ましい。
【0010】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、平均粒子径が1.5μm以上であり、1.7μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、2.2μm以上であることが更に好ましい。
【0011】
なお、平均粒子径は、一般的な測定方法により測定される。平均粒子径の測定方法としては、例えば、超音波分散を施した後にレーザー回折散乱法による粒子径分布測定により50%粒子径として測定する方法、又は、高倍率で撮影したSEM写真から任意の数の結晶粒子を選択し、その各粒子径を平均して粒子径(以降、「SEM径」と称する。)を算出する方法を挙げることができる。
【0012】
ここで、本発明における「平均粒子径」とは、チャバザイト型ゼオライトの一次粒子の粒子径である。本発明のチャバザイト型ゼオライトは一次粒子が大きく、凝集していない。したがって、平均粒子径は微細な一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径とは異なるものである。ゼオライトの粒子径が、一次粒子の粒子径であるか、若しくは、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径であるかは、例えばSEMによる粒子の観測により確認することができる。
【0013】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは銅(Cu)が担持さている。銅が担持されているとは、チャバザイト型ゼオライトが、そのイオン交換サイトに銅を有することである。
【0014】
チャバザイト型ゼオライトは、NOx還元触媒、特にアンモニアを還元剤として用いるNOx還元触媒(一般にSCR触媒といわれる選択的接触還元“Selective catalytic reduction”の略;以降、SCR触媒と表記する。)に用いられるゼオライトとして知られている。
【0015】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは銅を担持することにより、即ち、そのイオン交換サイトに銅を有することによりチャバザイト型ゼオライトと銅の相互作用が発現する。これにより、本発明のチャバザイト型ゼオライトを使用したSCR触媒は優れた触媒活性を有し、優れたNOx還元除去効率(NOx還元率、NOx浄化率、Nox還元の効率、NOx除去効率ともいう)を有する。
【0016】
また、本発明のチャバザイト型ゼオライトは銅のアルミニウムに対する原子割合が0.15〜0.30であることが好ましく、0.15〜0.25であることがより好ましく、0.2〜0.24であることが更に好ましい。
【0017】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、その重量に対する銅の割合が、1.1〜2.4%であることが好ましく、1.2〜2.0%であることがより好ましく、1.6〜1.9%であることが更に好ましい。チャバザイト型ゼオライトの重量に対する銅の割合は、銅のアルミニウムに対する原子割合が増加するに従って、増加する。そのため、チャバザイト型ゼオライトの重量に対する銅の割合がこの範囲であることで、本発明のチャバザイト型ゼオライトが一層優れたNOx還元除去効率を有する傾向にある。
【0018】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、H型チャバザイト型ゼオライト及びNH型チャバザイト型ゼオライトの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0019】
型チャバザイト型ゼオライトとは、イオン交換サイトに銅及びプロトン(H)を有するチャバザイト型ゼオライトであり、イオン交換サイトが銅及びプロトン(H)のみからなるチャバザイト型ゼオライトであることが好ましい。また、NH型チャバザイト型ゼオライトとはイオン交換サイトに銅及びプロトン(NH)を有するチャバザイト型ゼオライトであり、イオン交換サイトが銅及びプロトン(NH)のみからなるチャバザイト型ゼオライトであることが好ましい。チャバザイト型ゼオライトのイオン交換サイトがこれらのイオンとなることで、NOx還元除去触媒として使用した際の触媒活性が高くなりやすい。
【0020】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、以下の方法で製造することができる。
【0021】
すなわち、本発明のチャバザイト型ゼオライトは、水、シリカ原料、アルミナ原料、アルカリ成分、及び構造指向剤から成る原料組成物を結晶化させて得られるチャバザイト型ゼオライトに銅を担持することで製造することができる。
【0022】
本発明に係るチャバザイト型ゼオライトの原料はシリカ源、アルミナ源、アルカリ源、構造指向剤と水から基本的に構成される原料組成物からなることが好ましい。また、原料組成物に種晶などの結晶化促進作用を有する成分を添加しても良い。
【0023】
シリカ源として、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができる。
【0024】
アルミナ源として、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウムなどを用いることができる。シリカ源及びアルミナ源は他の成分と十分均一に混合できる形態のものが望ましい。
【0025】
アルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、アルミン酸塩及び珪酸塩中のアルカリ成分、アルミノシリケートゲル中のアルカリ成分などを用いることができる。
【0026】
構造指向剤(以降、「SDA」と表記する)としては、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩;及びN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3−キヌクリジルアンモニアイオン、またはN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネイト塩及び硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0027】
特に、SDAとしてN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0028】
本発明に係るチャバザイト型ゼオライトは、SDA/SiOモル比が0.05以上0.13未満、HO/SiOモル比が5以上30未満の原料組成物から製造することが好ましい。
【0029】
SDA/SiOモル比が0.13未満とすることで、結晶の平均粒子径が1.5μm以上のチャバザイト型ゼオライトが得られやすくなる。またSDAは高価であるため、SDA/SiOモル比を0.13未満とすることは工業的にも好ましい。一方、SDA/SiOモル比が0.05以上では、チャバザイト型ゼオライトの結晶化が促進され、副生物(不純物)が生成しにくくなる。
【0030】
O/SiOモル比が30未満であると、収量高くなりやすく、工業的に有利となる。一方、5以上では、原料組成物の粘度が増大しにくく、工業的な製造が容易となる。またいずれの場合にも副生物(不純物、未反応物の残存)が発生しにくくなる。
【0031】
本発明に係るチャバザイト型ゼオライトの原料組成物のSiO/Alモル比としては、16以上100以下が好ましい。SiO/Alモル比がこの範囲であることで、SiO/Alモル比が15以上50以下のチャバザイト型ゼオライトの合成が容易となる。
【0032】
原料組成物のOH/SiOモル比は0.1以上0.9未満が好ましい。より好ましくは0.15〜0.5である。OH/SiOモル比は水酸イオン量の指標であり、これが0.1以上であるとゼオライトの結晶化が進行し易くなり、また0.9未満の場合はシリカ成分の溶解が抑制される。そのため、本発明に係るSiO/Alモル比と粒子径を有するチャバザイト型ゼオライトが得られ易くなる。
【0033】
本発明に係るチャバザイト型ゼオライトの製造には、鉱化作用を有するアルカリ金属イオンとして、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも1種を存在させて、原料組成物を結晶化させることが好ましい。これらのアルカリ金属イオンが含まれる場合、原料組成物のSDA/SiOモル比が0.13未満において結晶化の進行が促進されやすくなるだけでなく、また副生物(不純物結晶)が生成し難くなる。更には本発明に係る平均粒子径が1.5μm以上の本発明に係るチャバザイト型ゼオライトが得られ易くなる。また、経済合理性の観点から、Kイオンを存在させて結晶化させることがより好ましい。
【0034】
水、シリカ原料、アルミナ原料、アルカリ成分、及びSDAから成る原料組成物を密閉式圧力容器中で、100〜200℃の任意の温度で、十分な時間をかけて結晶化させることにより本発明に係るチャバザイト型ゼオライトを製造することが好ましい。
【0035】
結晶化の際、静置した状態で原料組成物を結晶化しても良いが、原料組成物が攪拌混合された状態で結晶化することが好ましい。結晶化終了後、十分放冷し、固液分離、十分量の純水で洗浄し、100〜150℃の任意の温度で乾燥してチャバザイト型ゼオライトが得られる。
【0036】
結晶化後、得られたチャバザイト型ゼオライトは細孔内にSDA及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方(以下、残留SDA等と表記する)を含有している。そのため、必要に応じてこれらを除去することができる。
【0037】
本発明に係る残留SDA等の除去処理は、酸性溶液や本発明に係る分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理などにより行うことができ、これらの処理を組合せた方法により行っても良い。更には、ゼオライトのイオン交換能を利用して、チャバザイト型ゼオライトをH型(プロトン型、H型ともいう)やNH型(アンモニア型、HN型ともいう)に変換して用いることもでき、その方法は公知の技術を採用することができる。
【0038】
本発明の製造方法では、得られたチャバザイト型ゼオライトに銅を担持させる。銅の担持方法として、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法、又は物理混合法の方法を採用することができる。担持に用いる銅の原料としては、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物又は複合酸化物など可溶性、不溶性のものがいずれも使用できる。
【0039】
銅を担持する方法としては、例えば、チャバザイト型ゼオライトに対し、0.3倍等量以上0.6倍等量未満の割合の酢酸銅一水和物を用いて、イオン交換法で担持させることが挙げられる。これにより、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.15〜0.30のチャバザイト型ゼオライトを得ることができる。
【0040】
さらに、チャバザイト型ゼオライトに対し、0.3倍等量以上0.6倍等量未満の割合の硝酸銅三水和物を用いて、含浸法で担持させることが挙げられる。これにより、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.15〜0.30のチャバザイト型ゼオライトを得ることができる。
【0041】
ここで、ゼオライト中のアルミニウムに対する担持される銅の存在割合が原子比で0.5に相当する量の銅を含む原料を1倍等量と定義している。
【0042】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、NOx還元除去触媒、特にSCR触媒として優れた触媒活性を有する。更には、本発明のチャバザイト型ゼオライトは、水熱耐久処理後であっても触媒活性に優れたSCR触媒として使用することができる。特に、本発明のチャバザイト型ゼオライトは、水熱耐久処理後であっても、150℃程度の低い温度環境下における触媒活性に優れたSCR触媒として使用することができる。
【0043】
本発明でいう水熱耐久処理とは、水蒸気を10容量%含む空気流通下において温度900℃、20時間、ガス流量/ゼオライト容量比100倍/分で処理することをいう。
【0044】
従来からSCR触媒は水熱耐久処理の性能で評価されることが一般的であるが、その水熱耐久処理としては、特に規格化されたものはない。上記の水熱耐久試験条件はSCR触媒の水熱耐久処理条件として一般的に用いられる条件の範疇であり、特に特殊な条件ではない。
【0045】
なお、水熱耐久処理後のSCR触媒における反応温度150℃でのNOx還元率は、SCR触媒で重要とされる低温活性の指標とすることができる。同様に、水熱耐久処理後のSCR触媒における反応温度500℃でのNOx還元率はSCR触媒で重要とされる高温活性の指標とすることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば以下の効果を奏する。
(1)水熱耐久処理の後に、150℃において高い触媒活性を持続する窒素酸化物除去触媒を提供する事ができる。
(2)水熱耐久処理の後に、500℃において高い触媒活性を持続する窒素酸化物除去触媒を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1乃至3及び比較例1乃至2の方法に従い製造されたチャバザイト型ゼオライトサンプルについて、NOx除去効率(%)と反応温度との関係を表したグラフである。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
尚、各測定は以下に示した方法によって実施した。
【0050】
(平均粒子径の測定方法)
平均粒子径の測定は、二通りの方法で行った。
(1)チャバザイト型ゼオライトに純水を加え、固形分1%のスラリーとし、超音波分散を2分間施した後にレーザー回折散乱法による粒子径分布測定を行うことにより、「50%粒子径」を求めた。
(2)5000倍の倍率で撮影したSEM写真から任意の50個の結晶粒子を選択し、その各粒子径を平均して粒子径を算出する方法により「SEM径」を求めた。
【0051】
(ICP組成分析方法による銅のアルミニウムに対する原子割合の算出方法)
60%濃硝酸10mlとフッ酸10mlを500mlのメスフラスコに入れ、純水で標線に合わせて洗浄液を調製した。チャバザイト型ゼオライト30mgを100mlのメスフラスコに入れ、調製した洗浄液で標線に合わせてICP分析液とした。
【0052】
ICP組成分析を行って得られたCuのモル濃度をAlのモル濃度で割り、銅のアルミニウムに対する原子割合とした。
【0053】
(窒素酸化物還元効率の測定方法)
以下の条件のガスを所定の温度で接触させた場合のNOx還元率を測定した。SCR触媒は一般的に還元分解するNOxガスと還元剤のアンモニアを1:1で含有するガスを用いて評価することが一般的である。本発明で用いたNOx還元条件は、通常SCR触媒のNOx還元性を評価する一般的な条件の範疇に入るものであり、特に特殊な条件ではない。
【0054】
本発明の評価で採用した窒素還元条件:
処理ガス組成 NO 200ppm
NH 200ppm
10容量%
O 3容量%
残り Nバランス
処理ガス流量 1.5リットル/分
処理ガス/触媒容量比 1000/分
【0055】
実施例1
銅を担持するゼオライトを、特開2010−168269号公報に記載の方法で合成した。すなわち、N,N,N−トリメチルアダマンタン水酸査化物13%水溶液、純水、水酸化カリウム48%水溶液、及び、無定形のアルミノシリケートゲルを混合し、原料組成物を得た。得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、純水で洗浄した後、110℃で乾燥して合成を得た。
【0056】
得られた合成物を、NH交換した後に500℃で1時間加熱し、H型ゼオライトを得た。得られたH+型ゼオライトのX線回折パターンを以下の表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
このX線回折パターンは特開2010−168269号公報の表1のX線回折パターンと同一であり、当該H型ゼオライトはH型チャバサイト型ゼオライトであることが確かめられた。
【0059】
純水200gに酢酸銅一水和物2gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。作製した酢酸銅水溶液に、SiO/Alモル比が24.6であって、50%粒子径が6.1μmであり、SEM径が2.28μmである当該H型チャバザイト型ゼオライト20.86g(600℃で1時間乾燥した時の重量;以下、dry baseと表記する)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌後ヌッチェで固液分離した。固液分離後の固層を温純水400gで洗浄し、110℃で一晩乾燥してチャバザイト型ゼオライトを製造した。得られたチャバザイト型ゼオライトはICP組成分析の結果、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.20であった。
【0060】
得られたチャバザイト型ゼオライトの乾燥粉末を加圧成形後、粉砕して12〜20メッシュに整粒した。整粒したゼオライト3mlを常圧固定床流通式反応管に充填し、水分を10体積%含有させた空気を300ml/minで流通しながら、900℃で1時間処理することにより水熱耐久処理をした。
【0061】
水熱耐久処理を施した触媒を含む定常状態の反応器に、200ppmのNO、200ppmのNH、10%O、3%HOのNでバランスした供給ガス混合物を加えることにより、チャバザイト型ゼオライトのNOx還元の効率を測定した。150℃〜500℃の温度範囲にわたり、空間速度60,000hr−1で、反応を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0062】
実施例2
硝酸銅三水和物1.36gを純水6.3gに溶解した。調製した硝酸銅溶液を、実施例1で製造した、SiO/Alモル比が24.6であって、50%粒子径が6.1μmであり、SEM径が2.28μmである実施例1で製造したH型チャバザイト型ゼオライト20.86g(dry base)上に滴下し、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥し、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成してチャバザイト型ゼオライトを製造した。得られたチャバザイト型ゼオライトはICP組成分析の結果、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.21であった。
【0063】
次に、実施例1と同様の方法で、チャバザイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒して酢熱耐久処理した後、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0064】
実施例3
ゼオライトとしてNH型チャバザイト型ゼオライトを用いる以外は実施例2と同様の方法でチャバザイト型ゼオライトを製造した。得られたチャバザイト型ゼオライトはICP組成分析の結果、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.20であった。
【0065】
次に、実施例1と同様の方法で、チャバザイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒して水熱耐久処理した後、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0066】
実施例4
純水200gに酢酸銅一水和物3gを溶解して調製した酢酸銅水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でチャバザイト型ゼオライトを製造した。次に、実施例1に同様の方法で、水熱耐久処理、及び、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0067】
実施例5
純水200gに酢酸銅一水和物1.3gを溶解して調製した酢酸銅水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でチャバザイト型ゼオライトを製造した。次に、実施例1に同様の方法で、水熱耐久処理、及び、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0068】
実施例6
銅を担持するゼオライトとして、SiO/Alモル比が17.0、SEM径が1.70μmであるH型チャバザイト型ゼオライトを用いたこと、及び、純水200gに酢酸銅一水和物1.8gを溶解して調製した酢酸同水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にしてチャバザイト型ゼオライトを製造した。次に、実施例1に同様の方法で、水熱耐久処理、及び、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0069】
実施例7
純水200gに酢酸銅一水和物2.4gを溶解して調製した酢酸銅水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でチャバザイト型ゼオライトを製造した。次に、実施例1に同様の方法で、水熱耐久処理、及び、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0070】
実施例8
純水200gに酢酸銅一水和物1.0gを溶解して調製した酢酸銅水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でチャバザイト型ゼオライトを製造した。次に、実施例1に同様の方法で、水熱耐久処理、及び、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0071】
比較例1
銅を担持するゼオライトとして、US4544538号公報に記載されたゼオライトを合成した。即ち、N,N,N−トリメチルアダマンタン水酸化物13%水溶液17.9gに、純水27.2g、水酸化ナトリウム48%水溶液0.9g、水酸化アルミニウム0.29g、東ソーシリカ製の無定形シリカ粉末(商品名:ニップシールVN−3)3.7gを加えよく混合して、原料組成物を得た。得られた原料組成物の組成はSiO:0.036Al:0.20TMADAOH:0.10NaO:44HOであった。
【0072】
この原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。
【0073】
得られた合成物のX線回折図からのX線回折パターンはUS4544538号公報に記載のX線回折パターンと同一の為、当該ゼオライトはチャバサイト型ゼオライトであることが確かめらた。
【0074】
このチャバサイト型ゼオライトは、実施例1乃至3のチャバサイト型ゼオライトと比較して、50%粒子径及びSEM粒子径が1.5μm未満と小さい。
【0075】
純水200gに酢酸銅一水和物5gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。作製した酢酸銅水溶液に、SiO/Alモル比が23.3であって、50%粒子径が1.25μmであるH型チャバザイト型ゼオライト20.86g(dry base)を投入した後、200rpmで30℃において2時間攪拌後ヌッチェで固液分離した。固液分離後の固層を温純水400gで洗浄し、110℃で一晩乾燥して触媒を製造した。得られた触媒はICP組成分析の結果、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.34であった。
【0076】
次に、実施例1に概説したものと同様の方法で、触媒の加圧成形し、整粒して耐久処理後、NOx還元の効率測定を行った。
【0077】
比較例2
純水200gに酢酸銅一水和物6gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製する以外は、比較例1と同様の方法で触媒を製造した。得られた触媒はICP組成分析の結果、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.41であった。
【0078】
次に、実施例1に概説したものと同様の方法で、触媒の加圧成形し、整粒して耐久処理後、NOx還元の効率測定を行った。
【0079】
比較例3
純水200gに酢酸銅一水和物2.0gを溶解した酢酸銅水溶液を使用したこと以外は、比較例1と同様の方法でチャバザイト型ゼオライトを製造した。得られたチャバザイト型ゼオライトのSiO/Alモル比が23.3、50%粒子径が1.23μmであり、SEM径が0.45μmであり、ICP組成分析の結果、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.23であった。
【0080】
次に、実施例1に同様の方法で、水熱耐久処理、及び、NOx還元の効率測定を行った。得られたチャバザイト型ゼオライトの評価結果及びNOx還元の効率測定の結果を表2に示す。
【0081】
図1は、実施例1〜3及び比較例1〜2のサンプルについて、NOx浄化率の温度との関係を示したグラフである。
【0082】
又、実施例1〜8及び比較例1〜3のサンプルについて、NOx浄化率の結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
この表から、実施例1乃至9のサンプルと比較例1乃至3のサンプルと比較すると、1水熱耐久処理後の150℃NOx浄化率において、又は、500℃の水熱耐久処理後のNOx浄化率が実施例1乃至8のサンプルの方が高いことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、優れたNOx還元除去触媒とすることができる。さらに、これを用いた本発明のSCR触媒は、還元剤の存在下で自動車排ガス中のNOxを浄化することに利用できる。
【符号の説明】
【0086】
▲:実施例1
◆:実施例2
■:実施例3
△:比較例1
□:比較例2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であり、銅が担持されていることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
【請求項2】
銅のアルミニウムに対する原子割合が0.15〜0.30であることを特徴とする請求項1に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項3】
チャバザイト型ゼオライトがH型チャバザイト型ゼオライトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項4】
チャバザイト型ゼオライトがNH型チャバザイト型ゼオライトである請求項1乃至3のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする窒素酸化物還元触媒。
【請求項6】
請求項5に記載の触媒を使用して、窒素酸化物を還元除去する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116747(P2012−116747A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245699(P2011−245699)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】