説明

銅イオンの検出用試薬および検出方法

【課題】導電性ポリマーを用いた重金属の検出用試薬および導電性ポリマーを用いた重金属の検出用試薬検出方法を提供する。
【解決手段】スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系ポリマー(A)を用いた銅イオンの検出用試薬およびスルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系ポリマー(A)を用いて銅イオンの検出する。種々の有害金属イオンの中から銅イオンを選択的に、且つ、簡便に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマーを用いた重金属の検出用試薬および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の重金属又は遷移金属イオンと反応して呈色する、呈色試薬として種々のものが開発され、市販されている。例えば、ジアンチピリルメタン、メチルチモールブルー(いずれも商品名、同仁堂社製)などがあり、これらはBi、Ca、Cd、Hgなどのイオン重量分析試薬、あるいは比色試薬として使用しうるものである。しかしながら、これらの中で、水銀選択的呈色試薬に類するものは殆んどない。また、水銀に対する呈色試薬としてアゾジアニリン化合物が知られているが、水銀イオン含有水溶液と接触後、時間の経過とともにスペクトルが大きく変化し(時間依存性が大きく)一定の安定したスペクトルが迅速に得られないという難点がある。一方、金属イオンの中でも、水銀、鉛などは、特に人体に有害な金属イオンであり、これらの金属イオンに対する高感度な測定用試薬の開発が望まれている。
【0003】
これらの課題を解決するために重金属又は遷移金属イオンの中で、特に、水銀、鉛又は銅イオンを検出、測定する方法が提案されている。この方法によると、有機溶媒中の水銀、鉛又は銅イオンを呈色反応にて検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−19786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、選択的に単一イオンのみを検出する点で問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、種々の有害金属イオンの中から銅イオンを選択的に、且つ、簡便に検出できる方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、スルホン酸基やカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系可溶性ポリマー類が選択的に銅イオンにより化学変化することを見出して本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種々の有害金属イオンの中から銅イオンを選択的に、且つ、簡便に検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0010】
<検出用試薬>
本発明の検出用試薬は、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系ポリマー(A)を用いた検出用試薬である。
【0011】
<スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系ポリマー(A)>
上記ポリマー(A)は、スルホン酸基(−SOH)および/またはカルボキシ基(−COOH)を有するものであれば特に限定されず、また、上記ポリマー(A)において、スルホン酸基、カルボキシ基は、それぞれ、酸の状態(−SOH、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO、−COO)で含まれていてもよい。
【0012】
上記ポリマー(A)としては、例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報に示された水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。
なお、本明細書において、「水溶性」とは、25℃の水に0.1g程度以上均一に溶解することを意味する。
【0013】
具体的には、上記ポリマー(A)は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位(以下、繰り返し単位(a1)という。)を有することが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
式(3)中、R〜R10は、各々独立に、−H、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、−F、−Cl、−Brまたは−Iであり、R〜R10のうちの少なくとも一つは酸性基である。
【0016】
ここで、「酸性基」は、スルホン酸基またはカルボキシ基を示す。つまり、式(3)中、R〜R10のうちの少なくとも一つは、−SO、−SOH、−COOHまたは−COOである。
【0017】
製造が容易な点では、R〜R10のうち、いずれか一つが炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つが−SOまたは−SOHであり、残りがHであるものが好ましい。
【0018】
上記の中で、特に、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)が溶解性の観点で好ましい。
【0019】
上記ポリマー(A)中、繰り返し単位(a1)の割合は、当該成分(A)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、20モル%以上100モル%以下が好ましく、50モル%以上100モル%以下がより好ましく、100モル%が如何なるpHを示す水溶液にも溶解できるためさらに好ましい。
上記ポリマー(A)は、1分子中に、繰り返し単位(a1)を10以上有することにより、銅イオンとの相互作用が大きくなるため、好ましい。
【0020】
上記ポリマー(A)の質量平均分子量は、5000以上1000000以下が好ましく、5000以上20000以下がより好ましい。成分(A)の質量平均分子量が5000以上であれば、導電性、成膜性および膜強度に優れる。成分(A)の質量平均分子量が1000000以下であれば、溶媒への溶解性に優れる。
上記ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)である。
【0021】
上記ポリマー(A)は化学重合または電解重合などの各種合成法によって得られるポリマーを用いることができるが、例えば、本発明者らが提案した特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成方法を適用することができる。
【0022】
<検出方法>
本発明の検出方法としては、重金属を含む溶液中に、上記ポリマー(A)を直接加える、基材表面に上記ポリマー(A)を含む膜を形成した素子を形成して、検出に用いる方法があげられる。
【0023】
素子の形成方法としては、特に限定されないが、上記ポリマー(A)単独の場合は、通常の錠剤成型器などを用いて圧力を加えてペレット状にしたもの、上記ポリマー(A)をフィルム状にしたものなどを使用することができる。
【0024】
例えば、基板の少なくとも一つの面上に、上記ポリマー(A)を含有する高分子膜を形成させてなる導電体を用いる場合であり、先ず溶媒中に、上記ポリマー(A)および/必要により任意の高分子化合物を溶解した導電性組成物を調製し、これを基材の少なくとも一つの面に塗布して使用する方法が用いられる。
【0025】
また、上記導電性組成物に使用できる任意の高分子化合物としては、上記の溶媒に溶解または分散可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には水溶性高分子化合物または水系でエマルジョンを形成する高分子化合物が好ましく用いられる。高分子化合物を含有することにより導電性高分子膜の強度、基材密着性、耐摩擦性、耐水性、耐溶剤性などの膜質が向上する。
【0026】
上記水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアマイド、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアマイド類、ポリビニルピロリドン類、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリル/スチレン樹脂、水溶性酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性スチレン/マレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂および/これらの共重合体等が挙げられる。
【0027】
水系でエマルジョンを形成する高分子化合物の具体例としては、水系アルキド樹脂、水系メラミン樹脂、水系尿素樹脂、水系フェノール樹脂、水系エポキシ樹脂、水系ポリブタジエン樹脂、水系アクリル樹脂、水系ウレタン樹脂、水系アクリル/スチレン樹脂、水系酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系スチレン/マレイン酸共重合樹脂、水系フッ素樹脂および/これらの共重合体等が挙げられる。
【0028】
上記高分子化合物の使用割合は特に限定されないが、通常は溶媒100質量部に対して0質量部以上400質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上300質量部以下である。
【0029】
上記ポリマー(A)および/溶媒、あるいは上記ポリマー(A)、高分子化合物および/溶媒からなる導電性組成物を基材に塗布し導電性高分子膜を形成させることにより検出素子を得ることができる。
【0030】
本発明の検出用呈色試薬は、溶液中に含まれる有害金属物質である銅イオンを、上記ポリマー(A)との化学変化による呈色反応によって検出することにより、銅イオンの呈色試薬として用いることができる。
【0031】
すなわち、上記検出用呈色試薬は、銅イオンと相互作用することで、色の変化を生じ、測定する銅イオンを、選択的に、安定にかつ定量的に測定できるものと考えられる。なお、当該色の変化は、目視または吸光度測定により、検出、測定することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<製造例1、導電性重合体(A−1)>
ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)(A−1)の合成
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを25℃で4mol/Lのアンモニア水溶液に攪拌溶解し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、重合体粉末15gを得た。この重合体の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。
【0034】
<評価方法>
実施例1、比較例1−18
成分(A)として導電性重合体(A−1)0.1質量部を水1000質量部に溶解させた溶液に、表−1に示す金属0.001質量部を加え、室温で18時間攪拌した後の色調変化を目視および紫外可視吸収スペクトルにて480nmの吸収を測定した。
【0035】
なお、紫外可視吸収スペクトルは以下の条件にて測定を行った。
測定装置:(株)島津製作所製 UV−3100
光路長10mmの石英セルを用いた。
【0036】
【表1】

【0037】
上記結果から明らかなように、本発明によれば、銅イオンのみを、選択的に検出可能であること確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系ポリマー(A)を用いた銅イオンの検出用試薬。
【請求項2】
スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する酸性基置換のアニリン系ポリマー(A)を用いた銅イオンの検出方法。