説明

銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス及びその光起電デバイスを作製する方法

銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスが、銅、インジウムおよびセレンを含むCISをベースとする太陽光吸収体層を備える。このCISをベースとする光起電デバイスはさらに、シリコーン組成物から形成されるシリコーン層と、金属箔層とを備える基板とを備える。この基板は、シリコーン層および金属箔層の存在により、可撓性であると共に、デバイスの最大効率が得られるよう500℃を超えるアニール温度に十分に耐えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、共に2006年4月18日に出願した米国仮特許出願第60/792,770号および第60/792,852号の優先権およびすべての利益を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は一般に、銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイスおよびこの光起電デバイスの製造法に関する。より詳細には、本発明はポリマー層を含む基板を備える光起電デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
〔本発明の背景〕
太陽光および他の光源から電気を発生させるための銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスは周知である。これらCISをベースとする光起電デバイスは、デバイスが光源にさらされる任意の用途では電気を提供するために有用である。その結果、CISをベースとする光起電デバイスの潜在的用途は広範囲に及ぶ。
【0004】
これまで、CISをベースとする光起電デバイスは、汎用性(versatility)と効率との間の逆相関のために、それらCISをベースとする光起電デバイスを使用することができる用途が限られていた。より具体的には、費用対効果を高くするためには、光起電デバイスが、電気の単位当たりコストを、電池などの従来の電源と比肩するか又はそれよりも低くする効率で発電しなければならない。適切な効率を有するCISをベースとする光起電デバイスを作製するためには、基板上にCIS、すなわち銅インジウムガリウム二セレン化物(CIGS)層を備えるデバイスに、500℃を超える温度で、典型的には約575℃の温度で処理またはアニールを施す。
【0005】
これまで、500℃を超えるアニール温度では分解(cracking)および機械的故障に対して十分に耐えることができないため、CISをベースとする光起電デバイスにおける基板に有用であることが証明されている材料はほとんどない。様々なタイプのガラスが主に基板として使用されるが、ガラスはデバイスの重量を増し、また通常剛性である。ガラス基板の剛性により、デバイスは、可撓性を必要とする用途、あるいはガラス基板を破損するか又はそうでなければ損傷を与える可能性がある鈍力にデバイスがさらされることがある用途には不適切となる。デバイスの限られた潜在的用途に加えて、ガラス基板では、デバイスを個別に作製することが必要となる。より具体的には、仮に適切な可撓性基板を発見した場合、生産効率を大きく増大させ、またデバイスの作製コストを下げることになるデバイスのロールツーロール(roll-to-roll)作製が可能となりうる。基板の重量の減少はまた、明白な理由によって有利にもなるだろう。
【0006】
ポリイミドから形成されるある種の可撓性基板が、CISをベースとする光起電デバイスで使用するために最近開発されている。ポリイミド基板により、過度の重量および非可撓性(inflexibility)についてのガラス基板の欠陥が取り除かれるが、ポリイミド基板は425℃を超える温度では激しく劣化しやすく、その結果デバイスの破損および機械的故障が生じる。したがって、ポリイミド基板を備えるデバイスを、デバイスの効率を最大限に引き出すように適切に形成することができない。
【特許文献1】米国仮出願第60/792,770号
【特許文献2】米国仮出願第60/792,852号
【特許文献3】米国特許第3419593号
【特許文献4】米国特許第4766176号
【特許文献5】米国特許第5017654号
【特許文献6】米国特許第4510094号
【特許文献7】米国特許第5496961号
【特許文献8】米国特許第4530879号
【特許文献9】米国特許第487585号
【特許文献10】米国特許第5194649号
【特許文献11】米国特許第4260780号
【特許文献12】米国特許第4314956号
【特許文献13】米国特許第4276424号
【特許文献14】米国特許第4324901号
【特許文献15】米国特許第5441897号
【特許文献16】米国特許第4335226号
【特許文献17】米国特許第6537845号
【非特許文献1】Guoら(Chemistry of Materials、1998、10、531〜536頁)
【非特許文献2】Ilvydas Matulionis、Sijin Han、Jennifer A. Drayton、Kent J. PriceおよびAlvin D. Compaan、Mat. Res. Soc. Symp. Proc. Vol. 668、p.H8.23.1、April (2001)
【非特許文献3】Shafarmanら、the Space Photovoltaic Research and Technology Conference、NASA Glenn、クリーブランド、オハイオ州、September 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラスまたはポリイミド基板を備える既存のCISをベースとする光起電デバイスには欠陥があるため、可撓性であると共に、デバイスの最大効率を得るために500℃を超えるアニール温度に十分に耐えることができる基板を備える、CISをベースとする光起電デバイスを提供する余地がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスを提供する。このCISをベースとするデバイスは、銅、インジウムおよびセレンを含むCISをベースとする太陽光吸収体層を備える。CISをベースとする光起電デバイスはさらに、シリコーン組成物から形成されるシリコーン層と金属箔層とを含む基板を備える。この基板は、シリコーン層および金属箔層の存在により、可撓性であると共に、デバイスの最大効率を得るための500℃を超えるアニール温度に十分に耐えることができる。
【0009】
添付の図面に関連して考慮される場合以下の詳細な説明を参照することによって本発明がより良く理解されるため、本発明の他の利点が容易に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1、図2および図4を参照すると、本発明は、基板106を備える銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイス104を提供する。この基板は、シリコーン組成物から形成されるシリコーン層306および金属箔層312を含む。CISをベースとするデバイス104は、光などの入射電磁エネルギー108を電流に変換するように動作可能である。CISをベースとする光起電デバイス104を複数備えるアレイ102を提供することができる。一実施形態においては、アレイ102において基板106上にCISをベースとする光起電デバイス104をモノリシックに集積する。アレイ102を使用して、アレイ102に降り注ぐ電磁エネルギー108から電流を発生させることができる。アレイ102によって生じた電流は端子110を介してアクセスすることができ、様々な目的のために使用することができ、たとえばアレイ102を使用して、宇宙機または高高度飛行船に電力を提供することができる。
【0011】
シリコーン層306は、基板106に、可撓性と、実質的な亀裂を生じることなく500℃を超えるアニール温度に耐える十分な能力とをもたらす。さらに、このシリコーン組成物は、硬化すると、高い電気抵抗率を通常有する。その結果、以下でさらに詳細に説明するように、最大化された効率を有するCISをベースとする光起電デバイス104を作製することができ、基板106の可撓性により非平面用途においてもさらに使用することができる。
【0012】
本発明の一実施形態においては、上記のシリコーン組成物は、シリコーン樹脂(A)と、有機ケイ素化合物(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物としてさらに定義される。シリコーン樹脂(A)は、ケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を有する。シリコーン樹脂(A)は通常、R2SiO3/2単位、すなわちT単位、および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を、R1R22SiO1/2単位、すなわちM単位、および/またはR22SiO2/2単位、すなわちD単位、と組み合わせて含む共重合体であり、式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル基またはC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であってこれらは共に脂肪族の不飽和がなく、また、R2は、R1、アルケニル基、または水素である。たとえば、このシリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であることができる。本明細書中で使用する用語「脂肪族の不飽和がない」とは、ヒドロカルビルまたはハロゲン置換ヒドロカルビル基が、脂肪族の炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含まないことを意味する。
【0013】
R1で表されるC1〜C10のヒドロカルビル基およびC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基は、より典型的には1〜6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含む非環式のヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、枝分かれ構造または非分岐構造を有することができる。R1で表されるヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのシクロアルキル基;フェニルやナフチルなどのアリール基;トリルやキシリルなどのアルカリール(alkaryl)基;ならびにベンジルやフェネチルなどのアラルキル基が含まれるが、これらに限定されない。R1で表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、および2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
R2で表されるアルケニル基は、シリコーン樹脂内で同一であっても異なっていてもよく、通常2〜10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子を有し、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニルおよびオクテニルで例示されるが、これらに限定されない。一実施形態においては、R2は主にアルケニル基である。この実施形態においては、シリコーン樹脂中のR2で表される基の通常少なくとも50mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも80mol%がアルケニル基である。本明細書中で使用する、R2中のアルケニル基のmol%は、シリコーン樹脂中のR2基の総モル数に対するその樹脂中のケイ素結合アルケニル基のモル数の比率に100を乗じたものとして定義される。別の実施形態においては、R2は主に水素である。この実施形態においては、シリコーン樹脂中のR2で表される基の通常少なくとも50mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも80mol%が水素である。R2中の水素のmol%は、シリコーン樹脂中のR2基の総モル数に対する樹脂中のケイ素結合水素のモル数の比率に100を乗じたものとして定義される。
【0015】
第1の実施形態によれば、シリコーン樹脂(A)は下記式を有する。
(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R2SiO3/2)y(SiO4/2)z (I)
式中、R1およびR2は、上で説明し例示したとおりであり、w、x、yおよびzはモル分率である。通常、式(I)で表されるシリコーン樹脂は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する。より具体的には、添え字wは、通常0〜0.9、あるいは0.02〜0.75、あるいは0.05〜0.3の値を有する。添え字xは、通常、0〜0.9、あるいは0〜0.45、あるいは0〜0.25の値を有する。添え字yは、通常、0〜0.99、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8の値を有する。添え字zは、通常、0〜0.85、あるいは0〜0.25、あるいは0〜0.15の値を有する。また、比y+z/(w+x+y+z)は通常0.1〜0.99、あるいは0.5〜0.95、あるいは0.65〜0.9である。さらに、比w+x/(w+x+y+z)は通常0.01〜0.90、あるいは0.05〜0.5、あるいは0.1〜0.35である。
【0016】
R2が主にアルケニル基である場合、上記式(I)で表されるシリコーン樹脂の具体例には下記式の樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(Vi2MeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(MeSiO3/2)0.25(PhSiO3/2)0.50、(ViMe2SiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.1、および(Vi2MeSiO1/2)0.15(ViMe2SiO1/2)0.1(PhSiO3/2)0.75
上記式中、Meはメチル、Viはビニル、Phはフェニルであり、丸括弧の外の数字の添え字は、式(I)について上で説明したw、x、y、またはzに対応するモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0017】
R2が主に水素である場合、上記式(I)で表されるシリコーン樹脂の具体例には下記式の樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(HMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(HMeSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.6(MeSiO3/2)0.1、および(Me3SiO1/2)0.1(H2SiO2/2)0.1(MeSiO3/2)0.4(PhSiO3/2)0.4
式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0018】
式(I)で表されるシリコーン樹脂は通常500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(Mn)を有し、この分子量は、小角レーザ光散乱検出器、又は屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準品とを用いる、ゲル浸透クロマトグラフィによって測定される。
【0019】
式(I)で表されるシリコーン樹脂の25℃における粘度は通常0.01〜100,000Pa・s、あるいは0.1〜10,000Pa・s、あるいは1〜100Pa・sである。
【0020】
式(I)で表されるシリコーン樹脂は、29Si NMRによって決定して、ケイ素結合ヒドロキシ基を通常10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満含む。
【0021】
式(I)で表されるシリコーン樹脂を調製する方法は当技術分野で周知であり、これらの樹脂の多くは市販されている。式(I)で表されるシリコーン樹脂は通常、トルエンなどの有機溶媒中でクロロシラン類前駆体の適切な混合物を共加水分解することによって調製される。たとえば、R1R22SiO1/2単位およびR2SiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式R1R22SiClの第1の化合物および式R2SiCl3の第2の化合物(式中R1およびR2は上で説明し例示したとおりである)をトルエン中で共加水分解して、塩酸水溶液と、第1および第2の化合物の水解物であるシリコーン樹脂とを形成することによって調製することができる。これら塩酸水溶液とシリコーン樹脂とを分離し、シリコーン樹脂を水で洗浄して残留酸を除去し、マイルドな縮合触媒の存在下でこのシリコーン樹脂を加熱して、所望の粘度までシリコーン樹脂を「増粘」させる。
【0022】
所望する場合は、シリコーン樹脂を有機溶媒中、縮合触媒でさらに処理して、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を低減させることができる。あるいは、-Br、-I、-OCH3、-OC(O)CH3、-N(CH3)2、NHCOCH3、-SCH3など、塩素基以外の加水分解性基を含む第1または第2の化合物を共加水分解してシリコーン樹脂を形成することができる。このシリコーン樹脂の特性は、第1および第2の化合物の種類、第1および第2の化合物のモル比、縮合度(degree of condensation)、ならびに加工条件に左右される。
【0023】
このヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子と反応することができるケイ素結合水素原子またはケイ素結合アルケニル基を有する架橋剤(B)をさらに含む。この架橋剤(B)は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、あるいは1分子当たり少なくとも平均3個のケイ素結合水素原子を有する。シリコーン樹脂(A)中の1分子当たりのアルケニル基の平均数と、架橋剤(B)中の1分子当たりケイ素結合水素原子の平均数との合計が4個より大きい場合に、架橋が生じることが一般に理解される。架橋剤(B)は、シリコーン樹脂(A)を硬化するのに十分な量で存在する。
【0024】
架橋剤(B)は通常有機ケイ素化合物であり、有機ハイドロジェンシラン、有機ハイドロジェンシロキサンまたはこれらの組合せとしてさらに定義することができる。有機ケイ素シランの構造は、線状であっても、枝分かれしていても、環状であっても、樹脂状であってもよい。非環状のポリシラン類およびポリシロキサン類においては、ケイ素に結合した水素原子(ケイ素結合水素原子)が、末端位に、ペンダント位に、あるいは末端位とペンダント位の両方に位置することができる。シクロシラン類およびシクロシロキサン類は通常3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。
【0025】
この有機ハイドロジェンシランは、モノシランであっても、ジシランであっても、トリシランであっても、またはポリシランであってもよい。R2が主にアルケニル基である場合、本発明の目的に適している有機ハイドロジェンシラン類の具体例には、ジフェニルシラン、2-クロロエチルシラン、ビス[(p-ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4-ジメチルジシリルエタン、1,3,5-トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、およびポリ(メチルシリレン)メチレンが含まれるが、これらに限定されない。R2が主に水素である場合、本発明の目的に適している有機ハイドロジェンシラン類の具体例には、下記式のシラン類が含まれるが、これらに限定されない。
Vi4Si、PhSiVi3、MeSiVi3、PhMeSiVi2、Ph2SiVi2、およびPhSi(CH2CH=CH2)3,
式中、Meはメチル、Phはフェニル、Viはビニルである。
【0026】
この有機ハイドロジェンシランは、下記式を有することもできる。
HR12Si-R3-SiR12H (III)
式中、R1は上で定義し例示したとおりであり、R3は、下記構造から選択される式を有する脂肪族不飽和のないヒドロカルビレン基である。
【0027】
【化1】

式中、gは1〜6である。
【0028】
R1およびR3が上で説明し例示したとおりである式(III)の有機ハイドロジェンシラン類の具体例には、下記構造から選択される式を有する有機ハイドロジェンシラン類が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
【化2】

【0030】
これらの有機ハイドロジェンシラン類を調製する方法は、当技術分野で公知である。たとえば、グリニャール試薬とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応によって、有機ハイドロジェンシラン類を調製することができる。特に、エーテル中で式R3X2の二ハロゲン化アリールをマグネシウムで処理して対応するグリニャール試薬を生成させ、次いで、R1およびR3が上で説明し例示したとおりである式HR12SiClを有するクロロシランでそのグリニャール試薬を処理することによって、式HR12Si-R3-SiR12Hの有機ハイドロジェンシラン類を調製することができる。
【0031】
有機ハイドロジェンシロキサンは、ジシロキサンであっても、トリシロキサンであっても、またはポリシロキサンであってもよい。R2が主に水素である場合に架橋剤(B)としての使用に適している有機シロキサン類の例には、下記式のシロキサン類が含まれるが、これらに限定されない。
PhSi(OSiMe2H)3、Si(OSiMe2H)4、MeSi(OSiMe2H)3、およびPh2Si(OSiMe2H)2
式中、Meはメチル、Phはフェニルである。
【0032】
R2が主にアルケニル基である場合に本発明の目的に適している有機ハイドロジェンシロキサン類の具体例には、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ならびにHMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位、およびSiO4/2単位(式中、Meはメチルである)を含む樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
この有機ハイドロジェンシロキサンは、有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂であってもよい。この有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂は通常、R4SiO3/2単位、すなわちT単位、および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を、R1R42SiO1/2単位、すなわちM単位、および/またはR42SiO2/2単位、すなわちD単位、と組み合わせて含む共重合体であり、式中、R1は上で説明し例示したとおりである。たとえば、この有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂でよい。
【0034】
R4で表される基は、R1またはケイ素結合水素原子を少なくとも1個有する有機シリルアルキル基である。R4で表される有機シリルアルキル基の例には、下記構造から選択される式を有する基が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
【化3】

【0036】
上記式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、添え字nは2〜10の値を有する。有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂中のR4で表される基の通常少なくとも50mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも80mol%が、ケイ素結合水素原子を少なくとも1個有する有機シリルアルキル基である。本明細書中で使用する、R4中の有機シリルアルキル基のmol%は、シリコーン樹脂中のR4基の総モル数に対するその樹脂中のケイ素結合有機シリルアルキル基のモル数の比率に100を乗じたものとして定義される。
【0037】
この有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、通常下記式を有する。
(R1R42SiO1/2)w(R42SiO2/2)x(R4SiO3/2)y(SiO4/2)z (IV)
式中、R1、R4、w、x、y、およびzはそれぞれ、上で定義し例示したとおりである。
【0038】
上記式(IV)で表される有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂の具体例には、下記式の樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.12(PhSiO3/2)0.88
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(PhSiO3/2)0.83
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(MeSiO3/2)0.17(PhSiO3/2)0.66
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10、および
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.08((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)Me2SiO1/2)0.06(PhSiO3/2)0.86
式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、C6H4はパラフェニレン基を示し、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0039】
有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂の具体例には、下記式の樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.12(PhSiO3/2)0.88
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(PhSiO3/2)0.83
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.17(MeSiO3/2)0.17(PhSiO3/2)0.66
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10、および
((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)2MeSiO1/2)0.08((HMe2SiC6H4SiMe2CH2CH2)Me2SiO1/2)0.06(PhSiO3/2)0.86
式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、C6H4はパラフェニレン基を示し、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0040】
式(IV)の有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、上記式(I)で表される式(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R2SiO3/2)y(SiO4/2)zの(a)シリコーン樹脂と、1分子当たり平均2〜4個のケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000未満である有機ケイ素化合物(b)とを含む反応混合物を、(c)ヒドロシリル化触媒と、場合により(d)有機溶媒の存在下で、反応させることによって調製することができ、R1、R2、w、x、y、およびzはそれぞれ、上で定義し例示したとおりである。ただし、シリコーン樹脂(a)は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、(a)中のアルケニル基に対する(b)中のケイ素結合水素原子のモル比は1.5〜5である。シリコーン樹脂(a)は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物中の成分(A)として使用する具体的なシリコーン樹脂と同一であっても、または異なっていてもよい。
【0041】
上述のように、有機ケイ素化合物(b)は、1分子当たり平均2〜4個のケイ素結合水素原子を有する。あるいは、有機ケイ素化合物(b)は、1分子当たり平均2〜3個のケイ素結合水素原子を有する。やはり上述のように、有機ケイ素化合物(b)の分子量は通常1,000未満、あるいは750未満、あるいは500未満である。有機ケイ素化合物(b)は、ヒドロカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基の群から選択することができるケイ素結合有機基をさらに含み、それらは共に脂肪族の不飽和がなく、これはR1について上で説明し例示したとおりである
【0042】
有機ケイ素化合物(b)は、有機ハイドロジェンシランまたは有機ハイドロジェンシロキサンであってもよく、各々は上で詳細に定義し例示した。
【0043】
有機ケイ素化合物(b)は、単一の有機ケイ素化合物であっても、あるいはそれぞれ上で説明した2種またはそれより多くの異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。たとえば、有機ケイ素化合物(B)は、単一の有機ハイドロジェンシラン、2種の異なる有機ハイドロジェンシランの混合物、単一の有機ハイドロジェンシロキサン、2種の異なる有機ハイドロジェンシロキサン類の混合物、または有機ハイドロジェンシランと有機ハイドロジェンシロキサンとの混合物であってもよい。シリコーン樹脂(a)中のアルケニル基に対する有機ケイ素化合物(b)中のケイ素結合水素原子のモル比は、通常1.5〜5、あるいは1.75〜3、あるいは2〜2.5である。
【0044】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウム)あるいは白金族金属を含有する化合物を含めた周知のヒドロシリル化触媒のいずれかであってよい。通常、この白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるその高い活性に基づき、白金である。
【0045】
(c)に適した具体的なヒドロシリル化触媒には、米国特許第3419593号にWillingによって開示されている、塩化白金酸と所定のビニル含有有機シロキサンとの錯体が含まれ、この米国特許のヒドロシリル化触媒を取り上げている部分を参照により本明細書に援用する。このタイプの触媒は、塩化白金酸と1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。
【0046】
ヒドロシリル化触媒は、白金族金属をその表面に有する固体支持体を含む担持ヒドロシリル化触媒であってもよい。たとえば、反応混合物をろ過することによって、式(IV)で表される有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂から担持触媒を都合良く分離することができる。担持触媒の例には、炭素上の白金、炭素上のパラジウム、炭素上のルテニウム、炭素上のロジウム、シリカ上の白金、シリカ上のパラジウム、アルミナ上の白金、アルミナ上のパラジウムおよびアルミナ上のルテニウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するのに十分な量である。通常、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)および有機ケイ素化合物(b)総合重量に基づき、白金族金属を0.1〜1000ppm、あるいは白金族金属を1〜500ppm、あるいは白金族金属を5〜150ppm提供するのに十分な量である。反応速度は白金族金属0.1ppmを下回ると非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属を使用しても、反応速度はさほど増加しないため、不経済である。
【0048】
有機溶媒(d)は、少なくとも1種の有機溶媒を含む。この有機溶媒(d)は、本発明の方法の条件の下で、シリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)、または得られた有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂とは反応しないが、成分(a)、(b)、および有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂と混和性の任意の非プロトン性または双極性非プロトン性有機溶媒であることができる。
【0049】
本発明の目的に適している有機溶媒(d)の例には、脂肪族飽和炭化水素、例えば、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、及びドデカン;脂環式炭化水素、例えば、シクロペンタン及びシクロヘキサン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレン;環状エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンなどの;ケトン類、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK);ハロゲン化アルカン類、例えばトリクロロエタン;ならびにハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、ブロモベンゼンやクロロベンゼン、が含まれるがこれらに限定されない。有機溶媒(d)は、単一の有機溶媒であっても、あるいはそれぞれ上で説明した2種以上の異なる有機溶媒を含む混合物であってもよい。有機溶媒(d)の濃度は、反応混合物の総重量に基づき、通常0〜99%(w/w)、あるいは30〜80%(w/w)、あるいは45〜60%(w/w)である。
【0050】
式(IV)で表される有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂を形成するための反応は、ヒドロシリル化反応に適した任意の標準的な反応器内で行うことができる。適切な反応器には、ガラスのおよびテフロン(登録商標)で内張りしたガラスの反応器が含まれる。通常、この反応器は、撹拌などかき混ぜ(agitation)の手段を備えている。また通常、この反応は、水分のない状態で、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気中で行われる。
【0051】
シリコーン樹脂(a)と、有機ケイ素化合物(b)と、ヒドロシリル化触媒(c)と、任意選択で有機溶媒(d)とは、任意の順序で混ぜ合わせることができる。通常、有機ケイ素化合物(b)とヒドロシリル化触媒(c)は、シリコーン樹脂(a)と任意選択により有機溶媒(d)とを導入する前に混ぜ合わせる。この反応は通常、0〜150℃、あるいは室温(約23±2℃)〜115℃の温度で行う。温度が0℃未満である場合、反応速度は通常非常に遅い。反応時間は、シリコーン樹脂(a)および有機ケイ素化合物(b)の構造、ならびに温度など、いくつかの因子に左右される。反応時間は通常、室温(約23±2℃)〜150℃の温度で1〜24時間である。最適な反応時間は、日常的な実験によって決定することができる。
【0052】
式(IV)で表される有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、分離または精製なしで使用することができるが、この有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、従来の蒸発方法によって有機溶媒(d)の大部分から分離することができる。たとえば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述のような担持触媒である場合、反応混合物をろ過することによって、ヒドロシリル化触媒(c)から有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂を容易に分離することができる。しかしながら、ヒドロシリル化触媒は有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂と混合されたまま残り、ヒドロシリル化触媒(C)として使用してもよい。
【0053】
架橋剤(B)は、単一の有機ケイ素化合物であっても、あるいはそれぞれ上で説明した2種またはそれ以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物であってもよい。たとえば、架橋剤(B)は、単一の有機ハイドロジェンシラン、2種の異なる有機ハイドロジェンシランの混合物、単一の有機ハイドロジェンシロキサン、2種の異なる有機ハイドロジェンシロキサンの混合物、または有機ハイドロジェンシランと有機ハイドロジェンシロキサンとの混合物であってもよい。特に、架橋剤(B)は、架橋剤(B)の総重量に基づき、少なくとも0.5%(w/w)、あるいは少なくとも50%(w/w)、あるいは75%(w/w)の量で式(IV)を有する有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂を含む混合物であってもよく、この架橋剤(B)は有機ハイドロジェンシランおよび/または有機ハイドロジェンシロキサンをさらに含み、後者は上記有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂とは異なる。
【0054】
架橋剤(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)を硬化させる(架橋する)には十分なものである。架橋剤(B)の正確な量は、所望の硬化程度に左右される。架橋剤(B)の濃度は通常、シリコーン樹脂(A)中のアルケニル基1モル当たり、ケイ素結合水素原子(すなわち、ケイ素に結合した水素原子)を0.4〜2モル、あるいはケイ素結合水素原子を0.8〜1.5モル、あるいはケイ素結合水素原子を0.9〜1.1モル提供するのに十分な量である。
【0055】
ヒドロシリル化触媒(C)は、シリコーン樹脂(A)と架橋剤(B)との間の反応を促進する少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を含む。一実施形態において、ヒドロシリル化触媒(C)は、有機ハイドロジェンポリシロキサン樹脂を生成するための上述のヒドロシリル化触媒(c)と同一であってもよい。加えて、ヒドロシリル化触媒(C)は、熱可塑性樹脂にカプセル化された、白金族金属を含むマイクロカプセル化白金族金属含有触媒であってもよい。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒を含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、周囲条件下で長時間、通常数ヶ月またはそれ以上安定であるが、その熱可塑性樹脂の融点または軟化点を上回る温度では比較的急速に硬化する。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびこれら触媒を調製する方法は、米国特許第4766176号およびそこで引用されている文献、ならびに米国特許第5017654号で例示されているように、当技術分野で周知である。ヒドロシリル化触媒(C)は、単一の触媒であっても、構造、形状、白金族金属、錯体配位子、熱可塑性樹脂などの少なくとも1つの特性が異なる2種またはそれ以上の異なる触媒を含む混合物であってもよい。
【0056】
別の実施形態においては、ヒドロシリル化触媒(C)は、少なくとも1種の光活性ヒドロシリル化触媒であってもよい。この光活性ヒドロシリル化触媒は、150〜800nmの波長を有する放射線にさらすとシリコーン樹脂(A)および架橋剤(B)のヒドロシリル化を触媒することができる任意のヒドロシリル化触媒であってもよい。この光活性ヒドロシリル化触媒は、白金族金属または白金族金属を含む化合物を含めた周知のヒドロシリル化触媒のいずれかであってもよい。白金族金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウムが含まれる。通常、この白金族金属は、ヒドロシリル化反応おけるその高い活性に基づき白金である。本発明のシリコーン樹脂において使用するための特定の光活性ヒドロシリル化触媒の適性は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0057】
本発明の目的に適した光活性ヒドロシリル化触媒の具体例には、白金(II)β-ジケトナート錯体、例えば、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘキサンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘプタンジオエート)、白金(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオエート)、白金(II)ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオエート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオエート);(η-シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、例えば、 (Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ-Cp)トリメチル白金、(トリメチルシリル-Cp)トリメチル白金、ここで式中Cpはシクロペンタジエニルを示す;Pt[C6H5NNNOCH3]4、Pt[p-CN-C6H4NNNOC6H11]4、Pt[p-H3COC6H4NNNOC6H11]4、Pt[p-CH3(CH2)x-C6H4NNNOCH3]4、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CN-C6H4NNNOC6H11]2、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CH3O-C6H4NNNOCH3]2、[(C6H5)3P]3Rh[p-CN-C6H4NNNOC6H11]、Pd[p-CH3(CH2)x-C6H4NNNOCH3]2(xが1、3、5、11または17である)などのトリアゼンオキシド-遷移金属錯体;(η-ジオレフィン)(σ-アリール)白金錯体、例えば、(η4-1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η4-1,3,5,7-シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η4-2,5-ノルボルナジエニル)ジフェニル白金、(η4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-ジメチルアミノフェニル)白金、(η4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-アセチルフェニル)白金、(η4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-トリフルオロメチルフェニル)白金など、が含まれるがこれらに限定されない。典型的には、光活性ヒドロシリル化触媒はPt(II)β-ジケトナート錯体であり、より典型的にはこの触媒は白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)である。ヒドロシリル化触媒(C)は、単一の光活性ヒドロシリル化触媒であっても、あるいは2種またはそれ以上の異なる光活性ヒドロシリル化触媒を含む混合物であってもよい。
【0058】
光活性ヒドロシリル化触媒を調製する方法は、当技術分野で周知である。たとえば、白金(II)β-ジケトナート類を調製する方法は、Guoら(Chemistry of Materials, 1998, 10, 531〜536頁)によって報告されている。(η-シクロペンタジエニル)-トリアルキル白金錯体を調製する方法は、米国特許第4510094号に開示されている。トリアゼンオキシド-遷移金属錯体を調製する方法は、米国特許第5496961号に開示されている。(η-ジオレフィン)(σ-アリール)白金錯体を調製する方法は、米国特許第4530879号に教示されている。
【0059】
ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、シリコーン樹脂(A)と架橋剤(B)との付加反応を触媒するのに十分なものである。ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、シリコーン樹脂(A)および架橋剤(B)の合計重量に基づき、白金族金属を通常0.1〜1000ppm、あるいは白金族金属を0.5〜100ppm、あるいは白金族金属を1〜25ppmを提供するには十分なものである。
【0060】
任意選択で、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(i) R1R22SiO(R22SiO)aSiR22R1および(ii) R5R12SiO(R1R5SiO)bSiR12R5の群から選択される式の(D)シリコーンゴムをさらに含んでもよく、上記式中、R1およびR2は上で定義し例示したとおりであり、R5はR1または-Hであり、添え字aおよびbはそれぞれ1〜4、あるいは2〜4、あるいは2〜3の値を有し、w、x、yおよびzも上で定義し例示したとおりであるが、ただし、シリコーン樹脂およびシリコーンゴム(D)(i)はそれぞれ、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(ii)は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子のモル比は0.01〜0.5である。
【0061】
成分(D)(i)としての使用に適したシリコーンゴムの具体例には、下記式:
ViMe2SiO(Me2SiO)aSiMe2Vi、ViMe2SiO(Ph2SiO)aSiMe2Vi、およびViMe2SiO(PhMeSiO)aSiMe2Vi(式中、Meはメチル、Phはフェニル、Viはビニルであり、添え字aは1〜4の値を有す。)
のシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。シリコーンゴム(D)(i)は、単一のシリコーンゴムであっても、あるいは(D)(i)についての式をそれぞれが満たす2種またはそれ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0062】
シリコーンゴム(D)(ii)としての使用に適したシリコーンゴムの具体例には、下記式:
HMe2SiO(Me2SiO)bSiMe2H、HMe2SiO(Ph2SiO)bSiMe2H、HMe2SiO(PhMeSiO)bSiMe2H、およびHMe2SiO(Ph2SiO)2(Me2SiO)2SiMe2H(式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、添え字bは1〜4の値を有する。)
のシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。成分(D)(ii)は、単一のシリコーンゴムであっても、あるいは(D)(ii)についての式をそれぞれが満たす2種またはそれ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってもよい。
【0063】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対する、シリコーンゴム(D)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子のモル比は、通常0.01〜0.5、あるいは0.05〜0.4、あるいは0.1〜0.3である。
【0064】
シリコーンゴム(D)が(D)(i)である場合には、架橋剤(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンゴム(D)(i)中のケイ素結合アルケニル基のモル数の合計に対する架橋剤(B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比率が、通常0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1となるようにする。さらに、シリコーンゴム(D)が(D)(ii)である場合には、架橋剤(B)の濃度は、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基のモル数に対する架橋剤(B)およびシリコーンゴム(D)(ii)中のケイ素結合水素原子のモル数の合計の比率が、通常0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1となるようにする。
【0065】
ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を含むシリコーンゴムを調製する方法は、当技術分野で周知であり、これらの化合物の多くは市販されている。
【0066】
本発明の別の実施形態においては、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、シリコーン樹脂(A)と、下記式:
R5R12SiO(R1R5SiO)cSiR12R5、および
R1R22SiO(R22SiO)dSiR22R1
(上記式中、R1およびR5は上で定義し例示したとおりであり、cおよびdはそれぞれ、4〜1000、あるいは10〜500、あるいは10〜50の値を有する。)
のゴムから選択される少なくとも1種のシリコーンゴム(D)(iii)とを、ヒドロシリル化触媒(c)と、場合によっては有機溶媒の存在下で反応させることによって調製されるゴム改質シリコーン樹脂(A1)を含む。ただし、シリコーン樹脂(A)は1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(iii)は1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比が0.01〜0.5である。「少なくとも1種のシリコーンゴム」とは、上記式で表されるゴムのうち1種だけは (D)(iii)に必要であることを意味し、上記式で表されるゴムの組合せを使用してもよいことを意味する。有機溶媒が存在する場合には、ゴム改質シリコーン樹脂(A1)が有機溶媒中で混ざり合い、沈殿物または懸濁液を形成することはない。
【0067】
シリコーン樹脂(A)、シリコーンゴム(D)(iii)、ヒドロシリル化触媒(c)、および有機溶媒は、任意の順序で混ぜ合わせることができる。通常、シリコーン樹脂(A)、シリコーンゴム(D)(iii)、および有機溶媒は、ヒドロシリル化触媒(c)の導入前に混ぜ合わせる。
【0068】
この反応は通常、室温(約23±2℃)〜150℃、あるいは室温〜100℃の温度で行う。反応時間は、シリコーン樹脂(A)およびシリコーンゴム(D)(iii)の構造ならびに温度を含めたいくつかの因子に左右される。これらの成分は通常、ヒドロシリル化反応を完了するのに十分な時間反応させる。これは、FTIR分光法によって決定して、シリコーンゴム(D)(iii)中にもともと存在するケイ素結合水素原子の少なくとも95mol%、あるいは少なくとも98mol%、あるいは少なくとも99mol%がヒドロシリル化反応において消費されるまで、通常これらの成分を反応させることを意味する。反応時間は通常、室温(約23±2℃)〜100℃の温度で0.5〜24時間である。最適な反応時間は、日常的な実験によって決定することができる。
【0069】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素結合アルケニル基に対するシリコーンゴム(D)(iii)中のケイ素結合水素原子のモル比は、通常0.01〜0.5、あるいは0.05〜0.4、あるいは0.1〜0.3である。
【0070】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(A)のシリコーンゴム(D)(iii)との付加反応を触媒するのに十分な量である。通常、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、上記樹脂およびゴムの合計重量に基づき、白金族金属を0.1〜1000ppm提供するには十分なものである。
【0071】
有機溶媒の濃度は、反応混合物の総重量に基づき通常0〜95%(w/w)、あるいは10〜75%(w/w)、あるいは40〜60%(w/w)である。
【0072】
ゴム改質シリコーン樹脂(A1)は、分離または精製なしで使用することができるが、このゴム改質シリコーン樹脂(A1)は、従来の蒸発方法によって溶媒の大部分から分離することができる。たとえば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、ヒドロシリル化触媒(c)が上述した担持触媒である場合、反応混合物をろ過することによって、ヒドロシリル化触媒(c)からゴム改質シリコーン樹脂(A1)を容易に分離することができる。しかしながら、ゴム改質シリコーン樹脂(A1)を調製するために使用するヒドロシリル化触媒(c)からゴム改質シリコーン樹脂(A1)を分離しない場合、ヒドロシリル化触媒(c)をヒドロシリル化触媒(C)として使用することができる。
【0073】
本発明のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、当技術分野で公知のような追加の成分を含むことができる。追加の成分の例には、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、ビニルシクロシロキサン類、トリフェニルホスフィンなどのヒドロシリル化触媒抑制剤;米国特許第4087585号および第5194649号に教示されている接着促進剤などの接着促進剤;染料;顔料;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線安定剤;難燃剤;流量制御添加剤;有機溶媒や反応性希釈剤などの希釈剤、が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の代替物として、縮合硬化性シリコーン組成物も、本発明のシリコーン組成物に適している。
【0075】
縮合硬化性シリコーン組成物は、ケイ素結合水素原子、ケイ素結合ヒドロキシ基、またはケイ素結合加水分解性基を有するシリコーン樹脂(A2)と、場合によっては(任意選択によって)、ケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤(B1)と、場合によっては(任意選択によって)、縮合触媒(C1)とを含む。この縮合硬化性シリコーン樹脂(A2)は通常、R1SiO3/2単位、すなわちT単位、および/またはSiO4/2単位、すなわちQ単位を、R1R62SiO1/2単位、すなわちM単位、および/またはR62SiO2/2単位、すなわちD単位と組み合わせて含む共重合体であり、式中、R1は上述のとおりであり、R6はR1、-H、-OH、または加水分解性基である。たとえば、このシリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってよい。
【0076】
一実施形態によれば、シリコーン樹脂(A2)は下記式を有する。
(R1R62SiO1/2)w'(R62SiO2/2)x'(R6SiO3/2)y'(SiO4/2)z' (V)
上記式中、R1およびR6は上で定義し例示したとおりであり、w'は0〜0.8、あるいは0.02〜0.75、あるいは0.05〜0.3であり、x'は0〜0.95、あるいは0.05〜0.8、あるいは0.1〜0.3であり、y'は0〜1、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8であり、z'は0〜0.99、あるいは0.2〜0.8、あるいは0.4〜0.6である。シリコーン樹脂(A2)は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を有する。本明細書中で使用する用語「加水分解性基」とは、そのケイ素結合基が、室温(約23±2℃)〜100℃の任意の温度で数分、たとえば30分以内に触媒のない状態で水と反応してシラノール(Si-OH)基を形成することを意味する。R6で表される加水分解性基の例には、-Cl、-Br、-OR7、-OCH2CH2OR7、CH3C(=O)O-、Et(Me)C=N-O-、CH3C(=O)N(CH3)-および-ONH2(式中、R7はC1〜C8のヒドロカルビルまたはC1〜C8のハロゲン置換ヒドロカルビルである。)が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
R7で表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、典型的には1〜8個の炭素原子、あるいは3〜6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含む非環式のヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、枝分かれ構造または非分岐構造を有することができる。R7で表されるヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどの非分岐または分岐アルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのシクロアルキル;フェニル;トリルやキシリルなどのアルカリール(alkaryl);ベンジルやフェネチルなどのアラルキル;ビニル、アリル、プロペニルなどのアルケニル;スチリルなどのアリールアルケニル;エチニルやプロピニルなどのアルキニルが含まれるが、これらに限定されない。R7で表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、クロロフェニル、およびジクロロフェニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
通常、シリコーン樹脂(A2)中の基R6の少なくとも1mol%、あるいは少なくとも5mol%、少なくとも10mol%が、水素、ヒドロキシ、または加水分解性基である。本明細書中で使用する、R6のmol%とは、シリコーン樹脂(A2)中のR6基の総モル数に対するシリコーン樹脂(A2)中のケイ素結合基のモル数の比率に100を乗じたものとして定義される。
【0079】
シリコーン樹脂(A2)から形成される硬化したシリコーン樹脂の具体例には、下記式の硬化したシリコーン樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(MeSiO3/2)0.9(Me(HO)SiO2/2)0.1、(PhSiO3/2)0.7(Ph(MeO)SiO2/2)0.3
(Me3SiO1/2)0.8(SiO4/2)0.15(HOSiO3/2)0.05
(MeSiO3/2)0.67(PhSiO3/2)0.23(Ph(HO)SiO2/2)0.1
(MeSiO3/2)0.45(PhSiO3/2)0.24(Ph(HO)SiO2/2)0.16(Ph2SiO2/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.05
(PhSiO3/2)0.3(Ph(HO)SiO2/2)0.1(MeSiO3/2)0.4(Me(HO)SiO2/2)0.05(PhSiO3/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.05、および
(PhSiO3/2)0.3(Ph(MeO)SiO2/2)0.1(MeSiO3/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.5
上記式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示し、添え字nは、シリコーン樹脂の数平均分子量が通常500〜50,000となるような値を有する。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0080】
上述のように、式(V)で表されるシリコーン樹脂(A2)は通常、500〜50,000の数平均分子量(Mn)を有する。あるいは、シリコーン樹脂(A2)は少なくとも300、あるいは1,000〜3,000のMnを有することができ、この分子量は、小角レーザ光拡散検出器、あるいは屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準品とを用いる、ゲル浸透クロマトグラフィによって測定される。
【0081】
シリコーン樹脂(A2)の25℃における粘度は通常0.01Pa・s〜固体、あるいは0.1〜100,000Pa・s、あるいは1〜1,000Pa・sである。
【0082】
第2の実施形態において、シリコーン樹脂(A2)は、上記と同じ式(V)であるが、添え字xおよびzの値が異なる。ただし、R6SiO3/2単位とSiO4/2単位との合計がゼロよりも大きく、さらには、第2の実施形態のシリコーン樹脂(A2)は、1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子(ケイ素に結合した水素原子)、少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシ基(ケイ素に結合したヒドロキシ基)または少なくとも2個のケイ素結合加水分解性基(ケイ素に結合した加水分解性基)を含む。より具体的には、第2の実施形態のシリコーン樹脂(A2)について、w'、y'、R1、およびR6は上記と同じままであるが、x'は通常0〜0.6、あるいは0〜0.45、あるいは0〜0.25の値を有し、z'は通常0〜0.35、あるいは0〜0.25、あるいは0〜0.15の値を有し、y'+z'の合計はゼロよりも大きく、通常0.2〜0.99、あるいは0.5〜0.95、あるいは0.65〜0.9である。さらに、w'+x'の合計はゼロであってもよいが、通常0.01〜0.80、あるいは0.05〜0.5、あるいは0.1〜0.35である。通常、第2の実施形態のシリコーン樹脂(A2)中のR6基の1mol%〜30mol%、あるいは1〜15mol%が、水素、ヒドロキシ、または加水分解性基である。
【0083】
この第2の実施形態の縮合硬化性シリコーン樹脂(A2)の例には、下記式のシリコーン樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(Me(MeO)Si2/2)x'(MeSiO3/2)0.1、(Ph(HO)SiO2/2)x'(PhSiO3/2)y'、(Me3SiO1/2)w'(CH3COOSiO3/2)y'(SiO4/2)z'、(Ph(MeO)SiO2/2)x'(MeSiO3/2)y'(PhSiO3/2)y'、(Ph(MeO)(HO)SiO1/2)w'(MeSiO3/2)y'(PhSiO3/2)y'(Ph2SiO2/2)x'(PhMeSiO2/2)x'、(PhMe(MeO)SiO1/2)w'(Ph(HO)SiO2/2)x'(MeSiO3/2)y'(PhSiO3/2)y'(PhMeSiO2/2)x'、および(Ph(HO)SiO2/2)x'(PhSiO3/2)y'(MeSiO3/2)y'(PhMeSiO2/2)x'
上記式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、w'、x'、y'、およびz'は上で定義したとおりであり、添え字y'は、シリコーン樹脂の数平均分子量が500〜50,000となる値を有する。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0084】
この第2の実施形態の縮合硬化性シリコーン樹脂(A2)の具体例には、下記式のシリコーン樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(Me(MeO)Si2/2)0.05(Me3SiO1/2)0.75(SiO4/2)0.2
(Ph(HO)SiO2/2)0.09(MeSiO3/2)0.67(PhSiO3/2)0.24
(Ph(MeO)SiO2/2)0.05(MeSiO3/2)0.45(PhSiO3/2)0.35(Ph2SiO2/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.05
(PhMe(MeO)SiO1/2)0.02(PhSiO3/2)0.4(MeSiO3/2)0.45(PhSiO3/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.03、および
(Ph(HO)SiO2/2)0.04(PhMe(MeO)SiO1/2)0.03(PhSiO3/2)0.36(MeSiO3/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.47
上記式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0085】
上述したとおり、第2の実施形態の縮合硬化性シリコーン樹脂(A2)は通常500〜50,000の数平均分子量(Mn)を有する。あるいは、縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は500〜10,000、あるいは800〜3,000のMnを有することができ、この分子量は、屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準品とを用いるゲル透過クロマトグラフィによって測定される。
【0086】
第2の実施形態の縮合硬化性シリコーン樹脂(A2)の25℃における粘度は、通常0.01 Pa・s〜固体、あるいは0.1〜10,000 Pa・s、あるいは1〜100 Pa・sである。式(V)で表される縮合硬化性シリコーン樹脂(A)は、29Si NMRによって測定して、ケイ素結合ヒドロキシ基を通常20%(w/w)未満、あるいは10%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満含む。
【0087】
式(V)で表されるシリコーン樹脂(A2)を調製する方法は、当技術分野で周知であり、これらの樹脂の多くは市販されている。式(V)で表されるシリコーン樹脂(A2)は、トルエンなどの有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することによって通常調製される。たとえば、R1R62SiO1/2単位およびR6SiO3/2単位を含むシリコーン樹脂は、式R1R62SiClの第1の化合物および式R6SiCl3の第2の化合物(ここで、R1およびR6は上で定義し例示したとおりである)をトルエン中で共加水分解することによって調製することができる。この共加水分解プロセスは、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物について上で説明している。共加水分解された反応物を所望の程度までさらに「増粘させて」、架橋性基の量および粘度を制御することができる。
【0088】
必要に応じて、式(V)で表されるシリコーン樹脂(A2)を有機溶媒中、縮合触媒でさらに処理して、ケイ素結合ヒドロキシ基の含有量を低減させることができる。あるいは、クロロ基以外の加水分解性基、例えば、-Br、-I、-OCH3、-OC(O)CH3、-N(CH3)2、NHCOCH3、-SCH3などを含む第1または第2の化合物を共加水分解してシリコーン樹脂(A2)を形成することができる。このシリコーン樹脂(A2)の特性は、第1および第2の化合物の種類、第1および第2の化合物のモル比、縮合度、ならびに処理条件に左右される。
【0089】
式(V)中のQ単位は、シリコーン樹脂(A2)中で離散粒子の形であってもよい。粒径は通常1nm〜20μmである。これらの粒子の例には、直径15nmのシリカ(SiO4/2)粒子が含まれるが、これに限定されない。
【0090】
別の実施形態において、縮合硬化性シリコーン組成物は、(i) 式(R1R62SiO1/2)w'(R62SiO2/2)x'(R6SiO3/2)y'(SiO4/2)z'のシリコーン樹脂、(ii) (i)の加水分解性前駆体、および(iii) 式R83SiO(R1R8SiO)mSiR83のシリコーンゴムのなかから選択される有機ケイ素化合物を、水、(iv) 縮合触媒、および(v) 有機溶媒の存在下で反応させることによって調製されるゴム改質シリコーン樹脂(A3)を含み、上記式中、R1およびR6は上で定義し例示したとおりであり、R8はR1または加水分解性基であり、mは2〜1,000、あるいは4〜500、あるいは8〜400であり、w'、x'、y'およびz'は上で定義し例示したとおりである。シリコーン樹脂(i)は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基を有する。シリコーン樹脂(iii)は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合加水分解性基を有する。シリコーン樹脂(i)中のケイ素結合ヒドロキシまたは加水分解性基に対するシリコーン樹脂(iii)中のケイ素結合加水分解性基のモル比は、0.01〜1.5、あるいは0.05〜0.8、あるいは0.2〜0.5である。
【0091】
第1の実施形態においては、シリコーン樹脂(i)中の基R6の通常少なくとも1mol%、あるいは少なくとも5mol%、あるいは少なくとも10mol%がヒドロキシまたは加水分解性基である。第2の実施形態においては、シリコーン樹脂(i)中の基R6の通常1mol%〜30mol%、あるいは1mol%〜15mol%が水素、ヒドロキシ、または加水分解性基である。
【0092】
第1の実施形態のシリコーン樹脂(i)は通常、少なくとも300、あるいは500〜50,000、あるいは800〜3,000の数平均分子量(Mn)を有し、この分子量は、小角レーザ光拡散検出器、あるいは屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準とを用いる、ゲル透過クロマトグラフィによって測定される。
【0093】
シリコーン樹脂(i)としての使用に適したシリコーン樹脂の具体例には、下記式の樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(Me(MeO)Si2/2)x'(MeSiO3/2)y'、(Ph(HO)SiO2/2)x'(PhSiO3/2)y'
(Ph(MeO)SiO2/2)x'(PhSiO3/2)y'(MeSiO3/2)y'(PhSiO3/2)y'(PhMeSiO2/2)x'、および
(CH3COOSiO3/2)y'(PhSiO3/2)y'(SiO4/2)z'(Me2SiO2/2)x'(Ph2SiO2/2)x'
上記式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、x'、y'、およびz'は上で定義したとおりであり、添え字y'は、シリコーン樹脂の数平均分子量が500〜50,000となる値を有する。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0094】
シリコーン樹脂(i)としての使用に適したシリコーン樹脂の他の具体例には、下記式の樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(Ph(HO)SiO2/2)0.03(PhSiO3/2)0.37(MeSiO3/2)0.45(PhSiO3/2)0.1(PhMeSiO2/2)0.05、および
(CH3COOSiO3/2)0.06(PhSiO3/2)0.3(SiO4/2)0.04(Me2SiO2/2)0.2(Ph2SiO2/2)0.4
式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。シリコーン樹脂(i)は、単一のシリコーン樹脂であっても、またはそれぞれが特定の式を有する2種またはそれ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。シリコーン樹脂(i)は、単一のシリコーン樹脂であっても、またはそれぞれが特定の式を有する2種またはそれ以上の異なるシリコーン樹脂を含む混合物であってもよい。
【0095】
本明細書中で使用する用語「加水分解性前駆体」とは、シリコーン樹脂(i)の調製用の出発材料(前駆体)としての使用に適している加水分解性基を有するシラン類を指す。加水分解性前駆体(ii)は、式R1R82SiX、R82SiX2、R8SiX3、およびSiX4(式中、R1、R8、およびXは上で定義し例示したとおりである。)で表すことができる。
【0096】
加水分解前駆体(ii)の具体例には、下記式のシラン類が含まれるが、これらに限定されない。
Me2ViSiCl、Me3SiCl、MeSi(OEt)3、PhSiCl3、MeSiCl3、Me2SiCl2、PhMeSiCl2、SiCl4、Ph2SiCl2、PhSi(OMe)3、MeSi(OMe)3、PhMeSi(OMe)2、およびSi(OEt)4,
上記式中、Meはメチル、Etはエチル、及びPhはフェニルである。
【0097】
シリコーンゴム(iii)の具体例には、下記式のシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。
(EtO)3SiO(Me2SiO)55Si(OEt)3、(EtO)3SiO(Me2SiO)16Si(OEt)3、(EtO)3SiO(Me2SiO)386Si(OEt)3、および(EtO)2MeSiO(PhMeSiO)10SiMe(OEt)2
上記式中、Meはメチル、及びEtがエチルである。
【0098】
この反応は通常、室温(約23±2℃)〜180℃、あるいは室温〜100℃の温度で行われる。
【0099】
反応時間は、シリコーン樹脂(i)およびシリコーンゴム(iii)の構造ならびに温度を含めたいくつかの因子に左右される。これらの成分は通常、縮合反応を完了するのに十分な時間反応させることができる。これは、29Si NMR分光法によって決定して、シリコーンゴム(iii)中にもともと存在するケイ素結合加水分解性基の少なくとも40mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも90mol%が縮合反応において消費されるまで、通常これらの成分を反応させることを意味する。反応時間は通常、室温(約23±2℃)〜100℃の温度で1〜30時間である。最適な反応時間は、日常的な実験によって決定することができる。
【0100】
適切な縮合触媒(iv)について以下にさらに詳細に説明するが、適切な有機溶媒(v)については、上記改質ゴムシリコーン樹脂(A1)に即して上で説明している。縮合触媒(iv)の濃度は、シリコーン樹脂(i)のシリコーンゴム(iii)との縮合反応を触媒するために十分な量である。通常、縮合触媒(iv)の濃度は、シリコーン樹脂(i)の重量に基づき0.01〜5%(w/w)、あるいは0.01〜3%(w/w)、あるいは0.05〜2.5%(w/w)である。有機溶媒(v)の濃度は反応混合物の総重量に基づき通常10〜95%(w/w)、あるいは20〜85%(w/w)、あるいは50〜80%(w/w)である。
【0101】
反応混合物中の水の濃度は、有機ケイ素化合物中の基R8の性質およびシリコーンゴム中のケイ素結合加水分解性基の性質に左右される。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を含む場合、水の濃度はシリコーン樹脂(i)およびシリコーンゴム(iii)中の加水分解性基の加水分解をもたらすには十分な量である。たとえば、水の濃度は、混ぜ合わせたシリコーン樹脂(i)およびシリコーンゴム(iii)中の加水分解性基1モル当たり通常0.01〜3モル、あるいは0.05〜1モルである。シリコーン樹脂(i)が加水分解性基を含まない場合は、微量、たとえば、100ppmの水しか通常反応混合物中には存在しない。微量の水が、通常、反応物および/または溶媒中に存在する。
【0102】
上述のように、縮合硬化性シリコーン組成物は、架橋剤(B1)をさらに含むことができる。架橋剤(B1)は式R7qSiX4-qを有することができ、式中R7はC1〜C8のヒドロカルビルまたはC1〜C8のハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Xは加水分解性基であり、qは0または1である。R7で表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基、ならびにXで表される加水分解性基は、上で説明し例示したとおりである。
【0103】
架橋剤(B1)の具体例には、MeSi(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH3)3、CH3Si(OCH2CH2CH3)3、CH3Si[O(CH2)3CH3]3、CH3CH2Si(OCH2CH3)3、C6H5Si(OCH3)3、C6H5CH2Si(OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH3)3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH2OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH2CH2OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH2OCH3)3、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4などのアルコキシシラン類;CH3Si(OOOCH3)3、CH3CH2Si(OCOCH3)3、CH2CHSi(OCOCH3)3などの有機アセトキシシラン類;CH3Si[O-N=(CH3)CH2CH3]3、Si[O-N=C(CH3)CH2CH3]4、CH2=CHSi[O-N(CH3)CH2CH3]3などの有機イミノオキシシラン類;CH3Si[NHC(=O)CH3]3及びC6H5Si[NHC(=O)CH3]3などの有機アセトアミドシラン類;CH3Si[NH(s-C4H9)]3及びCH3Si(NHC6H11)3などのアミノシラン類;ならびに有機アミノオキシシラン類が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
架橋剤(B1)は単一のシランであっても、あるいはそれぞれ上で説明した2種またはそれ以上の異なるシランの混合物であってもよい。また、三官能性および四官能性シラン類を調製する方法も当技術分野において周知であり、これらのシラン類の多くは市販されている。
【0105】
存在する場合には、縮合硬化性シリコーン組成物中の架橋剤(B1)の濃度は、縮合硬化性シリコーン樹脂を硬化する(架橋する)のに十分な量である。架橋剤(B1)の正確な量は、所望の硬化程度に左右され、この硬化程度は、シリコーン樹脂(A2)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基のモル数に対する架橋剤(B1)中のケイ素結合加水分解性基のモル数の比率が増大するにつれて一般に増大する。通常、架橋剤(B1)の濃度は、シリコーン樹脂(A2)中のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基1モル当たり0.2〜0.4モルのケイ素結合加水分解性基を提供するのに十分な量である。架橋剤(B1)の最適な量は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0106】
縮合触媒(C1)は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進してSi-O-Si結合を形成するために通常使用する任意の縮合触媒でよい。縮合触媒の例には、アミン類、ならびに鉛、スズ、亜鉛および鉄のカルボン酸との錯体が含まれるが、これらに限定されない。特に、縮合触媒(C1)は、スズジウラレート、スズジオクトエート、テトラブチルスズなどのスズ(II)およびスズ(IV)化合物、およびチタンテトラブトキシドなどのチタン化合物から選択することができる。
【0107】
存在する場合、縮合触媒(C1)の濃度は、シリコーン樹脂(A2)の総重量に基づき通常0.1〜10%(w/w)、あるいは0.5〜5%(w/w)、あるいは1〜3%(w/w)である。
【0108】
縮合硬化性シリコーン組成物が縮合触媒(C1)を含む場合、縮合硬化性シリコーン組成物は通常、シリコーン樹脂(A2)と縮合触媒(C1)とが別々に存在する2液型組成物(two-part composition)である。
【0109】
上記の縮合硬化性シリコーン組成物は、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、雲母など微粒子状の無機充填剤をさらに含むことができる。一実施形態においては、たとえば、縮合硬化性シリコーン組成物はシリカナノ粒子をさらに含む。これらのナノ粒子は、基板106の熱膨張係数の低減に役立ちうる。熱膨張係数が小さいと、CISをベースとする光起電デバイス104の製造可能性(manufacturability)を向上させることができる。ナノ粒子により、基板106の機械的強度を増大させることもできる。これらのシリカナノ粒子は、少なくとも1つの物理的寸法(たとえば、粒径、層の厚さ)が約200nm未満である任意のシリカ材料でよい。シリカナノ粒子の特に有用な一形態は、ヒュームドシリカナノ粒子である。有用な市販の未改質シリカ出発材料の例には、NALCO 1040、1042、1050、1060、2326、2327および2329コロイドシリカの製品表示でイリノイ州ネーパービルのNalco Chemical Co.から入手可能なナノサイズコロイドシリカ、DegussaからのAerosil(登録商標)、DuPontからのLudox(登録商標)、Nissan ChemicalからのSnowtex(登録商標)、BayerからのLevasil(登録商標)、あるいはFuji Silysia ChemicalからのSylysia(登録商標)が含まれる。適切なヒュームドシリカには、たとえば、「Aerosil series OX 50」の商品表示、ならびに製品番号-130、-150、および-200でDeGussa AG(ハーナウ、ドイツ)から市販されている製品が含まれる。ヒュームドシリカは、「CAB O-SPERSE 2095」、「CAB-O-SPERSE A105」、および「CAB-O-SIL M5」の商品表示でイリノイ州タスコラのCabot Corp.からも市販されている。当業者は、火炎加水分解(Aerosil-Process)、プラズマ法、アーク法、気相または固相反応向けのホットウォール反応器法、溶液ベースの反応向けのイオン交換法および沈殿法など、異なる物理特性を有し異なる組成を有する異なる寸法の粒子を入手するための十分に確立した様々なプロセスを認識している。
【0110】
これらのシリカナノ粒子は、コロイド分散液の形であってもよい。したがって、これらのシリカナノ粒子を、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、水、酢酸、ジオール類およびトリオール類(プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオールHOCH2CH(CH3)CH2OH、1,2-ヘキサンジオールCH3(CH2)3CH(OH)CH2OH、グリセロールなど)、グリセロールエステル類(グリセリルトリアセテート(トリアセチン)、グリセリルトリプロピオネート(トリプロピオニン)、グリセリルトリブチレート(トリブチリン)など)、ポリグリコール類(ポリエチレングリコール類やポリプロピレングリコール類など)、中でもPPG-14ブチルエーテルC4H9(OCH(CH3)CH2)14OH、などの極性溶媒に分散させることができる。あるいは、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの非極性溶媒にこれらのシリカナノ粒子を分散させることもできる。
【0111】
シリカの粒径は通常1〜1000nm、あるいは1〜100nm、あるいは5〜30nmの範囲に及ぶ。これらのシリカ粒子は、単一の種類のシリカナノ粒子であっても、または少なくとも2種類の異なるシリカナノ粒子を含む混合物であってもよい。シリカナノ粒子は純粋な二酸化ケイ素であっても、あるいはAl2O3、ZnO、および/またはNa+、K++、Ca++、Mg++等のカチオンなどの不純物を一定量含んでいてもよいことが知られている。
【0112】
シリカナノ粒子の濃度は、縮合硬化性シリコーン組成物の総重量に基づき通常0.0001〜99wt%、あるいは0.001〜75wt%、あるいは10〜65wt%、あるいは5〜50wt%、あるいは20〜40wt%である。この縮合硬化性シリコーン組成物は、縮合硬化性シリコーン樹脂(A2またはA3)と、任意選択の成分と、シリカナノ粒子とを単一の液中に含む1液型組成物(one-part composition)であっても、あるいはこれらの成分を2液またはそれ以上の液中に含む多液型組成物(multi-part composition)であってもよい。
【0113】
1液型縮合硬化性シリコーン組成物は、有機溶媒の助けの有無にかかわらず、縮合硬化性シリコーン樹脂(A2またはA3)と、シリカナノ粒子と、任意選択の成分とを、記載した割合で、周囲温度で混ぜ合わせることによって調製することができる。また、各液中のこれらの成分を混ぜ合わせることによって、シリコーン組成物を調製することができる。シリカナノ粒子を含む縮合硬化性シリコーン組成物をin-situで調製することもできる、すなわち、工程中でシリカナノ粒子を添加して、上述の縮合硬化性シリコーン樹脂(A2またはA3)を作製することができる。粉砕、調合、撹拌など当技術分野で公知の技法のいずれかによって、バッチまたは連続プロセスで、混合を実現することができる。
【0114】
本発明の縮合硬化性シリコーン組成物は、当技術分野で公知である追加の成分を、またヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物について上で説明した追加の成分を含むことができる。
【0115】
さらに別の実施形態においては、シリコーン組成物はフリーラジカル硬化性シリコーン組成物であってもよい。フリーラジカル硬化性シリコーン組成物の例には、ペルオキシド硬化性シリコーン組成物、フリーラジカル光開始剤を含む放射線硬化性シリコーン組成物、および高エネルギー放射線硬化性シリコーン組成物が含まれる。通常、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物は、シリコーン樹脂(A4)、任意選択により架橋剤(B2)および/またはフリーラジカル開始剤(C2)(たとえば、フリーラジカル光開始剤または有機ペルオキシド)を含む。
【0116】
シリコーン樹脂(A4)は、(i) フリーラジカル光開始剤の存在下で波長150〜800nmの放射線にシリコーン樹脂をさらすこと、(ii) 有機ペルオキシドの存在下でシリコーン樹脂(A4)を加熱すること、および(iii) 電子ビームにシリコーン樹脂(A4)をさらすことから選択される少なくとも1つの方法によって硬化(すなわち、架橋)することができる任意のシリコーン樹脂でよい。シリコーン樹脂(A4)は通常、Tシロキサン単位および/またはQシロキサン単位を、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせて含む共重合体である。
【0117】
たとえば、シリコーン樹脂(A4)は、式 (R1R92SiO1/2)w"(R92SiO2/2)x"(R9SiO3/2)y"(SiO4/2)z"を有することができ、式中、R1は上で定義し例示したとおりであり、R9はR1、アルケニル、またはアルキニルであり、w"は0〜0.99、x"は0〜0.99、y"は0〜0.99、z"は0〜0.85であり、w"+x"+y"+z"=1である。
【0118】
R9で表されるアルケニル基は同一であっても異なっていてもよく、上記R2についての説明において定義し例示したとおりである。
【0119】
R9で表されるアルキニル基は同一であっても異なっていてもよく、通常2〜約10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子を有し、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル、およびオクチニルによって例示されるが、これらに限定されない。
【0120】
シリコーン樹脂(A4)は通常、少なくとも300、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(Mn)を有し、この分子量は、屈折率検出器とシリコーン樹脂(MQ)標準品とを用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0121】
シリコーン樹脂(A4)は、29Si NMRによって決定して、ケイ素結合ヒドロキシ結合を10%(w/w)未満、あるいは5%(w/w)未満、あるいは2%(w/w)未満含むことができる。
【0122】
本発明の目的に適しているシリコーン樹脂(A4)の具体例には、下記式のシリコーン樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
(Vi2MeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75、(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
(ViMe2SiO1/2)0.25(MeSiO3/2)0.25(PhSiO3/2)0.50、(ViMe2SiO1/2)0.15(PhSi03/2)0.75(SiO4/2)0.1、および(Vi2MeSiO1/2)0.15(ViMe2SiO1/2)0.1(PhSiO3/2)0.75
式中、Meはメチル、Viはビニル、Phはフェニルであり、丸括弧の外の数字の添え字はモル分率を示す。前述の式中の各単位の順序は、決して本発明の範囲を制限すると見られるべきではない。
【0123】
本方法のフリーラジカル硬化性シリコーン組成物は、シリコーンゴム;不飽和化合物;フリーラジカル開始剤;有機溶媒;UV安定剤;増感剤;色素;難燃剤;酸化防止剤;補強充填剤、増量充填剤、導電性充填剤などの充填剤;および接着促進剤が含まれるがこれらに限定されない追加の成分を含むことができる。
【0124】
上記フリーラジカル硬化性シリコーン組成物は、(i) 1分子当たり少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物、(ii) 1分子当たり少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1種の有機化合物、および(iii) (i)および(ii)を含む混合物、から選択される不飽和化合物をさらに含むことができ、この不飽和化合物は500未満の分子量を有する。あるいは、この不飽和化合物は400未満または300未満の分子量を有する。また、この不飽和化合物は線状構造、枝分かれ構造、または環状構造を有することができる。
【0125】
有機ケイ素化合物(i)は、有機シランであっても有機シロキサンであってもよい。有機シランはモノシランであっても、ジシランであっても、トリシランであっても、またはポリシランであってもよい。同様に、有機シロキサンはジシロキサンであっても、トリシロキサンであっても、またはポリシロキサンであってもよい。シクロシラン類およびシクロシロキサン類は通常、3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。非環式のポリシラン類およびポリシロキサン類においては、ケイ素結合アルケニル基は末端位に、ペンダント位に、あるいは末端位とペンダント位の両方に位置することができる。
【0126】
有機シラン類の具体例には、下記式のシラン類が含まれるが、これらに限定されない。
Vi4Si、PhSiVi3、MeSiVi3、PhMeSiVi2、Ph2SiVi2、およびPhSi(CH2CH=CH2)3
式中、Meはメチル、Phはフェニル、Viはビニルである。
【0127】
有機シロキサン類の具体例には、下記式のシロキサン類が含まれるが、これらに限定されない。
PhSi(OSiMe2Vi)3、Si(OSiMe2Vi)4、MeSi(OSiMe2Vi)3およびPh2Si(OSiMe2Vi)2
式中、Meはメチル、Viはビニル、Phはフェニルである。
【0128】
この有機化合物は、1分子当たり少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を含む任意の有機化合物でよい。ただしこの化合物は、シリコーン樹脂(A4)が硬化してシリコーン樹脂膜を形成することを妨げないことを条件とする。この有機化合物は、アルケン、ジエン、トリエン、またはポリエンでよい。さらに、非環式有機化合物においては、炭素-炭素二重結合が、末端位に、ペンダント位に、あるいは末端位とペンダント位の両方に位置することができる。
【0129】
上記有機化合物は、脂肪族炭素-炭素二重結合以外の1つまたは複数の官能基を含むことができる。適切な官能基の例には、-O-、>C=O、-CHO、-CO2-、-C≡N、-NO2、>C=C<、-C≡C-、-F、-Cl、-Br、および-Iが含まれるが、これらに限定されない。本発明のフリーラジカル硬化性シリコーン組成物において使用するための特定の不飽和有機化合物の適性は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0130】
この有機化合物は、室温で液体状態であっても固体状態であってもよい。また、この有機化合物はフリーラジカル硬化性シリコーン組成物に可溶であっても、部分的に可溶であっても、不溶であってもよい。分子量、構造、ならびに化合物中の官能基の数および性質に左右されるこの有機化合物の標準沸点は、広範囲にわたって変化することがある。通常、この有機化合物は、組成物の硬化温度よりも高い標準沸点を有する。そうでなければ、この有機化合物の相当量が硬化時の揮発によって取り除かれうる。
【0131】
脂肪族炭素-炭素二重結合を含む有機化合物の例には、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ヘキサジエニルベンゼン、および1,2-ジエテニルシクロブタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
上記不飽和化合物は、単一の不飽和化合物であっても、あるいはそれぞれ上で説明した2種またはそれ以上の異なる不飽和化合物を含む混合物であってもよい。たとえば、この不飽和化合物は、単一の有機シラン、2種の異なる有機シラン類の混合物、単一の有機シロキサン、2種の異なる有機シロキサン類の混合物、有機シランと有機シロキサンとの混合物、単一の有機化合物、2種の異なる有機化合物の混合物、有機シランと有機化合物との混合物、または有機シロキサンと有機化合物との混合物であってよい。
【0133】
不飽和化合物の濃度は、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物の総重量に基づき、通常0〜70%(w/w)、あるいは10〜50%(w/w)、あるいは20〜40%(w/w)である。
【0134】
ケイ素結合アルケニル基を含む有機シラン類および有機シロキサン類、ならびに脂肪族炭素-炭素二重結合を含む有機化合物を調製する方法は当技術分野で周知であり、これらの化合物の多くは市販されている。
【0135】
フリーラジカル開始剤は、通常フリーラジカル光開始はまたは有機ペルオキシドである。さらに、フリーラジカル光開始剤は、波長200〜800nmの放射線にさらすとシリコーン樹脂の硬化(架橋)を開始させることができる任意のフリーラジカル光開始剤であってもよい。
【0136】
フリーラジカル光開始の例には、ベンゾフェノン;4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;ハロゲン化ベンゾフェノン類;アセトフェノン;α-ヒドロキシアセトフェノン;ジクロロアセトフェノン類やトリクロロアセトフェノン類などのクロロアセトフェノン類;2,2-ジエトキシアセトフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン類;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノンなどのα-アミノアルキルフェノン類;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどのベンジルケタール類;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類;キサントン誘導体;チオキサントン誘導体;フルオレノン誘導体;グリオキシル酸メチルフェニル;アセトナフトン;アントラキノン誘導体;芳香族化合物のスルホニルクロリド類;ならびに1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(Ο-エトキシカルボニル)オキシムなどのΟ-アシルα-オキシミノケトン類が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
フリーラジカル光開始剤は、ポリシラン、例えば、フェニルメチルポリシラン類(米国特許第4260780号においてWestによって定義されているフェニルメチルポリシラン類、その開示がフェニルメチルポリシラン類に関するためその開示を参照により本明細書に援用する);米国特許第4314956号においてBaneyらによって定義されているアミノ化メチルポリシラン類(その開示がアミノ化メチルポリシラン類に関するためその開示を参照により本明細書に援用する);米国特許第4276424号においてPetersonらによって定義されているメチルポリシラン類(その開示がメチルポリシラン類に関するためその開示を参照により本明細書に援用する);米国特許第4324901号においてWestらによって定義されているポリシラスチレン(その開示がポリシラスチレンに関するためその開示を参照により本明細書に援用する)などであってもよい。
【0138】
フリーラジカル光開始剤は、単一のフリーラジカル光開始であっても、あるいは2種またはそれ以上の異なるフリーラジカル光開始剤を含む混合物であってもよい。フリーラジカル光開始の濃度は、シリコーン樹脂(A4)の重量に基づき通常0.1〜6%(w/w)、あるいは1〜3%(w/w)である。
【0139】
フリーラジカル光開始剤は有機ペルオキシドであってもよい。有機ペルオキシドの例には、ジベンゾイルペルオキシド、ジ-p-クロロベンゾイルペルオキシド、ビス-2,4-ジクロロベンソイルペルオキシドなどのジアロイルペルオキシド類;ジ-t-ブチルペルオキシド及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジクミルペルオキシドなどのジアラルキルペルオキシド類;t-ブチルクミルペルオキシド及び1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルアラルキルペルオキシド類;ならびにt-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルアセテート、t-ブチルペルオクトエートなどのアルキルアロイルペルオキシド類が含まれる。
【0140】
有機ペルオキシドは、単一のペルオキシドであっても、あるいは2種またはそれ以上の異なる有機ペルオキシドを含む混合物であってもよい。樹脂有機ペルオキシドの濃度は、シリコーン樹脂(A4)の重量に基づき通常0.1〜5%(w/w)、あるいは0.2〜2%(w/w)である。
【0141】
フリーラジカル硬化性シリコーン組成物は、少なくとも1種の有機溶媒をさらに含むことができる。有機溶媒は、シリコーン樹脂(A4)または追加の成分とは反応しないが、シリコーン樹脂(A4)と混ざる任意の非プロトン性または双極性非プロトン性有機溶媒であることができる。有機溶媒の例には、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンなどの環状エーテル類;メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;トリクロロエタンなどのハロゲン化アルカン類;ならびにブロモベンゼン及びクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒は、単一の有機溶媒であっても、あるいはそれぞれ上で説明した2種またはそれ以上の異なる有機溶媒を含む混合物であってもよい。
【0142】
有機溶媒の濃度は、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物の総重量に基づき、通常0〜99%(w/w)、あるいは30〜80%(w/w)、あるいは45〜60%(w/w)である。
【0143】
上述のフリーラジカル硬化性シリコーン組成物が1種または複数種の追加の成分、たとえばフリーラジカル開始剤を含む場合、この組成物は、シリコーン樹脂と1種または複数種の任意選択成分とを単一の液中に含む1液型組成物であっても、あるいはこれらの成分を2液またはそれ以上の液中に含む多液型組成物であってもよい。
【0144】
別の適切なシリコーン組成物には、1,500〜1,000,000の値に及ぶ重量平均分子量を有し、室温(約23±2℃)で液体であり、H2SiO2/2単位を含む環式ジハイドロジェンポリシロキサン類が含まれる。これらの環式ジハイドロジェンポリシロキサン類は、非極性有機溶媒と水との混合物中でジクロロシラン(H2SiC12)を加水分解/縮合させて、形成された環式二水素シロキサンから揮発性環式ジハイドロジェンポリシロキサンを取り除くことによって製造することができる。
【0145】
本発明で使用する非極性有機溶媒は、芳香族炭化水素有機溶媒および脂肪族炭化水素有機溶媒で例示され、芳香族炭化水素有機溶媒はトルエンおよびキシレンで例示され、脂肪族炭化水素有機溶媒はヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびシクロヘキサンで例示される。
【0146】
加水分解/縮合反応は通常、非極性有機溶媒および水を撹拌しながらジクロロシランの非極性有機溶媒溶液をゆっくりと滴下して添加することにより行う。ジハイドロジェンポリシロキサン(ジハイドロジェンポリシロキサン)の揮発を避けるために、5℃以下の温度で滴下して添加を行うことが好ましい。
【0147】
加水分解/縮合は通常、非極性有機溶媒相と水相との混合物中で行われ、その後、形成された環状ジハイドロジェンポリシロキサンを含む非極性有機溶媒相を水で洗浄し、乾燥させ、非極性有機溶媒および揮発性ジハイドロジェンポリシロキサンを除去する。
【0148】
滴下による添加が完了したら、その溶液を放置することにより溶液を非極性有機溶媒層と水層とに分離させ、その後非極性有機溶媒層を取り除き、水で洗浄する。通常、非極性有機溶媒層は中性になるまで、または塩素イオンがもはや検出されなくなるまで洗浄する。非極性有機溶媒層をある程度まで洗浄し、弱アルカリ、たとえば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウムで中和し、次いで形成された塩を水で洗浄することもできる。洗浄した非極性有機溶媒層を乾燥させることができ、非極性有機溶媒および揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンを通常は除去する。洗浄した非極性有機溶媒層を乾燥させるために使用する方法に関しては、その方法が環式ジハイドロジェンポリシロキサンを変性しない限り特に制限はないが、粉末状または顆粒状乾燥剤、たとえば、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムまたはモレキューラシーブスを添加することができる。得られた混合物をかき混ぜ、乾燥剤をろ過して取り除く。非極性有機溶媒および環状ジハイドロジェンポリシロキサンの除去に関しては、環式ジハイドロジェンポリシロキサンが変わらない限りやはり特に制限はない。除去は、減圧下における加熱、または加熱下の乾燥窒素中における吹き付け(blowing)が例示される。本明細書中で言及する揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンは3量体(トリマー)〜15量体(ペンタデカマー)である。生成物が環状ジハイドロジェンポリシロキサンであることは、FT-IRを用いて分析した際にシラノール基の吸収がないことによって確認される。
【0149】
非極性有機溶媒と、塩酸と、イオン性界面活性剤との混合物中でジクロロシランに共加水分解/縮合を施し、上述のように、形成されたジハイドロジェンポリシロキサンから揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンを取り除くことによって、環状ジハイドロジェンポリシロキサンを製造することもできる。塩酸は通常濃塩酸、より典型的には塩化水素含有量15wt%〜37wt%の塩酸である。イオン性界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤を含めることができ、アニオン性界面活性剤としては、脂肪族炭化水素スルホン酸のアルカリ金属塩、たとえば、炭素数6〜20のアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩、炭素数6〜20のアルケンスルホン酸のアルカリ金属塩、およびアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩;脂肪族炭化水素スルホン酸、たとえば、炭素数6〜20のアルキルスルホン酸、炭素数6〜20のアルケンスルホン酸;アルキルベンゼンスルホン酸;アルキルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩;高級脂肪酸のアルカリ金属塩、が例示される。本発明で使用するアルカリ金属としてはナトリウムおよびカリウムが好ましい。カチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩、たとえば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化テトラブチルアンモニウムが、またアルキルアミン塩酸塩、たとえば、デシルアミン塩酸塩が例示される。これらのイオン性界面活性剤は通常、塩酸に含まれる水の0.01〜50wt%、より典型的には0.1〜1.0wt%の量で使用する。
【0150】
通常、加水分解/縮合反応は、非極性有機溶媒と、塩酸と、イオン性界面活性剤とを含む混合物に、ジクロロシランを含む非極性有機溶媒溶液を滴下して添加することにより行われる。通常、滴下添加時には撹拌を継続する。ジクロロシランの揮発を避けるために、この加水分解/縮合反応は通常5℃以下の温度で行う。
【0151】
別の適切なシリコーン組成物は、式[H2SiO2/2]x"'[HSiO3/2]y"'[SiO4/2]z"'のシロキサン単位を有するハイドロジェンポリシロキサンを含む。前記式中、x"'、y"'およびz"'はモル分率を示し、0.12≦x"'<1.0、0≦y"'≦0.88、0≦z"'≦0.30であり、y"'およびz"'は同時には0ではなく、x"'+y"'+z"'=1である。このハイドロジェンポリシロキサンは通常、500〜1,000,000の範囲の値に及ぶ重量平均分子量を有し、120℃未満の温度で液体である。
【0152】
式[H2SiO2/2]x"'[HSiO3/2]y"'[SiO4/2]z"'のシロキサン単位においてz"'=0である場合は、このハイドロジェンポリシロキサンはシロキサン単位式[H2SiO2/2]x"'[HSiO3/2]y"'で表され、この式中、x'"およびy"'は上述のとおりモル分率を示し、x"'+y"'=1である。z"'=0である場合は、通常0.15≦x"'≦1.0および0≦y"'≦0.85である。なぜなら、x"'が0.15よりも小さいと、枝分かれの度合いが増大し、硬化時に亀裂がより起こりやすくなるからである。
【0153】
式[H2SiO2/2]x"'[HSiO3/2]y"'[SiO4/2]z"'のシロキサン単位においてy"'=0である場合は、ハイドロジェンポリシロキサンは式[H2SiO2/2]x"'[SiO4/2]z"'のシロキサン単位で表され、この式中、x'"およびz"'は上述のとおりモル分率を示し、x"'+z"'=1である。y"'=0である場合は、通常0.15≦x"'≦1.0である。というのは、x"'が0.15よりも小さいと、枝分かれの度合いが増大し、硬化時に亀裂がより起こりやすくなるからである。また、0≦z"'≦0.15であり、これは、z"'が0.15よりも大きいと、枝分かれの度合いが増大し、硬化時に亀裂がより起こりやすくなるからである。
【0154】
平均的には、ハイドロジェンポリシロキサンは、x"'、y"'およびz"'のモル分率で上記シロキサン単位式を有するが、このことは、上記シロキサン単位の順序の配列を意味するものではない。ハイドロジェンポリシロキサン中にシロキサン単位をランダムに配置すると、一部ブロック部分が存在するが残りの単位はランダムに配置される場合がある。[H2SiO2/2]単位は常に存在するため、線状ブロックが存在することがあるが、[HSiO3/2]単位および/または[SiO4/2]が常に存在するため、分子構造は少なくとも枝分かれし、網状であっても籠状であってもよく、すなわち、樹脂(レジン)であってよい。これらハイドロジェンポリシロキサン類が[SiO4/2]単位を有する場合は、枝分かれの度合いはさらに増大する。
【0155】
非極性有機溶媒と、塩酸と、イオン性界面活性剤との混合物中、0.12≦(A')<1.0、0≦(B')≦0.88、0≦(C')≦0.30で、(A')および(B')は同時に0ではなく、(A')+(B')+(C')=1であるようなモル比で、(A') ジクロロシラン(H2SiCl2)と、(B') トリクロロシラン(HSiCl3)と、(C') テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)またはテトラクロロシラン(SiC14)に共加水分解/縮合を施すプロセスによって、ハイドロジェンポリシロキサンを製造することができ、その後すぐ、形成されたハイドロジェンポリシロキサン含有非極性有機溶媒層を水で洗浄し、乾燥させ、非極性有機溶媒を揮発性ハイドロジェンポリシロキサンと共に除去する。この例では、Rはアルキル基、典型的にはエチル基を表すが、同様にメチルまたはプロピル基であってもよい。具体的な方法のステップは、環式ジハイドロジェンポリシロキサン類について上で説明したのと同様にして行う。
【0156】
加えて、(A') ジクロロシラン(H2SiCl2)および(B')トリクロロシラン(HSiCl3)の共加水分解により、式[H2SiO2/2]x"'[HSiO3/2]y"'のシロキサン単位のハイドロジェンポリシロキサンを製造することもでき、また(A') ジクロロシラン(H2SiCl2)と(C') テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)もしくはテトラクロロシラン(SiC14)との共加水分解により、式[H2SiO2/2]x"'[SiO4/2]z"'のシロキサン単位(式中、x"'及びz"'はモル分率を示し、0.12≦x"'<1.0、0<z"'≦0.30であり、x"'+z"'=1である)のハイドロジェンポリシロキサンを製造することもできる。
【0157】
塩酸は通常濃塩酸であり、さらにより典型的には、塩化水素含有量15wt%〜37wt%の塩酸である。この塩酸に含まれている水を、(A') ジクロロシラン(H2SiCl2)、(B') トリクロロシラン(HSiCl3)および(C') テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)もしくはテトラクロロシラン(SiC14)の加水分解に使用するため、この塩酸は、(A') ジクロロシラン(H2SiCl2)、(B') トリクロロシラン(HSiCl3)、および(C') テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)もしくはテトラクロロシラン(SiC14)の加水分解に必要な等モル量以上の量で通常は使用する。
【0158】
イオン性界面活性剤は上で説明したとおりであり、トリクロロシランの独立した縮合および急速な加水分解/縮合によるゲル化を抑制し、トリクロロシランのジクロロシランとの共加水分解/縮合を促進する。
【0159】
環式ジハイドロジェンポリシロキサン類、ならびに式[H2SiO2/2]x'"[HSiO3/2]y'"[SiO4/2]z'"のシロキサン単位のハイドロジェンポリシロキサン類を120度以上の温度まで加熱すると、酸化反応によりケイ素結合水素(ケイ素に結合した水素)がヒドロキシル基となり、ケイ素結合水素原子との反応の結果として架橋が起こる。言い換えれば、Si-O-Si結合形成の結果として架橋および硬化が起こる。湿潤アンモニア中では、ケイ素に直接結合した水素原子が活性化され、大気中の水分と容易に反応することによってヒドロキシ基となり、それによりケイ素結合水素原子との反応および架橋が生じる。その結果、シリカ(酸化ケイ素)が形成される。しかしながら、上述の環式ジハイドロジェンポリシロキサン類および上述のハイドロジェンポリシロキサン類の分子中のケイ素原子に直接結合しているすべての水素原子を取り除く必要はなく、これらの水素原子の一部、たとえば、60mol%未満はそのまま残してもよい。
【0160】
加熱は、酸素雰囲気中で行うことができる。空気は、酸素雰囲気の代表例である。あるいはこの酸素雰囲気は、酸素ガスを含有する窒素ガス、または酸素濃度が空気の酸素濃度よりも低いヘリウムガスであってもよい。あるいは、オゾン、亜酸化窒素、または湿潤アンモニアへの暴露を使用して、環式ジハイドロジェンポリシロキサン類およびハイドロジェンポリシロキサン類の反応を誘起することもできる。オゾンは純オゾン、オゾン含有空気、蒸気含有オゾン、およびオゾン含有窒素ガスで例示され、これらのいずれも使用することができる。この反応は、オゾンによって誘起されると、その反応が大気中の酸素によって誘起される場合よりも効率的に起こる。亜酸化窒素は、純亜酸化窒素ガス、亜酸化窒素含有空気、および亜酸化窒素含有窒素ガスで例示され、これらのいずれも使用することができる。湿潤アンモニアは、アンモニア含有空気、水酸化アンモニウムガス、およびアンモニアおよび蒸気を含む窒素ガスで例示され、これらのいずれも使用することができる。オゾンへの暴露、亜酸化窒素への暴露、またはアンモニアへの暴露は、加熱下で行うことができる。
【0161】
上述の環式ジハイドロジェンポリシロキサン類およびハイドロジェンポリシロキサン類は、高エネルギー照射によって硬化させることもできる。電子ビームおよびX線がこのような照射の代表例である。電子ビーム照射の量は通常3Gry以上である。
【0162】
図3を参照すると、基板106が金属箔層312をさらに備える。典型的には、シリコーン層306と金属箔層312とは互いに積層されている。金属箔層312は通常、ステンレス鋼、チタン、コバール(covar)、インバー(invar)、タンタル、黄銅、ニオブ、およびこれらの組合せなどの金属から形成される。
【0163】
シリコーン層306および金属箔層312を備える基板106は、通常2〜1006μm、あるいは15〜500μmの厚さを有する。基板106内では、シリコーン層306が通常0.5〜6μmの厚さを有し、金属箔層312が通常12.5〜1000μmの厚さを有する。
【0164】
他の優れた物理特性の中でも、シリコーン層306および金属箔層312を備える基板106は、亀裂が生じることなく直径3.2mm以下の円筒形スチールマンドレルの上に基板106を曲げることができる可撓性を通常有し、この可撓性はASTM Standard D522-93aのMethod Bに記載されているように測定する。
【0165】
基板106は通常、線熱膨張係数(CTE)が低く、引張強度が高く、弾性率が高い。たとえば、基板106は室温(約23±2℃)〜200℃の温度で通常0〜20μm/m℃、あるいは0〜15μm/m℃、あるいは2〜10μm/m℃のCTEを有する。基板106の引張強度およびヤング率は、金属箔に支配される。
【0166】
図4を参照すると、CISをベースとする光起電デバイス104が、基板106上に形成された通常4〜7層の薄膜層の垂直方向スタックを備える。したがって、図4では基板106上に4層しか示していないが、以下に説明する追加の任意選択層を含めることもできることを理解されたい。これら様々な層は通常、別個のチャンバ内で堆積させ又は改質する。
【0167】
CISをベースとする光起電デバイス104を作製するために、基板106を準備する。上述のように基板106を作製することによって、基板106を準備することができる。あるいは、第三者から基板106を入手することもできる。通常、基板106の裸の初めのロール、すなわちストリップは、回収ロールから供給することができる。この基板106は通常幅約33cm、厚さ約0.005cm、長さ最大約300メートルである。これら幅、厚さおよび長さ寸法はもちろん、CISをベースとする光起電デバイス104についての対象とする最終用途に応じた選択事項である。
【0168】
基板106とその後に形成される1層または複数層のモリブデン層504との間の中間の熱膨張特性を有するように選択される応力対応(stress-compliant)金属中間層(図示せず)を、基板106の上面512上に形成される第1の層として任意選択で利用することができる。この金属中間層は、材料がデバイス104内の他の層へと拡散した場合にCISをベースとするデバイス104に最小限の悪影響しか及ぼさないように、ニッケルバナジウム、銅、黄銅、酸化インジウムスズ(ITO)、ならびに当技術分野で公知であるその他の材料の群から選択される材料から形成することができる。この金属中間層を使用して、後に形成される1層または複数層のモリブデン層504の付着を増強し、また後に形成される1層または複数層のモリブデン層504の分解を最小限に抑えることができる。
【0169】
第1の層を場合によっては形成した後、ある程度の望ましい内部圧縮応力を有し任意選択で同伴酸素を含有するモリブデン(Mo)層504を少なくとも1層を形成する。あるいは、前記の第1の層がない場合には、基板106の上面512上に直接1層または複数層のモリブデン層504を形成することもでき、この場合、1層または複数層のモリブデン層504の特性を変え、また1層または複数層のモリブデン層504の亀裂(クラッキング)を低減するために、1層または複数層のモリブデン層504は通常同伴酸素を含有する。1層または複数層のモリブデン層504は、CISをベースとするデバイス104向けのバック接点層(バックコンタクト層)として機能する。1層または複数層のモリブデン層504は厚さ約0.5μmであってよい。任意選択で、基板106の1層または複数層のモリブデン層504とは反対側に、モリブデンまたは他の別の不活性金属から形成される追加の応力緩和層(図示せず)を形成してもよい。
【0170】
次いで、基板106上にCISをベースとする太陽光吸収体層506を形成する。より具体的には、CISをベースとする太陽光吸収体層506は通常、当技術分野で公知の方法により1層または複数層のモリブデン層504の上面514上に形成する。本発明で使用するCISは、金属合金、例えば、ガリウム、アルミニウム、ホウ素、テルル、又は硫黄などを伴う又はそれらを伴わない、銅-インジウム-二セレン化物(銅-インジウム-ジセレナイド)を指す。たとえば、CISをベースとする太陽光吸収体層506は、銅-インジウム-ガリウム-二セレン化物(CIGS)でもよい。これらのさまざまな組成物は、とりわけ、CISをベースとする光起電デバイス104において望まれる特定の特性に応じて、吸収体層として基本的に交換可能に使用することができる。限定ではなく一例として、CISをベースとする太陽光吸収体層506は厚さ約2.0μmであってよい。当技術分野で公知のように、500℃を超える温度で25〜30分間加熱することによって、CISをベースとする太陽光吸収体層が最良に形成される。より一般的には、層をアニールするために、約575℃の温度での加熱をデバイスに施す。本発明の基板106は500℃を超える温度に耐えることができるため、発電の際のCISをベースとするデバイスの変換効率が最大限に引き出される。
【0171】
CISをベースとする太陽光吸収体層506の上面516上に、ヘテロ接合パートナー層または窓層508を形成する。窓層508は通常、硫化カドミウム(CdS)、亜鉛と合金化したCdS(ZnCdS)、硫化亜鉛、酸化亜鉛、および水酸化亜鉛、あるいは酸化亜鉛-マグネシウム、および水酸化亜鉛もしくは水酸化マグネシウムから形成される。窓層508は通常化学浴析出(CBD、chemical bath deposition)によって形成されるが、スパッタリングなどの非湿式法によって形成することもできる。限定ではなく一例として、窓層508は厚さ約0.05μmであってよい。
【0172】
任意選択で、窓層508の上面518上に電気絶縁層(図示せず)を形成してもよい。限定ではなく一例として、電気絶縁層は厚さ約0.05μmでよく、真性酸化亜鉛(i-ZnO)、酸化亜鉛-マグネシウム合金、または酸化スズから形成することができる。このような層の使用は当技術分野で公知である。
【0173】
電気絶縁層を使用しない場合には、窓層508の上面518上に直接、または存在する場合には電気絶縁層上に直接、半透明導電性酸化物の形のトップ接点層510を形成する。トップ接点層510は通常、ドープされた酸化スズ、酸化インジウム-スズ(ITO)合金、アルミニウムまたはガリウムを用いたドープ酸化亜鉛(ZnO:Al, Ga)、あるいは酸化スズから形成される。限定ではなく一例として、トップ接点層510は厚さ約0.6μmであってよい。
【0174】
一実施形態においては、1層または複数層のモリブデン層504とCISをベースとする太陽光吸収体層506との間にバック接点界面層(図示せず)を形成することができる。このバック接点界面層は、ドープした亜鉛-テルル(ZnTe)から形成することができる。この実施形態においては、電気絶縁層とトップ接点層510とを共に酸化スズから形成することができる。バック接点界面層を含むこと、およびトップ接点層と電気絶縁層とを共に酸化スズで形成することに関する追加の詳細は、Ilvydas Matulionis、Sijin Han、Jennifer A. Drayton、Kent J. PriceおよびAlvin D. Compaan、Mat. Res. Soc. Symp. Proc. Vol. 668、p.H8.23.1、April (2001)に教示されており、これは参照によりその全体を本明細書中に援用する。
【0175】
本発明の一実施形態においては、透明な導電性酸化物層上に、Niの薄い層とAlまたはAgのより厚い層とを通常備える金属グリッド(図示せず)を形成する。
【0176】
幅広い堆積プロセスを使用して、基板106上に様々な層を形成することができる。たとえば、堆積プロセスは、プラズマスパッタ(RF、AC、DC、任意選択でプラズマ増強)法、蒸発(熱、電子ビーム、もしくは陰極アーク)法、化学気相成長(低圧、大気圧、もしくはプラズマ増強)、昇華法、物理気相成長法、および/または熱線法であってよい。
【0177】
約1〜20ミリトールの範囲に及ぶ圧力下で、スパッタリングを実現することができる。約10分の1〜20ミリトールの範囲に及ぶ圧力下で、中空陰極スパッタまたは陰極アーク技法を実現することができる。蒸発圧は、約0.01〜0.1ミリトールの範囲に及ぶことができる。化学気相およびプラズマ増強化学気相成長の圧力は、約10ミリトール〜大気圧の範囲に及ぶことができる。限定ではなく一例として、RF、AC、およびDCスパッタリング用の電源は、約60平方センチメートルのターゲットについて、約50ワット〜5,000ワットの範囲に及ぶことができる。回転軸距離は約2.25インチ(5.72cm)であってよい。限定ではなく一例として、個々のまたは複数の電子ビームポケット源あるいは単一の直線ビーム蒸着トラフ(trough)を利用することができる。
【0178】
特定の一実施形態においては、約1〜20ミリトールの範囲に及ぶ圧力下で、DCスパッタリングプロセスを用いて基板106または界面層上に1層または複数層のモリブデン層504を形成する。限定ではなく一例として、DCスパッタリング用の電源は、約60平方センチメートルのターゲットについて、約500ワット〜5,000ワットの範囲に及ぶことができる。Shafarmanら、the Space Photovoltaic Research and Technology Conference、NASA Glenn、クリーブランド、オハイオ州、September 2005に開示されているように、スパッタ堆積プロセス時に1層または複数層のモリブデン層504中に酸素を取り込んでもよい。
【0179】
特定の一実施形態においては、熱共蒸発プロセスを用いて、1層または複数層のモリブデン層504上にCISをベースとする太陽光吸収体層506を形成する。この熱共蒸発プロセスは、Noufiらの米国特許第5441897号に、またはMickelsenらの米国特許第4335226号に開示されている方法など、当技術分野で公知である様々な方法を用いて行うことができる。
【0180】
特定の一実施形態においては、化学浴析出法、化学表面析出法、またはスパッタリングなどの非湿式プロセスを用いて、CISをベースとする太陽光吸収体層506上に窓層508を形成する。化学浴析出法は、当技術分野で公知である様々な方法によって実現することができる。たとえば、McCandlessらの米国特許第6537845号には、CISをベースとする太陽光吸収体層の第1の表面516上にCdS浴液を塗布するための方法が開示されている。また、当技術分野で公知のように、窓層508は、CdSから形成する場合、水性の化学浴に浸すことによってCISをベースとする太陽光吸収体層506上に形成することができる。このような化学浴の成分には、カドミウム塩および/または亜鉛塩と、(NH2)2CS(これは一般にチオ尿素と称される)と、水酸化物剤と、水とが通常含まれる。例示的な塩には硫酸カドミウムおよび硫酸亜鉛が含まれ、水酸化物剤の例は水酸化アンモニウム(NH4OH)である。浴温度は通常60〜85℃の範囲内である。通常、まずCISをベースとする太陽光吸収体層506の上面516を、CISをベースとする太陽光吸収体層506を備える基板106が所望の温度に達するのに十分な時間(たとえば、1分)、1種または複数種の塩および水酸化物剤を含む溶液に浸す。次いでチオ尿素を適用し、化学反応を数分間起こすことができる。CISをベースとする太陽光吸収体層506を備える基板106を化学浴から取り出し、未反応の浴溶液を太陽光吸収体層506の第1の表面516から濯ぎ落とす。得られた窓層508の厚さは通常10〜100nmの範囲内である。
【0181】
一実施形態においては、接合材料(たとえば、太陽光吸収体層506/窓層508ヘテロ接合)に、または太陽光吸収体層506にのみ高温化学的処理を行う。このような高温化学的処理では、湿式または乾式でCdCl2を塗布し、その後CdCl2を有する基板に高温(たとえば、350〜450℃)を5〜30分間適用することができる。
【0182】
特定の一実施形態においては、約1〜20ミリトールの範囲に及ぶ圧力下で、パルスDCまたはRFスパッタリングを用いて窓層508上に電気絶縁層を形成する。限定ではなく一例として、パルスDCスパッタリング用の電源は、約60平方センチメートルのターゲットについて、約50ワット〜500ワットの範囲に及ぶことができる。このようなスパッタリングによって形成される電気絶縁層は、10〜100nmの範囲の厚さを有することができる。
【0183】
特定の一実施形態においては、約1〜20ミリトールの範囲に及ぶ圧力下で、パルスDCスパッタリングを用いて窓層506または電気絶縁層上にトップ接点層510を形成する。限定ではなく一例として、パルスDCスパッタリング用の電源は、約60平方センチメートルのターゲットについて、約500ワット〜1,500ワットの範囲に及ぶことができる。このようなスパッタリングによって形成されるトップ接点層の典型的な膜厚は、200〜500nmの範囲に及ぶことができる。
【0184】
本発明の一実施形態においては、図5に示すように、CISをベースとする光起電デバイスを共通基板106上に「モノリシックに集積する」ことができる。特に、このモノリシックな集積により、複数の光起電デバイス502A、502B、502Cが基板106上にモノリシックに集積されたアレイ102が得られる。アレイ102は、複数の接合を含む任意の量の光起電デバイスを備えることができることを理解されたい。
【0185】
図5において、CISをベースとするデバイス502はすべて共通の基板106を有するが、CISをベースとする各光起電デバイス502は、第1のスクライブ604によって1つまたは複数の隣接するCISをベースとする光起電デバイス502から電気的に分離されている。各第1のスクライブ604は、たとえば所与のCISをベースとする光起電デバイス502の2つの部分を電気的に絶縁するために、抵抗充填剤612で充填することができる。言い方を変えれば、CISをベースとする各々の光起電デバイス502は、1層または複数層のモリブデン層504、太陽光吸収体層506、窓層508、およびトップ接点層510のセクションを備え、基板106は各デバイス502に共通である。さらに、各デバイス502は、下は基板106に至る第1のスクライブ604を備え、第1のスクライブ604がデバイス502どうしの間に電気的絶縁性をもたらすことが可能となるように各第1のスクライブ604は抵抗充填剤で充填されている。限定ではなく一例として、抵抗充填剤は抵抗インクであっても、または抵抗酸化物であってもよい。
【0186】
一実施形態において、光起電デバイス502A、502B、502Cは、電流610が光起電デバイス502中を直列に流れるように電気的に接続されている。図5に示すように、電流610は端子608を通ってアレイ102に入ることができる。図5に示す実施形態においては、電流610が、端子608から光起電デバイス502Aの上端に沿ってトップ接点層510を通って流れる。その後電流610は、トップ接点層510から第2のスクライブ602を通って1層または複数層のモリブデン層504へと流れる。第2のスクライブ602は、トップ接点層510を形成するために使用する導電性材料で充填されている。次に、電流610は1層または複数層のモリブデン層504を通って次の光起電デバイス、すなわち、光起電デバイス502Bへと流れる。電流610はその後、1層または複数層のモリブデン層504から、CISをベースとする太陽光吸収体層506および窓層508を通って、光起電デバイス502Bのトップ接点層510へと流れる。電流610は、光起電デバイス502Aにおける場合と同様にして光起電デバイス502Bの残りの部分を通って流れ続け、その後同様にして光起電デバイス502Cを通って流れる。電流は最終的に別の端子614を通ってアレイ102から出る。図5に示す実施形態は直列に接続された光起電デバイス502A、502B、502Cを示しているが、光起電デバイス502A、502B、502Cを並列に接続することも、あるいは直列と並列を組み合わせて接続することもできることを理解されたい。
【0187】
図5に示すアレイ102を作製するために、上述の堆積操作と共に組み入れられる一連のスクライビングおよび印刷操作を使用して、モノリシックに集積された光起電デバイス104の配列を基板106の単一区域上に形成することができ、それによりアレイ102が形成される。
【0188】
1層または複数層のモリブデン層504と、CISをベースとする太陽光吸収体層506と、場合により任意選択で窓層508と、上述の他の任意選択層とを形成した後、基板106は、まず分割し、その後隣接する「分割された」領域を順次連続的に接続するために設計された一連の操作を経る。第1のスクライブ操作とは、堆積させた層すべてをスクライビングにより貫通してむき出しの、コーティングされてない基板106を露出させることであり、それにより第1のスクライブ604が形成される。この第1のスクライブ操作により、堆積された層が複数の個々のセグメントに機能的に分割され、それにより各セグメントが電気的に絶縁される。これらのセグメントは共に、そのままの基板106によって保持される。使用するスクライビング技法は設計事項であるが、本発明における好ましい方法は高出力密度レーザを用いて実現される。
【0189】
この第1のスクライブ操作のすぐ後、通常第2の選択的スクライブ操作を行って第2のスクライブ602を形成する。第1のスクライブ604とは対照的に、第2のスクライブ602は、1層または複数層のモリブデン層504の上面514まで切り込まれるだけであり、それにより1層または複数層のモリブデン層504は堆積されたときの状態のまま残される。この第2の選択的スクライブ操作により第2のスクライブ602が形成され、これら第2のスクライブ602は後に、トップ接点層510を形成するために使用する最適な導電性酸化物または材料で充填されることになる。図5からわかるように、第1のスクライブ604は基板106まで延在しているが、第2のスクライブ602は1層または複数層のモリブデン層504までしか延在していない。
【0190】
トップ接点層中の導電性酸化物が第1のスクライブを「埋める(filling in)」こと、また実際に隣接する分割されたモリブデン層504を再接続することを防止するために、第1のスクライブ604は通常絶縁体で充填される。これは、典型的には、高出力密度レーザと同期した商業的に適合されたインクジェットディスペンサヘッドによって堆積させた紫外線硬化性インクを用いて実現される。任意選択のステップにおいて、窓層508上に、または窓層508がまだ形成されていない場合にはCISをベースとする太陽光吸収体層506上に電気絶縁層を形成する。
【0191】
次いで、スクライビング後の三次元上面616対してトップ接点層510を形成する。最後に、第3のスクライブ606を切り込む。図5からわかるように、第3のスクライブ606は1層または複数層のモリブデン層504の上面514まで延在している。第3のスクライブ606により電気的絶縁ももたらされて、光起電デバイス502A、502B、502Cのアレイ102の形成が完了する。
【0192】
本発明のCISをベースとする光起電デバイス104は、最大19%の効率をもつことができ、さらにそれを超えることもある効率をもたらしうる。本発明の基板106を用いて最大19%の効率を実現することができるが、最大限の効率をもたらすプロセス条件を得るためには実験が必要となる。
【0193】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、決して本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【実施例】
【0194】
[実施例1]
〔ステンレス鋼箔層と、Dow Corning FOX樹脂から形成されたシリコーン層とを備える基板〕
スピンコータ上の6"(15cm)×6"(15cm)のステンレス鋼箔層上に、Dow Corning 9-5101ハイドロジェンシルセスキオキサン樹脂を、2000rpmで30秒間塗布した。ステンレス鋼箔層は、厚さ25マイクロメートルの430ステンレス鋼であり、日本、東京のMarubeni Corporationから入手可能である。このステンレス鋼箔層上の樹脂を200℃の空気循環炉内で2時間硬化させて、箔層上にシリコーン層を形成した。シリコーン層の厚さは約1マイクロメートルであった。
【0195】
[実施例2]
〔ステンレス鋼箔層と、ハイドロジェンポリシロキサン樹脂から形成されるシリコーン層とを備える基板〕
トリクロロシランおよびジクロロシランを共加水分解し、洗浄し、水解物を縮合させて平均組成(H2SiO2/2)0.29(HSiO3/2)0.71の樹脂を得ることによって、ハイドロジェンポリシロキサン樹脂を調製した。この樹脂を、実施例1で説明したようにステンレス鋼箔層上に塗布した。ステンレス鋼箔層上の樹脂を200℃の空気循環炉内で2時間硬化させて、箔層上にシリコーン層を形成した。
【0196】
[実施例3]
〔実施例1で作製した基板を備えるCIGS(銅インジウムガリウム二セレン化物)光起電デバイスの製造および性能〕
実施例1で作製した基板上にモリブデンをスパッタリングして、厚さ約0.5マイクロメートルのモリブデン層を形成させた。このモリブデン層上に、セレン雰囲気中で銅、インジウムおよびガリウムを共蒸発させて、厚さ約2マイクロメートルのCISをベースとする太陽光吸収体層を形成した。次いで、このCISをベースとする太陽光吸収体層上に、湿式CBD浴プロセスによりCdSを堆積させて、厚さ約50nmの窓層を形成した。この窓層上にITOをRFスパッタリングしてトップ接点層を形成し、次いでトップ接点層上に銅グリッドを蒸着させた。AM1.5照明条件下で電池性能を試験し、5〜7%の効率が測定された。
【0197】
[実施例4]
〔実施例2で作製した基板を備えるCISをベースとする光起電デバイスの製造および試験〕
実施例2で作製した基板を含め実施例3で説明したのと同様にして、CISをベースとする光起電デバイスを製造した。これらのCISをベースとする光起電デバイスを、実施例3で示した条件と同じ条件下で試験した。6〜14%の効率が測定された。
【0198】
[実施例5]
〔ステンレス鋼箔層と、MP101 Crystal Coat樹脂から形成されるシリコーン層とを備える基板〕
MP 101 Crystal Coat樹脂をSDC Coating Technologies, Inc.から入手した。この樹脂は31wt.%であった。この樹脂をステンレス鋼箔層に塗布し、コーティングを実施例1で説明したのと同様にして硬化させた。
【0199】
[実施例6]
〔実施例5で作製した基板上のCISをベースとする光起電デバイスの製造および試験〕
実施例5で作製した基板上に実施例3で説明したのと同様にして、CISをベースとする光起電デバイスを製造した。このCISをベースとする光起電デバイスを、実施例3で示した条件と同じ条件下で試験した。6〜9%の効率が測定された。
【0200】
本発明を例示的に説明してきたが、使用してきた用語は限定ではなく説明の単語の範疇に入るものであることを理解されたい。明らかに、本発明の多くの変更形態および変形形態が、上記教示を考慮すると可能である。したがって、特許請求の範囲内で、具体的に説明した以外の別のやり方で本発明を実施することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】図1は、本発明の銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスの写真である。
【図2】図2は、本発明の銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスの平面図である。
【図3】図3は、本発明の銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイス用の概略側断面図であり、その基板はシリコーン層および金属箔層を有する。
【図4】図4は、本発明の銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスの概略側断面図である。
【図5】図5は、繊維強化材を有する基板を備える銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイスのモノリシックな集積を示す図である。
【符号の説明】
【0202】
102 アレイ
104 銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイス
106 基板
108 電磁エネルギー
110 端子
306 シリコーン層
312 金属箔層
502 CISをベースとする光起電デバイス
504 後に形成されるモリブデン層
506 CISをベースとする太陽光吸収体層
508 窓層
510 トップ接点層
512 上面
514 上面
516 上面
518 上面
602 第2のスクライブ
604 第1のスクライブ
606 第3のスクライブ
608 端子
610 電流
612 抵抗充填剤
614 端子
616 三次元上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、インジウムおよびセレンを含むCISをベースとする太陽光吸収体層(506)と、
シリコーン組成物から形成されるシリコーン層(306)と、金属箔層(312)とを備える基板(106)と
を備える、銅インジウム二セレン化物(CIS)をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項2】
前記金属箔層(312)が、ステンレス鋼、チタン、コバール、インバー、タンタル、黄銅、ニオブおよびこれらの組合せの群から選択される金属から形成される、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項3】
前記金属箔層(312)が12.5〜1000μmの厚さを有する、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項4】
前記CISをベースとする太陽光吸収体層(506)が、ガリウム、アルミニウム、ホウ素、テルル、硫黄およびこれらの組合せの群から選択される金属をさらに含む、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項5】
前記シリコーン組成物が、
(A)ケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素を有するシリコーン樹脂と、
(B)1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子またはケイ素結合アルケニル基を有し、前記シリコーン樹脂を硬化するのに十分な量で存在する有機ケイ素化合物と、
(C)触媒量のヒドロシリル化触媒と
を含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物としてさらに定義される、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂が下記式:
(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R2SiO3/2)y(SiO4/2)z
(前記式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル基またはC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であってこれらは共に脂肪族の不飽和がなく、R2はR1、アルケニル基、または水素であり、wは0〜0.9であり、xは0〜0.9であり、yは0〜0.99であり、zは0〜0.85であり、w+x+y+z=1であり、y+z/(w+x+y+z)は0.1〜0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01〜0.9であり、ただし、前記シリコーン樹脂は1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する)
を有する、請求項5に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂が、
(A)下記式:
(R1R22SiO1/2)w(R22SiO2/2)x(R2SiO3/2)y(SiO4/2)z
の前記シリコーン樹脂と、
(D)(iii)下記式:
R5R12SiO(R1R5SiO)cSiR12R5および
R1R22SiO(R22SiO)dSiR22R1
(式中cおよびdがそれぞれ4〜1000の値を有する)
を有するゴムから選択される少なくとも1種のシリコーンゴムとの、前記ヒドロシリル化触媒(c)の存在下、および場合によっては有機溶媒の存在下での反応生成物を含むゴム改質シリコーン樹脂としてさらに定義され、ただし、前記シリコーン樹脂(A)がケイ素結合アルケニル基を有する場合、(D)(iii)はケイ素結合水素原子を有し、また、前記シリコーン樹脂(A)がケイ素結合水素原子を有する場合、(D)(iii)はケイ素結合アルケニル基を有する、請求項6に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項8】
前記シリコーン組成物が、
(A2)ケイ素結合ヒドロキシ基または加水分解性基を少なくとも2個有するシリコーン樹脂と、
場合により、(B1)ケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤と、
場合により、(C1)触媒量の縮合触媒と
を含む縮合硬化性シリコーン組成物としてさらに定義される、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項9】
前記シリコーン樹脂が下記式:
(R1R62SiO1/2)w'(R62SiO2/2)x'(R6SiO3/2)y'(SiO4/2)z'
(前記式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル基またはC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であってこれらは共に脂肪族の不飽和がなく、R6はR1、-H、-OH、または加水分解性基であり、w'は0〜0.8であり、x'は0〜0.95であり、y'は0〜1であり、z'は0〜0.99であり、w'+x'+y'+z'=1であり、ただし、前記シリコーン樹脂(A2)は1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を有する)
を有する、請求項8に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項10】
前記シリコーン樹脂が下記式:
(R1R62SiO1/2)w'(R62SiO2/2)x'(R6SiO3/2)y'(SiO4/2)z'
(前記式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル基またはC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であってこれらは共に脂肪族の不飽和がなく、R6はR1、-H、-OH、または加水分解性基であり、w'は0〜0.8であり、x'は0〜0.95であり、y'は0〜1であり、z'は0〜0.99であり、w'+x'+y'+z'=1であり、ただし、シリコーン樹脂(A2)は1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシ基、または加水分解性基を有し、ただし、R1SiO3/2単位およびSiO4/2単位の合計はゼロよりも大きい)
を有する、請求項8に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項11】
前記シリコーン組成物が、
(i) 下記式:
(R1R62SiO1/2)w'(R62SiO2/2)x'(R6SiO3/2)y'(SiO4/2)z'
を有するシリコーン樹脂、
(ii) (i)の加水分解性前駆体、および
(iii) 下記式:
R83SiO(R1R8SiO)mSiR83
のシリコーンゴム
から選択される有機ケイ素化合物を、水、(iv) 縮合触媒、および(v) 有機溶媒の存在下で反応させることによって調製されるゴム改質シリコーン樹脂(A3)(前記式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル基またはC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であってこれらは共に脂肪族の不飽和がなく、R6はR1、-H、-OH、または加水分解性基であり、R8はR1または加水分解性基であり、mは2〜1,000であり、w'は0〜0.8であり、x'は0〜0.95であり、y'は0〜1であり、z'は0〜0.99であり、w'+x'+y'+z'=1である)と、
場合によっては、(B1)ケイ素結合加水分解性基を有する架橋剤と、
場合によっては、(C1)触媒量の縮合触媒と
を含む縮合硬化性シリコーン組成物としてさらに定義される、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項12】
前記シリコーン組成物が、微粒子状の無機充填剤をさらに含む、請求項8に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項13】
前記無機充填剤が、少なくとも1つの物理的寸法が約200nm未満であるシリカナノ粒子としてさらに定義される、請求項12に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項14】
前記シリコーン組成物が、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物としてさらに定義される、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項15】
前記フリーラジカル硬化性シリコーン組成物が、下記式:
(R1R92SiO1/2)w"(R92SiO2/2)x"(R9SiO3/2)y"(SiO4/2)z"
(前記式中、R1は、C1〜C10のヒドロカルビル基またはC1〜C10のハロゲン置換ヒドロカルビル基であってこれらは共に脂肪族の不飽和がなく;R9はR1、アルケニル、またはアルキニルであり;w"は0〜0.99であり;x"は0〜0.99であり;y"は0〜0.99であり;z"は0〜0.85であり;w"+x"+y"+z"=1である)
を有するシリコーン樹脂を含む、請求項14に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項16】
前記シリコーン組成物が、H2SiO2/2単位を含み、かつ値が1,500〜1,000,000の範囲に及ぶ重量平均分子量を有し、かつ室温で液体である環式ジハイドロジェンポリシロキサンを含む、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項17】
前記シリコーン組成物が、[H2SiO2/2]x'''[HSiO3/2]y'''[SiO4/2]z'''
(前記式中、x"'、y"'、およびz"'はモル分率を示し、0.12≦x"'≦1.0、0≦y'"≦0.88、0≦z'"≦0.30であり、y"'およびz"'は同時に0ではなく、x"'+y"'+z"'=1である)
のシロキサン単位の式を有するハイドロジェンポリシロキサンを含む、請求項1に記載の銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)。
【請求項18】
請求項1に記載の前記銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)を複数備えるアレイ(102)。
【請求項19】
前記CISをベースとする光起電デバイス(104)が前記基板(106)上にモノリシックに集積されている、請求項18に記載のアレイ(102)。
【請求項20】
以下のステップ:
シリコーン組成物から形成されるシリコーン層(306)と、金属箔層(312)とを備える基板(106)を設けるステップ;及び
銅、インジウムおよびセレンを含むCISをベースとする太陽光吸収体層(506)を前記基板(106)上に形成するステップ、
を含む、銅インジウム二セレン化物をベースとする光起電デバイス(104)を作製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−534839(P2009−534839A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506541(P2009−506541)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/009359
【国際公開番号】WO2007/123898
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【出願人】(508311798)アイティーエヌ・エナジー・システムズ・インコーポレーテッド (4)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】