説明

銅スズ硫化物および銅亜鉛スズ硫化物膜を製造するための方法

本発明は、基板上にCTSおよびCZTSならびにそれらのセレンアナログの膜を製造するための方法に関する。そのような膜は、光起電力デバイスの製造において有用である。本発明はまた、被覆基板を製造するための方法および光起電力デバイスを作製するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下の米国仮特許出願:第61/180,179号、第61/180,181号、第61/180,184号、および第61/180,186号に基づき米国特許法第119条(e)による優先権を主張し、それらの利益を主張している。これらの米国仮特許出願はいずれも2009年5月21に出願されたものであり、いずれもこの参照により、その全体が、あらゆる目的のために本出願の一部として援用される。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、基板上にCZTSおよびそのセレンアナログの膜を製造するための方法に関する。そのような膜は、光起電力デバイスの製造において有用である。本発明はまた、被覆基板を製造するための方法および光起電力デバイスを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
無毒性で豊富な元素のみを含有する結晶性多元金属カルコゲニド組成物は、環境的に持続可能な方法およびデバイスの開発において特に関心が寄せられている。銅スズ硫化物(CuSnSまたは「CTS」)および銅亜鉛スズ硫化物(CuZnSnSまたは「CZTS」)は、このクラスの材料の特に有用な例であり、小バンドギャップ半導体として、非線形物質として、そして光電池材料に適した候補としての、それらの潜在的な用途ゆえに、関心が寄せられている。
【0004】
薄膜光電池は、典型的に、半導体(例えば、CdTeまたは銅インジウムガリウム硫化物/セレン化物(CIGS))をエネルギー吸収体材料として使用する。カドミウムの毒性およびインジウムの限られた入手可能性のため、代替物が求められている。CZTSは、約1.5eVのバンドギャップエネルギー、および大きい吸収係数(およそ10cm−1)を有しており、有望なCIGS代用物となっている。
【0005】
CZTS薄膜の作製における課題は、結晶性多元金属カルコゲニド組成物の膜の作製において克服しなければならない一般的課題を説明するのに役立つ。CZTS薄膜を作製するための現行技術(例えば、熱蒸着、スパッタリング、ハイブリッドスパッタリング、パルスレーザー堆積および電子ビーム蒸着)は複雑な装置を必要とし、それゆえに費用がかかる傾向がある。電気化学堆積は、費用のかからない方法であるが、組成の不均一性および/または二次相の存在のため、この方法では高品質CZTS薄膜を生成することができない。CZTS薄膜はまた、チオ尿素を硫黄源として使用する、金属塩(典型的には、CuCl、ZnCl、およびSnCl)を含有する溶液のスプレー熱分解によっても作製され得る。この方法は、不良な形態、密度および粒度の膜を生じる傾向がある。光化学堆積もまた、p形CZTS薄膜を生成することが示されている。しかしながら、生成物の組成が十分に制御されず、不純物(例えば、水酸化物)の形成を回避することが難しい。また、高沸点アミンをキャッピング剤(capping agent)として組み込んだCZTSナノ粒子の合成も開示されている。ナノ粒子層中のキャッピング剤の存在は、アニールされたCZTS膜を汚染し、膜の密度を低下させ得る。
【0006】
溶解Cu−Snカルコゲニド(SまたはS−Se)、Zn−カルコゲニド粒子、および過剰カルコゲンを含んだヒドラジンベースのスラリーの製造を含む、CZTSに対するハイブリッド溶液−粒子アプローチが報告されている。しかしながら、ヒドラジンは、Merck Indexにおいて「猛毒(violent poison)」として記載されている、反応性の高い、潜在的に爆発性の溶媒である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、調整可能な組成および形態を有する高品質の結晶性CTSおよびCZTS膜を提供する、単純な、費用のかからない、規模適応性の(scalable)材料、ならびに工程数の少ない方法に対する必要性が依然として存在する。比較的毒性の低い溶媒および試薬を用いた、これらの材料への低温経路に対する必要性もまた存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、
a)インクを製造する工程と、
b)上記インクを基板上に配して、被覆基板を形成する工程と
を包含する方法であって、上記インクは、
i)窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の銅錯体、硫化銅、セレン化銅、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される銅源;
ii)窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子のスズ錯体、水素化スズ、硫化スズ、セレン化スズ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるスズ源;
iii)必要に応じて、窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の亜鉛錯体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される亜鉛源;
iv)必要に応じて、S元素、Se元素、CS、CSe、CSSe、RS−Z、RSe−Z、RS−SR、RSe−SeR、RC(S)S−Z、RC(Se)Se−Z、RC(S)S−SC(S)R、RC(Se)Se−SeC(Se)R、RC(O)S−Z、およびそれらの混合物からなる群より選択されるカルコゲン化合物であって、各Zは、独立して、H、NR、およびSiRからなる群より選択され;ここで、各RおよびRは、独立して、ヒドロカルビルならびにO置換、N置換、S置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;各Rは、独立して、ヒドロカルビル、O置換、N置換、S置換、Se置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基からなる群より選択され;そして各Rは、独立して、水素、O置換、N置換、S置換、Se置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基からなる群より選択される、カルコゲン化合物;
v)必要に応じて、溶媒
を含むが、但し、
溶媒が存在しない場合は、上記カルコゲン化合物および上記スズ源のうちの少なくとも一方は、室温で液体であり;そして
上記銅源が硫化銅およびセレン化銅から選択され、かつ上記スズ源が硫化スズおよびセレン化スズから選択される場合は、上記溶媒はヒドラジンではない
方法である。
【0009】
本発明の別の態様は、光起電力デバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、用語「太陽電池」および「光電池」は、特に別段の規定のない限り、同義である。これらの用語は、可視および近可視光エネルギーを、使用可能な電気エネルギーに、半導体を用いて変換するデバイスをいう。用語「バンドギャップエネルギー」、「光学バンドギャップ」および「バンドギャップ」は、特に別段の規定のない限り、同義である。これらの用語は、半導体材料中に電子−正孔対を生成するために必要とされるエネルギーのことをいい、一般に、価電子帯から伝導帯へ電子を励起するのに必要とされる最小エネルギーである。
【0011】
本明細書において、元素群は、CAS表記を利用して表される。本明細書で使用される場合、用語「カルコゲン」は、VIA族元素をいい、用語「金属カルコゲニド」または「カルコゲニド」は、金属およびVIA族元素を含む物質をいう。好適なVIA族元素としては、硫黄、セレンおよびテルルが挙げられる。金属カルコゲニドは、これらの化合物の多くが十分に地上太陽スペクトルの範囲内にある光学バンドギャップ値を有することから、光起電力用途のための重要な候補物質である。
【0012】
本明細書において、用語「二元金属カルコゲニド」は、1種類の金属を含むカルコゲニド組成物をいう。用語「三元金属カルコゲニド」は、2種類の金属を含むカルコゲニド組成物をいう。用語「四元金属カルコゲニド」は、3種類の金属を含むカルコゲニド組成物をいう。用語「多元金属カルコゲニド」は、2種類以上の金属を含むカルコゲニド組成物をいい、三元および四元の金属カルコゲニド組成物を包含する。
【0013】
本明細書において、用語「銅スズ硫化物」および「CTS」は、CuSnSをいい、「銅スズセレン化物」および「CTSe」は、CuSnSeをいい、そして「銅スズ硫化物/セレン化物」および「CTS−Se」は、CuSn(S,Se)の全ての可能な組み合わせ(CuSnS、CuSnSe、およびCuSnSSe3−xを含み、ここで、0≦x≦3である)を包含する。用語「銅スズ硫化物」、「銅スズセレン化物」、「銅スズ硫化物/セレン化物」、「CTS」、「CTSe」および「CTS−Se」は、さらに、小数ストイキオメトリー(fractional stoichiometry)(例えば、Cu1.80Sn1.05)を包含する。すなわち、元素のストイキオメトリーは、厳密に2:1:3のモル比とは異なり得る。
【0014】
本明細書において、銅亜鉛スズ硫化物および「CZTS」という用語は、CuZnSnSをいい、銅亜鉛スズセレン化物および「CZTSe」は、CuZnSnSeをいい、そして銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物および「CZTS−Se」は、CuZnSn(S,Se)の全ての可能な組み合わせ(CuZnSnS、CuZnSnSe、およびCuZnSnSSe4−xを含み、ここで、0≦x≦4である)を包含する。用語「CZTS」、「CZTSe」および「CZTS−Se」は、さらに、小数ストイキオメトリーを有する銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物半導体(例えば、Cu1.94Zn0.63Sn1.3)を包含する。すなわち、元素のストイキオメトリーは、厳密に2:1:1:4のモル比とは異なり得る。CTS−SeおよびCZTS−Seと称される物質はまた、少量の他の元素(例えば、ナトリウム)も含有し得る。これまでのところ、最も高い効率は、銅不足CZTS−Se太陽電池について測定されている。「銅不足」とは、比Cu/(Zn+Sn)が、1.0未満であることと理解される。高効率デバイスには、亜鉛とスズとのモル比が1より大きいことも望ましい。
【0015】
用語「ケステライト(kesterite)」は、鉱物のケステライトファミリーに属する物質をいうために一般的に使用されており、鉱物CZTSの一般名称でもある。本明細書で使用される場合、用語「ケステライト」は、公称式CuZnSn(S−Se)を有するI4−またはI4−2m空間群の結晶性化合物をいい、また、亜鉛が少しの銅を置換して、または銅が少しの亜鉛を置換して、CuZnSn(S−Se)(ここで、cは2より大きく、かつzは1より小さいか;または、cは2より小さく、かつzは1より大きい)をもたらすこととなった「非典型ケステライト(atypical kesterite)」もいう。用語「ケステライト構造」は、こうした化合物の構造をいう。X線吸収分光法(XAS)は、ケステライト形態に特有のスペクトル特徴を明らかにし、ケステライト相中のCuとZnとの比の決定を可能にする。これは、全体として同じ元素比を示す別個の硫化物相の混合物と明確に区別される、非典型ケステライト組成物の同定を可能にする。この相におけるストイキオメトリーの制御は、光起電力デバイスにおける性能改善のための電子特性の制御を可能にする。
【0016】
本明細書で使用される場合、「コヒーレントドメインサイズ」は、欠陥のないコヒーレント構造が存在し得る、結晶ドメインのサイズをいう。コヒーレンシーは、3次元秩序構造(ordering)がこれらのドメイン内で乱れていないという事実から得られる。
【0017】
本明細書において、用語「金属塩」は、金属カチオンおよび無機アニオンがイオン結合により結合している組成物をいう。関連するクラスの無機アニオンは、酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩、およびハロゲン化物を含む。本明細書において、用語「金属錯体」は、金属が、典型的に「配位子」または「錯化剤」と呼ばれる取り囲む一連の分子またはアニオンと結合している組成物をいう。金属原子またはイオンと直接結合している配位子内の原子は、「ドナー原子」と呼ばれ、本明細書において、多くの場合、窒素、酸素、セレン、または硫黄を含む。
【0018】
本明細書において、配位子は、「Covalent Bond Classification(CBC)Method」(Green,M.L.H.J.Organomet.Chem.1995,500,127−148)に従って分類される。「X官能基配位子(X−function ligand)」は、金属からの1電子およびX配位子からの1電子からなる通常の2電子共有結合を介して、金属中心と相互作用する配位子である。X型配位子の簡単な例としては、アルキルおよびチオレートが挙げられる。本明細書において、用語「窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子」は、具体的には、ドナー原子が窒素、酸素、炭素、硫黄、またはセレンを含む、炭素含有X官能基配位子をいう。本明細書において、用語「窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の錯体」は、これらの配位子を含む金属錯体をいう。例としては、アミド、アルコキシド、アセチルアセトネート、アセテート、カルボキシレート、ヒドロカルビル、O置換、N置換、S置換、Se置換およびハロゲン置換ヒドロカルビル、チオレート、セレノレート、チオカルボキシレート、セレノカルボキシレート、ジチオカルバメート、ならびにジセレノカルバメートの金属錯体が挙げられる。
【0019】
本明細書で定義される場合、「ヒドロカルビル基」は、炭素および水素のみを含有する一価の基である。ヒドロカルビル基の例としては、非置換のアルキル、シクロアルキル、およびアリール基が挙げられ、アルキル置換アリール基を包含する。好適なヒドロカルビル基およびアルキル基は、1個〜約30個の炭素、または1個〜25個、1個〜20個、1個〜15個、1個〜10個、1個〜5個、1個〜4個、もしくは1個〜2個の炭素を含有する。「ヘテロ原子置換ヒドロカルビル」とは、自由原子価がヘテロ原子上ではなく炭素上にある、1つ以上のヘテロ原子を含有するヒドロカルビル基を意味する。例としては、ヒドロキシエチルおよびカルボメトキシエチルが挙げられる。好適なヘテロ原子置換基としては、O−、N−、S−、ハロゲン、およびトリ(ヒドロカルビル)シリルが挙げられる。トリフルオロメチルの場合のように、置換ヒドロカルビルにおいて、全ての水素が置換され得る。本明細書において、用語「トリ(ヒドロカルビル)シリル」は、ケイ素上の置換基がヒドロカルビルである、シリル置換基を包含する。本明細書において、「Oベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基」とは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビル以外の、O、N、S、またはSeのヘテロ原子を含む、自由原子価がこのヘテロ原子上にある、一価の基を意味する。Oベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基の例としては、アルコキシド、アミド、チオレート、およびセレノレートが挙げられる。
【0020】
インクの製造
本発明の1つの態様は、
a)インクを製造する工程と、
b)上記インクを基板上に配して、被覆基板を形成する工程と
を包含する方法であって、上記インクは、
i)窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の銅錯体、硫化銅、セレン化銅、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される銅源;
ii)窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子のスズ錯体、水素化スズ、硫化スズ、セレン化スズ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるスズ源;
iii)必要に応じて、窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の亜鉛錯体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される亜鉛源;
iv)必要に応じて、S元素、Se元素、CS、CSe、CSSe、RS−Z、RSe−Z、RS−SR、RSe−SeR、RC(S)S−Z、RC(Se)Se−Z、RC(Se)S−Z、RC(O)S−Z、RC(O)Se−Z、およびそれらの混合物からなる群より選択されるカルコゲン化合物であって、各Zは、独立して、H、NR、およびSiRからなる群より選択され;ここで、各RおよびRは、独立して、ヒドロカルビルならびにO置換、N置換、S置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;各Rは、独立して、ヒドロカルビル、O置換、N置換、S置換、Se置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基からなる群より選択され;そして各Rは、独立して、水素、O置換、N置換、S置換、Se置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基からなる群より選択される、カルコゲン化合物;
v)必要に応じて、溶媒
を含むが、但し、
溶媒が存在しない場合は、上記カルコゲン化合物および上記スズ源のうちの少なくとも一方は、室温で液体であり;そして
上記銅源が硫化銅およびセレン化銅から選択され、かつ上記スズ源が硫化スズおよびセレン化スズから選択される場合は、上記溶媒はヒドラジンではない
方法である。
【0021】
一部の実施形態において、カルコゲン化合物、硫黄ベースの有機配位子、セレンベースの有機配位子、硫化銅、硫化スズ、硫化亜鉛、セレン化銅、セレン化スズおよびセレン化亜鉛の総モル数と、銅錯体、スズ錯体および亜鉛錯体の総モル数との比は、少なくとも約1である。
【0022】
一部の実施形態において、カルコゲン化合物が存在する。
【0023】
一部の実施形態において、亜鉛源が存在する。
【0024】
一部の実施形態において、硫黄元素、セレン元素、または硫黄元素とセレン元素との混合物が存在し、(S+Se)のモル比は、スズ源に対して、約0.2〜約5、または約0.5〜約2.5である。
【0025】
一部の実施形態において、窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子は、アミド;アルコキシド;アセチルアセトネート;カルボキシレート;ヒドロカルビル;O置換、N置換、S置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル;チオおよびセレノレート;チオ、セレノ、およびジチオカルボキシレート;ジチオ、ジセレノ、およびチオセレノカルバメート;ならびにジチオキサントゲネートからなる群より選択される。
【0026】
好適なアミドとしては、ビス(トリメチルシリル)アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、N−メチル−t−ブチルアミノ、2−(ジメチルアミノ)−N−メチルエチルアミノ、N−メチルシクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、N−エチル−2−メチルアリルアミノ、ビス(2−メトキシエチル)アミノ、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、ピロリジノ、t−ブチル−1−ピペラジノカルボキシレート、N−メチルアニリノ、N−フェニルベンジルアミノ、N−エチル−o−トルイジノ、ビス(2,2,2−トリフルオロメチル)アミノ、N−t−ブチルトリメチルシリルアミノ、およびそれらの混合物が挙げられる。一部の配位子は、金属中心をキレート化し得、場合によっては、1種類より多くのドナー原子を含み得る(例えば、N−ベンジル−2−アミノエタノールのジアニオンは、アミノ基およびアルコキシド基の両方を含む好適な配位子である)。
【0027】
好適なアルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、i−プロポキシド、n−ブトキシド、t−ブトキシド、ネオペンタオキシド、エチレングリコールジアルコキシド、1−メチルシクロペンタオキシド、2−フルオロエトキシド、2,2,2,−トリフルオロエトキシド、2−エトキシエトキシド、2−メトキシエトキシド、3−メトキシ−1−ブトキシド、メトキシエトキシエトキシド、3,3−ジエトキシ−1−プロポキシド、2−ジメチルアミノエトキシド、2−ジエチルアミノエトキシド、3−ジメチルアミノ−1−プロポキシド、3−ジエチルアミノ−1−プロポキシド、1−ジメチルアミノ−2−プロポキシド、1−ジエチルアミノ−2−プロポキシド、2−(1−ピロリジニル)エトキシド、1−エチル−3−ピロリジノキシド、3−アセチル−1−プロポキシド、4−メトキシフェノキシド、4−クロロフェノキシド、4−t−ブチルフェノキシド、4−シクロペンチルフェノキシド、4−エチルフェノキシド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシド、3−クロロ−5−メトキシフェノキシド、3,5−ジメトキシフェノキシド、2,4,6−トリメチルフェノキシド、3,4,5−トリメチルフェノキシド、3,4,5−トリメトキシフェノキシド、4−t−ブチル−カテコレート(2−)、4−プロパノイルフェノキシド、4−(エトキシカルボニル)フェノキシド、3−(メチルチオ)−1−プロポキシド、2−(エチルチオ)−1−エトキシド、2−(メチルチオ)エトキシド、4−(メチルチオ)−1−ブトキシド、3−(メチルチオ)−1−ヘキサオキシド、2−メトキシベンジルアルコキシド、2−(トリメチルシリル)エトキシド、(トリメチルシリル)メトキシド、1−(トリメチルシリル)エトキシド、3−(トリメチルシリル)プロポキシド、3−メチルチオ−1−プロポキシド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本明細書において、アセチルアセトネートという用語は、1,3−ジカルボニル化合物AC(O)CH(A)C(O)Aのアニオンをいい、各Aは、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Sベース、およびNベースの官能基から選択され、各Aは、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、ならびにOベース、Sベース、およびNベースの官能基から選択される。好適なアセチルアセトネートとしては、2,4−ペンタンジオネート、3−メチル−2,4−ペンタンジオネート、3−エチル−2,4−ペンタンジオネート、3−クロロ−2,4−ペンタンジオネート、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオネート、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオネート、1,1,1,5,5,6,6,6,−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオネート、エチル4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、2−メトキシエチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、アリルオキシエトキシトリフルオロアセトアセテート、4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート、6,6,7,7,8,8,8,−ヘプタフルオロ−2−2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
好適なカルボキシレートとしては、アセテート、トリフルオロアセテート、プロピオネート、ブチラート、ヘキサノエート、オクタノエート、デカノエート、ステアラート、イソブチラート、t−ブチルアセテート、ヘプタフルオロブチラート、メトキシアセテート、エトキシアセテート、メトキシプロピオネート、2−エチルヘキサノエート、2−(2−メトキシエトキシ)アセテート、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]アセテート、(メチルチオ)アセテート、テトラヒドロ−2−フロエート、4−アセチルブチラート、フェニルアセテート、3−メトキシフェニルアセテート、(トリメチルシリル)アセテート、3−(トリメチルシリル)プロピオネート、マレエート、ベンゾエート、アセチレンジカルボキシレート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
好適なヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ネオペンチル、3−メチルブチル、フェニル、ベンジル、4−t−ブチルベンジル、4−t−ブチルフェニル、p−トリル、2−メチル−2−フェニルプロピル、2−メシチル、2−フェニルエチル、2−エチルヘキシル、2−メチル−2−フェニルプロピル、3,7−ジメチルオクチル、アリル、ビニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
好適なO置換、N置換、S置換、ハロゲン置換およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビルとしては、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、4−メトキシフェニル、2−メトキシベンジル、3−メトキシ−1−ブチル、1,3−ジオキサン−2−イルエチル、3−トリフルオロメトキシフェニル、3,4−(メチレンジオキシ)フェニル、2,4−ジメトキシフェニル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、2−メトキシベンジル、3−メトキシベンジル、4−メトキシベンジル、3,5−ジメトキシフェニル、3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、4−メトキシフェネチル、3,5−ジメトキシベンジル、4−(2−テトラヒドロ−2H−ピラノキシ)フェニル、4−フェノキシフェニル、2−ベンジルオキシフェニル、3−ベンジルオキシフェニル、4−ベンジルオキシフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、5−フルオロ−2−メトキシフェニル、2−エトキシエテニル、1−エトキシビニル、3−メチル−2−ブテニル、2−フリル、カルボメトキシエチル、3−ジメチルアミノ−1−プロピル、3−ジエチルアミノ−1−プロピル、3−[ビス(トリメチルシリル)アミノ]フェニル、4−(N,N−ジメチル)アニリン、[2−(1−ピロリジニルメチル)フェニル]、[3−(1−ピロリジニルメチル)フェニル]、[4−(1−ピロリジニルメチル)フェニル]、[2−(4−モルホリニルメチル)フェニル]、[3−(4−モルホリニルメチル)フェニル]、[4−(4−モルホリニルメチル)フェニル]、(4−(1−ピペリジニルメチル)フェニル)、(2−(1−ピペリジニルメチル)フェニル)、(3−(1−ピペリジニルメチル)フェニル)、3−(1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカ−8−イルメチル)フェニル、1−メチル−2−ピロリル、2−フルオロ−3−ピリジル、6−メトキシ−2−ピリミジル、3−ピリジル、5−ブロモ−2−ピリジル、1−メチル−5−イミダゾリル、2−クロロ−5−ピリミジル、2,6−ジクロロ−3−ピラジニル、2−オキサゾリル、5−ピリミジル、2−ピリジル、2−(エチルチオ)エチル、2−(メチルチオ)エチル、4−(メチルチオ)ブチル、3−(メチルチオ)−1−ヘキシル、4−チオアニソール、4−ブロモ−2−チアゾリル、2−チオフェニル、クロロメチル、4−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−フルオロ−3−メチルフェニル、4−フルオロ−2−メチルフェニル、4−フルオロ−3−メチルフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3−フルオロ−2−メチルフェニル、4−クロロ−2−メチルフェニル、3−フルオロ−4−メチルフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、3,4,5−トリフルオロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−クロロ−5−フルオロフェニル、4−クロロ−3−フルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2−ブロモベンジル、3−ブロモベンジル、4−フルオロベンジル、ペルフルオロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、(トリメチルシリル)メチル、3−(トリメチルシリル)プロピル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
好適なチオおよびセレノレートとしては、1−チオグリセロール、フェニルチオ、エチルチオ、メチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、i−ブチルチオ、t−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、n−ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、n−ノニルチオ、n−デシルチオ、n−ドデシルチオ、2−メトキシエチルチオ、2−エトキシエチルチオ、1,2−エタンジチオレート、2−ピリジンチオレート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオレート、トルエン−3,4−ジチオレート、1,2−ベンゼンジチオレート、2−ジメチルアミノエタンチオレート、2−ジエチルアミノエタンチオレート、2−プロペン−1−チオレート、2−ヒドロキシチオレート、3−ヒドロキシチオレート、メチル−3−メルカプトプロピオネートアニオン、シクロペンタンチオレート、2−(2−メトキシエトキシ)エタンチオレート、2−(トリメチルシリル)エタンチオレート、ペンタフルオロフェニルチオレート、3,5−ジクロロベンゼンチオレート、フェニルチオレート、シクロヘキサンチオレート、4−クロロベンゼンメタンチオレート、4−フルオロベンゼンメタンチオレート、2−メトキシベンゼンチオレート、4−メトキシベンゼンチオレート、ベンジルチオレート、3−メチルベンジルチオレート、3−エトキシベンゼンチオレート、2,5−ジメトキシベンゼンチオレート、2−フェニルエタンチオレート、4−t−ブチルベンゼンチオレート、4−t−ブチルベンジルチオレート、フェニルセレノレート、メチルセレノレート、エチルセレノレート、n−プロピルセレノレート、i−プロピルセレノレート、n−ブチルセレノレート、i−ブチルセレノレート、t−ブチルセレノレート、ペンチルセレノレート、ヘキシルセレノレート、オクチルセレノレート、ベンジルセレノレート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
好適なチオ、セレノ、およびジチオカルボキシレートとしては、チオアセテート、チオベンゾエート、セレノベンゾエート、ジチオベンゾエート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
好適なジチオ、ジセレノ、およびチオセレノカルバメートとしては、ジメチルジチオカルバメート、ジエチルジチオカルバメート、ジプロピルジチオカルバメート、ジブチルジチオカルバメート、ビス(ヒドロキシエチル)ジチオカルバメート、ジベンジルジチオカルバメート、ジメチルジセレノカルバメート、ジエチルジセレノカルバメート、ジプロピルジセレノカルバメート、ジブチルジセレノカルバメート、ジベンジルジセレノカルバメート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
好適なジチオキサントゲネートとしては、メチルキサントゲネート、エチルキサントゲネート、i−プロピルキサントゲネート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
カルコゲン化合物について、RS−ZおよびRSe−Zの好適なRS−およびRSe−は、上に列記された好適なチオおよびセレノレートから選択される。
【0037】
カルコゲン化合物について、好適なRS−SR、RSe−SeRとしては、ジメチルジスルフィド、2,2’−ジピリジルジスルフィド、ジ(2−チエニル)ジスルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−3−フリル)ジスルフィド、ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ジスルフィド、ジエチルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、イソプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、p−トリルジスルフィド、フェニルアセチルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、メチルキサントゲン酸ジスルフィド(methylxanthic disulfide)、エチルキサントゲン酸ジスルフィド(ethylxanthic disulfide)、i−プロピルキサントゲン酸ジスルフィド(i−propylxanthic disulfide)、ジベンジルジセレニド、ジメチルジセレニド、ジフェニルジセレニド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
カルコゲン化合物について、好適なRC(S)S−Z、RC(Se)Se−Z、RC(Se)S−Z、RC(O)S−Z、およびRC(O)Se−Zは、上に列記された好適なチオ、セレノ、およびジチオカルボキシレート;好適なジチオ、ジセレノ、およびチオセレノカルバメート;ならびに好適なジチオキサントゲネートから選択される。
【0039】
好適なNRとしては、EtNH、EtN、EtNH、EtNH、NH、MeNH、MeN、MeNH、MeNH、PrNH、PrN、PrNH、PrNH、BuNH、MePrNH、(i−Pr)NH、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
好適なSiRとしては、SiMe、SiEt、SiPr、SiBu、Si(i−Pr)、SiEtMe、SiMe(i−Pr)、Si(t−Bu)Me、Si(シクロヘキシル)Me、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0041】
これらの配位子およびカルコゲン化合物の多くは、市販されているか、あるいはCSもしくはCSeまたはCSSeへの、アミン、アルコールまたはアルキル求核剤の添加により容易に合成される。
【0042】
インクの成分および副生物は、室温で、または加熱温度および被覆温度で、液体であり得る。そのような場合は、インクは、溶媒を含む必要はない。一部の実施形態において、カルコゲン化合物が存在し、室温で液体である。他の実施形態において、スズ源は、室温で液体である。さらに他の実施形態において、カルコゲン化合物が存在し、室温で液体であり、かつスズ源が室温で液体である。
【0043】
一部の実施形態において、溶媒が存在し、この溶媒の沸点は、大気圧で約100℃または110℃または120℃または130℃または140℃または150℃または160℃または170℃または180℃または190℃より高い。一部の実施形態において、本方法は、大気圧で行われる。好適な溶媒としては、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、ニトリル、アミド、アルコール、ピロリジノン、アミン、およびそれらの混合物が挙げられる。好適なヘテロ芳香族化合物としては、ピリジンおよび置換ピリジンが挙げられる。好適なアミンとしては、RNH型の化合物が挙げられ、ここで、各Rは、独立して、O置換、N置換、S置換、およびSe置換ヒドロカルビルからなる群より選択される。一部の実施形態において、溶媒は、アミノ置換ピリジンを含む。一部の実施形態において、溶媒は、インクの総重量に基づき、約95〜約5重量%、または90〜10重量%、または80〜20重量%、または70〜30重量%、または60〜40重量%を構成する。
【0044】
好適な芳香族溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、i−プロピルベンゼン、1−クロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、t−ブチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、3−メチルアニソール、3−クロロアニソール、3−フェノキシトルエン、ジフェニルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
好適なヘテロ芳香族溶媒としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、3,5−ルチジン、4−t−ブチルピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、ジエチルニコチンアミド、3−シアノピリジン、3−フルオロピリジン、3−クロロピリジン、2,3−ジクロロピリジン、2,5−ジクロロピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、6−クロロ−2−ピコリン、2−メトキシピリジン、3−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−ピコリン、2−アミノ−6−ピコリン、2−アミノ−2−クロロピリジン、2,3−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2−(メチルアミノ)ピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−(2−アミノエチル)ピリジン、2−メトキシピリジン、2−ブトキシピリジン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
好適なニトリル溶媒としては、アセトニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、2,2−ジエトキシプロピオニトリル、3,3−ジエトキシプロピオニトリル、ジエトキシアセトニトリル、3,3−ジメトキシプロピオニトリル、3−シアノプロピオンアルデヒドジメチルアセタール、ジメチルシアナミド、ジエチルシアナミド、ジイソプロピルシアナミド、1−ピロリジンカルボニトリル、1−ピペリジンカルボニトリル、4−モルホリンカルボニトリル、メチルアミノアセトニトリル、ブチルアミノアセトニトリル、ジメチルアミノアセトニトリル、ジエチルアミノアセトニトリル、N−メチル−β−アラニンニトリル、3,3’−イミノプロピオニトリル、3−(ジメチルアミノ)プロピオニトリル、1−ピペリジンプロピオニトリル、1−ピロリジンブチロニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、3−シアノピリジン、4−アミノ−2−クロロベンゾニトリル、4−アセチルベンゾニトリル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
好適なアミド溶媒としては、N,N−ジエチルニコチンアミド、N−メチルニコチンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、イソブチルアミド、トリメチルアセトアミド、ニペコトアミド(nipecotamide)、N,N−ジエチルニペコタミド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
好適なアルコール溶媒としては、メトキシエトキシエタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、2−ドデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタンメタノール、3−シクロペンチル−1−プロパノール、1−メチルシクロペンタノール、3−メチルシクロペンタノール、1,3−シクロペンタンジオール、2−シクロヘキシルエタノール、1−シクロヘキシルエタノール、2,3−ジメチルシクロヘキサノール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、1,5−デカリンジオール、2,2−ジクロロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−エトキシ−1−プロパノール、プロピレングリコールプロピルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル、ジエチレングリコール、2,4−ジメチルフェノール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
好適なピロリジノン溶媒としては、N−メチル−2−ピロリジノン、5−メチル−2−ピロリジノン、3−メチル−2−ピロリジノン、2−ピロリジノン、1,5−ジメチル−2−ピロリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、5−メトキシ−2−ピロリジノン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
好適なアミン溶媒としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2−メチルブチルアミン、イソアミルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,3−ジアミノペンタン、1,1−ジメチルヒドラジン、N−エチルメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、シクロヘキシルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、アミノアセトアルデヒドジエチルアセタール、メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、ジメチルアミノアセトアルデヒドジエチルアセタール、ジエチルアミノアセトアルデヒドジエチルアセタール、4−アミノブチルアルデヒドジエチルアセタール、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−ヒドロキシエチルヒドラジン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、4−アミノ−1−ブタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2−(プロピルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−(ジブチルアミノ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1−ジエチルアミノ−2−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
一部の実施形態において、インクは、分散剤、界面活性剤、ポリマー、結合剤、配位子、キャッピング剤、脱泡剤、増粘剤、腐食抑制剤、可塑剤、およびドーパントからなる群より選択される1種以上の添加剤を、約10重量%または7.5重量%または5重量%または2.5重量%または1重量%まで含む。好適なドーパントとしては、ナトリウム含有化合物、ならびに窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、またはセレンベースの有機配位子を含むアルカリ化合物、アルカリ硫化物、アルカリセレン化物、およびそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ含有化合物が挙げられる。他の実施形態において、ドーパントは、アミド;アルコキシド;アセチルアセトネート;カルボキシレート;ヒドロカルビル;O置換、N置換、S置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル;チオおよびセレノレート;チオ、セレノ、およびジチオカルボキシレート;ジチオ、ジセレノ、およびチオセレノカルバメート;ならびにジチオキサントゲネートを含むアルカリ化合物からなる群より選択されるアルカリ含有化合物を含む。
【0052】
一部の実施形態において、インクは、分解性結合剤;分解性界面活性剤;開裂性界面活性剤;沸点が約250℃未満の界面活性剤;およびそれらの混合物からなる群より選択される1種以上の結合剤または界面活性剤を含む。好適な分解性結合剤としては、ポリエーテルのホモおよびコポリマー;ポリラクチドのホモおよびコポリマー;ポリカーボネートのホモおよびコポリマー;ポリ[3−ヒドロキシ酪酸]のホモおよびコポリマー;ポリメタクリレートのホモおよびコポリマー;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
一部の実施形態において、銅とスズとのモル比は、インク中で約2:1である。他の実施形態において、亜鉛がインク中に存在し、銅と亜鉛とスズとのモル比は、インク中で約2:1:1である。
【0054】
インクの製造は、典型的に、成分(i)〜(v)を、任意の従来の方法によって混合することを包含する。銅源、スズ源、亜鉛源、またはカルコゲン源のうちの1つ以上が室温でまたは処理温度で液体である場合は、別個の溶媒の使用は任意である。その他の場合は、溶媒が使用される。一部の実施形態において、インクは溶液であり、他の実施形態において、インクは懸濁液または分散液である。典型的に、この製造は、反応混合物を空気および光から保護するための対策を講じながら、不活性雰囲気下で行われる。
【0055】
一部の実施形態において、インクは、例えば低沸点および/または高反応性の試薬(例えば、CSおよびZnEt)が利用される場合、低温にて製造される。そのような場合、典型的に、インクは、熱処理に先立って、室温にて48時間以上にわたり攪拌される。一部の実施形態において、インクは、例えば試薬が固体であるもしくは高沸点を有する場合、および/または溶媒のうちの1つ以上が室温にて固体である場合(例えば、2−アミノピリジンまたは3−アミノピリジン)、約20〜100℃にて製造される。一部の実施形態において、インク成分の全てが、室温にて一緒に加えられる。一部の実施形態において、カルコゲン元素は、室温にて約30分にわたる全ての他の成分の混合に続いて、最後に加えられる。一部の実施形態において、成分は、逐次的に加えられる。例えば、銅源を加える前に、銅以外の全ての試薬が混合され、約100℃で加熱され得る、またはスズ源を加える前に、スズ以外の全ての試薬が混合され、約100℃で加熱され得る。
【0056】
一部の実施形態において、2種以上のインクが製造され、各インクは試薬一式を含む(例えば、各インクは、CZTS−Seを形成するのに有用なインクのための亜鉛源、銅源、およびスズ源の各々を、少なくとも1つ含む)。混合後または熱処理後に、次いで、この2種以上のインクは合わされ得る。この方法は、混合に先立って各インクからの別個の膜が被覆され、アニールされ、そしてXRDにより分析され得るので、ストイキオメトリーを制御しかつ高純度のCTS−SeまたはCZTS−Seを得るのに特に有用である。XRD結果は、合わされるべき各インクの種類および量の選択の指針となり得る。例えば、XRDにより測定される場合に微量の硫化銅および硫化亜鉛を含むCZTS−Seのアニール膜をもたらすインクは、微量の硫化スズを含むCZTS−Seのアニール膜をもたらすインクと合わされて、CZTS−Seのみを含むアニール膜をもたらすインクを形成し得る。
【0057】
一部の実施形態において、インクは、基板上の被覆前に、約100℃または110℃または120℃または130℃または140℃または150℃または160℃または170℃または180℃または190℃より高い温度で熱処理されたものである。好適な加熱方法としては、従来の加熱およびマイクロ波加熱が挙げられる。一部の実施形態において、加熱処理されたインクから形成された膜のXAS分析が、120℃という低い加熱温度でのその膜の加熱後にケステライトの存在を示したことから、この加熱処理工程がCZTS−Seの形成を促進することが見出された。この任意の加熱処理工程は、典型的に、不活性雰囲気下で実施される。この段階で生じたインクは、何ら顕著に効果を低下させることなく、長期(例えば、2、3ヵ月)にわたって保存され得る。
【0058】
被覆基板
基板は、硬質または軟質であり得る。1つの実施形態において、基板は、積層順に、(i)ベースフィルム;および(ii)必要に応じて導電性被膜を含む。ベースフィルムは、ガラス、金属、およびポリマーフィルムからなる群より選択される。好適な導電性被膜としては、金属導電体、透明導電酸化物、および有機導電体が挙げられる。特に興味深いのは、モリブデン被覆ソーダ石灰ガラス、モリブデン被覆ポリイミドフィルム、またはナトリウム化合物(例えば、NaF、NaS、またはNaSe)の薄層を有するモリブデン被覆ポリイミドフィルムの基板である。1つの実施形態において、基板は、金属箔、プラスチック、ポリマー、金属化プラスチック、ガラス、ソーラーガラス、低鉄ガラス、青板ガラス、ソーダ石灰ガラス、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、セラミック、金属板、金属化セラミック板、および金属化高分子板からなる群より選択される材料を含む。
【0059】
種々の溶液ベースのコーティングおよび印刷技術(スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロッドコーティング、ドロップキャストコーティング、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、ドローダウンコーティング、インクジェット印刷、コンタクト印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷を含む)のうちのいずれかによりインクが基板上に配されて、被覆基板が提供される。被膜は、蒸発により、真空を適用することにより、加熱により、またはそれらの組み合わせにより、乾燥され得る。一部の実施形態において、基板および配されたインクは、溶媒(存在する場合)ならびに配位子およびカルコゲン源に由来する副生物の少なくとも一部を除去するために、80〜350℃、または100〜300℃、または120〜250℃、または150〜190℃の温度で加熱される。この乾燥工程は、独立した別個の工程とすることもできるし、アニール工程において、基板および前駆体インクを加熱するときに行うこともできる。一部の実施形態において、XAS分析がケステライトの存在を示したことから、CZTS−Seがこの加熱工程の間に形成されることが見出された。一部の実施形態において、CTS−SeまたはCZTS−Seを含む加熱層は、120℃という低い加熱温度で形成される。
【0060】
一部の実施形態において、加熱層は、ケステライトのCu/Zn比がおよそ2/1であり、約1.6≦Cu/Zn≦3.1の範囲に入る、CZTS−Seを含む。一部の実施形態において、加熱層は、ケステライトのCu/Zn比が約3.1より大きいCZTS−Seを含む。
【0061】
他の実施形態において、加熱層は、ケステライトのCu/Zn比が約1.6未満であるCZTS−Seを含む。さらに他の実施形態において、加熱層は、ケステライトのコヒーレントドメインサイズが2〜30nmであるCZTS−Seを含む。
【0062】
一部の実施形態において、被覆基板は、二元銅カルコゲニド、二元銅酸化物、およびCTS−Seからなる群より選択される1種以上の銅化合物;ならびに二元スズカルコゲニド、二元スズ酸化物、およびCTS−Seからなる群より選択される1種以上のスズ化合物を含む(カルコゲニドには、硫化物、セレン化物またはそれらの混合物が含まれる)。一部の実施形態において、被覆基板中の銅とスズとのモル比は、約2:1である。別の実施形態において、被覆基板は、二元亜鉛カルコゲニド、ZnO、およびCZTS−Seからなる群より選択される1種以上の亜鉛化合物をさらに含む(カルコゲニドには、硫化物、セレン化物またはそれらの混合物が含まれる)。一部の実施形態において、銅と亜鉛とスズとのモル比は、約2:1:1である。他の実施形態において、銅と(亜鉛+スズ)とのモル比は1未満であり、亜鉛とスズとのモル比は1より大きい。
【0063】
アニール
一部の実施形態において、本方法は、アニール工程をさらに包含し、この工程において、被覆基板は、約350〜800℃、または400〜650℃、または450〜600℃、または450〜525℃で加熱される。典型的に、このアニール工程は、熱処理、急速熱処理(RTP)、急速熱アニール(RTA)、パルス熱処理(PTP)、レーザービーム露光、IRランプによる加熱、電子ビーム露光、パルス電子ビーム処理、およびマイクロ波照射による加熱のうちの1つ以上を含む。本明細書において、RTPは、標準的な炉の代わりに使用され得る技術をいい、枚葉処理、高速の加熱および冷却速度、熱非平衡、ならびに制御された周囲状態(controlled ambient)を含む。RTAは、ドーパントの活性化、基板界面の改変、膜の緻密化および状態変更、損傷の修復、ならびにドーパントの移動を含む異なる効果に特異的な熱処理からなるRTPのサブセットである。急速熱アニールは、ランプベースの加熱、ホットチャック、または加熱板のいずれかを用いて行われる。PTPは、非常に短い持続時間の間の極度に高い出力密度での熱アニール機構を含み、例えば、欠陥低減をもたらす。同様に、パルス電子ビーム処理は、短いパルス持続時間を有するパルス化高エネルギー電子ビームを使用する。パルス処理は、温度感受性基板上の薄膜を処理するのに有用である。パルスの持続時間は非常に短いので、基板にはエネルギーがほとんど伝わらず、基板は損傷されないままである。
【0064】
アニール工程は、カルコゲン化合物、硫黄ベースの有機配位子、セレンベースの有機配位子、硫化銅、硫化スズ、硫化亜鉛、セレン化銅、セレン化スズおよびセレン化亜鉛の総モル数と、銅錯体、スズ錯体および亜鉛錯体の総モル数との比が少なくとも約1であれば、不活性雰囲気下で実施され得る。一部の実施形態において、アニール工程は、不活性ガスと、セレン蒸気、硫黄蒸気、水素、硫化水素、セレン化水素、およびそれらの混合物からなる群より選択される反応性成分とを含む雰囲気中で実施される。一部の実施形態において、カルコゲンの少なくとも一部は、セレン蒸気またはセレン化水素の存在下でアニール工程を行うことによって交換され得る(例えば、SがSeにより置換され得る)。一部の実施形態において、複数のアニール工程が、雰囲気の組み合わせ下で行われる(例えば、最初のアニール工程は不活性雰囲気下で実施され、次のアニール工程は不活性ガスと上記のような反応性成分とを含む雰囲気中で実施される)。
【0065】
XRDまたはXASにより測定したところ、CTS−Seおよび/またはCZTS−Seが、アニール工程の間に高収率で形成され得ることが見出された。一部の実施形態において、XRD分析によると、アニール膜は、CTS−SeまたはCZTS−Seから実質的になる。一部の実施形態において、CTS−SeまたはCZTS−Seのコヒーレントドメインサイズは、XRDにより測定される場合、約30nmより大きい、または40、50、60、70、80、90もしくは100nmより大きい。一部の実施形態において、銅とスズとのモル比は、アニール膜中で約2:1である。一部の実施形態において、銅と亜鉛とスズとのモル比は、アニール膜中で約2:1:1である。他の実施形態において、CZTS−Seを含むアニール膜中で、銅と(亜鉛+スズ)とのモル比は1未満であり、亜鉛とスズとのモル比は1より大きい。
【0066】
膜厚、および膜組成の微調整
インク濃度ならびに/またはコーティング技術および温度を変えることにより、様々な厚さの膜が、単一コーティング工程において被覆され得る。被膜厚さはまた、コーティング工程および乾燥工程を繰り返すことによっても増加させ得る。アニール膜は、典型的に、湿潤な前駆体層の密度および/または厚さに対して、増大した密度および/または減少した厚さを有する。一部の実施形態において、乾燥およびアニールされた被膜の膜厚は、0.1〜200ミクロン、または0.1〜100ミクロン、または0.1〜50ミクロン、または0.1〜25ミクロン、または0.1〜10ミクロン、または0.5〜5ミクロンである。
【0067】
一部の実施形態において、被膜厚さは、コーティング工程および乾燥工程を繰り返すことによって増加させ得る。こうした複数コーティングは、同じインク配合物を用いても、異なるインク配合物を用いても行われ得る。上記したように、2種以上のインクが混合された場合には、異なるインクでの複数層の被膜が用いられて、CuとSnとの比およびCuとZnとSnとの比を微調整することにより、CTS−Se膜およびCZTS−Se膜のストイキオメトリーおよび純度を微調整し得る。
【0068】
複数コーティングの適用および/または膜の洗浄はまた、膜中の炭素ベースの不純物を減少させるのに役立ち得る。例えば、最初のコーティング後に、被覆基板は乾燥され得、次いで、次の被膜がスピンコーティングにより適用され、被覆され得る。このスピンコーティング工程は、最初の被膜から有機物を洗い流し得る。あるいは、被覆された膜は溶媒に浸漬され、次いで、その溶媒がスピンコーティングにより除去され得る。洗浄に好適な溶媒としては、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)が挙げられる。あるいは、二元硫化物および他の不純物は、当該技術分野において公知の技術(例えば、CIGS膜に使用される技術)を用いてエッチングにより除去され得る。
【0069】
薄膜光電池を含む、デバイスの製造
様々な電気素子が、少なくとも一部は本明細書に記載のインクおよび方法の使用により、形成され得る。本発明の1つの態様は、CZTS−Seを含む薄膜光電池を製造するための方法を提供する。
【0070】
典型的な光電池は、基板、背面接触層(例えば、モリブデン)、吸収体層(第1半導体層とも呼ばれる)、緩衝層(第2半導体層とも呼ばれる)、および上部接触層を含む。光電池はまた、上部接触層上に電極パッドの電気接点を、そして基板の前(光に面する)表面上に半導体層への光の透過率を向上させるための反射防止(AR)膜を含み得る。
【0071】
1つの実施形態において、本方法は、電子デバイスを提供し、基板のアニールされた被膜上に1つ以上の層を積層順に堆積させる工程を包含する。これらの層は、導電体、半導体、および誘電体からなる群より選択され得る。別の実施形態において、本方法は、光起電力デバイスを提供し、導電性層を存在させた基板のアニールされた被膜上に積層順に以下の層:(i)緩衝層、(ii)透明上部接触層、および(iii)必要に応じて反射防止層を堆積させる工程を包含する。さらに別の実施形態において、本方法は、光起電力デバイスを提供し、緩衝層、上部接触層、電極パッド、および反射防止層からなる群より選択される1つ以上の層をアニールされたCZTS−Se膜上に配する工程を包含する。一部の実施形態において、これらの層の構築および材料は、CIGS光電池のものと類似している。
【0072】
光電池基板に好適な基板材料は、上記および下記のとおりである。光電池基板はまた、基板材料と金属層との間の付着を促進するための界面層をも含み得る。好適な界面層は、金属(例えば、V、W、Cr)、ガラス、または窒化物、酸化物および/もしくは炭化物の化合物を含み得る。1つの実施形態において、界面層は、定着剤(adhesion promoter)に由来する。好適な定着剤は、シロキシ置換硫黄化合物(チオール、硫化物、二硫化物、四硫化物、および多硫化物を含む)を含む。一部の実施形態において、定着剤は、ビス[m−(2−トリエトキシシリルエチル)トリル]ポリスルフィド、ビス[3−トリエトキシシリル]プロピル]ジスルフィド、ビス[3−トリエトキシシリル]プロピル]テトラスルフィド、および2,2−ジメトキシ−1−チア−2−シラシクロペンタンからなる群より選択される。
【0073】
典型的な光電池基板は、片面が導電材料(例えば、金属)で被覆されている、ガラスまたはプラスチックである。1つの実施形態において、基板は、モリブデン被覆ガラスである。光電池基板上へのCZTS−Se層の付着およびアニールによる吸収体層の形成は、上記のようにして実施され得る。
【0074】
本発明のCTS−Se層およびCZTS−Se層の組成を特徴付けるのに有用な分析技術としては、XRD(X線回折)およびXASが挙げられる。
【実施例】
【0075】
一般
材料。全ての試薬を、Aldrich(Milwaukee,WI)、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)、TCI(Portland,OR)、またはGelest(Morrisville,PA)から購入した。固体試薬は、さらなる精製なしに使用した。不活性雰囲気下で容器に入れられていない液体試薬は、1時間にわたりその液体にアルゴンを通気することによって脱ガスした。無水溶媒を、ドライボックス内で実施した全ての配合物の調製および全ての清浄手順のために使用した。溶媒は、AldrichまたはAlfa Aesarから無水として購入したか、標準方法(例えば、Pangborn,A.G.,et.al.Organometallics,1996,15,1518−1520)によって精製し、次いで、ドライボックスにおいて、活性化されたモレキュラーシーブ上で保存した。
【0076】
配合物および被膜の調製。基板(SLGスライド)を、順に王水、Millipore(登録商標)水およびイソプロパノールで清浄し、110℃にて乾燥させ、そのSLG基板の非フロート面(non−float surface)を被覆した。全ての配合物および被膜を、窒素パージしたドライボックス中で製造した。配合物を含有するバイアルを、磁気加熱板/攪拌機で加熱し、攪拌した。被膜は、ドライボックス中で乾燥させた。
【0077】
スライドの製造。一部の例において、SLGスライドを、3−(メルカプトプロピル)−トリメトキシシランで処理した。ドライボックスにおいて、ガラス瓶中で、約100mLの3−(メルカプトプロピル)トリメトキシシランと、約1mLの2−(2−メトキシエトキシ)酢酸とを混合した。この溶液に、SLGスライドおよびMoパターンを形成したSLGスライドを、24時間より長い間、浸漬させた。次に、このスライドを、約0.5時間にわたり塩化メチレンに浸漬させ、MeOHですすぎ、次いで拭いて乾燥させた。
【0078】
チューブ炉での被覆基板のアニール。アニールを、窒素雰囲気下、窒素/硫黄雰囲気下、または窒素/セレン雰囲気下で実施した。窒素雰囲気下でのアニールは、外部温度調節器および1インチ石英チューブを備えた単一ゾーンLindberg/Blue(Ashville,NC)チューブ炉において、または3インチ石英チューブを備えたLindberg/Blueの3ゾーンチューブ炉(モデルSTF55346C)において実施した。チューブの相対する両端にガス注入口および排出口を設け、加熱および冷却の間、チューブを窒素でパージした。被覆基板は、チューブ内の石英プレート上に置いた。
【0079】
窒素/硫黄雰囲気下でのアニールは、単一ゾーン炉において1インチチューブ中で実施した。2.5gの硫黄元素を3インチ長のセラミックボートに入れ、直接的加熱帯域の外で、窒素注入口の近くに置いた。被覆基板は、チューブ内の石英プレート上に置いた。以下の実施例において、アニールは、別段の記載のない限り、窒素/硫黄雰囲気下で実施した。
【0080】
セレン化に先立ち、試料をまず、3ゾーン炉において、3インチチューブ中、窒素パージ下でアニールした。次いで、この試料を、リップと中央に1mmの穴とを有する蓋を備えた、1/8インチ壁の、5インチ×1.4インチ×1インチの黒鉛箱に入れた。各黒鉛箱は、0.1gのセレンを含有したセラミックボート(0.984インチ×0.591インチ×0.197インチ)2個を両端に備えていた。次いで、この黒鉛箱を、チューブ1本につき黒鉛箱2個までとして、2インチチューブ中に入れた。ハウス真空(house vacuum)を、10〜15分にわたりチューブに適用し、続いて10〜15分にわたり窒素パージを行った。この操作を3回行った。次いで、この黒鉛箱の入ったチューブを、加熱および冷却ともに窒素パージ下で行われるなか、単一ゾーン炉において加熱した。
【0081】
急速熱アニール(RTA)。ULVAC−RICO Inc.(Methuen,MA)によるMILA−5000赤外線ランプ加熱装置を加熱のために使用し、この装置を、15℃に保たれたPolyscience(Niles,IL)再循環浴を用いて冷却した。試料を、窒素パージ下で次のように加熱した:10分間20℃;1分で400℃まで上げる;2分間400℃で維持;約30分の間に20℃まで冷却。
【0082】
デバイス製造に使用された手順の詳細
Moスパッタ基板。光起電力デバイスのための基板を、Dentonスパッタリング装置を使用し、パターン形成されたモリブデンの500nm層でSLG基板を被覆することにより製造した。付着条件は、DC電力150W、Ar20sccm、および圧力5mTであった。
【0083】
硫化カドミウム付着。12.5mgのCdSO(無水)を、ナノピュア水(nanopure water)(34.95mL)と28%NHOH(4.05mL)との混合物に溶解させた。次いで、チオ尿素22.8mgの水溶液1mLを迅速に加えて、浴溶液を生成した。混合後直ちに、この浴溶液を、被覆されるべき試料を含有した二重壁ビーカー(壁間を70℃の水が循環する)中に注ぎ入れた。この溶液を、磁気攪拌棒で連続的に攪拌した。23分後に試料を取り出し、ナノピュア水ですすぎ、次いでナノピュア水に1時間にわたって浸漬させた。この試料を窒素流れ下で乾燥させ、次いで、窒素雰囲気下で200℃にて2分間アニールした。
【0084】
絶縁性ZnOおよびAZO付着。透明導電体を、以下の構成でCdSの上にスパッタリングした:50nmの絶縁性ZnO(RF150W、5mTorr、20sccm)、続いて2%Al、98%ZnOのターゲットを用いて500nmのAlドープZnO(RF75または150W、10mTorr、20sccm)。
【0085】
ITO透明導電体付着。透明導電体を、以下の構成でCdSの上にスパッタリングした:50nmの絶縁性ZnO[RF100W、20mTorr(19.9mTorrのAr+0.1mTorrのO)]、続いて250nmのITO[RF100W、12mTorr(12mTorrのAr+5×10−6TorrのO)]。結果として生じるITO層のシート抵抗率は、約30オーム/平方である。
【0086】
銀線の付着。銀を、目標厚さを750nmとして、DC150W、5mTorr、Ar20sccmで付着させた。
【0087】
X線、IV、EQE、およびOBIC分析の詳細
XAS分析。Cu、ZnおよびSnのK端でのXANES分光法を、Argonne National LaboratoryにあるAdvanced Photon Sourceで実施した。データは、DND−CATのビームライン5BMDにて、蛍光配置(fluorescence geometry)で収集した。薄膜試料を、作製したままで、入射x線ビームに供した。Oxford分光法グレードのイオンチャンバーを使用して、X線入射強度(I)を測定した。I検出器には、570TorrのNおよび20TorrのArを充填した。蛍光検出器は、Xeを充填したLytle Cellであり、ビーム伝播方向に対して垂直になるように設置した。データは、Cu端については8879eV〜9954eVのものを収集した。高最終エネルギー(high final energy)を同じデータセット中のZn端の部分を得るために使用して、膜中のCu:Zn比の推定としてのエッジステップ比(edge step ratio)の測定を可能にした。Zn端データは、9557eV〜10,404eVという範囲にわたって収集した。Sn端データは、29,000eV〜29,750eVの範囲を対象とした。データエネルギー目盛りは、試料データ収集に先立って収集された金属基準箔からのデータに基づき較正した。二次バックグラウンドを減算し、スペクトルを標準化した。種々のCu、ZnおよびSnの硫化物および酸化物標準(CuZnSnS、CuSnS、CuS、CuS、CuO、CuO、ZnS、ZnO、SnS、SnOおよびSnO)からのデータを、同じ条件下で得た。試料から得られたスペクトルへの適切な標準の線形結合の非線形最小二乗フィッティングにより、各元素についての相分布を得た。
【0088】
XRD分析。粉末X線回折を、結晶相の同定に使用した。データは、Philips X’PERT自動粉末回折計モデル3040により得た。この回折計は、自動可変分散防止および散乱防止スリット、X’Celerator RTMS検出器、およびNiフィルターを備えていた。放射線は、CuK(α)(45kV、40mA)であった。データは、θ−θ配置における0.02°の等価ステップサイズおよび80秒〜240秒/ステップのカウント時間での連続走査を使用して、室温にて、4〜120°2θのものを収集した。薄膜試料を、作製したままで、X線ビームに供した。MDI/Jadeソフトウェアバージョン9.1を、相同定およびデータ分析のために、International Committee for Diffraction DataデータベースPDF4+2008とともに使用した。
【0089】
IV分析。電流(I)対電圧(V)測定を、E5270Bメインフレーム中の2つのAgilent 5281B精密中電力SMUを用い、4点プローブ構成で、試料に対して行った。試料を、Oriel 81150ソーラーシミュレーターを用い、1sun AM1.5G下で照射した。
【0090】
EQE分析。外部量子効率(EQE)測定は、ASTM規格E1021−06(「Standard Test Method for Spectral Responsivity Measurements of Photovoltaic Devices(光起電力デバイスのスペクトル応答性測定のための標準試験方法)」)に記載されているとおりに実施した。装置中の基準検出器は、ピロ電気放射計(pyroelectric radiometer)(Laser Probe(Utica,NY)、LaserProbe Model Rm−6600 Universal Radiometerにより制御されたLaserProbe Model RkP−575)であった。励起光源は、キセノンアークランプであり、次数選択フィルター(order sorting filter)とともにモノクロメーターにより波長選択を行った。光バイアスは、単色プローブビームよりも僅かに大きいスポットに焦点を合わせた広帯域タングステン光源により与えた。測定スポットサイズは、およそ1mm×2mmであった。
【0091】
OBIC分析。光ビーム誘起電流測定値は、集束単色レーザーを励起源として採用した、特定の目的で構築された(purpose−constructed)装置を用いて測定した。励起ビームは、直径約100ミクロンのスポットに集束させた。その励起スポットを試験試料の表面上にラスターする(raster)と同時に、その試料についての位置対光電流のマップを構築するために光電流を測定した。結果として生じる光電流マップは、デバイスの光応答を位置に対して特徴付ける。この装置は、励起レーザーの選択により、様々な波長で動作し得る。典型的に、440、532または633nmの励起源を採用した。
【0092】
実施例1
【化1】

ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(0.5919g、1.635mmol)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)(0.9930g、3.267mmol)、およびジ−n−ブチルスズスルフィド(0.4506g、1.701mmol)を、攪拌棒を備えた40mLアンバーバイアルに入れた。4−t−ブチルピリジン(4.4144g)を加え、結果として生じた混合物を、十分に攪拌した。次に、0.0520g(1.621mmol)の硫黄元素を加えた。この反応混合物を約12時間にわたり室温にて攪拌し、次いで、約40時間にわたって第1の加熱温度105℃にて攪拌した。次に、この反応混合物を、約8時間にわたって第2の加熱温度190℃にて攪拌した。SLGスライドを、以下の手順に従ってドロップコーティングにより被覆した:攪拌しながら105℃で維持しつつ、配合物の小部分をピペットに吸い込み、次いで、同じく105℃まで加熱した基板上に均一に塗布した。次いで、このSLGスライド上の被膜を、加熱板の温度を0.5時間かけて105℃から170℃に上げることによって、ドライボックス中で乾燥させた。乾燥した試料を、窒素/硫黄雰囲気下で550℃にて1時間にわたりアニールした。アニールされた試料のXRDおよびXASによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0093】
実施例1A
実施例1を、4−t−ブチルピリジンの代わりに、ピリジンまたはトルエンまたは3−アミノピリジンを用い、第2の温度をそれぞれ約105℃、105℃、および170℃にして繰り返した。ピリジン中で製造された試料について、アニール温度/時間は、ピリジン中で製造された試料については400℃/0.5時間;トルエン試料については500℃/0.5時間;そして3−アミノピリジン試料については550℃/1時間であった。アニールされた試料のXRDおよびXASによる分析により、同様にCZTSの存在を確認した。
【0094】
実施例1B
実施例1を繰り返し、アニールはRTAにより窒素雰囲気下で実施した。アニールされた試料のXRDによる分析により、同様にCZTSの存在を確認した。
【0095】
実施例1C
Moパターンを形成したSLGスライド上に配合物を付着させた以外は、実施例1を繰り返した。また、加熱板の温度は2時間かけて105℃から180℃に上げ、被膜は550℃にて0.5時間にわたりアニールした。硫化カドミウム、絶縁性ZnOおよびAZO、そして銀線を付着させた。440nmおよび633nmでのOBICによる分析は、それぞれ銀線付近の5および0.75μAmpより大きい光応答を示した。
【0096】
実施例2
【化2】

ドライボックスにおいて、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(0.2956g、0.817mmol)、酢酸銅(II)(0.2974g、1.64mmol)、およびスズ(II)アセチルアセトネート(0.2634g、0.831mmol)を、攪拌棒を備えた20mLバイアルに入れた。ピリジン(0.8mL)を添加し、結果として生じた混合物を、十分に攪拌した。次に、ピリジン0.2mL中(エチルチオ)トリメチルシラン0.6789g(5.05mmol)の溶液を加えた。この反応混合物を約12時間にわたって室温にて攪拌し、次いで、約40時間にわたって第1の加熱温度105℃にて攪拌した。次に、この反応混合物を、約8時間にわたって第2の加熱温度110℃にて攪拌した。非処理ガラススライドを、上記の実施例1と同様にして、ドロップコーティングにより被覆した。次いで、この被覆された基板を、加熱板上に置き、約0.5時間かけて120℃まで加熱した。この被覆基板を、それが室温まで冷却する間、加熱板上に残したまま放置した。この被覆基板を、500℃のチューブ炉において、窒素/硫黄雰囲気下で0.5時間にわたりアニールした。アニールされた試料のXRDによる分析により、CZTSの存在を確認した。分光光度測定は、4ミクロン厚膜について110nm(約1.13eV)のバンドギャップを示した。
【0097】
実施例2A
実施例2を、ピリジンの代わりに2−アミノピリジンを用い、第2の加熱温度を約190℃、乾燥温度を170℃、アニール温度を1時間にわたり550℃にして繰り返した。アニールされた試料のXRDおよびXASによる分析により、同様にCZTSの存在を確認した。
【0098】
実施例2B
実施例2を添加された溶媒を用いずに繰り返し、被覆に先立ち、溶液を、加熱することなく数日間室温にて攪拌した。配合物および基板の両方が当初室温の状態で、ブレードコーティングにより被膜を生成した。この被膜の厚さは、0.003フィーラーストック(feeler stock)を、被覆されるべく領域の両側に置くことによって制御し、1本のより厚いフィーラーストックをブレードとして使用した。乾燥温度は、約0.5時間にわたり110℃であり、アニール温度は、0.5時間にわたり550℃であった。アニールされた試料のXRDおよびXASによる分析により、同様にCZTSの存在を確認した。分光光度測定は、約5ミクロン厚膜について850nm(約1.45eV)のバンドギャップを示した。
【0099】
実施例2C
Moパターンを形成したSLGスライド上に配合物を付着させた以外は、実施例2を繰り返した。硫化カドミウム、そして絶縁性ZnOおよびAZOを付着させた。440nmでのOBICによる分析は、0.2μAmpより大きい光応答を示した。また、IV分析は、ダイオード様挙動を示し、VOCは78mV、JSCは0.119mA/cm、FFは23.6%であり、効率は0.002%であった。
【0100】
実施例3
【化3】

ジエチルニコチンアミド(1.0871g)中の、亜鉛メトキシエトキシド(0.8184mmol)、酢酸銅(I)(1.636mmol)、ジ−n−ブチルスズスルフィド(0.8276mmol)、2−メルカプトエタノール(3.426mmol)、および硫黄(0.7795mmol)を使用し、実施例1の手順に従って、配合物を製造した。この反応混合物を約12時間にわたって室温にて攪拌し、次いで、約40時間にわたって105℃にて攪拌した。次に、この反応混合物を、約8時間190℃にて攪拌した。非処理ガラススライドを、実施例1の手順に従ってドロップコーティングにより被覆し、次いで、ドライボックスにおいて加熱板上で170〜190℃にて乾燥させた。アニールを、550℃にて30分にわたり窒素/硫黄雰囲気中で実施した。アニールされた試料のXRDによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0101】
実施例3A
実施例3を、溶媒として4−t−ブチルピリジン、1,2,4−トリクロロベンゼン、または3−メトキシプロピオニトリルを使用して繰り返した。第2の加熱工程の温度は、これらの溶媒について、それぞれ160〜190℃、190℃、および150℃であった。アニールされた試料のXRDによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0102】
実施例3B
さらに、実施例3を、2−または3−アミノピリジン(1.0314g)中の、亜鉛メトキシエトキシド(0.8829mmol)、酢酸銅(I)(1.518mmol)、ジ−n−ブチルスズスルフィド(0.8884mmol)、2−メルカプトエタノール(3.673mmol)、および硫黄(0.8045mmol)を使用し、第2の加熱温度170℃を使用して繰り返した。CZTSを、乾燥させた試料およびアニールした試料の両方において、XASにより検出した。
【0103】
実施例4
【化4】

ドライボックスにおいて、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(0.2952g、0.816mmol)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)(0.4959g,1.631mmol)、およびジ−n−ブチルビス(1−チオグリセロール)スズ(0.3648g、0.834mmol)を、攪拌棒を備えた20mLバイアルに一緒に入れた。ピリジン(2.5mL)を加え、結果として生じた混合物を十分に攪拌した。1当量の硫黄を加え、結果として生じた混合物を一晩中室温にて攪拌した。次に、この配合物を、約40時間110℃で加熱した。
【0104】
この配合物を攪拌しながら105℃で維持しつつ、小部分をピペットに吸い込み、次いで、105℃まで加熱した2枚の非処理ガラス基板上に均一に塗布した。被膜を、さらに、加熱板の温度を約1時間かけて120℃まで上げることによって乾燥させた。次いで、その被膜のうちの一方を、窒素/硫黄雰囲気下で500℃にて30分にわたりアニールした。
【0105】
XAS分析により、乾燥させた被膜およびアニールした被膜の両方において、CZTSの存在を確認した。
【0106】
実施例5
【化5】

亜鉛メトキシエトキシド(0.2385g、0.271mmol);メトキシエトキシエタノール中の銅(II)メトキシエトキシエトキシド(11重量%とすると0.545mmol)の10〜12重量%溶液1.4965g;0.1218g(0.272mmol)のジ−n−ブチルビス(1−チオグリセロール)スズ;0.1326g(1.697mmol)の2−メルカプトエタノール;および0.0089g(0.278mmol)の硫黄元素を使用し、実施例4の手順に従って、配合物を製造した。処理ガラス上の被膜を、120℃にて0.5時間にわたり乾燥させ、次いで、窒素/硫黄雰囲気下で650℃にて30分にわたりアニールした。アニールされた試料のXRDおよびXASによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0107】
実施例6
【化6】

ドライボックスにおいて、0.5917g(1.635mmol)のジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、0.4092g(3.257mmol)の銅(II)メトキシド、0.7097のジ−n−ブチルスズビス(アセチルアセトネート)、0.7625g(10.01mmol)の二硫化炭素、および1.6mLのピリジンを別個のバイアルに入れ、−25℃のフリーザー中で冷却した。次に、4分の1の冷ピリジン(約0.4mL)をそれぞれの試薬バイアルに加え、バイアルをフリーザーに戻した。およそ3分の2のピリジン中二硫化炭素の溶液を銅懸濁液に加え、残りの3分の1の二硫化炭素溶液をスズ溶液に加えた。内容物を十分に混合し、バイアルをフリーザーに戻した。冷亜鉛混合物および冷スズ溶液を、銅懸濁液に加えた。結果として生じた混合物を一晩中攪拌し、放置して室温まで温めた。翌日、0.0522g(1.628mmol)の硫黄元素をこの反応混合物に加え、これを加熱前に、室温にて48時間より長い間、攪拌した。
【0108】
ガラス上の被膜を、窒素/硫黄雰囲気下で550℃にて30分にわたりアニールした。XRDおよびXASによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0109】
実施例6A
Moパターンを形成したSLG基板上に配合物を付着させた以外は、実施例6を繰り返した。硫化カドミウム、そして絶縁性ZnOおよびAZOを付着させた。440nmでのOBICによる分析は、付近の0.1μAmpより大きい光応答を示した。EQEによるこの試料の分析により、このPVデバイスは、半導体吸収体が1.53+/−0.04eVのバンドギャップエネルギーを有することと一致する、すなわちその吸収体がCZTSとして指定されることと矛盾しない、光応答を示すことが証明された。
【0110】
実施例7〜9
【化7】

0.2952g(0.816mmol)のジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、0.4960g(1.632mmol)のジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、0.2696g(0.851mmol)のスズ(II)アセチルアセトネート、および0.2469g(1.838mmol)の(エチルチオ)トリメチルシランを使用し、実施例1の手順に従って、配合物を調製した。完全に混合した後、この反応混合物を3等分し、攪拌棒を備えた3つの4mLバイアルに入れた。これらのバイアルのうちの1つを実施例7のために使用し、何らさらなる試薬を加えなかった。第2の加熱温度は110℃であり、2枚のSLGスライドを実施例1の手順に従ってドロップコーティングし、両方の被膜を120℃にて乾燥させ、これらの被膜のうちの一方を400℃にてアニールした。別のバイアルを実施例8のために使用し、0.0082gの硫黄元素(1当量)をバイアルに加えた。第2の加熱温度は110℃であり、被膜を120℃の乾燥温度でSLGスライド上に調製し、アニール温度は400℃であった。実施例9の配合物は、2−アミノピリジンを溶媒として使用した以外は、実施例8の配合物に類似していた。第2の加熱温度は190℃であり、乾燥温度は170〜190℃であり、アニール温度は550℃であった。
【0111】
アニールした全ての試料および実施例7の乾燥させた試料中に、XRDおよび/またはXASにより、CZTSを検出した。
【0112】
実施例10
【化8】

0.1768g(0.820mmol)の亜鉛メトキシエトキシド、0.2047g(1.630mmol)の銅(II)メトキシド、0.4004g(0.911mmol)のビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]スズ(II)、0.8990g(6.692mmol)のエチルチオトリメチルシラン、0.0259g(0.808mmol)の硫黄元素、および0.4700gの3,5−ルチジンを使用し、実施例1の手順に従って、配合物を調製した。第2の加熱温度は、165℃であった。
【0113】
この配合物を、非処理ガラススライド上に被覆し、170℃にて乾燥させた。被膜を、550℃にて30分にわたりアニールし、次いでXRDにより分析した。XRDは、ケステライトを主成分として示し、そして微量のコベリン(CuS)を示した。
【0114】
実施例11
【化9】

0.1754g(0.814mmol)の亜鉛メトキシエトキシド、0.2055g(1.636mmol)の銅(II)メトキシド、0.3983g(0.906mmol)のビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]スズ(II)、0.5226g(6.69mmol)の2−メルカプトエタノール、0.0258g(0.804mmol)の硫黄元素、および0.9520gの3,5−ルチジンを使用し、実施例1の手順に従って、配合物を調製した。第2の加熱温度は、165℃であった。
【0115】
この配合物を、2枚の非処理スライドおよび2枚の処理スライド上にドロップキャストした。非処理スライド上の2つの被膜を210℃にて乾燥させ、処理スライド上の2つの被膜を250℃にて乾燥させた。非処理スライド上の被膜のうちの一方を550℃にて1時間にわたりアニールし、処理スライド上の被膜のうちの一方を550℃にて0.5時間にわたりアニールした。これらの被膜をXASにより分析し、アニールされた被膜中にCZTSの存在を確認した。
【0116】
実施例12〜13
【化10】

実施例1の手順に従い、実施例12の配合物を、0.1829g(0.849mmol)の亜鉛メトキシエトキシド、0.2110g(1.680mmol)の銅(II)メトキシド、0.2299g(0.868mmol)のジ−n−ブチルスズスルフィド、0.4085g(5.23mmol)の2−メルカプトエタノール、および0.916gの4−t−ブチルピリジンを使用して調製した。第2の加熱温度は、190℃であった。
【0117】
実施例1の手順に従い、実施例13の配合物を、0.1830g(0.849mmol)の亜鉛メトキシエトキシド、0.1947g(1.550mmol)の銅(II)メトキシド、0.2440g(0.921mmol)のジ−n−ブチルスズスルフィド、0.4049g(5.18mmol)の2−メルカプトエタノール、0.792mmolの硫黄、および0.926gの4−t−ブチルピリジンを使用して調製した。第2の加熱温度は、190℃であった。
【0118】
各配合物を2枚の非処理ガラススライド上にドロップキャストし、被膜を170℃にて乾燥させた。次いで、各配合物の一方の被膜を、550℃にて0.5時間にわたりアニールした。被膜をXASにより分析し、アニールされた被膜中にCZTSの存在を確認した。
【0119】
実施例14
【化11】

1−ブタンチオール(0.6024g、6.68mmol)をバイアルに量り入れ、0.2mLのピリジンと合わせた。酢酸銅(II)(0.2971g、1.636mmol)および酢酸スズ(II)(0.1931g、0.815mmol)を、攪拌棒を備えた20mLバイアルに一緒に入れた。次に、0.8mLのピリジンをそのバイアルに加え、続いて1−ブタンチオール溶液を加えた。バイアルの内容物を、30分にわたり十分に混合した。次いで、ジエチル亜鉛(ヘキサン中の1.0M溶液816μL)を反応混合物に加え、再度、約10分にわたり十分に混合した。次に、およそ5分の1の反応混合物を、攪拌棒を備えた0.0054gの硫黄(約1当量)を含有する4mLバイアルに加えた。この反応混合物を、室温にて数日間攪拌した。
【0120】
110℃での加熱に続き、この配合物を、非処理ガラス上にドロップコーティングし、120℃にて乾燥させ、次いで、500℃にて0.5時間にわたりアニールした。XRDによる分析は、CZTSの存在を示した。
【0121】
実施例15
【化12】

実施例1の手順に従い、実施例15の配合物を、0.0.2312g(0.821mmol)の亜鉛2,4−ペンタンジオネート一水和物、0.1999g(1.631mmol)の酢酸銅(I)、0.3885g(0.901mmol)のジ−n−ブチルスズビス(アセチルアセトネート)、1.0881g(4.89mmol)のジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム塩、0.0264g(0.823mmol)の硫黄元素、および1.433gの4−t−ブチルピリジンを使用して調製した。第2の加熱温度は、190℃であった。
【0122】
この配合物を、非処理ガラス上にドロップコーティングし、180℃にて乾燥させ、550℃にて0.5時間にわたりアニールした。XASによる分析により、アニールされた試料中にCZTSの存在を確認した。
【0123】
実施例16
【化13】

実施例1の手順に従い、実施例16の配合物を、0.851mmolのジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、1.595mmolのジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、0.949mmolの硫化スズ(II)、0.823mmolの硫黄元素、および2.895gのN−メチル−2−ピロリジノンを使用して調製した。第2の加熱温度は、170〜190℃であった。
【0124】
この配合物を2枚の非処理ガラススライド上にドロップコーティングし、被膜を180℃にて乾燥させ、次いで、その被膜のうちの一方を550℃にて1時間にわたりアニールした。XRDおよびXASによる分析により、アニールされた試料中にCZTSの存在を確認した。XAS分析により、乾燥させた(アニールしていない)試料中にCZTSの存在を確認した。
【0125】
この手順を、4−t−ブチルピリジン(1.237〜1.5g)、2−アミノピリジン(1.067〜1.103g)または3−アミノピリジン(1.016〜1.048g)を溶媒として使用して、硫黄元素を加えてまたは加えずに繰り返した。被覆に先立ち、約1mLの4−t−ブチルピリジンを、アミノピリジンベースの配合物に加えた。XRDによる分析により、アニールされた6つの試料全てにおいてCZTSの存在を確認した。
【0126】
実施例17
実施例1の配合物と類似の配合物および処理SLG基板を、ともに105℃まで加熱した。この配合物をドロップコーティングした後、その被覆基板を105℃で20分にわたって維持し、次いで220℃で合計83分にわたって維持した。この基板を105℃まで冷却し、その上に同じ配合物の第2の層をドロップコーティングした。温度を105℃で約2.5時間にわたって維持し、次いで220℃で約1時間にわたって維持した。次いで、この基板を放置して、室温まで冷却した。次に、3−アミノピリジンを溶媒として使用した、硫黄元素を加えていない実施例16の配合物をスピンコーティングして、第3の層を得た。この基板を105℃で数時間にわたり加熱し、次いで20〜30分にわたり220℃で加熱し、次いで室温まで冷却した。この基板を、90分にわたり、窒素/硫黄雰囲気下で550℃にてアニールした。XRDによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0127】
実施例18
被覆基板を、第3の層を適用しなかったこと以外は、実施例17の被覆基板と類似して製造した。この基板を、90分にわたり、窒素/セレン雰囲気下でアニールした。XRD分析は、硫黄の一部(67.8%)がセレンで置換されたCZTS−Seの存在を示した。
【0128】
実施例19
2−アミノピリジンを溶媒として使用した、硫黄元素を添加していない実施例16の配合物を、処理SLG基板上にスピンコーティングした。次いで、この基板を105℃で少なくとも2時間にわたり加熱し、室温まで冷却し、170℃まで70分にわたり加熱し、そして室温まで冷却した。次に、2.2gの4−t−ブチルピリジンのみを用いた以外は実施例1のために使用した配合物と類似の配合物を、第1の被膜の上にスピン(spin)した。この基板を105℃で数時間にわたり加熱し、次いで170℃で20分にわたり加熱し、そして室温まで冷却した。RTAにより窒素下でアニールした後、XRDはCZTSの存在を示した。次いで、この基板を、炉においてセレン/窒素雰囲気下で90分にわたり550℃にてアニールした。XRDは、硫黄の一部(67.1%)がセレンで置換されたCZTS−Seの存在を示した。
【0129】
実施例20
硫化亜鉛(0.915mmol)、硫化銅(II)(1.539mmol)、および硫化スズ(II)(0.884mmol)を、攪拌棒を備えた40mLアンバーバイアルに入れた。3−メトキシプロピルアミン(0.893g)を加え、結果として生じた混合物を十分に攪拌した。次に、0.798mmolの硫黄元素を加えた。この反応混合物を、約12時間にわたり室温にて攪拌し、次いで約48時間にわたり105℃にて攪拌した。次いで、この配合物を、実施例1の手順に従い、処理SLGスライド上にドロップコーティングした。次いで、この被膜を、加熱板の温度を0.5時間かけて105℃から170℃に上げることによって、ドライボックス中で乾燥させた。この被膜を、550℃にて0.5時間にわたりアニールした。アニールされた試料のXASによる分析により、CZTSの存在を確認した。
【0130】
実施例21
配合物および被膜は、配合物中に亜鉛化合物を使用しなかったこと以外は、実施例1のものと類似した。被覆基板を、セレン/窒素蒸気下で90分にわたり550℃にてアニールした。XRD分析は、硫黄の一部(71.4%)がセレンで置換され、平均粒度が100nmより大きい、CTS−Seの存在を示した。
【0131】
実施例22
実施例16を、4−t−ブチルピリジンを溶媒として使用し、硫化スズ(II)の代わりにセレン化スズ(II)を使用して繰り返した。XRD分析は、硫黄の一部(76.8%)がセレンで置換され、平均粒度が35.2nmである、CTS−Seの存在を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)インクを製造する工程と、
b)前記インクを基板上に配して、被覆基板を形成する工程と
を包含する方法であって、前記インクは、
i)窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の銅錯体、硫化銅、セレン化銅、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される銅源;
ii)窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子のスズ錯体、水素化スズ、硫化スズ、セレン化スズ、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるスズ源;
iii)必要に応じて、窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子の亜鉛錯体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される亜鉛源;
iv)必要に応じて、S元素、Se元素、CS、CSe、CSSe、RS−Z、RSe−Z、RS−SR、RSe−SeR、RC(S)S−Z、RC(Se)Se−Z、RC(Se)S−Z、RC(O)S−Z、RC(O)Se−Z、およびそれらの混合物からなる群より選択されるカルコゲン化合物であって、各Zは、独立して、H、NR、およびSiRからなる群より選択され;ここで、各RおよびRは、独立して、ヒドロカルビルならびにO置換、N置換、S置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;各Rは、独立して、ヒドロカルビル、O置換、N置換、S置換、Se置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基からなる群より選択され;そして各Rは、独立して、水素、O置換、N置換、S置換、Se置換、ハロゲン置換、およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル、ならびにOベース、Nベース、Sベース、およびSeベースの官能基からなる群より選択される、カルコゲン化合物;
v)必要に応じて、溶媒
を含むが、但し、
溶媒が存在しない場合は、前記カルコゲン化合物および前記スズ源のうちの少なくとも一方は、室温で液体であり;そして
前記銅源が硫化銅およびセレン化銅から選択され、かつ前記スズ源が硫化スズおよびセレン化スズから選択される場合は、前記溶媒はヒドラジンではない
方法。
【請求項2】
前記カルコゲン化合物、前記硫黄ベースの有機配位子、前記セレンベースの有機配位子、前記硫化銅、前記硫化スズ、前記硫化亜鉛、前記セレン化銅、前記セレン化スズおよび前記セレン化亜鉛の総モル数と、前記銅錯体、前記スズ錯体および前記亜鉛錯体の総モル数との比が、少なくとも約1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インクが、カルコゲン化合物または亜鉛源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インクが、硫黄元素、セレン元素、または硫黄元素とセレン元素との混合物を含み、(S+Se)のモル比は、前記スズ源に対して約0.2〜約5である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆基板が:
a)二元銅カルコゲニド、二元銅酸化物、およびCTS−Seからなる群より選択される1種以上の銅化合物;ならびに
b)二元スズカルコゲニド、二元スズ酸化物、およびCTS−Seからなる群より選択される1種以上のスズ化合物
を含み、前記カルコゲニドは、硫化物、セレン化物またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インクが、亜鉛源を含み、前記被覆基板が、二元亜鉛カルコゲニド、ZnO、およびCZTS−Seからなる群より選択される1種以上の亜鉛化合物をさらに含み、前記カルコゲニドが、硫化物、セレン化物またはそれらの混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記窒素ベース、酸素ベース、炭素ベース、硫黄ベース、およびセレンベースの有機配位子が、アミド;アルコキシド;アセチルアセトネート;カルボキシレート;ヒドロカルビル;O置換、N置換、S置換、ハロゲン置換およびトリ(ヒドロカルビル)シリル置換ヒドロカルビル;チオおよびセレノレート;チオ、セレノ、およびジチオカルボキシレート;ジチオ、ジセレノ、およびチオセレノカルバメート;ならびにジチオキサントゲネートからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶媒が存在し、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、ニトリル、アミド、アルコール、ピロリジノン、アミン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
約80℃〜約350℃の乾燥工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆基板が、CZTS−Seを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が、金属箔、プラスチック、ポリマー、金属化プラスチック、ガラス、ソーラーガラス、低鉄ガラス、青板ガラス、ソーダ石灰ガラス、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、セラミック、金属板、金属化セラミック板、および金属化高分子板からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インクを約100℃より高い温度に加熱する工程を、前記インクを前記基板上に配する工程の前にさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被覆基板が、CZTS−Seを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、大気圧で実施され、溶媒が存在し、前記溶媒の沸点が、大気圧で約100℃より高い、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
約350℃〜約800℃でのアニール工程をさらに包含し、前記アニール工程が、熱処理、急速熱処理、急速熱アニール、パルス熱処理、レーザービーム露光、IRランプによる加熱、電子ビーム露光、パルス電子ビーム処理、マイクロ波照射による加熱、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アニール工程が、不活性ガスと、セレン蒸気、硫黄蒸気、水素、硫化水素、セレン化水素、およびそれらの混合物からなる群より選択される反応性成分とを含む雰囲気下で実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アニール工程が、不活性ガスを含む雰囲気下で実施され、前記カルコゲン化合物、前記硫黄ベースの有機配位子、前記セレンベースの有機配位子、前記硫化銅、前記硫化スズ、前記硫化亜鉛、前記セレン化銅、前記セレン化スズおよび前記セレン化亜鉛の総モル数と、前記銅錯体、前記スズ錯体および前記亜鉛錯体の総モル数との比が、少なくとも約1である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
バッファ層、上部接触層、電極パッド、および反射防止層からなる群より選択される1つ以上の層を、前記アニールされたCZTS−Se膜上に配する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項18の方法によって製造された、光起電力デバイス。

【公表番号】特表2012−527402(P2012−527402A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512064(P2012−512064)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035810
【国際公開番号】WO2010/135667
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】