説明

銅パターンの形成方法及びそれを用いた画像表示装置の製造方法

【課題】電解めっきにて成膜した銅膜4をエッチングして銅パターン4’を形成するに際し、生産性を大きく低下させることなく、順テーパ形状の断面形状を有する銅パターン4’を容易に形成できるようにする。
【解決手段】それぞれめっき液を収容した第一のめっき浴と第二のめっき浴を用い、銅膜4を第一の銅膜4aと第二の銅膜4bに分けて成膜すると共に、以下のA、B、Cのいずれか一又は二以上の調整を行う。
A:第一の銅膜4aの成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度を、第二の銅膜4bの成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度より高くする。
B:第一の銅膜4aの成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度を、第二の銅膜4bの成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度より低くする。
C:第一の銅膜4aの成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度を、第二の銅膜4bの成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度より高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像表示装置の配線等として用いられる銅パターンの形成方法、及びそれを用いた画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(以下、FPDと記す)、さらに表示面積の大型化、高精細化が進んでいる。この大型化、高精細化に伴い、配線長が長くなり、配線抵抗及び寄生容量が増大し、駆動する素子に印加される電圧が、素子が接続されている配線の位置で異なってしまうことが危惧されている。その対策としては厚い銅配線を用い、配線抵抗を下げることが有効である。特に電子放出素子、有機EL等の電流注入素子を用いたFPDでは、配線を低抵抗とするために、液晶ディスプレイより厚い銅配線が必要である。また、厚い銅配線については、銅配線上を覆って形成する酸化防止層や絶縁層等のカバー層のカバレッジを良くするために、断面形状を側面の傾斜がなだらかな等脚台形状(順テーパ形状)とすることが好ましい。
【0003】
特許文献1には、液晶ディスプレイにおいて、アルミニウム配線より低抵抗の銅配線を適用する際の、エッチングによる順テーパ形状のパターニング技術の必要性が開示されている。しかし、この特許文献1は、順テーパ形状とするための手法については開示していない。
【0004】
特許文献2には、順テーパ形状を得るためのものではないが、銅配線の断面形状を制御するために、パターニング前の電解めっき膜形成時に電流密度を下げる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−217087号公報
【特許文献2】特開2005−166917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現状では、基板上に導電性シード層を形成し、この導電性シード上に電解めっきにて銅膜を成膜し、この銅膜をエッチングして銅配線を得ている。しかし、銅残渣を十分除去するために必要なオーバーエッチングにより、断面形状が、側面の傾斜が急峻な矩形に近い形状(高テーパ形状)になってしまいやすい。このため、その後形成するカバー層や絶縁層のカバレッジが不十分となり、例えば画像表示装置の製造においては、歩留まりを低下させてしまう問題があった。
【0007】
特許文献1は、前記のように、カバレッジをよくするために順テーパ形状とすることが好ましいことを開示してはいるが、その手法については開示がない。
【0008】
一方、電解めっきにより得られる膜厚は、(電流密度)×(時間)で定まることから、特許文献2の方法のように、電解めっき時の電流密度を下げると、成膜時間が長くなり、生産性を低下させる問題を生じる。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、画像表示装置の配線等として用いられる銅パターンを形成する際に、生産性を大きく低下させることなく、順テーパ形状の断面形状を有する銅パターンを容易に形成できるようにすることを第1の目的とする。また、本発明は、大画面、高精細な画像表示装置を歩留まりよく容易に製造することができるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、上記第1の目的のために、基板の上に導電性シード層を形成し、該導電性シード層の上に電解めっきにて銅膜を成膜し、該銅膜の表面にレジストパターンを形成し、エッチング液にて不要箇所を除去してパターンを形成する銅パターンの形成方法において、
前記電解めっきによる銅膜の成膜を、それぞれめっき液を収容した複数のめっき浴を用いて複数回に分けて行うと共に、以下のA、B、Cのいずれか一又は二以上の調整を行うことを特徴とする銅パターンの形成方法を提供するものである。
【0011】
A:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度より高くする。
【0012】
B:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度より低くする。
【0013】
C:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度より高くする。
【0014】
本発明の第2は、やはり上記第1の目的のために、基板の上に導電性シード層を形成し、該導電性シード層の上に電解めっきにて銅膜を成膜し、該銅膜の表面にレジストパターンを形成し、エッチング液にて不要箇所を除去してパターンを形成する銅パターンの形成方法において、
前記電解めっきによる銅膜の成膜を、めっき液を収容した単一のめっき浴を用いて行うと共に、以下のD、E、Fのいずれか一又は二以上の調整を行うことを特徴とする銅パターンの形成方法を提供するものである。
【0015】
D:前記めっき液の光沢剤濃度を、前記成膜中に段階的又は連続的に下げる。
【0016】
E:前記めっき液の平滑剤濃度を、前記成膜中に段階的又は連続的に上げる。
【0017】
F:前記るめっき液の温度を、前記成膜中に段階的又は連続的に下げる。
【0018】
本発明の第3は、上記第2の目的のために、銅パターンとして形成された配線を備えた画像表示装置の製造方法において、前記配線とする銅パターンを上記本発明の第1に係る銅パターンの形成方法で形成することを特徴とする画像表示装置の製造方法を提供するものである。
【0019】
なお、本発明において、銅膜とは、銅又は銅を主成分とする膜をいう。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1は、前記A〜Cのいずれか一又は二以上の調整を行うことにより、いずれの場合も、銅膜の先に形成される部分(下層部分)を、銅膜の後から形成される部分(上層部分)に比してエッチングされにくくすることができる。つまり、基板側ではエッチング速度が遅く、表面側では速度が速い銅膜を形成することができる。従って、その後のエッチングにより、断面が順テーパ形状の銅パターンを確実に得ることができる。また、A〜Cの条件の調整は、いずれも、電解めっき時の電流密度を下げた場合ほど銅膜の形成速度を大きく低下させるものではないことから、生産性を大きく損なうことがない。
【0021】
ところで、光沢剤を増加しためっき液又は平滑剤を減少しためっき液にて形成した銅膜のエッチング速度が遅くなる理由は不明である。しかし、いずれの場合も形成した銅膜の応力が小さくなっていることから、銅膜の結晶粒径が大きいためにエッチング速度が遅くなっていると推測される。また、めっき液の温度を上げることで得られる銅膜のエッチング速度が遅くなる理由も、同様に結晶粒径が大きくなるためであると推測される。
【0022】
本発明の第2は、前記D〜Fのいずれか一又は二以上の調整を行うことにより、上記本発明の第1と同様の効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第3は、本発明の第1又は第2を用いていることにより、カバレッジのよい断面形状の銅パターンを配線とすることができるので、歩留まりよく画像表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る銅パターンの形成方法の一例を示す工程説明図である。
【図2】本発明に係る銅パターンの形成方法の他の例を示す工程説明図である。
【図3】本発明に係る銅パターンの形成方法を用いて製造することができる画像表示装置の一例を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図4】図3の画像表示装置における配線の状態を模式的に示す拡大図で、(a)はリアプレートの平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図5】実施例2におけるめっき液の温度プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に基づいて本発明に係る銅パターンの形成方法の一例を説明する。
【0026】
まず、図1(a)に示されるように、基板1上に導電性シード層2を形成する。導電性シード層2はスパッタ法、蒸着法等のドライ成膜手法によるCu、Ta、Ti、Pt等の導電性金属の膜として形成することができる。また、導電性の合金膜や導電性金属の積層膜として形成することもできる。更には、導電ペースト、導電インク等を塗布して焼成することで得られる導電性の膜として形成することもできる。厚さは0.5〜2μm程度である。
【0027】
導電性シード層2の形成に際しては、基板1と導電性シード層2の良好な密着性を得るために、基板1に密着層3を形成してからその上に導電性シード層2を形成することができる。密着層3としては、例えばスパッタ法、蒸着法等のドライ成膜手法で付設したTaNやTiN等の膜を用いることができる。
【0028】
基板1としては、プリント基板として用いる場合には、ガラスエポキシ(例えば、パナソニック電工製の「FR−4」)、紙フェノール等の材質を使用することができる。また、FPD用基板として用いる場合には、青板ガラスやフロートガラスとして知られるアルカリ含有ガラス(例えば、日本板硝子製の商品名「U.F.F Glass」)を使用できる。また、ホウケイ酸ガラスとして知られる無アルカリガラス(例えば、コーニング製の商品名「#7059」)等も使用することができる。
【0029】
次に、導電性シード層2上に通電接点を接触させ、硫酸銅のめっき液中に浸漬し、通電して、図1(b)に示されるように第一の銅膜4aを成膜する。また、第一の銅膜4aの成膜後、図1(c)に示されるように、やはり電解めっきにより、第一の銅膜上4aに第二の銅膜4bを成膜し、第一の銅膜4aと第二の銅膜4bとからなる銅膜4を成膜する。この第一の銅膜4aと第二の銅膜4bとからなる銅膜4の成膜は、それぞれ異なる調整状態のめっき液を収容した複数のめっき浴を用いて、複数回に分けて行われる。
【0030】
第一の銅膜4aと第二の銅膜4bの成膜に用いるめっき液としては、光沢剤及び平滑剤を含んだ硫酸銅のめっき液を用いることができる。このめっき液は、硫酸銅(例えば、日鉱金属製の商品名「ユピノーグ」)、硫酸、塩素、光沢剤、平滑剤を混合して作成することができる。光沢剤とは、一般的には析出を促進する機能で使用されるもので、一般的には硫黄系有機化合物が使用されている。具体的には、例えば、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、その2ナトリウム塩、3−メルカプトプロピルスルホン酸、そのナトリウム塩、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸(3−スルホプロピル)エステル、そのナトリウム塩等が使用できる。平滑剤とは、一般的には析出を抑制する機能で使用されるもので、一般的にはポリエーテル化合物等が使用されている。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシアルキレングリコール等が使用できる。電解めっきにおいては、凹部の埋込み等のために、光沢剤と平滑剤が併用されるのが通常である。
【0031】
本例においては、銅膜4を第一の銅膜4aの成膜(先の回の成膜)と第二の銅膜4bの成膜(次の回の成膜)に分けて行うに際し、以下のA、B、Cのいずれか一又は二以上の調整を行う。つまり、先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液と、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液として、以下に示すA、B、Cのように、光沢剤濃度、平滑剤濃度又は温度が異なるものを用いる。
【0032】
A:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度より高くする。つまり、第一の銅膜4aの成膜時のめっき液の光沢剤濃度を、第二の銅膜4bの成膜時のめっき液の光沢剤濃度より高くする。
【0033】
B:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度より低くする。つまり、第一の銅膜4aの成膜時のめっき液の平滑剤濃度を、第二の銅膜4bの成膜時のめっき液の平滑剤濃度より低くする。
【0034】
C:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度より高くする。つまり、第一の銅膜4aの成膜時のめっき液の温度を、第二の銅膜4bの成膜時の電解めっきに用いるめっき液の温度より高くする。
【0035】
上記A〜Cのいずれか一又は二以上の調整を行うことで、後述するエッチング速度が厚さ方向に異なる銅膜4とすることができる。具体的には、先の回に成膜される基板1側の第一の銅膜4aはエッチング速度が遅く、次の回に成膜される表面側の第二の銅膜4bはエッチング速度が速くなる。そして、よりなだらかな側面の順テーパ形状の銅パターン4’[図1(e)参照]を得やすくする上では、次のようにすることが好ましい。即ち、上記Aの調整においては、先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度の2倍以上とすることが好ましい。上記Bの調整においては、先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度の1/2以下とすることが好ましい。上記Cの調整においては、先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度より10℃以上高くすることが好ましい。また、本例では、銅膜4の成膜を2回に分けているが、3回以上に分けて行うこともできる。
【0036】
更に、銅膜4の表面にレジストを塗布し、露光現像して、図1(d)に示されるように、所望のレジストパターン5を形成する。レジストは、後に使用するエッチング液に耐性があれば良いが、通常のフォトレジスト(例えば、東京応化製の商品名「PMER−P−LA」)、又はドライフィルム(例えば、旭化成製の商品名「SUNFORT AQ−5038」)が使用できる。
【0037】
その後、エッチング液内に浸漬して、図1(e)に示されるように、レジストパターン5に沿った領域以外の銅膜4の不要箇所をエッチング除去し、所望の銅パターン4’を形成する。この時、前記のように、相対的に、第一の銅膜4aはエッチング速度が遅く第二の銅膜4bはエッチング速度が速いので、得られる銅パターン4’の断面形状は順テーパ形状となる。エッチング液としては、塩化銅エッチング液、PAN系(リン酸−酢酸−硝酸系)エッチング液(例えば、関東化学製の商品名「SEA−1」)、硫酸過酸化水素エッチング液(例えば、日本パーオキサイド製の商品名「ハイエッチャント」)等が使用できる。また、これと同時又は別途行うドライエッチング等により、レジストパターン5に沿った領域以外の領域である不要箇所の導電性シード層2及び密着層3も除去する。
【0038】
次いで、フォトレジストのレジストパターン5の場合は指定の剥離液(例えば、東京応化製の商品名「剥離液104」)、ドライフィルムのレジストパターン5の場合は水酸化ナトリウム溶液にて除去する。そして、図1(f)に示されるように、得られた銅パターン4’上を覆ってカバー層6を設けた場合、銅パターン4’の断面形状が順テーパ形状であることから、カバー層6の良好なカバレッジ性が得られる。この良好なカバレッジ性を得る上で、得られる銅パターン4’の断面における側面と基板表面との交差角(テーパ角)は、75度以下であることが好ましい。このテーパ角の測定は、銅パターン4’の断面から走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することができる。本発明で形成する銅パターン4’は、配線の他、例えば電極、その他の構成部材として形成することができる。
【0039】
次に、図2に基づいて本発明に係る銅パターン4’の形成方法の他の例を説明する。なお、図1と同じ符号は同じ構成要素を示し、以下には図1で説明した例との相違点を主に説明する。
【0040】
図2(a)に示される導電性シード層2の付設は図1(a)での説明と同様である。
【0041】
本例では、図2(b)に銅膜4が連続した一つの層として示されているように、銅膜4の成膜を、図1(b),(c)で説明したように複数のめっき浴を用いて複数回に分けて行うのではなく、単一のめっき浴を用いて1回で行う。そして、この成膜に際して、以下のD、E、Fのいずれか一又は二以上の調整を行う。
【0042】
D:めっき液の光沢剤濃度を、成膜中に段階的又は連続的に下げる。
【0043】
E:めっき液の平滑剤濃度を、成膜中に段階的又は連続的に上げる。
【0044】
F:めっき液の温度を、成膜中に段階的又は連続的に下げる。
【0045】
上記D〜Fのいずれか一又は二以上の調整を行うことで、エッチング速度が厚さ方向に段階的又は連続的に変化する銅膜を成膜することができる。D〜Fの一又は二以上を二段階で行うと、エッチング速度の相違する状態が図1の例に近い状態の銅膜4が得られるが、連続的に行うと、エッチング速度が基板1側から表面側へと連続して速くなる銅膜4が得られる。Dの調整は、光沢剤濃度が薄いか光沢剤の入っていないめっき液をめっき浴中のめっき液に供給することで行うことができる。Eの調整は、平滑剤又は平滑剤濃度の高いめっき液をめっき浴中のめっき液に供給することで行うことができる。Fの調整は、めっき浴に温度調節手段(加熱手段及び冷却手段)を設けておくことで行うことができる。D〜Fの調整は、段階的に行っても連続して行ってもよいが、なだらかな側面の順テーパ形状の銅パターン4’[図2(d)参照]が得やすいので、連続的に行うことが好ましい。やはりなだらかな側面の順テーパ形状の銅パターン4’を得やすくする上で、次のようにすることが好ましい。即ち、上記Dの調整においては、成膜開始時のめっき液の光沢剤濃度を、成膜完了時のめっき液の光沢剤濃度の2倍以上とすることが好ましい。上記Eの調整においては、成膜開始時のめっき液の平滑剤濃度を、成膜完了時のめっき液の平滑剤濃度の1/2以下とすることが好ましい。上記Fの調整においては、成膜開始時のめっき液の温度を、成膜完了時のめっき液の温度より10℃以上高くすることがこのましい。また、D〜Fの調整の中でも、めっき液の繰り返し使用が容易であるので、Fの調整が好ましい。
【0046】
図2(c)に示される図(d)に示されるレジストパターン5の形成、エッチングによる不要箇所の除去による銅パターン4’の形成、図2(e)に示されるカバー層6の形成は、図1(d)〜(f)での説明と同様である。
【0047】
上記のようにして銅パターン4’を配線として形成した配線基板は、プリント基板、FPD用基板、特に液晶表示パネル、フィールドエミッションデイスプレイ、有機ELパネル等に使用することができる。本発明の製造方法で作成した配線基板を、複数の画像形成素子を備える画像表示装置に用いることにより、良好な表示性能を有する画像表示装置を製造することができる。ここで、画像形成素子とは、液晶表示パネルの場合は、液晶表示素子である。フィールドエミッションデイスプレイの場合は、電子放出素子と蛍光体を有するフィールドエミッション表示素子である。有機ELパネルの場合は、有機EL表示素子である。
【0048】
図3にフィールドエミッションデイスプレイの一例を模式的に示す。図3において、31はリアプレート、32はフェースプレート、33は枠体である。リアプレート31の表面には、電解放出形の電位放出素子34が設けられた基板1が保持されている。また、基板1の表面には、この複数の電子放出素子34を駆動するために、下配線35と、この下配線35と交差方向に設けられた上配線36とが設けられている。下配線35と上配線36はそれぞれ電子放出素子34に接続された銅配線であり、下配線35は絶縁層であるカバー層6で覆われていることで、上配線36と電気的に絶縁されている。フェースプレート32は、透光性のガラス基板37と、ガラス基板37上に設けられた複数の発光部材(蛍光体)38と、発光部材38上に積層されたアノード39とを有している。発光部材38は、電子放出素子34から放出された電子の照射を受けて発光するものである。上記リアプレレート31とフェースプレート32は、電子放出素子34等の設置面と、アノード39等の設置面とを向き合わせ、両者間の周囲に枠体33を挟み込んで、間隔を開けて対向配置されている。そして、リアプレレート31、フェースプレート32及び枠体33で囲まれて封止された空間内は真空に排気されて、画像表示装置を構成している。また、画像表示装置の大型化に伴って、耐大気圧支持構造であるスペーサ(図示されていない)を、リアプレート31とフェースプレート32との間に介在させることもできる。画像表示装置を駆動させる際には、通常、下配線35に情報信号、上配線36に走査信号を入力する。これと共に、アノード39に高電圧を印加して、電子放出素子34から放出された電子をアノード39に向けて加速させ、発光部材38に加速された電子を照射する。これによって所望の発光部材38を選択的に発光させることで画像を表示する。
【0049】
図4に示されるように、基板1上に設けられた下配線35はカバー層6で覆われており、このカバー層6上に上配線36が設けられている。下配線35及び上配線36は、厚い銅配線4となっている一方、下配線35のカバー層6によるカバレッジ性をよくするために、下配線35は本発明に係る銅パターン4’の形成方法を用いて形成されている。つまり、少なくとも下配線35を、前記図1で説明した方法又は図2で説明した方法で形成すると、その後のカバー層6の形成時の良好なカバレッジ性が得られる。従って、下配線35と上配線36間の絶縁不良を生じにくく、画像表示装置の製造における歩留まりが向上する。
【実施例】
【0050】
実施例1
図1で説明した方法で、光沢剤[ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩]濃度を変化させて、銅パターン4’を形成した。まず、縦300mm、横350mm、厚さ2.8mmの長方形の青板ガラスの基板1上に、スパッタ装置にて、密着層3としてのTaNを10nm、導電性シード層2としてのCuを1μm成膜した[図1(a)]。
【0051】
次に、導電性シード層2上に第一のめっき浴にて電解銅めっきを実施し、5μmの第一の銅膜4aを成膜した[図1(b)]。その後、第二のめっき浴にて5μmの第二の銅膜4bを成膜し、第一の銅膜4aと第二の銅膜4bとからなる銅膜4を成膜した[図1(c)]。以下に電解めっき条件を示す。
【0052】
(1)電解めっき条件
a 第一のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:10μl
ロ めっき液の温度:25℃
ハ 電流密度:2.5A/dm2
ニ めっき時間:550sec
b)第二のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:2μl
ロ めっき液の温度:25℃
ハ 電流密度:2.5A/dm2
ニ めっき時間:550sec
【0053】
以上により、導電性シード層2から成長した厚さ5μmの第一の銅膜4aは第二の銅膜4bに比してエッチング速度が遅い膜として成膜された。また、この第一の銅膜4a上の厚さ5μmの第二の銅膜4bは第一の銅膜4aに比してエッチング速度が速い膜として成膜された。
【0054】
その後、上記第一の銅膜4aと第二の銅膜4bからなる銅膜4上にレジストパターン5を形成した[図1(d)]。この際使用したレジストは東京応化製の厚膜ポジレジスト「PMER P−LA100」あり、膜厚は5μm狙いで以下の条件で塗布、露光、現像を行なった。
【0055】
(2)レジストパターン形成条件
イ 塗布条件: スピンコート(1200rpm、40sec)、5μm
ロ プリベーク:110℃、2min
ハ 露光条件:600mJ/cm2
ニ 現像条件
・現像液:ロームアンドハース製「MICROPOSIT MF−CD26 DEVELOPER
・温度:23℃
・時間:95sec
【0056】
レジストパターン5の形成後のエッチングでは、エッチング液として前述の関東化学製「SEA−1」を使用した。エッチング液内に基板を浸漬して800secのエッチングを行ない、銅パターン4’を得た[図1(e)]。
【0057】
以上の結果、得られた銅パターン4’の断面におけるテーパー角は約68度であり、側面の傾斜が緩やかな銅パターン4’が形成できた。
【0058】
密着層3としてのTaNをドライエッチングにて除去した後、さらにレジストパターン5を以下の条件で剥離した。
【0059】
(3)レジストパターン剥離条件
イ 剥離液:東京応化製「剥離液104」
ロ 剥離液温度:50℃
ハ 処理時間:25分
【0060】
その後、カバー層として、銅パターン4’上にスパッタにてTaNを200nm成膜した。この際に、カバー層6による良好なカバレッジ性が得られた[図1(f)]。
【0061】
実施例2
図2で説明した方法で、めっき液の温度を連続的に変化させて、図4に示される構造のマトリクス回路として用いられる下配線を銅パターン4’として形成した。
【0062】
まず、実施例1と同様の基板1上に、実施例1と同様にして、密着層3としてのTaNを10nm、導電性シード層2としてのCuを1μm成膜した[図2(a)]。
【0063】
その後、解銅めっきを実施する際に、単一のめっき浴にて、めっき液温度を35℃から20℃へと連続的に変化させて、20μmの銅膜4を形成した(図2(b))。電解めっき条件は以下の通りである。なお、めっき液の温度プロファイルを図5に示す。
【0064】
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:80g
・硫酸:180g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:1.5μl
ロ めっき液の温度:35℃から20℃へ連続的に降温(図5参照)
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:1820sec
【0065】
その後、実施例1と同様にしてエッチングを行い、図4に示される下配線35である銅パターン4’を形成した[図2(d)]。得られた下配線35(銅パターン4’)のデーパ角は約74度と緩やかであった。
【0066】
実施例3
実施例1と同様に、図1で説明した方法で、平滑剤(ポリエチレングリコール)濃度を変化させて、銅パターン4’を形成した。実施例1と同様の基板1を用い、実施例1と同様に密着層3と導電性シード層2を設けた。その後、第一のめっき浴と第二のめっき浴を用い、厚さ10μmの第一の銅膜4aを成膜した後に厚さ10μmの第二の銅膜4bを成膜し、第一の銅膜4aと第二の銅膜4bとからなる銅膜4を得た。
【0067】
(1)めっき条件
a 第一のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.15ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:1μl
ロ めっき液温度:20℃
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:910sec
b)第二のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.6ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:1μl
ロ めっき液温度:20℃
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:910sec
【0068】
その後のレジストパターン5の形成及びエッチングは実施例1と同様に行い、銅パターン4’を得た。そのテーパー角は約73度と緩やかであった。
【0069】
実施例4
本実施例では、図1で説明した方法を用い、実施例1と同様に第一のめっき浴と第二のめっき浴を使用し平滑剤濃度を変化させ、更に第三のめっき浴も使用して光沢剤濃度も変化させた。第一のめっき浴では厚さ13μmの第一の銅膜4aを形成し、第二のめっき浴では厚さ13μmの第二の銅膜4bを形成し、更に第三のめっき浴では厚さ14μmの第三の銅膜(図示されていない)を形成した。
【0070】
(1)めっき条件
a 第一のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.15ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:4μl
ロ めっき液温度:20℃
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:1183sec
b)第二のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:4μl
ロ めっき液温度:20℃
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:1183sec
c)第三のめっき浴
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:180g
・硫酸:90g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:1μl
ロ めっき液温度:20℃
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:1183sec
【0071】
その後のレジストパターン5の形成及びエッチングは実施例1と同様に行い、銅パターン4’を得た。そのテーパー角は約65度と緩やかであった。
【0072】
実施例5
本実施例は、図2で説明した方法の変形例で、実施例2と同様に単一のめっき浴を用い、めっき液の温度を変化させると共に、印加電流密度も変化させで銅パターン4’を形成した。めっき液の温度は、35℃から20℃まで連続的に降下させ、厚さ20μmの銅膜4を成膜した。また、この温度変化と共に、厚さ10μmになるまで(前半)は電流密度2.0A/dm2にて成膜し、厚さ10μmに達してから20μmになるまで(後半)は電流密度3.0A/dm2にて成膜した。
【0073】
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:80g
・硫酸:180g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:1.5μl
ロ めっき液の温度:35℃から20℃へ連続的に降温(図5参照)
ハ 電流密度
・前半:2.0A/dm2
・後半:3.0A/dm2
ニ めっき時間
・前半:1364sec
・後半:910sec
【0074】
その後のレジストパターン5の形成及びエッチングは実施例1と同様に行い、銅パターン4’を得た。そのテーパー角は約68度と緩やかであった。
【0075】
比較例
以下のめっき条件の単一のめっき浴を用いた以外は実施例1と同様にして20μmの銅膜を成膜した。
【0076】
イ めっき液の組成(いずれもめっき液1リットル中の含有量)
・硫酸銅:80g
・硫酸:180g
・塩素:50mg
・ポリエチレングリコール:0.4ml
・ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド2ナトリウム塩:2μl
ロ めっき液の温度:25℃
ハ 電流密度:3.0A/dm2
ニ めっき時間:1820sec
【0077】
その後のレジストパターンの形成及びエッチングは実施例1と同様に行い、銅パターンを得た。そのテーパー角は約82度と急峻であり、良好なカバレッジが得にくいものであった。
【符号の説明】
【0078】
1:基板、2:導電性シード層、3:密着層、4a:第一の銅膜、4b:第二の銅膜、4:銅膜、5:レジストパターン、6:カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に導電性シード層を形成し、該導電性シード層の上に電解めっきにて銅膜を成膜し、該銅膜の表面にレジストパターンを形成し、エッチング液にて不要箇所を除去してパターンを形成する銅パターンの形成方法において、
前記電解めっきによる銅膜の成膜を、それぞれめっき液を収容した複数のめっき浴を用いて複数回に分けて行うと共に、以下のA、B、Cのいずれか一又は二以上の調整を行うことを特徴とする銅パターンの形成方法。
A:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の光沢剤濃度より高くする。
B:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の平滑剤濃度より低くする。
C:先の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度を、次の回の成膜に用いるめっき浴中のめっき液の温度より高くする。
【請求項2】
請求項1における前記Aの調整において、前記先の回の成膜に用いる前記めっき浴中の前記めっき液の光沢剤濃度を、前記次の回の成膜に用いる前記めっき浴中の前記めっき液の光沢剤濃度の2倍以上とすることを特徴とする銅パターンの形成方法。
【請求項3】
請求項1における前記Bの調整において、前記先の回の成膜に用いる前記めっき液中の平滑剤の濃度を、前記次の回の成膜に用いる前記めっき液中の平滑剤の濃度の1/2以下とすることを特徴とする銅パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項1における前記Cの調整において、前記先の回の成膜に用いる前記めっき液の温度を、前記次の回の成膜に用いる前記めっき液の温度より10℃以上高くすることを特徴とする銅パターンの形成方法。
【請求項5】
基板の上に導電性シード層を形成し、該導電性シード層の上に電解めっきにて銅膜を成膜し、該銅膜の表面にレジストパターンを形成し、エッチング液にて不要箇所を除去してパターンを形成する銅パターンの形成方法において、
前記電解めっきによる銅膜の成膜を、めっき液を収容した単一のめっき浴を用いて行うと共に、以下のD、E、Fのいずれか一又は二以上の調整を行うことを特徴とする銅パターンの形成方法。
D:前記めっき液の光沢剤濃度を、前記成膜中に段階的又は連続的に下げる。
E:前記めっき液の平滑剤濃度を、前記成膜中に段階的又は連続的に上げる。
F:前記めっき液の温度を、前記成膜中に段階的又は連続的に下げる。
【請求項6】
請求項5における前記Dの調整において、成膜開始時の前記めっき液の光沢剤濃度を、成膜完了時の前記めっき液の光沢剤濃度の2倍以上とすることを特徴とする銅パターンの形成方法。
【請求項7】
請求項5における前記Eの調整において、成膜開始時の前記めっき液の平滑剤濃度を、成膜完了時の前記めっき液の平滑剤濃度の1/2以下とすることを特徴とする銅パターンの形成方法。
【請求項8】
請求項5における前記Fの調整において、成膜開始時の前記めっき液の温度を、成膜完了時の前記めっき液の温度より10℃以上高くすることを特徴とする銅パターンの形成方法。
【請求項9】
銅パターンとして形成された配線を備えた画像表示装置の製造方法において、前記配線とする銅パターンを請求項1乃至8のいずれか一項に記載の銅パターンの形成方法で形成することを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21184(P2012−21184A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158606(P2010−158606)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】