説明

銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法

【課題】作業過程において溶液の転化を必要とせずとも銅・インジウム・ガリウム・セレンを逐一分離することができ、工程時間および製造コストを効果的に削減することができる銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法を提供する。
【解決手段】銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法であって、まずインジウム・ガリウム・セレンを含む金属粉末を塩酸および過酸化水素の混合溶液で溶解する。ヒドラジンでセレンを分離した後、インジウム金属で銅と置換する。最後に支持液膜(SLM)に分散逆抽出液を組み合わせてインジウムおよびガリウムを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法に関し、しかも特に支持液膜を組み合わせた銅・インジウム・ガリウム・セレン回收方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換効率が高いことから、銅・インジウム・ガリウム・セレン(CIGS)薄膜型太陽電池は非常に発展の潜在性を備えていると見られている。CIGS薄膜型太陽電池を製造する方法として、真空スパッタリング、蒸着または非真空塗布の工程のいずれを採用するかに関わらず、コスト削減と環境保護の要求に符合させるために、銅、インジウム、ガリウムおよびセレンはいずれも回収および精錬の工程が必要となる。したがって、廃棄材料(廃液)中から如何に銅、インジウム、ガリウムおよびセレンを分離して回収するかということは、現在、進歩が求められている技術である。
【0003】
一般的にセレンを回収する方法としては、例えば特許文献1には、低温下(−20℃)でヒドラジンを用いてメチル(エチル)アルコール中の亜セレン酸から非結晶系のセレンを還元するものが開示されている。特許文献2には、一酸化炭素および一級アミンまたは二級アミンとセレン含有材料とを反応させて溶剤に溶解可能な化合物を調製するものが開示されており、このセレン含有化合物はさらに熱分解の方式で単質のセレンを析出して、セレン回収の効果を達成するものが開示されている。
【0004】
ガリウムの回収においては、例えば特許文献3には、支持液膜を用いてガリウム砒素廃棄物中からガリウムを回収するものが開示されている。特許文献4には、有機溶液である7(4−ethyl−1−methyloctyl)−8−hydroxyquinoline(Kelex10)およびtricaprylmethyl−ammonium chloride(Aliquat 336)を抽出剤として、ガリウムの回収および純化を行うものが開示されている。
【特許文献1】米国特許公告US3954951号明細書
【特許文献2】米国特許公告US4463141号明細書
【特許文献3】台湾特許公告I−268802号明細書
【特許文献4】米国特許公開US20040042945A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、廃棄材料(廃液)中の銅・インジウム・ガリウム・セレンをそれぞれ回収するにはかなり複雑な工程が必要となり、例えばセレンを分離した後、溶液を、ガリウムを分離するに適した溶液条件に転化しなければならず、操作工程が煩雑になるばかりでなく、工程時間も無駄に長くなってしまい、製造コストの上で消費が嵩んでしまう。また、複雑な化学工程ではかなりの廃水が生じてしまう。
【0006】
したがって、工業生産工程および廃水中から銅、インジウム、ガリウムおよびセレンを除去し回収する安定性および効率の高い方法は、現在、進歩が待たれる技術となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明で開示する方法は、前記した従来技術における銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収工程における複雑さ、および工程時間が長いという問題を解決できるものである。
【0008】
一実施例において、本発明の方法は以下の工程を含む。まず、銅・インジウム・ガリウム・セレンを含む複数の金属粉末を準備する。次に、前記複数の金属粉末を塩酸溶液中に浸す。さらに塩酸と過酸化水素を含む混合溶液を前記塩酸溶液中に加えて、前記複数の金属粉末を前記塩酸溶液中に完全に溶解させて、第1の溶液を調製する。続いて、ヒドラジン溶液を第1の溶液に加えて、第1の溶液から前記複数の金属粉末中のセレンを選択的に分離して第2の溶液を調製する。インジウム金属を第2の溶液中に投入して、前記第2の溶液から前記複数の金属粉末中の銅と置換するとともに、第3の溶液を調製する。微細孔の支持材が設けられている液膜を準備する。抽出剤を含む有機溶液中に分散している水相逆抽出溶液を含む分散逆抽出液を準備する。第3の溶液が初期濃度で8Nを越える酸を含むよう第3の溶液に濃酸を加える。液膜の一方側で第3の溶液を処理するとともに、液膜の他方側にて分散逆抽出液を用いることで、第3の溶液中のガリウムを選択的に除去する。一部または全ての分散逆抽出液を有機相および濃縮されたガリウム溶液を含む水相逆抽出溶液に分けるものであり、しかも前記第3の溶液中におけるガリウムイオンの濃度は30ppm未満となる。これにて銅・インジウム・ガリウム・セレンの分離が完了する。
【0009】
本発明の第1の実施例によれば、第3の溶液が液膜に進入する前、濃酸を用いて第3の溶液のプロトン濃度を8N〜10Nに調整する。
【0010】
本発明の第2の実施例によれば、前記混合溶液の塩酸と過酸化水素との体積比は10:1〜10:3である。
【0011】
本発明の第3の実施例によれば、前記ヒドラジン溶液は当量で1〜3のヒドラジンを含む。
【0012】
本発明の第4の実施例によれば、前記有機溶液と前記水相逆抽出溶液との体積比は2:1である。
【0013】
本発明の第5の実施例によれば、前記水相逆抽出溶液は少なくとも塩酸を含んでおり、塩酸の当量濃度が1Nないし3Nの範囲である。
【0014】
本発明の第6の実施例によれば、前記分散逆抽出液を有機相および水相逆抽出液に分けた後、第3の溶液を電気分解し反応させ、インジウムを得ることをさらに含む。
【0015】
本発明の第7の実施例によれば、第3の溶液を液膜のチューブ側で処理するとき、液膜のシェル側では分散逆抽出液を使用して、前記第3の溶液中のガリウムを選択的に除去する。
【0016】
本発明の第8の実施例によれば、第3の溶液を液膜のシェル側で処理するとき、液膜のチューブ側では分散逆抽出液を使用して、前記第3の溶液中のガリウムを選択的に除去する。
【発明の効果】
【0017】
従来の銅・インジウム・ガリウム・セレンを回収する方法と比べて、本発明で開示する実施例は一本の生産ラインにて作業することができ、しかもプロセス溶液の転化を必要とせずとも銅・インジウム・ガリウム・セレンを逐一分離することができる。したがって、工程を簡素化でき、工程時間を短縮するとともに製造コストを効果的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の一実施例に基づき構成され、支持液膜技術および分散逆抽出技術を組み合わせて銅・インジウム・ガリウム・セレンを回収する装置の概略図である。
【図1B】本発明の一実施例に基づき構成され、支持液膜技術および分散逆抽出技術を組み合わせて銅・インジウム・ガリウム・セレンを回収する装置の概略図である。
【図2】本発明の他の一実施例に基づき構成され、支持液膜技術および分散逆抽出技術を組み合わせてガリウムを回収する装置の拡大概略図である。
【図3】本発明の図1に係る中空糸型支持液膜のモジュール部分の拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、各工程にて使用される酸がいずれも塩酸であるため、作業過程において溶液の転化を必要とせずとも銅・インジウム・ガリウム・セレンを逐一分離することができる銅・インジウム・ガリウム・セレン(copper, indium, gallium, and selenium)の回収方法を開示している。
【0020】
一実施例において、銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法を開示している。まず、銅・インジウム・ガリウム・セレンを含む複数の金属粉末を準備する。次に、前記複数の金属粉末を塩酸溶液中に浸す。さらに塩酸と過酸化水素を含む混合溶液を、前記複数の金属粉末が浸されている塩酸溶液中に加えて、前記複数の金属粉末を塩酸溶液中に完全に溶解させて、第1の溶液を調製する。続いて、ヒドラジン溶液を第1の溶液に加えて、第1の溶液から前記複数の金属粉末中のセレンを選択的に分離して第2の溶液を調製する。インジウム金属を第2の溶液中に投入して、第2の溶液から前記複数の金属粉末中の銅と置換するとともに、第3の溶液を調製する。微細孔の支持材が設けられている液膜(liquid membrane)を準備する。抽出剤を含む有機溶液(organic solution)中に分散している水相逆抽出溶液(aqueous strip solution)を含む分散逆抽出液(strip dispersion solution)を準備する。第3の溶液が初期濃度で8Nを越える酸を含むよう第3の溶液に濃酸(concentrated acid)を加える。液膜の一方側で第3の溶液を処理するとともに、液膜の他方側にて分散逆抽出液を用いることで、第3の溶液中のガリウムを選択的に除去する。一部または全ての分散逆抽出液を有機相および濃縮されたガリウム溶液を含む水相逆抽出溶液に分ける。分散逆抽出液を有機相および水相逆抽出液に分けた後、第3の溶液を電気分解し反応させ、インジウムを得る
【0021】
前記濃酸を第3の溶液に加える工程において、第3の溶液が含む酸の初期濃度は回収開始後、時間経過に伴って変化する。
【0022】
ある実施例において、第3の溶液が液膜に進入する前、濃酸を用いて第3の溶液のプロトン濃度(proton concentration)を8N〜10Nに調整する。
【0023】
ある実施例において、前記混合溶液の塩酸と過酸化水素との体積比は10:1〜10:3である。
【0024】
ある実施例において、前記ヒドラジン(hydrazine)溶液は当量で1〜3のヒドラジンを含む。
【0025】
ある実施例において、前記分散逆抽出液中における有機溶液の体積が水相逆抽出溶液の体積よりも大きい。特定の実施例において、前記分散逆抽出液中における有機溶液と水相逆抽出溶液との体積比は2:1である。
【0026】
ところで、元素態のセレンが加熱された塩酸/過酸化水素の混合溶液または硝酸中に溶解するとき、その溶解の化学式は化1、2および3であることに留意されたい。
【0027】
【化1】


【化2】

【化3】

【0028】
そしてヒドラジンイオンは、四価または六価セレンを元素態のセレンに還元することができる。その化学式は化4となる。
【化4】

【0029】
また、インジウム・ガリウム・セレンを含む前記金属粉末が塩酸および過酸化水素の混合溶液中に溶解する過程において、ガリウムが溶解するときは発熱(exothermic)反応であるため、ガリウムが溶解するときに塩酸温度が上昇し、セレンが溶解しやすくなるため、プロセス溶液を加熱する工程を別に設ける必要はなくなるということに留意されたい。
【0030】
前記インジウム金属を第2の溶液中に投入して銅と置換する工程にて、例えばインジウムといった標準電極電位が低めの金属、銅といった標準電極電位が高めの金属で、還元および沈積を行うということに留意されたい。当然のこと、仮に溶液中に例えばスズ、鉛、ニッケル、銀といった電位の高いその他貴金属を有する場合でも、インジウム金属で置換することができる。前記インジウム金属に形状の制限はなく、実施においても例えば粉末状インジウム金属、線状インジウム金属、シート状インジウム金属および板状インジウム金属としてもよい。
【0031】
本発明の一実施例の中空糸型支持液膜モジュールで銅・インジウム・ガリウム・セレンを回収する概略図である図1Aおよび図1Bを参照する。分散逆抽出液102は中空糸型支持液膜モジュール130におけるシェル側(shell side)(図1A)またはチューブ側(tube side)(図1B)を流れる。ガリウム・インジウムを含む第3の溶液は供給溶液104として抽出された後、例えばチューブ側(図1A)またはシェル側(図1B)といった対向する側を流れる。中空繊維構造を採用した支持液膜は分散逆抽出液102を安定的に支持するため、工程の安定的な進行を確保する。
【0032】
一実施例において、供給溶液104は攪拌器111で供給槽101中にて均一に混合されて、供給ポンプ106により中空糸型モジュールのチューブ側132の入口に流れ込むことで、チューブ側132の出口から排出される。そして図1Aに示すように、分散逆抽出液102は攪拌器112で分散逆抽出槽110中にて均一に混合されて、中空糸型支持液膜モジュール130のシェル側134を流れる。他の実施例において、前記中空繊維構造の支持液膜モジュール130中にて流体が流れる方式は逆流方式であるが、シェル側を流れる分散逆抽出液102とチューブ側を流れる供給溶液104の流動方向を逆とすることで、供給溶液104と分散逆抽出液102との接触時間を長くして、抽出効率を高めても良い。
【0033】
本発明の目的を達成するために、分散逆抽出液は水相および有機相の混合物として定義される。このうち、水相は水相逆抽出溶液(aqueous strip solution)を含み、有機相は有機溶液中に存在する一種類以上の抽出剤(extractant)を含んでいる。分散逆抽出液は前記水相および有機相を混合することにより調製されており、図1A図1Bに示すように、例えば分散逆抽出槽110中にて攪拌器112で混合して調製される。このような組成で水相逆抽出溶液は液滴形式で連続した有機相中に存在することができる。抽出過程において、分散逆抽出液が中空糸型膜モジュールを流れることで、分散逆抽出液は維持される。分散逆抽出液の有機相は多孔質の中空繊維における疎水性孔に付着しやすく、安定した液膜が形成される。
【0034】
本発明の一実施例の支持液膜技術および分散逆抽出技術を組み合わせてガリウムを回収する装置の概略図である図2を参照する。分散逆抽出液202はシェル・アンド・チューブ構造におけるシェル側(shell side)またはチューブ側(tube side)を流れて、そして第3の溶液は供給溶液204としてシェル・アンド・チューブ構造の他方側(シェル側またはチューブ側)を流れる。中空繊維構造を採用した支持液膜は分散逆抽出液202を安定的に支持するため、工程の安定的な進行を確保する。
【0035】
一実施例において、供給溶液204は供給ポンプ206により前記中空糸型モジュールのチューブ側を流れ、そして分散逆抽出液はポンプ208により中空糸型モジュールのシェル側を流れる。他の実施例において、前記中空繊維構造の支持液膜中にて流体が流れる方式は逆流方式であるが、シェル側を流れる分散逆抽出液202とチューブ側を流れる供給溶液204の流動方向を逆とすることで、供給溶液204と分散逆抽出液202との接触時間を長くして、抽出効率を高めても良い。
【0036】
分散逆抽出液は前記水相および有機相を混合することにより調製されており、図2に示すように、例えば分散逆抽出槽210中にて攪拌器212で混合して調製される。このような組成で水相逆抽出溶液は液滴形式で連続した有機相中に存在することができる。抽出過程において、分散逆抽出液が中空糸型モジュールを流れることで、分散逆抽出液は維持される。分散逆抽出液の有機相は多孔質の中空繊維における疎水性孔に付着しやすく、安定した液膜が形成される。
【0037】
図3は本発明の図1に係る中空糸型支持液膜のモジュール部分120の拡大概略図である。工程実行時に、支持液膜の分散逆抽出液側の圧力がPo(PaおよびPoは図示しない)となる。このとき、支持液膜モジュールにおける供給溶液側(供給溶液流入方向302から供給溶液流出方向304に流れる)には、圧力Poよりも高圧である低圧Pa(通常は2psi前後)が付与される。この圧力差により、分散逆抽出液中の有機溶液312が中空繊維の孔308に浸透して液膜の供給溶液側に達するのを防止することができる。水相逆抽出溶液中に分散されている液滴310の大きさは約80μm(micrometer)ないし800μmである。この種のサイズはすでに微細孔性の支持構造における孔308のサイズよりも数レベル大きいため、支持液膜の分散逆抽出液側の液滴310は微細孔性の支持構造における孔308を透過することなく供給溶液側に到達する。
【0038】
本発明に開示する支持液膜の分散逆抽出システムにおいて、有機膜溶液、つまり分散逆抽出液の有機相は、支持材の孔中に持続的に供給される。このような持続的な供給では、支持液膜の安定的で持続的な作用を確保できる。また、有機相と逆抽出相(strip phase)とが直接接触することにより、逆抽出工程を行えるように効果的な物質移動を提供している。有機相と逆抽出相は場合によっては、例えば高せん断混合(high−shearing mixing)で両者間の接触面積を増やすというように混合を経ても良い。
【0039】
ガリウムの除去が完了した後、分散逆抽出液のミキサ(例えば攪拌器112)を停止して、分散液を、二つの相に分かれるまで静置させる。このうち、二つの相に分かれたものは、それぞれ有機溶液と濃縮逆抽出溶液(concentrated strip solution)であり、そして前記濃縮逆抽出液は本発明で開示する方法の生成物である。
【0040】
銅・インジウム・ガリウム・セレンを含有した前記金属粉末は工業的なプロセス液または廃水であるが、銅・インジウム・ガリウム・セレンを含有する溶液は、工業的なプロセス液および廃水(廃棄材料)に限定されない。一実施例において、銅・インジウム・ガリウム・セレンを含有する金属粉末は銅・インジウム・ガリウム・セレンの使用済みターゲット(Cu/In/Ga/Se spent target)由来とすることができる。
【0041】
本発明で開示するガリウム回収用の分散逆抽出液にて、その有機溶液は体積濃度で10%ないし70%のジアルキルリン酸ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(di(2−ethyl−hexyl)phosphoric acid, D2EHPA)抽出剤を含んでいる。一実施例において、ガリウム回収用の前記分散逆抽出液にて、その有機溶液は体積濃度で30%ないし70%のD2EHPA抽出剤を含んでいる。特定の実施例において、ガリウム回収用の前記分散逆抽出液にて、その有機溶液は体積濃度で30%ないし50%のD2EHPA抽出剤を含んでいる。
【0042】
従来の支持液膜技術と比べて、本発明で開示するものは供給溶液中からガリウムを除去するという応用の面においてかなりの優位性を備えている。これら優位性は高い膜安定性、低いコスト、工程作業が簡素化、優れた物質移動流束(flux)および高いガリウム回収率を含むものである。
【0043】
本発明で開示する技術では、有機薄膜溶液を中空繊維支持材の孔中に安定的に供給して、供給溶液中からガリウムを除去して回収するのに用いることができる。このような安定的な供給により、本発明で開示する支持液膜が従来の液膜よりも安定して、工程がより安定して持続的に行うことができる。また、本発明では、回流および再利用(recharging)のためとして二組の薄膜モジュールを使用する必要はない。したがって本発明で開示する技術では装置および作業のコストを同時に削減することができる。同時に、本発明で開示する除去技術では、その作業が従来技術に比べてもより簡便になっている。
【0044】
本発明で開示する技術において、有機/抽出相は逆抽出水相に直接接触している。この二つの相の混合により、元より中空繊維が提供する物質移動の表面積を提供する以外に、さらに多くの物質移動の表面積が利用され、これにより目標物質が有機相から抽出される効率を高めることができる。逆抽出効率が高められることで、ガリウムが抽出されるときの物質移動流束が増加される。
【0045】
本発明では異なる形式の実施例として表現しているが、図示されているもの、および下記にて説明されているものは本発明の実施例であるとともに、本文に開示されているものは本発明の一範例として考慮され、しかも本発明を図面および/またはその記述する特定実施例中に限定するために用いることを意図するものではない。
【0046】
[実施例]
以下の実施例で使用される支持液膜は逆流(countercurrent)モード動作である。供給溶液は微細孔のポリプロピレン(polypropylene)中空糸型モジュールのチューブ側(tube side)を流れる。モジュールおよび分散槽中における被抽出のガリウムは分散逆抽出液中に逆抽出される。
【0047】
実施例1
銅・インジウム・ガリウム・セレンの溶解工程
まず、銅・インジウム・ガリウム・セレンの使用済みターゲットからなる金属粉末を10Nの塩酸溶液中に投入して、続いて塩酸と過酸化水素との体積比が10:1である混合液をゆっくりと加えて、前記金属粉末の溶解率が98.5%になるまで溶解させた。前記溶解率が98.5%に達した溶液中にて溶解していない金属粉末をろ過除去した後の溶液を第1の溶液とした。
【0048】
ヒドラジンのセレン還元工程
当量で1から3のヒドラジンを含むヒドラジン溶液を準備した。ヒドラジン溶液を第1の溶液にゆっくりと加えたが、このとき溶液は透明から赤茶色に徐々に変化し、しかも溶液は混濁状態となった。さらに21時間反応させた後、元素態セレンおよび銅・インジウム・ガリウムを含む塩酸溶液をろ過してセレンを分離するとともに、第2の溶液を調製した。分離されたセレンはICP発光分析装置(ICP−OES)で分析したところ、得られたセレンの純度は4N以上となり、換算後のセレン回収率は99.1%にまで達し、そして第2の溶液中にて測定されたセレン含有量は1ppm未満であった。
【0049】
インジウムの銅との置換還元工程
インジウム金属を第2の溶液中に投入して、8時間置換反応させた後、元素態の銅およびインジウム・ガリウムを含む塩酸溶液をろ過して銅を分離するとともに、第3の溶液を調製した。分離された銅はICP発光分析装置(ICP−OES)で分析したところ、得られた銅の純度は2N以上となり、換算後の銅回収率は99.2%にまで達し、そして第3の溶液中にて測定された銅含有量は0.5ppm未満であった。
【0050】
中空繊維の支持液膜チューブでインジウムおよびガリウムを分離する工程
まず、分散逆抽出液中における有機溶液と水相逆抽出溶液との体積比が2:1となるよう調整した。このうち有機溶液は抽出剤D2EHPAおよび分散剤であるケロシンとを混合してなるものであり、D2EHPAの体積濃度が30%ないし50%であり、そして逆抽出溶液の塩酸濃度が1Nであり、第3の溶液の濃度が8Nなるように塩酸で調整して供給溶液としており、操作温度範囲が20℃ないし30℃となっている。
【0051】
中空糸型モジュールのチューブ側を流れて、チューブ側が第3の溶液で満たされた後、水相物質を含む油相物質をポンプにより中空糸型モジュールのシェル側に送った。有機相が中空繊維の孔を透過して第3の溶液中に進入するのを防止するために、チューブ側には、例えばシェル側よりも4ないし5psi前後高い正圧を付与した。システム運転時には、第3の溶液および分散溶液はいずれもタンク中から薄膜モジュールに送り、さらにタンク中に戻した。一定時間ごとに第3の溶液中および逆抽出溶液からサンプルとしてガリウムイオン濃度を測定し、ガリウムイオン濃度が30ppm未満になったときに反応を終了した。分散逆抽出液から抽出されたサンプルは、相分離が現れるまで静置した。続いて、原子吸光分析装置(AAS)で分散逆抽出液中における水相サンプルを分析して、その中におけるガリウム濃度を確定するとともに、後続の電気分解の後に測定されたガリウム純度は4N以上に達し、しかも換算後のガリウム回収率は約99.1%であった。
【0052】
上記反応が終了した後、シェル側の供給相の溶液を排出させて、置換槽内に集めて、置換した後に電気分解して得られたインジウム純度は4N5以上に達し、換算後のインジウム回収率は約99.2%であった。
【0053】
実施例2
本実施例の実験作業は実施例1と同じであるが、使用する混合溶液中の塩酸と過酸化水素との体積比が10:1ではなく10:2であるところのみが異なっている。
【0054】
回収された銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収率は換算後にてそれぞれ約99.4、99.2、99.2および99.4%であった。
【0055】
実施例3
本実施例の実験作業は実施例1と同じであるが、使用する混合溶液中の塩酸と過酸化水素との体積比が10:1ではなく10:3であるところのみが異なっている。
【0056】
回収された銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収率は換算後にてそれぞれ約99.5、99.3、99.2および99.9%であった。
【0057】
実施例4
本実施例の実験作業は実施例3と同じであるが、中空繊維の支持液膜チューブでインジウムおよびガリウムを分離する工程において、逆抽出溶液の塩酸濃度が1Nではなく2Nであるところのみが異なっている。
【0058】
回収された銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収率は換算後にてそれぞれ約99.4、99.3、99.4および99.9%であった。
【0059】
実施例5
本実施例の実験作業は実施例3と同じであるが、中空繊維の支持液膜チューブでインジウムおよびガリウムを分離する工程において、逆抽出溶液の塩酸濃度が1Nではなく3Nであるところのみが異なっている。
【0060】
回収された銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収率は換算後にてそれぞれ約99.4、99.3、99.5および99.9%であった。
【0061】
実施例6
本実施例の実験作業は実施例5と同じであるが、中空繊維の支持液膜チューブでインジウムおよびガリウムを分離する工程において、塩酸で調整する第3の溶液の濃度が8Nではなく9Nであるところのみが異なっている。
【0062】
回収された銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収率は換算後にてそれぞれ約99.4、99.3、99.5および99.9%であった。
【0063】
実施例7
本実施例の実験作業は実施例5と同じであるが、中空繊維の支持液膜チューブでインジウムおよびガリウムを分離する工程において、塩酸で調整する第3の溶液の濃度が8Nではなく10Nであるところのみが異なっている。
【0064】
回収された銅、インジウム、ガリウムおよびセレンの回収率は換算後にてそれぞれ約99.4、99.2、99.54および99.9%であった。
【0065】
上記実施例から理解できるように、混合溶液中における塩酸と過酸化水素との体積比、逆抽出溶液の塩酸濃度または塩酸で第3の溶液を調整するその濃度を微調整することで、これら貴金属の少なくとも一種類の金属の回収率を相対的に増加させることができる。しかしながら、上記方法で銅、インジウム、ガリウムおよびセレンを回収するが、その回収率はいずれも回収率99%以上に達しており、その回収率はほぼ100%に達している。また、本発明で開示する実施例は一本の生産ラインにて作業することができ、しかもプロセス溶液の転化を必要とせずとも銅・インジウム・ガリウム・セレンを逐一分離することができる。したがって、工程を効果的に簡素化でき、工程時間を短縮するとともに製造コストを効果的に削減することができる。
【0066】
本発明では実施例を上記のように開示したが、これは本発明の保護範囲を限定するためのものではなく、当該分野に習熟する当業者であれば、本発明の技術的思想および範囲を逸脱することなく、各種変更および付加を行うことができるので、本発明の保護範囲は特許請求の範囲により限定されるものを基準とすべきである。
【符号の説明】
【0067】
101 供給槽
102 分散逆抽出液
104 供給溶液
106 供給ポンプ
108 ポンプ
110 分散逆抽出槽
111 攪拌器
112 攪拌器
120 モジュール部分
130 モジュール
132 チューブ側
134 シェル側
202 分散逆抽出液
204 供給溶液
206 供給ポンプ
208 ポンプ
210 分散逆抽出槽
212 攪拌器
302 供給溶液流入方向
304 供給溶液流出方向
306 中空繊維壁
308 孔
310 液滴
312 有機溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法であって、
銅・インジウム・ガリウム・セレンを含む複数の金属粉末を準備する工程と、
前記複数の金属粉末を塩酸溶液中に浸す工程と、
塩酸と過酸化水素を含む混合溶液を準備する工程と、
前記混合溶液を、前記複数の金属粉末が浸されている塩酸溶液中に加えて、前記複数の金属粉末を前記塩酸溶液中に完全に溶解させて、第1の溶液を調製する工程と、
ヒドラジン溶液を前記第1の溶液に加えて、前記第1の溶液から前記複数の金属粉末中のセレンを選択的に分離して第2の溶液を調製する工程と、
インジウム金属を前記第2の溶液中に投入して、前記第2の溶液から前記複数の金属粉末中の銅と置換するとともに、第3の溶液を調製する工程と、
微細孔の支持材が設けられている液膜を準備する工程と、
抽出剤を含む有機溶液中に分散している水相逆抽出溶液を含む分散逆抽出液を準備する工程と、
前記第3の溶液が初期濃度で8Nを越える酸を含むよう前記第3の溶液に濃酸を加える工程と、
前記液膜の一方側で前記第3の溶液を処理するとともに、前記液膜の他方側にて前記分散逆抽出液を用いることで、前記第3の溶液中のガリウムを選択的に除去する工程と、
一部または全ての前記分散逆抽出液を有機相および濃縮されたガリウム溶液を含む前記水相逆抽出溶液に分けるものであり、しかも前記第3の溶液中におけるガリウムイオンの濃度が30ppm未満となる工程と、を含むことを特徴とする銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項2】
前記第3の溶液が前記液膜に進入する前、前記濃酸を用いて前記第3の溶液のプロトン濃度を8N〜10Nに調整することを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項3】
前記混合溶液の塩酸と過酸化水素との体積比が10:1〜10:3であることを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項4】
前記ヒドラジン溶液が当量で1〜3のヒドラジンを含むことを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項5】
前記分散逆抽出溶液中における前記有機溶液の体積が前記水相逆抽出溶液の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項6】
前記有機溶液と前記水相逆抽出溶液との体積比が2:1であることを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。

【請求項7】
前記抽出剤がジアルキルリン酸ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(di(2−ethyl−hexyl)phosphoric acid, D2EHPA)を含み、前記ジアルキルリン酸ジ(2−エチルヘキシル)リン酸の前記有機溶液中における体積濃度が10%ないし70%であることを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項8】
前記抽出剤がジアルキルリン酸ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(di(2−ethyl−hexyl)phosphoric acid, D2EHPA)を含み、前記ジアルキルリン酸ジ(2−エチルヘキシル)リン酸の前記有機溶液中における体積濃度が30%ないし50%であることを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項9】
前記水相逆抽出溶液が塩酸を少なくとも含み、前記塩酸の当量濃度が1Nないし3Nの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項10】
前記分散逆抽出液を前記有機相および前記水相逆抽出液に分けた後、第3の溶液を電気分解し反応させ、インジウムを得ることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項11】
前記第3の溶液を液膜のチューブ側で処理するとき、前記液膜のシェル側では前記分散逆抽出液を使用して、前記第3の溶液中のガリウムを選択的に除去することを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。
【請求項12】
前記第3の溶液を液膜のシェル側で処理するとき、前記液膜のチューブ側では前記分散逆抽出液を使用して、前記第3の溶液中のガリウムを選択的に除去することを特徴とする請求項1に記載の銅・インジウム・ガリウム・セレンの回収方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63882(P2011−63882A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191729(P2010−191729)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(509176178)光洋応用材料科技股▲ふん▼有限公司 (9)
【Fターム(参考)】