説明

銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料

本発明は、銅内電極積層セラミックコンデンサの作製に用いられることができる銅内電極と整合する1種の耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料を開示する。主結晶相と、改質添加剤と、焼結フラックスとから組成され、主結晶相の構造式がMgBa(1−x)ZrSi(1−y)で、そのうち、0.8≦x≦0.95、0.05≦y≦0.2で、前記改質添加剤がMnO、CaO、LiO、Bi、TiOのうちの1種または複数種で、前記焼結フラックスがB、SiO、ZnO、CuO、KO、BaOのうちの1種または複数種である。前記セラミック媒体材料はEIA標準のCOG特性を満足し、且つ材料は均一で、粒度分布が均一で、分散性が高く、成型プロセスが良い特徴を備え、環境保全の要求を満足し、誘電特性が優良である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、セラミック媒体材料及びそれによって得られたコンポーネントの製備方法に係り、特にCOG特性を満足し、且つ銅内電極と整合できる1つの高周波低温において焼結されたセラミック媒体材料に係る。
【0002】
〔背景技術〕
製品の高性能、低コストという市場ニーズにつれて、セラミックコンデンサのメーカーが生産コストを下げることもでき、より高い性能要求も満足できる代替材料を絶えず捜し求めなければならないことは、かれたちが面する重大な挑戦の1つである。現在の積層セラミックコンデンサ(以下、MLCCと称する)は既に基本的にベースメタル化が実現され、80%以上のMLCCがベースメタル内電極材料(ニッケルを主とする)によってパラジウム銀を取って代わり、略40%の生産コストを有効に下げることができる。更なる研究として、銅電極の使用が検討し始められ、その他のベースメタルに対して、銅は価格上の優勢を有するのみでなく、より重要なのは高周波分野において、銅の電気性能がより優秀であることもある。しかし、銅はニッケルと比べると、より酸化しやすく、且つ銅の融点(1083℃)がニッケルの融点(1453℃)より低く、また、当面の汎用セラミックスの焼結温度が非常に高くて、銅電極と整合されにくいため、MLCCの電気性能に影響する。もし銅を内電極の材料として使用すれば、まず要求を満足するセラミック媒体材料を必然的に獲得しなければならない。
【0003】
〔発明の開示〕
本発明の解決しようとする技術問題は、COGセラミック媒体の特性を満足し、材料の分散性が高く、成型プロセスが良く、RoSH条例の要求を満足する1つの銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料を提供することである。
【0004】
上記技術問題を解決するために、本発明の提供する技術手段は下記の通りである。銅内電極と整合する1種の耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料であって、主結晶相と、改質添加剤と、焼結フラックスとから組成され、主結晶相の構造式がMgBa(1−x)ZrSi(1−y)で、そのうち、0.8≦x≦0.95、0.05≦y≦0.2で、前記改質添加剤がMnO、CaO、LiO、Bi、TiOのうちの1種または複数種で、前記焼結フラックスがB、SiO、ZnO、CuO、KO、BaOのうちの1種または複数種である。
【0005】
さらに、上記銅内電極と整合する耐還元性高周波セラミック媒体材料は、モル百分率で、主結晶相が80〜95mol%で、改質添加剤が1.2〜10mol%で、焼結フラックスが2.5〜18mol%で、モル百分率で、改質添加剤が銅内電極と整合する耐還元性高周波セラミック媒体材料全体における組成は、MnOが0.2〜0.5mol%、CaOが0〜1.0mol%、LiOが1.0〜3.0mol%、Biが0〜5.0mol%、TiOが0〜1.0mol%で、モル百分率で、前記焼結フラックスが銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料全体における組成は、Bが1.0〜3.0mol%、SiOが0〜6.0mol%、ZnOが1.5〜6.0mol%、CuOが0〜1.0mol%、KOが0〜1.0mol%、BaOが0〜1.0mol%で、前記主結晶相をMg(OH)、SiO、BaCO及びZrOでボールミル混合した後、1050℃〜1170℃の温度において予備焙焼することによって作製されることが特徴である。
【0006】
上記組成において、主成分は良好な高周波性能を有する複合物であるMgBa(1−x)ZrSi(1−y)を選択し、該複合物が比較的に低い誘電率、比較的に低い媒体損失係数値、及び直線性に近い誘電‐温度特性を有し、これらはすべて主材料から本発明の材料によって作製されたMLCCが優良な電気性能を有することを保証できる。改質添加剤材料の加入は、材料の誘電率を約10に維持させることを保証でき、且つセラミック媒体材料の温度係数を非常に良く調節されるため、誘電‐温度特性が直線性に近いようにさせると共に、さらにセラミック体結晶粒の異常な生成を抑制することができ、結晶粒の生成を均一にさせて、これは媒体材料の耐圧強度向上に対し非常に良い役割を果たし、且つ最終的に本発明において獲得されたMLCCが高い信頼性を有するようにさせる。焼結フラックスの主な役割の1つは、本発明のセラミック材料の焼結温度を下げて、材料が1100℃以下の温度において緻密な焼結を行い、焼結後のセラミック体結晶粒の生成が均一で高い緻密度を有するようにさせて、さらに作製されたMLCCが高い信頼性を有することを保証することである。本発明は、還元雰囲気において焼結されたMgBa(1−x)ZrSi(1−y)体系の非強誘電性銅電極媒体セラミックスを採用しており、焼結温度が1100℃より低く、セラミック材料が銅(Cu)内電極スラリー材料と整合でき、セラミック材料の性能が優越である。
【0007】
上記高周波低温焼結セラミック媒体材料によってMLCCを製備する方法において、慣用セラミック材料生産プロセスフローによりMLCCセラミック材料を作製することは、セラミックスラリーの製備と、媒体ダイヤフラムの作製と、内電極及び媒体層の交替重畳印刷と、母材の乾燥と、積層と、切断と、バインダ除去と、焼結と、面取りと、エンドキャッピングと、エンドケーキングとのプロセスを含む。すなわち、シート式MLCCの作製フローにより有機接着剤やエチルアルコールなどの溶剤を加入し、これによってスラリー材料を形成し、スラリー材料を流延してダイヤフラムに作製し、ダイヤフラムに銅Cu内電極を印刷し、所要層数を交替で積層し、母材MLCCチップを形成し、その後、有機接着剤と溶剤を排除するように、200〜300℃の温度において母材MLCCチップを熱処理し、1000〜1100℃の温度においてMLCCチップを2.5〜5時間焼結し、その後、表面処理を経て、外部電極を内部電極と連結させるように、さらにチップの両端に1対の外部銅Cu電極をキャップし、830〜900℃の温度範囲内において外電極を熱処理し、さらに電気めっき処理などのプロセスを経て、MLCC製品を得ることができる。該製備方法において、製品の焼結温度が低く、プロセス設備に対する要求が簡単で、セラミック媒体材料の粒度分布が均一で、焼結中においてセラミック体結晶粒の生成が均一、緻密で、MLCC製品の電気性能が優良である。
【0008】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の主旨は下記の通りである。MgBa(1−x)ZrSi(1−y)体系を材料の主結晶相として採用し、性能を調節するように改質添加剤を加入し、且つ焼結温度の降下を助けるため焼結フラックスを加入し、慣用のプロセスを採用して所要粉体に作製し、COGセラミック媒体の特性を満足し、材料の分散性が高く、成型プロセスが良い低温焼結セラミック媒体材料を得、且つMLCC製品を作製するときに、焼結温度が低く、結晶粒の生成が均一、緻密で、製品に欠陥を有せず、または欠陥が小さい。次に実施例と合わせて本発明の内容に対しさらに詳しい説明を行い、実施例において言及する内容は本発明に対する限定でなく、材料の配合についての選択は、地元の条件により結果に対し実質上影響を与えないように適当な措置を取ることができる。
【0009】
まず、本発明の材料の配合の一般的な提案を下記の通り簡単に記述する。銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料であって、主結晶相と、改質添加剤と、焼結フラックスとから組成され、主結晶相の構造式がMgBa(1−x)ZrSi(1−y)で、そのうち、0.8≦x≦0.95、0.05≦y≦0.2で、前記改質添加剤がMnO、CaO、LiO、Bi、TiOのうちの1種または複数種で、前記焼結フラックスがB、SiO、ZnO、CuO、KO、BaOのうちの1種または複数種である。
【0010】
〔実施例1〕
銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料であって、純度が99.5%以上の原材料を採用し、0.8molのMg(OH)、0.8molのSiO、0.2molのBaCO及び0.2molのZrOという混合比率により、均一にボールミルし、1150℃の温度において該混合物を3時間焙焼してから、主結晶相がMg0.8Ba0.2Si0.8Zr0.2である材料を得る。その後、所定比率により表1に示す改質添加剤と焼結フラックスを添加する。
【0011】
【表1】

【0012】
当業者常用のセラミック材料生産プロセスフローによりセラミック媒体材料を作製し、その後、常用のMLCCの作製フローにより有機接着剤とエチルアルコールなどの溶剤を加入し、これによってスラリー材料を形成し、スラリー材料を流延してダイヤフラムに作製し、ダイヤフラムに銅Cu内電極を印刷し、所要層数を交替で積層し、母材MLCCチップを形成し、その後、有機接着剤と溶剤を排除するように、200〜300℃の温度において母材MLCCチップを熱処理する。1000〜1100℃の温度においてMLCCチップを2.5〜5時間焼結し、表面バフ研磨処理を経て、外部電極を内部電極と連結させるように、さらにチップの両端に1対の外部銅Cu電極をキャップし、830〜900℃の温度範囲内において外電極を熱処理する。さらに電気めっき処理などのプロセスを経て、MLCC製品を得ることができる。該MLCC製品は、容量が安定で、性能が良いなどの特徴を有する。室温25℃のときに、HP4278電気ブリッジを利用して、1MHz、1.0V(AC)において本MLCC製品の容量、損失を試験し、SF2512快速絶縁機を利用して、100VのDC定格電圧を10秒印加し、絶縁電気抵抗を試験し、高低温チャンバを利用して、−55〜+125℃の間において、誘電率‐温度係数を試験し、HP4991Aを利用して本MLCC製品の周波数特性などを試験し、製品性能試験パラメータは、表2に示される1〜10号材料の配合と対応するMLCC試験パラメータである。
【0013】
【表2】

【0014】
〔実施例2〕
銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料であって、純度が99.5%以上の原材料を採用し、0.9molのMg(OH)、0.9molのSiO、0.1molのBaCO及び0.1molのZrOという混合比率により、均一にボールミルし、1150℃の温度において該混合物を3時間焙焼してから、主結晶相がMg0.9Ba0.1Si0.9Zr0.1である材料を得る。その後、所定比率により表3に示す改質添加剤と焼結フラックスを添加する。
【0015】
【表3】

【0016】
実施例1の方法によりMLCCの電気性能を製造、試験し、試験結果が表4に示される。
【0017】
【表4】

【0018】
〔実施例3〕
銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料であって、純度が99.5%以上の原材料を採用し、0.95molのMg(OH)、0.95molのSiO、0.05molのBaCO及び0.05molのZrOという混合比率により、均一にボールミルし、1150℃の温度において該混合物を3時間焙焼してから、主結晶相がMg0.95Ba0.05Si0.95Zr0.05である材料を得る。その後、所定比率により表5に示す改質添加剤と焼結フラックスを添加する。
【0019】
【表5】

【0020】
実施例1の方法によりMLCCの電気性能を製造、試験し、試験結果が表6に示される。
【0021】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相と、改質添加剤と、焼結フラックスとから組成される銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料において、
主結晶相の構造式がMgBa(1−x)ZrSi(1−y)で、そのうち、0.8≦x≦0.95、0.05≦y≦0.2で、前記改質添加剤がMnO、CaO、LiO、Bi、TiOのうちの1種または複数種で、前記焼結フラックスがB、SiO、ZnO、CuO、KO、BaOのうちの1種または複数種である、ことを特徴とする銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料。
【請求項2】
モル百分率で、主結晶相が80〜95mol%で、改質添加剤が1.2〜10mol%で、焼結フラックスが2.5〜18mol%である、ことを特徴とする請求項1に記載の銅内電極と整合する耐還元性電極高周波低温焼結セラミック媒体材料。
【請求項3】
前記主結晶相がMgBa(1−x)ZrSi(1−y)で、そのうち、0.8≦x≦0.95、0.05≦y≦0.2で、比率によりMg(OH)、BaCO、ZrO、SiOで均一にボールミル混合した後、1050℃〜1170℃の温度において予備焙焼することによって作製される、ことを特徴とする請求項2に記載の銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料。
【請求項4】
モル百分率で、改質添加剤が銅内電極と整合する耐還元性高周波セラミック媒体材料全体における組成は、MnOが0.2〜0.5mol%、CaOが0〜1.0mol%、LiOが1.0〜3.0mol%、Biが0〜5.0mol%、TiOが0〜1.0mol%である、ことを特徴とする請求項2に記載の銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料。
【請求項5】
モル百分率で、前記焼結フラックスが銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料全体における組成は、Bが1.0〜3.0mol%、SiOが0〜6.0mol%、ZnOが1.5〜6.0mol%、CuOが0〜1.0mol%、KOが0〜1.0mol%、BaOが0〜1.0mol%である、ことを特徴とする請求項2に記載の銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料。
【請求項6】
該セラミック媒体材料によって作製されたセラミックコンデンサは還元雰囲気において焼結されることができ、セラミックコンデンサ内電極材料が銅を使用することができ、焼結温度が1000〜1100℃で、獲得したセラミックコンデンサの電気性能が高周波COG類セラミック材料の特性を満足することができる、ことを特徴とする請求項1〜5に記載の銅内電極と整合する耐還元性高周波低温焼結セラミック媒体材料。

【公表番号】特表2012−529412(P2012−529412A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514341(P2012−514341)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/CN2010/079974
【国際公開番号】WO2011/076090
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511300938)広東風華高新科技股▲ふん▼有限公司 (2)
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Fenghua Advanced Technology Holding Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.18 Fenghua Road,Fenghua Electronic Industrial Zone,Zhaoqing City,Guangdong Province,526020,China
【Fターム(参考)】