説明

銅及び亜鉛を含む触媒での不飽和炭化水素の水素化方法

不飽和炭化水素は、銅及び亜鉛を含み、そして有効成分が、未還元の形で、10〜95質量%の、酸化銅(II)として計算される酸化銅(CuO)と、5〜90質量%の酸化亜鉛(ZnO)と、必要により0.1〜50質量%の二酸化ジルコニウム(ZrO2)と、必要により0.1〜50質量%のAl23と、から本質的になり、且つこれらの質量換算による割合が合計して100質量%である触媒において水素化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅及び亜鉛を含む触媒を使用する不飽和炭化水素の水素化方法に関する。特に、本発明は、銅及び亜鉛を含む触媒を使用するアルキンの水素化方法及び特に、アルケンの存在下におけるアルキンの水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精製及び石油化学プラントにおいては、炭化水素流を大規模に得て、貯蔵し、そして加工処理する。かかる炭化水素流において、その存在が、特に加工処理及び/又は貯蔵において問題となるのが知られ、又は所望の価値ある生成物ではない不飽和化合物が、屡々存在するので、不飽和化合物は、対応の炭化水素流において望ましくない成分である。水蒸気分解装置でのかかる問題に対する一般的な概観及び一般的な解決法は、例えば、1993年11月11日及び12日、ドイツ国のカッセルでのDGMK会議“Selective Hydrogenation and Dehydrogenation”において、H.-M. Allmann, Ch. Herion及び P. Polanekによる発表の“Selective Hydrogenation and Purifications in the Steamcracker Downstream Treatment”に示され、その原稿は、DGMK Deutsche Wissenschaftliche Gesellshaft fuer Erdoel, Erdgas und Kohle e. V., Hamburg, 1-30頁の会議報告書9305(ISSN 0938-068X, ISBN 3-928164-61-9)において発行され、そしてM. L. Derrien in: L. Corveny (ed.), Stud. Surf. Sci. Catal., 第27巻, 613-666頁, Elsevier, Amsterdam 1986において示された。
【0003】
一般に、アセチレン副成分は、水蒸気分解装置から得られるC2流中において望ましくなく、プロピレン及びアレン副成分は、C3流中において望ましくなく、そして1−及び2−ブチン、1,2−ブタジエン及びビニルアセチレン副成分は、1,3−ブタジエンを価値ある生成物として得て、更に加工処理する場合にC4流中において望ましくなく、更には、1−ブテン、2−ブテン(cis−又はtrans−形)又はイソブテンが所望の生成物である場合、かかる副成分及び1,3−ブタジエンそれ自体が望ましくない。C5+流(“C5+”:少なくとも5個の炭素原子を有する炭化水素、“熱分解ガソリン”)の加工処理において、ジ−及びポリエン、例えばペンタジエン及びシクロペンタジエン、アルキン及び/又は不飽和置換基を有する芳香族化合物、例えばフェニルアセチレン及びスチレンは、芳香族化合物又は気化器の燃料を得て、加工処理する場合に望ましくない。
【0004】
水蒸気分解装置に代えてFCC分解装置又は改質装置から生じる炭化水素流において、同様の課題が生じる。かかる課題、特に、FCC分解装置から得られるC4−及びC5+流における一般的な概観は、例えば、1993年11月11日及び12日、ドイツ国のカッセルでのDGMK会議“Selective Hydrogenation and Dehydrogenation”において、J. P. Boitiaux, C. J. Cameron, J. Cosyns, F. Eschard及びP. Sarrazinによる発表の“Selective Hydrogenation Catalysts and Processes: Bench to Industrial Scale”に示され、その原稿は、DGMK Deutsche Wissenschaftliche Gesellshaft fuer Erdoel, Erdgas und Kohle e. V., Hamburg, 49-57頁の会議報告書9305(ISSN 0938-068X, ISBN 3-928164-61-9においても発行された。
【0005】
したがって、一般に、三重結合を有する不飽和化合物(アルキン)及び/又はジ不飽和化合物(ジエン)及び/又は他のジ−又はポリ不飽和化合物(ポリエン、アレン、アルキレン)及び/又は1個以上の不飽和置換基を有する芳香族化合物(フェニルアルキレン及びフェニルアルキン)を炭化水素流から除去して、所望の生成物、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1,3−ブタジエン、芳香族化合物又は気化器の燃料を必要な品質で得るのが一般的である。しかしながら、全ての不飽和化合物が、当該炭化水素流から除去されるべき望ましくない成分であるわけではない。例えば、上述した1,3−ブタジエンは、場合に応じて望ましくない副成分であり、又は価値ある所望の生成物である。
【0006】
望ましくない不飽和化合物を、その化合物を含む炭化水素流から除去することは、屡々、対応の炭化水素流中において望ましくなく不飽和化合物の一部又は全てを選択的に水素化し、好ましくは、破壊的ではなく、更に高度に飽和された化合物への選択水素化により、特に好ましい形態において、価値ある生成物を構成する炭化水素流の成分に選択水素化することによって行われる。例えば、アセチレンは、C2流中でエチレンに水素化され、プロピレン及びアレンは、C3流中でプロピレンに水素化され、C4流中で、ブチンはブテンに、ビニルアセチレンは、1,3−ブタジエンに、及び/又は1,3−ブタジエンはブテンに水素化され、そしてC5+流において、フェニルアセチレン及びスチレンは、エチルベンゼンに、シクロペンタジエンはシクロペンテンに、そしてペンタジエンは、ペンテンに水素化される。
【0007】
一般に、上記の化合物は、数質量ppmの残留含有量に下がるまで除去されるべきである。しかしながら、所望の価値ある生成物より更に高度に飽和される化合物への(“過−”(over-))水素化及び/又は1個以上の多重結合を含む価値ある生成物の、対応する更に高度に飽和される又は完全に飽和された化合物への平行する水素化は、これにより付随する価値の損失に起因して可能な限り回避されるべきである。従って、望ましくなく不飽和化合物の水素化における選択率は、可能な限り高くする必要がある。更に、触媒の十分に高い活性及び長い寿命が一般に望ましい。これと同時に、触媒は、望ましくない副反応を可能な限りもたらすべきではない:例えば、1−ブテンの、2−ブテンへの異性化における触媒作用は、特別な場合を除いて、可能な限り回避されるべきである。
【0008】
不飽和化合物を含む炭化水素流において不飽和化合物を選択的に水素化する方法は、細流又は液相型の液相水素化又は混合気/液相水素化の形にて、そして更には、純粋な気相水素化の形にて、両方共に知られ、且つ選択性を改良する種々の処理技術手段が公開された。
【0009】
一般に、貴金属を触媒担体に堆積させた担持貴金属触媒を使用する。屡々、パラジウムを貴金属として使用する;担体は、多孔性の無機酸化物、例えばシリカ、アルミノシリケート、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、アルミン酸亜鉛、チタン酸亜鉛及び/又はかかる担体の混合物であるものの、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素を使用するのが一般的である。更に、促進剤又は他の添加剤を存在させても良い。貴金属触媒に関する課題の1つは(触媒分野における“貴金属”は、銀、金、ロジウム、イリジウム、白金及びパラジウムを称する。)、“触媒毒”、例えば水銀、ヒ素、一酸化硫黄として知られている汚染物質に対する比較的高い汚染傾向である。他の課題は、貴金属の高いコストである。貴金属を触媒から回収可能であるのが一般的であるものの、相当な金額の資本が、その稼働中に拘束される。従って、触媒毒に対して相当に高い耐性であり、相当に安価である銅含有触媒を、屡々、水素化に使用する。
【0010】
銅含有触媒、特に更には銅−及び亜鉛−含有触媒が知られている。これらは、主に、気体流から一酸化炭素を除去するための触媒、吸収剤又は吸着剤として使用される。WO02/094435A1は、銅及び亜鉛を含む触媒において、70〜110℃の温度条件下でエチレンからCOを酸化的に除去する方法を教示している。US6238640B1は、酸化銅及び酸化アルミニウム、そして、酸化亜鉛、酸化クロム及び酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む触媒の存在下、水蒸気及び酸素を反応させて、二酸化炭素及び水素を得ることによって、水素を含む気体流から一酸化炭素を除去する方法を記載している。DE−A1929977は、100部のZnOに対して20〜60部のCuOを含む触媒及びその、50〜200℃の範囲の温度条件下でエチレン及びプロピレンの流れからCOを除去する場合の使用法を教示している。WO2004/022223A2は、銅、亜鉛、ジルコニウム及び必要によりアルミニウムを含む吸着組成物、及びその、完全還元された状態で、流れからCOを除去する場合の使用法を教示している。
【0011】
また、銅及び亜鉛を含む触媒は、流れからCOを除去する以外の使用法に関しても知られている。US4593148及びUS4871710は、Cu/Zn触媒を使用して脱硫及び脱ヒ素する方法を開示している。WO95/023644A1は、酸化炭素を、例えばメタノールに水素化するか、又は一酸化炭素を水と、いわゆるシフト反応させて、二酸化炭素及び水素を形成する場合に用いられ、分散された銅の他に、更には、安定剤、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛、そして必要により更には、担体、例えば酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び/又は二酸化ケイ素を含む銅触媒を教示している。DE19848595A1は、一般式MxAl24(但し、MがCu又はCu及びZn及び/又はMgの混合物であり、そして他のドーパント、特にZr及び/又はLaを含んでいても良い。)で表される一酸化二窒素分解用触媒を開示している。US4552861は、Cu、Zn、Al並びに希土類及びジルコニウムによって形成される群から選択される少なくとも1種の単体を含む触媒の製造方法、及びその、メタノール合成での使用法を教示している。US4780481に開示されるメタノール触媒は、Cu、Zn及び少なくと1種のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、貴金属及び/又は希土類元素を含み、且つZnをZrで部分的に置換しても良い。US4835132は、式(Cu+Zn)6Alxy(CO3(x+y)/2OH12+2(x+y)nH2O(但し、RがLa、Ce又はZrであり、xが少なくとも1で且つ4以下であり、yが少なくとも0.01で且つ1.5以下であり、そしてnが約4である。)で表され、層構造を有する前駆体からか焼によって得られるCOシフト触媒を記載している。
【0012】
US4323482は、クロム及びニッケルを含み、そして還元性金属酸化物と少なくとも1種の未還元性金属酸化物の完全な混合物からなり、550〜1000℃の温度条件下における還元によって活性化されるメタン化触媒(methanization catalyst)を開示している。かかる文献によると、このような高温により、微細な金属及び高い活性の触媒を導く。余談として、かかる触媒の製造方法を銅含有触媒に対して適用することも特記に値する場合がある。US3701739も同様に、還元性酸化物と少なくとも1種の未還元性酸化物とからなる触媒、その、水酸化物又は炭酸塩のアンモニア含有溶液からの製造方法、及びその、水素化を含む使用法を教示している。例えば、30%のCuO及び70%のZnOからなる触媒又はCuO/ZnO/Al23触媒が特記に値する。これらは、例えば、200℃の温度条件下でアセトンのイソプロパノールへの水素化に使用される。BE7487423Aは、加熱しながら担体に沈殿させることによって多孔性担体に対して一連の異なる有効成分を有する触媒の製造方法、及びかかる触媒の、少なくとも50℃におけるアミドの水素化に使用する方法を記載している。DE−A2012430は、30〜55質量%のCuO、25〜45質量%のMgO、2〜30質量%のAl23及び0〜30質量%のCr23又はZnOからなる転化触媒を開示している。US5990040は、30〜70質量%のCuO、20〜90質量%のZnO、0.1〜20質量%の、第IVB族の元素、好ましくはTi又はZrの酸化物、5〜50質量%のAl23及び50〜1000ppmの、第IA族の元素の酸化物からなるものの、メタノール合成、精製及び水素化にも使用されても良い転化触媒を記載している。US6706885B2は、銅、亜鉛又はジルコニウム触媒において、2,5−ジハロピリジンを、保護される3−アミノプロピンとソノガシラカップリング(園頭カップリング)することによる2,5−ジ(3’−アミノプロパ−1−イニル)ピリジンの製造方法を教示している。
【0013】
上述したように、水素化用の銅含有触媒の使用法についても知られている。WO96/014280A1は、Cu、Zn及び少なくと1種の、Al、Zr、Mgの化合物、希土類金属の化合物及び/又はその混合物の化合物を含む触媒、及びその、カルボン酸エステルの水素化に使用する方法を教示している。EP434062A1でも同様に、Cu、Al並びにMg、Zn、Ti、Zr、Sn、Ni、Co及びこれらの混合物から形成される群から選択される金属を含む触媒において、カルボン酸エステルを水素化する方法を教示している。EP394842A1は、20〜75質量%のNiO、10〜75質量%のZrO2及び5〜50質量%のCuOを含み、40〜200℃の範囲の温度及び30〜320バールの圧力の条件下で、脂肪族不飽和化合物、例えばブチンジオールの水素化に用いられる触媒を教示している。EP646410A1は、酸化銅及び酸化亜鉛並びに有効成分としての他の酸化物を、酸化チタンで被覆された担体に含む触媒において、水素化によりアルコールを得る方法を開示している。水素化法は、160〜350℃の温度条件下で行われる。EP1331033A1は、ポリサッカリドと少なくとも1種の金属化合物との混合物に、金属塩溶液を滴らせる(dropletizing)ことによる球形の担持金属触媒の製造方法を開示している。このようにして調製されるSiO2担体におけるCuO触媒は、80℃及び20バールの圧力の条件下でアセトフェノンの水素化に使用される。US3677970は、そこに開示される炭化水素の水素化用硫黄耐性ニッケル触媒の他に、更に、銅触媒も含む一連の他の触媒を記載している。WO02/068119A1は、銅及び他の元素類から選択される少なくとも1種の他の元素、例えば亜鉛を含む触媒を、寸法構築顆粒化(size-buildup granulation)によって製造する方法を開示している。かかる触媒は、官能性有機化合物の水素化及び脱水素化に使用される。WO2004/026800A1は、240〜280℃の温度及び20〜400バールの(高い)圧力の条件下、硫化された銅−亜鉛酸化物触媒においてアルデヒドを水素化することによるアルコールの製造方法を記載している。
【0014】
WO2004/004901A1は、20〜80℃の温度(実施例において、60℃の温度を用いた)及び15〜50バールの圧力の条件下、銅をゼオライト系担体材料に含む被覆触媒において、液体の炭化水素流中におけるC4−アセチレンの水素化方法を教示している。N. L. Carr, D. L. Stahlfeld及びH. G. Robertsonは、Hydrocarbon Processing, May 1985, 100-102頁において、オレフィン流からヒ素を除去するのに用いられる銅含有吸収組成物について報告している。この場合、オレフィンの水素化は、250°F(121℃に相当)を超える温度を回避することによって抑制され得る副反応である。J. Blancoは、Quimica e Industria 29 (1974) 604-606頁において、炭化水素が、少なくとも300℃の温度及び約300バールの圧力の条件下でのみ、銅触媒において水素化されることを報告している。
【0015】
水素化活性金属としての銅を有する一般的な水素化触媒における課題の1つは、これにより、比較的高い水素化温度を必要とすることである。しかしながら、流れの一部は、かかる温度条件下で既に分解現象を示している;例えば、微量の酸素も常に含む典型的なプロピレン流において、酸素添加は、50℃からであっても形成される。かかる酸素添加は、後続加工、例えば、メタロセン触媒でのポリプロピレンの調製において触媒毒として作用可能であるので、極端にに望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO02/094435A1
【特許文献2】US6238640B1
【特許文献3】DE−A1929977
【特許文献4】WO2004/022223A2
【特許文献5】US4593148
【特許文献6】US4871710
【特許文献7】WO95/023644A1
【特許文献8】DE19848595A1
【特許文献9】US4552861
【特許文献10】US4780481
【特許文献11】US4835132
【特許文献12】US4323482
【特許文献13】US3701739
【特許文献14】BE7487423A
【特許文献15】DE−A2012430
【特許文献16】US5990040
【特許文献17】US6706885B2
【特許文献18】WO96/014280A1
【特許文献19】EP434062A1
【特許文献20】EP394842A1
【特許文献21】EP646410A1
【特許文献22】EP1331033A1
【特許文献23】US3677970
【特許文献24】WO02/068119A1
【特許文献25】WO2004/026800A1
【特許文献26】WO2004/004901A1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】“Selective Hydrogenation and Purifications in the Steamcracker Downstream Treatment”
【非特許文献2】L. Corveny (ed.), Stud. Surf. Sci. Catal., 第27巻, 613-666頁, Elsevier, Amsterdam 1986
【非特許文献3】“Selective Hydrogenation Catalysts and Processes: Bench to Industrial Scale”
【非特許文献4】Hydrocarbon Processing, May 1985, 100-102頁
【非特許文献5】Quimica e Industria 29 (1974) 604-606頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
望ましくない不飽和化合物を選択的に水素化する方法に対する要求は、絶えず高まっている。従って、本発明の目的は、不飽和化合物を選択的に水素化する改良された方法、特に、オキシゲネート等の副生成物の形成を回避する方法を見出すことにある。これと同時に、触媒の活性及び選択性は高い必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これにより、銅及び亜鉛を含む触媒での不飽和炭化水素の水素化方法であって、有効成分(active composition)が、未還元の形で、10〜95質量%の、酸化銅(II)として計算される酸化銅(CuO)と、5〜90質量%の酸化亜鉛(ZnO)と、必要により0.1〜50質量%の二酸化ジルコニウム(ZrO2)と、必要により0.1〜50質量%のAl23と、から本質的になり、且つこれらの質量換算による割合が合計して100質量%である触媒を使用することを特徴とする水素化方法を見出した。
【0020】
本発明の方法により、穏やかな条件下で、経済的に実現性のある方法で不飽和炭化水素を水素化することが可能となる。オキシゲネートの形成は、貴金属触媒の場合に高い資本の結び付きとなるので、回避される。望ましくない過水素化(overhydrogenation)は回避される;本発明の方法は、アルケン流中におけるアルキンの選択的な水素化に好適である。触媒は、汚染に対して耐性である。
【0021】
本発明により使用される触媒の有効成分は、未還元の状態で、酸化銅及び酸化亜鉛、更には必要により酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムを含む。反応条件下、すなわち、還元性化合物、例えば水素の存在下で、銅は、少なくとも部分的ではあるものの、一般的には完全に、金属銅の形で存在する。触媒の調製において、酸化銅(I)及び酸化銅(II)の形で得るのが一般的である;これは、リスクを伴うことなく保存し、そして搬送され得る触媒の形でもある。
【0022】
純粋な形において、本発明により使用れるべき触媒における有効成分は、CuOとして計算されて、有効成分の合計量に対して、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、更に好ましくは少なくとも30質量%で且つ一般的には95質量%以下、好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下の酸化銅CuOとなるような量で銅を含むのが一般的である。純粋な形において、有効成分の合計量に対して、少なくとも5質量%、好ましくは少なくと10質量%、更に好ましくは少なくとも15質量%で且つ一般的には90質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下の量で酸化亜鉛ZnOを含むのが一般的である。純粋な形において、必要により、二酸化ジルコニウムZrO2を更に含む。二酸化ジルコニウムが存在する場合、その割合は、有効成分の合計量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくと3質量%、更に好ましくは少なくとも5質量%で且つ一般的には50質量%以下、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であるのが一般的である。必要により、酸化アルミニウムAl23を更に含む。酸化アルミニウムが存在する場合、その割合は、有効成分の合計量に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくと3質量%、更に好ましくは少なくとも50質量%で且つ一般的には50質量%以下、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。本発明の場合、“純粋な形”は、(酸化)銅、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウム分の他に、例えば、製造から引っ張られる重大ではない成分、例えば出発材料及び試薬の残留物、付形用助剤等と別に、他の成分が存在しないことを意味する。従って、“純粋な形”は、有効成分が上述の成分から本質的になることを意味する。
【0023】
有効成分における成分の割合は、常に、合計して100質量%となる。
【0024】
極めて好適な有効成分は、純粋な形において、例えば、約40質量%のCuO、約40質量%のZnO及び約20質量%のAl23かなり;約70質量%のCuO、約20質量%のZnO及び約10質量%のZrO2からなり、又は約70質量%のCuO、約25質量%のZnO及び約5質量%のAl23からなり、且つこれらの割合は、合計して100質量%となる。
【0025】
有効成分は、必ずしも必要ないものの、不活性担体に施され得る。好適な不活性担体は、公知の触媒担体、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、アルミノシリケート、クレー、ゼオライト、珪藻土等である。同様に、固体の加工処理に用いられる他の公知の助剤、例えば触媒を使用することも可能である。担体無しの有効成分を使用するのが好ましく、すなわち、有効成分及び触媒は同一であるのが好ましい。
【0026】
かかる触媒は、一般的な市販の材料である。かかる触媒の製造方法は、公知である。適切で且つ好ましい方法は、以下の処理工程を記載された順番で含む:
a)触媒の成分及び/又はその出発化合物の溶液又は懸濁液を調製する工程と、
b)塩基を添加することにより上記の溶液から固体を沈殿させ、必要により、沈殿生成物を触媒の他の成分及び/又はその出発化合物と混合する工程と、
c)固体を除去し、そして乾燥する工程と、
d)必要により、固体をか焼する工程と、
e)固体をタブレットに付形する工程と、
f)必要により、タブレットをか焼する工程と、
を含み、且つ2つのか焼工程d)又はf)の少なくとも一方が行われる。
【0027】
第1の処理工程、すなわち工程a)において、触媒の成分の溶液を、一般的な方法で、例えば、硝酸等の酸に溶解させることによって調製する。必要により、触媒の成分の代わりに、その出発化合物を使用し、例えば、金属の硝酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩を、酸性であっても良い水溶液、例えば硝酸溶液に溶解させる。溶液中における塩の割合は、化学量論的に計算され、そして触媒における所望の最終組成に従って調節される。同様に、不溶性の形の成分、例えば酸化アルミニウムを微細な粒子として添加することが可能であるので、幾つかの成分が溶解され、そして他の成分が懸濁された懸濁液を得て、これを使用することが可能である。
【0028】
かかる溶液から、工程b)において、固体を触媒の前駆体として沈殿させる。これは、一般的な方法で行われ、好ましくは、塩基を添加して溶液のpHを増大させることによって行われ、例えば、水酸化ナトリウム溶液又は炭酸ナトリウム溶液を添加することによって行われる。
【0029】
これにより形成される固体の沈殿生成物は、工程c)での乾燥の前に、上澄み液から除去されるのが一般的であり、例えば、ろ過又はデカントによって除去され、そして水で洗浄されて、溶解性成分、例えば硝酸ナトリウムを除去する。同様に、触媒の成分又はその前駆体の一部のみをこのようにして沈殿させ、そして固体の沈殿生成物を、他の、例えば不溶性の成分、例えば酸化アルミニウムと混合することも可能である。原則として、乾燥された粉末を混合することにより、それを行うことが可能であるものの、混合は、沈殿生成物の除去及び乾燥の前に、懸濁として行われるのが好ましい。
【0030】
沈殿生成物(適宜、他の不溶性成分と混合されている)を、その後、一般的な乾燥法で乾燥した後に、更に加工処理するのが一般的である。一般に、この場合、僅かに高温、例えば約80度、好ましくは少なくとも100℃、更に好ましくは少なくとも120℃の条件下、10分〜12時間、好ましくは20分〜6時間、更に好ましくは30分〜2時間に亘っての処理が十分である。また、沈殿の生成物を直接的に(すなわち、触媒における所定のアルカリ金属含有量、例えばナトリウム含有量は破壊的ではないのが一般的である)又は噴霧乾燥によって洗浄した後に、更なる加工処理に好適な乾燥粉末に転化することも可能であり且つ特に適切である。
【0031】
乾燥後、触媒の、沈殿され且つ乾燥された前駆体を、必要により、か焼工程d)に付する。これにより用いられるか焼温度は、一般に少なくとも250℃であり、少なくとも300℃であるのが好ましく、更に好ましくは少なくとも350℃であり、且つ一般に500℃以下であり、450℃以下であるのが好ましく、更に好ましくは410℃以下である。か焼時間は、一般に少なくとも10分であり、少なくとも20分であるのが好ましく、更に好ましくは少なくとも30分であり、且つ一般に12時間以下であり、好ましくは6時間以下であり、更に好ましくは4時間以下である。乾燥工程c)及びか焼工程d)は、相互に直接合併しても良い。
【0032】
乾燥工程c)又はか焼工程d)の後、触媒又はその前駆体は、一般的な付形処理、例えば押出、タブレット化又はペレット化によって付形工程e)において、成形体、例えばストランド又は押出物、タブレット若しくはペレット(球形のペレットを含む)に加工される。
【0033】
付形工程の後、触媒(すなわち、より正確にはその前駆体)を、必要により、か焼工程f)に付す。この場合に用いられるか焼温度は、一般に少なくとも300℃であり、少なくとも350℃であるのが好ましく、更に好ましくは少なくとも400℃であり、特に少なくとも450℃であり、且つ一般に700℃以下であり、650℃以下であるのが好ましく、更に好ましくは600℃以下であり、特に580℃以下である。か焼時間は、一般に少なくとも30分であり、少なくとも60分であるのが好ましく、且つ一般に10時間以下であり、好ましくは3時間以下であり、更に好ましくは2時間以下であり、特に90分以下である。特に好ましい実施形態において、温度を、か焼時間に亘って上述の範囲内にてゆっくりと上昇させる。
【0034】
か焼工程中、触媒前駆体を実際の触媒に転換し、他のパラメータの中で、触媒のBET表面積及び細孔容積を従来通りに調節し、且つBET表面積及び細孔容積は、か焼時間及びか焼温度を上昇させると低下することが知られている。
【0035】
2つのか焼工程の少なくとも一方を行う。
【0036】
炭酸塩の触媒(O32-として計算される)における含有量が、か焼生成物の合計質量に対して10質量%以下となり、そのBET表面積が、少なくとも10m2/g、好ましくは30m2/g、そして特に好ましい形態において、少なくとも40m2/g、特に少なくとも50m2/gで且つ一般的には100m2/g以下、好ましくは90m2/g以下、そして特に好ましい形態において、80m2/g以下、特に75m2/g以下の範囲の値を有するのに少なくとも十分に長い時間に亘ってか焼するのが好ましい。水の摂取量として計算される触媒の細孔容積は、か焼において、少なくとも0.05ml/gの値に調節される。かかる値は、本発明の方法で使用される触媒の場合に望ましい。
【0037】
触媒の調製において、公知の助剤、例えば細孔形成剤又はか焼中に分解するタブレット化助剤を使用可能であることは認識されるであろう。
【0038】
また、触媒は、上述したように、担体に堆積されても良い。これは、一般的な含浸処理法又は沈殿処理法によって行われる。沈殿処理法は、担体又は担体前駆体の存在下における沈殿法であると知られている。沈殿法を行うために、詳述した工程a)で調製される溶液の沈殿法において担体又は担体前駆体を添加するのが好ましい。担体が、予め最終の成形体の形で既に存在する、すなわち、単なる含浸処理を行う場合、付形工程e)は、省略され、そうでなければ、担体を、沈殿、乾燥、か焼及び付形による触媒の前駆体の加工処理の過程で更に形成する。
【0039】
触媒を調製する好ましい沈殿法は、予め付形された担体を用いて行われ、そして以下の処理工程を、記載された順番で含む:すなわち、
a)触媒の成分及び/又はその可溶性出発化合物の溶液を調製する工程と、
b)予め付形された担体に上記の溶液を含浸させる工程と、
c)含浸された担体を乾燥する工程と、
d)含浸され且つ乾燥された担体をか焼する工程と、
を含む。
【0040】
かかる含浸法における処理工程a)は、沈殿法における上述の工程a)と同様に行われる。工程b)において、予め付形された担体に、かかる溶液を含浸させる。予め付形された担体は、使用目的に対応するように選択された形状、例えばストランド又は押出物、タブレット若しくはペレット(球形のペレットを含む)を有する。含浸は、上澄み液を用いるか、或いは担体の細孔容積に相当する量の溶液を用いる含浸(“incipient wetness”法)として行われる。含浸後、含浸された担体を、沈殿法における沈殿生成物と同様に工程c)及びd)で乾燥し、そしてか焼する。予め付形された担体を使用することから、付形工程は省略される。
【0041】
か焼後、触媒は、酸化物の形で存在する、すなわち、触媒に含まれる銅は、主に又はもっぱら酸化銅の形である。水素化の場合、触媒は、還元される必要がある、すなわち、銅は、金属の状態で主に又はもっぱら存在する必要がある。還元は、か焼後に存在する酸化物触媒を還元剤で処理することよって行われる。これは、原則として、銅を、I又はIIの酸化状態から0の酸化状態に還元可能な任意の還元剤によって行われ得る。用いられるべき正確な反応条件は、触媒、その、還元前の正確な状態及び使用される還元剤に応じて異なり、数種類の決まり切った実験で容易に決定され得る。銅触媒の還元法は、公知である。
【0042】
還元は、液体の還元剤又は溶解された還元剤を用いて行われ得る;この場合、還元の後に、乾燥する必要がある。従って、気体の還元剤を用いて還元する、特に、水素含有ガスに通過させることにより水素を用いて還元するのが極めて適切である。この場合に用いられる温度は、一般に少なくとも80℃であり、少なくとも100℃であるのが好ましく、更に好ましくは少なくとも120℃であり、且つ一般に180℃以下であり、160℃以下であるのが好ましく、更に好ましくは140℃以下である。好適な温度は、例えば約130℃である。還元は、発熱を伴う。添加される還元剤の量は、選択された温度領域になるように調節される必要がある。活性化の度合い(profile)は、吸着剤の吸収床で測定される温度を基準としてモニターされ得る(“昇温還元法(temperature-programmed reduction)”、TPR)。
【0043】
還元の好ましい方法は、窒素流下で行われる乾燥の後、所望の還元温度に調節し、そして少量の水素を窒素流に添加することである。開始時に、好適な気体混合物は、例えば、窒素に対して少なくとも0.1体積%の水素を含み、好ましくは少なくとも0.5体積%、更に好ましくは少なくとも1体積%であり、且つ10体積%以下、好ましくは8体積%以下、更に好ましくは5体積%以下である。好適な値は、例えば、2体積%である。かかる開始濃度は、所望の温度領域を得て、これを維持するために保持又は増大される。一定水準の還元剤又は還元剤の水準を増大させるにも拘わらず、組成物の吸収床における温度が降下する場合に、還元は完了する。典型的な還元時間は、一般に少なくとも1時間であり、少なくとも10時間であるのが好ましく、更に好ましくは少なくとも15時間であり、且つ一般に100時間以下であり、50時間以下であるのが好ましく、更に好ましくは30時間以下である。
【0044】
乾燥は、必要により、触媒を、一般には少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、更に好ましくは少なくとも180℃で、且つ一般には300℃以下、好ましくは250℃以下、更に好ましくは220℃以下の温度に加熱することによって達成される。好適な乾燥温度は、例えば、約200℃である。前駆体は、もはや問題を引き起こさない付着水分(adhering mositure)の残留物のみが存在するまでの乾燥温度で維持され;これは、一般に、少なくとも10分、好ましくは少なくとも30分、更に好ましくは少なくとも1時間で、且つ一般に100時間以下、好ましくは10時間以下、更に好ましくは4時間以下の乾燥時間の場合である。乾燥は、水分を吸収床から移動させるために、気体流中で行われるのが好ましい。このために、例えば、乾燥空気を使用可能であるが、不活性ガスを吸収床に流すのが特に好ましく;この場合に好適な気体は、特に窒素又はアルゴンである。
【0045】
従来より、乾燥及び還元は、触媒を水素化反応器での水素化に使用する前に行われる。なぜなら、還元された状態の触媒を搬送及び貯蔵するのは、特に安全な手段を必要とし、そして困難だからである。しかしながら、触媒を、例えば、触媒の製造業者によって水素化反応器の外側で還元し、そして一般的な処理方法による部分的な再酸化によって再び不動態化して、簡単に搬送及び貯蔵することも可能である。水素化に使用する前に、再び完全に還元する必要がある。かかる手段は一般的であり、そして銅触媒の場合に一般的に知られている。
【0046】
本発明の水素化法は、上述した触媒を使用する点において注目に値する。上述の触媒を使用する本発明の水素化法は、同一の目的の役割を果たす公知の不均一系接触水素化法と同様に行われるのが一般的である。かかる方法は、炭化水素流と水素化水素の両方が気相に存在する不均一系接触気相法としてか、或いは炭化水素流が液相中に少なくとも部分的に存在し、そして水素が気相中に、及び/又は液相に溶解された形で存在する不均一系接触気/液相法として行われても良い。調節されるべきパラメータ、例えば、触媒の体積に対して、見かけ上の速度として[m3/m3・h-1]単位で表される炭化水素流の処理量、温度及び圧力は、公知の方法のパラメータと同様に選択される。本発明の方法における温度は、一般に少なくとも−50℃、好ましくは少なくとも−10℃、特に好ましい形態において、少なくとも0℃で、且つ一般に250℃以下、好ましくは100℃以下、特に好ましい形態において、50℃以下である。圧力は、一般に少なくとも0.01バール(絶対圧)、好ましくは少なくとも0.8バール、特に好ましい形態において少なくとも1バールで、且つ一般に750バール以下、好ましくは325バール以下、特に好ましい形態において40バール以下である。
【0047】
給送される炭化水素流の量に対する、使用される水素の量は、望ましくない不飽和化合物の炭化水素流における含有量及び不飽和化合物の種類に応じて異なる。一般に、水素は、反応器の通過において完全な水素の転化に化学量論的に必要とされる量の0.8〜5倍までの量、好ましくはかかる量の0.95〜2倍までの範囲で添加される。三重結合の水素化は、通常、共役二重結合より更に迅速に進行し、そしてこれは、非共役二重結合より更に迅速である。これにより、添加される水素の量に関して、処理を適切に制御することが可能となる。特定の場合、例えば、1−ブテンのcis−又はtrans−2−ブテンへの高い異性化が望ましい場合、比較的高い水素過剰、例えば、10倍の水素過剰を用いることが可能であることも知られている。水素は、不活性気体、例えば希ガス、例えばヘリウム、ネオン又はアルゴン、他の不活性気体、例えば窒素、二酸化炭素及び/又は低級アルカン、例えばメタン、エタン、プロパン及び/又はブタンを含んでいても良い。水素におけるかかる不活性気体は、30体積%未満の濃度で存在するのが好ましい。意図的な一酸化炭素の添加による触媒の調整を必要としないのが一般的である。
【0048】
方法は、1基の反応器或いは複数の平行又は直列接続した反応器中で行うことが可能であり、その場合、単一の通過か、又は循環型で行われる。方法が気/液相で行われる場合、いずれかの反応器を通過させた後の炭化水素流は、分離器において気体を除去されるのが一般的であり、そしてこれにより得られた液体の一部を反応器に再循環させる。再循環される炭化水素流と第1の時間に亘って反応器に給送される炭化水素流との間の、還流比として知られている割合は、圧力、温度、処理量及び水素の量等の他の反応条件下で、所望の転化率を達成するように調節される。
【0049】
本発明の方法を使用する目的は、例えば、アルキンのアルカジエンへの水素化、アルキン、アルキネン及びアルカジエンのアルケンへの水素化、フェニルアルキンのフェニルアルケネンへの水素化及び/又はフェニルアルケネンのフェニルアルカンへの水素化である。
【0050】
本発明の方法の適用例は、以下の通りである:
C2流中におけるアセチレンのエチレンへの選択的な水素化を、エタンの形成を最小限にして行う場合(方法におけるこの実施形態は、以後に簡単に“方法A”と称する)、
C3流中におけるプロピン及び/又はプロパジエンを選択的に水素化して、プロパンの形成を最小限にしてプロピレンを得る場合(“方法B”)、
C4流中における1−ブチン、2−ブチン、1,2−ブタジエン及び/又はビニルアセチレンを選択的に水素化して、1,3−ブタジエン、1−ブテン、cis−及び/又はtrans−2−ブテンを得る場合(“方法C”)、
C4流中における1−ブチン、2−ブチン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン及び/又はビニルアセチレンを選択的に水素化して、ブタジエンリッチなC4流中(“粗C4留分”)又は低ブタジエンC4流中(“ラフィネートI”)において、1−ブテン、cis−及び/又はtrans−2−ブテンを得る場合(“方法D”)、及び
C5+流中における不飽和化合物及び/又は芳香族化合物の不飽和置換基を選択的に水素化して、より高度に飽和された化合物及び/又は芳香族環の水素化を最小限にして、より高度に飽和された置換基を有する芳香族化合物を得る場合(“方法E”)、
であり、各々の場合で、上述の触媒を使用する。
【0051】
方法Aは、0〜100℃の温度及び0.01〜50バールの圧力の条件下、触媒の体積に対して、500〜10000m3/m3・hの範囲の見かけ上の速度の気相C2流を用い、且つC2流中における1モルのアセチレン当たり1モルの水素が添加される気相法として行われるのが一般的である。
【0052】
方法Bは、0〜50℃の温度及び0.01〜50バールの圧力の条件下、触媒の体積に対して、1〜50m3/m3・hの範囲の見かけ上の速度の液体C3流を用い、且つC3流中における1モルのプロピン及びプロパジエン当たり1〜2モルの水素が添加される気相法又は気/液相法として行われるのが一般的である。
【0053】
方法Cは、0〜180℃の温度及び2〜50バールの圧力の条件下、触媒の体積に対して、1〜50m3/m3・hの範囲の見かけ上の速度の液体C4流を用い、且つC4流中における1モルのブチン、1,2−ブタジエン及びビニルアセチレン当たり1〜2モルの水素が添加される気/液相法として行われるのが一般的である。方法Cは、例えば、ブタジエンの抽出前に、選択的な“フロントエンドなビニルアセチレン水素化”として使用され得る。
【0054】
方法Dは、20〜90℃の範囲、好ましくは20〜70℃の範囲の反応器入口温度及び5〜50バールの範囲、好ましくは10〜30バールの範囲の圧力の条件下、触媒の体積に対して、0.1〜60m3/m3・hの範囲、好ましくは1〜50m3/m3・hの範囲の見かけ上の速度の液体C4流を用い、且つC4流中における1モルのブチン、ブタジエン及びビニルアセチレン当たり1モルの水素が添加される1段階又は2段階の気/液相法として行われるのが一般的である。例えば、方法は、2段階で行われ、その場合、水蒸気分解装置から得られる典型的なC4流において、全体の流れに対して、20〜80質量%の範囲であるブタジエン含有量を、第1の段階において、0.1〜20質量%の範囲の含有量に至るまで低下させ、そして第2段階において、数質量ppm〜約1質量%の範囲の所望の残留含有量に至るまで低下させる。同様に、全体の反応を、2基を超える反応器、例えば3又は4基の反応器の間で分割することも可能である。個々の反応段階は、炭化水素流の部分的な再循環にて稼働されても良い:還流比は、0〜30の範囲であるのが一般的である。方法Dを行う場合、イソブテンは、本質的に未変化のままであり、そして方法Dを行う前又は方法Dを行った後、公知の方法によってC4流から除去され得る。方法Dは、例えば、C4流中におけるブタジエンの水素化として(ブタジエンを、価値ある生成物として得ない場合)、或いはC4流からのブタジエンの抽出後、選択的な“後処理ビニルアセチレン水素化”として用いることが可能である。
【0055】
方法Eは、0〜180℃の範囲の温度及び2〜50バールの範囲の圧力の条件下、触媒の体積に対して、0.5〜30m3/m3・hの範囲の見かけ上の速度の液体C5+流を用い、且つC5+流中における1モルの水素化されるべき化合物当たり1〜2モルの水素が添加される気/液相法として行われるのが好ましい。方法Eは、例えば、フェニルアセチレンのスチレンへの水素化又はスチレンのエチルベンゼンへの水素化の場合に、改質油流でのオレフィンの選択的な水素化又は縮合物でのコークス化のように、選択的な分解ガソリン水素化として使用され得る。
【実施例】
【0056】
実施例1〜4:触媒A〜Dの調製
撹拌器が具備された加熱可能な10L(リットル)の沈殿容器に、最初に、1.2Lの水を充填し、そして70℃に加熱した。次に、硝酸における金属ニトレート溶液が、これにより調製される触媒A〜Dの、以下の表1に規定される組成を達成するのに必要とされる量で、撹拌しながら計量導入された。これと同時に、20質量%の炭酸ナトリウム溶液が、6.5のpHを沈殿容器中で維持するように計量導入された。これにより形成された懸濁液を、70℃及びpH6.5の条件下で、120分間に亘って撹拌し、その後、ろ過し、そして低温の水で洗浄して、ニトレートを除去した(溶出液に対して、<25ppmのニトレート)。フィルターケークを乾燥し、その後、300℃の条件下で4時間に亘ってか焼し、その後、タブレット化した。
【0057】
触媒A及びBの場合、タブレット化の後に、別のか焼工程が行われた。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例5〜8:C2流中におけるアセチレンの水素化
実施例1で得られたタブレットのサンプルを、水素で還元し、その後、管型反応器中において、2300h-1の見かけ上の速度(GHSV)及び表に規定される温度の条件下で、C2流(エチレン、以下の表2に規定される水素及びアセチレンの割合で混合される)と接触させた。設定された圧力は、周囲圧力であり、すなわち、反応器の上流側では、装置の圧力降下を克服するために必要とされる圧力を単に設定した。反応器の下流側で測定される水素及びアセチレンの割合は、以下の表2に規定されている。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例5〜8では、C2流中におけるアセチレンを、本発明の方法によって、極めて低温の条件下で実質的に完全に除去可能であったことを示している。
【0062】
実施例9〜11:プロピンの水素化
実施例1で得られたタブレットのサンプルを、水素で還元し、その後、20バール及び25℃のオートクレーブ中において、120質量ppmのプロピン(C34)及び450質量ppmの水素と混合された液体のプロペン(C36)と2時間に亘って接触させた。プロペンは、300ppmのプロパン(C38)を更に含んでいた。
【0063】
その後に計測された水素、プロパン及びプロピンの割合を、以下の表3に報告する。
【0064】
【表3】

【0065】
実施例9〜11では、C3流中におけるプロピンの実質的に完全な除去が、本発明の方法によって、比較的低い温度条件下で高い選択的な形態にて可能であったことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅及び亜鉛を含む触媒での不飽和炭化水素の水素化方法であって、
有効成分が、未還元の形で、10〜95質量%の、酸化銅(II)として計算される酸化銅(CuO)と、5〜90質量%の酸化亜鉛(ZnO)と、必要により0.1〜50質量%の二酸化ジルコニウム(ZrO2)と、必要により0.1〜50質量%のAl23と、から本質的になり、且つこれらの質量換算による割合が合計して100質量%である触媒を使用することを特徴とする水素化方法。
【請求項2】
未還元の形で、10〜95質量%の、酸化銅(II)として計算される酸化銅(CuO)と、5〜90質量%の酸化亜鉛(ZnO)と、必要により0.1〜50質量%の二酸化ジルコニウム(ZrO2)と、必要により0.1〜50質量%のAl23と、から本質的になり、且つこれらの質量換算による割合が合計して100質量%である触媒を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オレフィン流中のアルキンを水素化する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エチレン流中のアセチレンを水素化する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プロピレン流中のプロピン及びアレンを水素化する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
C4流中のブタ−3−エン−1−インを水素化する請求項3に記載の方法。
【請求項7】
水素化を、50℃以下の温度条件下で行う請求項4に記載の方法。

【公表番号】特表2009−543834(P2009−543834A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519914(P2009−519914)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056858
【国際公開番号】WO2008/009568
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】