説明

銅回収装置

【課題】特別な反応操作が必要でなく、水中で析出される細かい銅粒子を直接的に固液分離し、銅の回収効率を高めることができる銅回収装置を提供する。
【解決手段】銅イオンを含む被処理水にアルカリを添加して銅化合物を析出させる析出槽2と、析出槽内の銅化合物を加熱し酸化銅にする加熱機構22と、磁性体を含むろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置5と、ろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を作製する混合槽6と、ろ過助剤からなるプレコート層を形成し、被処理水から酸化銅を含む銅化合物をろ過し、銅化合物をプレコート層に捕捉させるフィルタ33を有する固液分離装置3と、洗浄水をフィルタ上に供給する洗浄ラインL11と、固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽4と、分離槽で分離されたろ過助剤をろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインL5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水中に存在する銅を回収する銅回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められている。そのためには、工業排水などの排水の再利用が重要である。排水を再利用するには、水の浄化、すなわち水中から他の物質を分離することが必要である。水中から他の物質を分離する方法として、膜分離法、遠心分離法、活性炭吸着法、オゾン処理法、凝集による浮遊物質の除去法など種々の方法がある。これらの方法を用いて水中に含まれるリンや窒素などの環境に影響の大きい物質を除去することや、水中に分散した油類やクレイなどを除去することなどができる。
【0003】
これら各種の水処理方法のうち、膜分離法は水中の不溶物質を除去するのに最も一般的に使用されている方法のひとつであるが、膜の保護の観点や、難脱水性の物質を含む水の通水速度を上げる観点から、ろ過助剤が膜分離法に利用されている。
【0004】
一方、水中から有害物や有価物を除去する方法として、水中に溶解する物質に所定の反応を起こさせて析出物として析出させ、析出物を水中から分離する方法が知られている。例えば特許文献1には、水中の銅イオンを析出させ、析出した微細な銅粒子の系外への流出を防止するために、凝集機能をもつポリマーを添加して析出銅粒子を凝集させ、凝集体として銅を分離回収する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−122817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法においては、凝集体そのものが多量のポリマーを含むために、凝集体の単位体積当たりの銅純度が低く、銅の回収効率が低いという問題点がある。また、凝集体から銅を分離した後に残る汚泥の量が多く、汚泥は最終的には廃棄されるものであるため、廃棄物量が多くなるという問題点がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、廃棄物量を低減でき、水中で析出される細かい銅粒子を直接的に固液分離し、銅の回収効率を高めることができる銅回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の銅回収装置は、銅イオンを含む被処理水にアルカリを添加して銅化合物を析出させる析出槽と、前記析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構と、磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置と、前記ろ過助剤供給装置から供給されるろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を作製する混合槽と、前記混合槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記ろ過助剤をろ過し、前記ろ過助剤からなるプレコート層を形成し、さらに前記析出槽から被処理水が供給され、前記被処理水から前記酸化銅を含む銅化合物をろ過し、前記銅化合物を前記プレコート層に捕捉させるフィルタを有する固液分離装置と、前記析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインと、前記被処理水供給ラインに接続され、前記混合槽からの懸濁液を前記被処理水供給ラインの被処理水と混合する混合ラインと、前記フィルタ上から前記プレコート層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインと、前記固液分離装置から前記洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記銅化合物と前記ろ過助剤とを分離する分離槽と、前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインと、前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る銅回収装置を示す構成ブロック図。
【図2】図1の装置を用いるプレコート法による銅の回収方法を示す工程図。
【図3】(a)はポリマーで被覆された磁性体粒子を示す断面模式図、(b)は磁性体粒子が凝集した凝集体を示す断面模式図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る銅回収装置を示す構成ブロック図。
【図5】図2の装置を用いるボディーフィード法による銅の回収方法を示す工程図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る銅回収装置を示す構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、ろ過膜を用いて排水中の銅析出物を直接固液分離することについて多くの実験を行い種々の検討を重ねた結果、排水から析出される銅析出物の粒子径(初期直径)が細かすぎるため、これを直接ろ過することが困難であるという知見を得た。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、以下に述べる種々の形態で実施される。
【0011】
以下に本発明を実施するための種々の形態をそれぞれ説明する。
【0012】
(1)本実施形態の銅回収装置は、銅イオンを含む被処理水にアルカリを添加して銅化合物を析出させる析出槽2と、前記析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構22と、磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置5と、前記ろ過助剤供給装置から供給されるろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を作製する混合槽6と、前記混合槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記ろ過助剤をろ過し、前記ろ過助剤からなるプレコート層を形成し、さらに前記析出槽から被処理水が供給され、前記被処理水から前記酸化銅を含む銅化合物をろ過し、前記銅化合物を前記プレコート層に捕捉させるフィルタ33を有する固液分離装置3と、前記析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインL2と、前記被処理水供給ラインに接続され、前記混合槽からの懸濁液を前記被処理水供給ラインの被処理水と混合する混合ラインL7と、前記フィルタ上から前記プレコート層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインL11と、前記固液分離装置から前記洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記銅化合物と前記ろ過助剤とを分離する分離槽4と、前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインL32と、前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインL5とを有する(図1)。
【0013】
本実施形態では、析出槽において被処理水をアルカリ性にして銅化合物として酸化銅を析出させ、混合槽において磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤と分散媒とを混合し、この混合物を被処理水供給ラインを介して混合槽から固液分離装置に供給し、ろ過助剤の堆積層をフィルタ上に形成し、次いで被処理水供給ラインを介して析出槽から固液分離装置に被処理水を供給し、ろ過助剤層に被処理水を透過させて酸化銅をろ過助剤に捕捉させ、さらに洗浄ラインを介して洗浄水を固液分離装置に供給し、フィルタ上からろ過助剤とともに酸化銅を洗浄除去し、洗浄排出水ラインを介して固液分離装置から分離槽に洗浄排出水を供給し、分離槽において洗浄除去したろ過助剤から酸化銅を分離回収し、分離回収した酸化銅を回収する一方で、ろ過助剤返送ラインを介して分離槽からろ過助剤供給装置に分離回収したろ過助剤を戻し、ろ過助剤供給装置において分離回収したろ過助剤を再使用することができ、析出される細かい粒径の析出銅粒子を被処理水中から直接的に分離し、高い回収効率を達成することができる(図1)。なお、本発明において酸化銅とは、酸化銅を含有する複塩や混合塩も含まれる。例えば、炭酸銅と酸化銅の組合わせや、硫酸銅と酸化銅等の組み合わせが挙げられる。
【0014】
(2)本実施形態の銅回収装置は、磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤と銅イオンを含む被処理水とを混合して懸濁液を作製するとともに、前記被処理水をアルカリ性にして銅化合物を析出させる混合析出槽2Aと、前記混合析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構22と、前記混合析出槽に前記ろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置5と、前記混合析出槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記析出銅化合物および前記ろ過助剤を共にろ過し、前記酸化銅を含む前記析出銅化合物および前記ろ過助剤からなる堆積層を形成するフィルタ33を有する固液分離装置3と、前記混合析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインL2と、前記フィルタ上から前記堆積層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインL11と、前記固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記析出銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽4と、前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインL32と、前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインL5と、を有することを特徴とする(図4)。
【0015】
本実施形態の装置は、所謂ボディーフィード法(図5)に用いられる装置であり、混合析出槽が析出機能と混合機能の2つの機能を兼ね備えている。
【0016】
本実施形態によれば、混合析出槽内において銅化合物を析出させ、析出させた銅化合物をろ過助剤と混合して懸濁液を作製し、懸濁液を固液分離装置に送り、フィルタ上にろ過助剤の膜を形成しながら銅化合物を固液分離することができる。
【0017】
(3)上記(1)または(2)の装置において、ろ過助剤が、表面をポリマーで被覆された磁性体粒子が凝集してなる凝集体からなり、磁性体粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、ポリマーの平均被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmを満たすことが好ましい(図3)。
【0018】
本実施形態では、磁性体粒子の平均粒子径D1は0.5〜20μmの範囲とすることが好ましいが、より好ましくは径D1を0.5〜15μmの範囲とする。磁性体粒子の平均粒子径D1が0.5μm未満になると、粒子が緻密に凝集しすぎて粒子間の距離が小さくなりすぎ、実効的な通水量が得られにくくなる。一方、平均粒子径D1が20μmを超えると、粒子が粗く凝集して粒子間の距離が大きくなりすぎ、水中の微細な析出物を通過させやすくなり、析出した銅化合物の回収効率が大幅に低下してしまう。さらに平均粒子径D1を15μm以下にすると、銅化合物粒子の回収効率がさらに向上する。ところで、本発明者らは実証試験を行うことにより、磁性体粒子の平均粒子径D1が例えば26μmの場合は実効的な銅の回収効率を達成できないという知見を得ている。このことからも磁性体粒子の平均粒子径D1が過大になると、銅の回収効率が低下することが分かる。
【0019】
本実施形態では、磁性体粒子の凝集体の平均凝集径D2はD1<D2≦20μmを満たすようにすることが好ましいが、より好ましくはD1<D2≦15μmを満たすようにする。凝集体の平均凝集径D2が20μmを超えると、上記と同様に水中の微細な析出物を通過させやすくなり、銅の回収効率が低下する。さらに平均凝集径D2を15μmにすると、上記と同様に銅の回収効率がさらに向上する。
【0020】
本実施形態では、ポリマーの平均被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmを満たすことが好ましいが、より好ましくは厚さtが0.01≦t≦0.15μmを満たすようにする。ポリマーの平均被覆厚さtが0.01μm未満であると、所望の被覆効果が得られないだけでなく、凝集体の強度が低下して使用することができない。一方、被覆厚さtが0.25μmを超えると、凝集体中の磁性体粒子間の隙間が樹脂で埋まってしまい、被処理水の通水速度が低下するだけでなく、凹凸が小さくなるため、銅化合物粒子の捕捉率が低下しやすい。さらに被覆厚さtを0.15μm以下にすると、適度な凹凸を有するため銅化合物粒子を捕捉する捕捉性能が高くなり、被処理水の通水速度が大きくなるため、銅の回収効率がさらに向上する。
【0021】
(4)本実施形態の銅回収装置は、銅イオンを含む被処理水が収容される析出槽2Bと、前記析出槽内の被処理水にアルカリを添加して銅化合物を析出させるアルカリ供給装置と、磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置5と、前記ろ過助剤供給装置から供給されるろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を作製する混合槽6と、前記混合槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記ろ過助剤をろ過し、前記ろ過助剤からなるプレコート層を形成し、さらに前記析出槽から被処理水が供給され、前記被処理水から前記酸化銅を含む銅化合物をろ過し、前記銅化合物を前記プレコート層に捕捉させるフィルタ33を有する固液分離装置3と、前記析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインL2と、前記被処理水供給ラインに接続され、前記混合槽からの懸濁液を前記被処理水供給ラインの被処理水と混合する混合ラインL7と、前記フィルタ上から前記プレコート層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインL11と、前記固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽4と、前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインL32と、前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインL5と、前記析出槽内の被処理水のpHを測定する手段23と、前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を停止させ、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域となるところで反応を止めるか、または、前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を調整し、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域を保つ状態で連続的に反応を行わせるpH制御機構24とを有することを特徴とする(図6)。
【0022】
酸化銅生成反応および水酸化銅生成反応のいずれにおいても、酸性時には反応で得られた析出物が酸と反応して溶解してしまうため、結果として銅の析出物は得られない。水溶液中において銅化合物が析出物として現れるのは、pHが中性に近づいてからである。このとき、水酸化銅生成反応よりも酸化銅生成反応のほうを優先的に行おうとすると、pHを中性に近い状態に保つのが良い。すなわち、中性領域では水酸基が少ないため水酸化銅生成反応が進行せず、過酸化水素が存在する酸化銅生成反応のほうが優先的に進行するからである。
【0023】
本実施形態では、pH制御機構24が、測定pHに基づいて被処理水に対するアルカリの添加を停止させ、析出槽内の被処理水のpHが中性領域となるところで反応を止めるか、または、測定pHに基づいて被処理水に対するアルカリの添加を調整し、析出槽内の被処理水のpHが中性領域を保つ状態で連続的に反応を行わせているので、被処理水のpHが中性領域に保たれ、水酸化銅生成反応よりも酸化銅生成反応のほうが優先的に進行して、多数の酸化銅粒子が析出する。ここで、中性領域とは概ねpH5〜9の範囲をいう。
【0024】
なお、反応終了時の最終的なpHを中性領域に保てるのであれば、上述した被処理水にアルカリを添加する方法ではなく、あらかじめ中性領域に調整した液中に、酸性の被処理液とアルカリ液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を別々に添加し、連続的に反応させてもよい。
【0025】
(5)磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤と銅イオンを含む被処理水とを混合して懸濁液を作製するとともに、前記被処理水をアルカリ性にして銅化合物を析出させる混合析出槽2Aと、前記混合析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構22と、前記混合析出槽に前記ろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置5と、前記混合析出槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記析出銅化合物および前記ろ過助剤を共にろ過し、前記酸化銅を含む前記析出銅化合物および前記ろ過助剤からなる堆積層を形成するフィルタ33を有する固液分離装置3と、前記混合析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインL2と、前記フィルタ上から前記堆積層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインL11と、前記固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記析出銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽4と、前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインL32と、前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインL5と、前記析出槽内の被処理水のpHを測定する手段23と、前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を停止させ、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域となるところで反応を止めるか、または、前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を調整し、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域を保つ状態で連続的に反応を行わせるpH制御機構24とを有することを特徴とする。
【0026】
本実施形態の装置は、所謂ボディーフィード法(図5)に用いられる装置であり、混合析出槽が析出機能と混合機能の2つの機能を兼ね備えている。本実施形態では、上記(2)と同様の作用効果が得られる。
【0027】
(6)上記(4)または(5)の装置において、ろ過助剤が、表面をポリマーで被覆された磁性体粒子が凝集してなる凝集体からなり、磁性体粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、ポリマーの平均被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmを満たすことが好ましい(図3)。本実施形態では、上記(3)と同様の作用効果が得られる。
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の好ましい形態と具体例とを説明する。
【0029】
以下に述べる実施の形態または実施例では、硫酸銅水溶液などの銅イオンを含有する被処理水に直接アルカリ水溶液を投入して、水酸化銅を析出させる。アルカリの種類は特に問わないが、水酸化ナトリウムが最も適している。このようなアルカリ溶液の直接投入は、析出する銅粒子の粒子径を細かくしてしまい、水中からの銅粒子の分離が非常に難しくなる。しかし、本発明の方法を用いると、これらの微細な銅化合物粒子(平均粒子径0.01〜10μm)を効率よく分離することができるので、工程が減り、装置も簡略化しやすい。
【0030】
銅の回収にはプレコート法とボディーフィード法の2種類のろ過助剤使用方法を利用することができる。各方法に用いられる装置は構成が異なるところがあるので、以下それぞれについて述べる。
【0031】
(第1の実施形態)
先ず図1を参照して第1の実施形態の銅回収装置を説明する。
【0032】
(第1の銅回収装置)
本実施形態の銅回収装置1は、プレコート法に用いられる装置であり、特に被処理水中に析出させた銅化合物の濃度が低い場合に有効に用いられる。銅回収装置1は、析出槽2、固液分離装置3、分離槽4、ろ過助剤タンク5、混合槽6、図示しない原水供給源、アルカリ添加装置および銅濃縮水貯留槽を有しており、これらの機器及び装置が複数の配管ラインL1〜L8により互いに接続されている。配管ラインL1〜L8には各種のポンプP1〜P9、バルブV1〜V3、図示しない計測器およびセンサが取り付けられている。これらの計測器およびセンサから図示しない制御器の入力部に検出信号が入り、当該制御器の出力部からポンプP1〜P9およびバルブV1〜V3にそれぞれ制御信号が出され、それらの動作が制御されるようになっている。このように銅回収装置1の全体は図示しない制御器によって統括的にコントロールされるようになっている。
【0033】
析出槽2は、被処理水を撹拌する撹拌スクリュウを有し、図示しない原水供給源からラインL1を介して被処理水となる銅イオンを含む工場排水が導入され、被処理水を一時的に貯留しておく間に図示しないアルカリ添加装置から適量の水酸化ナトリウム(NaOH)が投入され、被処理水中に含まれる銅イオンを銅化合物として析出させるものである。
【0034】
さらに、析出槽2は、ドラムヒータ22を有している。ドラムヒータ22は、図示しないコントローラにより給電制御され、析出槽2の温度を60℃にコントロールできるようになっている。ドラムヒータ22は、被処理水を加熱し、被処理水中に含まれる銅化合物のうち水酸化銅を酸化させて酸化銅に変えるものである。
【0035】
固液分離装置3は、内部を上方の導入スペース31と下方の排出スペース32とに仕切るフィルタ33を内蔵している。フィルタ33は、例えばポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、フッ素繊維、セルロースアセテートなどのポリマー繊維を平織り、綾織り、二重織り、などで編んだものなどを用いることができる。フィルタ厚さは概ね1mm以下であり、フィルタ目開きは概ね1〜20μm程度である。
【0036】
固液分離装置の導入スペース31は、加圧ポンプP1を有する被処理水供給ラインL2を介して析出槽2に接続されている。また、導入スペース31に水道水を供給するための2つのラインである脱塩ラインL10および洗浄ラインL11がそれぞれ接続されている。脱塩ラインL10は、固液分離装置3の導入スペース31の上部に接続され、導入スペース31に水道水を供給してフィルタ33上の堆積層に含まれる銅化合物中のイオン分を除去するものである。脱塩ラインL10を介して固液分離装置の導入スペースに豊富な水量の水道水を導入し、堆積層に含まれるイオン分(Naイオン、Caイオン、Mgイオンなど)を効果的に除去することができる。また、導入スペース31の側部には市水道管から水道水を供給するための洗浄ラインL11および洗浄排出水ラインL4がそれぞれ接続されている。
【0037】
洗浄ラインL11は、導入スペース31に水道水を側方から供給してフィルタ33上から堆積層を剥離させて除去するものである。洗浄ラインL11を介して固液分離装置3の導入スペース31に側方から水量および圧力ともに十分な水道水を導入し、水の圧力でフィルタ33上から堆積層を剥離させ、除去することができる。この場合に、洗浄ラインL11と固液分離装置3との接続部分に噴射ノズルを取り付け、ノズルから水を勢いよく噴射させるようにすると、堆積層の剥離効果が高まり、除去効率がさらに向上する。
【0038】
一方、固液分離装置の排出スペース32は、2つの三方弁V1,V2を有する処理水配水ラインL3に接続されている。第1の三方弁V1のところで被処理水配水ラインL3からポンプP2を有する処理水ラインL31が分岐している。第2の三方弁V2のところで被処理水配水ラインL3から2つのラインL32とL33がそれぞれ分岐している。一方の分岐ラインL32は、ポンプP3を有し、後述する分離槽4に接続されている。他方の分岐ラインL33は、ポンプP4を有し、後述する混合槽6に接続されている。
【0039】
分離槽4は、洗浄排出水ラインL4を通って固液分離装置の導入スペース31から受け入れた洗浄排出水を撹拌するための撹拌スクリュウ41を有し、かつ析出銅化合物とろ過助剤とに分離するための電磁石42を内蔵している。電磁石42は、図示しない制御器によりオンオフ制御される電源(図示せず)に接続されている。
【0040】
分離槽4の上部には、洗浄排出水ラインL4の他に、処理水配水ラインL3から分岐する分岐ラインL32が接続されており、固液分離装置のフィルタ33を透過した処理水の一部が分離槽4に供給され、分離槽4において処理水の一部が再利用されるようになっている。一方、分離槽4の下部には銅濃縮水排出ラインL8およびろ過助剤返送ラインL5がそれぞれ接続されている。銅濃縮水排出ラインL8は、ポンプP8を有し、分離槽4から図示しない貯留槽に銅濃縮水を排出するための配管である。ろ過助剤返送ラインL5は、ポンプP5を有し、分離槽4から分離されたろ過助剤をろ過助剤タンク5に戻すための配管である。
【0041】
ろ過助剤タンク5は、図示しないろ過助剤供給源から新たにろ過助剤が補給されるとともに、分離槽4で分離されたろ過助剤が上述のろ過助剤返送ラインL5を通って返送されるようになっている。また、ろ過助剤タンク5は、ポンプP6を有するろ過助剤供給ラインL6を介して混合槽6に適量のろ過助剤を供給するようになっている。
【0042】
混合槽6は、水を撹拌するための撹拌スクリュウ61を有し、ろ過助剤タンク5から供給されたろ過助剤に分散媒を添加して撹拌混合し、ろ過助剤を含む混合物(懸濁液)を作製するようになっている。分散媒として水を使用するのが好ましい。混合槽6の上部には、処理水配水ラインL3から分岐する分岐ラインL33が接続され、固液分離装置のフィルタ33を透過した処理水の一部が混合槽6に供給され、混合槽6において処理水の一部が分散媒として再利用されるようになっている。
【0043】
また、混合槽6の適所にはポンプP7を有する混合ラインL7が連通している。混合ラインL7は、被処理水供給ラインL2の適所にて接続・合流している。混合ラインL7からのろ過助剤を含む混合物(懸濁液)が被処理水供給ラインL2を流れる被処理水に添加されるようになっている。なお、混合ラインL7には図示しない流量制御弁が取り付けられ、ろ過助剤を含む混合物(懸濁液)の流量が制御器により調整されるようになっている。
【0044】
(プレコート法)
次に、図2と図1を参照して上記の装置1を用いるプレコート法を説明する。
【0045】
最初に、混合槽6内で磁性体含有ろ過助剤と分散媒とを混合し、ろ過助剤を含む懸濁液を調整する(工程S1)。ろ過助剤は磁性体粒子を含み、さらに磁性体粒子を被覆するポリマーを含むものであってもよい。分散媒は主に水を用いるが、適宜その他の分散媒を用いることができる。懸濁液中のろ過助剤濃度は以下の操作によってプレコート層、すなわち粒子堆積層が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0046】
次いで、懸濁液を固液分離装置3のフィルタ33に通水し、懸濁液中のろ過助剤をろ別して、フィルタ上に残留させ、ろ過助剤が凝集してなる粒子堆積層(プレコート層)を形成する(工程S2)。なお、加圧ポンプP1によるフィルタ33への通水は、所定の圧力で行われる。また、プレコート層は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記フィルタを所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したフィルタ33上にろ過助剤が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置するろ過助剤の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、プレコート層は形成及び保持されることになる。なお、プレコート層の厚さは、処理する液の濃度で変わってくるが、概ね0.5〜10mm程度である。
【0047】
析出槽2において、銅含有排水にアルカリとして水酸化ナトリウムを添加し、水酸化銅を主成分とする銅化合物を析出させる。この析出させた銅化合物を加温することにより、水酸化銅の一部を酸化させて酸化銅を生成する。この反応温度および反応時間は、水酸化銅の少なくとも一部が酸化銅に変わる程度であればよく、好ましくは60〜80℃の範囲、好ましくは1〜30分間の範囲とする。加熱手段は、析出槽2の外周に取り付けたドラムヒータ22などの抵抗発熱ヒータを用いることができる。被処理水の加温は、アルカリ剤を添加しながらおこなってもよいし、また、熱交換器などの温度調整された配管のなかを通しておこなってもよい。
【0048】
次いで、銅を析出させた被処理液を圧力下で固液分離装置3に供給し、あらかじめ形成しておいたろ過助剤の膜で固液分離(ろ過)を行う(工程S3)。通水は主に加圧下で行われる。このとき、銅化合物(主に酸化銅)は、プレコート層、具体的にはプレコート層を構成するろ過助剤の表面に吸着することによって除去される。このとき、ろ過助剤を後述するように特殊な構成とすることにより、この不溶物をトラップし、十分な通水速度を得ることができる。ろ過液は銅の除去された弱アルカリ性の処理液であり中和槽を通して排水してもよいが、固液分離装置3の分離層の磁石の洗浄水、混合槽6のろ過助剤スラリー作製時の液体としても使用可能である。
【0049】
水中の銅化合物を除去した後は、プレコート層を分散媒中に分散させ、プレコート層をろ過助剤に分解するとともに、ろ過助剤を洗浄する(工程S4)。この洗浄はフィルタの設置されている容器内で行ってもよいし、他の容器でおこなってもよい。他の容器で行う場合は、洗浄などの手段を用いてプレコート層をろ過助剤に分解した後、輸送する。洗浄には水を使用するが、界面活性剤や有機溶媒を用いて洗浄することも可能である。
【0050】
次いで、洗浄後のろ過助剤を磁気分離を用いて回収する(工程S5)。磁気分離の方法は特に問わないが、容器中に永久磁石又は電磁石を投入して回収する方法や、磁石で磁化した金網などで回収して、磁場を開放することにより粒子を回収する方法などが挙げられる。具体的には、ろ過助剤を電磁石で固定したあと、洗浄容器の排水口から洗浄液を排出するか、または電磁石でろ過助剤を固定したあとに他の容器に移動させて回収する。
【0051】
なお、被処理水のろ過が終了すると、固液分離装置3のフィルタ33に、ろ過助剤と析出した銅化合物のケーキが存在する。このケーキ中に存在するイオン成分を除去するため、固液分離装置3の上部ラインL10から水道水を注水し、ケーキ中に存在する銅化合物に付着するイオンを除去する。イオンを除去したあと、固液分離装置のフィルタ33上にあるケーキを回収するため、側方ラインL11から水道水を供給してケーキを崩し、フィルタ33からケーキを剥ぎ取り、ろ過助剤および銅化合物を含む洗浄排出水として分離槽4へ供給する。分離槽4は撹拌スクリュウ41と電磁石42(磁気分離機構)を備えている。分離槽4では撹拌スクリュウ41により洗浄排出水を撹拌し、ろ過助剤と銅化合物とを水中に十分に分散させ、電磁石42をONにして、電磁石42にろ過助剤を吸着させる。これにより、水中からろ過助剤が分離回収される。ろ過助剤を回収した後の水は、高濃度の銅化合物を含有する銅濃縮水となり、ポンプP8の駆動により回収ラインL8を通って図示しない後工程の装置に送られる。そして、後工程の装置により銅濃縮水から銅が回収される。本実施形態では、銅濃縮水中にろ過助剤やポリマー凝集剤などの余分な付加物が含まれていないので、銅の回収プロセスで発生する廃棄物のトータル量が少ない。
【0052】
一方、分離槽4から銅濃縮水を排水した後に、電磁石42をOFFにしてろ過助剤を電磁石42から離脱させ、分離槽4内に洗浄水を導入してろ過助剤を洗浄する。そして、洗浄水で洗われたろ過助剤をポンプP5の駆動により返送ラインL5を通ってろ過助剤タンク5へ返送する。このようにして返送されたろ過助剤は、混合槽6に再び供給され、再利用される。
【0053】
なお、本実施形態では、フィルタ上に予めプレコート層を形成しておき、その後、排水を通水するので、処理時間とともに、ろ過助剤の表面に吸着する銅化合物の量が増大する。その結果、特に過剰に吸着した銅化合物が、ろ過助剤の空隙を埋設してしまうようになるので、通水速度が低下してしまうようになる。したがって、上述したように、第1の方法は、水中の銅化合物の濃度が低い場合に有効である。
【0054】
(ろ過助剤)
次に、ろ過助剤を詳しく説明する。
【0055】
ろ過助剤は、磁性体粒子を含み、その平均粒子径が0.5〜20μmの範囲にあるものを用いる。ろ過助剤は、磁性体の単体粒子であってもよく、また、図3の(a)に示すように磁性体粒子11の表面をポリマーのような被覆剤12で被覆されていてもよい。また、ろ過助剤は、ポリマー被覆された磁性体粒子11が図3の(b)に示すように凝集した凝集体13であってもよい。
【0056】
ろ過助剤は、より好ましくは、磁性体の平均粒径D1が0.5〜20μmであり、この磁性体がポリマーまたはトリアルコキシシランによって一部が凝集され、その平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつポリマーの表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあることが望ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。一次粒子としての磁性体の平均粒子径が20μmを超えると、粒子間の距離が大きくなりすぎて後述する水中の微細な析出物を通過させてしまう場合がある。一方、一次粒子径が0.5μmより小さくなると、粒子が緻密に凝集し、水中の微細な析出物を除去できるものの、実効的な通水量を得ることができなくなる場合もある。
【0057】
例えば磁性体としては強磁性物質を全般的に用いることができ、例えば鉄、および鉄を含む合金、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト、などが挙げられる。これらのうち水中での安定性に優れたフェライト系化合物であればより効果的に本発明を達成することができる。例えば磁鉄鉱であるマグネタイト(Fe)は安価であるだけでなく、水中でも磁性体として安定し、元素としても安全であるため、水処理に使用しやすいので好ましい。また、磁性体は、球状、多面体、不定形など種々の形状を取り得るが特に限定されない。用いるに当って望ましい磁性体の粒径や形状は、製造コストなどを鑑みて適宜選択すれば良く、特に球状または角が面取りされた多面体構造が好ましい。これらの磁性体は、必要であればCuメッキ、Niメッキなど、通常のメッキ処理が施されていてもよい。
【0058】
また、ポリマーにより表面が被覆された磁性体粒子が凝集した凝集体では、磁性体をコア、その表面を被覆するポリマーの層がシェルを構成するコア/シェル構造の1次粒子が凝集して凝集体を構成している。
【0059】
本発明において、磁性体粒子の表面を被覆するとともに粒子を凝集させるポリマーは、目的に応じて適した材料を選択することができる。好ましくは、磁性体に被覆しやすく、耐酸・アルカリ性を有するポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンやこれらの共重合体、水中での分散に優れるフェノール樹脂、磁性体と強固に接着して水中での安定性の高いトリアルコキシシラン縮合物が好適に用いられる。このポリマーの平均表面被覆厚さtは0.01≦t≦0.25μmになるように被覆するのが好ましい。0.01μmより薄い場合は二次凝集体の強度が弱くなり水中で使用することが困難な場合があり、0.25μmより厚い場合は粒子間の空隙が狭くなり、ろ過助剤として用いたときに実効的な通水量を確保することができない場合がある。ポリマーの被覆量の計算は光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などによる観察で測定しても良いが、好ましくは無酸素状態で高温に上げ、ろ過助剤を熱分解させて重量減少量、すなわちポリマー被覆量を求め、粒子の比表面積からポリマー層の平均厚さを計算すると正確に求めることができる。
【0060】
また、上述の磁性体がポリマーで被覆された粒子が凝集した凝集体を含んでなる場合、この凝集体は特徴的な形状を有することが好ましい。すなわち、本実施形態によるろ過助剤において、磁性体の平均粒子径をD1としたときの前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たす。この大きさで凝集させると、粒子径がきれいに球状に凝集して凝集体になることはなく、いびつな形として形成される。このいびつな形を有することにより、ろ過助剤またはプレコート材として用いた時に、ろ過堆積中に適度な空隙を有するようになり、被処理水中の銅化合物をトラップしつつ、ろ過流量を得ることができる。凝集体13の平均凝集径D2が20μmを超えて大きくなりすぎると、凝集体間の空隙が大きくなり、水中の銅析出物をトラップすることができない場合がある。さらにD1<D2≦15μmとすることがより好ましい。凝集体の平均凝集径D2を15μm以下とすることにより水中の銅析出物をさらにトラップしやすくなるからである。
【0061】
本発明に用いるろ過助剤は、上述したような本発明によるろ過助剤の構造を実現できるものであれば任意の方法により製造することができる。このような方法の一例として、ポリマーを溶解し得る有機溶媒にポリマーを溶解させ、その溶液中に磁性体を分散させた組成物を調整し、その組成物を噴霧することにより有機溶媒を除去するスプレードライ法が挙げられる。この方法によれば、スプレードライの環境温度や噴出速度などを調整することにより1次粒子が凝集した2次凝集体の平均粒子径が調整できる上、凝集した1次粒子の間から有機溶媒が除去される際に孔が形成され、好適な多孔質構造を容易に形成させることもできる。
【0062】
一方、工業的には、ポリマーを溶解し得る溶媒にポリマーを溶解させたポリマー溶液を調製し、型などに入れられた磁性体の表面にポリマー溶液を流し込み、さらに溶媒を除去して固化させたものを破砕したり、あるいはポリマー溶液に磁性体を分散させた組成物から有機溶媒を除去して固化させたもの破砕したりすることによっても、本発明によるろ過助剤を形成させることができる。また、ヘンシェルミキサー、ボールミル、または造粒機などに、ポリマーを溶媒に溶解した組成物を滴下し、乾燥させることでろ過助剤を製造することができる。この時、磁性体の表面を覆うような製造条件と、その磁性体を凝集させるような条件の2工程を経ると、好ましいろ過助剤を製造することができる。
【0063】
次に、製造時におけるポリマー被覆厚さの調整方法およびポリマー被覆磁性体粒子が凝集した凝集体の凝集径の調整方法について説明する。
【0064】
磁性体表面の表面被覆厚さを製造時に決定するには、ポリマーと磁性体の混合割合と、樹脂の密度、磁性体の比表面積から計算する。すなわち、添加する樹脂の重量と密度から添加する樹脂の体積を求め、磁性体の重量と比表面積から求めた磁性体の表面積で除してやると、ポリマーの平均被覆厚さtとなる。また、粒子径の制御は噴霧液の種類や噴霧方法によって異なるが、凝集体を小さくするには噴霧乾燥する液滴の液滴径を小さくすればよく、例えば噴霧ノズルの噴霧圧力を高くしたり、噴霧速度を遅くしたり、噴霧ディスクの回転を早くすると、製造される凝集体の粒子径は小さくなる。
【0065】
次に、既にできている凝集体中のポリマー被覆厚さの測定方法について説明する。
【0066】
ポリマーの被覆厚さの計算は光学顕微鏡やSEMなどによる観察で測定しても良いが、好ましくは無酸素状態で高温に上げ、樹脂複合体を熱分解させて重量減少量、すなわちポリマー被覆重量を求め、粒子の比表面積からポリマー層の平均厚さを計算すると正確に求めることができる。
【0067】
(第2の実施形態)
次に図4を参照して第2の実施形態の銅回収装置1Aを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0068】
(第2の銅回収装置)
本実施形態の銅回収装置1Aは、ボディーフィード法に用いられ、とくに水中の銅化合物濃度が高い場合に有効に利用されるものである。本実施形態の銅回収装置1Aが上記第1の実施形態の装置1と異なる点は、装置1Aでは、混合槽6が無く、第1の実施形態の析出槽2の代わりに混合析出槽2Aを設けている。この混合析出槽2Aは、アルカリを被処理水に添加して銅化合物を析出させる析出機能と、ろ過助剤を被処理水に添加して両者を混合させる混合機能とを兼ね備えたものである。すなわち、本実施形態の銅回収装置1Aでは、ろ過助剤は、上述した混合槽を経由することなく、ろ過助剤タンク5から直送ラインL6を介して混合析出槽2A内に直接供給されるようになっている。
【0069】
(ボディーフィード法)
次に、図5と図4を参照して上記の装置1Aを用いるボディーフィード法を説明する。
【0070】
本実施形態においても、最初にろ過助剤と分散媒とを混合し懸濁液を調整するが、この場合に使用する分散媒は、混合析出槽2A内に存在する被処理水とする。すなわち、本方法では被処理水である原水中にろ過助剤を直接投入して原水から懸濁液を調整する(工程K1)。懸濁液中のろ過助剤濃度は以下の操作によってろ過層が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0071】
この懸濁液とアルカリを反応させるpHを調整することで、酸化銅を含有する銅化合物を析出させる。この方法は、銅を含有する被処理水に予め過酸化水素などの酸化剤が含まれている場合に有効である。
【0072】
次いで、懸濁液(被処理水)をフィルタに通水し、懸濁液中のろ過助剤をろ別して、フィルタ上に残留させ、ろ過助剤が凝集してなるろ過層を形成する(工程K2)。なお、通水は加圧下で行われる。
【0073】
また、ろ過層は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記フィルタを所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したフィルタ上にろ過助剤が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置するろ過助剤の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、上記ろ過層は形成及び保持されることになる。
【0074】
上述のようにして排水中の銅化合物を除去した後は、ろ過層を分散媒中に分散させ、ろ過層をろ過助剤に分解するとともに、ろ過助剤を洗浄する(工程K3)。この洗浄はフィルタの設置されている容器内で行っても、他の容器で行っても構わない。他の容器で行う場合は、洗浄などの手段を用いてろ過層をろ過助剤に分解した後、輸送する。洗浄には水を使用するが、界面活性剤や有機溶媒を用いて洗浄することも可能である。
【0075】
次いで、洗浄後のろ過助剤を磁気分離を用いて回収する(工程K4)。磁気分離の方法は特に問わないが、容器中に永久磁石又は電磁石を投入して回収する方法や、磁石で磁化した金網などで回収して、磁場を開放することにより粒子を回収する方法などが挙げられる。
【0076】
なお、第2の銅回収方法では、ろ過層を構成するろ過助剤は上記被処理水、すなわちこの水を利用して調整した懸濁液中に含まれているので、除去すべき銅化合物を含む被処理水水(懸濁液)とともに、常に凝集体が供給されることになる。
【0077】
したがって、特に被処理水(懸濁液)中の銅化合物物の量が多い場合においても、銅化合物の供給とろ過助剤の供給とは同時に行われることになるので、上述の第1の実施形態のように、過剰に吸着した銅化合物が、ろ過助剤の空隙を埋設してしまうことがない。このため、長時間ろ過速度を維持することができる。結果として、上述したように、第2の実施形態の銅回収方法は、排水中の銅化合物濃度が高い場合に有効である。
【0078】
また、第1,2のいずれの回収方法においても、回収する銅化合物の洗浄(脱塩処理)が容易におこなうことができる。すなわち、フィルタ上に堆積したろ過助剤と銅化合物に水を一定時間通水することで、銅化合物中に付着するイオン成分を除去することが可能になる。
【0079】
この第2の銅回収方法では、析出槽に銅を含む被処理水を予め入れ、アルカリを添加して反応を進めていく。このとき、槽内のpHをモニタリングし、中性領域でアルカリの添加を止めることにより酸化銅の生成を行う。このときに起こる酸化銅の生成反応は下式(1)と(2)で与えられ、水酸化銅の生成反応は下式(3)と(4)で与えられるものと推測されている。なお、下式は酸化剤として過酸化水素を用いて酸化銅を析出させ、銅成分として硫酸銅を析出させ、酸成分として硫酸を用いたときの例示である。反応式(1)と(2)は酸化銅の生成反応(以下、反応1という)を示し、反応式(3)と(4)は水酸化銅の生成反応(以下、反応2という)を示す。
【化1】

【0080】
【化2】

【0081】
反応1及び反応2のいずれにおいても、酸性時には反応で得られた析出物が酸と反応して溶解してしまうため、析出物は得られない。析出物として現れるのは、pHが中性に近づいてからである。このとき、反応2よりも反応1のほうを優先的に行おうとすると、pHを中性に近い状態に保つのが良いことがわかる。すなわち、中性領域では水酸基が少ないため反応2が進行せず、過酸化水素が存在する反応1のみが進行するからである。なお、中性領域とは概ねpH5〜9の範囲をいう。
【0082】
反応終了時の最終的なpHを中性領域に保てるのであれば、上述した被処理水にアルカリを添加する方法ではなく、あらかじめ中性領域に調整した液中に、酸性の被処理液とアルカリ液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を別々に添加し、連続的に反応させてもよい。
【0083】
このように析出させた酸化銅を主に含む銅化合物を、第1の銅回収装置と同様にろ過助剤を用いて回収する。プレコート法とボディーフィード法の両方を用いることができる。
【0084】
また、酸化銅生成手段として、加温手段およびpH調整機構の両方を備えることができる。すなわち、pH調整機構を備えた析出槽に加温手段(ドラムヒータ)を取り付けるようにしてもよい。この場合、単独の特徴を有する場合よりも酸化銅の含有率を増やすことができる。
【0085】
さらに、第1及び第2の回収装置のいずれにおいても、回収する銅化合物の洗浄(脱塩処理)が容易におこなうことができる。すなわち、フィルタ上に堆積したろ過助剤と銅化合物に水を一定時間通水することで、銅化合物中に付着するイオン成分を除去することが可能になる。
【0086】
(第3の実施形態)
図6を参照してプレコート法に利用される第3の銅回収装置1Bを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0087】
(第3の銅回収装置)
本実施形態の銅回収装置1Bでは、析出槽2Bが、第1実施形態のドラムヒータ22の代わりにpH調整機構23,24,25を備えている。このpH調整機構23,24,25は、被処理水の流量と水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)の注入量をそれぞれコントロールして、析出槽2Bから固液分離槽3に送られる被処理水のpHを所望範囲に調整するものである。具体的には、pH調整機構は、pHメータ23、制御器24およびNaOH注入装置25を備えている。
【0088】
pHメータ23は、析出槽2B内の被処理水のpHを測定し、pH測定信号を制御器24に送るモニタリングセンサである。
【0089】
NaOH注入装置25は、制御器24からの制御信号を受けて、アルカリ剤であるNaOH液を析出槽内に注入するものである。
【0090】
制御器24は、pHメータ23から入力されるpH測定信号と図示しない流量センサから入力される被処理水流量測定信号と所定の算式とに基づいて、析出槽内の被処理水のpHが中性領域(pH5〜9)から外れないようなアルカリ剤注入量および被処理水導入量をそれぞれ求め、NaOH注入装置25およびラインL1に設けられた図示しない送水ポンプ(及び/又は流量調整弁)にそれぞれ制御信号を送るコントローラである。なお、所定の算式は、上記の反応式(1)〜(4)と他のパラメータ(析出槽内の被処理水の貯水量、被処理水の流入量、被処理水の初期pH値、被処理水の温度など)から導き出されるものである。
【実施例】
【0091】
以下に種々の実施例を用いてより詳細に説明する。
【0092】
[ろ過助剤の準備]
上述の水処理方法に用いるろ過助剤として次の6種類のろ過助剤A〜Fを準備した。
【0093】
(ろ過助剤A)
マグネタイト粒子(平均粒子径2μm)を準備した。
【0094】
(ろ過助剤B)
マグネタイト粒子(平均粒子径0.5μm)を準備した。
【0095】
(ろ過助剤C)
マグネタイト粒子(平均粒子径5μm)を準備した。
【0096】
(ろ過助剤D)
ポリメチルメタクリレート30重量部を、3Lのテトラヒドロフラン中に溶解させて溶液とし、その溶液中に平均粒子径2μm(A)のマグネタイト粒子300重量部を分散させて組成物を得た。この組成物を、ミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いてゆっくり噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が約11μm(B)のろ過助剤を作製した。平均被覆厚さは0.038μm(C)であった。
【0097】
(ろ過助剤E)
ポリメチルメタクリレート30重量部を、3Lのテトラヒドロフラン中に溶解させて溶液とし、その溶液中に平均粒子径2μm(A)のマグネタイト粒子300重量部を分散させて組成物を得た。この組成物を、ミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いてゆっくり噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が約18μm(B)のろ過助剤を作製した。平均被覆厚さは0.038μm(C)であった。
【0098】
(ろ過助剤F)
レゾール型フェノール樹脂40重量部を、3Lの水中に溶解して溶液とし、その溶液中に平均粒子径2μm(A)のマグネタイト粒子300重量部(比表面積2.5m/g)を分散させて組成物を得た。この組成物を、ミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いてゆっくり噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が約11μm(B)のろ過助剤を作製した。ポリフェノール樹脂の密度、マグネタイトの比表面積から計算した平均被覆厚さは0.044μm(C)であった。
【0099】
(実施例1)
実施例1では図1に示す第1の実施形態の装置1を用いた。被処理水として、銅換算で50mg/L含有する硫酸銅水溶液を準備した。これを析出槽2に供給して、さらに48%水酸化ナトリウムを滴下し、被処理水をpH10に調整した。しばらく混合していると、水色の水酸化銅の析出が確認された。さらにドラムヒータ22に給電し、水温を60℃まで上昇させて混合したところ、一部が黒っぽくなり、酸化銅が生成していることを確認できた。また、ろ過助剤Aが充填されたろ過助剤タンク5から混合槽6にろ過助剤を供給して水を混合し、ろ過助剤スラリーを作製した。これを固液分離装置3に供給し、フィルタ33上に平均1mmの厚さのろ過助剤の層を作製した。この後、析出槽2から固液分離装置3に被処理水を供給し、ろ過を行ったところ、ろ過水(処理水)中の銅の99%以上が回収されていることが確認できた。ろ過処理後、固液分離装置3の上部ラインL10より水道水を1分間通水し、ケーキに含まれるイオン分を除去した。その後、固液分離装置3のフィルタ33の側方から洗浄水を供給し、フィルタ33上に形成されている層を壊して分離槽4に供給した。分離槽内の撹拌機41を動作させてろ過助剤と銅化合物を分離したあと、電磁石42を動作させてろ過助剤のみを分離し、液体を排出して銅濃縮液を得た。銅濃縮液を分析したところ、そのスラリーの主成分は水酸化銅と酸化銅であることが確認できた。その後、磁石の磁場を解除し、洗浄水を供給してろ過助剤スラリーにしたあと、ろ過助剤タンク5に返送した。この後、ろ過助剤スラリーを混合槽6に供給し、同様の操作を行ったが、問題なく再利用できた。
【0100】
(実施例2)
実施例2では実施例1と同じ装置を用い、ろ過助剤Aの代わりにろ過助剤Bを用いたこと以外は同様に試験をおこなった。銅の回収率は99%以上であった。実施例1と比較して固液分離装置の通水速度が半分となったが、問題なく運転できた。
【0101】
(実施例3)
実施例3では実施例1と同じ装置を用い、ろ過助剤Aの代わりにろ過助剤Cを用いたこと以外は同様に試験をおこなった。銅の回収率は99%以上であった。実施例1と比較して固液分離装置の通水速度がほぼ倍となったが、問題なく運転できた。
【0102】
(比較例1)
比較例1では実施例1と同じ装置を用い、ろ過助剤Aの代わりに平均粒子径0.3μmのマグネタイト粒子を用いたこと以外は同様に試験をおこなった。ろ過をおこなったところ、フィルタが目詰まりして、十分なろ過流速を得ることができなかった。
【0103】
(実施例4)
実施例4では図4に概略を示す装置1Aを用いた。銅を含有する被処理水を析出混合槽2Aに供給し、この析出混合槽2Aに水酸化ナトリウム水溶液を添加してアルカリ性にし、水酸化銅を析出させる。この析出混合槽2Aには、ドラムヒータ22が具備してあり、析出槽の温度を60℃にコントロールできるようになっている。また、ろ過助剤タンク5から、ろ過助剤が析出混合槽2Aに直接供給され、銅析出物とろ過助剤の混合スラリーが作られる。このろ過助剤スラリーを先に固液分離装置3に送り、フィルタ33上にろ過助剤の膜を形成すると共に銅化合物を除去する。ろ過液は銅の除去された弱アルカリ性の処理液であり、中和槽を通して排水してもよいが、固液分離装置3から分離槽4の磁石の洗浄水、ろ過助剤タンク5のろ過助剤スラリー作製時の液体としても使用可能である。被処理水のろ過が終了すると、固液分離装置3内のフィルタ33に、ろ過助剤と析出した銅化合物のケーキが存在する。このケーキ中に存在するイオン成分を除去するため、固液分離装置3の上部ラインL10から水道水を注水し、ケーキ中に存在する銅化合物に付着するイオンを除去する。イオンを除去したあと、フィルタ33の横から洗浄水を供給してケーキを崩し、分離槽4へ供給する。分離槽4は撹拌スクリュウ41と電磁石42(磁気分離機構)を備えており、混合しながらろ過助剤と銅化合物を分離し、ろ過助剤のみを磁石で回収して分離する。ろ過助剤を回収した液は、高濃度の銅化合物を含有する銅濃縮水として回収され、供給された洗浄水で洗われろ過助剤タンク5へ返送される。このようにして返送されたろ過助剤は、析出混合槽2Aに再度供給され、再利用される。
【0104】
被処理水として、銅換算で1000mg/L含有する硫酸銅水溶液を準備した。これを析出混合槽2Aに供給して、さらに48%水酸化ナトリウムを滴下し、pHを10に調整した。しばらく混合していると、水色の水酸化銅の析出が確認された。さらにドラムヒータ17を動作させ、水温を60℃まで上昇させて混合したところ、一部が黒っぽくなり、酸化銅が生成していることを確認できた。
【0105】
また、ろ過助剤Aが充填されたろ過助剤タンク5から析出混合槽2Aにろ過助剤を10000mg/Lとなるよう供給し、ろ過助剤と銅析出物のスラリーを作製した。これを固液分離装置3に供給し、フィルタ33上でろ過を行ったところ、ろ過水(処理水)中の銅の99%以上が回収されていることが確認できた。ろ過処理後、固液分離装置3の上部ラインL10より水道水を1分間通水し、ケーキに含まれるイオン分を除去した。その後、固液分離装置3のフィルタ33の側方から洗浄水を供給し、フィルタ33上に形成されている層を壊して分離槽4に供給した。分離槽4内の撹拌機を動作させてろ過助剤と銅化合物を分離したあと、電磁石42を動作させてろ過助剤のみを分離し、液体を排出して銅濃縮液を得た。銅濃縮液を分析したところ、そのスラリーの主成分は水酸化銅と酸化銅であることを確認できた。その後、電磁石42の磁場を解除し、洗浄水を供給してろ過助剤スラリーにしたあと、ろ過助剤タンク5に返送した。この後、析出混合槽2Aに供給し、同様の操作を行ったが、問題なく再利用できた。
【0106】
(実施例5)
実施例5では実施例4と同じ装置を用い、ろ過助剤Aの代わりにろ過助剤Dを用いたこと以外は同様に試験をおこなった。銅の回収率は99%以上であった。実施例4と比較して固液分離装置の通水速度が1.3倍となったが、問題なく運転できた。
【0107】
(実施例6)
実施例6では実施例4と同じ装置を用い、ろ過助剤Aの代わりにろ過助剤Eを用いたこと以外は同様に試験をおこなった。銅の回収率は99%以上であった。実施例4と比較して固液分離装置の通水速度が約2倍となったが、問題なく運転できた。
【0108】
(実施例7)
実施例7では実施例4と同じ装置を用い、ろ過助剤Aの代わりにろ過助剤Fを用いたこと以外は同様に試験をおこなった。銅の回収率は99%以上であった。実施例4と比較して固液分離装置の通水速度が1.2倍となったが、問題なく運転できた。
【0109】
(実施例8)
実施例8では図6に概略を示す装置1Bを用いた。この装置1Bが図1の装置1と異なるのは、ドラムヒータ22の代わりにpH調整機構23〜25を設けて、被処理水の流量とNaOHの注入量をコントロールして、析出槽2B内の被処理水のpHを調整できるようにしたことである。
【0110】
被処理水として、銅換算で50mg/L含有する硫酸銅水溶液を準備した。これを析出槽2Bに供給して、さらに48%水酸化ナトリウムを滴下したところ、pH5あたりから析出物が観察され始めた。その後pH8になるように調整し、20分間撹拌したところ、被処理水の色が深緑色になり、水酸化銅と酸化銅の混合物が生成された。
【0111】
また、ろ過助剤Fが充填されたろ過助剤タンク5から混合槽6にろ過助剤を供給して水を混合し、ろ過助剤スラリーを作製した。これを固液分離装置3に供給し、フィルタ33上に平均1mmの厚さのろ過助剤の層を作製した。この後、析出槽2Bから固液分離装置3に被処理水を供給し、ろ過を行ったところ、ろ過水(処理水)中の銅の99%以上が回収されていることが確認できた。ろ過処理後、固液分離装置3の上部ラインより水道水を1分間通水し、ケーキに含まれるイオン分を除去した。その後、固液分離装置3のフィルタ33の側方から洗浄水を供給し、フィルタ上に形成されている層を壊して分離槽4に供給した。分離槽内の撹拌機41を動作させてろ過助剤と銅化合物を分離したあと、磁石42を動作させてろ過助剤のみを分離し、液体を排出して銅濃縮液を得た。銅濃縮液を分析したところ、そのスラリーの主成分は水酸化銅と酸化銅であることが確認できた。その後、磁石の磁場を解除し、洗浄水を供給してろ過助剤スラリーにしたあと、ろ過助剤タンク5に返送した。この後、ろ過助剤スラリーを混合槽6に供給し、同様の操作を行ったが、問題なく再利用できた。
【0112】
(実施例9)
実施例9では実施例8と同じ装置を用いて、析出槽2Bから連続的に引き抜いて試験したこと以外は実施例8と同様に試験をおこなった。すなわち、一度析出槽内被処理水のpHを8に調整したあと、被処理水とNaOHをpHが5〜9の範囲になるように調整して連続的に添加し、析出槽からあらかじめろ過助剤の層を作製した固液分離装置に連続通水した。以下、実施例8と同様に処理をおこなったところ、ろ過水(処理水)中の銅の99%以上が回収され、ろ過助剤の再利用も可能であった。
【0113】
本発明によれば、特別な反応操作が必要でなく、水中で析出される細かい銅化合物粒子を直接固液分離することができる。
【符号の説明】
【0114】
1,1A,1B…銅回収装置、2…析出槽、2A…混合析出槽、
3…固液分離装置、31…導入スペース、32…排出スペース、
33…フィルタ、
4…分離槽、5…ろ過助剤タンク、6…混合槽、
11…ろ過助剤(磁性体の単体粒子)、12…被覆剤(ポリマー)、
13…ろ過助剤(磁性体粒子の凝集体)、
22…ドラムヒータ(加熱機構)、
23…pHメータ(pH制御機構)、24…制御器(pH制御機構)、25…NaOH注入装置(pH制御機構)、
P1〜P9…ポンプ、V1〜V2…バルブ(三方弁)、
L2…被処理水供給ライン、L3…処理水配水ライン、L31…処理水搬出ライン、L32…処理水再利用ライン、L33…処理水再利用ライン、
L4…洗浄排出水ライン、L5…ろ過助剤返送ライン、L6…ろ過助剤供給ライン、L7…混合ライン、L8…銅濃縮水排出ライン、
L10…脱塩ライン、L11…洗浄ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンを含む被処理水にアルカリを添加して銅化合物を析出させる析出槽と、
前記析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構と、
磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置と、
前記ろ過助剤供給装置から供給されるろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を作製する混合槽と、
前記混合槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記ろ過助剤をろ過し、前記ろ過助剤からなるプレコート層を形成し、さらに前記析出槽から被処理水が供給され、前記被処理水から前記酸化銅を含む銅化合物をろ過し、前記銅化合物を前記プレコート層に捕捉させるフィルタを有する固液分離装置と、
前記析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインと、
前記被処理水供給ラインに接続され、前記混合槽からの懸濁液を前記被処理水供給ラインの被処理水と混合する混合ラインと、
前記フィルタ上から前記プレコート層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインと、
前記固液分離装置から前記洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記銅化合物と前記ろ過助剤とを分離する分離槽と、
前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインと、
前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインと、
を具備することを特徴とする銅回収装置。
【請求項2】
磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤と銅イオンを含む被処理水とを混合して懸濁液を作製するとともに、前記被処理水をアルカリ性にして銅化合物を析出させる混合析出槽と、
前記混合析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構と、
前記混合析出槽に前記ろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置と、
前記混合析出槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記析出銅化合物および前記ろ過助剤を共にろ過し、前記酸化銅を含む前記析出銅化合物および前記ろ過助剤からなる堆積層を形成するフィルタを有する固液分離装置と、
前記混合析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインと、
前記フィルタ上から前記堆積層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインと、
前記固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記析出銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽と、
前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインと、
前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインと、を有することを特徴とする銅回収装置。
【請求項3】
前記ろ過助剤が、表面をポリマーで被覆された磁性体粒子が凝集してなる凝集体からなり、前記磁性体粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、前記ポリマーの平均被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmを満たすことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の装置。
【請求項4】
銅イオンを含む被処理水が収容される析出槽と、
前記析出槽内の被処理水にアルカリを添加して銅化合物を析出させるアルカリ供給装置と、
磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置と、
前記ろ過助剤供給装置から供給されるろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を作製する混合槽と、
前記混合槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記ろ過助剤をろ過し、前記ろ過助剤からなるプレコート層を形成し、さらに前記析出槽から被処理水が供給され、前記被処理水から前記酸化銅を含む銅化合物をろ過し、前記銅化合物を前記プレコート層に捕捉させるフィルタを有する固液分離装置と、
前記析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインと、
前記被処理水供給ラインに接続され、前記混合槽からの懸濁液を前記被処理水供給ラインの被処理水と混合する混合ラインと、
前記フィルタ上から前記プレコート層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインと、
前記固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽と、
前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインと、
前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインと、
前記析出槽内の被処理水のpHを測定する手段と、
前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を停止させ、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域となるところで反応を止めるか、または、前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を調整し、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域を保つ状態で連続的に反応を行わせるpH制御機構と、
を有することを特徴とする銅回収装置。
【請求項5】
磁性体を含む単体粒子または凝集体の平均直径が0.5〜20μmのろ過助剤と銅イオンを含む被処理水とを混合して懸濁液を作製するとともに、前記被処理水をアルカリ性にして銅化合物を析出させる混合析出槽と、
前記混合析出槽内の銅化合物を加熱し、該銅化合物の少なくとも一部を酸化銅にする加熱機構と、
前記混合析出槽に前記ろ過助剤を供給するろ過助剤供給装置と、
前記混合析出槽から懸濁液が供給され、前記懸濁液から前記析出銅化合物および前記ろ過助剤を共にろ過し、前記酸化銅を含む前記析出銅化合物および前記ろ過助剤からなる堆積層を形成するフィルタを有する固液分離装置と、
前記混合析出槽から前記固液分離装置に被処理水を供給するための被処理水供給ラインと、
前記フィルタ上から前記堆積層を洗浄して除去するための洗浄水を前記フィルタ上に供給する洗浄ラインと、
前記固液分離装置から洗浄水とともに排出される洗浄排出水に含まれる前記析出銅化合物とろ過助剤とを分離する分離槽と、
前記固液分離装置から前記分離槽に前記洗浄排出水を送る洗浄排出水ラインと、
前記分離槽で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤供給装置へ戻すろ過助剤返送ラインと、
前記析出槽内の被処理水のpHを測定する手段と、
前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を停止させ、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域となるところで反応を止めるか、または、前記pH測定手段により測定した測定pHに基づいて前記アルカリ供給装置からのアルカリの添加を調整し、前記析出槽内の被処理水のpHが中性領域を保つ状態で連続的に反応を行わせるpH制御機構と、
を有することを特徴とする銅回収装置。
【請求項6】
前記ろ過助剤が、表面をポリマーで被覆された磁性体粒子が凝集してなる凝集体からなり、前記磁性体粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、前記ポリマーの平均被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmを満たすことを特徴とする請求項4または5のいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255190(P2012−255190A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128632(P2011−128632)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】