説明

銅積層体の剥離強度向上

【課題】銅箔に粗化表面を用いることは誘電体基板との接着を助長するには有効であるが、表面粗化の程度は、高周波用途用銅箔の電気性能要求基準によって制限され、電気性能要求基準を満足させるために表面粗度を下げると、銅箔と誘電体基板との接着力(剥離強度)が弱くなる。
【解決手段】誘電体基板に積層するための銅箔であって、銅箔の表面に付着された層を含み、付着層が、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物から形成され、少なくとも0.5%のシランを含有する水溶液を用いて処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体基板に積層された銅箔層を有するプリント基板の製造に関し、より具体的には、導電体基板に対する銅箔層の接着性を向上させるための処理に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔及び銅系合金の箔は、プリント基板産業で広く使用されている。この箔は、0.008インチ未満の厚みに作られ、より一般的には、約0.0002インチ(当技術分野で1/8オンス箔として知られている)からの範囲の厚みに作られる。この箔は、2種の手段の内の1種で製造される。「圧延」箔は、銅又は銅合金のストリップの厚みを、圧延などのプロセスで機械的に薄くすることによって製造される。「電解」箔は、回転する陰極ドラム上に銅イオンを電着させ、次いで付着したストリップを陰極から剥離することによって製造される。
【0003】
積層プロセスを用いて銅箔を誘電体基板に接合してプリント基板を形成する。通常、誘電体基板は、FR−4(難燃性エポキシ)などのガラス繊維強化エポキシ、又はDuPont製のKapton(登録商標)などのポリイミドである。積層プロセスは、熱と圧力を使って銅箔層を誘電体基板に接合させることを含む。約175℃の温度で30分までの時間、約300ポンド/平方インチ(psi)の圧力をかけると、これらの層間に適切な接着力がもたらされる。
【0004】
接着力を最大限にするには、接合の前に導電体基板と接触する箔の表面を粗にすることが望ましいことが多い。箔を粗にする又は箔を処理するために利用できる技術は色々あるが、1つの実験的技術は、箔の表面に銅又は酸化銅の複数の樹枝状結晶(dendrite)を形成させるものである。いずれもPolan他の米国特許第4,468,293号及び第4,515,671号には、この処理が開示されている。この処理は、CopperBond(登録商標)処理と呼ばれる。CopperBondは、Olin Corporation of Norwalk、CTの商標である。電解による別の表面粗化処理は、Chen等の米国特許第5,800,930号に開示されているように、誘電体基板と接触する箔の表面上に銅/ニッケルのノジュールを付着させることである。場合によっては、箔の少なくとも片側、特に樹枝状結晶を有する粗化側に、亜鉛又は黄銅の電着コーティングを施すことができる。このコーティングは、箔と誘電体基板との接合強度を向上させることが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銅箔に粗化表面を用いることは誘電体基板との接着を助長するには有効であるが、表面粗化の程度は、高周波用途用銅箔の電気性能要求基準によって制限されることが多い。問題なのは、電気性能要求基準を満足させるために表面粗度を下げると、銅箔と誘電体基板との接着力(剥離強度)が弱くなることである。
【0006】
電解又は圧延銅箔を使っているプリント基板メーカーが直面している別の問題は、銅の相対的反応性である。その結果、銅は汚れやすく変色しやすい。汚れや変色は、見た目が悪く、かつプリント基板の製造中に問題の原因となる恐れがある。例えば、積層する前に銅箔が汚れると、箔と誘電体基板との接合強度、並びに得られた積層体のエッチング特性の両方に影響を及ぼす可能性がある。亜鉛とクロムの共付着イオン(co−deposited ion)を含む薄い(原子の規模でよい)コーティングを施すことによって、銅箔の耐変色性を高くすることができる。この処理は、P2処理と呼ばれ、Lin等の米国特許第5,022,968号に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、剥離強度向上コーティングを、銅箔の表面に付着させ、この銅箔を誘電体基板に積層することができる。この剥離強度向上コーティングは、本質的に金属と金属酸化物の混合物からなり、この金属と金属酸化物の混合物は、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種以上から形成される。好ましくは、金属酸化物は、クロム酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩の1種から選択される。銅箔の表面は平滑にすることができ、剥離強度向上コーティングは、厚みを約20〜約200オングストロームとすることができる。誘電体基板への積層前に、剥離強度向上コーティング上にシランを付着させることができる。
【0008】
本発明の別の態様では、物品は、誘電体基板に積層された、平滑な表面を有する銅箔を含む。剥離強度向上コーティングが銅箔と誘電体基板の間に付着され、銅箔は、幅1/8インチの試験片を用いて4NのHClに60℃で6時間浸漬した後、IPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して測定した場合、剥離強度の低下は10%以下である。剥離強度向上コーティングは、4NのHClに60℃で6時間浸漬した後の縁部アンダーカットも10%以下である。
【0009】
本発明の別の態様では、誘電体基板に積層された銅箔の剥離強度を上昇させる方法は、積層前に、銅箔を、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種以上から形成されたオキシアニオンを含有する水性電解液に浸漬するステップを含む。好ましくは、この金属は、クロム、モリブデン、及びタングステンの1種から選択される。この水溶液は電解セル中の電解液とすることができ、この方法は、約20〜約200オングストロームの厚みを有するコーティングが銅箔上に付着するように、銅箔と電解液に電流を流すステップをさらに含む。この方法は、コーティングを銅箔上に付着させた後、銅箔をシランに浸漬するステップをさらに含むことができる。
【0010】
本発明の別の態様では、誘電体基板に積層するための銅箔は、この銅箔の表面に付着された層を含む。この層は、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物から形成され、少なくとも0.5%のシランを含有する水溶液を用いて処理される。銅箔の表面は平滑とすることができ、層の厚みは約10オングストローム〜約100オングストロームとすることができる。
【0011】
本発明の別の態様では、誘電体基板に積層された銅箔の剥離強度を上昇させる方法は、積層前に、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を、銅又は銅系合金の箔の表面上に共付着させるステップ(co−deposition step)と、共付着ステップの後に、銅箔を、少なくとも1秒間、少なくとも0.5%の脱イオン水シランを含有する水溶液に浸漬するステップと、積層前に銅箔を乾燥するステップとを含む。この水溶液は、約15℃〜約30℃の温度とすることができる。クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を共付着させるステップは、クロム及び亜鉛イオンを含有する電解液中に配置された陽極を有する電解セルを設けるステップと、陰極として銅箔を設けるステップと、クロム及び亜鉛イオンを銅箔上に電着させるステップとを含むことができる。クロム及び亜鉛イオン又は酸化物から形成される層の厚みは、約10オングストローム〜約100オングストロームとすることができる。
【0012】
一実施形態では、電解液は、水酸化物イオン、約0.07g/l〜約7g/lの亜鉛イオン、及び約0.1g/l〜約100g/lの水溶性六価クロム塩を含有する塩基性溶液である。ここで、亜鉛イオン濃度又はクロム(VI)イオン濃度或いはその両方は1.0未満である。この実施形態では、共付着ステップは、銅箔を電解液に浸漬するステップと、約1ミリアンペア/平方センチメートル〜約1アンペア/平方センチメートルの電流密度が得られるように、銅箔及び電解液に電流を流すステップとを含む。電解液は、本質的に、約10〜約35g/lのNaOH、約0.2〜約1.5g/lのZnO、及び約0.2〜約2g/lのNaCr・2HOからなる。
【0013】
付随する図面及び以下の説明において、本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を述べる。本発明のその他の特徴、目的及び利点は、これらの説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【0014】
本発明は、添付図面と組み合わせた以下の詳細な説明から、さらに完全に理解されよう。図面では、似ている要素に似通った番号を付けてある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による、銅積層体の剥離強度を向上させるための電解セルシステムを示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による、銅積層体の剥離強度を向上させるための電解セルシステムを示す図である。
【図3a】塩酸(HCl)を作用させる前の、誘電体基板に積層した銅箔の横断面図である。
【図3b】塩酸(HCl)を作用させた後の、誘電体基板に積層した銅箔の横断面図である。
【図3c】アンダーカットされたコーティングを示す、図3cの銅箔の長手方向の図である。
【図4】アンダーカット率の関数として、剥離強度の低下率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書では、平滑な銅箔を使用した場合でも、銅箔と誘電体基板の間に高い接着力を発生させる2つの表面処理法が述べられている。本発明は、銅箔又は銅系合金の箔に等しく適用できる。ここで、「系」とは、この合金が少なくとも50重量%の銅を含有していることを意味する。本明細書で用いる用語「銅箔」には、銅箔及び銅系合金の箔が含まれる。さらに、本発明は平滑な銅箔で用いると特に有用であるが、本発明は、どんな表面仕上げの銅箔にも適用することができる。本明細書で用いる用語「平滑」とは、表面の凹凸が浅いこと、例えばRzが1μm未満であることを意味する。ここで、Rzは、表面プロフィルメーターを用いて測定した5つの山〜谷距離測定値の平均である。
表面処理法1
図1は、本発明の第1の態様による、銅積層体の剥離強度を向上させるためのシステム10を示す図である。システム10は、本明細書でP2処理法と呼ばれる方法を用いて、クロム金属と亜鉛金属若しくはこれらの酸化物の混合物を銅箔14の表面に共付着させるための電解セル12と、シラン含有水溶液18に被覆銅箔14を浸漬させるシラン溶液槽16とを含む。シラン溶液槽16を出た後、銅箔14は、脱イオン(DI)水を使って洗浄され、次いで乾燥した後誘電体基板に積層させることができる。
【0017】
電解セル12は、電解液22を入れた槽20と、銅箔14のストリップがその間を通る陽極24とを含む。シラン溶液槽16には、シラン含有水溶液18が入っている。ガイドロール26及び28を使って、それぞれ電解セル12及びシラン溶液槽16を通る銅箔14のストリップの移動を制御することができる。ガイドロール26及び28は、電解液22と反応しない材料から製造される。好ましくは、ガイドロール26の少なくとも一つは、以下に詳述するように、銅箔14のストリップに電流を印可することができるように、ステンレス鋼などの導電材料から形成される。ガイドロール26は、以下に述べる所要時間の間、銅箔14が陽極24の間に位置するように、制御された速度で回転する。ガイドロール28は、以下に述べる所要の時間の間、銅箔14が水溶液18に浸漬されるように制御された速度で回転する。
【0018】
電解セル12には、電解液22を介して陽極24から銅箔(陰極)14のストリップへ直流が流れるように、電源(図示せず)が設けられている。このようにして、所望の組成と厚みを有する変色防止コーティングを、箔ストリップ14上に付着させる。
【0019】
電解液22は、本質的に水酸化物源、亜鉛イオン源、及び水溶性六価クロムからなる水溶液である。好ましくは、水酸化物源は、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムであり、特に好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)である。六価クロム源は、NaCr.2HOなどの水溶性六価クロム化合物とすることができる。
【0020】
その最も広い組成範囲では、電解液22は、本質的に、約5〜約100グラム/リットル(g/l)の水酸化物と、ZnOなどの水溶性亜鉛化合物の形態で供給される0.07〜約7g/lの亜鉛イオンと、0.01〜約100g/lの水溶性六価クロム塩とからなる。しかし、亜鉛イオン濃度若しくはクロム(VI)イオン濃度の少なくとも一方が1.0g/l未満であることが条件である。好ましい実施形態では、この電解質は、約10〜約40g/lのNaOHと、約0.16〜約2g/lの亜鉛イオン、特に好ましくは0.2〜約1.6g/lの亜鉛イオンと、約0.08〜約30g/lのCr(VI)イオン、特に好ましくは約0.2〜約0.9g/lのCr(VI)イオンとを含有する。
【0021】
上記の電解液22のそれぞれについて、ラウリル硫酸塩などの界面活性剤を有効濃度で用いると、表面がより均一になると思われる。
【0022】
電解液のpHは塩基性に保持される。約12〜14の範囲のpHが好ましい。電解液22は、室温から約100℃までのすべての温度で直ちに作用する。付着速度をできるだけ高くするには、電解液22の温度を約35℃〜約65℃の範囲に保持することが好ましい。
【0023】
電解液22は、広い範囲の電流密度で良く作用する。1ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm)から約1アンペア/平方センチメートルの範囲の電流密度で、好結果のコーティングを施すことができる。より好ましい電流密度は、約3mA/cmから約100mA/cmである。実際の電流密度は、箔ストリップ14に電流を流す時間に左右される。即ち、銅箔ストリップ14が陽極24の間にある時間、及びこれを電解液22に浸漬する時間である。通常、この滞留時間は約10〜約25秒である。この滞留中に、変色防止コーティング化合物が有効な厚みで付着する。有効な厚みとは、空気中で約30分間、約190℃までの高温で銅の変色を防止することができる厚みである。さらに、この変色防止コーティングは、4%HClエッチング液又は好ましくは5重量%HSOエッチング液で容易に除去できるように十分に薄いことが必要である。有効なコーティング厚みは、100オングストローム未満〜約0.1ミクロンであると思われる。40オングストロームほどの小さなコーティング厚みで好結果が得られており、約10オングストローム〜約100オングストロームのコーティング厚みが好ましい。コーティング層は、銅箔14が透明に見えるか、又はわずかに灰色がかって見える程、十分に薄い。
【0024】
銅箔14の被覆されたストリップは、電解セル10を出て、ローラー28に導かれてシラン溶液槽16の水溶液18中を通る。この水溶液18は、少なくとも0.05%のシランがDI(脱イオン)水に含まれ、温度が約15℃〜約30℃であることが好ましく、より好ましくは約20℃〜25℃である。銅箔14は、この水溶液18に1秒以上浸漬されることが好ましい。
【0025】
銅箔14のストリップは、シラン溶液槽16を出て、過剰の電解液22及び水溶液18を銅箔14の表面から洗い流す。この洗浄液は脱イオン水とすることができる。より好ましくは、少量の苛性アルカリを脱イオン水洗浄液に加える。苛性アルカリの濃度は極めて低く、1パーセント未満である。好ましくは、苛性アルカリの濃度は、100万あたり約50〜約150の分率である。苛性アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムから成る群から選択される、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物が選ばれる。最も好ましいのは水酸化カルシウムである。
【0026】
洗浄の後、銅箔14のストリップは、強制空気で乾燥することができる。空気は、冷たい(例えば、室温)ものでも、加熱されていてもよい。乾燥を加速すると銅箔14のスポッティングを最少にできるので、加熱強制空気が好ましい。
【0027】
乾燥の後、任意の既知の積層プロセスを用いて、銅箔14を誘電体基板に接合してプリント基板などを形成することができる。誘電体基板としては、例えば、FR−4(難燃性ガラス充填エポキシ)などのガラス繊維強化エポキシ、又はDuPont製のKaptonなどのポリイミドが挙げられる。積層プロセスは、熱と圧力を用いて銅箔層を誘電体基板に接合するステップを含むことができる。例えば、約175℃の温度で30分間までの時間、約300psiの圧力を加えると、これらの層間に適切な接着力がもたらされる。
【0028】
表面処理法2
次に図2を参照すると、本発明の第2の態様に従って、銅箔上に剥離強度向上コーティングを電着するための電解セル50を示す。電解セル50は、水性電解液52を含む槽20と、その間を銅箔14のストリップが通る陽極24とを含む。ガイドロール26を使って、電解セル50を通る銅箔14のストリップの移動を制御することができる。ガイドロール26は、電解液52と反応しない材料から製造される。好ましくは、ガイドロール26の少なくとも一方は、以下に詳述するように、銅箔14のストリップに電流を印可することができるように、ステンレス鋼などの導電材料から形成される。ガイドロール26は、以下に述べる所要時間の間、銅箔14が陽極24の間に位置するように、制御された速度で回転する。
【0029】
電解セル50には、電解液52を介して陽極24から銅箔(陰極)14のストリップへ電流が流れるように、電源(図示せず)が設けられている。このようにして、所望の組成と厚みを有する剥離強度向上コーティングを、箔ストリップ14上に付着させる。
【0030】
電解液52は、元素周期表5B、6B、及び7B族から選択される金属から形成された、酸素(オキシアニオン)を含む多原子アニオンを含む水溶液である。好ましくは、この金属は6B族から選択される。金属が2つ以上のオキシアニオンを形成することができる場合は、より多数の酸素原子を含むオキシアニオンが好ましく(即ち、「−アート(−ate)」イオン)、最も多数の酸素原子を含むオキシアニオンが特に好ましい(即ち、「ペル_アート(per_ate)」イオン)。5B族には、バナジウム、ニオブ、及びタンタルが含まれる。6B族には、クロム、モリブデン、及びタングステンが含まれる。7B族には、マンガン、テクネチウム、及びレニウムが含まれる。
【0031】
好ましい組成では、電解液52は、クロム酸イオン、タングステン酸イオン、又はモリブデン酸イオンのDI水を含み、例えば、約1〜200g/lの重クロム酸ナトリウムからなる。任意選択で、約5〜100g/lの硫酸ナトリウム又は任意の別の導電性塩を添加して、電解液の導電率を上げることができる。好ましい実施形態では、電解液52は、本質的に約5〜75g/lの重クロム酸ナトリウムからなる。
【0032】
電解液52のpHは、約0.5〜14の範囲、好ましくは約2〜10の範囲、特に好ましくは約4〜9の範囲に保持することができる。電解液52は、室温から約100℃迄のすべての温度で直ちに作用する。付着速度をできるだけ高くするには、電解液52の温度を約20℃〜約80℃の範囲、より好ましくは約40℃〜約60℃に保持することが好ましい。
【0033】
電解液52は、広い範囲の電流密度で良好に作用する。5アンペア/平方フィート(asf)から約200asfの範囲の電流密度で、好結果のコーティングを施すことができる。より好ましい電流密度は約10asf〜約100asfであり、特に好ましくは約30asf〜70asfである。実際に使われる電流密度は、箔ストリップ14に電流を流す時間に左右される。即ち、銅箔ストリップ14が陽極24の間にある時間、及びこれを電解液52に浸漬する時間である。好ましくは、この滞留時間は約2秒以上であり、より好ましくは約5〜約25秒である。この滞留時間中に、元素周期表の5B、6B、及び7B族から選択される金属を含有する、金属と金属酸化物の混合物を含む剥離強度向上コーティングの有効厚みが、銅箔上に付着する。剥離強度向上コーティングを平滑な銅箔上に施す場合は、この有効厚みは、幅1/8インチの試験片を用いて4NのHClに約60℃で6時間浸漬した後、IPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して測定した場合、剥離強度の低下を10%以下とすることができる厚みである。IPC−TM−650は、The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits、7380 N. Lincoln Avenue、Lincolnwood、Illinois 60646から入手できるものであり、以下にさらに詳細に説明する。処理表面の組成は分析されていないが、コーティングは、金属と金属酸化物の混合物を含有しており、厚みが約20〜約200オングストローム(Å)であると思われる。コーティングの組織には何らかの微細な粗さが含まれており、これが接着力向上の効果をもたらしている可能性もある。
【0034】
被覆された銅箔14のストリップは、電解セル50を出て、過剰の電解液52を銅箔14の表面から洗い流す。この洗浄液は脱イオン水とすることができる。より好ましくは、少量の苛性アルカリを脱イオン水洗浄液に加える。苛性アルカリの濃度は極めて低く、1パーセント未満である。好ましくは、苛性アルカリの濃度は、100万あたり約50〜約150の分率である。苛性アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムから成る群から選択される、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物が選ばれる。最も好ましいのは水酸化カルシウムである。
【0035】
洗浄の後、銅箔14のストリップは、強制空気で乾燥することができる。空気は、冷たい(例えば、室温の)ものでも、加熱されていてもよい。乾燥を加速すると銅箔14のスポッティングを最少にできるので、加熱強制空気が好ましい。
【0036】
乾燥の後、任意の既知の積層プロセスを用いて、銅箔14を誘電体基板に接合してプリント基板などを形成することができる。誘電体基板としては、例えば、FR−4(難燃性ガラス充填エポキシ)などのガラス繊維強化エポキシ、又はDuPont製のKaptonなどのポリイミドが挙げられる。積層プロセスは、熱と圧力を用いて銅箔層を誘電体基板に接合するステップを含むことができる。例えば、約175℃の温度で30分間までの時間、約300psiの圧力を加えると、これらの層間に適切な接着力がもたらされる。
【0037】
本発明の有利な点は、以下の実施例から明らかとなろう。以下の実施例は、例証を目的とするものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
FR4(ガラス充填エポキシ)誘電体基板に積層した銅箔を使って、様々な比較及び実証サンプルを作製した。各サンプルに用いた銅箔、誘電体基板、及び積層方法は同じとした。異なる処理法が、各サンプル用の銅箔に用いられた。各サンプルは、幅1/8インチの試験片を用いたIPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して、初めの剥離強度を試験した。次に、1つを除くすべてのサンプルを、25℃で最大48時間、18%のHCl溶液に浸漬し、次いでIPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して剥離強度を再度試験して、塩酸(HCl)の影響を調べた。これは、PCB製造プロセスで、積層光描画プリント基板(PCB)を洗浄するために使用される可能性がある。これらの試験結果を表1に示した。この表は、本発明の利点を例証している。
【0039】
一般に、IPC−TM−650法2.4.8.5は、室温における導体の剥離強度を測定する試験について記載している。この試験は、試験片は、層間剥離、しわ、ふくれ、クラック、及びオーバエッチングなどの欠陥がない積層銅箔であることを特定している。積層された試験片は、業界で標準的な方法及び装置を用いて、画像を形成し、その後エッチング、洗浄及び加工を行う。本明細書で描画される線は1/8インチであり、縁部をサンディングした剪断サンプルを用いる。各サンプルは、剥離線が試験片の縁部に垂直になるように、ストリップの1インチを剥離することによって作製する。次いで、剥離した金属ストリップを上方に突き出して、各試験片を水平面に対して固定する。ストリップの端部を試験機のクランプのジョー間につかませるが、この時ジョーは金属ストリップの全幅を剥離線に平行につかませる。適切な試験機は、Carter Engineering Co.、Yorba Linda、CAが市販している試験機(Model# TA 520B10CR)である。力を垂直面(90±5°)に作用させ、金属箔を2.0±0.1インチ/分の速度で剥離する。剥離強度は、幅1インチ当りのポンドの単位で平均剥離荷重として求められる。
【0040】
CopperBond(登録商標)で処理した粗い表面を有する銅箔を使って比較サンプル1を作製した。比較サンプル1には、上記のP2処理も施した。この場合、銅箔の表面にクロムと亜鉛のイオン若しくは酸化物の混合物を共付着させた。剥離強度試験により、比較サンプル1の剥離強度は、1インチ当り約5.6ポンド(ポンド/インチ)であることが分かった。HCl溶液に48時間浸漬した後、比較サンプル1の剥離強度は約4.4ポンド/インチであった。
【0041】
P2処理のみを施した平滑な銅箔を用いて、比較サンプル2を作製した。剥離強度試験により、比較サンプル2の剥離強度は、約1.6ポンド/インチであることが分かった。比較サンプル2は、HCl溶液に1時間浸漬しただけで層間剥離した(剥離強度ゼロ)。
【0042】
本発明の第1の態様に従って、実証サンプル3を作製した。実証サンプル3で使用した平滑な銅箔は、初めP2処理を施し、次いで約22℃で1秒以上、0.5%のシランのDI(脱イオン)水の溶液に浸漬した。次いで、サンプルをDI水で洗浄し乾燥した後積層した。剥離強度試験により、比較サンプル3の剥離強度は、約5.5ポンド/インチであることが分かった。HCl溶液に1時間浸漬した後、比較サンプル3の剥離強度は約2.2〜3.3ポンド/インチであった。
【0043】
約22℃で1秒以上、0.5%のシランのDI(脱イオン)水の溶液への浸漬を施した平滑な銅箔を用いて、比較サンプル4を作製した。次いで、サンプルをDI水で洗浄し乾燥した後積層した。剥離強度試験により、比較サンプル4の剥離強度は、約1.5ポンド/インチであることが分かった。
【0044】
本発明の第2の態様に従って、実証サンプル5を作製した。この場合、平滑な銅箔は、重クロム酸塩を含有する溶液で処理した。具体的には、この溶液には、陰極で66asf、かつ37℃で5秒以上、DI水中で重クロム酸ナトリウム15g/lと硫酸ナトリウム20g/lが含まれていた。FR4へ積層した後、この処理された箔の剥離強度は5.3〜5.5ポンド/インチであった。HCl溶液に48時間浸漬した後、比較サンプル1の剥離強度は約3.0〜3.6ポンド/インチであった。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から分かるように、実証サンプル3及び5の剥離強度はそれぞれ約5.5ポンド/インチである。この値は、比較サンプル2及び4で用いられた表面処理、即ちP2又はシラン溶液処理のいずれか一方だけを用いた処理によってもたらされた剥離強度よりはるかに大きい。表1からさらに分かるように、実証サンプル3及び5は、平滑な銅箔に、CopperBond(登録商標)処理した粗い箔で観察される剥離強度5.6ポンド/インチと実質的に等しい剥離強度をもたらす。したがって、本発明の表面処理方法を用いることにより、平滑な銅箔は、従来の表面を粗くした箔(例えば、CopperBond(登録商標)処理した箔)を使って得られる剥離強度と実質的に等しい剥離強度を持つことができる。これは、極微細な回路フィーチャ又は高周波信号の伝送によって、使用できる表面粗度が制限される場合に特に有利である。また、実証サンプル3及び5は、CopperBond(登録商標)処理を用いて得られた剥離強度に近く、HClを作用させた後、P2処理のみの剥離強度より実質的に高い剥離強度を保持するという追加の利益も示す。
【0047】
HClを作用させることによる剥離強度の低下は、HClの作用によって失われた銅箔と誘電体基板の間のコーティング材料の量の関数であることが分かった。こうした材料ロスは、本明細書では「縁部アンダーカット」と呼ぶ。これは、図3を参照して説明することができる。図3aは、HClを作用させる前の、誘電体基板62に積層した銅箔60の横断面図である。銅箔60と誘電体基板62の間にコーティング材料64が配置されている。このコーティング材料は、亜鉛若しくはクロム−亜鉛(P2)変色防止コーティングであってもよく、或いは本発明の第2の態様による剥離強度向上コーティングであってもよい。銅箔60及びコーティング材料64は、PCB上に光描画配線の一部を形成している。コーティング材料64の厚みは、説明の目的で図3において誇張してある。例えば、コーティング材料64が剥離強度向上コーティングである場合は、コーティング材料の厚みは約20〜約200Åとすることができる。
【0048】
図3aから分かるように、HClを作用させる前は、コーティング材料64は、実質的に箔60の側面66迄延在している。PCBの洗浄に使用されることになるHClの作用によって、図3bに示したように、側面66に近接したコーティング材料64の一部68が除去(即ち、アンダーカット)される。図3cは、アンダーカットされたコーティング材料64を示す、箔60のストリップの長手方向の図である。図3cから分かるように、コーティング材料64がアンダーカットされた結果、コーティング材料64は非直線縁部70を持つ。
【0049】
図4は、FR4(ガラス充填エポキシ)誘電体基板に積層された銅箔を用いて作製された、様々な比較サンプル及び実証サンプルの試験から集めたデータのカーブフィット図であり、アンダーカット率の関数として剥離強度低下(%)を示す。図4から分かるように、剥離強度低下率は、縁部アンダーカットの一次関数として表すことができる。したがって、HClの作用によってサンプルが受ける縁部アンダーカットが大きくなるほど、剥離強度低下も大きくなる。本発明の第2の態様(表面処理法2)に関しては、従来技術の変色防止コーティングと比較した時、HClの作用による縁部アンダーカット率及び剥離強度低下率の両方とも、この処理で低下することが、試験で明らかになった。この試験を以下に述べる。
【0050】
表2は、図4のグラフを作るのに使われたデータを含む。表2のデータは、試験法を用いて作られたが、この試験法では、異なる表面処理を施した平滑な銅箔を使って、様々な比較及び実証積層サンプルが作製された。比較サンプル7〜9は、既知の表面処理法を示し、実証サンプル9〜14は、本発明の第2の態様(表面処理法2)による表面処理を示す。表2の各サンプルの銅箔、誘電体基板、及び積層方法は同じであり、サンプルは、用いた表面処理法だけが異なるものであった。
【0051】
表2の各サンプルについて、処理した銅箔をFR4誘電体基板(ガラス転移温度(Tg)175℃のFR4 PCL 370)に積層した。積層サイクルは、最高温度が182℃及び圧力300psiでの50分の加熱と、その後の15分の冷却サイクルとからなるものであった。銅箔の露出表面を、過硫酸アンモニウムの溶液(DI水1リットル中、過硫酸アンモニウム120g/l+濃硫酸3容積%(約18モル))中で、44℃で45秒間エッチングした。次いでサンプルを洗浄し乾燥した。次に、銅箔を、光沢剤を入れていない酸性の銅浴(50℃のDI水中、Cu60g/l及び硫酸65g/l)を使って、約0.0012〜0.0016インチの厚みまでめっきした。電流密度約0.065アンペア/cmを用いて、24分で所望の厚みを得た。ギロチン式紙切断機を使って、各サンプルから幅1/4インチ、長さ6インチの試験片を作製し、次いで両刃精密シヤーを使って、各試験片を幅1/8に切断した。試験片の縁部は、600グリット紙を使って軽く研磨し、切断で生じた可能性がある傷を除去した。
【0052】
各サンプルについて少なくとも4個の試験片を作製した。これらの試験片の半分(対照試験片)は、HClを作用させずにIPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して剥離強度を試験した。サンプルの「積層後」剥離強度は、対照試験片の幅1インチ当りのポンドを単位とする平均剥離荷重である。残りの試験片は、4NのHClに60℃で6時間浸漬した後、洗浄し乾燥した。次いで、浸漬した試験片を、IPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して試験した。表2において、「6時間HCl浸漬後の剥離強度」は、浸漬試験片の幅1インチ当りのポンドを単位とする平均剥離荷重である。表2には、各サンプルの剥離強度低下率も示されている。これは、HCl浸漬6時間後の剥離強度を、積層後の剥離強度の百分率として表したものである。
【0053】
各サンプルの縁部アンダーカット率は以下のようにして求めた。初めに、浸漬した各試験片を倍率100倍で観察し、浸漬した試験片の両側の異なる3箇所で、コーティング材料の縁部と箔の縁部の間の距離を測定した。例えば、図3を参照すると、試験片の各側部66で3つの異なる測定を行い、これらの測定は、72、74、76、78、80、及び84に示されている。測定を行った後、各側部の測定値の平均を計算した。次いで、試験片のアンダーカット率は、両側部の測定値の平均の和として計算し、試験片の全幅(1/8インチ)の百分率として示した。次いで、サンプルの縁部アンダーカット率は、そのサンプルの各試験片のアンダーカット率を平均することによって計算した。各サンプルの縁部アンダーカット率を表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
表2の各サンプルは、平滑な5μmの銅箔を使用して作製された。比較サンプル6及び7は、市販の銅箔を使用した。サンプル7は、Olin Corporation of Norwalk、CTからXTFとして市販されているP2処理箔である。比較及び実証サンプル8〜14は、裸の平滑な銅箔に様々な表面処理を施したものを使用して作製した。比較サンプル8のZn−Niコーティングは、硫酸塩としてNiを10g/l、硫酸塩としてZnを3g/l、及びクエン酸を20g/l含有する水溶液を使用し、pH4、130°Fで、10asfを3秒間、50asfを3秒間印可して付着した。実証サンプル9のクロム酸塩とケイ酸塩のコーティングは、5g/lのNaCr・2H0(Cr1.75g/l)、10g/lのNaOH、及び10g/lのケイ酸Naを含有する水溶液を使用し、140°Fで、20asfを10秒間印可して付着した。実証サンプル10のクロム酸塩コーティングは、5g/lのNaCr・2H0(Cr1.75g/l)、及び10g/lのNaOHを含有する水溶液を使用し、140°Fで、20asfを10秒間印可して付着した。実証サンプル11の濃クロム酸塩は、比較サンプル10と同じ水溶液を使用し、滞留時間を20秒に延長して付着した。実証サンプル12の酸性クロム酸塩は、15g/lのNaCr・2H0、及び20g/lの硫酸ナトリウムを含有する水溶液を使用し、104°Fで、66asfを10秒間印可して付着した。実証サンプル13の陰極の重クロム酸塩(CDC)は、Crを8.75g/l(25g/lのNaCr・2H0)含有する水溶液を使用し、pH4、140°Fで、40asfを5秒間印可して付着した。実証サンプル14のタングステン酸塩は、31g/lのタングステンを含有する水溶液を使用し、pH4、140°Fで、40asfを5秒間印可して付着した。
【0056】
表2から分かるように、それぞれの比較及び実証サンプルでは、HClへの浸漬前は、約4ポンド/インチという許容しうる剥離強度が得られた。しかし、HClに浸漬した後、比較サンプルは、実証サンプルより大きな剥離強度低下率を示した。比較サンプルでは、11.2〜19.8パーセントの範囲の剥離強度低下率が得られた。一方、実証サンプルは、4NのHClに60℃で6時間浸漬した後で、剥離強度低下率を10パーセント以下にするのに有効であることが分かった。実際、実証サンプルは、剥離強度低下率を約7パーセント以下にするのに有効であった。実証サンプルでは、P2又はZn−Niコーティングを有する平滑な箔と比べて、耐縁部アンダーカット性が改良されていることも分かった。本発明の第1の態様のように積層前に銅箔にシランを作用させると、本発明の第2の態様に従って処理された銅箔の剥離強度はさらに向上すると思われる。
【0057】
本発明の表面処理法により、従来の粗化表面箔を用いて得られるものと実質的に等しい剥離強度が得られ、平滑な銅箔積層体の使用が可能になる。これは、極微細な回路フィーチャ又は高周波信号の伝送によって、使用できる表面粗度が制限される場合に特に有利である。また、本発明の表面処理法は、表面を粗化した箔を使用して得られた剥離強度に近く、HClを作用させた後、他の平滑な銅箔の剥離強度より実質的に高い剥離強度を保持するという追加の利益も示す。本発明は、平滑な銅箔に使用すると特に有用であるが、本発明は、どんな表面仕上げを有する銅箔にも適用できる。
【0058】
本発明の1つ又は複数の態様及び実施形態を説明してきた。しかし、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが分かるであろう。したがって、その他の態様及び実施形態は、頭記の特許請求の範囲の範囲内である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板(62)に積層するための銅箔(14、60)であって、
前記銅箔(14、60)の表面に付着した剥離強度向上コーティング(64)を含み、前記剥離強度向上コーティング(64)が本質的に金属と金属酸化物の混合物からなり、前記金属と金属酸化物の混合物が、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種以上から形成される上記銅箔(14、60)。
【請求項2】
前記銅箔の表面が平滑である、請求項1に記載の銅箔(14、60)。
【請求項3】
前記金属酸化物が、クロム、タングステン、及びモリブデンの元素から選択される、請求項1に記載の銅箔(14、60)。
【請求項4】
前記剥離強度向上コーティング(64)の厚みが約20〜約200オングストロームである、請求項1に記載の銅箔(14、60)。
【請求項5】
前記誘電体基板への積層前に、前記剥離強度向上コーティング(64)上にシランを付着させる、請求項1に記載の銅箔(14、60)。
【請求項6】
誘電体基板(62)と、
前記誘電体基板に積層された、平滑な表面を有する銅箔(14、60)と、
前記銅箔(14、60)と前記誘電体基板(62)の間に付着した剥離強度向上コーティング(64)とを含み、
1/8インチの試験片を用いて4NのHClに60℃で6時間浸漬した後、IPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して測定した場合、前記銅箔(14、60)の剥離強度の低下が10%以下である物品。
【請求項7】
前記剥離強度向上コーティング(64)が、本質的に、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種以上から形成される金属と金属酸化物の混合物からなる、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記金属酸化物が、クロム、タングステン、及びモリブデンの元素から選択される、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記剥離強度向上コーティング(64)の厚みが約20〜約200オングストロームである、請求項6に記載の物品。
【請求項10】
前記剥離強度向上コーティング(64)は、4NのHClに60℃で6時間浸漬した後の縁部アンダーカットが10%以下である、請求項6に記載の物品。
【請求項11】
1/8インチの試験片を用いて4NのHClに60℃で6時間浸漬した後、IPC−TM−650法2.4.8.5に準拠して測定した場合、前記銅箔(14、60)の剥離強度の低下が7%以下である、請求項6に記載の物品。
【請求項12】
前記誘電体基板への積層前に、前記剥離強度向上コーティング(64)上にシランを付着させる、請求項6に記載の物品。
【請求項13】
誘電体基板(62)に積層された銅箔(14、60)の剥離強度を上昇させる方法であって、
積層前に、前記銅箔(14、60)を、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種以上から形成されたオキシアニオンを含有する水性電解液(52)に浸漬させるステップを含む方法。
【請求項14】
前記金属が、クロム、モリブデン、及びタングステンの1種から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水性電解液(52)が、クロム酸イオン、タングステン酸イオン、又はモリブデン酸イオンの脱イオン水を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液(52)が電解セル(50)中の電解液であり、前記方法が、約20〜約200オングストロームの厚みを有するコーティング(64)が前記銅箔(14、60)上に付着するように、前記銅箔(14、60)と前記電解液(52)に電流を流すステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティング(64)を前記銅箔(14、60)上に付着させた後、前記銅箔(14、60)をシランに浸漬するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
誘電体基板に積層するための銅箔(14、60)であって、
前記銅箔(14、60)の表面に付着された層(64)を含み、前記層(64)が、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物から形成され、少なくとも0.5%のシランを含有する水溶液を用いて処理される、上記銅箔(14、60)。
【請求項19】
前記銅箔(14、60)の前記表面が平滑である、請求項18に記載の銅箔(14、60)。
【請求項20】
前記層(64)の厚みが約10オングストローム〜約100オングストロームである、請求項18に記載の銅箔(14、60)。
【請求項21】
誘電体基板(62)に積層された銅箔(14、60)の剥離強度を上昇させる方法であって、
積層前に、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を、前記銅箔(14、60)の表面上に共付着させるステップと、
前記共付着ステップの後に、前記銅箔(14、60)を、少なくとも1秒間、少なくとも0.5%のシランの脱イオン水を含有する水溶液(18)に浸漬するステップと、
積層前に前記銅箔(14、60)を乾燥するステップと
を含む方法。
【請求項22】
前記水溶液(18)が、本質的に0.5%のシランの脱イオン水からなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶液(18)が、約15℃〜約30℃の温度である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を共付着させる前記ステップが、
クロム及び亜鉛イオンを含有する電解液(22)中に配置された陽極(24)を有する電解セル(12)を設けるステップと、
陰極として前記銅箔(14、60)を設けるステップと、
前記クロム及び亜鉛イオンを前記銅箔(14、60)上に電着させるステップと
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記電解液(22)が、水酸化物イオン、約0.07g/l〜約7g/lの亜鉛イオン、及び約0.1g/l〜約100g/lの水溶性六価クロム塩を含有する塩基性溶液であり、前記亜鉛イオン濃度又は前記クロム(VI)イオン濃度或いはその両方が1.0未満であり、前記共付着ステップが、
前記銅箔(14、60)を前記電解液(22)に浸漬するステップと、
約1ミリアンペア/平方センチメートル〜約1アンペア/平方センチメートルの電流密度が得られるように、前記銅箔(14、60)及び前記電解液(22)に電流を流すステップと
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記電解液(22)が、本質的に、約10〜約35g/lのNaOH、約0.2〜約1.5g/lのZnO、及び約0.2〜約2g/lのNaCr・2HOからなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記銅箔(14、60)上に付着された、前記クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物から形成された層(64)の厚みが、約10オングストローム〜約100オングストロームである、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記浸漬ステップの後、かつ前記乾燥ステップの前に、前記銅箔(14、60)を洗浄するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−39126(P2012−39126A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198477(P2011−198477)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2009−277618(P2009−277618)の分割
【原出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(506071210)オリン コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】