説明

銅精鉱搬送用チェーンコンベヤ

【課題】銅精鉱搬送用チェーンコンベヤの寿命を延長する。
【解決手段】複数の同一形状のリンク10が互いに連結されてなるチェーン20を2条平行に配置し、前記2条のチェーン20により搬送用のフライト30の両端を支持する銅精鉱搬送用チェーンコンベヤにおいて、隣り合うリンク10を連結するチェーンピン5の頭部5aをリンク10内に収納した。リンク10の外側側面にチェーンピン5の頭部5aを収納する座ぐり部6を設けた。また、チェーンピン5と、リンク10とを回り止めピン7により回転不能に係合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥銅精鉱を搬送する2条式チェーンコンベヤのコンベヤチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銅精鉱の搬送方式として、(1)チェーンコンベヤ、(2)スクリューコンベヤ、(3)バケットコンベヤ、(4)ベルトコンベヤ、(5)ブロワもしくは真空ポンプによる流送、が一般的に採用されている(例えば、特許文献1参照)。これらの方式のうちどの方式を採用するかは、搬送量、搬送物温度、設置レイアウト、運転コスト等を勘案して決定する。
【0003】
図4〜6は、前記した搬送方式うちの一つであるチェーンコンベヤの構造図である。図4に示すようにチェーンコンベヤは、平行に配置された2条のチェーン51と、銅精鉱40を搬送する複数のフライト52とを備えている。チェーン51は、複数の同一形状のリンク53をチェーンピン54によりエンドレスに連結したものである。フライト52は、2条のチェーン51により両端を支持されている。
【0004】
図6に示すように、チェーンコンベヤはコンベヤケーシング55内に収納されており、チェーン51の下側(張り側)はコンベヤケーシング55の底板ライナー56上に載置され、チェーン51の上側(緩み側)はコンベヤケーシング55の上方に設けられたリターンレール57上に載置されている。図示しないドライブスプロケットが回転すると、チェーン51の下側及びフライト52は底板ライナー56上を摺動し、底板ライナー56上の銅精鉱40をフライト52により押し、銅精鉱40を搬送する。
【0005】
ところで、チェーンコンベヤによる搬送方式は、チェーン51が構造上銅精鉱40及び底板ライナー56と直接接触しながら銅精鉱40を搬送する方式の為、チェーン本体の摩耗が著しく、チェーンコンベヤの寿命は殆どこのチェーン本体の摩耗によって決まってしまう。
【0006】
図7は、チェーンコンベヤを構成する従来のチェーン51の構造図である。従来のチェーン51は、前述したとおり複数の同一形状のリンク53をチェーンピン54によりエンドレスに連結したものである。チェーンピン54は、頭部54aを有する頭付きのピンであり、頭部54aの段付き部をリンク53の側面に付き当て、頭部54aと反対側の端部に抜け止めピン58を通してチェーンピン54が抜けるのを防止する構造である。
【0007】
しかし、従来のチェーン51であると、チェーンコンベヤの運転中にチェーン51そのものが銅精鉱40と接触することや、図6の想像線で示すようにチェーン51が左右に蛇行することにより、チェーンピン54の頭部54aとコンベヤケーシング55の側面ライナー59とが接触し、図7に示すようなチェーンピン頭部54aの摩耗(摩耗部60)が発生する。チェーンピン54の頭部54aが摩耗して無くなると、チェーンピン54が抜け、2条のチェーン51のうち片側のチェーン51にだけ大きな負荷がかかり、チェーン51の破断が発生するという問題がある。
【0008】
また、チェーン51が図示しないスプロケットと噛み合う際、チェーン51の屈曲によりチェーンピン54が回転してしまい、チェーン51のリンク53と抜け止めピン58とが摺動して摩耗し、抜け止めピン58が切断される。その後、チェーン51が蛇行した際にチェーンピン54がスラスト方向の力を受け、チェーンピン54は抜ける方向に力を受ける。
【0009】
そのため、チェーンピン54の頭部54aが側面ライナー59と接触し、頭部54aが摩滅し、チェーンピン54の脱落を招き、前述のとおりチェーン51の破断が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭63−166523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前述の問題点を解決する為に、チェーンの構造を変更することにより銅精鉱搬送用チェーンコンベヤの寿命を延長することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、複数の同一形状のリンク(10)が互いに連結されてなるチェーン(20)を2条平行に配置し、前記2条のチェーン(20)により搬送用のフライト(30)の両端を支持する銅精鉱搬送用チェーンコンベヤを以下のように構成した。すなわち、銅精鉱搬送用チェーンコンベヤの前記リンク(10)は、プレート部(3)と、前記プレートの一端に設けられた第1連結部(1)と、前記プレート(3)の他端に設けられた第2連結部(2)と、前記プレート(3)の一方の側面に設けられ前記フライト(30)を保持するフライトホルダ(4)と、を有する。前記第2連結部(2)に、隣り合うリンク(10)の前記第1連結部(1)を挟持する一対のピン保持部(2a,2b)を設け、隣り合うリンク(10)のうち一方のリンク(10)の前記第1連結部(1)と、他方のリンク(10)の前記第2連結部(2)とをチェーンピン(5)により連結した。そして、前記チェーンピン(5)の頭部(5a)を前記一対のピン保持部のうちフライトホルダ(4)と反対側にあるピン保持部(2a)内に収納した(請求項1)。
【0013】
フライトホルダ(4)と反対側にあるピン保持部(2a)の外側側面にチェーンピン(5)の頭部(5a)を収納する座ぐり部(6)を設けた(請求項2)。
【0014】
前記チェーンピン(5)と、フライトホルダ(4)と反対側にあるピン保持部(2a)とを回り止めピン(7)により回転不能に係合した(請求項3)。
【0015】
前記チェーンピン(5)の挿入側の先端部(5b)を前記一対のピン保持部のうちフライトホルダ(4)と同じ側にあるピン保持部(2b)の外側側面から突出させ、前記先端部(5b)に抜け止めピン(8)を挿入し、前記抜け止めピン(8)と、フライトホルダ(4)と同じ側にあるピン保持部(2b)との間に緩衝ワッシャ(9)を介在させた(請求項4)。
【発明の効果】
【0016】
複数の同一形状のリンク(10)が互いに連結されてなるチェーン(20)を2条平行に配置し、前記2条のチェーン(20)により搬送用のフライト(30)の両端を支持する銅精鉱搬送用チェーンコンベヤにおいて、前記リンク(10)を連結するチェーンピン(5)の頭部(5a)を前記リンク(10)内に収納したから、チェーンピン(5)の頭部(5a)がコンベヤケーシングの側壁ライナーと接触して摩耗するのを防止することができる。したがって、チェーンピン(5)の脱落及びチェーン(10)の破断を防止することができる(請求項1,2)。
【0017】
前記チェーンピン(5)と、チェーン(20)のリンク(10)とを回り止めピン(7)により回転不能に係合したから、チェーン(20)がスプロケットと噛み合う際に、チェーン(20)の屈曲によりチェーンピン(5)がつれ回り回転するのを防止することができる。したがって、チェーン(20)のリンク(10)とチェーンピン(5)の抜け止めピン(8)とが摺動するのを防止でき、抜け止めピン(8)の破損を防止できる(請求項3)。
【0018】
前記チェーンピン(5)の抜け止めピン(8)と、チェーン(20)のリンク(10)との間に間に緩衝ワッシャ(9)を介在させたから、チェーンピン(5)の摩耗を抑制でき、抜け止めピン(8)が破損してチェーンピン(5)が脱落することを防止することができる(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤの平面図である。
【図2】本発明の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤのリンクの一部断面平面図である。
【図3】図2におけるA−A矢視図である。
【図4】従来技術の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤの平面図である。
【図5】従来技術の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤの側面図である。
【図6】図5におけるB−B断面図である。
【図7】従来技術の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤのリンクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤを示している。銅精鉱搬送用チェーンコンベヤは、複数の同一形状のリンク10をエンドレスに連結させた2条のチェーン20と、2条のチェーン20により両端を支持された搬送用のフライト30とを備えている。なお、銅精鉱搬送用チェーンコンベヤは、コンベヤケーシング内に収納されているが、コンベヤケーシングの構造は従来技術と同様であるので、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0021】
図2において、リンク10は、プレート部3と、プレート部3の一端に設けられた第1連結部1と、プレート部3の他端に設けられた第2連結部2と、プレート部3の一方の側面に設けられフライト30を保持するフライトホルダ4とを有しており、これらは一体に成形されている。
【0022】
第2連結部2には、隣り合うリンク10の第1連結部1を挟持する一対のピン保持部2a,2bが設けられている。ピン保持部2a,2bには、チェーンピン5が挿入されるピン孔2c,2dが設けられている。これらピン孔2c,2d、第1連結部1に設けられたピン孔1a、及びチェーンピン5により隣り合うリンク10はチェーンピン5の部分で回転自在に連結されている。
【0023】
チェーンピン5は、頭部5aと、挿入側の先端部5bとを有する頭付きのピンであり、フライトホルダ4と反対側にあるピン保持部2aの外側側面からリンク10に対し挿入されている。頭部5aの段付き部は、リンク10を連結した状態において、ピン保持部2a内に収納されている。また、チェーンピン5の先端部5bは、リンク10を連結した状態において、フライトホルダ4と同じ側にあるピン保持部2bの外側側面から突出している。先端部5bの突出した部分には、抜け止めピン8が挿入されており、チェーンピン5がリンク10から抜けないようになっている。
【0024】
ピン保持部2aの外側側面には、チェーンピン5の頭部5aを収納する座ぐり部6が設けられている。座ぐり部6の深さは、チェーンピン5の頭部5aの高さよりも大きく形成されており、リンク10を連結した状態において、頭部5aがピン保持部2aの外側側面から突出しないようになっている。したがって、チェーンピン5の頭部5aがコンベヤケーシング55の側壁ライナー59と接触して摩耗するのを防止することができ、チェーンピン5の脱落及びチェーン10の破断を防止することができる。なお、図2に示したリンク10では、チェーンピン5の頭部5aを埋め込み式にした分、ピン保持部2aの肉厚を従来技術のリンク53より厚く変更している。
【0025】
また、チェーンピン5と、ピン保持部2aとは、回り止めピン7により回転不能に係合されている。回り止めピン7の一端は、チェーンピン5の周面に対し直角に打ち込まれており、また、回り止めピン7の他端は、ピン保持部2aに形成された係止溝2eに嵌まっている。図2,3に示すように、係止溝2eは、ピン孔2cの中心から半径方向外側に延びており、ピン保持部2aの外側側面に開口している。以上の構成により、チェーン20が図示しないスプロケットと噛み合う際、チェーン20が屈曲してもチェーンピン5が第2連結部2に対しつれ回り回転することはない。したがって、チェーンピン5の抜け止めピン8とリンク10とが摺動することがなくなり、抜け止めピン8の破損を防止することができる。
【0026】
さらに、抜け止めピン8と、ピン保持部2bの外側側面との間には緩衝ワッシャ9が介装されている。緩衝ワッシャ9を介在させたことにより、チェーンピン5の摩耗を抑制でき、抜け止めピン8が破損してチェーンピン5が脱落することを防止することができる。また、チェーンピン5がスラスト方向にガタつくのを防止し、抜け止めピン8とリンク10とが衝突を繰り返すことに起因する抜け止めピン8の破損を防止することができる。
【0027】
本発明の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤのチェーン20と、従来のチェーン51とを比較した表を下記に示す。表1に示すとおり、本発明によってチェーンの側面における摺動面積が増え、チェーン側面全体で側面ライナー59と摺動させることできるようになったため、チェーンピン5の頭部5aの摩耗を抑制でき、チェーンコンベヤの寿命が延長されていることが分かる。なお、表1において、チェーン側面摺動面積とは、コンベヤケーシング55の側壁ライナー59と対向するチェーンのリンク1個分の側面面積を指す。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤのチェーンは、銅精鉱に限らず、他の金属精鉱の搬送にも用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 第1連結部
1a ピン孔
2 第2連結部
2a ピン保持部
2b ピン保持部
2c ピン孔
2d ピン孔
2e 係止溝
3 プレート部
4 フライトホルダ
5 チェーンピン
5a 頭部
5b 先端部
6 座ぐり部
7 回り止めピン
8 抜け止めピン
9 緩衝ワッシャ
10 リンク
20 チェーン
30 フライト
40 銅精鉱
51 チェーン
52 フライト
53 リンク
54 チェーンピン
54a 頭部
55 コンベヤケーシング
56 底板ライナー
57 リターンレール
58 抜け止めピン
59 側面ライナー
60 摩耗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同一形状のリンク(10)が互いに連結されてなるチェーン(20)を2条平行に配置し、前記2条のチェーン(20)により搬送用のフライト(30)の両端を支持する銅精鉱搬送用チェーンコンベヤであって、
前記リンク(10)は、プレート部(3)と、前記プレートの一端に設けられた第1連結部(1)と、前記プレート(3)の他端に設けられた第2連結部(2)と、前記プレート(3)の一方の側面に設けられ前記フライト(30)を保持するフライトホルダ(4)と、を有し、
前記第2連結部(2)に隣り合うリンク(10)の前記第1連結部(1)を挟持する一対のピン保持部(2a,2b)を設け、
隣り合うリンク(10)のうち、一方のリンク(10)の前記第1連結部(1)と、他方のリンク(10)の前記第2連結部(2)とをチェーンピン(5)により連結し、
前記チェーンピン(5)の頭部(5a)を前記一対のピン保持部のうちフライトホルダ(4)と反対側にあるピン保持部(2a)内に収納した、銅精鉱搬送用チェーンコンベヤ。
【請求項2】
フライトホルダ(4)と反対側にあるピン保持部(2a)の外側側面にチェーンピン(5)の頭部(5a)を収納する座ぐり部(6)を設けた、請求項1に記載の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤ。
【請求項3】
前記チェーンピン(5)と、フライトホルダ(4)と反対側にあるピン保持部(2a)とを回り止めピン(7)により回転不能に係合した、請求項1又は請求項2に記載の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤ。
【請求項4】
前記チェーンピン(5)の挿入側の先端部(5b)を前記一対のピン保持部のうちフライトホルダ(4)と同じ側にあるピン保持部(2b)の外側側面から突出させ、前記先端部(5b)に抜け止めピン(8)を挿入し、前記抜け止めピン(8)と、フライトホルダ(4)と同じ側にあるピン保持部(2b)との間に緩衝ワッシャ(9)を介在させた、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の銅精鉱搬送用チェーンコンベヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−247971(P2010−247971A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100835(P2009−100835)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)