説明

銅系部材の腐食抑制方法

【課題】開放循環式冷却水系等のカルシウム硬度の低い水系に接する銅系部材の腐食を効果的に抑制する。
【解決手段】カルシウム硬度100mg/L as CaCO3未満の水系に、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質と、アゾール系銅用防食剤を添加して、該水系に接する銅系部材の腐食を抑制する。DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2以下かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2以下に相当するように酸化性物質濃度を管理し、アゾール系銅用防食剤を、下記(1)式で算出されるアゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)以上に添加する。
アゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)
=P×0.2+S×0.4+O×10 (1)
P:リン含有化合物濃度(mg/L as PO43-
S:カルボン酸基含有共重合体濃度(mg/L as 固形分)
O:DPD法の試薬添加10秒後の発色に相当する遊離塩素濃度としての酸化性
物質濃度(mg/L as Cl2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム硬度の低い水系、特に循環水のカルシウム硬度が低い開放循環式冷却水系に接する銅系部材の腐食を効果的に抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開放式循環冷却水系では、冷水塔における循環冷却水の蒸発及び飛散による循環冷却水のロスを補うための補給水と、循環冷却水のブロー水とのバランスを取りながら運転が行われている。循環冷却水の蒸発により、循環冷却水は徐々に濃縮される。補給水に含まれる溶存物質も濃縮するため、例えば重炭酸イオンやカルシウムイオン濃度の上昇によるスケールトラブル、塩化物イオンや硫酸イオン等の腐食性イオン濃度上昇による腐食トラブル、有機物濃度上昇によるスライムトラブルなどの障害が起こりやすくなる。そこで、冷却水の水質管理を行うとともに、スケール抑制剤、腐食抑制剤、スライム抑制剤を水系に添加する水処理が行われている。
【0003】
従来、水系の金属の腐食抑制剤として、ホスホン酸等に代表されるリン含有化合物やカルボン酸基含有共重合体を水系に添加する水処理方法が提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94598号公報
【特許文献2】特開2005−290424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リン含有化合物やカルボン酸基含有共重合体を水系に添加する従来の水処理は、広い水質範囲でスケール抑制や炭素鋼の腐食抑制が可能であり、スライム抑制剤と併用することにより良好な冷却水処理効果を得ることが可能である。スライム抑制剤としては、次亜塩素酸ナトリウムに代表される酸化性物質が使用される場合があるが、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質とを併用する水処理において、更にはアゾール系銅用防食剤を併用しているにもかかわらず、カルシウム硬度100mg/L as CaCO3未満の水系、特にカルシウム硬度50mg/L as CaCO3未満の水系で銅系部材の腐食を十分に抑制できない課題があった。
【0006】
本発明は、カルシウム硬度の低い水系、特に循環水のカルシウム硬度が低い開放循環式冷却水系に接する銅系部材の腐食を効果的に抑制する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カルシウム硬度100mg/L as CaCO3未満の水系、特にカルシウム硬度50mg/L as CaCO3未満の水系で、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質を併用する水処理において、銅系部材の腐食を十分に抑制できないという課題に対し検討を行った結果、酸化性物質濃度を適正なレベルに管理するとともに、アゾール系銅用防食剤を特定の濃度以上となるよう水系に添加することで、銅系部材の腐食を十分に抑制できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明(請求項1)の銅系部材の腐食抑制方法は、カルシウム硬度100mg/L as CaCO3未満の水系において、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質とを添加して、該水系に接する銅系部材の腐食を抑制する方法であって、DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2以下かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2以下に相当するように、該水系の酸化性物質濃度を管理するとともに、該水系に、アゾール系銅用防食剤を、下記(1)式で算出されるアゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)以上に添加することを特徴とする。
アゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)
=P×0.2+S×0.4+O×10 (1)
P:リン含有化合物濃度(mg/L as PO43-
S:カルボン酸基含有共重合体濃度(mg/L as 固形分)
O:酸化性物質濃度※(mg/L as Cl2
※DPD法の試薬添加10秒後の発色に相当する遊離塩素濃度
【0009】
請求項2の銅系部材の腐食抑制方法は、請求項1において、前記水系のカルシウム硬度が50mg/L as CaCO3未満であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の銅系部材の腐食抑制方法は、請求項1又は2において、前記リン含有化合物として、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を、カルボン酸基含有共重合体としてマレイン酸とイソブチレンとの共重合体及び/又はアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体を、アゾール系銅用防食剤としてベンゾトリアゾールを用いることを特徴とする。
【0011】
請求項4の銅系部材の腐食抑制方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記酸化性物質としてクロラミン化合物を用いることを特徴とする。
【0012】
請求項5の銅系部材の腐食抑制方法は、請求項4において、前記クロラミン化合物が塩素化スルアファミン酸及び/又はその塩であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の銅系部材の腐食抑制方法によれば、例えば純水などカルシウム硬度が極めて低い水を補給水とする開放循環冷却水系において、銅系部材の腐食を抑制しつつ、酸化性物質よりなるスライム抑制剤による確実なスライム抑制効果を得ることで良好な冷却水処理効果を得ることが可能となる。その結果、熱交換器の伝熱効率低下の抑制による省エネルギーへの貢献や、配管・機器類の長寿命化により、環境に対し寄与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の銅系部材の腐食抑制方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の銅系部材の腐食抑制方法は、カルシウム硬度の低い水系、特に循環水のカルシウム硬度が低い開放循環式冷却水系に接する銅系部材の腐食を抑制する水処理処理方法に関するものであり、カルシウム硬度100mg/L as CaCO3未満の水系において、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質とを添加して、該水系に接する銅系部材の腐食を抑制する方法であって、DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2以下かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2以下に相当するように、該水系の酸化性物質濃度を管理するとともに、該水系に、アゾール系銅用防食剤を、下記(1)式で算出されるアゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)以上に添加することを特徴とする。
アゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)
=P×0.2+S×0.4+O×10 (1)
P:リン含有化合物濃度(mg/L as PO43-
S:カルボン酸基含有共重合体濃度(mg/L as 固形分)
O:酸化性物質濃度※(mg/L as Cl2
※DPD法の試薬添加10秒後の発色に相当する遊離塩素濃度
【0016】
本発明において、用いるリン含有化合物としては、特に制限はないが、次に示す化合物及びその塩が例示される。すなわち、正リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸、ビス−ポリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられ、その1種又は2種以上が用いられる。
水系に添加するリン含有化合物の濃度としては1〜20mg/L as PO43-、特に2.5〜10mg/L as PO43-の範囲となるように添加することが望ましい。
【0017】
本発明において用いるカルボン酸基含有共重合体としては、マレイン酸系重合体、(メタ)アクリル酸系重合体が挙げられる。このようなカルボン酸基含有共重合体としては、ホモマレイン酸重合体、ホモ(メタ)アクリル酸重合体、マレイン酸又は(メタ)アクリルと共重合可能な不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。マレイン酸又は(メタ)アクリルと共重合可能な不飽和単量体としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン、ビニルアルコール、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどが挙げられ、その1種又は2種以上が用いられる。カルボン酸基含有共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水系に添加するカルボン酸基含有共重合体の濃度としては3〜20mg/L as 固形分、特に5〜15mg/L as 固形分の範囲となるように添加することが望ましい。
【0018】
本発明において、酸化性物質としては、次亜塩素酸及びその塩、次亜臭素酸及びその塩、塩素化イソシアヌル酸及びその塩、例えば塩素化スルファミン酸及びその塩や臭素化スルファミン酸及びその塩のようなクロラミン化合物、ブロマミン化合物、過酸化水素などが挙げられ、その1種又は2種以上を用いることができる。また、次亜塩素酸及びその塩や次亜臭素酸及びその塩と、5,5−ジメイルヒダントインやスルファミン酸などとを水系内で反応させて生成した酸化性物質を用いることもできる。
酸化性物質としては、クロラミン化合物が好ましく、塩素化スルアファミン酸及び/又はその塩を用いることがより好ましい。
【0019】
酸化性物質濃度は、DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2以下かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2以下に相当するように管理する。このように酸化性物質濃度を管理する背景としては、酸化力の程度により遊離塩素濃度測定用に添加したDPD法の試薬が徐々に発色する場合があるためである。より強い酸化力を持つ酸化性物質は試薬添加後きわめて短時間に発色するため、試薬添加10秒以下の短時間における発色の程度により管理を行うことができるが、測定作業を考慮し試薬添加10秒後の発色に基づく測定値を用いることとした。DPD法の試薬添加後、徐々に発色する酸化性物質に関しては、試薬添加30秒から3分における発色の程度により管理を行うことができるが、発色が安定する試薬添加30秒後の発色に基づく測定値を用いることとした。
【0020】
酸化性物質の添加濃度が上記上限よりも多いと、アゾール系銅用防食剤を併用しても銅系部材の腐食を抑制し得ない場合がある。ただし、酸化性物質の添加濃度が少な過ぎると酸化性物質によるスライム抑制効果を十分に得ることができないため、DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.1mg/L as Cl2以上、例えば0.1〜0.5mg/L as Cl2で、かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度0.2mg/L as Cl2以上、例えば0.2〜1.0mg/L as Cl2となるように添加することが好ましい。
【0021】
本発明において用いるアゾール系銅用防食剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられ、その1種又は2種以上が用いられる。
【0022】
アゾール系銅用防食剤は、下記(1)式で算出されるアゾール系銅用防食剤必要添加濃度(mg/L)以上に添加される。アゾール系銅用防食剤の添加量が以下のアゾール系銅用防食剤必要添加濃度(mg/L)未満であると、銅系部材の腐食抑制効果を十分に得ることができない。
【0023】
アゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)
=P×0.2+S×0.4+O×10 (1)
P:リン含有化合物濃度(mg/L as PO43-
S:カルボン酸基含有共重合体濃度(mg/L as 固形分)
O:酸化性物質濃度※(mg/L as Cl2
※DPD法の試薬添加10秒後の発色に相当する遊離塩素濃度
【0024】
アゾール系銅用防食剤の添加濃度は、上記アゾール系銅用防食剤必要添加濃度(mg/L)以上であればよいが、アゾール系銅用防食剤の添加量が過度に多いと不経済であることから、アゾール系銅用防食剤は、上記アゾール系銅用防食剤必要添加濃度(mg/L)をAmg/Lとした場合において、Amg/L〜(A+5)mg/L、特にAmg/L〜(A+2)mg/Lの範囲で添加することが好ましい。
【0025】
本発明で用いられるリン含有化合物、カルボン酸基含有共重合体、酸化性物質及びアゾール系銅用防食剤は、本発明で規定する酸化性物質及びアゾール系銅用防食剤の濃度範囲を満足する範囲において、それぞれ単独で水系へ添加することも可能であるし、一部又は全部を予め混合して一剤化した形態で水系へ添加することも可能である。
【0026】
本発明において、リン含有化合物とカルボン酸基含有共重合体とは、任意に組み合わせて用いることが可能であるが、銅系部材の腐食抑制という目的以外の効果、例えば炭素鋼に対する腐食抑制効果なども考慮した場合、リン含有化合物として2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、リン含有化合物としてマレイン酸とイソブチレンの共重合体、あるいはアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体を用いることが好ましい。また、アゾール系銅用防食剤は、酸化性物質と一剤配合することを考慮すると、有効成分の安定性の面からベンゾトリアゾールが好ましい。
【0027】
本発明の実施にあたっては、本発明の効果を阻害しない範囲で、リン含有化合物、カルボン酸基含有共重合体、酸化性物質及びアゾール系銅用防食剤以外の他の水処理剤、例えば防食剤、スケール防止剤、スライム処理剤、消泡剤、界面活性剤、キレート剤などを併用することが可能である。
【0028】
なお、本発明において、処理対象水系のカルシウム硬度が100mg/L as CaCO3未満であることは極めて重要であり、カルシウム硬度が100mg/L as CaCO3以上の水系では、通常、リン含有化合物、カルボン酸基含有共重合体、酸化性物質及びアゾール系銅用防食剤の併用による銅系部材の腐食の問題は比較的発生しにくい。カルシウム硬度が100mg/L as CaCO3未満であり、リン含有化合物、カルボン酸基含有共重合体、酸化性物質及びアゾール系銅用防食剤を併用しても、銅系部材の腐食の問題のある水系に対して本発明は有効である。この水系のカルシウム硬度はより好ましくは50mg/L as CaCO3未満、特に好ましくは0〜20mg/L as CaCO3である。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例で用いた薬剤は、以下の略号で示す。
【0030】
【表1】

【0031】
[実施例1〜10,比較例1〜12]
JIS K0100「工業用水腐食試験方法」に記載された「回転法」に準拠した評価を行い、試験前後の銅試験片の重量変化より銅の腐食速度を測定する方法で腐食抑制効果の評価を行った。
試験水、試験片、試験条件は以下の通りである。
・試験水 :純水に塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムを添加し、塩化物イオン濃度50mg/L as Cl-、硫酸イオン濃度50mg/L as SO42-となるように調整した試験水に、表2,3に示す成分を表2,3に示す濃度で添加したものを用いた。pHは試験水の酸消費量(pH4.8)に相当する平衡pHとなるよう炭酸ガスあるいは空気を曝気して調整した。一部条件では硝酸カルシウムを添加しカルシウム硬度を任意の濃度に調整した。
・試験片 :長辺50mm、短辺30mm、厚さ1mmの銅(C1220)製試験片(ねじ止め用のφ4mm穴あき)を用いた。
・試験温度:40℃
・試験期間:3日間
・流動条件:試験片回転速度160rpm(流速0.5m/sec相当)
【0032】
試験結果を表2,3に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
実施例1〜10の結果は、カルシウム硬度が100mg/L as CaCO3未満で、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質を併用する水処理において、DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2以下かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2以下に相当するように酸化性物質濃度を管理するとともに、アゾール系銅用防食剤を前記(1)式で算出するアゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)以上に添加することにより、銅の腐食速度を2.5mdd未満の十分低い値に抑制可能なことを示している。
比較例1は、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、アゾール系銅用防食剤を併用する水処理において、酸化性物質を併用しない場合にアゾール系銅用防食剤濃度が低い場合でも、銅の腐食速度が十分低い値に抑制されることを示している。
一方、比較例2〜5及び比較例7〜12より、酸化性物質を併用することにより銅の腐食速度が著しく促進されることが明らかである。
比較例4〜6より、カルシウム硬度が100mg/L as CaCO3未満で、リン含有化合物及びカルボン酸基含有共重合体と酸化性物質併用により銅の腐食が促進されることが明らかである。
比較例7及び12は、カルシウム硬度が100mg/L as CaCO3未満で、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質を併用する水処理において、DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2超える、あるいは30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2を超えるように酸化性物質濃度を管理した結果、アゾール系銅用防食剤濃度が本発明の範囲内であっても、銅の腐食を十分抑制できないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム硬度100mg/L as CaCO3未満の水系において、リン含有化合物と、カルボン酸基含有共重合体と、酸化性物質とを添加して、該水系に接する銅系部材の腐食を抑制する方法であって、
DPD法にて試薬添加10秒後の発色が遊離塩素濃度0.5mg/L as Cl2以下かつ30秒後の発色が遊離塩素濃度1mg/L as Cl2以下に相当するように、該水系の酸化性物質濃度を管理するとともに、該水系に、アゾール系銅用防食剤を、下記(1)式で算出されるアゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)以上に添加することを特徴とする銅系部材の腐食抑制方法。
アゾール系銅用防食剤必要濃度(mg/L)
=P×0.2+S×0.4+O×10 (1)
P:リン含有化合物濃度(mg/L as PO43-
S:カルボン酸基含有共重合体濃度(mg/L as 固形分)
O:酸化性物質濃度※(mg/L as Cl2
※DPD法の試薬添加10秒後の発色に相当する遊離塩素濃度
【請求項2】
前記水系のカルシウム硬度が50mg/L as CaCO3未満であることを特徴とする請求項1に記載の銅系部材の腐食抑制方法。
【請求項3】
前記リン含有化合物として、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を、カルボン酸基含有共重合体としてマレイン酸とイソブチレンとの共重合体及び/又はアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体を、アゾール系銅用防食剤としてベンゾトリアゾールを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅系部材の腐食抑制方法。
【請求項4】
前記酸化性物質としてクロラミン化合物を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の銅系部材の腐食抑制方法。
【請求項5】
前記クロラミン化合物が塩素化スルアファミン酸及び/又はその塩であることを特徴とする請求項4に記載の銅系部材の腐食抑制方法。

【公開番号】特開2012−207291(P2012−207291A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75497(P2011−75497)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】