説明

銅線ケーブルによる端末設備の高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置

本発明は、銅線ケーブルによる端末設備の少なくとも一つの高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置であり、この設備は、x−DSLタイプの少なくとも一つの高ビットレートモデムMと、少なくとも一つの接続端子Pを備えているものであり、モデムMが端末設備の接続端子に接続されているか否かに応じて、高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスを自動的にマッチングすることを可能にする。このインピーダンスマッチング装置は、終端インピーダンスがモデムMに接続されていないときに、接続端子Pに終端インピーダンスを挿入するようになっているアジャストモジュール10と、モデムMが接続端子Pに接続されているとき、アジャストモジュール10と一体化するようになっているカップリングモジュール20を備えていることで、インピーダンスがブロードバンドサービスの高ビットレート伝送に対して透過的になるように、接続端子内に挿入されたインピーダンスを変換するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅線ケーブルによる端末設備の高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置に関するものである。
【0002】
本発明は、高ビットレート伝送技術の分野に位置づけられるものであり、典型的には、アクセスネットワークに接続された銅線ケーブルによるITC端末設備に開かれたブロードバンドサービスの伝送において応用法を見出すものである。
【背景技術】
【0003】
伝送量の増加およびインターネット上のサービスの爆発的増加という現況において、多くのブロードバンド・アクセスシステムが加入者に導入されてきた。これらの高ビットレートアクセスシステムは、既存のケーブル配線、つまりツイストペアの銅線ケーブル配線を用いている。したがって、x−DSLタイプのデジタルコーディング技術によって、アナログ電話回線(RTC)又はデジタル電話回線(RNIS)の既存のツイストペアの銅線ケーブルにおいて、かなりのビットレートを伝送することが可能になっており、このビットレートによって、加入者に高速インターネットや音響映像タイプのサービスを保証している。x−DSLとは、HDSL、SDSL、ADSL、VDSL、ADSL−Liteといった、あらゆる同系技術を総称するすべての高ビットレートブロードバンドサービスを指すものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらのx−DSLシステムは、同一メディアの枠において音声およびデータを搬送することを可能にするものではあるが、銅線ケーブルによる端末のインフラストラクチャのさまざまなネットワークトポロジー(スター結線、ブリッジ結線又は派生型配線の端部の区画、それらの長さなど)にマッチングすること、伝送特性のあらゆるダイナミックな変動に耐え、そして音声帯域タイプ(アナログ又はRNIS)のナローバンドサービスと共存することが必要となっている。
【0005】
この要請は主に、超高周波で作動するシステム、典型的には3MHzを超えるスペクトル・バンドで作動するシステムに適用される。これはたとえば、138kHzから12MHzの幅を持つため、周波数帯域が非常に広いVDSLシステムに当てはまるものである。実際、広い周波数の帯域で伝送チャネルを用いることは、リンクの品質にとって決して取るに足らないものではない。3MHzを超えるスペクトル・バンドでの伝送は、とりわけ、開放回路分枝および/又は容量性負荷の存在に起因する、電話線における反射に敏感である。
【0006】
開放回路分枝は、接続されていない電話線端部のすべての区分、つまり、占有されていないすべての電話接続端子として定義される。容量性負荷とは、たとえば電話機のような電話端子を介して、容量性負荷のあるナローバンド端末に接続された電話線端部のすべての区分として定義される。
【0007】
国際的な規格化の枠組みでは、997と998と称される、両立しないスペクトルに属す、VDSLの二つの周波数プロファイルがETSI規格に含まれている。第一のものが上りチャネルにより大きなスペースを提供し、どちらかと言えば対称的な高ビットレート(下り方向では26Mbit/sであり、上り方向では最大26Mbits/sである)を促進するのに対し、第二のものは、下りチャネルでより多いビットレートとなる非対称的なビットレート(下りチャネルでは34Mbits/sであり、上りチャネルでは最大4Mbits/sである)を優先するものである。
【0008】
これより、本発明を先行技術と対照させて説明する:
−図1は、単一のフィルタを備えた現行の技術による、銅線ケーブルによる端末設備の概略図であり、
−図2は、複数の分布フィルタを備えた先行技術による、銅線ケーブルによる端末設備の概略図である。
【0009】
銅線ケーブルによる端末設備(ITC)は、二つのタイプの可能な構成を呈することができる。この設備は、実際、戸建てタイプの「専用型」と呼ばれる構成、あるいは、マンションに供給されるタイプの「集合型」と呼ばれる構成を呈することができる。本発明は、二つの構成タイプに関係なく適用されるものである。
【0010】
従来的なVDSLリンクは二つの装置を備えている:
マルチ・ポートDSLアクセスを多重化する装置であって従来はDSLAMとも命名される装置と、加入者用のモデムとであり、これら両装置は、それぞれ、基地局と、加入者宅の銅線ケーブルによる端末設備(ITC)の内部に設置され、互いにアクセスネットワークRAを介して接続されている。電話線の最大の長さは約1kmである。「FTTCab」と呼ばれるアーキテクチャの場合、DSLAMは基地局から副分配機に移され、基地局とDSLAMの間の接続は光ファイバーでなされている。これらのアーキテクチャは当業者によって知られており、ここではこれ以上詳述しない。
【0011】
VDSLリンクはまた、電話音声に対して透過的でなければならない。加入者宅では、銅線ケーブルによる端末設備(ITC)の入力ポイントは、NID(英語の「Network Interface Device」)と命名される住居の入力端子盤から作られており、また、選別機能は、ブロードバンドサービスから音声帯域を分離することを可能にするものだが、図1および図2に示される二つの設備のケースにしたがって実現することができる。
【0012】
第一の場合(図1)、銅線ケーブルによる端末設備ITCは、通常「スプリッター」と称される装置を備えており、該装置は、住居の入り口部分、NIDのちょうど後方に単一フィルタFUを備えている。この単一フィルタFUによって、スペクトルの低い部分を選別することが可能になっている。このように、「スプリッター」によってブロードバンドサービスから声帯を分離することが可能になり、該声帯は、電話機のようなナローバンドの端末TBE1、TBE2に導かれ、該ブロードバンドサービスは、この特定例においてVDSLタイプの高ビットレートモデムMを介して、たとえばコンピュータのようなブロードバンドの端末TBLに伝送される。このタイプのフィルタFUは、一般的には高い次元数のフィルタであり(n>5)、このことは、加入者宅に設置するために電話事業者の介入を必要とするものである。
【0013】
第二の場合(図2)、銅線ケーブルによる端末設備ITCは、分布フィルタFD1、FD2を備えている。これらの分布フィルタは、一般的には次元数2のパッシブマイクロフィルタであり、ナローバンドの端末TBE1、TBE2の前で、電話接続の端子に差し込むようになっている。これらの分布フィルタにより、ブロードバンド信号が電話操作を擾乱すること、また、これらが相互的に擾乱することを避けられるようになっている。これら分布フィルタは低コストで、加入者自身で設置することが容易な部品で構成される。しかし、これら分布フィルタの数を無限に増加させることはできないが、それは分布フィルタが発生させる、結果として生じるインピーダンスが、より一般的に「リターンロス」と称される反射によるロス値に不利益をもたらす可能性があるためであり、該ロスは結果として、電話リンクの音声品質を劣化させうるものである。さらに、分布フィルタを備えるITCの場合、3〜12MHzの周波数帯域での高ビットレート伝送は、開放回路分枝BO1、BO2および/又は容量性負荷TBE1、TBE2の存在の下では、電話線における反射に対して敏感である。
【0014】
この問題を避けるために、それぞれの接続端子に終端インピーダンスを挿入し、該終端インピーダンスによって、電話線のマッチング不良に起因する弱化現象を減少させつつ、ブロードバンド伝送を促進させる。このような終端インピーダンスは、このとき、好ましくは、3MHzと12MHzの間に含まれる周波数帯域において、電話線の銅線ケーブルのインピーダンスの平均値に近い値、つまりおよそ135Ωの値を有することになる。しかしながら、たとえばVDSLタイプのモデムがこのような電話接続端子に接続され、該端子に終端インピーダンスが予め挿入されているとき、高ビットレートリンクの性能は劣化する。実際、接続端子はこのとき、該端子に予め挿入されているインピーダンスの値がモデムの値に近いために(3〜12MHzの帯域においておよそ135Ω)、ブロードバンドサービスの伝送に対しては透過的ではなくなる。
【0015】
電話線のマッチング不良に起因する、3〜12MHzの周波数帯域における高ビットレートリンクの品質劣化という問題を避けるための解決方法は、電話接続端子に終端インピーダンスを挿入することで開放回路分枝をマッチングすること、また、端子にモデムが接続されるとすぐに、この端子に予め挿入されている前記インピーダンスを引き抜き、高ビットレートリンクの性能の劣化を避けるようにすることで構成することもできるかもしれない。だが、この解決方法は、完全に手動によるものであり、使用者が高ビットレートモデムを端子に接続しようとすると、該端子に予め挿入されているインピーダンスを引き抜くことを考えざるをえなくなるため、非常に制約が多いものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ここで、本発明の対象である技術的問題は、ナローバンドサービス(アナログ又はRNIS)およびブロードバンドサービス(x−DSL)に開かれたアクセスネットワークに接続されている、銅線ケーブルによる端末設備にある、少なくとも一つの高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置を提案することからなり、前記設備は少なくとも一つのx−DSLタイプの高ビットレートモデムと、少なくとも一つの接続端子を備えており、該接続端子によって、モデムが設備の接続端子に接続されているかに応じて、高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスを自動的にマッチングすることが可能になっており、そのため、一方では、開放回路分枝および/又は容量性負荷の存在に起因する電話線のマッチング不良を避け、他方では、高ビットレートモデムが、終端インピーダンスが予め挿入されている接続端子に接続されるとき、高ビットレートリンクの性能劣化の問題を回避するようになっている。
【0017】
技術的課題に対する解決法は、本発明によると、インピーダンスマッチング装置が、
−少なくとも一つの前記接続端子に設置され、RC回路で構成されているもので、端子が前記高ビットレートモデムに接続されていないとき、前記接続端子に終端インピーダンスを挿入するようになっているアジャストモジュールと、
−前記高ビットレートモデムが前記接続端子に接続されているときに、前記アジャストモジュールと一体化するようになっていることで、接続端子に挿入されたインピーダンスを、該インピーダンスがブロードバンドサービスの高ビットレート伝送に対して透過的となるように変換するようになっているカップリングモジュール、
とを備えていることによって得られるものである。
【0018】
したがって、アジャストモジュールによって有限値の終端インピーダンスを接続端子に挿入することが可能になっている。該アジャストモジュールは、いわば、栓としての役割も果たすものであり、電話線上の反射、つまり、3MHzと12MHzの間に含まれる周波数帯域における高ビットレート伝送を強く擾乱する、開放回路分枝および/又は容量性負荷の存在に起因するマッチング不良に抗して高ビットレートリンクを保護するものである。さらには、高ビットレートモデムが接続端子に接続されると、アジャストモジュールおよびカップリングモジュールが一体化することで、3〜12MHzの周波数帯域において、端子のインピーダンスを自動的に修正するようになっており、その結果、結果として生じるインピーダンスは無限に大きくなる。結果として生じるこのインピーダンスはこのとき、たとえば1kΩと10MΩの間に含まれる値を呈し、高ビットレート伝送に対して透過的になる。
【0019】
本発明は、さらに、ナローバンドサービスおよびブロードバンドサービスに係るアクセスネットワークに接続され、また、複数の接続端子と少なくとも一つのx−DSLタイプの高ビットレートモデムを備えた、銅線ケーブルによる端末設備にも関するものである。この端末設備は、本発明に係るインピーダンスマッチング装置を備えている点に注目すべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に続く説明全体にわたり、VDSLタイプの高ビットレートリンクを参照にしているが、本発明はこのタイプの応用方法に限定されるものではない。本発明は実際、周波数帯域が3MHzを超える、あらゆる高ビットレートリンクに応用されるものである。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照に、非制限的な例示として与えられた以下の説明を読むことで明らかになるものであり、該添付図面は:
−図1は、既に説明したものであるが、単一フィルタを備えている、現行技術による銅線ケーブルによる端末設備の概略図を表すものであり、
−図2は、既に説明したものであるが、分布フィルタを備えている、現行技術による銅線ケーブルによる端末設備の概略図であり、
−図3は、本発明による装置の概略図であり、
−図4は、分離された構成による図3の装置の概略図であり、
−図5は、一体化された構成による図3の装置の概略図であり、
−図6は、第二の実施態様に従った、一体化された構成による装置の概略図であり、
−図7は、電話線上のビットレートの測定が、図3の装置の存在の下および不在の下で行われている専用型設備の概略図である。
【0022】
図3は、銅線ケーブルによる端末設備の少なくとも一つの高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置を概略示している。100という符号を付されたこの装置は、10と20という符号を付された二つの個別のモジュールを備えており、該モジュールは、高ビットレートモデムMが接続端子Pに接続されているかいないかということに応じて、アクセスネットワークの入力において、この接続端子Pに異なったインピーダンスの値を自動的に挿入することを可能にする。
【0023】
従来の電圧の供給が−48Vに等しい電話線LTは、ナローバンドサービスと同時にブロードバンドサービスにも関わるものである。
【0024】
10という符号を付された第一のモジュールは、接続端子Pに設置されているアジャストモジュールである。このモジュールは、端子Pに限定値の終端インピーダンスを挿入することを可能にする。
【0025】
20という符号を付された第二のモジュールはカップリングモジュールであり、該モジュールは、好ましくは高ビットレートモデムに接続され、たとえばモデムの回路分枝端子に固定されている。このモジュールは、モデムが端子Pに接続されるときに、アジャストモジュール10と一体化するようになっている。この二つのモジュールの一体化によって、接続端子Pに挿入されたインピーダンスの値を自動的に修正することができ、該値が、3MHzと12MHzの間に含まれる周波数帯域における高ビットレート伝送に対して透過的になれるようになっている。
【0026】
このインピーダンスマッチング装置は、コストが低く、あまりかさばらないパッシブ構成要素を具備している。この装置があまりかさばらないことにより、分布フィルタ200と同じケース1000に該装置を組み込むことができる。
【0027】
分布フィルタ200によって、ナローバンドの端末TBEのインピーダンスを覆うことが可能になるのだが、この端末の容量性負荷は、ブロードバンドの伝送チャネルの品質にとって有害となるものである。この分布フィルタは従来的にLC回路を備えている。
【0028】
インピーダンスマッチング装置は、接続端子Pに接続されており、好ましくは分布フィルタ200に対して並列であり、この分布フィルタは同一のケース1000に収納されている。
【0029】
電話接続端子Pに終端インピーダンスを挿入することにより、インピーダンスの変動を避けることが可能になるのだが、この変動とは、3〜12MHzの帯域において、専用設備内の開放回路分枝および/又は容量性負荷が存在するために、電話線LTの上で生じる可能性のあるものである。
【0030】
図4に示されているようなアジャストモジュール10によって、端子Pにおけるこの終端インピーダンスを挿入することが可能になっている。
【0031】
そのために、モジュールはRC回路の形状を呈している。より詳細には、この回路は少なくとも一つの抵抗R、複数のコンデンサC1、C2および、varicapダイオード又はバラクターダイオードと命名されている可変容量ダイオードD1、D2を備えている。これらすべての構成要素は直列に取り付けられている。
【0032】
可変容量ダイオードは、逆方向バイアスされているときに可変する静電容量を呈することで知られている。実際、それらの静電容量は逆バイアス電圧が上昇すると減少する。したがって、ダイオードD1およびD2は、印加されるバイアス電圧に応じて、数pFから数百pFまで可変しうる静電容量を呈する。
【0033】
図4に示された例では、これらのダイオードの数は二つである。しかし、それらの数が偶数であれば、このタイプの装置を二つ以上の可変容量ダイオードで製作することも考えられる。
【0034】
そして、これら両ダイオードは、逆直列に配置されることで、二つのうち一つのダイオードに逆方向バイアスするのだが、これは、図5を参照に以下で詳述されるように、電話線の極性とは独立しているものである。これら二つのダイオードの接続は、アノードに対してアノードか、カソードに対してカソードか、は無差別でどちらでもよい。図4に示された構成では、インピーダンスマッチング装置が分離され、アジャストモジュールだけが接続端子に設置されているが、ダイオードD1およびD2は、両側に配置されたコンデンサC1およびC2によって切り離されているため、逆バイアスを与えられてはいない。
【0035】
この場合、インピーダンスマッチング装置全体は、抵抗Rの値に等しいインピーダンスを有しており、その値は好ましくは、3〜12MHzの周波数帯域ではおよそ135Ωであり、このインピーダンスの値は、その周波数帯域における電話線を構成するケーブルのインピーダンス平均値に対応している。このインピーダンスを得るために、構成要素の値は適切に計算され、選択される。たとえば、コンデンサC1およびC2がそれぞれ100nFの静電容量を有するのに対し、抵抗Rは135Ωの値を有している。
【0036】
図5は、一体化された構成におけるインピーダンスマッチング装置、つまり、アジャストモジュール10およびカップリングモジュール20が一体化されたときのインピーダンスマッチング装置を概略示している。高ビットレートモデムMは、該モデムの端子にカップリングモジュール20が挿入されているのだが、接続端子を介して設備に接続されており、該接続端子に、アジャストモジュール10が予め挿入されている。このように、モデムが端子に接続される際、モジュール10および20が一体化され、協働することで、端子に挿入されているインピーダンスを自動的に変換し、該インピーダンスが、3〜12MHzの周波数帯域における高ビットレート伝送に対して透過的となれるようになっている。
【0037】
カップリングモジュールは四つの接触点E1、S1;E2、S2;E3、S3;E4、S4を具備している。それらのうち二つ、E1、S1およびE4、S4は、モデムMに接続するために利用されている。残り二つの接触点E2、S2およびE3、S3は、アジャストモジュールの可変容量ダイオードD1およびD2に、抵抗R1およびR2を介してバイアスするために、収容される。
【0038】
実際、アジャストモジュールのコンデンサC1に並列に抵抗R1を配置し、アジャストモジュールのコンデンサC2に並列に抵抗R2を配置することによって、コンデンサC1およびC2を中和し、可変容量ダイオードD1、D2の給電電圧を修正し、該ダイオードの少なくとも一つに、電話線LTの給電電圧−48Vに基づいて逆方向にバイアスすることが可能になっている。
【0039】
ダイオードが逆直列に配置されているために、それらの一方は、したがって、他方に対して非常に小さな接合容量を呈することになる。この小さな接合容量、つまりバイアスによって二つのダイオード、D1又はD2のうちの一方の接合容量が小さくなることによって、無限インピーダンスを得ることが可能になり、典型的には、およそ1kΩから10MΩまでである。
【0040】
2つの抵抗R1およびR2のうち、少なくとも一方は非常に高い値を有し、その値は典型的には2MΩと5MΩの間に含まれ、たとえばおよそ2.2MΩとなっていることで、電流消費量が無限小となり、結果として生じる装置のインピーダンスもまた、それによって変更されないようになっている。二つの抵抗R1およびR2は、たとえば接続を対称的にするために、同値とすることができる。
【0041】
提案されている実施態様では、構成要素の値は、3〜12MHzの帯域におけるさまざまなマッチング不良の問題に応えるように計算されている。可変容量ダイオードの選択が重要なのだが、それは、該ダイオードが可変できるインピーダンスの限界値を決定するためである。1から30までの比については、容量の最適な比率は、市販されているBB132タイプのダイオードで得られる。たとえば、6つのダイオードを用いることによって、450pF(バイアス電圧=0のとき)から16.5pF(−28Vのバイアス電圧のとき)まで可変する静電容量が得られ、このことにより、それぞれ約3MHzと80MHzとのカットオフ周波数が与えられる。
【0042】
10MHzを超えると、インピーダンスマッチング装置のインピーダンスは、一つ(又は複数)のフィルタがVDSL伝送にマッチングされていなければ、ITC内部に並列に設置された一つ(又は複数)の分布フィルタのインピーダンスによって制限される。
【0043】
図6は、銅線ケーブルによる端末設備の少なくとも一つの高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置の、第二の実施態様を示している。この接続方法では、符号30を付されたアジャストモジュールは、一つの可変容量ダイオードD1しか具備していない。この単一のアジャストモジュールが接続端子に設置されるとき、ダイオードD1は逆方向バイアスされていないのだが、それは、該ダイオードが、両側に配置されたコンデンサC1およびC2によって切り離されているためである。この場合、アジャストモジュールは抵抗Rの値に等しいインピーダンスを有し、該インピーダンスは、好ましくは、図4に関連して上述したように、3〜12MHzの周波数帯域においておよそ135Ωである。
【0044】
この実施態様では、符号40を付されたカップリングモジュールは、高ビットレートモデムMが接続端子に接続されているときにアジャストモジュール30と一体化するようになっているものであり、第一の実施態様に比べ少し複雑な構造を呈している。カップリングモジュール40は常に四つの接触点E1、S1;E2、S2;E3、S3;E4、S4を具備しており、それらのうち二つE1、S1とE4、S4はモデムMに接続するために用いられている。残りの二つの接触点E2、S2とE3、S3は、整流ブリッジおよび抵抗ブリッジR3、R4を用いて、アジャストモジュールの可変容量ダイオードD1に逆方向バイアスするために収容されている。整流ブリッジは、カップリングモジュール40に配置され、整流ダイオードD2、D3、D4、D5で構成されており、該整流ダイオードは二つずつ並列に、かつ逆直列に接続されている。カップリングモジュールに組み込まれた整流ブリッジにより、電話線の−48Vの給電電圧に依拠して、可変容量ダイオードD1の給電電圧を修正し、該ダイオードに逆方向バイアスすることが可能になっていることで、無限インピーダンス、典型的には1kΩと10MΩの間に含まれるインピーダンスが得られるようになっている。
【0045】
好ましくは、抵抗ブリッジを形成する抵抗R3およびR4が高い値、典型的には2MΩと5MΩの間に含まれる、たとえばそれぞれおよそ5MΩの値を有することで、電流消費量は最限小となり、結果として生じる装置のインピーダンスは、該電流によって修正されないようになっている。
【0046】
インピーダンスマッチング装置に対して種々の試験が行われたのだが、これら試験は、VDSLリンクでの二つの伝送方向における電話線上のビットレート測定を対象とした。これらの試験によって、3〜12MHzのスペクトル・バンドにおける開放回路分枝および/又は容量性負荷のインパクトを測定することが可能になり、これは本装置を用いた場合も用いない場合にも行った。このことによって、また、高ビットレート伝送に対する該装置の透過性を検証することもできた。
【0047】
これらの試験が行われた銅線ケーブルによる端末設備は、図7に示されている。専用設備は、住居の入り口にある端子盤NIDから始まっている。VDSLリンクは、基地局(DSLAM)側の内蔵された低域通過フィルタを備えた装備と、600mのケーブル、および、専用部分の中にVDSLモデムMを含んでいる。ITCは三つの端子P1、P2、P3を備えており、該端子はスター結線(6mの区分)のネットワークトポロジーにしたがってアクセスネットワークに接続されている。
【0048】
図7が示すように、すべての接続端子P1〜P3は、ナローバンド端末TBE2を音声帯域に接続するために、差し込み可能な分布フィルタFD1〜FD3だけではなく、VDSLモデムM又は開放回路分枝BO1および/又は容量性回路分枝TBE2に対するマッチング装置DA1〜DA3も備えている。VDSLモデムMは第三の端子P3に接続されている。
【0049】
電話線上のビットレート測定は、所有者システムの管理者によって与えられたのだが、これは、システムの6dBというノイズマージンに対しても同様である。
【0050】
以下の表は、開放回路分枝を具備するVDSLリンクで得られた結果をまとめたもので、インピーダンスマッチングされたものと、そうでないものとの比較である。
【0051】
【表1】

【0052】
ノイズEの存在下では(ノイズは基地局側と設備側でFFTExcとして規格化されている)、主に影響を受けているのは上りチャネルであり、該上りチャネルは、このために、VDSLリンクの性能を抑制している。
【0053】
ITCに関連するマッチング不良(開放回路分枝、容量性回路分枝)ならびに該設備のネットワークトポロジー(スター結線、ブリッジ結線又は派生型)は、電話線上に存在する漏話ノイズに加わるために、考慮に入れなければならない。
【0054】
終端インピーダンスが銅線ケーブルによる端末設備(ITC)に属する開放回路分枝にあることが望ましい。2つの開放回路分枝および/又は電話線端部で6mの長さをした容量性回路分枝を備えている、長さ600mのVDSLリンクの性能は劣化する。比較として、各回路分枝の端部にインピーダンスマッチング装置を挿入すると、二つの伝送方向において、電話線上のビットレートは改善される。これは、とりわけ上り方向に対して当てはまる。
【0055】
インピーダンスマッチング装置は、また、高ビットレート伝送に対して透過的でもある。
【0056】
開放回路分枝をスペクトル・バンド(3〜12MHz)において135Ωに調整することで、VDSLリンクにおける電話線上のビットレートは大幅に改善される。
【0057】
そして、インピーダンスマッチング装置は、低コストの構成要素から製作されるものであり、分布フィルタと同一のケースの中に容易に一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】現状技術による単一フィルタを備えた銅線ケーブル端末設備。
【図2】現状技術による分布フィルタを備えた銅線ケーブル端末設備。
【図3】本発明に係るインピーダンスマッチング装置の概略図。
【図4】分離された構成による図3の装置の部分概略図。
【図5】一体化された構成による図3の装置の部分概略図。
【図6】第二の実施態様による、部分概略図。
【図7】電話線上のビットレートの測定が、図3の装置の存在の下および不在の下で行われている専用型設備の概略図である。
【符号の説明】
【0059】
10 アジャストモジュール
20 カップリングモジュール
30 アジャストモジュール
40 カップリングモジュール
100 インピーダンスマッチング装置
200 分布フィルタ
1000 ケース
ITC 銅線ケーブルによる端末設備
TBE ナローバンド端末
TBL ブロードバンド端末
M 高ビットレートモデム
BO 開放回路分枝
NID 端子盤
FU フィルタ
RA アクセスネットワーク
FD 分布フィルタ
DA マッチング装置
P 接続端子
LT 電話線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナローバンドサービス(アナログ又はRNIS)およびブロードバンドサービス(x−DSL)を提供するアクセスネットワークに接続されている、銅線ケーブルによる端末設備(ITC)の少なくとも一つの高ビットレート伝送チャネルのインピーダンスマッチング装置であり、前記端末設備は、x−DSLタイプの少なくとも一つの高ビットレートモデム(M)と、少なくとも一つの接続端子(P;P1、P2、P3)を備えているものであり、該インピーダンスマッチング装置は:
−アジャストモジュール(10、30)であって、前記少なくとも一つの接続端子(P;P1、P2、P3)に設置され、RC回路で構成されるもので、終端インピーダンスが前記高ビットレートモデム(M)に接続されていないときに、前記接続端子(P;P1、P2、P3)に該終端インピーダンスを挿入するようになっているアジャストモジュールと、
−カップリングモジュール(20、40)であって、前記高ビットレートモデム(M)が前記接続端子(P;P1、P2、P3)に接続されているときに、前記アジャストモジュール(10)と一体化するようになっていることで、インピーダンスがブロードバンドサービスの高ビットレート伝送に対して透過的となるように、接続端子に挿入された前記インピーダンスを変換するようになっているカップリングモジュールとを備えていることを特徴とするインピーダンスマッチング装置。
【請求項2】
アジャストモジュール(10、30)のRC回路が、少なくとも一つの抵抗(R)と、コンデンサ(C1、C2)および少なくとも一つの可変容量ダイオード(D1、D2)を直列で備えていることを特徴とする、請求項1に記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項3】
アジャストモジュール(10、30)が、分布フィルタ(200)と並列に配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項4】
アジャストモジュール(10)が、偶数個の可変容量ダイオード(D1、D2)を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項5】
可変容量ダイオード(D1、D2)が逆直列に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項6】
カップリングモジュール(20)が抵抗(R1、R2)を備え、該抵抗のそれぞれがアジャストモジュール(10)のコンデンサ(C1、C2)に並列に接続されるようになっていることで、可変容量ダイオード(D1、D2)の少なくとも一方に逆方向のバイアスを与えるようになっていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項7】
アジャストモジュール(30)が可変容量ダイオード(D1)を具備することと、カップリングモジュール(40)が整流ダイオード(D2、D3、D4、D5)で構成された整流ブリッジと、抵抗ブリッジ(R3、R4)を具備することを特徴とする、請求項1又は請求項3に記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項8】
抵抗(R1、R2;R3、R4)の少なくとも一つが、2MΩと5MΩの間に含まれる値を有していることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項9】
カップリングモジュール(20、40)が、高ビットレートモデム(M)に接続されていることを特徴とする、請求項6〜請求項8のいずれか一つに記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項10】
高ビットレートモデム(M)がVDSLタイプのモデムであることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか一つに記載のインピーダンスマッチング装置。
【請求項11】
ナローバンドサービスおよびブロードバンドサービスに関するアクセスネットワークに接続され、接続端子(P;P1、P2、P3)と少なくとも一つのx−DSLタイプの高ビットレートモデム(M)を備えた銅線ケーブルによる端末設備(ITC)であり、請求項1〜請求項10のいずれか一つによるインピーダンスマッチング装置を具備することを特徴とする端末設備。
【請求項12】
マッチング装置が、高ビットレートモデム(M)が接続端子(P;P1、P2、P3)に接続されているときに一体化するようになっている二つの個別のモジュール(10、20;30、40)を有しており、第一のモジュール(10;30)がネットワークへのアクセスに対する前記接続端子(P;P1、P2、P3)に設置され、他方のモジュール(20;40)が高ビットレートモデム(M)の回路分枝端子に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の端末設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−527554(P2006−527554A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516260(P2006−516260)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001384
【国際公開番号】WO2004/112365
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(591034154)フランス・テレコム (290)
【Fターム(参考)】