説明

銅表面の処理方法及び配線基板

【課題】銅表面に1,000nmを超す凹凸を形成することなく、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を確保し、各種信頼性を向上させることができる銅表面の処理方法、ならびに当該処理された配線基板を提供する。
【解決手段】銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成する工程、その後、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化して銅表面に酸化銅を形成する工程、その後、前記酸化銅を酸性溶液で溶解する工程、その後、再度前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理して表面に酸化銅を形成する工程、その後、前記酸化銅を、還元剤を含むアルカリ溶液で還元処理して金属銅を形成する工程を有する銅表面の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅表面の処理方法及び当該処理が施される配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の発展は目覚しく、民生機器ではパソコン、携帯電話などの小型化、軽量化、高性能化、高機能化が進められ、産業用機器としては無線基地局、光通信装置、サーバ、ルータなどのネットワーク関連機器など、大型、小型を問わず、同じように機能の向上が求められている。また、情報伝達量の増加に伴い、年々扱う信号の高周波化が進む傾向にあり、高速処理および高速伝送技術の開発が進められている。実装関係についてみると、CPU、DSPや各種のメモリなどのLSIの高速化、高機能化と共に、新たな高密度実装技術としてシステムオンチップ(SoC)、システムインパッケージ(SiP)などの開発が盛んに行われている。このために、半導体チップ搭載用基板やマザーボードも、高周波化、高密度配線化、高機能化に対応するために、配線幅/スペース(L/S)=15μm/15μm以下の微細配線を形成したビルドアップ方式の多層配線基板が使用されるようになってきた。
【0003】
ビルドアップ方式の多層配線基板は、層間絶縁層形成工程と配線形成工程を相互に繰り返して製造される。この製造方法では、配線と絶縁樹脂の接着強度を確保することが重要である。上記に示す特性を満足させるため、従来、下記に示す銅表面処理方法が行われてきた。つまり、特許文献1に示されるように銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与して、銅表面を無光沢化し、更にアンカー効果によって、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。例えば、無機酸および銅の酸化剤からなる主剤と、少なくとも一種のアゾール類および少なくとも一種のエッチング抑制剤からなる助剤とを含む水溶液を用いて銅表面に高さが2.0〜3.0μmの粗化形状を付与する方法がある。
【0004】
また、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与して凹凸を形成することにより、アンカー効果によって、銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。例えば、亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を含有するアルカリ性水溶液を用いて、80℃前後で浸漬することにより、微細な酸化銅の針状結晶を付与する方法がある。その他、特許文献2に示されるように銅表面に微細な酸化銅の針状結晶による凹凸形成後、還元処理を行うことによって、微細な金属銅の針状結晶を付与して、アンカー効果によって、銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。例えば、亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を含有するアルカリ性水溶液を用いて、80℃前後で浸漬することにより酸化銅の微細な針状結晶を付与し、更にその後アミンボラン類の少なくとも一種類とホウ素系薬品を混合した酸性溶液により還元処理を施すことにより、微細な金属銅の針状結晶を付与する方法などがある。更には、特許文献3に示されるように銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成後、銅を酸化して、酸化銅の結晶による凹凸形成後、還元処理を行うことによって、金属銅の結晶によるナノレベルの凹凸を付与して、アンカー効果によって、銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2000−282265号公報
【特許文献2】特許第2656622号公報
【特許文献3】特開2006−249519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与し、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させる第1の従来技術は、銅表面にRz(十点平均表面粗さ)で2.0〜3.0μmの凹凸を形成し、アンカー効果によって接着強度を確保していた。しかし、配線表面の凹凸が1μmを超す粗化形状であるため、このような配線に高周波の電気信号を流すと、表皮効果により電流は配線の表面付近に集中して流れるようになり、伝送損失が大きくなるという問題がある。また、微細な配線幅/スペース(L/S)=25μm/25μm未満の配線になると、処理前と比較し明らかに配線が細くなったり、配線幅のばらつきが大きくなったりするという問題がある。
【0007】
銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与して、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させる第2の従来技術は、配線表面の表面粗さRzが0.1〜1.5μmの凹凸を形成することで、第1の従来技術と同様にアンカー効果によって接着強度を確保していた。しかし、凹凸の高さバラツキが大きく、Rz<0.5μmでは高温・高湿試験時の接着信頼性が低下する問題があり、Rz>1.0μmでは第1の従来技術と同様に伝送損失が大きくなるという問題がある。また、スルーホール接続のめっき工程で、この酸化銅の針状結晶が溶解することにより、スルーホール周辺にピンク色のリング(ピンクリング)が発生し、配線間絶縁距離の短い部分で絶縁信頼性の低下や銅表面と絶縁樹脂間で剥離が発生しやすい。
【0008】
銅表面に微細な金属銅の針状結晶を付与して、銅表面と絶縁樹脂の接着強度を向上させる第3の従来技術は、スルーホール接続のめっき工程でこの金属銅の針状結晶が溶解することは無いため、ピンクリングの発生はない。しかし、第2の従来技術と同様に、Rz<0.5μmでは高温・高湿試験時の接着信頼性が低下する問題があり、Rz>1.0μmでは第1の従来技術と同様に伝送損失が大きくなるという問題がある。
【0009】
また本発明者らは、これら従来技術の問題点を解決するために、特許文献3に開示する銅表面に離散的に貴金属を形成し、その後酸化剤を含むアルカリ溶液で酸化処理して酸化銅を形成し、更にその後、還元剤を含むアルカリ溶液還元処理することにより、Rzが1〜1,000nmの微細な金属銅の結晶を付与して、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させる第4の技術を提案した。しかし、使用する絶縁樹脂によっては高温・高湿試験時の接着強度が低下するという問題があることが分かった。本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善するためになされたものであり、銅表面に1,000nmを超す凹凸を形成することなく、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を確保し、各種信頼性を向上させることができる銅表面の処理方法、ならびに当該処理された配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に関する。
1. 銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成する工程、その後、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化して銅表面に酸化銅を形成する工程、その後、前記酸化銅を酸性溶液で溶解する工程、その後、再度前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理して表面に酸化銅を形成する工程、その後、前記酸化銅を、還元剤を含むアルカリ溶液で還元処理して金属銅を形成する工程を有する銅表面の処理方法。
2. 酸化剤が、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、項1に記載の銅表面の処理方法。
3. 銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、または前記金属を含む合金である、項1または2に記載の銅表面の処理方法。
4. 貴な金属の形成量が、0.001μmol/dm以上かつ5μmol/dm以下である、項1〜3のいずれかに記載の銅表面の処理方法。
5. 銅表面の粗さが、Rzで1nm以上かつ1000nm以下である、項1〜4のいずれかに記載の銅表面の処理方法。
6. 銅配線を有する配線基板において、前記銅配線が、項1〜5のいずれかに記載の銅表面の処理方法より表面処理されてなる銅配線である、配線基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、銅表面に1,000nmを超す凹凸を形成することなく、銅表面と絶縁樹脂との接着強度を確保し、各種信頼性を向上させることができる銅表面の処理方法、ならびに当該処理された配線基板を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。ここでは、本発明の銅表面の処理方法の適用例として、半導体チップ搭載用基板の銅配線の表面処理を一例として説明するが、その他の銅表面の処理方法として同様に適用することができる。
(銅表面の凹凸形成法)
銅表面に貴金属(貴な金属)を離散的に形成し、その後、銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理することで、銅表面に緻密且つ均一な酸化銅の結晶による微細凹凸を形成することができる。また、上記酸化処理後に酸性溶液で処理を行うと、酸化銅の結晶を選択的に除去することで孔状の微細凹凸を形成できる。更にその後再度、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理することで、銅表面に更に酸化銅の結晶密度の高い緻密且つ均一な微細凹凸を形成することができる。また、上記酸化処理後に還元処理を行うことで、緻密且つ均一な金属銅の結晶による微細凹凸を形成できる。また、上記酸化処理後あるいは上記還元処理後、これらの銅の表面処理によって生じる銅表面粗さは、Rzで1nm以上かつ1,000nm以下であることが好ましい。また、Rzで1nm以上かつ100nm以下であることがより好ましく、1nm以上かつ50nm以下であることがさらに好ましい。Rzが1nm未満では、絶縁樹脂等との接着力が低下する傾向があり、Rzが1,000nmを超えると、伝送損失が大きくなる問題が発生しやすくなる傾向がある。また、「緻密且つ均一」とは、銅表面の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により、あるいは集束イオンビーム加工観察装置(FIB)により加工を行い、走査イオン顕微鏡(SIM)像を用いて観察した時に、酸化銅あるいは金属銅あるいは金属銅上に上記めっき皮膜を形成した結晶の大きさおよび高さが1nm以上かつ1,000nm以下で形成され、その形成された結晶が密集しているという意味である。
【0013】
以下では、上記した各処理について詳しく説明する。なお、本発明においては、各処理の前処理として、銅表面の清浄化を行う脱脂処理、酸洗処理あるいはこれらを適宜組み合わせて行うことが好ましい。
(銅表面の貴金属の形成法)
貴金属(貴な金属)を離散的に銅表面に形成する方法としては、特に限定されないが、無電解めっき、電気めっき、置換めっき、スパッタリング、蒸着等により、下地の銅表面を完全に覆うことなく、銅表面に均一に分散するように形成することが好ましい。より好ましくは、置換めっきにより離散的に銅表面に形成する方法である。置換めっきは、銅と貴金属とのイオン化傾向の違いを利用するものであり、これによれば貴金属を容易かつ安価に銅表面に離散的に形成することができる。貴金属としては、特に限定されないが、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、またはこれらの金属を含む合金を用いることが好ましく、特にパラジウムが好ましい。パラジウムが好ましい理由は、置換めっきの際、銅表面にパラジウムを離散的に0.001μmol/dm以上かつ5μmol/dm以下形成することが容易にできるためである。
【0014】
また、銅表面上に離散的に形成する貴金属の形成量は、特に限定されないが、0.001μmol/dm以上かつ5μmol/dm以下であることが好ましい。また、形成量は0.01μmol/dm以上かつ5μmol/dm以下であることがより好ましく、0.1μmol/dm以上かつ4μmol/dm以下であることがさらに好ましい。形成量が0.001μmol/dm未満では、緻密且つ均一な微細凹凸を形成することが困難になる傾向がある。また、後述する無電解めっき処理の際、めっき皮膜を形成することが困難になる傾向にある。5μmol/dmを超えると絶縁樹脂との接着強度が低下する傾向がある。なお、貴金属を離散的に銅表面に形成した量は、王水によって銅表面上の貴金属を溶解させた後、その溶解液を原子吸光光度計で定量分析を行うことにより求めることができる。また、「離散的」とは、銅表面に貴金属が完全に被覆されることなく、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下の量で形成した貴金属が銅表面に分散しているという意味である。
【0015】
(銅表面の酸化処理方法)
本発明では、上記のようにして貴金属を離散的に銅表面に形成した後、当該銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液にて酸化処理する。
上記酸化剤を含むアルカリ性溶液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などを含むアルカリ性溶液に、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩等の酸化剤がさらに含まれるアルカリ性溶液であることが好ましい。上記アルカリ金属やアルカリ土類金属などを含むアルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を水あるいはイオン交換樹脂により処理した水などの溶媒に添加することで得られるものが好ましい。また、上記酸化剤は、より具体的には、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等を用いるのが好ましく、特に、保存安定性、安全性等の取扱い性や価格などの観点から、亜塩素酸ナトリウムが好ましい。また、上記アルカリ性溶液にリン酸塩を添加するとより好ましい。使用できるリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウム等を用いるのが好ましい。さらに、上記アルカリ性溶液に公知の有機酸やキレート剤を添加するとより好ましい。
【0016】
上記酸化剤を含むアルカリ性溶液の酸化剤濃度は、特に限定されないが、1〜100g/Lであることが好ましい。また、当該溶液にリン酸塩を添加する場合には、その濃度が1〜40g/Lとなるように添加することが好ましい。また、当該溶液のpHは、アルカリ性を示す値であればよく、特に限定されないが、11〜13であることが好ましい。なお、pHの調整は、塩酸、硫酸、硝酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を適宜用いて行うことができる。
【0017】
また、銅表面に生成する酸化銅の結晶量は、0.001mg/cm以上かつ0.3mg/cm以下であることが好ましく、0.01mg/cm以上かつ0.2mg/cm以下であることがより好ましく、0.03mg/cm以上かつ0.1mg/cm以下であることが特に好ましい。酸化銅結晶量が0.001mg/cm未満では、絶縁樹脂等との接着力が低下する傾向にあり、0.3mg/cmを超えると伝送損失が大きくなるという問題が発生しやすくなる傾向にある。なお、銅表面に形成した酸化銅結晶量は、電解還元量を測定することにより調べることができる。例えば、酸化処理を施した銅を作用極(陰極)として、0.5mA/cmの一定の電気量を通電し、銅の表面電位が酸化銅の電位から金属銅の電位に完全に変化するまで、即ち−1.0V以下の安定な電位になるまでの時間を測定し、その電解還元量から酸化銅結晶量を求めることができる。
【0018】
また、上記酸化剤を含むアルカリ性溶液により酸化処理を行う際の当該溶液の温度は、特に限定されないが、十分な酸化処理やアルカリ性溶液が与える基材へのダメージを考慮すると、20〜95℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましく、40〜60℃であることが特に好ましい。また、酸化処理時間は、酸化処理液の濃度や液温等を考慮して、所望量の酸化銅結晶が生成するよう適宜決定すればよい。なお、上記酸化処理液による銅表面の酸化処理では、銅表面が短時間で酸化銅の針状結晶に覆われ、酸化反応が停止するため、処理時間を従来技術よりも短くすることが可能である。
【0019】
(酸化処理後の酸性溶液による処理方法)
上記酸化処理により銅表面に形成された酸化銅の結晶による微細凹凸を形成後、酸性溶液にて処理する。上記酸性溶液としては、特に限定されないが、例えば、無機酸として硫酸、塩酸、硝酸が含まれる酸性溶液で処理してもよい。特に、硫酸が含まれる酸性溶液で処理することが好ましい。上記酸性溶液の無機酸の濃度は、特に限定されないが、0.1〜100g/Lであることが好ましい。また、当該溶液のpHは、酸性を示す値であればよく、特に限定されないが、pH2以下であることが好ましい。なお、pHの調整は、塩酸、硫酸、硝酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を適宜用いて行うことができる。また、上記酸性溶液により処理を行う際の当該溶液の温度は、特に限定されないが、使用上の安全性を考慮し且つ酸化銅の結晶を選択的に除去するには、10〜40℃であることが好ましく、15〜35℃であることがより好ましく、20〜30℃であることが特に好ましい。また、酸性溶液による処理時間は、酸性溶液の濃度や液温等を考慮して、酸化銅の結晶を選択的に除去できるよう適宜決定すればよい。
【0020】
(酸性溶液による処理後の再度の酸化処理方法)
本発明では、上記のようにして酸性溶液による処理にて酸化銅の結晶を選択的に除去した後、当該銅表面を再度、酸化剤を含むアルカリ性溶液にて酸化処理する。詳細については上記銅表面の酸化処理方法と同様である。
【0021】
(還元処理方法)
上記酸化処理により銅表面に形成された酸化銅の結晶による微細凹凸は、還元処理により金属銅の微細凹凸にすることが好ましい。この還元処理では、pH9.0から13.5に調整したアルカリ性溶液中に、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、芳香族アルデヒド化合物などを添加した水溶液、次亜リン酸や次亜リン酸塩などを添加した水溶液、ジメチルアミンボランやそれを含む化合物などを添加した水溶液、水素化ホウ素塩やそれを含む化合物などを添加した水溶液等を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、HIST−100(日立化成工業株式会社製、商品名、HIST−100BおよびHIST−100Dを含む)などを上記還元処理用の溶液として用いることがより好ましい。また、ここに示すアルカリ性溶液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などを含むアルカリ性溶液であることが好ましい。さらに詳細に説明すると、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を水あるいはイオン交換樹脂により処理した水などの溶媒に添加したものがより好ましい。
【0022】
(カップリング処理)
上記還元処理後、銅表面と絶縁層(ビルドアップ層等)との接着強度を更に向上させるために、カップリング処理を行ってもよい。カップリング処理に使用するカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用してもよい。中でもシラン系カップリング剤が好ましく、シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イミダゾール基、ビニル基、またはメタクリル基等の官能基を分子中に有するものであることが好ましい。また、上記カップリング剤は、これを含む溶液として使用することができ、当該カップリング剤溶液の調整に使用される溶媒は、特に限定されないが、水、アルコール、ケトン類等を用いることが可能である。また、カップリング剤の加水分解を促進させるために、少量の酢酸や塩酸等の酸を添加することもできる。また、カップリング剤の含有量は、カップリング剤溶液全体に対して、0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%であることがさらに好ましい。カップリング剤による処理は、上記のように調整したカップリング剤溶液に処理対象となる銅を浸漬する、カップリング剤溶液を銅に対しスプレー噴霧もしくは塗布する等の方法により行うことができる。また、上記シラン系カップリング剤で処理した銅は、自然乾燥、加熱乾燥、または真空乾燥により乾燥するが、使用するカップリング剤の種類によっては、乾燥前に水洗または超音波洗浄を行うことも可能である。
【0023】
(腐食抑制処理)
上記還元処理後、銅の腐食を更に抑制するために腐食抑制処理を行うことが好ましい。腐食抑制処理に使用する腐食抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄含有有機化合物または窒素含有有機化合物を少なくとも1種以上含むものが好ましく、メルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のような硫黄原子含有有機化合物、または分子内に−N=またはN=Nまたは−NHを含む窒素含有有機化合物を少なくとも1種以上含むものがより好ましい。
【0024】
上記硫黄含有有機化合物として、より具体的には、例えば、一般式HS−(CH)n−R(但し、式中、nは1から23までの整数、Rは一価の有機基、水素またはハロゲン原子を表し、好ましくは、Rは、置換または未置換のアミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、水素基、チオアルキル基、チオール基、置換されていても良いフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、複素環などであり、nは、4から15までの整数であり、より好ましくは、Rは、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基のいずれかであり、nは、6から12までの整数である。)で表される脂肪族チオール、チアゾールもしくはその誘導体(2−アミノチアゾール、2−アミノチアゾール−4−カルボン酸、アミノチオフェン、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾロール、2,3−ジヒドロイミダゾ〔2,1−b〕ベンゾチアゾール−6−アミン、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸エチル、2−メチルベンゾチアゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール等)、チアジアゾール誘導体(1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、2,5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−メチルメルカプト−5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、2−(エチルアミノ)−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾールなど)、メルカプト安息香酸、メルカプトナフトール、メルカプトフェノール、4−メルカプトビフェニル、メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオウラシル、3−チオウラゾール、2−チオウラミル、4−チオウラミル、2−メルカプトキノリン、チオギ酸、1−チオクマリン、チオクモチアゾン、チオクレゾール、チオサリチル酸、チオチアヌル酸、チオナフトール、チオトレン、チオナフテン、チオナフテンカルボン酸、チオナフテンキノン、チオバルビツル酸、チオヒドロキノン、チオフェノール、チオフェン、チオフタリド、チオフテン、チオールチオン炭酸、チオルチドン、チオールヒスチジン、3−カルボキシプロピルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、2−アミノプロピオン酸、ジチオジグリコール酸、D−システイン、ジ−t−ブチルジスルフィド、チオシアン、チオシアン酸などが好ましい。
【0025】
また、上記窒素含有有機化合物として、より具体的には、例えば、トリアゾール誘導体(1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3−オキシ−1,2,4−トリアゾール、アミノウラゾール等)、テトラゾール誘導体(テトラゾリル、テトラゾリルヒドラジン、1H−1,2,3,4−テトラゾール、2H−1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、1−エチル−1,4−ジヒドロキシ5H−テトラゾール−5−オン、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、テトラゾールメルカプタン等)、オキサゾール誘導体(オキサゾール、オキサゾリル、オキサゾリン、ベンゾオキサゾール、3−アミノ−5−メチルイソオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−アミノオキサゾリン、2−アミノベンゾオキサゾール等)、オキサジアゾール誘導体(1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾロン−5、1,3,4−オキサジアゾロン−5等)、オキサトリアゾール誘導体(1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール等)、プリン誘導体(プリン、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリン、2−アミノ−6−メチルメルカプトプリン、2−メルカプトアデニン、メルカプトヒポキサンチン、メルカプトプリン、尿酸、グアニン、アデニン、キサンチン、テオフィリン、テオブロミン、カフェイン等)、イミダゾール誘導体(イミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、4−アミノ−5−イミダゾールカルボン酸アミド、ヒスチジン等)、インダゾール誘導体(インダゾール、3−インダゾロン、インダゾロール等)、ピリジン誘導体(2−メルカプトピリジン、アミノピリジン等)、ピリミジン誘導体(2−メルカプトピリミジン、2−アミノピリミジン、4−アミノピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノー4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メチルピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、2−ヒドロキシピリミジン、4−メルカプト−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、4−アミノ−2,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン等)、チオ尿素誘導体(チオ尿素、エチレンチオ尿素、2−チオバルビツール酸等)、アミノ酸(グリシン、アラニン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン等)、1,3,4−チオオキサジアゾロン−5、チオクマゾン、2−チオクマリン、チオサッカリン、チオヒダントイン、チオピリン、γ−チオピリングアナジン、グアナゾール、グアナミン、オキサジン、オキサジアジン、メラミン、2,4,6−トリアミノフェノール、トリアミノベンゼン、アミノインドール、アミノキノリン、アミノチオフェノール、アミノピラゾール等があげられる。
【0026】
また、上記腐食抑制剤を含む溶液の調整には、水や有機溶媒を使用することができる。上記有機溶媒の種類は、特に限定はしないが、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジアリルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、フェノールなどの芳香族炭化水素などを用いることができ、これらの溶媒を1種類ないし2種類以上組み合わせて用いることもできる。また、上記酸化剤を含むアルカリ性溶液またはカップリング剤溶液に上記腐食抑制剤を加えて用いることも可能である。
【0027】
また、上記腐食抑制剤を含む溶液の濃度は、0.1〜5000ppmの濃度が好ましく、0.5〜3000ppmがより好ましく、1〜1000ppmであることが特に好ましい。腐食抑制剤の濃度が0.1ppm未満では、イオンマイグレーション抑制効果や、銅表面と絶縁層との接着強度が低下する傾向がある。一方、腐食抑制剤の濃度が5000ppmを超えると、イオンマイグレーション抑制効果は得られるが、銅表面と絶縁層との接着強度が低下する傾向がある。腐食抑制剤を含む溶液による処理時間は、特に限定しないが、腐食抑制剤の種類および濃度に応じて適宜変化させることが好ましい。また、処理後に超音波洗浄を行うことも可能である。
【0028】
(配線基板と半導体パッケージ)
本発明の配線基板は、本発明の銅の表面処理方法を適用してなる配線を有するものである。以下、本発明の配線基板の一実施形態として、半導体チップ搭載用基板を例に挙げ、その一般的な構造、本発明の銅の表面処理方法を適用して半導体チップ搭載用基板を製造する方法、および当該基板を用いた半導体パッケージについて、図面を用いて説明するが、本発明はこれら記載に限定されるものではない。
【0029】
(半導体チップ搭載用基板)
図1に、本発明の半導体チップ搭載用基板の一実施形態の断面模式図を示す。ここでは、ビルドアップ層(層間絶縁層)を片面に2層形成した実施形態で説明するが、ビルドアップ層は必要に応じて両面に形成しても良い(図8参照)。
【0030】
図1に示す半導体チップ搭載用基板は、絶縁層であるコア基板100の、半導体チップが搭載される側に、半導体チップ接続端子及び第1の層間接続端子101を含む第1の配線106aが形成され、コア基板100の他方の側には、第2の層間接続端子103を含む第2の配線106bが形成され、当該第2の層間接続端子103は、コア基板100に形成された第1の層間接続用IVH(インタースティシャルバイアホール)102を介して第1の層間接続端子101と電気的に接続されている。また、上記第2の配線106b上には、ビルドアップ層104が形成され、当該ビルドアップ層104上には第3の層間接続端子を含む第3の配線106cが形成され、当該第3の層間接続端子は、第2の層間接続用IVH108を介して第2の層間接続端子103と電気的に接続されている。さらに、最外層のビルドアップ層上には、マザーボードと接続される外部接続端子107が形成され、外部接続端子107と第3の層間接続端子は第3の層間接続用IVH105を介して電気的に接続されている。なお、配線の形状や各々の接続端子の配置等は特に制限されず、搭載する半導体チップや目的とする半導体パッケージを製造するために、適宜設計可能である。また、半導体チップ接続端子と第1の層間接続端子等を共用することも可能である。更に、最外層のビルドアップ層上には、必要に応じてソルダーレジスト等の絶縁被覆109を設けることもできる。
【0031】
(コア基板)
コア基板の材質は、一定以上の強度と絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、有機基材、セラミック基材、シリコン基材、ガラス基材などを使用することが好ましい。熱膨張係数や絶縁性を考慮すると、セラミック基材やガラス基材を用いることが好ましい。ガラス基材としては、非感光性ガラス基材や感光性ガラス基材を用いることができ、非感光性ガラス基材としては、例えば、ソーダ石灰ガラス(成分例:SiO 65〜75wt%、Al 0.5〜4wt%、CaO 5〜15wt%、MgO 0.5〜4wt%、NaO 10〜20wt%)、ホウ珪酸ガラス(成分例:SiO 65〜80wt%、B 5〜25wt%、Al 1〜5wt%、CaO 5〜8wt%、MgO 0.5〜2wt%、NaO 6〜14wt%、KO 1〜6wt%)等が好ましい。また、感光性ガラスとしては、例えば、LiO−SiO系結晶化ガラスに感光剤として金イオン及び銀イオンを含むものが好ましい。
【0032】
上記有機基板としては、ガラス布に樹脂を含浸させた材料(プリプレグ)を積層した基板や樹脂フィルムを使用するのが好ましい。使用する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂が好ましく、熱硬化性の有機絶縁材料がより好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が好ましい。また、これらの樹脂には充填材を添加することがより好ましい。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0033】
また、コア基板の厚さは、特に限定されないが、100〜800μmであることが、IVH形成性の点で好ましく、更に150〜500μmであることがより好ましい。厚さ100μm未満では、基板の剛性が得にくく反りやねじれが発生しやすくなり、厚さ800μmを超えると、基板全体が厚くなり穴加工が困難になるなどの傾向がある。
【0034】
(ビルドアップ層)
層間絶縁層(ビルドアップ層)104は、絶縁材料からなる層であればよく、その材質は特に限定されない。絶縁材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂が好ましく、熱硬化性の有機絶縁材料を主成分とするものがより好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が好ましい。また、上記絶縁材料には充填材を添加することが好ましい。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0035】
(熱膨張係数)
上記コア基板100の熱膨張係数は、特に限定されないが、半導体チップの熱膨張係数と近似していて、かつビルドアップ層の熱膨張係数と近似していることが好ましく、半導体チップ、コア基板、ビルドアップ層の各々の熱膨張係数をα1、α2、α3(ppm/℃)としたとき、α1≦α2≦α3であることがより好ましい。具体的には、コア基板の熱膨張係数α2は、7〜13ppm/℃であることが好ましく、更に好ましくは9〜11ppm/℃である。また、ビルドアップ層の熱膨張係数α3は、10〜40ppm/℃であることが好ましく、更に好ましくは10〜20ppm/℃であり、特に好ましくは11〜17ppm/℃である。
【0036】
(ヤング率)
ビルドアップ層のヤング率は、1〜5GPaであるのが熱ストレスに対する応力緩和の点で好ましい。ビルドアップ層のヤング率と熱膨張係数は、充填材の添加量で制御することができ、好ましくは、ビルドアップ層の熱膨張係数が10〜40ppm/℃、ヤング率が1〜5GPaとなるように調整する。
【0037】
(配線の配置と端子の形状)
配線の配置は、特に限定されないが、図5や図6(内層配線、層間接続端子等は省略)に示すように、少なくとも半導体チップが搭載される側には、半導体チップ接続端子16(ワイヤボンド端子等)を配置し、その反対面には、マザーボードと電気的に接続される外部接続端子(はんだボール等が搭載される箇所)及びそれらを繋ぐ展開配線、層間接続端子等を配置する。なお、図5は、半導体チップ接続端子16より内側に外部接続端子19を形成したファン−インタイプの半導体チップ搭載用基板であり、図6は、半導体チップ接続端子16の外側に外部接続端子19を形成したファン−アウトタイプの半導体チップ搭載用基板であるが、これらを組み合わせたファン−インアウトタイプでもよい。また、図5および図6において、13は半導体パッケージ領域、14はダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)、15は半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)、17はダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)、18は半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)、20は展開配線を示す。
【0038】
また、半導体チップ接続端子16の形状は、ワイヤボンド接続やフリップチップ接続などが可能であればよく、特に限定されない。また、ファン−アウト、ファン−イン、ファン−インアウトいずれのタイプでも、ワイヤボンド接続やフリップチップ接続などは可能である。さらに必要に応じて、半導体チップと電気的に接続されないダミーパターン21(図6参照)を形成してもかまわない。ダミーパターンの形状や配置も特には問わないが、半導体チップ搭載領域に均一に配置するのが好ましい。これによって、ダイボンド接着剤で半導体チップを搭載する際に、ボイドが発生しにくくなり、信頼性を向上できる。
【0039】
(半導体チップ搭載用基板の形状)
半導体チップ搭載用基板の形状は、特に問わないが、図7に示すようなフレーム形状であることが好ましい。半導体チップ搭載用基板の形状をフレーム形状とすることで、半導体パッケージの組立てを効率よく行うことができる。以下、フレーム形状の半導体チップ搭載用基板の好ましい形態について図7を用いて詳細に説明する。
【0040】
図7に示すフレーム形状の半導体チップ搭載用基板は、半導体パッケージ領域13(1個の半導体パッケージとなる部分)が行及び列に各々複数個等間隔で格子状に配置されて1つのブロック23を形成しており、さらに当該ブロックが行及び列に各々複数個等間隔で格子状に配置されている。なお、図7では、説明のために最低限必要な2個のブロックを示し、その他のブロックは省略してある。ここで、半導体パッケージ領域間のスペース部の幅は、50〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。さらに、後に半導体パッケージを切断するときに使用するダイサーのブレード幅と同じにするのが最も好ましい。
【0041】
上記のように半導体パッケージ領域を配置することで、半導体チップ搭載用基板の有効利用が可能になる。また、半導体チップ搭載用基板の端部には、位置決めのマーク等11が形成されていることが好ましく、貫通穴によるピン穴であることがより好ましい。ピン穴の形状や配置は、形成方法や半導体パッケージの組立て装置に合うように選択すればよい。
【0042】
さらに、前記半導体パッケージ領域間のスペース部や前記ブロックの外側には、補強パターン24が形成されていることが好ましい。補強パターンは、別途作製し半導体チップ搭載用基板と貼り合わせてもよいが、半導体パッケージ領域に形成される配線と同時に形成された金属パターンであることが好ましく、さらに、その表面には、配線と同様のニッケル、金などのめっきが施されているか、絶縁被覆が施されていることがより好ましい。補強パターンがこのような金属の場合は、電解めっきの際のめっきリードとして利用することも可能である。また、ブロックの外側には、ダイサーで切断する際の切断位置合わせマーク25が形成されていることが好ましい。
【0043】
(半導体チップ搭載用基板の製造方法)
以下、信頼性の高い半導体パッケージを得る上で好ましい半導体チップ搭載用基板の製造方法の一実施形態を、図2(a)〜(g)の断面模式図を参照しながら工程ごとに説明する。ただし、製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。
【0044】
(工程a)
(工程a)は、図2(a)に示すように、コア基板100上に第1の配線106aを作製する工程である。配線の形成方法としては、例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法などを挙げることができ、目的に合わせて選択することが好ましい。なお、第1の配線106aは、第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子(半導体チップと電気的に接続される部分)を含んでいるため、微細配線の形成に有利なセミアディティブ法を用いることが好ましい。

【0045】
サブトラクティブ法)
上記サブトラクティブ法は、コア基板表面またはビルドアップ層上に銅層を形成し、銅層上の配線となる箇所にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した銅箔をエッチングにより除去し、配線を形成する方法である。この銅層は、例えば、スパッタリング、蒸着、めっき等により薄膜銅を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行う方法や銅箔を貼り付ける方法などにより形成することができる。また、エッチングレジストのパターンは、例えば、レジストインクをシルクスクリーン印刷したり、エッチングレジスト用ネガ型感光性ドライフィルムを銅箔の上にラミネートして、その上に配線形状に光を透過するフォトマスクを重ね、紫外線で露光し、露光しなかった箇所を現像液で除去したりすることで形成することができる。また、エッチング時に用いるエッチング液としては、塩化第二銅と塩酸の溶液、塩化第二鉄溶液、硫酸と過酸化水素の溶液、過硫酸アンモニウム溶液など、通常の配線板に用いる化学エッチング液を用いることができる。また、エッチングレジストは、通常の配線板に用いることのできるエッチングレジスト材料を使用することが好ましい。
【0046】
(アディティブ法)
上記アディティブ法は、コア基板またはビルドアップ層上の必要な箇所にのみ、めっきを行うことで配線を形成する方法である。より具体的には、例えば、コア基板上に無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、無電解銅めっき液に浸漬し、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ、無電解めっきを行い、配線形成する。
【0047】
(セミアディティブ法)
上記セミアディティブ法は、コア基板表面またはビルドアップ層上に、薄い銅層(シード層)を形成し、その後、電解銅めっきで必要な配線を形成した後、不要な薄い銅層をエッチングで除去する方法であり、L/S=35μm/35μm以下の微細な配線を形成するプロセスとしては最適である。より具体的には、例えば、コア基板表面に、蒸着、めっき、スパッタリングまたは銅箔を貼り合わせるなどの方法によりシード層(薄膜銅)を形成した後、当該シード層上にめっきレジストを形成し、電解銅めっきで必要な配線を形成し、めっきレジストを除去した後、不要な薄い銅層をエッチング方法により除去し、配線形成する。
【0048】
上記シード層の形成は、コア基板またはビルドアップ層に接着機能がある場合は、銅箔をプレスやラミネートによって貼り合わせることで行うことが望ましいが、薄い銅箔を直接貼り合わせることは非常に困難であるため、通常、厚い金属箔を張り合わせた後にエッチング等により薄くしたり、キャリア付銅箔を貼り合わせた後にキャリア層を剥離したりすることで、シード層を形成している。具体的には、例えば、キャリア銅/ニッケル/薄膜銅の三層銅箔の、キャリア銅をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液で除去し、薄膜銅をシード層とする方法や厚み9〜18μmの銅箔を貼り付け、エッチングにより厚み5μm以下になるように均一に薄くし、シード層とする方法が挙げられる。また、後者の形成方法に用いるキャリア付銅箔としては、例えば、アルミ、銅、絶縁材料などをキャリアとしたピーラブル銅箔などを挙げることができ、厚み5μm以下のシード層を形成する際、好ましい。
【0049】
また、上記スパッタリングによるシード層の形成は、例えば、コア基板表面またはビルドアップ層上にスパッタリングにより下地金属と厚み200〜500nmの銅層を形成し、シード層とすることが好ましい。上記銅層を形成するために使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタ、3極スパッタ、4極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ミラートロンスパッタ等を用いることができる。また、下地金属は、密着を確保するために、例えば、Cr、Ni、Co、Pd、Zr、NiとCrの合金、NiとCuの合金等の金属を、厚み5〜50nmとなるようにスパッタリングして形成することが好ましい。また、上記めっきによるシード層の形成は、例えば、コア基板表面またはビルドアップ層上に無電解銅めっきにより0.5〜3μmの厚みのめっき銅を形成する方法が挙げられる。
【0050】
(工程b)
(工程b)は、図2(b)に示したように、前記第1の層間接続端子101と、後述する第2の配線とを接続するための第1の層間接続用IVH102(バイアホール)を形成する工程である。バイアホールは、コア基板またはビルドアップ層に接続用の穴を設けた後、層間を電気的に接続するために、必要に応じてデスミア処理を行った後、当該穴を導電性ペーストやめっき等で充填、導電化して形成することができる。穴の加工方法としては、パンチやドリル等の機械加工、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザ加工、薬液による化学エッチング加工、プラズマを用いたドライエッチング法などを適用することができる。コア基板100が非感光性基材の場合、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザ光をバイアホールとなる箇所に照射することで形成することが好ましい。生産性及び穴品質の観点からは、COレーザを用いることが好ましく、IVH径が30μm未満の場合には、レーザ光を絞ることが可能なYAGレーザが適している。
【0051】
また、コア基板100が感光性基材の場合、バイアホールとなる箇所以外の領域をマスクし、紫外光を照射した後、熱処理とエッチングによりバイアホールとなる穴を形成する。また、コア基板100が、有機溶剤等の薬液による化学エッチング加工が可能な基材の場合は、化学エッチングによってバイアホールとなる穴を形成することが好ましい。上記のようにバイアホールとなる穴を形成し穴を導電性のペーストやめっきなどにより導電化し、バイアホールとする。
【0052】
また、ビルドアップ層のバイアホール形成方法としては、予めビルドアップ層に導電性ペーストやめっきなどで導電層を形成し、これをコア基板にプレス等で積層する方法なども好ましい。
【0053】
(工程c)
(工程c)は、図2(c)に示すように、コア基板100の、第1の配線106aが形成された面の反対面に第2の配線106bを形成する工程である。第2の配線106bは、上記(工程a)における第1の配線と同様にして形成することができる。なお、第2の配線106bは第2の層間接続端子103を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いることが好ましい。
【0054】
(工程d)
(工程d)は、図2(d)に示すように前記第2の配線106bを形成した面にビルドアップ層(層間絶縁層)104を形成する工程である。ここでは、まず、第2の配線106b表面を、脱脂処理を行い、塩酸あるいは硫酸洗浄を行うことが好ましい。次に、貴金属を、離散的に銅配線表面(第2の配線106b上)に形成し、酸化剤を含むアルカリ性溶液に浸漬することにより酸化処理を行い、その後、酸性溶液による処理を行い、その後、再度酸化処理を行い、その後、還元処理を行う。銅配線表面の粗さRzが1nm以上かつ1,000nm以下となるようにすることが好ましい。
【0055】
次に、コア基板100表面及び第2の配線106b表面に、ビルドアップ層104を形成する。ビルドアップ層104の絶縁材料としては、前記したように熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性材料を主成分とするのが好ましい。ビルドアップ層104の形成は、絶縁材料がワニス状の場合には、印刷やスピンコート等により、絶縁材料がフィルム状の場合には、ラミネートやプレス等により行うことが好ましい。絶縁材料が熱硬化性材料を含む場合は、さらに加熱硬化させることが好ましい。
【0056】
(工程e)
(工程e)は、図2(e)に示したように、前記ビルドアップ層104に第2の層間接続用のIVH(バイアホール)108を形成する工程であり、その形成手段としては、上記(工程b)における第1の層間接続用IVH102と同様に行うことが好ましい。
【0057】
(工程f)
(工程f)は、図2(f)に示したように、前記第2のIVH108が形成されたビルドアップ層上に、第3の配線106cを形成する工程である。第3の配線106cは、上記(工程a)における第1の配線106aと同様にして形成することができる。さらに、(工程d)から(工程f)までを繰り返して、図2(g)に示すようにビルドアップ層104を2層以上作製してもよい。この場合、最外のビルドアップ層に形成された、第3の層間接続用IVH105を含む配線は、マザーボードまたは他の半導体パッケージと電気的に接続するための外部接続端子107となる。この外部接続端子には、ニッケル、金めっきを順次施すことができ、必要に応じてニッケル、パラジウム、金めっきとしても良い。このめっきは、無電解めっきまたは電解めっきのどちらを用いてもよいが、特に微細配線や高密度配線の基板では、無電解めっきが好ましい。
【0058】
(工程g)
(工程g)は、図2(g)に示すように、外部接続端子以外の配線等を保護するための絶縁被覆109を形成する工程である。絶縁被覆材としては、熱硬化型や紫外線硬化型のソルダーレジストを用いることができるが、レジスト形状を精度良く仕上げることができる紫外線硬化型のものが好ましい。絶縁被覆パターン形成は、ワニス状の材料であれば印刷で行うことも可能であるが、より精度を確保するためには、感光性のソルダーレジスト、カバーレイフィルム、フィルム状レジストを用いることが好ましい。材質としては、エポキシ系、ポリイミド系、エポキシアクリレート系、フルオレン系の材料を用いることができる。なお、このような絶縁被覆は硬化時の収縮があるため、片面だけに形成すると基板に大きな反りを生じやすい。そこで、必要に応じて半導体チップ搭載用基板の両面に絶縁被覆を形成することもできる。さらに、反りは絶縁被覆の厚みによって変化するため、両面に絶縁被覆を形成する場合には、それぞれの厚みを反りが発生しないように調整することがより好ましい。この場合、予備検討を行い、両面の絶縁被覆の厚みを決定することが好ましい。また、薄型の半導体パッケージを得るためには、絶縁被覆の厚みが50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0059】
(半導体パッケージ)
本発明の半導体パッケージは、本発明の配線基板(半導体チップ搭載用基板)に半導体チップを搭載してなるものである。図3に、本発明の半導体パッケージの一実施形態(フリップチップタイプ半導体パッケージ)の断面模式図を示す。この半導体パッケージは、図2(g)の半導体チップ搭載用基板の所定位置に半導体チップ111が搭載され、外部接続端子107に、マザーボードとの電気的な接続を行うためのはんだボール114が形成されているもので、半導体チップと半導体チップ接続端子は接続バンプ112によりフリップチップ接続されている。また、半導体チップと半導体チップ搭載用基板の間はアンダーフィル材113で封止されている。アンダーフィル材の熱膨張係数は、半導体チップ及びコア基板100の熱膨張係数と近似していることが好ましいがこれに限定したものではない。さらに好ましくは(半導体チップの熱膨張係数)≦(アンダーフィル材の熱膨張係数)≦(コア基板の熱膨張係数)である。また、半導体チップの搭載には、異方導電性フィルム(ACF)や導電性粒子を含まない接着フィルム(NCF)を用いて行うこともでき、この場合、アンダーフィル材で封止する必要がなく、好ましい。さらに、半導体チップを搭載する際に超音波を併用すれば、電気的な接続が低温でしかも短時間で行うことができる。また、上記はんだボールは、共晶はんだやPbフリーはんだを用いることができる。上記はんだボールを外部接続端子107に固着する方法としては、例えば、Nリフロー装置などを用いることができるが、これに限定されない。
【0060】
図4には、ワイヤボンドタイプ半導体パッケージの実施形態の断面図を示す。半導体チップの搭載には、一般のダイボンドペーストも使用できるが、ダイボンドフィルム117を用いることがより好ましい。半導体チップと半導体チップ接続端子との電気的な接続は金ワイヤ115を用いたワイヤボンドで行う。また、半導体チップの封止は、半導体用封止樹脂116をトランスファモールドで行うことができる。この場合、封止領域は、必要な部分だけ、例えば、半導体チップのフェース面だけを封止しても良いが、図4のように半導体パッケージ領域全体を封止することが望ましい。これは、半導体パッケージ領域を行及び列に複数個配列した半導体チップ搭載用基板において、基板と封止樹脂を同時にダイサー等で切断し、個々の半導体パッケージを得る場合に特に有効な方法である。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
本発明の銅表面の処理を適用して作製した半導体パッケージの信頼性を評価するために、以下のようにして半導体パッケージサンプルを作製した。
(工程a)
コア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。なおスパッタリングは、日本真空技術株式会社製装置型番MLH−6315を用いて、以下に示した条件1で行った。
条件1
電流:3.5A
電圧:500V
アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:5nm/秒
その後、第1の配線106aとなる部分にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングし、エッチングレジストを除去することで、第1の配線106a(第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子を含む)を形成した。
【0062】
(工程b)
第1の配線106aが形成されたガラス基板の第1の配線106aと反対面から第1の層間接続端子101に到達するまで、レーザで穴径50μmのIVHとなる穴を形成した。レーザにはYAGレーザLAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数4kHz、ショット数50、マスク径0.4mmの条件でIVHとなる穴の形成を行った。ついで、穴内のデスミア処理を行った。その後、当該穴に導電性ペーストMP−200V(日立化成工業株式会社製、商品名)を充填して、160℃30分で硬化し、ガラス基板上の第1の層間接続端子101と電気的に接続し、第1の層間接続用IVH102(バイアホール)を形成した。
【0063】
(工程c)
(工程b)で形成された第1の層間接続用IVH102(第1のバイアホール)と電気的に接続するために、ガラス基板の、第1の配線106aと反対側の面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。スパッタリングは、(工程a)と同様に行った。その後、(工程a)と同様に第2の配線106bの形状にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングして、エッチングレジストを除去することで、第2の配線106b(第2の層間接続端子103を含む)を形成した。
【0064】
(工程d)
(工程d−1)
(工程c)で形成した第2の配線106b側の配線表面を、200ml/Lに調整した酸性脱脂液Z−200(ワールドメタル社製、商品名)に、液温50℃で2分間浸漬した後、液温50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、さらに1分間水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した。
【0065】
(工程d−2)
上記前処理工程を経た第2の配線106bを、置換パラジウムめっき液SA−100(日立化成工業株式会社、製品名)に30℃で3分間浸漬して、銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを1.0μmol/dm施し、1分間水洗した後、さらに、リン酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に0.08mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。この後、1分間水洗した後、硫酸2g/Lを含む酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去した。この後再度、リン酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に50℃で1分間浸漬することで、第2の配線106b表面に0.10mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。この後、1分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、第2の配線106b表面に金属銅の結晶を形成した。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥した。
【0066】
(工程d−3)
次に、第2の配線106b側の面に層間絶縁層(ビルドアップ層)104を次のように形成した。すなわち、ビルドアップ材AS−ZII(日立化成工業株式会社、製品名)を真空ラミネートによって、真空引き時間30秒、加圧40秒、0.5MPaの条件で、第2の配線106b側の面にビルドアップ層をラミネートし、厚み45μmの樹脂層を形成した後、オーブン乾燥機にて180℃で120分間保持することにより熱硬化し、ビルドアップ層104を形成した。
【0067】
(工程e)
上記(工程d−3)で形成したビルドアップ層104の表面から第2の層間接続用端子103に到達するまで、レーザで穴径50μmのIVHとなる穴を形成した。レーザにはYAGレーザLAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数4kHz、ショット数20、マスク径0.4mmの条件でIVHとなる穴の形成を行った。その後、デスミア処理を行った。デスミア処理方法としては、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社、製品名)に80℃で3分浸漬後、3分間水洗した。その後、デスミア液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社、製品名)に80℃で5分浸漬後、3分間水洗した。次いで、還元液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社、製品名)に40℃で3分浸漬後、3分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0068】
(工程f)
上記(工程d−3)で形成したビルドアップ層104上に第3の配線106c及び第2のIVH108を形成するために、ビルドアップ層104上にスパッタリングにより、厚さ20nmのNi層(下地金属)を形成し、さらに当該Ni層上に厚さ200nmの薄膜銅層を形成することで、シード層を形成した。スパッタリングは、日本真空技術株式会社製MLH−6315を用いて以下に示した条件2で行った。
条件2
(Ni層)
電流:5.0A
電流:350V
電圧アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:0.3nm/秒
(薄膜銅層)
電流:3.5A
電圧:500V
アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:5nm/秒
【0069】
次に、シード層上(薄膜銅層上)に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚10μmのめっきレジスト層を形成した。ついで、めっきレジスト層を1000mJ/cmの条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、L/S=10μm/10μmのレジストパターンを形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ約5μmの第3の配線106cを形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線パターンを形成した。
【0070】
(工程g)
この後、(工程d)〜(工程f)までを再度繰り返し、ビルドアップ層及び外部接続端子107を含む最外層の配線をさらに一層形成した。最後にソルダーレジスト109を形成して、その後、外部接続端子107および半導体チップ接続端子に金めっき処理を施し、図1(1パッケージ分の断面図)、図5(1パッケージ分の平面図)、及び図7(半導体チップ搭載用基板全体図)に示すようなファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載用基板を作製した。
【0071】
(工程h)
前記(工程a)〜(工程g)により作製された半導体チップ搭載用基板の半導体チップ搭載領域に、接続バンプ112が形成された半導体チップ111を、フリップチップボンダを用いて超音波を印加しながら必要な数だけ搭載した。さらに、半導体チップ搭載用基板と半導体チップの隙間に、半導体チップ端部からアンダーフィル材113を注入し、オーブンを用いて80℃で1時間の1次硬化及び150℃で4時間の2次硬化を行った。次に、外部接続端子107に直径0.45mmの鉛・錫共晶はんだボール114を、Nリフロー装置を用いて融着した。最後に、幅200μmのブレードを装着したダイサーで半導体チップ搭載用基板を切断し、図3に示す半導体パッケージを作製した。
【0072】
(実施例2)
(実施例1)の(工程d−2)において、硫酸2g/Lを含む酸性溶液のかわりに塩酸2g/Lを含む酸性溶液で処理した以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0073】
(実施例3)
(実施例1)の(工程d−2)において、硫酸2g/Lを含む酸性溶液のかわりに硝酸2g/Lを含む酸性溶液で処理した以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0074】
(比較例1)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきを行わずに、第2の配線106b表面を酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、当該配線表面に0.50mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥した以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0075】
(比較例2)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきを行わずに、第2の配線106b表面を酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、当該配線106b表面に0.50mg/cmの酸化銅の結晶を形成し、さらにこの後、5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬する還元処理工程を行った。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥した以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0076】
(比較例3)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきおよび酸化処理を行わずに、第2の配線106b表面をマイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック株式会社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬した。その後、1分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0077】
(比較例4)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)において、第2の配線106bを、置換パラジウムめっき液SA−100(日立化成工業株式会社、製品名)に30℃で3分間浸漬して、銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを1.0μmol/dm施し、1分間水洗した後、さらに、リン酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に0.07mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。さらにこの後、5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬する還元処理工程を行った。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥する工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0078】
(比較例5)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)の工程を行わなかった。すなわち、凹凸形成処理を行わなかった。それ以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0079】
(比較例6)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきを行わずに、第2の配線106b表面を酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、当該配線表面に0.50mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。その後、1分間水洗した後、硫酸2g/Lを含む酸性溶液に25℃で30秒浸漬することで、形成された酸化銅の結晶を選択的に除去した。この後再度、酸化処理液に85℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に0.90mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。この後、1分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、第2の配線106b表面に金属銅の結晶を形成した。その後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥した以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用の半導体チップ搭載用基板及び半導体パッケージを作製した。
【0080】
(実施例4)
本発明の銅表面処理後における銅表面の接着性、平滑度を評価するために、18μmの電解銅箔GTS−18(古河サーキットフォイル株式会社製、商品名)を5cm×8cm(接着試験用、銅表面平滑度評価用)に切り出し、各電解銅箔の片面(S面:シャイニー面)に、実施例1の(工程d−1)および(工程d−2)に記載された配線表面に対する各表面処理を施し、電解銅箔の試験片を作製した。
【0081】
(実施例5)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0082】
(実施例6)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0083】
(比較例7)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0084】
(比較例8)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0085】
(比較例9)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0086】
(比較例10)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0087】
(比較例11)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例5に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0088】
(比較例12)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例6に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例4と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0089】
(実施例7)
(工程d)における本発明の銅表面の処理によって、配線間の絶縁抵抗値を評価するために、以下のような評価用基板を作製した。
(工程a’)
図9および図10に示すコア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面に層間絶縁層104を次のように形成した。すなわち、シアネートエステル系樹脂組成物の絶縁ワニスをスピンコート法により、条件1500rpmで、ガラス基板上に塗布し、厚み20μmの樹脂層を形成した後、常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、230℃で80分間保持することにより熱硬化し、層間絶縁層104を形成した。その後、実施例1の(工程f)と同様に、スパッタリングにより、厚さ20nmのNi層を形成し、さらに当該Ni層上に厚さ200nmの銅薄膜118のみを形成した。
【0090】
次に、銅薄膜上に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚10μmのめっきレジスト層を形成した。ついで、めっきレジスト層を1000mJ/cmの条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、レジストパターン119を形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ約5μmの配線106を形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線106を形成した。
【0091】
(工程d’)
上記(工程a’)で形成した配線106に対し、実施例1の(工程d−1)および(工程d−2)および(工程d−3)に記載された各表面処理(前処理、パラジウム形成および酸化処理および還元処理、無電解ニッケル−Pめっき処理)を施した後、図9に示す層間絶縁層(ビルドアップ層)104と図10に示すソルダーレジスト109をそれぞれ形成し、図11に示すL/S=5μm/5μm、図12に示すL/S=10μm/10μmの評価用基板を作製した。
【0092】
(実施例8)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0093】
(実施例9)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0094】
(比較例13)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0095】
(比較例14)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0096】
(比較例15)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0097】
(比較例16)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0098】
(比較例17)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例5に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0099】
(比較例18)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例6に記載された配線表面に対する各表面処理と同様の表面処理を施した以外は、実施例7と同様に評価用基板を作製した。
【0100】
以上のように作製した各種試験用サンプルについて、以下のようにして各評価試験を行った。
(半導体パッケージの信頼性試験)
実施例1〜3及び比較例1〜6に記載された各々の半導体パッケージサンプルに対して吸湿処理を行った後、到達温度240℃、長さ2mのリフロー炉に0.5m/分の条件で各サンプルを流して、リフローを行った。その後、各サンプルについてクラック発生の有無を調べ、発生した場合をNGとした。結果を表1に示す。
また、各々の半導体パッケージサンプルを厚さ0.8mmのマザーボードに実装し、−55℃、30分〜125℃、30分の条件で温度サイクル試験を行い、500サイクル目、1000サイクル目、1500サイクル目に、ヒューレット・パッカード(HP)社製マルチメータ3457Aを用い、配線の導通抵抗値を測定した。測定した抵抗値が初期抵抗値より10%以上変化した場合をNGとした。結果を表1に示す。但し、比較例3については、配線精度を維持することができず、試験基板を作製することができなかった。
【0101】
(接着性試験1)
実施例4〜6及び比較例7〜12で作製した電解銅箔とエポキシ系樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグE−679(日立化成工業株式会社、商品名)を積層し、3.0MPaの圧力で常温(25℃)から5℃/minの昇温速度で190℃まで加熱し、190℃において2時間保持することにより積層接着し、接着性試験用基板1を作製した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(プリプレグ)と接着している。ついで、上記で得た各接着性試験用基板1について、初期(0時間)、150℃で120時間の高温放置、150℃で240時間の高温放置、121℃、0.2MPaで48時間のPCT放置、121℃、0.2MPaで96時間のPCT放置を行った。
【0102】
その後、厚さ0.8mmの銅張り積層板の片面を、化学エッチング粗化処理液HIST−7300(日立化成工業株式会社製)を用いて粗化処理した銅表面に、エポキシ系樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグと、さらに最外層に上記の初期および高温放置、PCT放置した接着性試験用基板1の樹脂側を上記のプリプレグと合わさるように積層し、3.0MPaの圧力で常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で220℃まで加熱し、220℃において2時間保持することにより積層接着し、接着性試験用基板2を作製した。ついで、上記で得た各接着性試験用基板2について、幅5mmの粘着テープを接着性試験用基板1上に張り合わせ後、200g/Lの過硫酸アンモニウム溶液のエッチング液に浸漬し、張り合わせた以外の銅を全てエッチングした後、幅5mmの電解銅箔と絶縁樹脂との界面の接着性を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。ピール強度の値が400N/m以上の値を示した場合を○、400N/m未満の値を示した場合を×とした。結果を表2に示す。
【0103】
(接着性試験2)
実施例4〜6及び比較例7〜12で作製した電解銅箔とエポキシ系樹脂組成物およびポリイミド系樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグI−671(日立化成工業株式会社、商品名)を積層し、3.0MPaの圧力で常温(25℃)から5℃/minの昇温速度で190℃まで加熱し、190℃において3時間保持することにより積層接着し、接着性試験用基板1を作製した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(プリプレグ)と接着している。ついで、上記で得た各接着性試験用基板1について、初期(0時間)、150℃で120時間の高温放置、150℃で240時間の高温放置、121℃、0.2MPaで48時間のPCT放置、121℃、0.2MPaで96時間のPCT放置を行った。
【0104】
その後、厚さ0.8mmの銅張り積層板の片面を、化学エッチング粗化処理液HIST−7300(日立化成工業株式会社製)を用いて粗化処理した銅表面に、エポキシ系樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグと、さらに最外層に上記の初期および高温放置、PCT放置した接着性試験用基板1の樹脂側を上記のプリプレグと合わさるように積層し、3.0MPaの圧力で常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で220℃まで加熱し、220℃において2時間保持することにより積層接着し、接着性試験用基板2を作製した。ついで、上記で得た各接着性試験用基板2について、幅5mmの粘着テープを接着性試験用基板1上に張り合わせ後、200g/Lの過硫酸アンモニウム溶液のエッチング液に浸漬し、張り合わせた以外の銅を全てエッチングした後、幅5mmの電解銅箔と絶縁樹脂との界面の接着性を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。ピール強度の値が400N/m以上の値を示した場合を○、400N/m未満の値を示した場合を×とした。結果を表3に示す。
【0105】
(銅表面平滑度評価試験)
実施例4〜6及び比較例7〜12で作製した電解銅箔の表面処理を施した面側の表面粗さ(Rz)を簡易式原子間力顕微鏡(AFM) Nanopics2100を用いて、以下に示した条件3で測定した。
条件3
測定長さ:1μm
SCAN SPEED:1.35μm/sec
FORCE REFARENCE:160
Rzが1nm以上かつ100nm以下のものを◎、Rzが100nmを超えかつ1000nm以下のものを○、Rzが1nm未満または1000nmを超えるものを△とした。結果を表4に示す。
【0106】
(配線への銅表面処理による配線間の絶縁性)
実施例7〜9及び比較例13〜18に記載された各評価用基板について、以下のようにして、L/S=5μm/5μmおよびL/S=10μm/10μmの配線間の短絡および配線の断線が無い評価基板を選び、配線間の絶縁抵抗値を測定した。ただし、比較例15の評価基板については、配線精度を維持することができなかったため、測定を行わなかった。まず、アドバンテスト株式会社社製R−8340A型デジタル超高抵抗微小電流計を用いて、配線間に室温でDC5Vの電圧を30秒間印加し、配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、1GΩ以下の絶縁抵抗測定には、株式会社ヒューレット・パッカード社製デジタルマルチメータ3457Aを用いた。次に、85℃・相対湿度85%に保った恒温恒湿槽中で、配線間に連続的にDC5Vの電圧を印加し、24h、48h、96h、200h、500h、1,000h後に上記と同様に配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、恒温恒湿槽は株式会社日立製作所製EC−10HHPS型恒温恒湿槽を用い、投入後1000時間まで測定した。
以上のようにして測定した評価基板について、絶縁抵抗値の最小値が、1GΩ未満の場合には×とし、1GΩ以上の場合には○とした。結果を表5、表6に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
表1に示すように、実施例1〜3で作製した半導体パッケージについては、極めて良好な信頼性を示した。また、表2、表3に示すように、実施例4から6で作製した電解銅箔は、緻密且つ均一な数十ナノレベルの凹凸をその表面に有することで、その銅表面と絶縁層との150℃・240h放置後および1211℃・2atm・96h放置後の接着強度(ピール強度)は、400N/m以上であり良好であった。また、表4および表5に示すように、実施例7から9で作製した評価基板における配線間絶縁信頼性は、L/S=5μm/5μmおよびL/S=10μm/10μmのいずれにおいても極めて良好であった。一方、従来技術及び銅表面処理を行わなかったものでは、比較例に示したように、半導体パッケージの信頼性、平滑性、接着性、配線間絶縁信頼性試験による特性の全てを満足することはできなかった。従って、本願発明による銅表面理を行うことにより、当該銅表面と絶縁層との接着性、配線間絶縁信頼性、微細配線形成に優れた配線板及び半導体チップ搭載用基板、さらに耐リフロー性、温度サイクル性に優れた半導体パッケージを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態が適用される半導体チップ搭載用基板の断面図である。
【図2】(a)〜(g)は本発明の半導体チップ搭載用基板の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図3】本発明の一実施形態が適用されるフリップチップタイプ半導体パッケージの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態が適用されるワイヤボンドタイプ半導体パッケージの断面図である。
【図5】本発明のファン−インタイプ半導体チップ搭載用基板の平面図である。
【図6】本発明のファン−アウトタイプ半導体チップ搭載用基板の平面図である。
【図7】本発明の半導体チップ搭載用基板のフレーム形状を表す平面図である。
【図8】本発明の一実施形態が適用される半導体チップ搭載用基板の断面図である。
【図9】(a’)〜(d’)は本発明の試験用評価基板製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図10】(a’)〜(d’)は本発明の試験用評価基板製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図11】本発明の一実施形態が適用される電食試験用評価基板の平面図である。
【図12】本発明の一実施形態が適用される電食試験用評価基板の平面図である。
【符号の説明】
【0115】
11.位置決めマーク(位置合わせ用ガイド穴)
13.半導体パッケージ領域
14.ダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)
15.半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)
16.半導体チップ接続端子
17.ダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)
18.半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)
19.外部接続端子
20.展開配線
21.ダミーパターン
22.半導体チップ搭載用基板
23.ブロック
24.補強パターン
25.切断位置合わせマーク
100 コア基板
101 第1の層間接続端子
102 第1の層間接続用IVH(バイアホール)
103 第2の層間接続端子
104 層間絶縁層(ビルドアップ層)
105 第3の層間接続用IVH(バイアホール)
106 配線
106a 第1の配線
106b 第2の配線
106c 第3の配線
107 外部接続端子
108 第2の層間接続用IVH(バイアホール)
109 絶縁被覆(ソルダーレジスト)
111 半導体チップ
112 接続バンプ
113 アンダーフィル材
114 はんだボール
115 金ワイヤ
116 半導体用封止樹脂
117 ダイボンドフィルム
118 銅薄膜
119 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成する工程、その後、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化して銅表面に酸化銅を形成する工程、その後、前記酸化銅を酸性溶液で溶解する工程、その後、再度前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理して表面に酸化銅を形成する工程、その後、前記酸化銅を、還元剤を含むアルカリ溶液で還元処理して金属銅を形成する工程を有する銅表面の処理方法。
【請求項2】
酸化剤が、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の銅表面の処理方法。
【請求項3】
銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、または前記金属を含む合金である、請求項1または2に記載の銅表面の処理方法。
【請求項4】
貴な金属の形成量が、0.001μmol/dm以上かつ5μmol/dm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の銅表面の処理方法。
【請求項5】
銅表面の粗さが、Rzで1nm以上かつ1000nm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の銅表面の処理方法。
【請求項6】
銅配線を有する配線基板において、前記銅配線が、請求項1〜5のいずれかに記載の銅表面の処理方法より表面処理されてなる銅配線である、配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−84653(P2009−84653A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257431(P2007−257431)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】