説明

銅配線の形成方法、配線基板の製造方法および配線基板

【課題】銅配線の導電性を向上させるとともに、経時変化による劣化を抑制することができ銅配線の形成方法、配線基板の製造方法および配線基板を提供することを目的とする。
【解決手段】粒子径が100nm以上の銅粒子14を分散させた分散液12を塗布し、基板10上に配線パターンを形成するパターン形成工程と、配線パターンを150℃未満の温度で乾燥を行なう乾燥工程と、乾燥工程後の配線パターンを加圧する加圧工程と、加圧工程後の配線パターンを加熱する加熱工程と、加熱工程後の配線パターンを還元処理する還元処理工程と、を有することを特徴とする銅配線の形成方法、配線基板の製造方法および配線基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線の形成方法、配線基板の製造方法および配線基板に係り、特に、大きい粒子径の銅粒子を用いて銅配線を形成する銅配線の形成方法、配線基板の製造方法および配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、導体微粒子を懸濁させたペーストまたは溶液を絶縁膜の表面に塗布し、このペーストまたは溶液に対して、加熱処理および加圧処理の少なくとも一方を行なうことが記載されている。また、下記の特許文献2には、金属配線の形成方法について、配線溝内に配線粒子を充填し、加熱および加圧することにより金属膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−56060号公報
【特許文献2】特開平11−154676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、銅粒子を用いて配線の形成を行なう場合、100nm以上の銅粒子を分散させた液体を用いてパターン形成を行なうと、大気中で銅粒子が酸化してしまい、還元を行なわないと導電性が付与されなかった。
【0006】
また、非酸化雰囲気で実施する場合は、銅の融点が通常状態では高温になるため、粒子同士をつなぐためには、かなりの高温で加熱しなければ導電性が付与されなかった。また、大気中で焼結を行なうと、銅粒子同士が酸化の影響でつながるが、このままでは、粒子間の空隙が多すぎるため、経時変化により導電性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、銅粒子同士の接触面積を増やすことにより導電性を向上させるともに、銅粒子間の空隙を減らすことにより経時変化による劣化を抑制することができる銅配線の形成方法、配線基板の製造方法および配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、粒子径が100nm以上の銅粒子を分散させた分散液を塗布し、基板上に配線パターンを形成するパターン形成工程と、前記配線パターンを150℃未満の温度で乾燥を行なう乾燥工程と、前記乾燥工程後の配線パターンを加圧する加圧工程と、前記加圧工程後の配線パターンを加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の配線パターンを還元処理する還元処理工程と、を有することを特徴とする銅配線の形成方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、パターン形成後、150℃未満の温度で乾燥を行なっているので、銅粒子が酸化することを防止することができる。そして、まず、加圧を行ない、銅粒子同士を粒子間に空隙がなくなる程度に接触させる。その状態で加熱を行なうことにより酸化させ、各銅粒子をつなげているので、各銅粒子同士の接触面積を増やすことができるので、導電性を向上させることができる。また、100nm以上の銅粒子を用いて銅配線を形成する際に生じる銅粒子間の空隙を小さくすることができるので、経時安定性も向上させることができる。
【0010】
本発明は、前記銅粒子の粒子径が100nm以上200nm以下の場合、前記加熱工程の温度が150℃以上であることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、銅粒子の粒子径が100nm以上200nm以下の範囲である場合は、銅粒子同士の空隙も小さくなるため、150℃以上の温度で加熱することで、酸化が進み、充分な接触面積を得ることができ、導電性を付与することができる。
【0012】
本発明は、前記加熱工程の温度が200℃以上であることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、200℃以上の温度で加熱を行なうことで、銅粒子間の接続を行ない、導電性を付与することができる。
【0014】
本発明は、前記分散液を非酸化雰囲気で製造することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、分散液の製造を非酸化雰囲気で行なっているため、分散液中に含まれる銅粒子が酸化することを防止することができる。本発明は、加熱工程で加熱することにより銅粒子が酸化し、他の銅粒子とつながることで、導電性を付与しているので、銅粒子が既に酸化されている場合は、銅粒子同士がつながりにくくなる。したがって、銅粒子の酸化を防止するため、分散液の製造を非酸化雰囲気で行なうことが好ましい。
【0016】
本発明は、前記パターン形成工程は、インクジェットにより行なうことが好ましい。
【0017】
本発明によれば、インクジェットにより銅粒子を吐出して画像を形成しているので、パターン形成の必要部分にのみ分散液を吐出することができるので、分散液の使用量を低減することができ、コストを下げることができる。
【0018】
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の銅配線の形成方法を用いることを特徴とする配線基板の製造方法を提供する。
【0019】
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の銅配線の形成方法により得られた銅配線を備えることを特徴とする配線基板を提供する。
【0020】
本発明によれば、導電性、および、経時安定性を向上させた銅配線を形成することができるので、配線基板の製造方法、および、得られた銅配線を備える配線基板として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の銅配線の形成方法によれば、銅粒子に圧力をかけ、緻密化した後に、加熱、酸化させて銅粒子同士を接触させているので、接触面積を増やすことができるので、導電性を向上させることができるとともに、経時変化による劣化も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】銅配線の形成方法を説明する図である。
【図2】実施例の結果を示す表図である。
【図3】比較例の結果を示す表図である。
【図4】参考例の結果を示す表図である。
【図5】参考例の銅配線の形成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0024】
[パターン形成工程]
パターン形成工程は、基板上に銅配線のパターンを形成する工程である(図1(a))。
【0025】
≪分散液≫
まず、基板上に付与する銅粒子14が分散している分散液12について説明する。分散液12は、銅粒子14、分散剤、溶媒、焼結温度にて蒸発並びに分解する添加剤から構成される。なお、図1においては、分散液12の構成材料として本発明に特に関係する銅粒子14のみを図示して説明する。
【0026】
<銅粒子>
銅粒子の粒径としては100nm以上の銅粒子を用いることが好ましい。ここで、粒径とはSEMにて観察した際の平均粒径のことを表している。粒径を100nm以上とすることにより銅粒子が完全に酸化することを防止することができるので、その後の加熱工程で酸化させることで、銅粒子14同士を溶融させ、つなげることができる。また、その後の還元処理工程により導電性を付与することができる。銅粒子の粒径が100nmより小さいと、粒子が完全に酸化してしまうため、その後の酸化により銅粒子がつながらなくなるので、還元処理を行なっても導電性が付与されなくなる。したがって、本発明においては、100nm以上の銅粒子を用いることが好ましい。
【0027】
<分散剤>
分散剤としては、特に制限されずに用いることができるが、分散安定性が良好なものであることが好ましく、配線を形成した際に導電性に関与しないものであることが好ましい。
【0028】
<溶媒>
分散液中の溶媒としては、銅粒子が分散可能であれば特に制限されず用いることができる。
【0029】
<その他>
分散液には、他に、焼結温度にて蒸発並びに分解する添加剤を加えることができる。
【0030】
また、分散液12は、非酸化雰囲気で調整することが好ましい。本発明においては、上述したように、粒径が100nm以上の銅粒子を用いているので、パターン形成工程において銅粒子が完全に酸化することを防止することができる。しかしながら、銅粒子が酸化し、銅粒子同士がつながるまでは、酸化を抑えることにより、加熱工程において、銅粒子同士の接触面積を増やすことができるので、導電性を高くすることができる。したがって、分散液12の調整を非酸化雰囲気で行なうことにより、銅粒子の酸化を防止することができるので、加熱工程での銅粒子の接触面積を増やすことができる。
【0031】
上記組成の分散液12を基板10上に塗布し、配線のパターンを形成する。分散液の塗布方法は、特に制限なく、スピンコート、ディップコートなどの各種コーティング方法;インクジェットプリンティング、スクリーン印刷などの印刷法が挙げられる。これらの中でも、インクジェットプリンティングにより付与することで、所望のパターンを直接描画することが可能である。また、インクジェットプリンティングにより行なうことで、分散液を配線パターンに沿って塗布できるので、分散液の量を低減することができ、コストを下げることができる。
【0032】
≪基板≫
本発明に用いられる基板10は特に限定されず用いることができる。
【0033】
[乾燥工程]
パターン形成工程終了後、分散液12の乾燥を行ない、溶媒の除去を行なう(図1(b))。乾燥工程においても高い温度で加熱を行なうと、銅粒子の酸化が促進し、後の加熱工程において酸化による銅粒子の接触面積が減少するので、乾燥工程は、粒子径が100nm以上200nm以下の場合に150℃で焼結した場合に粒子同士が酸化してつながるという結果から、150℃未満で行なうことが好ましい。また、粒子径が100nm以上200nm以下の場合に100℃で焼結した場合に粒子同士が酸化してつながらないという結果から100℃以下であることがさらに好ましく、加熱を行なわず乾燥することが最も好ましい。なお、乾燥のための送風は、適宜、行なうことができる。また、減圧状態にして、乾燥を行なうこともできる。
【0034】
[加圧工程]
加圧工程は、乾燥後の配線パターンに加圧装置16により加圧を行なう工程である(図1(c))。本発明においては、粒子径が100nm以上の銅粒子を用いているので、空隙が大きくなるが、加圧を行なうことで、銅粒子14を緻密化させ、銅粒子14同士の接触面積を増やすことができるとともに、銅粒子14間の空隙を小さくすることができる。したがって、導電性を向上させることができるとともに、経時変化による導電性の低下も抑えることができる。
【0035】
加圧方法としては、カレンダー処理、などにより行なうことができる。加圧工程により行なわれる加圧は、100MPa以上300MPa以下であることが好ましい。
【0036】
[加熱工程]
加圧工程の後、加熱を行ない、銅粒子14を酸化させると同時に銅粒子14同士をつなげる(図1(d))。本発明においては、加圧工程を行なった後に加熱工程を行なうことが重要である。加圧工程を行ない、銅粒子同士を接触させた状態で、加熱を行なうことで、銅粒子の接触面積を増やすことができる。
【0037】
加熱温度は、銅粒子の粒径により決定することができ、銅粒子の粒径が小さいほど、低温で導電性を付与することができる。例えば、銅粒子の粒径が100nm以上200nm以下の場合、加熱工程の加熱温度を150℃以上とすることで、導電性を付与することができ、粒径が200nmを超える場合は、200℃以上の温度で加熱することで、導電性を付与することができる。
【0038】
加圧工程と加熱工程の順番を逆、すなわち、加熱工程を行なった後に加圧工程を行なうと加熱工程により銅粒子同士が接着し、その状態で加圧されることになるので、銅粒子の緻密化が行なわれずに、加圧の効果があまり見られない。また、加圧と加熱を同時に行なった場合も同様に、充分に緻密化が行なわれていない状態で銅粒子の接着が起きるため、充分な接触面積を得ることができない。したがって、加圧工程と加熱工程は、加圧工程を先に行ない、その後、加熱工程を行なうことが必要である。
【0039】
[還元処理工程]
還元処理工程は、加熱工程により、酸化した銅粒子14の還元を行なう工程である(図1(e))。酸化した銅粒子14の還元を行なうことで、銅粒子同士に導電性を付与することができ、配線として機能させることができる。
【0040】
還元処理工程としては、通常、行なわれている方法で行なうことができ、例えば、水素3%以上10%以下含むアルゴン雰囲気下で350℃以上400℃以下の温度で加熱することで行なうことができる。
【0041】
形成された銅配線は、粒径が100nm以上の銅粒子を用いているが、加圧工程を行なうことにより、銅粒子の接触面積を増やした状態で、加熱工程により銅粒子同士をつなげることができる。したがって、導電性を向上させることができるとともに、銅粒子間の空隙も減らすことができるので、経時安定性を向上させることができる。なお、銅配線の幅は、特に限定されず形成することができるが、50μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0042】
[実施例]
まず、銅粒子分散液の調整を行なった。銅粒子分散液は、銅粒子として200nm、300nmのサイズのものを用いて以下の処方で行なった。また、分散液は、銅粒子が酸化しないように非酸化雰囲気で行なった。
【0043】
[分散液]
・銅粒子 ・・・50wt%
・シクロヘキサノン・・・50wt%
製造した分散液を、インクジェットにより塗布し、銅配線パターンの形成を大気中で行なった。またパターン形成後、大気中で乾燥を行なった。
【0044】
乾燥後、カレンダー装置により、配線パターンに約300MPa相当の圧力で加圧を行なった。加圧後、100℃、150℃、200℃、300℃のそれぞれの温度で加熱を行ない、銅粒子をつなげた。その後、還元処理を行ない、銅配線の形成を行なった。結果を図2に示す。
【0045】
[比較例]
また、比較例として、加熱工程と加圧工程の順番を逆にして銅配線の形成を行なった。他の形成条件は、実施例と同様の条件で行なった。結果を図3に示す。
【0046】
[参考例]
また、参考例として、加圧を行なわず、加熱のみで銅配線の形成を行なった。他の形成条件は、実施例と同様の条件で行なった。結果を図4に示す。
【0047】
図2〜4より、加圧工程後に加熱工程を行なった実施例はいずれの条件においても、比較例より抵抗値が低く、導電性が高いことが確認できた。また、加圧を行なわなかった参考例と比較するとさらに、加圧することにより導電性が向上していることが確認できる。
【0048】
図5は参考例の製造工程を示す図である。図5(a)がパターン形成工程、図5(b)が乾燥工程、図5(c)が加熱工程、図5(d)が還元処理工程である。加圧を行なわない場合は、図5(c)に示すように、銅粒子同士はつながるが、接触面積も大きくなく、導電性が低いと考えられる。また、銅粒子間の空隙も残っており、経時安定性も低いと考えられる。また、比較例は、図5(c)の状態で加圧工程を行なった例であるが、加熱工程により酸化し、すでに銅粒子同士がくっついているため、さらに、加圧工程を行なっても銅粒子はつながりにくく、また空隙も残るため、抵抗値は、実施例と比較し、低い数値であると考えられる。
【0049】
また、粒子径が小さいほど、加熱温度を高くしなくても導電性を付与することができ、粒子径が200nmのものは、150℃の加熱温度で、導電性を付与することができ、300nmでは200℃以上に加熱する必要があった。
【符号の説明】
【0050】
10…基板、12…分散液、14…銅粒子、16…加圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が100nm以上の銅粒子を分散させた分散液を塗布し、基板上に配線パターンを形成するパターン形成工程と、
前記配線パターンを150℃未満の温度で乾燥を行なう乾燥工程と、
前記乾燥工程後の配線パターンを加圧する加圧工程と、
前記加圧工程後の配線パターンを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後の配線パターンを還元処理する還元処理工程と、を有することを特徴とする銅配線の形成方法。
【請求項2】
前記銅粒子の粒子径が100nm以上200nm以下の場合、前記加熱工程の温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の銅配線の形成方法。
【請求項3】
前記加熱工程の温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅配線の形成方法。
【請求項4】
前記分散液を非酸化雰囲気で製造することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の銅配線の形成方法。
【請求項5】
前記パターン形成工程は、インクジェットにより行なうことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の銅配線の形成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の銅配線の形成方法を用いることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の銅配線の形成方法により得られた銅配線を備えることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−204466(P2012−204466A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65884(P2011−65884)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】