説明

銅配線半導体用洗浄剤

【課題】 本発明は、研磨工程由来の有機残渣除去性能、銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ、かつ腐食防止剤が残留しない銅配線半導体用洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 有機アミン、4級アンモニウム化合物、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物、および水を必須成分とし、pHが7〜12であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線半導体用の洗浄剤に関する。さらに詳しくは、CMP(化学的機械的研磨)工程後に、銅配線半導体を清浄化するための洗浄剤として好適な半導体用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より銅配線半導体を清浄化するための洗浄剤として、有効量の腐食防止剤を含有する洗浄剤が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−292792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の半導体用洗浄剤は、金属配線材料(銅、タングステン等)を溶解するという問題があるばかりでなく、銅配線に付着する研磨剤由来の有機残渣を除去する効果が不十分であるという問題がある。
そこで、本発明は、研磨工程由来の有機残渣除去性能、銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ、かつ腐食防止剤が残留しない銅配線半導体用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)、および水を必須成分とし、pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E);並びにこの銅配線半導体用洗浄剤を、半導体基板に断続的に供給して、銅配線を有する半導体基板または半導体素子を洗浄する工程を含む、半導体基板または半導体素子の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れ、かつ、優れた洗浄性の効果を奏する。また、本発明の半導体基板または半導体素子製造方法によると、銅配線の腐食がなく、接触抵抗に優れた半導体基板または半導体素子が容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤の特徴は、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水を必須成分として含有してなり、pHが5.0以上であることを要旨とする。
【0008】
本発明におけるウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)としては、下記一般式(1)で表されるエチレン尿素化合物(C1)、下記一般式(2)で表されるエチレンチオ尿素化合物(C2)、尿素またはチオ尿素が挙げられる。
【0009】
【化1】

【0010】
[式(1)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子、または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である。]
【0011】
【化2】

【0012】
[式(2)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子、または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である。]
【0013】
本発明における上記一般式(1)で表されるエチレン尿素化合物(C1)において、式中のRとRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、または水酸基で置換されているヒドロキシアルキル基である。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。
これらのRとRとして、取扱いの容易さから水素原子が好ましい。
エチレン尿素化合物(C1)として好ましい化合物としては、エチレン尿素、4−メチルイミダゾリジン−2−オン、モノメチロールエチレン尿素、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0014】
本発明における上記一般式(1)で表されるエチレン尿素化合物(C1)において、式中のRとRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、または水酸基で置換されているヒドロキシアルキル基である。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
これらのRとRとして、取扱いの容易さから水素原子が好ましい。
エチレンチオ尿素化合物(C2)として好ましい化合物としては、エチレンチオ尿素、1,3−プロピレンチオ尿素、モノメチロールエチレンチオ尿素、4,5−ジヒドロキシ−2−2−イミダゾリジンチオン、4−メチルイミダゾリジンチオン−2−オンなどが挙げられる。
【0015】
これらのウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)のうち、銅腐食の観点から好ましくエチレン尿素化合物(C1)または尿素であり、より好ましくはエチレン尿素である。
【0016】
ウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)の含有率は、銅腐食抑制およびコストの観点から、(A)、(B)、(C)および水の合計重量に基づいて、0.001〜3.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜23重量%、次にさらに好ましくは0.01〜1.0重量%、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。
【0017】
本発明における有機アミン(A)としては、脂肪族アミン(A1)、環式アミン(A2)が挙げられる。
【0018】
脂肪族アミン(A1)としては、炭素数の数(以下、Cと略記する。)1〜6のアルキルアミン、C2〜6のアルカノールアミン、C2〜5のアルキレンジアミン、および窒素原子の数が2〜8でC2〜12のポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。
【0019】
C1〜6のアルキルアミンとしては、C1〜6のモノアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミンおよびヘキシルアミン等);C2〜6のジアルキルアミン(ジメチルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、ブチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルエチルアミンおよびジイソプロピルアミン等);C2〜6のトリアルキルアミン(トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン等)が挙げられる。
【0020】
C2〜6のアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。
【0021】
C2〜5のアルキレンジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0022】
窒素原子の数が2〜8であってC2〜12のポリアルキレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンヘプタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0023】
環式アミン(A2)は芳香族アミンと脂環式アミンが挙げられる。
具体的にはC6〜20の芳香族アミン[アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン、ナフタレンジアミン、アントラセンジアミン等];C4〜15の脂環式アミン[イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等];C4〜15の複素環式アミン[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン等]等が挙げられる。
【0024】
これらの有機アミン(A)のうち、水溶性の観点から好ましくは脂肪族アミン(A1)であり、銅腐食抑制効果の観点からより好ましくはアルカノールアミンであり、さらに、錯化作用の観点等から、モノエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが好ましい。
【0025】
有機アミン(A)の含有率は、洗浄性および銅腐食抑制の観点から、(A)、(B)、(C)および水の合計重量に基づいて、0.001〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2.0重量%、次にさらに好ましくは0.01〜1.0重量%、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。
【0026】
本発明の4級アンモニウム化合物(B)は、下記一般式(3)で表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(B1)または下記一般式(4)で表されるN−ヒドロキシアルキル−N−トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(B2)が挙げられる。
【0027】
【化3】

【0028】
[式(1)中、R〜Rは炭素数1〜3のアルキル基である。]
【0029】
【化4】

【0030】
[式(2)中、R〜R11は炭素数1〜3のアルキル基;R12は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。]
【0031】
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(B1)としてはC5〜17のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0032】
N−ヒドロキシアルキル−N−トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(B2)としては、C5〜17のヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムヒドロキシド、C5〜17のジヒドロキシアルキルジアルキルアンモニウムヒドロキシド、およびC5〜17のトリヒドロキシアルキルアルキルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0033】
これらのうち、洗浄性および銅腐食抑制の観点から好ましくは、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、特に好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびテトラエチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0034】
4級アンモニウム化合物(B)の含有率は、銅腐食抑制および洗浄性観点から、(A)、(B)、(C)および水の合計重量に基づいて、0.01〜10.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%、次にさらに好ましくは0.1〜1.0重量%、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。
【0035】
水としては、特に限定されないが、洗浄性、入手のし易さおよび銅配線の再汚染(水中のイオンが銅配線に再付着する等)防止の観点から、水の電気伝導率(μS/cm;25℃)は0.055〜1.0が好ましく、さらに好ましくは0.056〜0.1、特に好ましくは0.057〜0.080である。このような電気伝導率が小さい水としては、イオン交換水等が使用できる。
電気伝導率は、JIS K0400−13−10:1999に準拠して測定される。
【0036】
水の含有量は、洗浄性および溶液粘度の観点から、使用時の(A)、(B)および水の合計重量に基づいて、70.0〜99.9重量%が好ましく、さらに好ましくは89.0〜99.9重量%、特に好ましくは.98.8〜99.8重量%である。
【0037】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤のpHは5.0以上であり、シリコンウエハ(絶縁膜)腐食の観点からpHが5.0〜14.0である。pH14を超えるとシリコンウエハ(絶縁膜)を腐食し易くなる。さらに、洗浄性および銅配線腐食抑制効果の観点から、6.0〜13.0が好ましく、銅配線腐食抑制効果の観点から、さらに好ましくは7.0〜11.0、特に好ましくは8.0〜10.0である。pHが5.0未満では、銅を腐食し易くなる。
【0038】
銅配線半導体用洗浄剤のpHは、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)の種類および含有量等によっても変化し得るが、pH調整剤(P)等で調整してもよい。
pH調整剤(P)としては、酸および塩基が挙げられ、酸と塩基のどちらを使用するかは、調整するpH等により決めることができる。
なお、酸または塩基が、本願発明の必須成分である有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、およびウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)にも該当する場合は、本発明においては、これらはpH調整剤(P)ではなく、(A)、(B)または(C)として分類する。
【0039】
酸としては、無機酸および有機酸が挙げられる。
【0040】
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、酢酸およびリン酸等が挙げられる。
【0041】
有機酸としては、ぎ酸、酢酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;トリメリット酸、トリカルバリル酸等のトリカルボン酸;ヒドロキシ酪酸、乳酸、サリチル酸等のオキシモノカルボン酸;リンゴ酸、酒石酸等のオキシジカルボン酸;クエン酸等のオキシトリカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノカルボン酸等が挙げられる。
【0042】
これらのうち、銅腐食抑制の観点から有機酸が好ましく、さらに洗浄性および銅腐食抑制の観点からオキシカルボン酸が好ましく、さらに銅腐食抑制の観点からオキシトリカルボン酸が好ましく、特に好ましくはクエン酸である。
【0043】
塩基としては、無機塩基および有機塩基が挙げられる。
【0044】
無機塩基としては例えばアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。
【0045】
有機塩基としては、アンモニアおよび4級アンモニウム化合物等が挙げられる。
【0046】
pH調整剤(P)としての4級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドまたはN−ヒドロキシアルキル−N−トリアルキルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0047】
pH調整剤は、必要により、水で希釈したものを用いることができる。希釈する場合、pH調整剤の濃度(モル/リットル)は、目的とするpH等により適宜調整すればよいが、pH調整のし易さ等の観点から、0.01〜10.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜7.0重量%、特に好ましくは0.1〜5.0重量%である。
【0048】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水以外に、洗浄性の観点から、さらに必要により界面活性剤を含有していてもよい。
【0049】
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(「界面活性剤 物性・性能要覧、株式会社技術情報協会、2003年5月29日発行」または「新・界面活性剤入門、三洋化成工業株式会社、1996年10月発行」等に記載のもの等)が使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
【0050】
界面活性剤のうち、半導体の電気特性に悪影響を及ぼさないという観点等から、非イオン界面活性剤が好ましく、さらに好ましくはポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤である。
【0051】
界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、合計重量に基づいて、洗浄性および銅配線上への界面活性剤の残留防止の観点から、0.0001〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.1重量%、特に好ましくは0.005〜0.1重量%、最も好ましくは、0.01〜0.7重量%である。この範囲であると、洗浄性(有機残渣の除去性)がさらに優れる。
【0052】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水以外に、洗浄性の観点から、さらに必要により水溶性還元剤および錯化剤が含まれていてもよい。
ここで水溶性とは、25℃の水への溶解度が、水溶液100gあたり0.01g以上である性質をいう。
水溶性還元剤が水溶性であると、洗浄後に水溶性還元剤が銅配線に残留しにくい。
【0053】
水溶性還元剤の25℃の水への溶解度は、水溶液100gあたり0.01g以上、好ましくは1g以上である。この範囲であると洗浄後に水溶性還元剤がさらに残留しにくい。
【0054】
水溶性還元剤としては、有機還元剤、無機還元剤が挙げられ、有機還元剤としては、脂肪族有機還元剤、芳香族有機還元剤が挙げられる。
【0055】
脂肪族有機還元剤としては、シュウ酸(塩)、シュウ酸水素(塩)、C6〜9のアルデヒドが挙げられる。
【0056】
芳香族有機還元剤としては、C6〜30のフェノール化合物やベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0057】
無機還元剤としては、亜硫酸(塩)、チオ硫酸(塩)等が挙げられる。
【0058】
これらの水溶性還元剤のうち、水溶性および銅腐食抑制効果等の観点から、有機還元剤が好ましく、さらに好ましくは脂肪族有機還元剤、特に好ましくはシュウ酸(塩)である。さらに、錯化作用の観点等から、シュウ酸塩が好ましく、さらに好ましくはシュウ酸アンモニウムである。
【0059】
水溶性還元剤を含有する場合、水溶性還元剤の含有量は、銅腐食抑制効果および銅配線上の残留防止の観点から合計重量に基づいて0.001〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.3重量%、特に好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0060】
錯化剤としては、C1〜6の芳香族または脂肪族のヒドロキシカルボン酸(塩);C9〜23のヒドロキシ基、カルボキシル基の少なくともどちらか一方を有する複素環式化合物;C6〜14のポリアミノポリカルボン酸(塩);C2〜4のポリカルボン酸(塩);C6〜9のホスホン酸(塩)等が挙げられる。
C1〜6の芳香族または脂肪族ヒドロキシカルボン酸(塩)としては、グルコン酸(塩)等が挙げられる。
【0061】
これらの錯化剤のうち、銅腐食抑制効果および導電性物質の除去性等の観点から、芳香族または脂肪族のヒドロキシカルボン酸(塩)、ヒドロキシ基またはカルボキシル基の少なくともどちらか一方を有する複素環式化合物またはポリカルボン酸(塩)が好ましく、さらに好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸(塩)またはポリカルボン酸(塩)、特に好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸(塩)である。
【0062】
錯化剤を含有する場合、錯化剤の含有量は、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)および水の合計重量に基づいて0.001〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1重量%、特に好ましくは0.01〜0.05重量%ある。この範囲であると、銅腐食抑制効果および洗浄性{不純物(金属イオンおよび金属酸化物等)を洗浄する特性}がさらに優れる。
【0063】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)、水、および必要により界面活性剤等を均一混合した後、pHが5未満である場合は、さらにpH調整剤(P)を加えてpHを5以上に調整して製造する。
【0064】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、半導体基板または半導体素子の洗浄方法において、未実装の半導体基板または半導体素子に、連続的または断続的に供給して、銅配線を有する半導体基板または半導体素子を洗浄する洗浄方法に使用することができる。
このような洗浄方法は、例えば、水平に置かれた円形の半導体基板または半導体素子を、半導体基板または半導体素子の中心を軸として回転させながら、半導体基板または半導体素子の上下を、回転するロール状ブラシで水平に挟み込み、さらにブラシと半導体基板または半導体素子の接触面に本発明の銅配線半導体用洗浄剤を注入しながら、所定の時間(1分間程度)洗浄する洗浄工程が挙げられる。
半導体基板または半導体素子の洗浄方法としては、レジスト現像後、ドライエッチング後、ウェットエッチング後、ドライアッシング後、レジスト剥離後、CMP処理前後およびCVD処理前後等の洗浄工程が挙げられる。
そして、本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、半導体基板または半導体素子の製造方法において、上記の洗浄方法により半導体基板または半導体素子を洗浄する工程を含む製造方法に適している。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により、本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、特記しない限り、部および%はそれぞれ重量部および重量%を表す。
【0066】
<実施例1>
ポリエチレン製容器にエチレン尿素(商品名:エチレン尿素、純度30%、東ソー製)0.5部、水59.5部を加えた後、モノエタノールアミン(純度99%、和光純薬製)0.15部および25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(品名:TMAH(25%、多摩化学製)0.167部を加え、25℃でマグネチックスターラーにより5分間撹拌した。
その後、仕込んだエチレン尿素、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミンおよび水の合計量が100部となるように水を加え、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−1)を得た。得られた(E−1)のpHは12.0であった。
なお、水溶液として使用するTMAH、クエン酸水溶液、シュウ酸水溶液、塩酸中の水は、合計量を算出する際に、仕込んだ水の一部として計算に含めた。

【0067】
<実施例2>
実施例1において、さらに10%クエン酸水溶液を加えてpHを9.0に調整した以外は同様にして、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−2)を得た。
【0068】
<比較例1〜4>
表1に記載した有機アミン成分、化合物(C)、pH調整剤の含有量となるように、実施例と同様にして、比較の銅配線半導体用洗浄剤(E’−1)〜(E’−4)を得た。
【0069】
【表1】

【0070】
なお、表1中、MEAはモノエタノールアミン、TMAHはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを表す。
【0071】
得られた本発明の銅配線半導体用洗浄剤(E−1)、(E−2)および比較の銅配線半導体用洗浄剤(E’−1)〜(E’−4)について、以下に記載する評価方法でベンゾトリアゾールおよびキナルジン酸の残存性、有機残渣除去速度、銅溶出速度、を評価した。結果を表1に示した。
【0072】
<pHの測定方法>
pHは、JIS K0400−12−10:2000に準拠して、測定した。
pHはpHメータ(型番:HM−30V、東亜電波工業株式会社)を用いて測定した。
【0073】
<有機残渣除去性能の測定方法>
有機残渣除去性能は、以下の手順にしたがって、QCM(Quartz Cristal Microbalance)法で評価した。QCM法とは一定の振動数で振動している水晶振動子表面に物質が吸着するとその質量分だけ振動数が下がり、脱離すると振動数が上がるという原理を利用した測定方法である。測定装置としては、北斗電工製 HZ−5000型(6MHz)を使用した。
(1)QCM電極の洗浄
銅をめっきしたQCM電極(北斗電工社製「水晶振動子(Cu)」、電極面積0.33cm)を10%酢酸水溶液中に25℃で10分間浸漬した後、取り出して25℃のメタノール50mlで銅基板に付着した酢酸水溶液を洗い流して、銅基板の表面を清浄にした(銅基板の表面に金属銅を露出させた)銅をめっきしたQCM電極を得た。
【0074】
(2)銅めっきQCM電極への有機残渣の付着
(2)−1 有機残渣1(ベンゾトリアゾール系有機残渣)
ベンゾトリアゾール0.4g、過酸化水素水(過酸化水素含有量30%)0.6g、水160gを混合し、塩酸でpHが3.0になるように調整したのち、全量が200gになるまで水を加え、有機残渣付着溶液1とした。
前述の銅基板の表面を清浄にした銅をめっきしたQCM電極を有機残渣付着溶液1に25℃で60秒間浸漬し表面にベンゾトリアゾールを含む有機残渣を付着させた後、電極を取り出して25℃の水50mlで有機残渣付着溶液を洗浄した後、窒素ブローを行い乾燥させた。
【0075】
(2)−2 有機残渣2(キナルジン酸系有機残渣)
過酸化水素水(過酸化水素含有量30%)1.0g、キナルジン酸0.8g、マレイン酸2.0g、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム0.4gを水160gに分散させ、水酸化カリウム(KOH)水溶液でpHを9.5に調整した後、全量が200gになるまで水を加え、有機残渣付着溶液2とした。
前述の銅基板の表面を清浄にした銅をめっきしたQCM電極を有機残渣付着溶液2に25℃で60秒間浸漬し、表面にキナルジン酸を含む有機残渣を付着させた後、電極を取り出して25℃の水50mlで有機残渣付着溶液を洗浄した後、窒素ブローを行い乾燥させた。
その後、表面にキナルジン酸を含む有機残渣を付着させたQCM電極を5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に25℃で120秒間浸漬し、QCM電極表面の(銅と錯体を形成していないと考えられる)余分なキナルジン酸を除去した。その後、電極を取り出して25℃の水50mlで有機残渣付着溶液を洗浄した後、窒素ブローを行い乾燥させた。
【0076】
(3)有機残渣除去速度の測定
上記(2)で得た有機残渣を付着させた電極を本発明および比較用の銅配線半導体用洗浄剤各200gに25℃で浸漬し、QCM法により測定した。下記式から得られた質量変化と浸漬時間(10秒)から、有機残渣の除去速度(質量変化/浸漬時間)を求めた。
【0077】
【数1】

【0078】
但し、記号は以下の内容を示す。
△mass:質量変化
△freq10:共振周波数変化(浸漬直後の共振周波数−浸漬10秒後の共振周波数)(Hz)
μ:水晶振動子定数 (2.947×1011g/cm/sec
ρ:水晶振動子密度(2.648g/cm
:基準周波数 (装置に固有の定数:6MHz)
A:水晶振動子の面積 (装置固有の定数1.33cm
【0079】
有機残渣除去速度は、有機残渣の洗浄性を表しており、値が大きいほど性能が良好であることを示す。
【0080】
<銅腐食抑制性能の測定方法>
銅腐食抑制性能は、以下の手順にしたがって、前記QCM法で評価した。
(1)QCM電極の洗浄
銅をめっきしたQCM電極(北斗電工社製「水晶振動子(Cu)」、電極面積0.33cm)を10%酢酸水溶液中に25℃で10分間浸漬した後、取り出して25℃のメタノール50mlで銅基板に付着した酢酸水溶液を洗い流して、銅基板の表面を清浄にした(銅基板の表面に金属銅を露出させた)銅をめっきしたQCM電極を得た。
【0081】
(2)銅溶出速度の測定
上記(1)で得た電極を本発明および比較用の銅配線半導体用洗浄剤各200gに25℃で浸漬し、QCM法により測定した。下記式から得られた質量変化と浸漬時間(120秒)から、銅の溶出速度(質量変化/浸漬時間)を求めた。
【0082】
【数2】

【0083】
△mass:質量変化
△freq120:共振周波数変化(浸漬直後の共振周波数−浸漬120秒後の共振周波数)(Hz)
μ :水晶振動子定数 (2.947×1011g/cm/sec
ρ :水晶振動子密度(2.648g/cm
Fq :基準周波数 (装置に固有の定数:6MHz)
A :水晶振動子の面積 (装置固有の定数1.33cm
【0084】
銅溶出速度は、銅配線の腐食性を示しており、値が小さいほど性能が良好、すなわち腐食性が低いことを示す。
【0085】
<ベンゾトリアゾール残存性の評価方法>
ベンゾトリアゾール残渣量の評価として、以下の手順で、銅配線半導体用洗浄剤で洗浄した後の銅基板表面の窒素含量をXPSで求め、評価した。
XPSの装置としてはESCA−5400(アルバックファイ社製)を使用した。
(1)銅基板表面の洗浄
銅基板を10%酢酸水溶液中に25℃で10分間浸漬した後、取り出して25℃のメタノール50mlで銅基板に付着した酢酸水溶液を洗い流して、銅基板の表面を清浄にした(銅基板の表面に金属銅を露出させた)。
【0086】
(2)銅配線半導体用洗浄剤による銅基板の洗浄
銅配線半導体用洗浄剤50gに前述の表面を清浄にした銅基板の全体を浸漬し、25℃で3分間静置した後、銅基板を銅配線半導体用洗浄剤から取り出し、流水で3分間洗浄した後、窒素ブローを行い、表面を乾燥させた。
【0087】
(3)洗浄済み銅基板表面の窒素含量測定
(2)で得られた銅基板をXPSで測定し、ベンゾトリアゾールに含まれる窒素の結合エネルギー398EV付近に検出されるピーク高さ(H)とピークが検出されない391〜3922EVのノイズ高さ(H)の比H/Hを算出し、これが2以上である場合はベンゾトリアゾールが残存していると評価、2未満の場合はベンゾトリアゾールが残存していないと評価した。
【0088】
表1の結果から、実施例の銅配線半導体用洗浄剤は有機残渣除去速度、銅溶出速度、ベンゾトリアゾール残存性のすべての項目について満足すべき性能レベルを示すことが分かる。
一方、エチレン尿素化合物を含まない比較例1の洗浄剤は銅溶出速度が悪く、4級アンモニウム化合物を含まない比較例2の洗浄剤は有機残渣除去速度とベンゾトリアゾール残存性が悪い。また、有機アミンを含まない比較例3の洗浄剤は有機残渣除去速度とベンゾトリアゾール残存性が悪く、pH2.0に調整した比較例4の洗浄剤は銅溶出速度が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、有機残渣の除去性能に優れ、銅配線の腐食抑制効果(銅腐食抑制効果)に優れる。また、腐食防止剤が残留せず、洗浄性が優れているため、銅配線半導体用洗浄剤として有用である。また、同様に、銅を構成部材とする部品に、洗浄剤としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アミン(A)、4級アンモニウム化合物(B)、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物(C)、および水を必須成分とし、pHが5.0以上であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤(E)。
【請求項2】
該ウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)が、下記一般式(1)で表されるエチレン尿素化合物(C1)、下記一般式(2)で表されるエチレンチオ尿素化合物(C2)、尿素、またはチオ尿素である請求項1記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【化1】

[式(1)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子、または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である。]
【化2】

[式(2)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子、または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である。]
【請求項3】
該有機アミン(A)が脂肪族アミン(A1)または環式アミン(A2)である請求項1または2記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項4】
該4級アンモニウム化合物(B)が、下記一般式(3)で表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(B1)または下記一般式(4)で表されるN−ヒドロキシアルキル−N−トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(B2)である請求項1〜3いずれか記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【化3】

[式(1)中、R〜Rは炭素数1〜3のアルキル基である。]
【化4】

[式(2)中、R〜R11はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基;R12は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。]
【請求項5】
該ウレア基またはチオウレア基含有化合物(C)の含有率が、(A)、(B)、(C)および水の合計重量に基づいて、0.01〜10重量%である請求項1〜4いずれか記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の半導体洗浄用洗浄剤用いて半導体基板または半導体素子を洗浄する工程を含む、半導体基板または半導体素子の製造方法。

【公開番号】特開2011−74189(P2011−74189A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226449(P2009−226449)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】