説明

銅配線半導体用洗浄剤

【課題】 研磨剤由来の砥粒の除去性、絶縁膜上の金属残渣と有機残渣の除去性に優れ、かつ銅配線の耐腐食性に優れる銅配線半導体用洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 銅または銅合金配線を形成する半導体製造工程中の化学的機械的研磨の後に続く工程において使用される洗浄剤であって、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水を必須成分とし、使用時のpHが8.0〜13.0であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造工程における化学的機械的研磨(以下、「化学的機械的研磨」をCMPと略称する。)工程の後の洗浄工程に用いられる洗浄剤(以下、CMP後洗浄剤と略記する。)に関するものであって、特に表面に銅または銅合金の配線が施された半導体のCMP後洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体に代表される半導体素子は、高性能化、小型化等の市場ニーズに対応して微細化、高集積化が進んでいる。これに伴い微細な配線パターンを作成するための高度な平坦化技術が必須となり、半導体の製造工程において、ウェハ表面をアルミナやシリカの微粒子を含む研磨スラリー(以下、CMPスラリーと略称する。)を用いて研磨するCMP工程が導入されている。
【0003】
しかしながらこのCMP工程では、CMPスラリー中のアルミナやシリカなどの研磨微粒子(以下、「研磨微粒子」を砥粒と略記する。)、研磨を促進するために添加された硝酸鉄水溶液、金属腐食抑制目的で添加されている防食剤、研磨された銅配線金属、銅配線のサイドで用いられる亜鉛やマグネシウム金属の残渣などが、研磨後のウェハ上に残留しやすい。これら残留物は配線間の短絡など半導体の電気的な特性に悪影響を及ぼすため、これら残留物を除去し、ウェハ表面を清浄化する必要がある。
【0004】
このCMP工程後の洗浄工程に用いる洗浄剤として、クエン酸やシュウ酸等の有機酸を主成分とする酸性の洗浄剤(特許文献1)や、ポリアルキレンポリアミンを主成分とするアルカリ性の洗浄剤(特許文献2)が知られている。
しかしこれらの洗浄剤は、金属残渣物の除去性に優れているものの、銅配線に対する腐食が大きいという問題がある。
【0005】
この腐食を改善するため、銅配線に対して腐食性の小さい鎖状アルカノールアミンを主成分とするアルカリ性の洗浄剤が知られている(特許文献3)。
しかし、この洗浄剤は、CMPスラリー中に添加された防食剤に由来する有機残渣の除去性に優れているが、金属残渣除去性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−7071号公報
【特許文献2】再表WO2001−71789号公報
【特許文献3】特開平11−74243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、銅配線を腐食させることなく、CMP工程後のウェハ上に残留する成分としてのCMPスラリー中のアルミナやシリカなどの砥粒、配線金属の腐食抑制の目的で添加されている防食剤などの有機残渣、および研磨された銅配線金属や銅配線のサイドで用いられる亜鉛、マグネシウムなどの金属の残渣の除去性に優れる銅および銅合金配線半導体用の洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、銅または銅合金配線を形成する半導体製造工程中のCMPの後に続く工程において使用される洗浄剤であって、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水を必須成分とし、使用時のpHが8.0〜13.0であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤;並びに銅または銅合金配線を形成する半導体製造工程中のCMPの後に続く工程において、この洗浄剤を使用して製造された半導体基板および半導体素子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、研磨剤由来の砥粒の除去性や絶縁膜上の金属残渣と有機残渣の除去性に優れ、かつ銅配線の耐腐食性に優れている。
また、半導体製造工程におけるCMP工程の後の工程において本発明の洗浄剤を用いることにより、接触抵抗に優れ、かつ配線の短絡がない半導体基板又は半導体素子が容易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水を必須成分とし、使用時のpHが8.0〜13.0であることを特徴とする。
【0011】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤で使用できるアミン(A)としては、例えば脂肪族アミン(A1)、環式アミン(A2)が挙げられる。
【0012】
脂肪族アミン(A1)としては、アルキルアミン(A11)、アルカノールアミン(A12)、アルキレンジアミン(A13)、アミノ基を3〜6個有する脂肪族ポリアミン(A14)等が挙げられる。
【0013】
アルキルアミン(A11)としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン;ジメチルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、ブチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルエチルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン等のトリアルキルアミン等が挙げられる。
【0014】
アルカノールアミン(A12)としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノエタノール)等が挙げられる。
【0015】
アルキレンジアミン(A13)としては、1,2‐ジアミノエタン、1,2‐ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ビス(2-アミノエトキシ)エタン等が挙げられる。
【0016】
アミノ基を3〜6個有するポリアミン(A14)としては、2個のアミノ基の間にアルキレン鎖が挟まれたポリアミンであって、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
【0017】
環式アミン(A2)としては、芳香族アミン(A21)、脂環式アミン(A22)及び複素環式アミン(A23)が挙げられる。
【0018】
芳香族アミン(A21)としては、アニリン、1,3−フェニレンジアミン、2,4‐トリレンジアミン、1,3‐キシリレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,3−アントラセンジアミン等が挙げられる。
【0019】
脂環式アミン(A22)としては、イソホロンジアミン、1,2‐シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0020】
複素環式アミン(A23)、としてはピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、1,4−ビスアミノエチルピペラジン等が挙げられる。
【0021】
これらのアミン(A)のうち、水溶性の観点から好ましくは脂肪族アミン(A1)、環式アミン(A2)であり、有機残渣除去性能の観点からより好ましくはアミノ基を3〜6個有するポリアミン(A14)、複素環式アミン(A23)、アルカノールアミン(A12)であり、さらに、錯化作用の観点等から、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンペンタミン;トリエタノールアミン;1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルピペラジンが好ましい。
特に好ましくは、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、N−アミノエチルピペラジンである。
【0022】
有機残渣除去性及び銅配線耐腐食性の観点から、実際に洗浄に使用される時のアミン(A)の含有量は、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水(W)の合計重量に基づいて、通常0.0001〜5重量%であり、好ましくは0.0005〜3重量%、さらに好ましくは0.001〜2重量%である。
【0023】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤の第2の必須成分であるグアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)としては、グアニジンと対アニオン(B2)との塩、またはグアニジン誘導体(B1)と対アニオン(B2)との塩であれば特に組成は限定されない。
【0024】
グアニジン誘導体(B1)の具体例としては、グアニジンの水素原子の一部または全部がニトロ基、シアノ基、アミノ基などの官能基で置換された化合物(ニトログアニジン、シアノグアニジン、アミノグアニジンなど)が挙げられる。
【0025】
対アニオン(B2)としては、塩酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオンなどの無機アニオン;スルファミン酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、リンゴ酸イオンなどの有機酸アニオンが挙げられる。
【0026】
グアニジンまたはグアニジン誘導体(B1)と対アニオン(B2)との組合せの塩としては、グアニジン、ニトログアニジン、シアノグアニジンと無機イオンの塩;グアニジン、ニトログアニジン、シアノグアニジンと有機イオンの塩が挙げられる。
具体的には、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、塩酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、クエン酸グアニジンなどが挙げられる。
【0027】
本発明のグアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)は、その1%水溶液でのpHが、好ましくは7.0〜13.0の塩であり、さらに好ましくは7.0〜12.0の塩である。pHが7.0〜13.0であると、銅配線耐腐食性が良好であるとともに、有機残渣除去性が良好である。
この点で、好ましくは、炭酸グアニジン(1%水溶液でのpH:11.4)、リン酸グアニジン(8.8)、スルファミン酸グアニジン(7.0)であり、特に好ましくは炭酸グアニジンである。
【0028】
洗浄性及び銅腐食抑制の観点から、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)の含有量は、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水(W)の合計重量に基づいて、通常0.0001〜5重量%であり、好ましくは0.0005〜3重量%、さらに好ましくは0.001〜2重量%である。
【0029】
なお、本発明の洗浄剤を製造する際に、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)自体を直接配合して使用する以外に、ジシアンジアミドと無機塩(硝酸アンモニウムなど)、あるいはグアニジンまたはグアニジン誘導体と無機酸または有機酸を配合して系中でグアニジンまたはグアニジン誘導体の塩を生成させることにより製造しても差し支えない。
【0030】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、水を必須成分とする。水としては、電気伝導率が小さい水が挙げられる。
25℃における電気伝導率は、有機残渣および金属残渣の除去性、入手のしやすさ、及び銅配線の再汚染(水中の金属イオンの銅配線への再付着)防止の観点から、通常0.055〜0.2μS/cm、好ましくは0.056〜0.1μS/cm、さらに好ましくは0.057〜0.08μS/cmである。このような電気伝導率が小さい水としては、超純水が好ましい。
なお、電気伝導率は、JIS K0400−13−10:1999に準拠して測定される。
【0031】
洗浄剤として使用する際の水の含有量は、有機残渣除去性および金属残渣除去性及び溶液粘度の観点から、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水(W)の合計重量に基づいて、通常80.0〜99.9999重量%であり、好ましくは90.0〜99.9999重量%、さらに好ましくは96.0〜99.9999重量%である。
【0032】
本発明の洗浄剤は、銅配線耐腐食性および金属残渣除去性の観点から、使用時のpHが、通常8.0〜13.0であり、好ましくは9.0〜13.0であり、さらに好ましくは9.5〜12.0である。洗浄剤の使用時のpHが8.0未満、もしくはpHが13.0を超えると、銅がイオン化しやすく、銅配線耐腐食性が悪化する。
【0033】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤には、洗浄性能を損なわない範囲で、(A)、(B)、および水以外に、必要に応じて、その他の成分として、ポリフェノール系還元剤(カテコール、カフェー酸、アリザリン、エンドクロシン、ウルシオール、フラボン、レゾルシノール、ヒドロキノン、エモジン、ピロガロール、没食子酸など)、第4級アンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、(ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)など)、酸化抑制剤(アスコルビン酸、アデノシンなど)などの添加剤を添加しても良い。
【0034】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および必要によりその他の成分を水と混合することによって製造することができる。
混合する方法としては、特に限定されないが、容易かつ短時間で均一に混合できるという観点等から、水とアミン(A)を混合し、続いてグアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、必要によりその他の成分を混合する方法が好ましい。
均一混合する際の温度及び時間には制限はなく、製造する規模や設備等に応じて適宜決めることができる。
混合装置としては、撹拌機又は分散機等が使用できる。
撹拌機としては、メカニカルスターラー及びマグネチックスターラー等が挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられる。
【0035】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線を有する半導体基板、半導体素子、半導体洗浄性評価用の銅メッキ基板などに使用することができる。
【0036】
銅配線を有する半導体基板又は半導体素子などを洗浄する洗浄方法としては、枚葉方式とバッチ方式が挙げられる。枚葉方式は、一枚ずつ半導体基板又は半導体素子を回転させ、銅配線半導体用洗浄剤を注入しながら、ブラシを用いて洗浄する方法であり、バッチ方式とは複数枚の半導体基板又は半導体素子を銅配線半導体用洗浄剤に漬けて洗浄する方法である。
【0037】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線を有する半導体基板又は半導体素子を製造する過程において、レジスト現像後、ドライエッチング後、ウェットエッチング後、ドライアッシング後、レジスト剥離後、CMP処理前後及びCVD処理前後等の洗浄工程に使用できる。特に、有機残渣除去性と金属残渣除去性の観点から、CMP処理後の洗浄工程に用いることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0039】
実施例1〜7、および比較例1〜3
ポリエチレン製容器内で表1および表2に記載の配合を行い、本発明の銅配線半導体用洗浄剤(F−1)〜(F−7)、および比較のための洗浄剤(F’−1)〜(F’−3)を得た。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
本発明の銅配線用半導体用洗浄剤(F−1)〜(F−7)、および比較のための銅配線半導体用洗浄剤(F’−1)〜(F’−3)について、銅配線耐腐食性、金属残渣除去性、有機残渣除去性、砥粒除去性を以下の方法で測定し、評価した。
評価結果を表1および表2に示す。
【0043】
<銅配線耐腐食性の評価方法>
銅配線の耐腐食性評価は、以下に示す手順によりおこなった。
(1)銅単層膜を有するウェハの前処理
銅単層膜を蒸着したウェハ(アドバスマテリアルズテクノロジー製、シリコン基板に銅金属を膜厚2μmで蒸着したもの)を、縦1.0cm×横2.0cmの切片に切断し、10%酢酸水溶液に1分間浸漬した後、超純水で洗浄した。
【0044】
(2)銅の抽出
前処理した銅単層膜を有するウェハの切片を、銅配線半導体用洗浄剤各10gに浸漬し、25℃で3分間静置した後、洗浄剤から取り出した。
【0045】
(3)銅イオン濃度の測定
切片を取り出した後の銅配線半導体用洗浄剤から5g秤量し、0.1%硝酸水溶液を加えてpHを3.0に調整した。その後、全量が10gになるまで超純水を加えて測定用試料液とした。
測定用試料液中の銅イオン濃度を、ICP−MS分析装置(誘導結合プラズマ質量分析装置)(アジレントテクノロジー社製、Agilent7500cs型)を用いて測定した。
【0046】
(4)銅イオンの溶出量の算出
銅イオンの濃度を下記数式(1)に代入し、銅イオンの溶出量(ng/cm)を算出した。
【0047】
【数1】

【0048】
Cucon:ICP−MS分析で定量した測定液中の銅イオン濃度(ppb(ng/g))
H1:試験片を浸漬させた銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
H2:pH調整前に取り出した銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
H3:測定液の液量(g)
CU:銅の単層膜を有するウェハにおける銅単層膜の面積(cm
【0049】
(5)銅配線耐腐食性の評価判定
算出した銅イオンの溶出量から、銅配線耐腐食性を評価し、銅単層膜を有するウェハ単位面積あたりの銅イオンの溶出量が少ないほど、銅配線耐腐食性が優れていると判定した。具体的には、以下の判定基準で銅配線耐腐食性を判定した。
○:15ng/cm未満
△:15ng/cm〜20ng/cm
×:20ng/cm以上
【0050】
<金属残渣除去性の評価方法>
金属残渣除去性の評価は、以下に示す手順によりおこなった。
(1)酸化シリコン単層膜を有するウェハの前処理
酸化シリコン単層膜を有するシリコンウェハ(アドバンテック社製、「P−TEOS1.5μ」、酸化シリコンの膜厚=1.5μm)を、縦1.0cm×横2.0cmの切片に切断し、10%酢酸水溶液に1分間浸漬した後、超純水で洗浄した。
【0051】
(2)金属イオンを含有する水溶液の調製
硝酸亜鉛0.1部、硝酸鉄0.1部および硝酸マグネシウム0.1部に、全量が100gになるように水を加え、亜鉛、鉄、マグネシウムの金属イオンをそれぞれ0.1重量%含有する水溶液を調製した。
【0052】
(3)金属イオン水溶液によるウェハの汚染処理
前処理したウェハの切片を、金属イオンを含有する水溶液10gに1分間浸漬した後、窒素ブローで乾燥させることにより、ウェハの表面に金属イオンを付着させた。
【0053】
(4)ウェハの洗浄
汚染処理したウェハの切片を、銅配線半導体用洗浄剤各10gに浸漬した。25℃で3分間静置した後、洗浄剤から取り出した。
【0054】
(5)ウェハの表面から洗浄剤中に溶出した金属イオン濃度の測定
浸漬させた後の銅配線半導体用洗浄剤を5g取り出し、硝酸水溶液でpHを3.0に調整した。
その後、全量が10gになるまで超純水を加えて測定液とした。測定液中に含有する亜鉛、鉄、およびマグネシウム金属イオンの濃度を、ICP−MS分析装置(誘導結合プラズマ質量分析装置)(アジレントテクノロジー社製、Agilent7500cs型)を用いて測定した。
【0055】
(6)ウェハの表面から洗浄剤中に溶出した金属イオンの溶出量の計算
下記数式(2)を用いて各金属イオンの溶出量を計算した。
【0056】
【数2】

【0057】
Metalcon:ICP−MS分析で定量した測定液中の各金属イオン濃度(ppb)
G1:試験片を浸漬させた銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
G2:pH調整前に取り出した銅配線半導体用洗浄剤の液量(g)
G3:測定液の液量(g)
SiO2:酸化シリコンの単層膜を有するウェハにおける酸化シリコン膜の面積(cm
【0058】
(7)金属残渣除去性の評価判定
算出した各金属イオンの溶出量の合計量から、金属残渣除去性を評価し、ウェハ単位面積あたりの金属イオンの溶出量が多いほど、金属残渣除去性が優れていると判定した。
具体的には、以下の判定基準で金属残渣除去性を判定した。
○:15ng/cm以上
△:10ng/cm〜15ng/cm
×:10ng/cm未満
【0059】
<有機残渣除去性の評価方法>
有機残渣除去性の評価は、以下に示す手順によりおこなった。
(1)銅メッキされたシリコンウェハの洗浄
シリコンウェハに銅メッキが施されたウェハ(アドバンスマテリアルテクノロジー社製、「Cuメッキ10000A Wafer」、銅メッキの膜厚=1.0μm)を、縦1.5cm×横1.5cmに切断し、10%酢酸水溶液中に1分間浸漬した後、超純水で洗浄した。
【0060】
(2)有機残渣液の調製
ベンゾトリアゾール0.4g、濃度30%の過酸化水素水0.6g、超純水200gを混合し、塩酸でpHが3.0になるように調整し、有機残渣液を作成した。
【0061】
(3)有機残渣を付着させた銅メッキウェハの作成
銅メッキウェハを(2)で調整した有機残渣液に60秒間浸漬した後、超純水に60秒間浸漬し、有機残渣を付着させた銅メッキウェハを作成した。
【0062】
(4)銅メッキウェハに付着させた有機残渣量の測定
有機残渣物であるベンゾトリアゾールに由来する窒素の量を、X線光電子分光(XPS)装置(アルバックファイ社製、ESCA−5400型)を用いて測定することによって、銅メッキウェハに付着した有機残渣量を測定した。
具体的には、XPSを用いて、結合エネルギー397eV〜399eVの範囲で光電子数の測定を行い、窒素に由来する397.5〜398.4eVの範囲におけるピーク面積値を求めた。軟X線は、MgKα線(1253.6eV)を使用した。
【0063】
(5)銅メッキウェハに付着させた有機残渣の除去
本発明及び比較用の銅配線半導体用洗浄剤各50gに、(3)で作成した有機残渣を付着させた銅メッキウェハを3分間浸漬し、銅メッキウェハから有機残渣を除去した。その後、超純水1Lに60秒間浸漬し、窒素気流でウェハ表面を乾燥させた。
【0064】
(6)銅メッキウェハに残留した有機残渣量の測定
有機残渣物であるベンゾトリアゾールに由来する窒素の量を、(4)と同様に、XPSを用いて測定することによって銅メッキウェハに残留した有機残渣量を測定した。
【0065】
(7)有機残渣除去性の評価判定
(4)と(6)のXPSで測定したそれぞれのピーク面積値を下記数式(3)に代入し、有機残渣除去率を算出した。
【0066】
【数3】

【0067】
Xa:有機残渣除去前のベンゾトリアゾール由来の窒素のピーク面積値
Xb:有機残渣除去後のベンゾトリアゾール由来の窒素のピーク面積値
【0068】
算出した有機残渣除去率から、以下の判定基準で有機残渣除去性を判定した。
○:有機残渣除去率が90%以上
×:有機残渣除去率が90%未満
【0069】
<砥粒除去性の評価方法>
砥粒除去性の評価は、以下に示す手順によりおこなった。
(1)銅メッキされたシリコンウェハの洗浄
有機残渣除去性の評価で使用したのと同じ銅メッキされたシリコンウェハを用いて同様の方法で洗浄した。
【0070】
(2)CMPスラリーによる汚染処理
洗浄した銅メッキされたシリコンウェハを、CMPスラリー(キャボット製、W7000、砥粒の主成分SiO、平均粒子径0.2μm)に1分間浸漬した後、窒素ブローで乾燥させた。
得られた汚染処理後ウェハを縦1.0cm×横1.5cmに切断して評価用サンプルを得た。
【0071】
(3)銅配線半導体用洗浄剤による洗浄
(2)で得られた評価用サンプルを、本発明と比較用の銅配線半導体用洗浄剤各10gに浸漬し、25℃で3分間静置した後、評価用サンプルを洗浄剤から取り出し、窒素ブローにて乾燥させた。
【0072】
(4)洗浄後の評価サンプル表面のSEM観察
(3)で得られた洗浄後の評価サンプルの表面を、SEM(日立ハイテクノロジー社製 走査型電子顕微鏡、機種名S−4800)を用い、10,000倍の倍率で観察した。
【0073】
(5)砥粒除去性の評価判定
SEM画像から、視野あたりの残存砥粒数が少ないほど砥粒除去性が優れていると判定した。
具体的には、10,000倍の倍率での視野内の残存砥粒数を確認し、以下の判定基準で判定した。
○:10個未満
△:10個〜20個
×:20個以上
【0074】
表1に示すように、実施例1〜7の本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線の耐腐食性、絶縁膜上の金属残渣と有機残渣と砥粒の除去性のすべてで良好な結果が得られた。
一方、表2に示すように、グアニジン塩を含まない比較例1は、金属残渣除去性が不良であり、塩の代わりにグアニジンそのものを用い洗浄剤のpHが13.0を超える比較例2は銅配線耐腐食性が不良で金属残渣除去性も不十分であった。また、洗浄剤のpHが8.0未満の比較例3は、有機残渣が不良で、銅配線耐腐食性と砥粒除去性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、銅配線の耐腐食性、絶縁膜上の金属残渣の除去性に優れ、ならびに研磨剤由来の有機残渣や砥粒の除去性に優れているため、銅または銅合金配線を形成する半導体製造工程中のCMP工程の後に続く工程において使用される洗浄剤として好適に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金配線を形成する半導体製造工程中の化学的機械的研磨の後に続く工程において使用される洗浄剤であって、アミン(A)、グアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩(B)、および水を必須成分とし、使用時のpHが8.0〜13.0であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項2】
該塩(B)が、その1%水溶液でのpHが7.0〜13.0の塩である請求項1の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項3】
該塩(B)の対アニオンが、炭酸アニオン、リン酸アニオンおよびスルファミン酸アニオンからなる群より選ばれる1種以上のアニオンである請求項1または2記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項4】
銅または銅合金配線を形成する半導体製造工程中の化学的機械的研磨の後に続く工程において請求項1〜3いずれかの洗浄剤を使用して製造された半導体基板および半導体素子。

【公開番号】特開2012−21151(P2012−21151A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133560(P2011−133560)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】