説明

銅錯体

【課題】従来の銅錯体よりも発光強度の持続性に優れた銅錯体を提供する。
【解決手段】組成式(1):(Cu+)(L1a(L2b(L3c(X1dで表される銅錯体(L1は同一のCu+に配位可能な中性原子としてリン原子及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環中の窒素原子から選ばれる原子を3つ又は4つ有する分子であり、L1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子のうち2つ以上の原子はリン原子であり、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上はsp3炭素原子が結合していない。L2及びL3は、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンから選ばれるCu+に配位可能な原子又はイオンを有する分子であり、X1はアニオンであり、aは0.5を超える数でありb、c及びdは0以上の数である。)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する。)等に用いる発光材料として、イリジウム錯体を代表とする白金族金属を用いた燐光発光錯体が有望視されている。しかし、イリジウム原子は白金族金属の中でも希少であり、非常に高価である。そのため、コスト面で有利である安価な金属を用いる錯体として、単座又は2座型のトリアリールホスフィン誘導体を配位子として用いた銅錯体が報告されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−129499号公報
【特許文献2】特開2006−286749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子等に用いる発光材料として、安定に発光することが重要である。しかし、上述した銅錯体は、発光強度の持続性が十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、従来の銅錯体よりも発光強度の持続性に優れた銅錯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第1に、下記の銅錯体を提供する。
[1]組成式(1)で表される銅錯体。
(Cu+)(L1a(L2b(L3c(X1d (1)
(組成式中、
1は、同一のCu+に配位可能な中性原子として、リン原子及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環中の窒素原子からなる群から選ばれる原子を3つ又は4つ(但し、窒素原子含有五員環中の同一のCu+に配位可能な窒素原子の数は、窒素原子含有五員環の数とする。)有する分子であり、L1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子のうち2つ以上の原子はリン原子であり、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2は、Cu+に配位可能な原子又はイオンとして、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンからなる群から選ばれる原子又はイオンを有する分子である。L2が有するCu+に配位可能な原子及びイオンの総数は2つである。
3は、Cu+に配位可能な原子又はイオンとして、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンからなる群から選ばれる原子又はイオンを有する分子である。
1は、アニオンである。
aは、0.5を超える数である。b、c及びdは、それぞれ独立に、0以上の数である。
複数個のL1が存在する場合、各々のL1は互いに同一でも異なっていてもよい。複数個のL2が存在する場合、各々のL2は互いに同一でも異なっていてもよい。複数個のL3が存在する場合、各々のL3は互いに同一でも異なっていてもよい。複数個のX1が存在する場合、各々のX1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
[2]組成式(1)において、L1が、下記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)又は(Bc)で表される分子である[1]に記載の銅錯体。
【化1】

(式中、
1Aaは、−P(R11Aa2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Aaは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。
2Aaは、−P(R22Aa)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Aaは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。
2つのQ1Aa及びQ2Aaからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Aaは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Aaが直接結合であるのは、結合したQ1Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。各々のR2Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。
11Aa、R22Aa、R2Aa及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ〜2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化2】

(式中、
1Abは、−P(R11Ab2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Abは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Abは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Abは互いに同一でも異なっていてもよい。
3つのQ1Abからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
3Abは、炭素原子数50以下の3価の基である。
11Ab、R3Ab及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化3】

(式中、
1Baは、−P(R11Ba2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Baは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Baは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
2Baは、−P(R22Ba)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Baは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR22Baは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ2Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
2つのQ1Ba及び2つのQ2Baからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Baは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Baが直接結合であるのは、結合したQ1Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。各々のR2Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
11Ba、R22Ba、R2Ba及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化4】

(式中、
1Bbは、−P(R11Bb2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Bbは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。
2Bbは、−P(R22Bb)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Bbは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR22Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。
3つのQ1Bb及びQ2Bbからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Bbは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Bbが直接結合であるのは、結合したQ1Bbが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Bbが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。
3Bbは、炭素原子数50以下の3価の基である。
11Bb、R22Bb、R2Bb、R3Bb及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化5】

(式中、
1Bcは、−P(R11Bc2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Bcは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。
3Bcは、リン原子又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基である。
3つのQ1Bc及びQ3Bcからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Bcは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Bcが直接結合であるのは、結合したQ1Bcが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ3Bcが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基である場合である。各々のR2Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。
11Bc、R2Bc及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は3つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
[3]式(Aa)中のR2Aa、式(Ba)中のR2Ba、式(Bb)中のR2Bb及び式(Bc)中のR2Bcからなる群から選ばれる1つ以上の基が、それぞれ独立に、直接結合であるか、又は、置換基を有していてもよい下記式r1〜r12のいずれかで表される2価の基である、[2]に記載の銅錯体。
【化6】

(式中、
1は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、−N(R50)−、−Si(R512−、−O(C(R512mm−、又は、−O(C(R512mm−O−で表される2価の基である。
2は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、又は、−Si(R512−で表される2価の基である。
mmは1〜3の整数である。
50は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリール基であり、R51は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。各々のR51は互いに同一でも異なっていてもよい。)
[4]式(Aa)において、R11Aa及びR22Aaが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基である、[2]又は[3]に記載の銅錯体。
[5]式(Bc)において、R11Bcが、置換基を有していてもよいアリール基である、[2]又は[3]に記載の銅錯体。
[6]組成式(1)において、X1がハロゲン化物イオンである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[7]組成式(1)において、aが1.0である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[8]組成式(1)において、bが0である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[9]組成式(1)において、cが0である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[10]組成式(1)において、L1が、Cu+に配位可能な中性原子として、置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物中の窒素原子を1つ以上有する分子であり、該窒素原子とCu+との距離が2.40Å以下である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の銅錯体。
【0007】
本発明は第2に、下記の膜を提供する。
〔12〕上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の銅錯体を含む膜。
【0008】
本発明は第3に、下記の発光素子を提供する。
〔13〕上記〔1〕〜〔12〕のいずれか一項に記載の銅錯体を含む発光素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の銅錯体は、従来の銅錯体に比べて発光強度の持続性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。
【0011】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が無置換の場合及び水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の双方を含む。置換基によって置換されている場合の置換基としては、特に説明のない限り、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基が更に好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基が特に好ましい。
【0012】
本明細書において、Meはメチル基、n−Buはn−ブチル基、t−Buはtert−ブチル基、n−Hexはn−ヘキシル基、Phはフェニル基を表す。
【0013】
本明細書において、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基と記載されている場合、これらは直鎖状でも分岐構造をとっていてもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0014】
本発明の銅錯体は、前記組成式(1)で表される。
【0015】
Cu+に配位可能なリン原子としては、例えば、3価のリン原子が挙げられる。
【0016】
Cu+に配位可能な窒素原子としては、例えば、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物中の窒素原子、窒素原子含有複素環式化合物から水素原子を1〜3つ除いた基中の窒素原子、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基中の窒素原子、置換基を有していてもよいアルキルアリールアミノ基中の窒素原子、置換基を有していてもよいイミノ基中の窒素原子、及び、ニトリル基中の窒素原子が挙げられる。
【0017】
窒素原子含有五員環中の窒素原子とは、窒素原子含有五員環を構成する窒素原子を意味する。窒素原子含有五員環とは、複素環のうち、1つ以上の窒素原子を含有する五員環を意味する。窒素原子含有五員環は、単環であってもよいし、他の環と縮合している縮合環であってもよい。
【0018】
窒素原子含有五員環化合物とは、複素環である窒素原子含有五員環を含む窒素原子含有複素環式化合物を意味する。
【0019】
本発明において、窒素原子含有五員環中の配位可能な窒素原子の数は、窒素原子含有五員環の数とする。一例を挙げると、窒素原子含有五員環1つ中に配位可能な窒素原子が1つ含まれる場合には、配位可能な窒素原子の数は1つと数える。他の例を挙げると、窒素原子含有五員環1つ中に配位可能な窒素原子が2つ含まれる場合にも、配位可能な窒素原子の数は1つと数える。これは、コンホメーションと配位距離の観点から、1つの窒素原子含有五員環中にある複数の窒素原子が、同一のCu+には配位しないためである。
【0020】
更に他の例を挙げると、窒素原子含有五員環を2つ含む分子1つ中に、配位可能な窒素原子が、それぞれの五員環に1つずつ含まれる場合には、配位可能な窒素原子の数は2つと数える。
【0021】
配位可能な酸素原子としては、例えば、水素原子が結合した酸素原子、及び、第15族元素が結合した酸素原子が挙げられる。
配位可能な硫黄原子としては、例えば、水素原子が結合した硫黄原子、アルキルメルカプト基中の硫黄原子、及び、第15族元素が結合した硫黄原子が挙げられる。
配位可能なヒ素原子としては、例えば、3価のヒ素原子が挙げられる。
酸素アニオンとしては、例えば、O-が挙げられる。
硫黄アニオンとしては、例えば、S-が挙げられる。
【0022】
組成式(1)中、L1は、同一のCu+に配位可能な中性原子として、リン原子及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環中の窒素原子からなる群から選ばれる原子を3つ又は4つ(但し、窒素原子含有五員環中の同一のCu+に配位可能な窒素原子の数は、窒素原子含有五員環の数とする。)有する分子である。L1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子のうち2つ以上の原子はリン原子であり、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。なお、L1は中性分子であることが好ましい。
【0023】
1が有する配位可能な中性原子は、同一のCu+に配位可能である。即ち、L11分子中にある、Cu+に配位可能な中性原子3つ又は4つは、いずれも、同一のCu+に配位可能である。複数の原子が同一のCu+に配位可能な条件としては、例えば、配位可能な原子同士が近接することが挙げられる。L1が有するCu+に配位可能な複数の中性原子のうちから、任意に選ばれる2つの中性原子同士の距離は、いずれの中性原子を選んだ場合にも、コンホメーションによっては6Å以下、好ましくは5Å以下になり得る。中性原子同士の距離は、密度汎関数法により銅錯体の初期構造について構造最適化計算を行う手法によって求めることができる。一例を挙げると、汎関数としてB3LYP、基底関数として銅原子及びハロゲン原子にはLANL2DZ、その他の原子には6−31G(d)を用いる。計算プログラムとしてGaussian03(Gaussian Inc.製)を用いる。
【0024】
1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子として、リン原子及び窒素原子含有五員環中の窒素原子からなる群から選ばれる原子を3つ又は4つ(但し、窒素原子含有五員環中の同一のCu+に配位可能な窒素原子の数は、窒素原子含有五員環の数とする。)有する分子であり、L1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子のうち2つ以上の原子はリン原子である。即ち、L1は、同一のCu+に配位可能な中性原子として2つ以上のリン原子を有し、更に、リン原子及び窒素原子含有五員環中の窒素原子からなる群から選ばれる原子を1つ又は2つ有する。L1は、同一のCu+に配位可能な中性原子を、合計で3つ又は4つ有する。該窒素原子含有五員環の例としては、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール及びアザジアゾールが挙げられ、好ましくは、イミダゾール、オキサゾール又はオキサジアゾールであり、より好ましくは、イミダゾールである。
【0025】
1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子の組み合わせとして、好ましくは、リン原子4つ、リン原子3つ、リン原子2つと窒素原子1つ、及び、リン原子2つと窒素原子2つが挙げられ、より好ましくは、リン原子4つ、リン原子3つ、リン原子2つと窒素原子1つ、及び、リン原子2つと窒素原子2つが挙げられ、更に好ましくは、リン原子4つ、リン原子3つ、及び、リン原子2つと窒素原子1つが挙げられる。
【0026】
1が有する同一のCu+に配位可能なリン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。銅錯体の酸化に対する安定性が向上するので、好ましくは、L1が有する同一のCu+に配位可能なリン原子の全てにsp3炭素原子が結合していない。sp3炭素原子が結合していないリン原子は、sp2炭素原子3つが結合したリン原子であることが好ましい。
【0027】
組成式(1)で表される銅錯体において、L1はCu+に配位していることが好ましく、単座配位子としてCu+に配位しても、二座配位子としてCu+に配位しても、三座以上の配位子としてCu+に配位してもよいが、二座以上の配位子としてCu+に配位していることがより好ましく、三座以上の配位子としてCu+に配位していることが更に好ましい。
【0028】
1の炭素原子数は、通常12〜300であり、好ましくは22〜250であり、より好ましくは25〜200であり、更に好ましくは28〜150であり、特に好ましくは30〜125である。
【0029】
1の例としては、下記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子が挙げられる。これらのうち、式(Aa)、(Ba)及び(Bc)で表される分子が好ましく、式(Aa)及び(Bc)で表される分子がより好ましく、式(Aa)で表される分子が更に好ましい。
【0030】
【化7】

【0031】
式(Aa)中、Q1Aaは、−P(R11Aa2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Aaは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0032】
2Aaは、−P(R22Aa)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Aaは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。
【0033】
式(Aa)で表される分子において、銅錯体の発光強度の持続性がより優れるので、R11Aa及びR22Aaは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。
【0034】
2つのQ1Aa及びQ2Aaからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子はsp3炭素原子が結合していない。
【0035】
2Aaは炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Aaが直接結合であるのは、結合したQ1Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。各々のR2Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0036】
11Aa、R22Aa、R2Aa及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。
【0037】
式(Ab)中、Q1Abは、−P(R11Ab2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Abは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Abは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Abは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0038】
3つのQ1Abからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
【0039】
3Abは、炭素原子数50以下の3価の基である。
【0040】
11Ab、R3Ab及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。
【0041】
式(Ba)中、Q1Baは、−P(R11Ba2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Baは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Baは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0042】
2Baは、−P(R22Ba)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Baは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR22Baは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ2Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
2つのQ1Ba及び2つのQ2Baからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
【0044】
2Baは炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Baが直接結合であるのは、結合したQ1Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、または、結合したQ2Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。各々のR2Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0045】
11Ba、R22Ba、R2Ba及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。
【0046】
式(Bb)中、Q1Bbは、−P(R11Bb2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Bbは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0047】
2Bbは、−P(R22Bb)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Bbは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR22Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
3つのQ1Bb及びQ2Bbからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子はsp3炭素原子が結合していない。
【0049】
2Bbは炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Bbが直接結合であるのは、結合したQ1Bbが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Bbが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。
【0050】
3Bbは、炭素原子数50以下の3価の基である。
【0051】
11Bb、R22Bb、R2Bb、R3Bb及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。
【0052】
式(Bc)中、Q1Bcは、−P(R11Bc2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Bcは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0053】
式(Bc)で表される分子において、銅錯体の発光強度の持続性がより優れるので、R11Bcは、置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。
【0054】
3Bcは、リン原子又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基である。
【0055】
3つのQ1Bc、及び、Q3Bcからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上の基にはsp3炭素原子が結合していない。
【0056】
2Bcは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Bcが直接結合であるのは、結合したQ1Bcが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ3Bcが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基である場合である。各々のR2Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0057】
11Bc、R2Bc及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は3つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。
【0058】
上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子は、同一のCu+に配位可能な2つ以上のリン原子を有する。該リン原子のうち1つ以上のリン原子はsp3炭素原子が結合していない。銅錯体の酸化に対する安定性がより向上するので、好ましくは、L1が有するリン原子の全てにsp3炭素原子が結合していない。sp3炭素原子が結合していないリン原子は、sp2炭素原子3つが結合したリン原子であることが好ましい。
【0059】
上記式(Aa)及び(Ab)で表される分子において、配位可能な原子の組み合わせは、好ましくは、リン原子3つ、又は、リン原子2つと窒素原子1つであり、より好ましくは、リン原子3つである。
【0060】
上記式(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子において、配位可能な原子の組み合わせは、好ましくは、リン原子4つ、又は、リン原子2つと窒素原子2つであり、より好ましくは、リン原子4つである。
【0061】
上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基の例は、窒素原子含有五員環化合物のうち水素原子を1つ以上もつ化合物の構造から(好ましくは、環を構成する炭素原子から)1つの水素原子を除いた基が挙げられる。窒素原子含有五員環化合物の例としては、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、及び、アザジアゾールが挙げられ、好ましくは、イミダゾール、オキサゾール又はオキサジアゾールであり、より好ましくは、イミダゾールである。
【0062】
上記の置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されている炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜24のヒドロカルビルオキシ基、及び、炭素原子数12〜24のジアリールアミノ基が挙げられる。
これらのうち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基、フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ジナフチルアミノ基が好ましく、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロへキシル基、アダマンチル基、エテニル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基、フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、及び、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基がより好ましく、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、エテニル基、フェニルメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、及び、フェノキシ基が更に好ましく、
フッ素原子、塩素原子、メチル基、ブチル基、メトキシ基、ブトキシ基、及び、フェノキシ基が特に好ましい。
【0063】
置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物が有し得る該置換基の数は、0〜4個であることが好ましく、0〜3個であることがより好ましく、0〜2個であることが更に好ましく、特に好ましくは1〜2個である。
【0064】
置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物が有し得る該置換基同士が縮合して環構造を形成してもよい。例えば、イミダゾールの4,5−位にエテニル基が結合し、該エテニル基同士が縮合して環(好ましくは、ベンゼン環)を形成してもよい。
【0065】
上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例を以下に示す。
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素原子数3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;
エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜50のアルケニル基;
フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基等の炭素原子数6〜50のアリール基;
フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜50のアラルキル基。
【0066】
個々の事例について特に記載が無い場合、上記ヒドロカルビル基は、好ましくは、メチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、シクロへキシル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基、又は、フェニルメチル基であり、
より好ましくは、tert−ブチル基、シクロへキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、又は、4−シクロヘキシルフェニル基であり、
更に好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、又は、4−ヘキシルフェニル基であり、
特に好ましくは、フェニル基、又は、2−メチルフェニル基である。
【0067】
上記の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されている炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜24のヒドロカルビルオキシ基、及び、炭素原子数12〜24のジアリールアミノ基が挙げられる。
好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基、フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、又は、ジナフチルアミノ基である。
より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、シクロへキシル基、アダマンチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、9−フルオレニル基、フェニルメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、又は、ジナフチルアミノ基であり、
更に好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、フェニルメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、又は、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基であり、
特に好ましくは、フッ素原子、メチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、又は、ジフェニルアミノ基である。
【0068】
上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)、及び、(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいアルキル基の、アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜30の直鎖状ヒドロカルビル基が挙げられるが、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、及び、2−エチルヘキシル基等の分岐構造を有するアルキル基でもよく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、及び、アダマンチル基等の環状構造を有するアルキル基でもよい。
好ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、又は、シクロへキシル基であり、より好ましくは、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、又は、オクチル基であり、更に好ましくは、メチル基である。
【0069】
前記置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基の、窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基の例は、前記窒素原子含有五員環化合物の例のうち水素原子を2つ以上もつ化合物の構造から(好ましくは、環を構成する炭素原子から)2つの水素原子を除いた基と同様の例が挙げられる。
前記置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基の、窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基の例は、前記窒素原子含有五員環化合物の例のうち水素原子を3つ以上もつ化合物の構造から(好ましくは、環を構成する炭素原子から)3つの水素原子を除いた基と同様の例が挙げられる。
前記置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基及び前記置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基が有していてもよい置換基の例は、前記置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基が有し得る置換基の例と同様の例が挙げられる。
【0070】
前記R2Aa、R2Ba、R2Bb及びR2Bcで表される2価の基(以下、R2Xxで表される2価の基と記す)の例としては、以下の基が挙げられる。
【0071】
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルカンジイル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2〜30のアルケンジイル基;置換基を有していてもよい主鎖炭素原子数2〜30のアルキンジイル基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜30のシクロアルカンジイル基;置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基と、−O−及び/又は−S−と、を組み合わせてできる2価の基;置換基を有していてもよい下記式r1〜r12のいずれかで表される2価の基(より具体的には下記式r1'〜r12'のいずれかで表される2価の基)。
【0072】
【化8】

(式中、
1は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、−N(R50)−、−Si(R512−、−O(C(R512mm−、又は、−O(C(R512mm−O−で表される基である。
2は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、又は、−Si(R512−で表される基である。
mmは1〜3の整数である。
50は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基であり、R51は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。複数のR51は同じでも異なっていてもよい。)
【0073】
上記R50で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基の、炭素原子数6〜30のアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、及び、9−フルオレニル基が挙げられる。
好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、又は、4−ヘキシルフェニル基であり、
より好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、又は、4−ヘキシルフェニル基であり、
更に好ましくは、フェニル基である。
【0074】
上記R51で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例は、前記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例と同じである。
【0075】
ヒドロカルビル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜30のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素原子数3〜30の環状飽和ヒドロカルビル基;
フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基等の炭素原子数6〜30のアリール基である。
より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数1〜18のアルキル基;
フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基等の炭素原子数6〜24のアリール基であり、
更に好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、フェニル基であり、
特に好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0076】
上記の置換基を有していてもよい式r1〜r12で表される基の例である、置換基を有していてもよいr1’〜r12’で表される基を以下に示す。
【0077】
【化9】

(式中、
3は、−(C(R532n−、−O−、−S−、−N(R52)−、又は、−Si(R532−で表される基である。
nは1又は2である。
52は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基であり、R53は水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基である。複数のR53は同じでも異なっていてもよい。)
【0078】
上記R52で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基の、炭素原子数6〜18のアリール基の例と好ましい構造は、前記R50で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基の、炭素原子数6〜30のアリール基の例及び好ましい構造のうち、炭素原子数が1〜18の例及び好ましい構造と同様である。
【0079】
上記R53で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基の、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基の例と好ましい構造は、前記R51で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基の、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の例及び好ましい構造のうち、炭素原子数が1〜18の例及び好ましい構造と同様である。
【0080】
前記R2Xxで表される2価の基としては、置換基を有していてもよい前記式r1〜r12のいずれかで表される基が好ましく、
置換基を有していてもよい前記式r1、r2、r5、r6、r8及びr9のいずれかで表される基、前記式r10で表される基であって式中のY1が−O−又は−N(R50)−である基、前記式r11で表される基であって式中のY1が−O−又は−S−である基、前記式r12で表される基であって式中のY1が−O−であり、Y2が−C(R512−である基、及び、前記式r12で表される基であって式中のY1が−O−であり、Y2が−Si(R512−である基がより好ましく、
置換基を有していてもよい前記式r1'、r5'、r6'及びr10'のいずれかで表される基、前記式r12'で表される基であって、式中のY3が−C(CH32−である基、及び、前記式r12'で表される基であって、式中のY3が−Si(CH32−である基が更に好ましい。
【0081】
前記L1がR2Xxで表される2価の基を1つ以上有する場合、L1が有するR2Xxのうちの1つ以上のR2Xxは前記式r1’で表される基であることが好ましく、L1が有する全てのR2Xxが前記式r1’で表される基であることがより好ましい。
【0082】
前記R2Xxで表される2価の基が有し得る置換基の例としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されている炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜24のヒドロカルビルオキシ基、及び、炭素原子数12〜24のジアリールアミノ基が挙げられる。
好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロへキシル基、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2−フェニルフェニル基、2−フェニルエチル基、メトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、フェニルチオ基、又は、ジフェニルアミノ基であり、
より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロへキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、メトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、又は、ジフェニルアミノ基であり、
更に好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、又は、メトキシ基であり、
特に好ましくは、フッ素原子、又は、メチル基である。
【0083】
前記R2Xxで表される2価の基が有し得る置換基の数は、0〜4個であることが好ましく、0〜3個であることがより好ましく、0〜2個であることが更に好ましく、特に好ましくは0個である。R2Xxで表される2価の基が前記r1’〜r12’で表される基であり、置換基を有する場合、前記置換基は以下に示す位置が望ましい。
r1’:好ましくは、2’及び3’から選ばれる少なくとも1箇所;
r2’:好ましくは、2’、3’、4’及び5’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び5’の2箇所、又は、3’及び4’の2箇所;
r3’:好ましくは、2’、3’、4’、5’、6’及び8’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、4’のみの1箇所、2’及び6’の2箇所、3’及び5’の2箇所、2’、4’及び6’の3箇所、又は、3’、4’及び5’の3箇所;
r4’:好ましくは、2’、3’、4’、5’、6’及び7’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び7’の2箇所、3’及び6’の2箇所、又は、4’及び5’の2箇所;
r5’:好ましくは、2’、3’、4’、5’、6’及び7’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び7’の2箇所、又は、3’及び6’の2箇所、更に好ましくは、2’及び7’の2箇所;
r6’:好ましくは、2’、3’、4’、5’、8’、9’、10’及び11’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び11’の2箇所、3’及び10’の2箇所、又は、4’及び9’の2箇所;
r7’:好ましくは、2’、3’、4’、5’、6’及び7’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び7’の2箇所;
r8’:好ましくは、2’、3’、5’、6’、7’、8’、9’及び10’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び6’の2箇所、又は、3’及び5’の2箇所;
r9’:好ましくは、2’及び5’から選ばれる少なくとも1箇所;
r10’:好ましくは、2’、3’、4’、5’、6’及び7’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び7’の2箇所、又は、3’及び6’の2箇所、更に好ましくは、2’及び7’の2箇所;
r11’:好ましくは、2’、3’、4’及び5’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’及び5’の2箇所;
r12’でY3が−CH2−である場合:2’、3’、4’、5’及び7’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、7’における2箇所と、2’、3’、4’及び5’から選ばれる少なくとも1箇所の合計少なくとも3箇所、より好ましくは、7’における2箇所と、2’、3’、4’及び5’から選ばれる少なくとも2箇所の合計少なくとも4箇所、更に好ましくは、7’における2箇所と、2’及び5’の2箇所との合計4箇所;
r12’でY3が−CH2−以外である場合:2’、3’、4’及び5’から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’、3’、4’及び5’から選ばれる少なくとも2箇所、より好ましくは、2’及び5’の2箇所。
【0084】
前記R3Ab、及びR3Bbで表される3価の基の例としては、下記式r31及びr32のいずれかで表される基が挙げられる。
【0085】
【化10】

(式r31及びr32中、
4は、C、Si、又は、Bである。
5、Y6及びY7は、それぞれ独立に、直接結合、又は、置換基を有していてもよい−(CH2n−であり、該CH2は隣同士でない限り任意の数だけOに置き換わってもよく、nは1〜8の整数である。各々のY5は互いに同一でも異なっていてもよい。各々のY6は互いに同一でも異なっていてもよい。各々のY7は互いに同一でも異なっていてもよい。
31は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基である。
32は直接結合又は置換基を有していてもよい上記r1〜r12のいずれかで表される基である。
33は上記式r1〜r12のいずれかで表される基である。
各々のR32は互いに同一でも異なっていてもよい。r32中の各々のR33は互いに同一でも異なっていてもよい。
5、Y6、Y7、R31、R32及びR33からなる群から選ばれる2つ以上の基が任意に結合して環を形成してもよい。)
【0086】
上記R31における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例及び好ましい例は、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例及び好ましい例と同じである。該R31における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有し得る置換基の例及び好ましい例も、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0087】
上記R32及びR33は、好ましくは、置換基を有していてもよい前記式r1、r2、r4、r5、r8又はr10で表される基であり、
より好ましくは、置換基を有していてもよい前記式r1、r2、r5又はr10で表される基である。
上記R32及びR33が有し得る置換基の例及び好ましい例は、前記R2Xxで表される2価の基が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0088】
前記式(Aa)におけるQ1AaとQ2Aaの好ましい組み合わせは、1つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、もう1つのQ1Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Q2Aaが−P(R22Aa)−であり、R11Aa及びR22Aaが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基である組み合わせ;2つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、Q2Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基であり、R11Aaが置換基を有していてもよいアリール基である組み合わせ;2つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、Q2Aaが−P(R22Aa)−であり、R11Aa及びR22Aaが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基である組み合わせ;であり、
より好ましくは、1つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、もう1つのQ1Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Q2Aaが−P(R22Aa)−であり、R11Aa及びR22Aaが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基である組み合わせ;2つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、Q2Aaが−P(R22Aa)−であり、R11Aa及びR22Aaが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基である組み合わせ;であり、
更に好ましくは、1つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、もう1つのQ1Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Q2Aaが−P(R22Aa)−であり、R11Aa、R22Aaが置換基を有していてもよいフェニル基である組み合わせ;2つのQ1Aaが−P(R11Aa2であり、Q2Aaが−P(R22Aa)−であり、R11Aa及びR22Aaが置換基を有していてもよいフェニル基である組み合わせ;である。
【0089】
前記式(Aa)におけるQ1AaとQ2Aaのそれぞれの組み合わせに対する好ましいR2Aaの構造は、R2Xxで表される2価の基について説明した通りである。
【0090】
前記式(Ab)におけるQ1Ab及びR3Abの好ましい組み合わせは、2つのQ1Abが、−P(R11Ab2であり、もう1つのQ1Abが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、R11Abが置換基を有していてもよいアリール基であり、R3Abが上記置換基を有していてもよい式r31とr32のいずれかで表される基である組み合わせ;3つのQ1Abが、−P(R11Ab2であり、R11Abが置換基を有していてもよいアリール基であり、R3Abが上記置換基を有していてもよい式r31とr32のいずれかで表される基である組み合わせ;であり、
より好ましくは、2つのQ1Abが、−P(R11Ab2であり、もう1つのQ1Abが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、R11Abが置換基を有していてもよいフェニル基であり、R3Abが上記置換基を有していてもよい式r31とr32のいずれかで表される基である組み合わせである。
【0091】
前記式(Ba)におけるQ1Ba、Q2Ba及びR2Baの組み合わせとして、好ましくは、2つのQ1Baが−P(R11Ba2であり、2つのQ2Baが−P(R22Ba)−であり、R11Ba及びR22Baが置換基を有していてもよいアリール基であり、2つのR2Baが置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基である組み合わせ;2つのQ1Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、2つのQ2Baが−P(R22Ba)−であり、R22Baが置換基を有していてもよいアリール基であり、2つのR2Baが直接結合か若しくは置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基である組み合わせ;であり、
より好ましくは、2つのQ1Baが−P(R11Ba2であり、2つのQ2Baが−P(R22Ba)−であり、R11Ba及びR22Baが置換基を有していてもよいフェニル基であり、R2Baが置換基を有していてもよい上記式r1’〜r12’のいずれかで表される基である組み合わせである。
【0092】
前記式(Bb)におけるQ1Bb、Q2Bb、R2Bb、R3Bbの組み合わせとして、好ましくは、3つのQ1Bbが−P(R11Bb2であり、Q2Bbが、P(R22Bb)−であり、R11Bb及びR22Bbが置換基を有していてもよいフェニル基であり、R2Bbが置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基であり、R3Bbが置換基を有していてもよい上記式r31とr32のいずれかで表される基である組み合わせが挙げられる。
【0093】
前記式(Bc)におけるQ1BcとQ3Bcの組み合わせとして、好ましくは、3つのQ1Bcが−P(R11Bc2であり、Q3BcがPであり、R11Bcが置換基を有していてもよいアリール基であり、R2Bcが置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基である組み合わせ;3つのQ1Bcのうち2つが−P(R11Bc2であり、1つが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Q3BcがPであり、R11Bcが置換基を有していてもよいアリール基であり、R2Bcが直接結合か若しくは置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基である組み合わせ;3つのQ1Bcのうち1つが−P(R11Bc2であり、2つが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Q3BcがPであり、R11Bcが置換基を有していてもよいアリール基であり、R2Bcが直接結合か若しくは置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基である組み合わせ;であり、
より好ましくは、3つのQ1Bcが−P(R11Bc2であり、Q3BcがPであり、R11Bcが置換基を有していてもよいフェニル基であり、R2Bcが置換基を有していてもよい上記式r1’〜r12’のいずれかで表される基である組み合わせ;3つのQ1Bcのうち2つが−P(R11Bc2であり、1つが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Q3BcがPであり、R11Bcが置換基を有していてもよいフェニル基であり、R2Bcが直接結合か若しくは置換基を有していてもよい上記式r1’〜r12’のいずれかで表される基である組み合わせ;であり、
更に好ましくは、3つのQ1Bcが−P(R11Bc2であり、Q3BcがPであり、R11Bcが置換基を有していてもよいフェニル基であり、R2Bcが置換基を有していてもよい上記式r1’〜r12’のいずれかで表される基である組み合わせ;である。
【0094】
1の構造例としては、置換基を有していてもよい下記式Aa1〜31、Ab1〜4、Ba1〜8、Bb1、及び、Bc1〜11で表される分子が挙げられる。
【0095】
【化11】

【0096】
【化12】

【0097】
【化13】

【0098】
【化14】

【0099】
【化15】

【0100】
【化16】

【0101】
式中、
71は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基である。
72は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、メトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェニルオキシ基、又は、ジフェニルアミノ基である。
74は、−C(R732−である。R73は水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基である。
mは1〜12の数である。mが2以上である場合、C(R732は隣同士でない限り任意の数だけOに置き換わってもよい。
複数個のR71が存在する場合、各々のR71は互いに同一でも異なっていてもよい。各々のR72は互いに同一でも異なっていてもよい。各々のR73は互いに同一でも異なっていてもよい。式中に複数個のR74が存在する場合、各々のR74は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0102】
Ar1は、置換基を有していてもよいフェニル基である。各々のAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。Ar2は、置換基を有していてもよいフェニレン基である。
【0103】
10は、−(C(R752)−、−O−、又は、−S−で表される基である。
11は、−(C(R752)−、−O−、−S−、又は、−Si(R752−で表される基である。
75は水素原子又は置換基されていてもよい炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基である。
複数個のY10が存在する場合、各々のY10は互いに同一でも異なっていてもよい。式中に複数個のY11が存在する場合、各々のY11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0104】
上記R71は、好ましくは、水素原子、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、又は、ドデシル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、又は、ドデシル基であり、更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ブチル基であり、特に好ましくは、メチル基である。
【0105】
上記R72は、好ましくは、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、メトキシ基、又は、ジフェニルアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、オクチル基、又は、メトキシ基であり、更に好ましくは、水素原子又はフッ素原子である。
【0106】
上記R74は、−C(R732−であり、R73は、好ましくは、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0107】
mは、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは4〜9の整数である。
【0108】
Ar1は、好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−ジフェニルアミノフェニル基、4−ジフェニルアミノフェニル基、3−ビス(2−メチルフェニル)アミノフェニル基、3−ビス(4−メチルフェニル)アミノフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、2,6−ジメトキシ基、3,4,5−トリメトキシ基、3,5−ジメトキシ基、3,5−ジ−tert−ブチル基、又は、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシ基であり、
より好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−ジフェニルアミノフェニル基、4−ジフェニルアミノフェニル基、3−ビス(2−メチルフェニル)アミノフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、2,6−ジメトキシ基、3,5−ジメトキシ基、又は、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシ基であり、
更に好ましくは、フェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−ジフェニルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、又は、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシ基であり、
特に好ましくは、無置換のフェニル基である。
【0109】
Ar2は、好ましくは、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、3−メチル−1,2−フェニレン基、4−メチル−1,2−フェニレン基、5−メチル−1,2−フェニレン基、6−メチル−1,2−フェニレン基、6−ブチル−1,2−フェニレン基、6−メトキシ−1,2−フェニレン基、6−メチル−1,3−フェニレン基、6−メチル−1,4−フェニレン基、6−メトキシ−1,3−フェニレン基、又は、6−フルオロ−1,3−フェニレン基であり、
より好ましくは、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、6−メチル−1,2−フェニレン基、6−メチル−1,3−フェニレン基、6−メチル−1,4−フェニレン基、6−メトキシ−1,3−フェニレン基、又は、6−フルオロ−1,3−フェニレン基であり、
更に好ましくは、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、6−メチル−1,3−フェニレン基、又は、6−フルオロ−1,3−フェニレン基であり、
特に好ましくは、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、又は、1,4−フェニレン基である。
【0110】
10は、好ましくは−CH2−又は−O−であり、より好ましくは−O−である。
11は、好ましくは、−C(CH32−、−O−、−Si(CH32−、−Si(n−C6132−、又は、−Si(Ph)2−であり、更に好ましくは、−C(CH32−、−Si(CH32−、又は、−Si(Ph)2−であり、特に好ましくは、−Si(CH32−である。
【0111】
上記L1の構造例のうち、好ましくは、式Aa1〜Aa31、Ba1〜Ba8、又は、Bc1〜Bc11で表される分子であり、より好ましくは、式Aa1〜Aa31、及び、Bc1〜Bc11のいずれかで表される分子であり、更に好ましくは、式Aa1〜Aa31のいずれかで表される分子であり、特に好ましくは、式Aa1、Aa2、Aa7、Aa10、Aa11、Aa16、Aa19、Aa20、Aa25、Aa26、Aa27、Aa28、Aa29、Aa30又はAa31で表される分子である。
【0112】
1のより具体的な構造例としては、下記式Aa2’、Aa4’、Aa13’、Aa20’、Aa25’、Ba1’、Ba3’、Ba5’、Ba6’、Ba7’、Bc1’、Bc4’、Bc9’及びBc11’で表される分子が挙げられる。
【0113】
【化17】

【0114】
【化18】

【0115】
1は、上記の構造例のうち、好ましくは、式Aa2’、Aa4’、Aa13’、Aa20’、Aa25’、Bc1’、Bc4’、Bc9’又はBc11’で表される分子であり、より好ましくは、Aa2’、Aa4’、Aa13’、Aa20’、Aa25’又は、Bc1’で表される分子であり、更に好ましくは、Aa2’、Aa20’、Aa25’又はBc1’で表される分子である。
【0116】
組成式(1)におけるL2は、Cu+に配位可能な原子又はイオンとして、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンからなる群から選ばれる原子又はイオンを有する分子である。L2が有するCu+に配位可能な原子及びイオンの総数は2つである。
【0117】
組成式(1)で表される銅錯体において、L2はCu+に配位していることが好ましく、単座配位子としてCu+に配位しても、二座配位子としてCu+に配位してもよいが、二座配位子としてCu+に配位していることがより好ましい。
【0118】
2の炭素原子数は、通常2〜250であり、好ましくは3〜200であり、より好ましくは4〜150であり、更に好ましくは6〜100であり、特に好ましくは10〜80である。
【0119】
2としては、下記式(E)で表される分子が好ましい。
1E−R2E−Q1E (E)
(式(E)中、
1Eは、−P(R11E2、−(P=O)(R12E2、−(P=S)(R13E2、−As(R14E2、水酸基、−O-、カルボキシル基、−CO2-、メルカプト基、−S-、−SR15E、スルホ基、−SO3-、−N(R16E2、又は、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基であり、2つのQ1Eは同じでも異なっていてもよく、2つのQ1Eが結合して環を形成してもよい。R11E〜R14Eは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、R15E及びR16Eは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基であり、2つのR11E、2つのR12E、2つのR13E、2つのR14E、及び、2つのR16Eは同じでも異なっていてもよい。
2Eは2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Eが直接結合であるのは、2つのQ1Eのいずれか一方が置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基の場合である。R11E、R12E、R13E、R14E、R15E、R16E、R2E、及び、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環から水素原子を1つ除いた基からなる群から選ばれる2以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【0120】
11E〜R14Eにおける置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例及び好ましい例は、それぞれ、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例及び好ましい例と同様である。R11E〜R14Eにおける置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有し得る置換基の例及び好ましい例も、それぞれ、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0121】
15E及びR16Eにおける置換基を有していてもよいアルキル基の、アルキル基の例及び好ましい例は、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいアルキル基の、アルキル基の例及び好ましい例と同様である。R15E及びR16Eにおける置換基を有していてもよいアルキル基が有し得る置換基の例及び好ましい例も、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいアルキル基が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0122】
1Eにおける置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物の、窒素原子含有複素環式化合物の例としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、アザジアゾール、及び、アクリジンが挙げられ、好ましくは、ピリジン、イミダゾール、キノリン、及び、イソキノリンであり、より好ましくは、ピリジン、イミダゾール、及び、キノリンであり、更に好ましくは、ピリジンである。
【0123】
該窒素原子含有複素環式化合物が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜24のヒドロカルビルオキシ基、及び、炭素原子数12〜24のジアリールアミノ基が挙げられ、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基、フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、及び、ジナフチルアミノ基が好ましく、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロへキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基、フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、及び、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基がより好ましく、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニルメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、及び、ジフェニルアミノ基が更に好ましく、
フッ素原子、塩素原子、メチル基、ブチル基、メトキシ基、及び、ブトキシ基が特に好ましい。
【0124】
該窒素原子含有複素環式化合物が有し得る該置換基の数は、0〜4個であることが好ましく、0〜3個であることがより好ましく、0〜2個であることが更に好ましく、特に好ましくは1〜2個である。
【0125】
2Eにおける2価の基の例及び好ましい例は、前記R2Xxで表される2価の基の例及び好ましい例と同様である。
【0126】
上記式(E)で表される分子において、2つのQ1Eの組み合わせは、好ましくは、−P(R11E22つ、−As(R14E22つ、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基2つ、−O-と−P(R11E2が1つずつ、−CO2-と−P(R11E2が1つずつ、又は、−S-と−P(R11E2が1つずつであり、より好ましくは、−P(R11E22つ、又は、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基2つであり、更に好ましくは、−P(R11E22つである。
【0127】
前記L2の構造例としては、置換基を有していてもよい下記式a1〜a37、b1〜b11、c1〜c39、及びd1〜d30で表される分子が挙げられる。
【0128】
【化19】

【0129】
【化20】

【0130】
【化21】

【0131】
上記式a1〜a37、b1〜b11、c1〜c39、d1〜d30で表される分子のうち、L2は、好ましくは、式a1〜a16、a25〜a37、c1〜c6、c12〜c39、d22〜d24、又は、d26で表される分子であり、
より好ましくは、式a1〜a2、a4〜a8、a10〜a12、a15〜a16、a25〜a32、c1〜c4、c14〜c39、d22、d23、又は、d26で表される分子であり、
更に好ましくは、式a2、a4〜a7、a10、a15、a25〜a26、a30〜a32、c3、c15、c17〜c25、c28〜c39、d22、d23、又は、d26で表される分子であり、
特に好ましくは、式a6、a7、a25、a26、a31、c3、c15、c22、又は、c23で表される分子である。
【0132】
組成式(1)において、L3は、Cu+に配位可能な原子又はイオンとして、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンからなる群から選ばれる原子又はイオンを1つ有する分子である。
【0133】
3の炭素原子数は、通常2〜150であり、好ましくは3〜100であり、より好ましくは4〜75であり、更に好ましくは5〜60であり、特に好ましくは6〜50である。
【0134】
3は、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物で表される分子、P(R11F3で表される分子、(P=O)(R12F3で表される分子、(P=S)(R13F3で表される分子、As(R14F3で表される分子、R15F−OHで表される分子、R16F−O-で表されるイオン、R17F−CO2Hで表される分子、R18F−CO2-で表されるイオン、R19F−SHで表される分子、R20F−Sで表されるイオン、R21F−SO3Hで表される分子、R22F−SO3-で表されるイオン、N(R23F2で表されるイオン、又は、N(R24F3で表される分子であることが好ましい。
【0135】
ここで、R11F〜R23Fは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもいてよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。R24Fは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基である。3つのR11F、3つのR12F、3つのR13F、3つのR14F、2つのR23F、及び、3つのR24Fは同じでも異なっていてもよい。
【0136】
3つのR11Fのうち任意の2つ以上は結合して環を形成してもよく、3つのR12Fのうち任意の2つ以上は結合して環を形成してもよく、3つのR13Fのうち任意の2つ以上は結合して環を形成してもよく、3つのR14Fのうち任意の2つ以上は結合して環を形成してもよく、2つのR23Fは結合して環を形成してもよく、3つのR24Fのうち任意の2つ以上は結合して環を形成してもよい。
【0137】
3としての、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物の、窒素原子含有複素環式化合物の例並びに好ましい例は、上記L2中おける置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物の例及び好ましい例と同様である。L3としての、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物が有し得る置換基の例及び好ましい例も、上記L2中おける置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0138】
11F〜R23Fにおける置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例及び好ましい例は、それぞれ、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基の例及び好ましい例と同様である。R11F〜R23Fにおける置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有し得る置換基の例及び好ましい例も、それぞれ、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0139】
24Fにおける置換基を有していてもよいアルキル基の、アルキル基の例及び好ましい例は、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいアルキル基の例及び好ましい例と同様である。R24Fにおける置換基を有していてもよいアルキル基が有し得る置換基の例及び好ましい例も、上記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)で表される分子中における置換基を有していてもよいアルキル基が有し得る置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0140】
3は、好ましくは、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物で表される分子、P(R11F3で表される分子、R16F−O-で表されるイオン、R18F−CO2-で表されるイオン、R20F−S-で表されるイオン、R22F−SO3-で表されるイオン、及び、N-(R23F2で表されるイオンであり、より好ましくは、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環式化合物で表される分子、P(R11F3で表される分子、及び、R20F−S-で表されるイオンであり、更に好ましくは、窒素原子含有複素環式化合物で表される分子及びP(R11F3で表される分子であり、特に好ましくは、P(R11F3で表される分子である。
【0141】
前記L3の構造例としては、置換基を有していてもよい下記式e1〜e32で表される分子が挙げられる。
【0142】
【化22】

【0143】
上記式e1〜e32で表される分子のうち、L3は、好ましくは、式e1〜e13、e16〜e20、e25、e26、e28又はe32で表される分子又はイオンであり、より好ましくは、e1〜e13及びe16〜e20のいずれかで表される分子であり、更に好ましくは、e1〜e13のいずれかで表される分子である。
【0144】
組成式(1)で表される銅錯体において、X1はアニオンである。具体的には、例えば、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモナートイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、及び、これらのイオンを有する繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。好ましくは、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンであり、より好ましくは、ハロゲン化物イオンであり、更に好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、又は、ヨウ化物イオンである。
【0145】
組成式(1)において、aは0.5を超える数であり、好ましくは0.5より大きく2.0以下の数であり、より好ましくは0.5より大きく1.5以下の数であり、更に好ましくは0.9より大きく1.5以下の数であり、特に好ましくは1.0である。
【0146】
組成式(1)において、bは0以上の数であり、好ましくは0〜1.5の数であり、より好ましくは0〜1.0の数であり、更に好ましくは0〜0.3の数又は1.0であり、特に好ましくは0である。
【0147】
組成式(1)において、cは0以上の数であり、好ましくは0〜1.5の数であり、より好ましくは0〜1.0の数であり、更に好ましくは0〜0.3の数又は1.0であり、特に好ましくは0である。
【0148】
組成式(1)において、dは0以上の数であり、好ましくは0.5〜1.5の数又は0であり、より好ましくは0.6〜1.0の数又は0であり、更に好ましくは0.7〜1.3の数であり、特に好ましくは1.0である。
【0149】
本発明の銅錯体は、単核錯体、2核錯体、及び、3核錯体以上の錯体のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよいが、好ましくは単核錯体又は2核錯体であり、より好ましくは単核錯体である。
【0150】
本発明の銅錯体の具体例を、表1−1及び表1−2に示す。なお、各化合物番号の化合物の前記組成式(1)におけるa、b、c及びdの数は、表1−1及び表1−2において省略されているが、各化合物のL1、L2、L3及びX1のそれぞれに応じて、前記a、b、c及びdに関する記載に基づき適切な数をとることができる。
【0151】
表1−1及び表1−2中、「―」は含まれない旨を示す。
【0152】
【表1−1】

【0153】
【表1−2】

【0154】
表1−1及び表1−2に示される組み合わせのうち、化合物番号1〜43、及び、69〜89で示される組み合わせが好ましく、化合物番号1〜43で示される組み合わせがより好ましく、化合物番号1〜9及び25〜38で示される組み合わせが更に好ましく、化合物番号2〜5、26〜29、及び、31〜34で示される組み合わせが特に好ましい。
【0155】
本発明の銅錯体の代表例を以下に示す。式4’、31’、58’、78’及び84’で表される錯体はそれぞれ、前記化合物番号4、31、58、78及び84で示される組み合わせを有する代表的な錯体である。
【0156】
【化23】

【0157】
本発明の銅錯体において、L1が、Cu+に配位可能な窒素原子として、置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物中の窒素原子を1つ以上有する場合に、L1中のCu+に配位可能な全ての窒素原子とCu+との距離は、2.40Å以下であることが好ましい。窒素原子とCu+との距離は、短い方が結合エネルギーが強くなり発光強度の持続性がより優れるので、L1中のCu+に配位可能な全ての窒素原子とCu+との距離は、より好ましくは2.30Å以下であり、更に好ましくは2.20Å以下であり、特に好ましくは2.18Å以下である。
本発明の銅錯体において、L1が、Cu+に配位可能な窒素原子として、置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物中の窒素原子を1つ以上有する場合に、L1中のCu+に配位可能な全ての窒素原子とCu+との距離は、通常1.85Å以上である。
【0158】
Cu+に配位可能な窒素原子とCu+との距離は、密度汎関数法により銅錯体の初期構造について構造最適化計算を行う手法によって求めることができる。一例としては、汎関数としてB3LYP、基底関数として銅原子及びハロゲン原子にはLANL2DZ、その他の原子には6−31G(d)を用い、計算プログラムはGaussian03(Gaussian Inc.製)を用いる。なお、前記組成式(1)におけるL2及びL3のいずれもがCu+に配位可能なアニオンを有さず、かつ、Xがフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンのいずれでもない場合は、総電荷を+1とする。L2及びL3のいずれか1つ以上がCu+に配位可能なアニオンを有するか又はXがフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンのいずれかの場合は、総電荷を0とする。
【0159】
本発明の銅錯体は、例えば、溶媒中で銅塩と前記L1、L2及びL3に相当する分子とを混合する方法によって製造できる。
【0160】
本発明の銅錯体の製造方法の例について、前記式31’で表される錯体を例に挙げて説明すると、1mmolの塩化銅(I)と、1mmolのAa25’で表される分子と、溶媒(例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン)50mLとを混合し、30分程度加熱し還流させる。反応液をろ過し、ろ液の溶媒をゆっくりと留去して再結晶することにより、前記式31’で表される錯体を製造することができる。
【0161】
本発明は、前記銅錯体を含む膜を提供する。
【0162】
本発明が提供する膜の厚さは、下限値は通常、1nm以上であり、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、更に好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。上限値は通常、100μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは2.5μm以下である。膜はピンホール又は凹凸の形状を含んでいてもよいが、ピンホール及び凹凸の形状は含まないことが好ましい。
【0163】
本発明の膜は、例えば、銅錯体と他の成分とを任意の割合で基板上に蒸着する工程を含む方法、又は、銅錯体と他の成分とを任意の割合で基板上に塗布する工程を含む方法によって製造することができる。好ましくは、銅錯体と他の成分とを任意の割合で溶媒中に懸濁又は溶解させ塗布する工程を含む方法によって製造される。
【0164】
前記塗布する工程に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0165】
溶媒を乾燥させる方法の例としては、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥、及び、窒素ガスを吹き付けて行う乾燥が挙げられ、風乾又は加熱乾燥が好ましく、加熱乾燥がより好ましい。
【0166】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、及び、オフセット印刷法が挙げられ、スピンコート法、キャスティング法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、及び、オフセット印刷法が好ましい。
【0167】
本発明の膜は、その他の成分を含んでいてもよい。該成分には、低分子有機材料、高分子有機材料、有機無機複合材料、無機材料及びそれらの混合物が使用でき、用途に応じて任意に選択できる。該成分としては、例えば、フルオレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリジミン誘導体、トリアジン誘導体、ポリアセン誘導体、アリールシラン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン等)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を含有してもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)、及びこれらの混合物が挙げられ、
好ましくは、フルオレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリジミン誘導体、トリアジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ポリアセン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、チオフェンオリゴマー、ジフェニルキノン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン等)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、及び、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)であり、
より好ましくは、フルオレン誘導体、ピリジミン誘導体、トリアジン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、及び、フタロシアニン誘導体であり、
更に好ましくは、フルオレン誘導体、トリアジン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、及び、アリールアミン誘導体である。
【0168】
本発明の膜中の銅錯体の含量は、膜全体の重量に対して、通常、0.01〜100重量%であり、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは1〜90重量%であり、更に好ましくは5〜80重量%であり、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0169】
本発明の膜が、他の成分として高分子有機材料を含む場合、高分子有機材料のポリスチレン換算の数平均分子量は、通常、1×103〜1×108であり、好ましくは1×103〜1×107であり、より好ましくは2×103〜1×106であり、更に好ましくは3×103〜5×105であり、特に好ましくは5×103〜1×105である。
【0170】
本発明の膜が、他の成分として高分子有機材料を含有する場合、膜における銅錯体の含有量は、膜全体の重量に対して、通常、0.01〜99.99重量%であり、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは1〜90重量%であり、更に好ましくは5〜80重量%であり、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0171】
本発明はまた、本発明の銅錯体を含む発光素子を提供する。本発明の発光素子は、通常は、本発明の膜を含有する。該発光素子は、通常、陽極と陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられた発光層を有する1層又は複数層からなる薄膜層とが挟持されている発光素子であり、該薄膜層から選ばれる1層以上の層が、本発明の銅錯体を含有する発光素子である。
【0172】
本発明の発光素子において、本発明の銅錯体を含む膜中の該銅錯体の含有量は、該層全体の重量に対し、通常0.01〜100重量%であり、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは1〜90重量%であり、更に好ましくは5〜80重量%であり、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0173】
本発明の発光素子としては、単層型の発光素子(陽極/発光層/陰極)、及び、多層型の発光素子が挙げられる。多層型の発光素子の層構成としては、例えば、以下の層構成が挙げられる。
(a)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極(d)陽極/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
【0174】
前記(a)〜(e)において、(正孔輸送層)及び(電子輸送層)は、その位置にこれらの層がそれぞれ存在していてもしなくてもよい任意の層であることを表す。
【0175】
本発明の発光素子において、該発光素子を構成するいずれかの層が本発明の銅錯体を含有していればよく、その層は限定されないが、発光層であることが好ましい。
【0176】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等の層に正孔を供給する。陽極は、4.5eV以上の仕事関数を有することが好ましい。陽極の材料には、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの組み合わせを用いることができ、具体的には、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;前記導電性金属酸化物と前記金属との混合物及び積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン類、ポリチオフェン類〔ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン等〕、ポリピロール等の有機導電性材料、及び、これらとITOとの組み合わせ、を用いることができる。
【0177】
陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給する。陰極の材料には、例えば、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、及び、これらの組み合わせを用いることができ、具体的には、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K等)及びそのフッ化物並びに酸化物;アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba、Cs等)及びそのフッ化物並びに酸化物;金、銀、鉛、アルミニウム、合金及び混合金属類〔ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等〕;希土類金属〔インジウム、イッテルビウム等〕を用いることができる。
【0178】
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、又は陰極から注入された電子を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料の例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及び、これらの残基を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。正孔注入層及び正孔輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0179】
電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、又は陽極から注入された正孔を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料の例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン等)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、及び、有機シラン誘導体が挙げられる。電子注入層及び電子輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0180】
電子注入層及び電子輸送層の材料として、絶縁体、半導体等の無機化合物も使用できる。電子注入層及び電子輸送層が絶縁体又は半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、例えば、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物が挙げられ、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS又はCaSeが好ましい。半導体としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選ばれる1種の元素の、酸化物、窒化物、及び、酸化窒化物が挙げられる。
【0181】
本発明の発光素子において、陰極と陰極に接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。前記還元性ドーパントとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体が挙げられる。
【0182】
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層より正孔を注入することができ、陰極、電子注入層又は電子輸送層より電子を注入することができる機能、注入した電荷を電界の力で移動させる機能、及び、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能のいずれかを有する。ゲスト材料として本発明の銅錯体を発光層に含有させてもよいし、ゲスト材料である本発明の銅錯体に加えてさらにホスト材料を発光層に含有させてもよい。
ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料のT1エネルギーは、ゲスト材料のT1エネルギーより大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことが更に好ましい。ホスト材料は低分子有機化合物であっても、高分子有機化合物であってもよい。ホスト材料は更に電解質を含有してもよく、該電解質としては、例えば、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を含有してもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)及び該溶媒で膨潤したゲル状の高分子(ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、及びフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体等)が挙げられる。
【0183】
本発明の発光素子において、各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法〔抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等〕、スパッタリング法、LB法、分子積層法、及び、塗布法〔キャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等〕が挙げられるが、製造プロセスを簡略化できる点で、塗布法が好ましい。前記塗布法では、例えば、各層の材料である、前記銅錯体、前記高分子有機化合物、又は、それらの組成物等を、溶媒と混合して塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布・乾燥させることによって、各層を形成することができる。塗布液中にはホスト材料及び/又はバインダーとしての樹脂を含有させてもよい。この樹脂を塗布液に含有させる場合には、溶媒に溶解状態とすることも、分散状態とすることもできる。
【0184】
樹脂としては、ポリビニルカルバゾール等の非共役系高分子、ポリオレフィン系高分子等の共役系高分子を使用することができるが、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、PMMA、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、及び、シリコン樹脂が挙げられる。樹脂の溶液は、更に、酸化防止剤、粘度調整剤等を含有してもよい。前記溶液に用いられる溶媒としては、薄膜の成分を均一に溶解する溶媒又は安定な分散液を与える溶媒が好ましく、例えば、アルコール類〔メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等〕、ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン等〕、塩素化炭化水素類〔クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等〕、芳香族炭化水素類〔ベンゼン、トルエン、キシレン等〕、脂肪族炭化水素類〔ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等〕、アミド類〔ジメチルホルムアミド等〕、スルホキシド類〔ジメチルスルホキシド等〕、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0185】
インクジェット印刷法において、例えば、ノズルからの溶媒の蒸発を押さえるために高沸点の溶媒〔アニソール、ジエチレングリコール、ビシクロヘキシルベンゼン等〕を用いることができる。溶液の粘度は、25℃において、1〜100mPa・sが好ましい。
【0186】
本発明の発光素子の各層の厚さは、0.3nm〜100μmが好ましく、0.5nm〜1μmがより好ましく、1nm〜200nmが更に好ましい。
【0187】
本発明の発光素子は、例えば、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッド等に用いることができる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動技術、駆動回路等を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成とした装置が挙げられる。
【実施例】
【0188】
次に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0189】
NMR測定にはVarian社製300MHzNMRスペクトロメータ−を、DART−MS測定には日本電子社製のThe AccuTOF TLC(JMS−T100TD)を用いた。CHN元素分析にはエレメンタール社製vorio ELによる自動分析法を、Clの元素分析にはメトローム社製716DMS Tittinoによるフラスコ燃焼−電位差滴定法を用いた。分取用GPCには、展開溶媒をクロロホルムとして、日本分析工業社製LC908−C60、同社製カラムJAIGEL−1H−40及びJAIGEL−2H−40を用いた。
【0190】
<実施例1>(表1−1における化合物番号31の化合物の合成)
ビス−(o−ジフェニルホスフィノフェニル)フェニルホスフィン(表1−1の化合物番号31に示されるAa25’である。)を、J.Chem.Soc.3930−3936(1963)に記載の方法で合成した。
【0191】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、塩化銅(I)(7.11mg,0.0718mmol)のジクロロメタン3mL懸濁液に、ビス−(o−ジフェニルホスフィノフェニル)フェニルホスフィン(45.3mg,0.0718mmol)を加え、40℃で10分撹拌した。得られた反応液をろ過し、ろ液を濃縮し、クロロホルムに溶解させ、ジエチルエーテルを徐々に拡散させて再結晶を行い、結晶を乾燥させて、黄色結晶の錯体(表1−1における化合物番号31の化合物)を26.3mg得た。
【0192】
【化24】

【0193】
得られた錯体のNMRデータを下記に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm)=7.97(br,4H),7.61(br,2H),7.41(t,J=7.5Hz,2H),7.33−7.15(m,17H),7.01(t,J=7.5Hz,4H),6.56(br,4H);31P NMR(122MHz,CDCl3) δ(ppm)=−5.1(br,W1/2=500Hz),−13.8(br,W1/2=390Hz).
【0194】
得られた錯体の元素分析測定の結果を下記に示す。
Anal.Calcd for C4233ClP3Cu・0.5H2O(%):C,68.29;H,4.64;N,0.00;Cl,4.80.found:C,68.13;H,4.44;N,<0.3;Cl,4.54.
【0195】
得られた錯体の組成比は、収量、1H NMR、31P NMR、及び、元素分析値から決定した。
【0196】
<実施例2>(表1−1における化合物番号2の化合物の合成)
・式Aa2’で表される分子の合成
【0197】
【化25】

【0198】
N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)ベンズイミダゾールを、Org.Biomol.Chem.3297−3302(2006)に記載の方法で合成した。
【0199】
50mLシュレンク管に、1−ブロモ−2−ジフェニルホスフィノベンゼン(2.93g,8.59mmol)、及び、脱水THF15mLを入れ、−65℃に冷却し、撹拌しながらn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.6mol/L,5.5mL,n−ブチルリチウムとして8.8mmol)を5分かけて滴下した。赤色に変化した反応液を、−35℃まで昇温して1時間撹拌することで反応液を得た。
50mLナス形フラスコに、フェニルジクロロホスフィン(1.57g,8.77mmol)、及び、脱水THF8mLを入れ、−65℃に冷却し、上記で得られた反応液をトランスファーチューブにより送液(「カヌラ送液」と呼ばれることがある。)して混合した。得られた反応液を徐々に室温(23℃)まで昇温しながら、12時間撹拌したところ、白濁化した反応液が得られた。
200mL4つ口ナス形フラスコに、N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)ベンズイミダゾール(2.52g,8.77mmol)、及び、脱水THF130mLを入れ、−65℃に冷却し、撹拌しながらn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.6mol/L,5.5mL,n−ブチルリチウムとして8.8mmol)を5分かけて滴下し、−40℃まで昇温して2時間撹拌した。赤色に変色した反応液を−60℃に再冷却し、上記で得られた白濁化した反応液をトランスファーチューブにより送液して混合した。得られた反応液を徐々に室温(23℃)まで昇温しながら終夜撹拌後、50℃で1時間撹拌した。得られた反応液に塩化アンモニウム水溶液、及び、クロロホルムを加えた後、クロロホルムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した後、分取用GPCにより、無色固体のダイホスフィン2酸化物を675mg(収率12.9%)得た。
【0200】
得られたダイホスフィン2酸化物のNMRデータを下記に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm)=7.57−6.98(m,27H),3.43(s,3H);31P NMR(122MHz,CDCl) δ(ppm)=32.8(dd,J=90,7Hz).
【0201】
得られたダイホスフィン2酸化物のDART−MS測定の結果を下記に示す。
DART−MS(M/Z):found;609.24.calcd;609.18(M+H)+
【0202】
【化26】

【0203】
100mL4つ口フラスコ内をアルゴン雰囲気とした後、ダイホスフィン2酸化物(500mg,0.822mmol)、トリエチルアミン3.94g、及び、脱水キシレン10mLを加え、0℃に冷却して、トリクロロシラン(5.00g,37.0mmol)を10分かけて滴下した。自然昇温により室温(23℃)に戻した後、130℃で12時間撹拌した。得られた反応液を室温(23℃)に戻し、30重量%水酸化ナトリウム水溶液5mLを滴下した後、キシレンを加えて抽出し、有機層を濃縮乾固した。残渣を展開溶媒クロロホルムのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、白色固体(式Aa2’で表される分子)を202mg(収率47.3%)得た。
【0204】
式Aa2’で表される分子のNMRデータを下記に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm)=7.62−6.80(m,27H),3.67(s,3H);31P NMR(122MHz,CDCl) δ(ppm)=−12.7(d,J=156Hz),−15.1(d,J=156Hz).
【0205】
式Aa2’で表される分子のDART−MS測定の結果を下記に示す。
DART−MS(M/Z):found;577.17.calcd;577.19(M+H)
【0206】
【化27】

【0207】
反応容器内において、塩化銅(I)(1.38mg,0.0139mmol)のアセトニトリル0.5mL懸濁液に式Aa2’で表される分子(8.04mg,0.0139mmol)を加え3分間撹拌後、ジクロロメタン2mLを加えて40℃で5分間撹拌した。得られた反応液を濃縮し、乾燥させて黄色固体の錯体(表1−1における化合物番号2の化合物)を9.42mg得た。
【0208】
<実施例3>(表1−1における化合物番号4の化合物の合成)
【0209】
【化28】

【0210】
反応容器内において、ヨウ化銅(I)(2.70mg,0.0142mmol)のアセトニトリル0.5mL懸濁液に、式Aa2’で表される分子(8.17mg,0.0142mmol)を加え3分間撹拌後、ジクロロメタン2mLを加えて40℃で5分間撹拌した。得られた反応液を濃縮し、乾燥させて黄色固体の錯体(表1−1における化合物番号4の化合物)を10.9mg得た。
【0211】
<実施例4>(表1−1における化合物番号5の化合物の合成)
【0212】
【化29】

【0213】
反応容器内において、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロホウ酸塩(4.30mg,0.0137mmol)のジクロロメタン1mL懸濁液に、式Aa2’で表される分子(7.88mg,0.0137mmol)を加えて、40℃で5分間撹拌した。得られた反応液を濃縮し、乾燥させて淡黄色固体の錯体(表1−1における化合物番号5の化合物)を12.2mg得た。
【0214】
<実施例5>(表1−1における化合物番号73の化合物の合成)
トリス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]ホスフィン(表1−1の化合物番号73に示されるBc1’である。)を、J.Chem.Soc.3930−3936(1963)に記載の方法で合成した。
【0215】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、テトラフルオロホウ酸テトラキス(アセトニトリル)銅(I)(192mg,0.610mmol)に、ジクロロメタン5mL、トリス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]ホスフィン(497mg,0.610mmol)を加え、40℃で10分間撹拌した。得られた反応液をろ過し、ろ液へジエチルエーテルを拡散させて再結晶を行い、結晶を乾燥させて、無色固体の錯体を622mg得た。
【0216】
【化30】

【0217】
得られた錯体のNMRデータを下記に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm)=8.96(br,3H),7.91(t,J=7.4Hz,3H),7.52(t,J=7.4Hz,3H),7.25−7.18(m,9H),6.98(t,J=7.4Hz,12H),6.87−6.81(m,12H).
【0218】
得られた錯体の元素分析測定の結果を下記に示す。
Anal.Calcd for C5442CuP4BF4・0.67CH2Cl2(%):C,64.26;H,4.27;N,0.00;Cu,6.22.found:C,64.47;H,4.40;N,<0.3;Cu,6.6.
【0219】
得られた錯体の組成比は、1H NMR、及び、元素分析値から決定した。
【0220】
<合成例1>
下記の錯体を、Inorg.Chem.1992−2001(2007)に記載の方法で合成した。
【0221】
【化31】

【0222】
<合成例2>
8−[[o−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェニルホスフィノ]−キノリンを、以下の方法で合成した。
【0223】
50mLシュレンク管に、1−ブロモ−2−ジフェニルホスフィノベンゼン(3.12g,9.14mmol)、及び、脱水THF15mLを入れ、−65℃に冷却し、撹拌しながらn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.6mol/L,5.5mL,n−ブチルリチウムとして8.8mmol)を5分かけて滴下した。赤色に変色した反応液を、−30℃まで昇温して2時間撹拌することで反応液を得た。
50mL4つ口ナス形フラスコに、フェニルジクロロホスフィン(1.58g,8.83mmol)、及び、脱水THF8mLを入れ、−50℃に冷却し、上記で得られた反応液をトランスファーチューブにより送液して混合した。得られた反応液を徐々に室温(23℃)まで昇温し、12時間撹拌したところ、白濁化した反応液が得られた。
200mL4つ口ナス形フラスコに、8−ブロモキノリン(1.85g,8.89mmol)、及び、脱水THF90mLを入れ、−65℃に冷却し、撹拌しながらn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.6M,5.5mL,n−ブチルリチウムとして8.8mmol)を5分かけて滴下し、−40℃まで昇温して2時間撹拌した。赤色に変色した反応液を−60℃に再冷却し、上記で得られた反応液をトランスファーチューブにより送液して混合した。得られた反応液を徐々に室温(23℃)まで昇温し、18時間撹拌した。得られた反応液に、塩化アンモニウム水溶液40mL、及び、クロロホルム250mLを加え、クロロホルムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した後、展開溶媒としてクロロホルムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を2回行い、乾燥させて黄色固体の8−[[o−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェニルホスフィノ]−キノリンを335mg(収率7.64%)得た。
【0224】
【化32】

【0225】
8−[[o−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェニルホスフィノ]−キノリンのNMR、DART−MS、元素分析測定データを下記にそれぞれ示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm)=8.77(br,1H),8.11(d,J=8.3Hz,1H),7.74(d,J=8.1Hz,1H)7.36−7.09(m,21H),6.90(br,1H);
31P NMR(122MHz,CDCl3) δ(ppm)=−12.5(d,J=167Hz),−20.1(d,J=167Hz);
DART−MS(M/Z):found;498.15.calcd;498.15(M+H)+ Anal.Calcd for C3325NP2・0.5H2O(%):C,78.25;H,5.17;N,2.77.found:C,78.12;H,5.14;N,2.83.
【0226】
<合成例3>
実施例2〜4で用いた式Aa2’で表される分子を8−[[o−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェニルホスフィノ]−キノリンとした以外は同様にして錯体を合成したが、紫外線で励起したところ、発光が非常に弱い錯体であった。
【0227】
[膜の調製]
<実施例6〜10及び比較例1>
実施例1の錯体をそれぞれ1重量%、PMMA6.2重量%のクロロホルム溶液をそれぞれ調製し、口径0.2μmのフィルターでろ過した約150mgを1cm×2cm角の石英基板上に載せた。これを、スピンコーター(有限会社押鐘製、SC−150)を用いて1000rpmで15秒間、1500rpmで60秒間スピンコートして膜を得た(実施例6)。
実施例1の錯体の代わりに、実施例2の錯体(実施例7)、実施例3の錯体(実施例8)、実施例4の錯体(実施例9)、実施例5の錯体(実施例10)、及び、合成例1の錯体(比較例1)を用いたほかは、同様にして膜を得た。
実施例1〜4の各錯体及び合成例1の錯体を用いた膜の厚さは、いずれも1.6μmであった。実施例5の錯体を用いて得られた膜の厚さは2.1μmであった。
【0228】
[発光強度の持続性]
発光量子効率の測定には、量子効率測定装置(住友重機械メカトロニクス社製)を用いた。機器構成は以下の通りである。光源はKimmon社製クラス3BのHe−Cd式CWレーザーを用いた。出射部にOFR社製のNDフィルターFDU0.5を挿入し、光ファイバーで積分球へ導いた。住友重機械メカトロニクス社製のオプテル部の積分球、ポリクロメーター、及び、CCDマルチチャンネル検出器を介し、KEYTHLEY社製の型式2400ソースメーターを連結して、パソコンでデータを取り込んだ。
【0229】
発光量子効率の測定は以下の通りで行った。室温窒素雰囲気下、積分球内に前記条件で調製した石英基板上のサンプルを配置し、レーザー励起光を325nmとし、CW光で、積分時間を300ms、励起光積分範囲を315〜335nm、PL波長積分範囲を390〜800nmとした。そして、住友重機械メカトロニクス社製の測定・解析ソフトの手順に従って、発光量子効率を算出した。
【0230】
発光強度の持続性は、実施例6〜10及び比較例1のそれぞれで調製したサンプルの、レーザー光照射180秒時点での発光量子効率を、レーザー光照射直後の発光量子効率で除して、減少率として求めた。
その結果、実施例1〜5の錯体のそれぞれから調製した膜(実施例6〜10)の減少率はそれぞれ、34%、34%、33%、6%、50%であった。合成例1の錯体から調製した膜(比較例1)の減少率は66%であった。
【0231】
これらの結果から、本発明の銅錯体は持続性に優れた発光強度を発現できることが分かる。
【0232】
[銅と窒素原子間の距離]
<計算例1>
実施例3の錯体のモデルとして、銅原子を1原子、式Aa2’で表される分子を1分子、ヨウ素原子を1原子用いた。初期配置として、式Aa2’で表される分子中に含まれる銅原子に配位可能なリン原子2つ及び窒素原子1つ、さらに、ヨウ素原子1つを全て銅原子から3.0Å以内の距離に設置し、Gaussian03プログラム(リビジョン D.02)の密度汎関数法を用い、構造最適化計算を行った。計算の結果、銅原子と窒素原子との距離は2.16Åであった。
【0233】
[発光素子の作製]
<実施例11>
ITO膜が付着したガラス基板上に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(Bayer製、商品名:Bytron P AI4083)の懸濁液をスピンコートにより70nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃、10分間乾燥させた。この上に、クロロホルム:1,2−ジクロロエタン=2:1(重量比)の溶媒を用いて実施例1の錯体を1.1重量%の濃度に調製した溶液をスピンコートにより1000rpmで15秒間、1500rpmで60秒間スピンコートして成膜し、100℃で20分間乾燥させた。続いて、陰極として、フッ化リチウムを1nm、最後にアルミニウムを80nm蒸着して、発光素子を作製した。得られた発光素子に電圧をかけることにより、18V印加時に輝度830cd/m2、12V印加時に発光効率1.5cd/Aの黄色発光を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(1)で表される銅錯体。
(Cu+)(L1a(L2b(L3c(X1d (1)
(組成式中、
1は、同一のCu+に配位可能な中性原子として、リン原子及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環中の窒素原子からなる群から選ばれる原子を3つ又は4つ(但し、窒素原子含有五員環中の同一のCu+に配位可能な窒素原子の数は、窒素原子含有五員環の数とする。)有する分子であり、L1が有する同一のCu+に配位可能な中性原子のうち2つ以上の原子はリン原子であり、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2は、Cu+に配位可能な原子又はイオンとして、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンからなる群から選ばれる原子又はイオンを有する分子である。L2が有するCu+に配位可能な原子及びイオンの総数は2つである。
3は、Cu+に配位可能な原子又はイオンとして、リン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ヒ素原子、酸素アニオン及び硫黄アニオンからなる群から選ばれる原子又はイオンを有する分子である。
1は、アニオンである。
aは、0.5を超える数である。b、c及びdは、それぞれ独立に、0以上の数である。
複数個のL1が存在する場合、各々のL1は互いに同一でも異なっていてもよい。複数個のL2が存在する場合、各々のL2は互いに同一でも異なっていてもよい。複数個のL3が存在する場合、各々のL3は互いに同一でも異なっていてもよい。複数個のX1が存在する場合、各々のX1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
組成式(1)において、L1が、下記式(Aa)、(Ab)、(Ba)、(Bb)又は(Bc)で表される分子である請求項1に記載の銅錯体。
【化1】

(式中、
1Aaは、−P(R11Aa2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Aaは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。
2Aaは、−P(R22Aa)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Aaは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。
2つのQ1Aa及びQ2Aaからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Aaは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Aaが直接結合であるのは、結合したQ1Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Aaが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。各々のR2Aaは互いに同一でも異なっていてもよい。
11Aa、R22Aa、R2Aa及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ〜2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化2】

(式中、
1Abは、−P(R11Ab2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Abは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Abは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Abは互いに同一でも異なっていてもよい。
3つのQ1Abからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
3Abは、炭素原子数50以下の3価の基である。
11Ab、R3Ab及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化3】

(式中、
1Baは、−P(R11Ba2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Baは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Baは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
2Baは、−P(R22Ba)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Baは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR22Baは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ2Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
2つのQ1Ba及び2つのQ2Baからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Baは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Baが直接結合であるのは、結合したQ1Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Baが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。各々のR2Baは互いに同一でも異なっていてもよい。
11Ba、R22Ba、R2Ba及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化4】

(式中、
1Bbは、−P(R11Bb2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Bbは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。
2Bbは、−P(R22Bb)−又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である。R22Bbは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR22Bbは互いに同一でも異なっていてもよい。
3つのQ1Bb及びQ2Bbからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Bbは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Bbが直接結合であるのは、結合したQ1Bbが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ2Bbが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を2つ除いた基である場合である。
3Bbは炭素原子数50以下の3価の基である。
11Bb、R22Bb、R2Bb、R3Bb及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は2つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【化5】

(式中、
1Bcは、−P(R11Bc2又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基である。R11Bcは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基であり、各々のR11Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。各々のQ1Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。
3Bcは、リン原子又は置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基である。
3つのQ1Bc及びQ3Bcからなる群から選ばれる2つ以上の基の各々はリン原子を含有し、該リン原子からなる群から選ばれる1つ以上のリン原子にはsp3炭素原子が結合していない。
2Bcは、炭素原子数50以下の2価の基であるか、又は、直接結合である。但し、R2Bcが直接結合であるのは、結合したQ1Bcが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ除いた基であるか、又は、結合したQ3Bcが置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を3つ除いた基である場合である。各々のR2Bcは互いに同一でも異なっていてもよい。
11Bc、R2Bc及び置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物から水素原子を1つ又は3つ除いた基からなる群から選ばれる2つ以上の基は、任意に結合して環を形成してもよい。)
【請求項3】
式(Aa)中のR2Aa、式(Ba)中のR2Ba、式(Bb)中のR2Bb及び式(Bc)中のR2Bcからなる群から選ばれる1つ以上の基が、それぞれ独立に、直接結合であるか、又は、置換基を有していてもよい下記式r1〜r12のいずれかで表される2価の基である、請求項2に記載の銅錯体。
【化6】

(式中、
1は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、−N(R50)−、−Si(R512−、−O(C(R512mm−、又は、−O(C(R512mm−O−で表される2価の基である。
2は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、又は、−Si(R512−で表される2価の基である。
mmは1〜3の整数である。
50は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリール基であり、R51は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50のヒドロカルビル基である。各々のR51は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
式(Aa)において、R11Aa及びR22Aaが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基である、請求項2又は3に記載の銅錯体。
【請求項5】
式(Bc)において、R11Bcが、置換基を有していてもよいアリール基である、請求項2又は3に記載の銅錯体。
【請求項6】
組成式(1)において、X1がハロゲン化物イオンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の銅錯体。
【請求項7】
組成式(1)において、aが1.0である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の銅錯体。
【請求項8】
組成式(1)において、bが0である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の銅錯体。
【請求項9】
組成式(1)において、cが0である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の銅錯体。
【請求項10】
組成式(1)において、L1が、Cu+に配位可能な中性原子として、置換基を有していてもよい窒素原子含有五員環化合物中の窒素原子を1つ以上有する分子であり、該窒素原子とCu+との距離が2.40Å以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の銅錯体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の銅錯体を含む膜。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の銅錯体を含む発光素子。

【公開番号】特開2012−232977(P2012−232977A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95728(P2012−95728)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】