説明

【課題】 カットに際しての動作性が良好な梳鋏を提供することである。。
【解決手段】 第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが組み合わされてなる鋏において、
前記鋏が完全に閉じられて前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とは互いの刃部の先端部同士のみが重なり合うよう構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば美・理容用の鋏、特に梳鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の梳鋏が提案されている。そして、この種の梳鋏の基本的構造は、図4に示される通りのものである。すなわち、図4中、21は鋏、22は第1の鋏半体、23は第2の鋏半体、24は第1の鋏半体22と第2の鋏半体23とを螺着する螺子である。そして、第2の鋏半体23に形成されている刃25は、図4からも判る通り、櫛状に構成されている。
【0003】
さて、前記第2の鋏半体23に形成されている櫛状の櫛刃25は、その先端部25aが第1の鋏半体22の嶺22bまで伸びている。
【特許文献1】特開2000−279654号公報
【特許文献2】特開2003−320180号公報
【特許文献3】特開2004−49349号公報
【特許文献4】特開2004−154303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した通り、従来の梳鋏における櫛刃25は、その櫛刃長が対向する刃の鋏半体22の嶺22bまで伸びていて、長いものである。
【0005】
ところで、本発明者は、この櫛刃25の長さが長い故に、種々の問題が引き起こされていることに気付くに至った。
【0006】
すなわち、櫛刃25であるが故に、その長さが長くなると、櫛刃25にはブレが出来やすい。かつ、ブレ量も大きくなる。ところで、櫛刃25が対向する刃に対して適切に密着してなければ、即ち、隙間が出来るようでは、髪の毛を綺麗にカット出来ない。逆に、圧着し過ぎた場合には、鋏の開閉動作(カット動作)に摩擦抵抗が大き過ぎ、カット動作がリズミカルにならず、仕事は上手く進まず、疲労感も大きくなり、これ、また、好ましくない。従って、櫛刃25にブレが出来ていると、刃同士に隙間が出来るか、逆に、圧着し過ぎるものとなるから、いずれにしても髪の毛を綺麗にカット出来ないものとなってしまう。
【0007】
更には、螺子24側に近い櫛刃25xの長さxと螺子24から遠い側の櫛刃25yの長さyとの長さは、例えば2〜3倍も異なっている。この為、髪の毛のカットに際して、螺子24側に近い櫛刃25xが対向する刃26に当接してから、螺子24から遠い側の櫛刃25yが対向する刃26に当接するまで、逆に、螺子24から遠い側の櫛刃25yが対向する刃26から離れてから、螺子24側に近い櫛刃25xが対向する刃26から離れるまでに要する鋏の開閉角度は、大きなものでなければならない。このことは、カットに際しての動作性がそれだけ悪いことになる。
【0008】
よって、本発明が解決しようとする課題は、カットに際しての動作性が良好な鋏を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが組み合わされてなる鋏において、
前記鋏が完全に閉じられて前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、前記櫛刃部の該重合部分における長さが最長でも3mmであるよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0010】
特に、第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが組み合わされてなる鋏において、
前記鋏が完全に閉じられて前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、前記櫛刃部の該重合部分における長さが0.1〜2mmであるよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0011】
或いは、第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが枢支されてなり、前記枢支点を中心として回動させられて閉じられた場合には前記第2の鋏半体の櫛刃部の先端が前記第1の鋏半体に重なり合うよう構成されてなる鋏において、
前記第2の鋏半体の櫛刃部の先端が、前記鋏の枢支点を通る該鋏の長手方向に沿った方向の仮想中心線を越えた1.5mm以内の領域にあるよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
特に、第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが枢支されてなり、前記枢支点を中心として回動させられて閉じられた場合には前記第2の鋏半体の櫛刃部の先端が前記第1の鋏半体に重なり合うよう構成されてなる鋏において、
前記第2の鋏半体の櫛刃部の先端が、前記鋏の枢支点を通る該鋏の長手方向に沿った方向の略仮想中心線上にあるよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0012】
若しくは、第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが組み合わされてなる鋏において、
前記鋏が完全に閉じられて前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とは互いの刃部の先端部同士のみが重なり合うよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0013】
又、上記鋏であって、第2の鋏半体の櫛刃部の先端が、鋏の長手方向における刃の長さの略半分の位置において最も突出した略円弧状の仮想線上にあるよう構成されてなることを特徴とする鋏によって解決される。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成させた本発明の鋏は、従来の鋏に比べて、櫛刃の長さが短い。
【0015】
すなわち、鋏が完全に閉じられて第1の鋏半体の刃部と第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、櫛刃部の重合部分における長さが3mm以下、特に、0.1〜2mmであるよう構成したり、或いは第2の鋏半体の櫛刃部の先端が鋏の枢支点を通る鋏の長手方向に沿った方向の仮想中心線を越えた1.5mm以内の領域にあるよう、特に、略仮想中心線上にあるよう構成したり、又は鋏が完全に閉じられて第1の鋏半体の刃部と第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、第1の鋏半体の刃部と第2の鋏半体の櫛刃部とは互いの刃部の先端部同士のみが重なり合うよう構成したので、従来の鋏に比べて、櫛刃の長さが短いものとなる。
【0016】
従って、櫛刃の先端側にブレが出来にくい。
【0017】
このことは、櫛刃とこれに対向する刃との間に、余計な隙間が出来にくく、かつ、圧着し過ぎることも起き難い。
【0018】
すなわち、櫛刃とこれに対向する刃との間に余計な隙間が無いことから、例えば髪の毛をカット出来ないと言ったことが無い。かつ、櫛刃とこれに対向する刃とが圧着し過ぎないから、鋏の開閉動作(カット動作)に際しての抵抗が大きいと言ったことが無い。つまり、髪の毛のカットをリズミカルに、かつ、スムーズに行える。
【0019】
又、櫛刃の長さが短くて済むことは、それだけ櫛刃を形成する作業性が良いことを意味する。かつ、材料も少なくて済むので、省資源の観点からも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図3は本発明になる鋏の一実施形態を示すもので、図1は第1の鋏半体の要部の平面図、図2は第2の鋏半体の要部の平面図、図3は第1の鋏半体と第2の鋏半体とが組み合わされた状態での要部の平面図である。尚、図1は第1の鋏半体の外面(第2の鋏半体と対向しない側の面)側が示されたものであり、図2は第2の鋏半体の外面(第1の鋏半体と対向しない側の面)側が示されたものである。
【0021】
各図中、Aは、本発明になる梳鋏である。
【0022】
梳鋏Aは、第1の鋏半体(非櫛刃)1と第2の鋏半体(櫛刃)2とが螺子3によって螺着された構造のものである。
【0023】
第1の鋏半体(非櫛刃)1は、上部(刃部)4と中部(螺着部)5と下部(指通部)6とからなる。そして、図1からも判る通り、刃部4の刃先7の全体形状がその真ん中辺りで多少凸状に膨出した円弧状に形成されている。すなわち、図1からも判る通り、本実施形態における第1の鋏半体(非櫛刃)1は、鋏Aの長手方向(図1中、上下方向)であって、かつ、螺子3が挿通される螺子孔8を通る中心線を多少(例えば、0.1〜2mm程度。本実施形態では、特に、1〜1.5mm程度。)越えた(図1で説明すると、中心線よりも右側に多少越えた)位置に、円弧状の刃先7があるように構成されている。
【0024】
第2の鋏半体(櫛刃)2は、上部(櫛刃部)9と中部(螺着部)10と下部(指通部)11とからなる。そして、図2からも判る通り、櫛刃部9の刃先13の形状が、その真ん中辺りで多少凸状に膨出した円弧状に形成されている。又、櫛刃部9であることから、勿論、櫛状にも形成されている。
【0025】
本発明にあっては、刃先13の全体形状が円弧状に形成されていると言うだけで無く、一つ一つの櫛刃9,9,……,9の長さが従来の梳鋏における櫛刃の長さよりも短い点にユニークさが有る。すなわち、図4との対比からも判る通り、一つ一つの櫛刃9,9,……,9の長さが、従来の梳鋏の一つ一つの櫛刃の長さの約2/3〜1/2程度の長さに設計されている。従って、図3に示される如く、鋏Aが完全に閉じられた状態(第1の鋏半体1の刃部4と第2の鋏半体2の櫛刃部9とが完全に重なり合った状態)において、第1の鋏半体1の刃部4と第2の鋏半体2の櫛刃部9とは互いの刃部の先端部同士のみが重なり合っているに過ぎないと言える程度に設計されている。更に具体的に説明すると、図3に示される如く、鋏Aが完全に閉じられた状態(第1の鋏半体1の刃部4と第2の鋏半体2の櫛刃部9とが完全に重なり合った状態)において、櫛刃部9と刃部4とが重なり合っている部分の長さが3mm以下(本実施形態の場合では、特に、1〜2mm)であるように櫛刃9,9,……,9の長さが設計されている。言い換えると、一つ一つの櫛刃9,9,……,9の先端が、螺子孔8,12を通る鋏Aの長手方向に沿った方向の仮想中心線を越えた1.5mm以内の領域(本実施形態の場合では、ほぼ仮想中心線上)にあるよう櫛刃9,9,……,9の長さが設計されている。
【0026】
尚、梳鋏であることから、図3に示される如く、鋏Aが完全に閉じられた状態において、櫛刃間には長手状の孔が形成されているものである。
【0027】
上記のように構成させた梳鋏は、その櫛刃の長さが従来の梳鋏の櫛刃の長さよりも短い。従って、櫛刃に力が作用しても、ブレが起き難い。例えば、櫛刃の長さが長いと、櫛刃に力が作用した場合、例えば第1の鋏半体1側に押圧するような力が作用した場合には、櫛刃9,9,……,9の中の何れかの櫛刃が第1の鋏半体1の刃部4側に押され、櫛刃部9と刃部4とは必要以上に圧接するようになり、鋏の動作性が非常に低下する。逆に、第1の鋏半体1側から離間させる方向の力が作用した場合には、櫛刃9,9,……,9の中の何れかの櫛刃が第1の鋏半体1の刃部4側から離れるようになり、櫛刃部9と刃部4とは必要以上に離間するようになり、鋏の切れ味が非常に低下する。すなわち、何れにしても、櫛刃9,9,……,9がブレ易いことは決して好ましいことでは無い。そして、このブレ易さは、櫛刃では無い刃部4には起き難いものであるのに対して、櫛刃部9は櫛刃であるが故に起き易いものである。しかしながら、ブレが起き易いと雖も、その長さが短い場合には、ブレは起き難い。つまり、本発明の梳鋏は、櫛刃にブレが起き難く、従って梳鋏の動作性が良好であると共に切れ味にも優れたものである。
【0028】
又、櫛刃の長さが短くて済むことは、それだけ櫛刃を形成する作業性が良いことを意味する。かつ、材料も少なくて済むので、省資源の観点からも好ましい。
【0029】
又、櫛刃9の長さ、櫛刃9の長さ、……、櫛刃9の長さ、即ち、各櫛刃の長さに変動が少なく、従来の梳鋏の如く、(一番長い櫛刃の長さ)/(一番短い櫛刃の長さ)が2倍以上にもなると言ったことが無く、1.1<(一番長い櫛刃の長さ)/(一番短い櫛刃の長さ)<1.5と言った如く、各櫛刃の長さに大きな相違が無く、ほぼ一定の長さであることから、切り始めと切り終わりとの間における鋏の開閉角度は小さく、従ってカットに際しての動作性も良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明になる梳鋏の一方の半体の要部の平面図
【図2】本発明になる梳鋏の他方の半体の要部の平面図
【図3】本発明になる梳鋏の要部の平面図
【図4】従来の梳鋏の要部の平面図
【符号の説明】
【0031】
A 梳鋏
1 第1の鋏半体(非櫛刃)
2 第2の鋏半体(櫛刃)
3 螺子
4 非櫛刃における刃部
9 櫛刃における櫛刃部
,9,……9 櫛刃

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが組み合わされてなる鋏において、
前記鋏が完全に閉じられて前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、前記櫛刃部の該重合部分における長さが最長でも3mmであるよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏。
【請求項2】
櫛刃部の重合部分における長さが0.1〜2mmであるよう構成されてなることを特徴とする請求項1の鋏。
【請求項3】
第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが枢支されてなり、前記枢支点を中心として回動させられて閉じられた場合には前記第2の鋏半体の櫛刃部の先端が前記第1の鋏半体に重なり合うよう構成されてなる鋏において、
前記第2の鋏半体の櫛刃部の先端が、前記鋏の枢支点を通る該鋏の長手方向に沿った方向の仮想中心線を越えた1.5mm以内の領域にあるよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏。
【請求項4】
第2の鋏半体の櫛刃部の先端が、鋏の枢支点を通る該鋏の長手方向に沿った方向の略仮想中心線上にあるよう構成されてなることを特徴とする請求項3の鋏。
【請求項5】
第1の鋏半体と刃の部分が櫛状に構成された第2の鋏半体とが組み合わされてなる鋏において、
前記鋏が完全に閉じられて前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とが完全に重なり合った状態においては、前記第1の鋏半体の刃部と前記第2の鋏半体の櫛刃部とは互いの刃部の先端部同士のみが重なり合うよう構成されてなる
ことを特徴とする鋏。
【請求項6】
第2の鋏半体の櫛刃部の先端が、鋏の長手方向における刃の長さの略半分の位置において最も突出した略円弧状の仮想線上にあるよう構成されてなることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの鋏。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−104613(P2008−104613A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289505(P2006−289505)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(500174812)株式会社ヒカリ (7)
【Fターム(参考)】