説明

【課題】鋏によるカット作業に際して起きていた鋏半体の微妙な捩れを解決することである。
【解決手段】鋏右半体1aと鋏左半体1bとが連結部材5で連結された1において、連結部材5による連結点よりも後端側の領域、かつ、鋏右半体1aと鋏左半体1bとが重なり合っている領域における鋏右半体1aおよび/または鋏左半体1bの嶺側に凸部7a,7b,8a,8bが設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
理容鋏(美容鋏)は、一般的には、図2に示される構造を有する。すなわち、刃体21aと柄部22aと指環部23aとを有する鋏右半体20aと、刃体21bと柄部22bと指環部23bとを有する鋏左半体20bとが、螺子24によって連結された構造である。
そして、指環部23a,23bに指を入れて動かすことによって、刃体21a,21bが開・閉してカットがなされる。
【特許文献1】特開2007−6999公報
【特許文献2】特開2007−20976号公報
【特許文献3】特開2007−68975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、これまでの鋏には、開時において、微妙ながらも、捩れが起きていた。この捩れは、理容師・美容師の如きのプロでなければ感じられない程のものであるが、プロであればある程、鋏半体の僅かな捩れでもカット作業に影響を与えており、解決を求められていた。
【0004】
従って、本発明が解決しようとする課題は、鋏によるカット作業に際して起きていた鋏半体の微妙な捩れを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点に対する検討が、鋭意、推し進められて行った。その結果、前記鋏半体の捩れは、鋏の幅(刃側端から嶺側端までの長さx)が狭いことから特に起きていることが判って来た。
すなわち、鋏が閉じている場合、鋏右半体20aと鋏左半体20bとの重なり合っている面積は、鋏の幅の大小に寄らず、比較的大きなものである。ところが、鋏が図1の如くに開いた状態の場合、鋏右半体20aと鋏左半体20bとの重なり合っている面積は、大幅に小さなものとなる。この重なり合っている部分に対する螺子24の力によって、鋏は、捩れが抑えられている。ところが、鋏の幅が狭くなると言うことは、鋏の開時にあっては、螺子24の位置から鋏右半体20aと鋏左半体20bとの重合になる最遠位置Pまでの距離Lが短くなると言うことである。そうすると、捩れ抵抗のモーメントは前記距離Lの関数であることから、距離Lが小さいことによって、鋏のカット作業時に微妙な捩れが起き、カットのプロ達を悩ませていたことが判って来た。
【0006】
上記の知見を基にして本発明が達成されたのである。
すなわち、前記の課題は、鋏右半体と鋏左半体とが連結部材で連結された鋏において、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体または該鋏左半体の嶺側に凸部が設けられてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0007】
特に、鋏右半体と鋏左半体とが連結部材で連結された鋏において、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体および該鋏左半体の嶺側に凸部が設けられてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0008】
又、鋏右半体と鋏左半体とが連結部材で連結された鋏において、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体および該鋏左半体の嶺側に凸部が設けられてなると共に、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体および該鋏左半体の刃側にも凸部が設けられてなる
ことを特徴とする鋏によって解決される。
【0009】
又、上記の鋏であって、凸部は、鋏右半体と鋏左半体との摺接面に沿った面を持つ凸部であることを特徴とする鋏によって解決される。
【0010】
又、上記の鋏であって、凸部は、鋏右半体と鋏左半体とが重なり合っている領域で連結部材による連結点から最遠領域に設けられてなることを特徴とする鋏によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
上記の如くに構成させた鋏は、鋏右半体と鋏左半体とを連結する連結部材(螺子)の位置から鋏右半体と鋏左半体との重合最遠位置までの距離Lが長くなっている。従って、距離Lが長くなった分だけ捩れに対するモーメントも大きくなり、それだけ、捩れが起き難くなる。尚、本発明の凸部は、鋏右半体と鋏左半体とが重なり合っている領域で連結部材による連結点から最遠領域に設けられることが好ましい。
【0012】
本発明になる凸部を、一方の半体のみに設けても、大きな効果を奏する。しかしながら、半体の双方に設けることによって、更に大きな効果を奏する。
【0013】
又、凸部を嶺側だけでなく、嶺側と反対側にも設けることによって、鋏右半体に設けられた凸部と鋏左半体に設けられた凸部とが鋏の閉時には互いに重なるようになり、凸部間に異物が挟まり難くなり、より好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の鋏は、一般的な鋏であっても差し支えないが、特に、理容鋏や美容鋏である。すなわち、本発明が奏する効果を鑑みると、小さな捩れでもカット具合に大きな影響を及ぼす理容鋏や美容鋏である。この鋏は、鋏右半体と鋏左半体とが連結部材(例えば、螺子)で連結された鋏である。そして、連結部材(螺子)による連結点(支点)よりも後端側の領域(刃先側(先端側)とは反対側)、かつ、鋏右半体と鋏左半体とが重なり合っている領域(特に、例えば図1に示される如く、鋏が大きく(90°近く)開いた状態において、鋏右半体と鋏左半体とが重なり合っている領域)における鋏右半体および/または鋏左半体の嶺側に凸部が設けられている。又、好ましくは、嶺側だけでなく、その反対側(刃先側)にも設けられている。すなわち、支点(螺子)及び先端を通る中心線を対称ラインとして左右対称な如くに凸部が設けられている。凸部は、鋏右半体と鋏左半体との摺接面に沿った面を持つ凸部である。すなわち、鋏右半体と鋏左半体とは、この凸部の面でも、互いに、摺接する。又、好ましくは、凸部は、鋏右半体と鋏左半体とが重なり合っている領域で連結部材による連結点から最遠領域に設けられてなる。
【0015】
図1は本発明の実施形態になる鋏の斜視図である。
図1中、1aは鋏右半体である。この鋏右半体1aは、刃体2aと柄部3aと指環部4aとを有する。1bは鋏左半体である。この鋏左半体1bは、刃体2bと柄部3bと指環部4bとを有する。そして、螺子5によって、鋏右半体1aと鋏左半体1bとは互いに連結されている。この連結具合は、鋏1の閉時にあっては、刃体2aと刃体2bとが、その殆どの領域において互いに重なり合い、図1に示される如きの鋏1の開時には、刃体2aと刃体2bとは一部の領域(螺子5の近傍の領域)でしか重ならないようになっている。尚、このような構造は、一般的なものであるから、詳細な説明は省略される。
【0016】
6は、鋏左半体1bの内面(鋏右半体1aとの摺接面)に設けられた滑性を有する滑性シート(滑性板)である。この滑性板6は、鋏左半体1bにおける螺子5位置よりも柄部3b(後端側)に近い側の内面(鋏右半体1aとの摺接面)に形成された凹溝に埋め込まれたものである。そして、特に、滑性板6は、鋏を図1に示す如く大きく開いた場合でも、滑性板6の面が摺接面となるように、即ち、鋏右半体1aと鋏左半体1bとが重なり合っている領域の中でも螺子5の位置(支点)から最遠領域の位置に設けられている。尚、滑性板6は、螺子5の位置を中心とした円弧状(ドーナツ状)に形成されている。勿論、扇状であっても、或いはその他の形状であっても良い。又、図示されていないが、鋏左半体1bの摺接面に設けられた滑性板6と対向する如く、鋏右半体1aの摺接面にも滑性板が設けられている。
【0017】
7a,7bは、鋏右半体1aの嶺側および刃先側に設けられた略三角状の凸部である。この凸部7a,7bは、丁度、上記滑性板の円弧の延長上に在るよう設けられたものである。そして、凸部7a,7bの内面(摺接面)にも上記円弧状の滑性板が埋め込まれている。
【0018】
8a,8bは、鋏左半体1bの嶺側および刃先側に設けられた略三角状の凸部である。この凸部8a,8bは、丁度、上記滑性板6の円弧の延長上に在るよう設けられたものである。そして、図1からも判る通り、凸部8a,8bの内面(摺接面)にも上記円弧状の滑性板6が埋め込まれている。
【0019】
さて、上記の如くに構成させた鋏は、鋏を図1に示す如く大きく開いても、鋏右半体1aの凸部7aと鋏左半体1bの凸部8aとが摺接している。そして、凸部7a,8aの分だけでも、鋏右半体1aと鋏左半体1bとの重なり合っている面積が大きい。かつ、螺子5から遠い位置においても鋏右半体1aと鋏左半体1bとは互いに摺接している。従って、鋏右半体1aの鋏左半体1bに対する捩れに対する抵抗が大きくなり、鋏を開いた時の捩れが起き難く、カットの作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明になる第1実施形態の鋏の斜視図
【図2】従来の鋏の斜視図
【符号の説明】
【0021】
1 鋏
1a 鋏右半体
1b 鋏左半体
2a,2b 刃体
3a,3b 柄部
4a,4b 指環部
5 螺子
6 滑性板
7a,7b 凸部
8a,8b 凸部


代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋏右半体と鋏左半体とが連結部材で連結された鋏において、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体および/または該鋏左半体の嶺側に凸部が設けられてなる
ことを特徴とする鋏。
【請求項2】
鋏右半体と鋏左半体とが連結部材で連結された鋏において、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体および該鋏左半体の嶺側に凸部が設けられてなると共に、
前記連結部材による連結点よりも後端側の領域、かつ、前記鋏右半体と前記鋏左半体とが重なり合っている領域における該鋏右半体および該鋏左半体の刃側にも凸部が設けられてなる
ことを特徴とする鋏。
【請求項3】
凸部は、鋏右半体と鋏左半体との摺接面に沿った面を持つ凸部である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の鋏。
【請求項4】
凸部は、鋏右半体と鋏左半体とが重なり合っている領域で連結部材による連結点から最遠領域に設けられてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの鋏。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−264012(P2008−264012A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106729(P2007−106729)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(500174812)株式会社ヒカリ (7)
【Fターム(参考)】