説明

鋳型枠抜き装置

【課題】上下鋳型の型合わせ面の食い違いを生じさせないとともに、メンテナンス作業の煩わしさを回避でき、簡便な機構と最小限の装置により設備費用を軽減することができる鋳枠抜き出し装置を提供する。
【解決手段】枠抜きヘッド4を基台に全周方向で揺動可能に支持する上部揺動支持手段32,34と、昇降テーブル14にシリンダ装置16によって昇降可能に支持された支持部材40と、鋳型受けテーブル10を支持部材に全周方向で揺動可能に支持する下部揺動支持手段38,42と揺動により変更された支持角度で支持部材に対して鋳型受けテーブルを固定する支持角度固定手段46と、を備え、鋳枠受け部材は水平面内で下鋳枠26を支持すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
抜き枠式鋳型造型法において使用される鋳型から鋳枠を抜き出す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械のNC化が進み、仕上げ加工をするために余分に形状寸法にとる仕上げ代をできる限り少なくすることが求められている。そのため、機械加工する前の鋳物に対する寸法精度も厳しく求められ、特に上下鋳型の型合わせ面の食い違いに起因する寸法精度誤差を減少させることが重要である。
【0003】
しかし、上下鋳枠を重ね合わせて鋳型を造型し、造型された鋳型から鋳枠を抜き出す抜き枠式鋳型造型法においては、鋳物砂の上下枠への充填密度の不均一や模型形状の偏りがあると、鋳型の型合わせ面の食い違いを生じやすい。それは、以下の理由による。まず、鋳物砂が充填された上下鋳枠において、充填密度の低い部分や模型形状の一部分が小さくて鋳物砂が充填される深さが部分的に深くなる部分では、鋳物砂が大きく圧縮され、その逆の条件の部分では鋳物砂が小さく圧縮される。そのため、上鋳型の上面及び下鋳型の下面のスクイズ面に対して上鋳枠及び下鋳枠が傾斜した状態になることがある。
【0004】
また一般に、鋳枠から鋳型を抜き出すには、造型に使用された下鋳枠の下方に枠抜きシリンダ(リフトシリンダ、昇降テーブル)を配置し、この枠抜きシリンダの上面に全長の等しい複数の抜き出しピンを下鋳枠の下面に対応させて突設する。そして、枠抜きヘッドを上鋳型の上面に当接させ、かつ鋳型が載置された鋳型テーブル(鋳型受けテーブル)で下鋳型の下面を支持した状態とする。次に、枠抜きシリンダを上昇させて複数の抜き出しピンの先端を下鋳枠の下面に当接させ、さらに上下鋳型に対して上下鋳枠を垂直方向に相対移動させることで、上下鋳型から上下鋳枠を抜き出す。このとき、下鋳枠の下面が、スクイズ面に対して傾斜した状態にあると、抜き出しピンの一部が傾斜した下鋳枠の一番下方となった下面に最初に当接し、さらに枠抜きシリンダを上昇させると傾斜した上鋳枠及び下鋳枠を水平状態に戻す回転作用が生じる。上下鋳型から上下鋳枠が少し抜き出された過程において、この水平状態に戻す回転作用によって、上鋳枠の内面が上鋳型の一側面に局部的に接触し、下鋳枠の内面が下鋳型の前記一側面の反対側の側面に局部的に接触し、上下鋳型を夫々違う方向に押圧する力が働く。そのため、その後、全部の抜き出しピンが下鋳枠の下面に当接して下鋳枠を支えたときには、上鋳型と下鋳型の型合わせ面の食い違いを生じさせる。
【0005】
このような、型合わせ面の食い違いを防止するために考えられた特許文献1によると、全長が調節可能であって、下鋳枠の下面に当接した状態においてロック可能な複数の鋳枠支持手段を、枠抜きシリンダに備えている鋳型枠抜き装置が記載されている。下鋳枠が枠抜きシリンダの上面(スクイズ面に平行している面)に対して傾斜しているときには、その傾きに応じて鋳枠支持手段の全長を調節して下鋳枠の下面にそれぞれの先端が当接した状態でロックする。そして、枠抜きシリンダを上昇させると、上下鋳枠は、水平方向に戻ろうとする前記回転作用を生じることなく垂直方向に並進して鋳型を抜き出す。このとき、上下鋳型と上下鋳枠との間には、ほぼ一様の隙間が形成され、上下鋳枠と上下鋳型との局部的な接触が回避され、これによって、上下鋳型の型合わせ面の食い違いが生じることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−81046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、鋳型支持手段の全長を調節するためのレベリングシリンダとして4個の油圧シリンダを使用し、夫々に油圧配管経路とともにロックのための4個の遮断回路を設けている。このような油圧配管経路や遮断回路は複雑なものであるとともに、設備費用を増大させるという問題があった。また、油圧制御において配管経路内、レベリングシリンダ内においていわゆるエア噛みを発生する場合があり、エア噛みが発生すると油圧回路を遮断してもレベリングシリンダを完全にロックができず、鋳型を抜くときに垂直に抜き出せないという問題があった。そのため、定期的なエア抜き作業が必要となり、油漏れの保全作業とあわせて、このようなメンテナンス作業を頻繁に行なわなければならないという問題があった。
【0008】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、上下鋳型の型合わせ面の食い違いを生じさせないとともに、メンテナンス作業の煩わしさを回避でき、簡便な機構と最小限の装置により設備費用を軽減することができる鋳枠抜き出し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の構成上の特徴は、基台に設けられ上下鋳枠内に形成されて型合わせされた上下鋳型に上方から当接する枠抜きヘッドと、前記基台に前記枠抜きヘッドに対向して昇降可能に設けられ前記上下鋳型を下方から支持する鋳型受けテーブルと、前記基台に前記枠抜きヘッドに対向して昇降手段によって昇降可能に設けられ前記下鋳枠と対向する鋳枠受け部材を有する昇降テーブルと、を備えた鋳型枠抜き装置において、前記枠抜きヘッドを前記基台に全周方向で揺動可能に支持する上部揺動支持手段と、前記昇降テーブルにシリンダ装置によって昇降可能に支持された支持部材と、前記鋳型受けテーブルを前記支持部材に全周方向で揺動可能に支持する下部揺動支持手段と前記揺動により変更された支持角度で前記支持部材に対して前記鋳型受けテーブルを固定する支持角度固定手段と、を備え、前記鋳枠受け部材は水平面内で前記下鋳枠を支持することである。
【0010】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記上部揺動支持手段は、前記基台に突設され前記枠抜きヘッドの上面中心を支持する第1の球形継ぎ手であり、前記下部揺動支持手段は、前記支持部材の上端に設けられ前記鋳型受けテーブルの下面中心を支持する第2の球形継ぎ手であることである。
【0011】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記支持角度固定手段は、前記鋳型受けテーブルの下面に先端が回動自在に連結され前記下面より垂下する複数本の支持棒と、前記支持部材に設けられ各前記支持棒を任意の位置で摩擦力により挟持するブレーキ装置とを有していることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、上鋳型の上面及び下鋳型の下面のスクイズ面が上下鋳枠に対して傾斜した状態となっている場合、上下鋳枠を水平に保持した状態で、まず、上下鋳型の下面に鋳型受けテーブルを当接させる。このとき、下部揺動支持手段により、下鋳型の下面の傾斜に鋳型受けテーブルが倣う角度で傾斜して当接するとともに、支持角度固定手段により、前記傾斜した角度で鋳型受けテーブルを固定する。次に、上下鋳型の上面に枠抜きヘッドを当接させる。このとき、上部揺動支持手段により、傾斜した上下鋳型の上面に倣う角度で枠抜きヘッドが傾斜して当接する。そして、このように上下鋳型を鋳型受けテーブル及び枠抜きヘッドで上下方向から挟持した状態で、鋳型受けテーブルに対して昇降テーブルを垂直方向に相対的に上昇させる。この昇降テーブルの相対的な上昇により鋳枠受け部材を水平面内で下鋳枠の下面に当接させ、更に昇降テーブルを相対的に上昇させることで上下鋳枠を上下鋳型から抜き出す。この際、上下鋳枠は、水平状態で鋳枠受け部材により保持されているので、水平方向に戻ろうとする回転作用を生じることなく垂直方向に安定して並進する。そのため、上下鋳型の外周面と上下鋳枠の内壁面との間に抜き勾配により生じたほぼ均等な隙間をおいて上下鋳型から上下鋳枠が抜き出され、抜き出し過程における局部的な接触が回避される。これによって、上下鋳型の型合わせ面の食い違いが生じることを防止し、型合わせ面の食い違いに起因する寸法精度誤差を減少させ、材料費と加工費用のコストダウンを図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、第1の球形継ぎ手で枠抜きヘッドの上面中心を支持するとともに、第2の球形継ぎ手で鋳型受けテーブルの下面中心を支持する。このように枠抜きヘッドの中心及び鋳型受けテーブルの中心を支持することで、挟持される上下鋳型の重心位置を保持するので、上下鋳型の上下の面が傾斜した状態であっても安定した状態で保持することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によると、ブレーキ装置は、鋳型受けテーブルの下面より垂下する複数本の支持棒を摩擦力により挟持することで、上下鋳型の傾斜した下面に倣うために変更された鋳型受けテーブルの支持角度を保持し、摩擦力の挟持によって支持棒をロックする。そのため、従来のような、油圧制御を使用する機構のように、定期的なエア抜き作業や油漏れの保全作業などを必要としないで、メンテナンスコストを大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の鋳型枠抜き装置の実施例を示す概要図。
【図2】鋳型受けテーブル及び鋳枠受棒を上方から見て示す平面図。
【図3】鋳型受けテーブルが水平位置にある場合の第2の球形継ぎ手及びボールジョイントを示す部分拡大図。
【図4】支持棒をロックした状態のブレーキ装置を示す断面図。
【図5】鋳型受けテーブルが傾斜位置にある場合の第2の球形継ぎ手及びボールジョイントを示す部分拡大図。
【図6】支持棒のロックを解除した状態のブレーキ装置を示す断面図。
【図7】昇降テーブルを上昇させることで、鋳型受けテーブルで上下鋳型を支持した状態を示す図。
【図8】枠抜きヘッドと鋳型受けテーブルとで上下鋳型を挟持した状態を示す図。
【図9】昇降テーブルを上昇させるとともに、鋳型受けシリンダを退入させることで上下鋳型から上下鋳枠を抜く工程を示す図。
【図10】上下鋳型から上下鋳枠を抜き出した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
本件発明にかかる鋳型枠抜き装置を使用した実施形態を図に基づいて以下に説明する。鋳型枠抜き装置2は、重ねられた上下鋳型の上面に当接する枠抜きヘッド4と、前記上下鋳型6,8を下方から支持する鋳型受けテーブル10と、鋳型受けテーブル10の下方に設けられた支持テーブル12と、鋳型受けテーブル10の下方に設けられた昇降テーブル14と、鋳型受けテーブル10を昇降テーブル14に対して昇降させる鋳型受けシリンダ(シリンダ装置)16と、基台18に設けられ鋳型受けテーブル10、支持テーブル12及び昇降テーブル14を昇降させるリフトシリンダ(昇降手段)20とを備えている。
【0017】
また、図1において、枠抜きヘッド4と鋳型受けテーブル10との間には上鋳枠支持台22と下鋳枠支持台23が設けられている。これらの鋳枠支持台22,23は、図略の鋳型造型装置で造型された上下鋳枠24,26を受け取る受取位置と、受け取った上下鋳枠24,26を鋳型枠抜き装置2に受け渡す受渡位置との間で往復動するよう構成されている。上鋳枠支持台22には上鋳枠24が、下鋳枠支持台23には下鋳枠26が、夫々水平状態で支持されるようになっている。
【0018】
枠抜きヘッド4は、矩形の板状に形成され、枠抜きヘッド4の上面には上方が開放し内側に球形に倣う曲面の一部が形成された包装部34が設けられている。包装部34には、基台18から垂下する垂下部材30の下端に設けられた球形部32が全方位揺動可能に嵌合されている。これらの包装部34及び球形部32によって第1の球形継ぎ手(上部揺動支持手段)が構成される。枠抜きヘッド4は上鋳枠24の内壁内に内嵌可能な寸法形状に形成され、枠抜きヘッド4の下面は上下鋳枠24,26内で形成され重ね合わされた上下鋳型6,8の上鋳型6の上面に当接するようになっている。
【0019】
鋳型受けテーブル10は、下鋳枠26に内嵌可能な矩形板状に形成され、矩形板状の下面の中心には下方が開放し内側に球形に倣う曲面の一部が形成された包装部38が形成されている。包装部38は、後述する支持テーブル12の上面に立設された支持柱部材40先端の球形部42に全方位揺動可能に包囲状態で係合する。これらの包装部38及び球形部42により第2の球面継ぎ手(下部揺動支持手段)が構成される。また、支持テーブル12及び支持柱部材40によって支持部材が構成される。図2及び図3に示すように、鋳型受けテーブル10の包装部38から対向する一辺の両隅部近傍には係合部材44が下方に向かって対にして突設され、係合部材44の下端には後述する支持棒46の先端が係合する球形部48が形成されている。
【0020】
支持テーブル12は後述する昇降テーブル14の上面中央に立設された鋳型受けシリンダ16の先端に設けられている。鋳型受けシリンダ16のシリンダ部の上部及び下部には油圧ポンプ43又はドレインタンクに連通する送油パイプ41が連結され、シリンダ部と油圧ポンプ43及びドレインタンクとの間には電磁切替弁47が設けられている。そして、シリンダ部の下部と電磁切替弁47との間には、所定の圧力以上になったときにシリンダ部の下部をドレインタンクに連通して油を逃がすことで圧力を維持するリリーフ弁49が設けられている。このリリーフ弁49により下鋳型8の下面に対して所定の圧力を維持した状態で、支持テーブル12(鋳型受けテーブル10)を下降できるよう構成される。このリリーフ弁49は後述する減圧弁45よりも設定圧力を少し高く設定され、電磁切替弁47が油圧ポンプ43側に切り替えられたときに常時油が漏れるのが防止される。また、このリリーフ弁49と鋳型受けシリンダ16の下部との間には圧力スイッチ51が設けられ、後述するブレーキ装置50の電磁切替弁63を切り替える信号を発信するよう構成されている。また、電磁切替弁47とドレインタンクとの間には減圧弁45が設けられている。この減圧弁45の設定圧力は、鋳型受けテーブル10が下鋳型8の下面に当接した場合に、後述する鋳枠受棒80から下鋳型8及び下鋳枠26を独立して支持しない程度に設定されている。また、テーブル12の一辺の両隅部の前記係合部材44に対向する位置には、図略のブラケットを介していずれも図略のボルト及びナットによりブレーキ装置50が組み付けられている。ブレーキ装置50にはブレーキ装置50に挟持されている支持棒46が上下に突出している。
【0021】
ブレーキ装置50は、図4に示すように、前記支持棒46が相対移動自在に貫通された円筒状のハウジング52と、前記支持棒46が相対移動可能に嵌着され前記ハウジング52内の可動空間を上下動するスライド盤54と、ハウジング52の底壁に下端が当接し、スライド盤54の下端に上端が当接するコイルバネ56と、スライド盤54の上方に配置されスライド盤54の上下運動に連動してブレーキ作用を支持棒46に働かせるブレーキ作動部材58とを有している。
【0022】
ハウジング52の側部には前記可動空間の上部に開口するエア供給穴60が設けられ、エア供給穴60にはエアポンプ59に連通するエアパイプ61が連結されている。これらのエア供給穴60とエアポンプ59との間には電磁切換弁63が設けられている。
【0023】
スライド盤54の上部の中心周りには上方に向かって狭くなるテーパ面62が形成されている。ブレーキ作動部材58は、支持棒46を挟んで上下方向に延在する部材で、その上部内側には支持棒46の外径を挟み込むブレーキシュー64が対向して設けられている。ブレーキ作動部材58のブレーキシュー64の少し下方の外側には凸曲面を備えた回動支持部66が夫々設けられ、回動支持部66はハウジング52の上部内壁に設けられた凹曲面68に回動自在に嵌合している。この回動支持部66の回動自在な支持によって、支持棒46を挟んで対向するブレーキ作動部材58の上下の端部が開閉動作をするようになっている。回動支持部66の下方にはブレーキアーム70が下方に向かって夫々延在し、各ブレーキアーム70の下端にはローラ72が転動自在に設けられている。ローラ72は対向して設けられ、前記スライド盤54のテーパ面62に外側から挟持するように当接する。コイルバネ56によりスライド盤54が上方に前進すると、テーパ面62によってローラ72が下端に設けられたブレーキアーム70が押し開かれて、上端部のブレーキシュー64が閉じる方向に動いて支持棒64に押し付けられるよう構成される。一方、図6に示すように、前記エア供給穴60より圧縮エアが供給されると、スライド盤54が下方に押し下げられて、ブレーキアーム70の下端がテーパ面62に沿って狭められ、ブレーキシュー64の支持棒46への押し付けが弱められる(ブレーキ力が小さくされる)。この支持棒46への押し付けは、支持棒46の自重で鋳型受けテーブル10が傾斜しない程度であって、かつ鋳型受けテーブル10が下鋳型8の下面に当接して荷重を受けたときには、その荷重によって支持棒46に対して摺動する程度に弱められる。これらのブレーキ装置50及び支持棒46により支持角度固定手段が構成される。
【0024】
支持棒46の先端には、図3に示すように、ボールジョイント74のケーシング76が設けられている。ケーシング76にはリング部材78がケーシング76に対して所定範囲で水平方向に相対移動可能に内嵌され、リング部材78には前記係合部材44の球形部48が相対回動可能に嵌合されている。このボールジョイント74により、図5に示すように、鋳型受けテーブル10が傾斜したときに、鋳型受けテーブル10に対する支持棒46の相対的な傾動及び横ずれを許容可能にして鋳型受けテーブル10を支持テーブル12に支持する。
【0025】
昇降テーブル14は鋳型受けテーブル10よりもひと回り大きい矩形板状に形成され、昇降テーブル14の四隅には鋳枠受け部材としての鋳枠受棒80が下鋳枠26の下面に対向させて上方に突設されている。鋳枠受棒80は全ての先端が同一水平面内に位置するように形成されている。これらの鋳枠受棒80は、鋳型受けシリンダ16が退入したときに、鋳枠受棒80の先端が鋳型受けテーブル10の上面よりも上に位置する寸法で構成されている。
【0026】
また、昇降テーブル14の四隅近傍には夫々ガイド穴82が貫設されている。昇降テーブル14下方の基台18には水平位置支持棒84が前記ガイド穴82に対向させた位置で突設され、水平位置支持棒84は昇降テーブル14が下降したときにガイド穴82にガイドされる。そして、リフトシリンダ20が最下位置まで退入したときに、水平位置支持棒84がガイド穴82を貫通するとともに、水平位置支持棒84の先端が鋳型受けテーブル10の下面に当接して鋳型受けテーブル10を水平状態に支持するよう構成される。リフトシリンダ20は基台18に設けられ、リフトシリンダ20のピストン部の先端には昇降テーブル14が設けられている。また、リフトシリンダ20のシリンダ部の上部及び下部には油圧ポンプ86又はドレインタンクに連通する送油パイプ88が設けられている。これらの油圧ポンプ86及びドレインタンクとリフトシリンダ20との間には、電磁切替弁90が設けられている。油圧ポンプ86と電磁切替弁90との間には図略の流量制御弁が設けられている。また、シリンダ部の下部と電磁切替弁90との間には所定の圧力を検知すると信号を出力する圧力スイッチ92が設けられている。この圧力スイッチ92により鋳枠受棒80の先端が下鋳枠26の下面に当接したことを検知するとともに、上鋳型6の上面が枠抜きヘッド4に当接したことを検知する。
【0027】
次に、上記のようにように構成された鋳型枠抜き装置2の作動について図に基づいて以下に説明する。まず、図略の造型装置において上鋳型と下鋳型とが夫々造型され、模型が取り外されて枠抜き装置2の受渡位置に搬送される。図1に示すように、上鋳型6を含む上鋳枠24及び下鋳型8を含む下鋳枠26が接合面を対向させた状態で上鋳枠支持台22と下鋳枠支持台23とにそれぞれ支持され、枠抜きヘッド4と鋳型受けテーブル10との間の受渡位置に位置決めされる。この際、上鋳枠24及び下鋳枠26は、鋳枠支持台22,23において水平状態で支持されている。昇降テーブル14は電磁切替弁90が油圧を遮断する位置に位置決めした状態でリフトシリンダ20の最下端位置に配され、鋳型受けテーブル10も電磁切替弁47を油圧を遮断する位置に位置決めした状態で、同様に最下端位置に配される。鋳型受けテーブル10は、4隅の下端が水平位置支持棒84に当接して水平状態に支持される。
【0028】
次に、電磁切替弁90をシリンダ部の下部と油圧ポンプ86とが連通する位置に切り替えることでリフトシリンダ20を駆動させて、昇降テーブル14を上昇させる。そして、昇降テーブル14が上昇する過程において、鋳枠受棒80の先端が下鋳枠支持台23に支持された下鋳枠26の下面に当接することで、下鋳枠支持台23より下鋳枠26を鋳枠受棒80に受承する。このとき、下鋳枠26は水平状態にあるので、全ての先端が水平面内に位置する鋳枠受棒80に均等に安定した状態で保持される。また、下鋳枠26(下鋳型8)への上記当接を、圧力スイッチ92が検知して信号を出力することで、鋳型受けシリンダ16において電磁切替弁47を油圧ポンプ43が鋳型受けシリンダ16の下部に連通する側に切替える。これにより、鋳型受けシリンダ16が伸長して鋳型受けテーブル10を上昇させる。この際、ブレーキ装置50は、エアポンプ59に連通する側に電磁切替弁63が切り替えられており(図6参照)、ブレーキ装置50により支持棒46の自重で鋳型受けテーブル10が傾斜しない程度に軽くブレーキがかかった状態で支持棒46が支持された状態となっている。
【0029】
そして、さらに鋳型受けシリンダ16を伸長させて鋳型受けテーブル10を下鋳型8の下面に当接させる。この当接圧力は減圧弁45により調節されている。具体的には、鋳型受けテーブル10が下鋳型8の下面に当接した場合に、鋳枠受棒80から下鋳型8及び下鋳枠26を独立して持ち上げることなく、下鋳型26の下面に当接した状態を維持する程度に減圧弁45が圧力設定されている(図8参照)。この際、鋳型受けテーブル10は傾斜した下鋳型8の下面に倣って傾斜する。また、鋳型受けテーブル10の下鋳型8への当接が鋳枠受けシリンダ16の圧力スイッチ51により検知されると、ブレーキ装置63における電磁切替弁63が外気に連通する側に切替わり(図4参照)、ブレーキ装置50により支持棒46がロックされて傾斜した支持角度に鋳型受けテーブル10が位置決めされる。
【0030】
更に昇降テーブル14が上昇すると、下鋳枠26の上端が上鋳枠支持台22に支持された上鋳枠24の下端に当接する。これにより上下鋳枠24,26(上下鋳型6,8)が重ねられた状態で鋳枠受棒80に受承される(図7参照)。
【0031】
次に、昇降テーブル14を更に上昇させることで、図8に示すように、上鋳型6の上面を枠抜きヘッド4の下面に当接させる。枠抜きヘッド4は傾斜した上鋳型6の傾斜に倣って傾斜し、この傾斜した状態の枠抜きヘッド4と鋳型受けテーブル10とにより上下鋳型6,8が上下方向から挟持された状態となる。また、枠抜きヘッド4への上鋳型6の上面の当接は、リフトシリンダ20の圧力スイッチ92により検知され、図略の流量制御弁により昇降テーブル14の上昇速度が遅く変更される。
【0032】
そして、図9に示すように、昇降テーブル14をさらに上昇させ、鋳枠受棒80で上下鋳枠24,26を上昇させる。このとき、鋳型受けテーブル10を介して鋳枠受けシリンダ16に圧力が負荷され、この圧力によりリリーフ弁49より油がドレインタンクに漏れる。これによって、鋳型受けシリンダ16が退入して上下鋳枠24に対して上下鋳型6,8を相対的に下降させる。そして、上下鋳型6,8から上下鋳枠24,26を抜き出す。この際、上下鋳枠24,26は、水平状態で鋳枠受棒80により保持されているので、水平方向に戻ろうとする回転作用を生じることなく垂直方向に安定して並進する。そのため、上下鋳型6,8の外周と上下鋳枠24,26の内壁との間に抜き勾配により生じたほぼ均等な間隔で上下鋳型6,8から上下鋳枠24,26が抜き出され、抜き出し過程における局部的な接触が回避される。
【0033】
上記上下鋳枠24,26の枠抜き動作の終了は、リフトシリンダ20の圧力スイッチ92により抜き出した際の圧力の減少として検知され、電磁切替弁90が油圧を遮断する位置に切り替えられる。これによって、昇降テーブルの上昇が停止される。鋳型受けシリンダ16においては電磁切替弁47が油圧を遮断する位置に切り替えられる。
【0034】
次に、図10に示すように、リフトシリンダ20において電磁切替弁90をシリンダ部の上部に油圧ポンプ86が連通する側に切替えることにより昇降テーブル14を下降させる。昇降テーブル14は、傾斜した支持角度に鋳型受けテーブル10を保持した状態で下降する。下降過程の途中で枠抜きヘッド4のすぐ下方に位置決めされた上鋳枠支持台22に上鋳枠24を、さらにその下に位置決めされた下鋳枠支持台23に下鋳枠26をそれぞれ係止させることで、上下鋳型6,8と上下鋳枠26,28とを完全に分離する。そして、傾斜した鋳型受けテーブル10の下端が水平位置支持棒84の一部に当接すると、当接による荷重の変化を鋳型受けシリンダ16において圧力スイッチ51が検知し、この圧力スイッチ51の信号によりブレーキ装置50において電磁切替弁63をエアポンプ59に連通する側に切り替えて、ブレーキ装置50による支持棒46のロックを解除する。このロックの解除により、鋳型受けテーブル10は、昇降テーブル14の下降に伴い、当接した水平位置支持棒84によって支持角度の傾斜が戻されて水平状態で支持される。並行して、鋳型受けシリンダ16においてシリンダ部の上部が油圧ポンプ43に連通する側に電磁切替弁47が切り替えられ、支持テーブル12を最下端位置まで下降させる。また、昇降テーブル14が最下端位置まで下降すると、下降端における圧力の変化が圧力スイッチ92により検知されて、リフトシリンダ20において電磁切替弁90が油圧を遮断する位置に切り替えられる。そして、上鋳枠24及び下鋳枠26は、次の造型に使用できる位置にそれぞれ搬送される。
【0035】
上記のように構成された鋳型造型装置2によると、上鋳型6の上面及び下鋳型8の下面のスクイズ面が上下鋳枠24,26に対して傾斜した状態となっている場合、上下鋳枠24,26を水平に保持した状態で、上下鋳型6,8の下面に鋳型受けテーブル10を当接させる。このとき、第2の球形継ぎ手38,42により、下鋳型8の下面の傾斜に鋳型受けテーブル10が倣う角度で傾斜して当接するとともに、支持棒46及びブレーキ装置50により、前記傾斜した角度で鋳型受けテーブル10を固定する。
【0036】
次に、上下鋳型6,8の上面に枠抜きヘッド4を当接させる。このとき、第1の球形継ぎ手32,34により、傾斜した上下鋳型6,8の上面に倣う角度で枠抜きヘッド4が傾斜して当接する。そして、このように上下鋳型6,8を鋳型受けテーブル10及び枠抜きヘッド4で上下方向から挟持した状態で、鋳型受けテーブル10に対して昇降テーブル14を垂直方向に相対的に上昇させる。この昇降テーブル14の相対的な上昇により鋳枠受棒80を水平面内で下鋳枠26の下面に当接させ、更に昇降テーブル14を鋳型受けテーブル10に対して相対的に上昇させることで上下鋳枠24,26を上下鋳型6,8から抜き出す。この際、上下鋳枠24,26は、水平状態で鋳枠受棒80により保持されているので、水平方向に戻ろうとする回転作用を生じることなく垂直方向に安定して並進する。そのため、上下鋳型6,8の外周と上下鋳枠24,26の内壁との間に抜き勾配により生じたほぼ均等な間隔で上下鋳型6,8から上下鋳枠24,26が抜き出され、抜き出し過程における局部的な接触が回避される。これによって、上下鋳型4,6の型合わせ面の食い違いが生じることを防止し、型合わせ面の食い違いに起因する寸法精度誤差を減少させ、材料費と加工費用のコストダウンを図ることができる。
【0037】
また、第1の球形継ぎ手32,34で枠抜きヘッド4の上面中心を支持するとともに、第2の球形継ぎ手38,42で鋳型受けテーブル10の下面中心を支持する。このように枠抜きヘッド4の中心及び鋳型受けテーブル10の中心を支持することで、挟持される上下鋳型6,8の重心位置を保持するので、上下鋳型6,8の上下の面が傾斜した状態であっても安定した状態で保持することができる。
【0038】
また、ブレーキ装置50は、鋳型受けテーブル10の下面より垂下する複数本の支持棒46を摩擦力により挟持することで、上下鋳型6,8の傾斜した下面に倣うために変更された鋳型受けテーブル10の支持角度を保持し、摩擦力の挟持によって支持棒46をロックする。そのため、従来のような、油圧制御を使用する機構のように、定期的なエア抜き作業や油漏れの保全作業などを必要としないで、メンテナンスコストを大きく低減することができる。
【0039】
なお、上記実施形態において、リング部材78がケーシング76に対して所定範囲で水平方向に相対移動可能に内嵌されるボールジョイント74としたが、これに限定されず、例えば支持テーブル12に対するブレーキ装置50の取付けを互いに回動可能なものとし、かつ支持棒46の先端と鋳型受けテーブル10の下面とが球形継ぎ手で連結されているものでもよい。
【0040】
また、昇降手段として油圧により駆動するリフトシリンダとしたが、これに限定されず、例えば、サーボモータによる電動アクチュエータ等既知の装置を使用してもよい。
【0041】
また、シリンダ装置として油圧により駆動する鋳型受けシリンダとしたが、これに限定されず、例えば、エア圧により駆動する空気圧シリンダでもよい。
【0042】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
【符号の説明】
【0043】
2…鋳型枠抜き装置、4…枠抜きヘッド、6…上鋳型、8…下鋳型、10…鋳型受けテーブル、12…支持部材(支持テーブル)、14…昇降テーブル、16…シリンダ装置(鋳型受けシリンダ)、18…基台、20…昇降手段(リフトシリンダ)、24…上鋳枠、26…下鋳枠、32…第1の球形継ぎ手・上部揺動支持手段(球形部)、34…第1の球形継ぎ手・上部揺動支持手段(包装部)、38…第2の球形継ぎ手・下部揺動支持手段(包装部)、40…支持部材(支持柱部材)、42…第2の球形継ぎ手・下部揺動支持手段(球形部)、46…支持角度固定手段(支持棒)、50…支持角度固定手段(ブレーキ装置)、80…鋳枠受け部材(鋳枠受棒)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に設けられ上下鋳枠内に形成されて型合わせされた上下鋳型に上方から当接する枠抜きヘッドと、前記基台に前記枠抜きヘッドに対向して昇降可能に設けられ前記上下鋳型を下方から支持する鋳型受けテーブルと、前記基台に前記枠抜きヘッドに対向して昇降手段によって昇降可能に設けられ前記下鋳枠と対向する鋳枠受け部材を有する昇降テーブルと、を備えた鋳型枠抜き装置において、
前記枠抜きヘッドを前記基台に全周方向で揺動可能に支持する上部揺動支持手段と、
前記昇降テーブルにシリンダ装置によって昇降可能に支持された支持部材と、
前記鋳型受けテーブルを前記支持部材に全周方向で揺動可能に支持する下部揺動支持手段と
前記揺動により変更された支持角度で前記支持部材に対して前記鋳型受けテーブルを固定する支持角度固定手段と、を備え、
前記鋳枠受け部材は水平面内で前記下鋳枠を支持することを特徴とする鋳型枠抜き装置。
【請求項2】
請求項1において、前記上部揺動支持手段は、前記基台に突設され前記枠抜きヘッドの上面中心を支持する第1の球形継ぎ手であり、
前記下部揺動支持手段は、前記支持部材の上端に設けられ前記鋳型受けテーブルの下面中心を支持する第2の球形継ぎ手であることを特徴とする鋳型枠抜き装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記支持角度固定手段は、前記鋳型受けテーブルの下面に先端が回動自在に連結され前記下面より垂下する複数本の支持棒と、前記支持部材に設けられ各前記支持棒を任意の位置で摩擦力により挟持するブレーキ装置とを有していることを特徴とする鋳型枠抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−218379(P2011−218379A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87721(P2010−87721)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(592089799)メタルエンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】