説明

鋳型装飾用インク及びその装飾方法

【課題】N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)などの攻撃的なモノマーをインク中に含める必要がなく、樹脂注入工程に対する適当な耐性を持ち、及び充填樹脂に対する良好な接着性を有するインクの提供。
【解決手段】芳香族若しくは脂肪族ポリカーボネートを有するウレタンアクリレートオリゴマーで構成されるエネルギー硬化性樹脂、追加的反応性モノマー及び/又はオリゴマー、並びに任意に溶媒で構成される鋳型装飾工程用の組成物であって、前記溶媒は、該組成物重量に対して10重量%以下であることを特徴とするエネルギー線硬化性インク又はニス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型装飾用の新規インク組成物、及び該インクを適用した鋳型装飾工程に関する。
【背景技術】
【0002】
広義において、鋳型装飾(in−mould decorating; IMD)は、単純に、装飾部品を鋳造する過程において、装飾を施すことを意味する。特定のIMD工程は、数年来、鋳型を挿入若しくはIMDを挿入するものとして参照したが、近年、自動車業界を除いてはあまり実用的に使用されていない。IMDを挿入する工程において、フィルム基材は、所望の装飾とともに印刷される。これは、好ましくは、第二表面印刷工程であり、装飾は、澄明若しくは半透明フィルム基材(又は特に澄明又は半透明)の反対面の反対に印刷される工程である。基材を通してかつ防護されるからである。その後、一つ以上のステップにおいて、必要であれば、基材は形状化され、さらに樹脂又はプラスティック材料が注入鋳造され最終製品を与える。
【0003】
即座に分かることは、この工程は、いくつかの問題を起こす可能性がある。第一に、もし、印刷された基材が、印刷された後鋳造される場合、印刷インクは、鋳造の強度に耐えるべく必要な機械的特性を持っていなければならない。従って、柔軟性があり、好ましくは、基材に対し少なくとも柔軟性と同様の特性を有していなければならない。基材と共に伸張されるからである。また、基材に対し十分な接着性を有し、鋳造工程におけるいかなる研磨工程にも耐えうるだけの摩耗耐性を有していなければならない。
【0004】
最後のステップにおいて、樹脂又は樹脂前駆体が、形成され装飾された基材上に注入された場合、印刷インクは、樹脂注入による熱、圧力、又は剪断に対して耐性を持っていなければならないか、又は、追加の層で防護されなければならない。そのほかに、インクは、注入工程によって印刷部位にて、「ウォッシュアウト」と呼ばれる、分解または汚れを生じるかもしれない。
【0005】
最終的に、インクは、注入される樹脂との適合性を持つ必要があり、特に、注入された樹脂と良好な接着性を供しなければならない。樹脂充填から印刷された基材の剥離を防止するためである。
【0006】
インクのウォッシュアウトを防止するという問題を解決し、樹脂に対する良好な接着結合強度を確実にする一つの方法は、印刷された基材を、インクで追加コートを施すことである。追加コートは、典型的には、写実インクに適用された水溶性のラミネート接着剤である。このコーティーングは、結合又は基材の追加シートをラミネートするものとして機能する。従って、インクは、基材と基材の追加シートとの間に挟まれる。この二層構造において、ラミネートされた基材は、充填注入によるウォッシュアウトに対して、インクを防護するために機能し、注入樹脂への良好な接着性を供する。しかしながら、この製造方法は、追加の工程及び材料費が必要である。
【0007】
独国特許発明第A−19832570号(特許文献1)では、ポリカーボネート及び熱可塑性ポリエステルポリウレタンで構成される、溶剤をベースにしたインク系に関し開示している。米国特許第A−5,648,414号では、挿入IMD用に適した、ジヒドロキシジフェニルシクロアルカンを結合剤としてベースにしたポリカーボネートを含む溶剤をベースにしたインクに関して開示している。このようなインクの一つには、市販品でNoriphan(登録商標)(Prollによるライセンス下Bayer AGより)がある。この溶剤ベースのインクは、IMD工程において、単一層の印刷基材製造を許容する一方、いくつかの欠点がある。例えば、溶剤ベースのインクであるので、スクリーン印刷を行うことが相対的に困難又は不便である。圧縮安定性が小さく、洗浄が困難であるためである。また、この印刷された基材は、巻き上がる可能性があり、充填樹脂の注入前に、鋳造用具の位置あわせにおいて、この印刷された基材を配置することがしばしば困難となる。さらに、剥離につながるウォッシュアウト、及びブリスター若しくは気泡形成を防止するため、印刷された基材が形成され注入鋳造される前に、すべての溶剤を完全に取り除かれることを本質的に確実にしなければならない。その他の欠点は、いくつかの色素がポリマー樹脂によって分解されてしまうので、利用可能な色彩が制限されるということである。最後に、インクにおける溶剤の必要物は、明らかに環境及び健康に対する問題を有している。
溶剤をベースにしたシステムに関連するこれらの欠点は、光硬化性インク系の開発へと導いた。例えば、IMD工程用の紫外線エネルギーにより硬化するインクは、溶剤を少量又は使用する必要がない。しかしながら、現存する紫外線硬化性インクは、完全に満足のいくものではない。特に、注入された充填樹脂に対する成形性、ウォッシュアウト耐性、及び接着性の面で満足のいくものではない。IMDに適合したインクは、基材に対し、非常に良好な接着性、基材とともに良好な柔軟性及び伸張許容性、鋳造により良好な機械的摩耗耐性、樹脂注入段階における良好なウォッシュアウト耐性、及び注入された充填樹脂に対する良好な接着性を有する必要がある。紫外線硬化性インクは、クロスリンクが進行するので、溶剤ベースのインクに比べて、組み合わされた特性を達成することはさらに難しい。
【0008】
これらの紫外線硬化性インクシステムにおいて、溶剤が使用されない又は減量されたにもかかわらず、溶剤ベースのインク系における溶剤の使用に関連した問題、伸張及び順応性に対する要求は、インクが形成及び注入工程における機械的衝撃に抵抗するには十分やわらかい傾向にあることを意味する。加えて、充填樹脂に対する接着性は、しばしば満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許発明第A−19832570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、ウォッシュアウト、剥離若しくはこの両者を防止すべく、樹脂注入工程に対する適当な耐性を確実にするため、及び充填樹脂に対する良好な接着性を供するために、防護若しくは結合コートを伴った印刷された基材を供する必要性がいまだ一般的に存在する。加えて、基材に対する接着性を向上するため及びインク:基材インターフェースの剥離を防止するため、例えば、反応残留物質による剥離へと導かれ、及び健康及び安全性の観点による欠点に関連する例えばN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)などの攻撃的なモノマーをインク中に含める必要がいまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、第一面において、本発明は、鋳型装飾(IMD)工程用のエネルギー硬化性インク又はニス組成物を供する。該インク組成物は、エネルギー硬化性樹脂、追加的な反応性モノマー及び/又はオリゴマー及び、任意で溶媒を、10重量%を超えない量含有し、エネルギー硬化性樹脂は、芳香族若しくは脂肪族ポリカーボネートを有するウレタンアクリレートオリゴマーで構成される。
【0012】
第二の側面において、本発明は、インク又はニス組成物を適用する鋳造装飾方法を供する。
【発明の効果】
【0013】
我々は驚くべきことに、エネルギー硬化性組成物の提供が可能であることを発見した。好ましくは、紫外線硬化性インクであって、IMD工程用に適しており、基材上に印刷可能であって、印刷された基材が、常套的な形成技術を使って形成することができ、ウォッシュアウトが起こることなく、樹脂注入による充填が可能であり、しかも、防護用コーティーングが必要ないことを発見した。さらに、このインクは、結合コーティーングが必要なく、充填樹脂に対する優秀な接着性を供することが可能である。請求したエネルギー硬化性樹脂組成物は、向上された接着性を付与するので、NVPは減量若しくは必要ない。さらなる利点として、溶媒は、IMD工程において、有意に減量又は使用しなくてもよい。溶媒又はNVPの減量又は消失により、明らかな環境又は健康に対する問題はもとより、最終部品における剥離の減弱、特に、環境に対する試験において、揮発性材料の不完全な除去若しくは不完全な反応により生じる健康に対する問題に対して利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
加えて、本発明におけるインク組成物は、優秀な柔軟性と形成特性を有する一方、硬化された際、高分子量を有するウレタンアクリレート樹脂を含む常套的な挿入IMDインクよりも、より硬化で強靱な表面を供することが可能であることが分かった。突如の傷、又は形成若しくは鋳造道具による起こる障害を防止するために、硬度及び強靱さは、挿入IMDインクにおいて望ましい。
【0015】
広義において、このことは、ポリカーボネートをキャリアとして色素又は染料を有する新規のウレタンアクリレート樹脂を使用することにより達成される。
【0016】
ここに使用する「エネルギー硬化性樹脂」又は「エネルギー硬化性組成物」は、適当な波長若しくは強度を有する放射光源の曝露により硬化可能な樹脂又は組成物を意味する。例えば、紫外線(UV)放射などの適当は波長を有する電磁的放射源の曝露による光硬化可能である、あるいは適当な強度を有する電子ビームの曝露により電子ビーム硬化可能である、などである。好ましくは、本発明におけるエネルギー硬化性組成物は、少なくとも紫外線硬化性である。
【0017】
本発明におけるエネルギー硬化性組成物は、エネルギー硬化性樹脂、追加の反応性モノマー又はオリゴマー、添加物、及び、インク組成物においては色素若しくは染料を含む。紫外線硬化性組成物などの光硬化性組成物の場合、該組成物には、光開始剤をも含まれる。
【0018】
(エネルギー硬化性樹脂)
エネルギー硬化性樹脂は、少なくとも、ポリカーボネートを有する単一の、二つの、若しくは三つの機能性ウレタンを持つアクリレートオリゴマーで構成され、ジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート機能性不飽和モノマー及びポリカーボネートポリオールとの反応により得られる。好ましくは、該樹脂は、少なくとも、一般式(I)又は(II)で示されるポリカーボネートを有する単一の、二つの、若しくは三つの機能性ウレタンを持つアクリレートオリゴマーである。
【0019】
【化2】

この中で:
及びRは、合成に使用される、OCN−R−NCOなどの、ジイソシアネートを示し;
Yは、水素原子又はメチル基を示し;
(メタ)クリル酸に結合したR及びRは、(メタ)アクリレート基を有し、合成時に使用されるヒドロキシ(メタ)アクリレート機能性不飽和モノマーの残基を示す。
【0020】
ジイソシアネート化合物の例は、限定しないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、及びキシレンジイソシアネート(XDI)を含む。エチレン化不飽和モノイソシアネートの調製を可能にするジイソシアーネート基の向上された耐性及び反応性における選択性の理由により、好ましいジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)である。上述のジイソシアネート化合物は、単独又は組み合わせで使用してもよい。
【0021】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート機能性不飽和モノマーの例は、限定しないが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、グリセルジアクリレート、及びトリメチロエタンジ(メタ)アクリレートを含む。
【0022】
適当なポリカーボネートポリオールは、一般式(III)に示す。
【0023】
【化3】

この中で:
及びRは、互いに同様又は異なる脂肪酸又は芳香族基を示し;及び
nは1以上60以下の整数である。
【0024】
ポリカーボネートポリオールは、例えばエステル交換反応、又はポリオールとジエチルカーボネート又はジフェニルカーボネートによるアルコール分解反応により合成することができる。ポリオールは好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルケンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのアルケンエーテルジオールなどが挙げられる。その他の適当なジオールには、2,2−ビス−[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを含む。
【0025】
トリメチロイルプロパン、グリセリン、及びペンタエリスリトールなどの三つ以上の水酸基を有するポリオールは、三つの機能性ポリカーボネートウレタンアクリレートの合成に適したポリカーボネートポリオールの調製に用いることができる。
【0026】
ポリカーボネートポリオールの混液は、合成において、利用してもよい。ポリエーテル又はポリエステルポリオールなどのその他のポリオールを含んでもよく、所望のIMD特性を得るために、実質上、ポリカーボネートであるべきである。
【0027】
ポリカーボネートは、脂肪族又は芳香族でもよいが、好ましくは、脂肪族がよい。直鎖でも分岐鎖でもよいが、好ましくは直鎖である。
【0028】
適当なポリカーボネートウレタンアクリレートは、NTX4711及びNTX4867(Sartomer社製)、RD2/105、RD2/106、RD3/101、RD3/102、RD4/103及びRD4/104(UCB Chemicals SA社製)、並びにRXX01−344(Rahn社製)が利用可能である。
【0029】
ポリカーボネートウレタンアクリレート(PCUA)オリゴマーは、平均分子量で、1000〜30000の範囲であり、より好ましくは、3000〜15000であり、さらに好ましいには、4000〜10000であり、特に6500〜10000である。柔軟性及び伸張性を向上する目的においては、より大きく分子量のポリカーボネートが望ましい。しかしながら、分子量が大きくなるにつれ、インクの粘度及び印刷性における不利な硬化が起こる可能性がある。さらに、分子量が大きくなるにつれ、過度にやわらかいインクコーティーングを製造する傾向にある、鋳造部品又は持ち運びにおいて傷が入る可能性がある。従って、特定の分子量を選択することは、これら軋轢因子との妥協であり、一方で、許容できる柔軟性及び伸張性を供し、さらに一方で、満足いく粘度、印刷性、及び硬度を確保することになるだろう。
【0030】
もし望むならば、インクの持つ柔軟性、伸張性、及び硬度特性は、単一機能性、二機能性、三機能性PCUAオリゴマーの混合により調節可能である。二機能性及び三機能性オリゴマーの含包により供される高度な架橋は、インク全体の柔軟性及び伸張性を減弱する傾向にあり、硬度を増加する。
【0031】
従って、エネルギー硬化性樹脂は、単一、二、若しくは三機能性ポリカーボネートウレタンアクリレートオリゴマー、又は2つ以上の単一、二、及び三機能性ポリカーボネートウレタンオリゴマーの混合により構成される。好ましくは、このエネルギー硬化性樹脂は、少なくとも、単一、若しくは二機能性ポリカーボネートウレタンアクリレートオリゴマー、又はこれらの混合により構成される。エネルギー硬化性樹脂の平均機能性値は、2.5以下が好ましく、2.2以下がさらに好ましく、2.1以下が最も好ましい。
【0032】
単一機能性ポリカーボネートウレタンアクリレートは、重量の70%以下の量を該組成物中に含んでもよい。二機能性ポリカーボネートウレタンアクリレートは、50%以下、三機能性ポリカーボネートウレタンアクリレートは、5%以下含んでもよい。該組成物中、全体のポリカーボネートウレタンアクリレート組成物は、5以上70%以下含まれ、好ましくは、20以上60%以下含まれる。
【0033】
(光開始剤)
本発明における組成物は、少なくとも光硬化性及びさらに好ましくは紫外線硬化性の、光開始剤を含む。しかしながら、本発明によるEB硬化組成物は、光開始剤を必要としない。
【0034】
紫外線硬化性組成物などの光硬化性組成物にとって、光硬化機構を開始するため、広く市販の光開始剤を用いることができる。好ましくは、これら光開始剤は、鋳造部品の注入における剥離などの問題を回避するため、分離特性及び揮発性が低い。光開始剤パッケージは、最終IMD部品を使った典型的な熱及び環境試験に重要であるとされる外線熱による黄変特性を有すべきである。光開始剤パッケージは、典型的には、該組成物中で、0.5以上20%以下存在し、例えば、1以上14%以下存在する。
【0035】
適した光開始剤は、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(Lucerin(登録商標)TPO、BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド(Irgacure 819、チバガイギー社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル−フォスフィネート(Lucerin(登録商標)TPO−L、BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリンフェニル)ブタン−1−オン(Irgacure(登録商標)369、チバガイギー社製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン(Irgacure(登録商標)184、チバガイギー社製)、イソプロピルチオキザントン(Quantacure(登録商標)CTX、日本化薬社製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン(Esacure(登録商標)KIP100F、Lamberti社製)、メチルベンゾイルホルメート(Genocure MBF、Rahn社製)、ベンゾフェノン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル] −2−モルフォリノプロパン−1−オン(Irgacure(登録商標)907、チバガイギー社製)などが含まれる。この中で、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(Lucerin(登録商標)TPO、BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド(Irgacure 819、チバガイギー社製)、及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルフェンチルフォスフィンオキシドは、好ましい光開始剤である。
【0036】
(追加の反応性モノマー及び/又はオリゴマー)
追加の反応性エネルギー硬化性モノマー及び/又はオリゴマーは、該組成物中の重量に対し、80%以下、好ましくは、60%以下存在してもよい。これらの反応性モノマー及び/又はオリゴマーは、単一機能性であることが好ましい。
【0037】
適当なアクリレートモノマー又はオリゴマーには、限定しないが、イソボルニルアクリレート(IBOA)、2−フェノキシエチルアクリレート(2PEA)、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、CTFアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、THF−アクリレート、アルコキシル化アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、低分子量の単一機能性ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び低分子量のエポキシアクリレートなどが含まれる。
【0038】
アクリル化されていない反応性希釈液は、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、n−ビニルフォルムアミド(NVF)、n−ビニルフォルムアミド誘導体、及びn−ビニルカプロラクタム(NVC)が含まれる。
【0039】
本発明の組成物は、基材などへの吸着性が向上し、これにより、有利に、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)の使用量を減量又は消失することが可能となる。NVPは、常套的に、基材に対する接着性を向上するために使用されるが、剥離に対する非反応材料による揮発による健康、安全性、及びその効果に関する危惧は、有利にNVPが消失又は減量されることを意味する。にもかかわらず、いくつかの場合、本発明におけるインク及びニス組成物中に、基材への「鍵」特性を向上するために、NVPなどのモノマーを含むことが望まれる。もし使用する場合、NVPは、該組成物中の重量に対し、30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に5%以下含むことが可能である。最も好ましいのは、該組成物中にNVPが含まれないことである。
【0040】
(添加物)
もし望むなら、インクコーティーングの接着性を向上するため、アクリル、スチレンアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、又はセルロースなどの不活性な樹脂が少量含まれてもよい。しかしながら、こらら不活性な樹脂は、充填樹脂の注入に対するインクの耐性に対して不利的に影響を及ぼし、ウォッシュアウトに類似した状況を増加させる傾向にある。従って、もし含めるならば、ごく少量を用いることが望ましく、例えば、該組成物の重量に対し、10%以下、好ましくは、7%以下用いてもよい。
【0041】
湿潤物質、シリコン、非シリコン系消泡剤などの添加物は、基質の湿潤、フローアウトなどの印刷特性を向上させるために添加してもよく、該組成物重量に対し、5%以下、好ましくは2%以下含めてもよい。典型的に低分子量を有するいくつかの添加物は、硬化コーティーング中に、印刷表面から剥離する傾向を持つ可能性がある。これは、IMD特性に影響を及ぼす可能性があり、従って、全体の添加物の量は、最小限にとどめるべきであり、高い剥離特性を持つ添加物は避けるべきである。
【0042】
該組成物を、ニスに代わってインクに使用する場合、該組成物中には、色素又は染料が含まれる。有機及び/又は無機色素又は染料は、該組成物重量に対し、50%以下、好ましくは40%以下含めることが可能である。この色素又は染料は、熱分解、熱変形、昇華に対して良好な耐性を有すべく選択されるべきである。
【0043】
適当な色素には、限定しないが、二酸化チタン白、亜鉛サルファイド、カーボンブラック、アゾジアリリド黄、イソインドリン黄、ジアリリドオレンジ、キナクリドンマゼンダ、ジケトピロロピロール赤、銅フタロシアニン青、銅フタロシアニン緑、ジオキサジン紫、及びジケトメタルオキシドが含まれる。特に効果的な色素には、金属酸化物コートマイカ色素、及びアルミニウム金属色素などが含まれる。
【0044】
フィラーは、該組成物の粘度及びレオロジーを調節するために含まれてもよく、典型的には、印刷特性を向上する。フィラーは、該組成物重量に対し、40%以下、好ましくは30%以下存在してもよい。
【0045】
適当なフィラーには、限定しないが、炭酸カルシウム、陶土、アルミニウム水和物、タルク、硫酸バリウム、アルミニウムシリケート、及びシリカが含まれる。
【0046】
本発明による組成物は、本質的に有機系溶媒が含まない。しかしながら、少量の有機溶媒を含めてもよく、必要であれば、該組成物重量に対し、10%以下、好ましくは5%以下含めてもよい。更に好ましくは、有機溶媒は該組成物中に含まれないことである。
【0047】
(鋳造装飾(IMD)工程)
本発明におけるエネルギー硬化性組成物は、特に、IMD工程に適しており、特に、挿入IMD又は挿入鋳造工程に適している。基材に対する該組成物の適用は、典型的な印刷技術の使用に対して効果的である。好ましい技術には、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、デジタル印刷、スクリーン印刷工程が含まれ、その他の適当な方法を用いてもよい。特に好ましいのは、スクリーン印刷である。
【0048】
インクを印刷、あるいはニスを適用するのに適した基材は、いくつかの場合、バイエルAG社製(Bayfol(登録商標)、Makrolon(登録商標)、Marofol(登録商標)、Bayblend(登録商標))、及び自発型(Autoflex Hilform(登録商標)、Autoflex XtraForm(登録商標))などの、印刷許容性ポリエステル、ポリカーボネート、ABS、PMMA、ポリカーボネート/ポリエステル混合物、ポリカーボネート/ABS混合材料が含まれてもよい。好ましくは、基材として、ポリカーボネート又はポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂材料がよい。
【0049】
同様に、印刷された基材上に注入される適当な充填材料には、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン、ABS、及びPMMA樹脂材料、又はこれらの混合物が含まれる。好ましくは、ポリカーボネート、又はポリカーボネート/ポリエステル混合物樹脂材料である。
【0050】
本発明は、さらに非限定的な例に対する参考文によって示されるだろう。
(例)
(A)設計)
(例1(比較例))
溶剤ベースのIMD技術
Noriphan(登録商標)ブラックHTR952(Proll社製)のサンプルは、紫外線IMDインク技術との比較において得られた。
【0051】
Noriphan(登録商標)の印刷物は、Prollより提供されているNoriphan(登録商標)製品データーシートに従って調製された。この印刷物は、接着性、表面硬度、印刷物巻上げ、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0052】
(例2(比較例))
(標準的な柔軟性を有するウレタンアクリレート技術)
次なるスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0053】
【表1】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0054】
(例3(本発明))
(ポリカーボネートウレタンアクリレート技術)
以下のスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0055】
【表2】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0056】
(例4(本発明))
(ポリカーボネートウレタンアクリレート技術(NVPフリー))
以下のスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0057】
【表3】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0058】
(例5(本発明))
(ポリカーボネートウレタンアクリレート技術(NVPフリー))
以下のスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0059】
【表4】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0060】
(例6(本発明))
(ポリカーボネートウレタンアクリレート技術(NVPフリー))
以下のスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0061】
【表5】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0062】
(例7(本発明))
(ポリカーボネートウレタンアクリレート技術)
以下のスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0063】
【表6】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0064】
(例8(本発明))
(ポリカーボネートウレタンアクリレート技術(NVPフリー))
以下のスクリーンインク組成物は、材料の第一前混合によって調製され、その後、得た混合物は、スリーロールミル上で、12μmになるまで研磨された。
【0065】
【表7】

150−34メッシュを介してポリカーボネート基材上に、上記スクリーンインク組成物により単一又は複数層を有する印刷が施され、中圧水銀ランプ(80 W/cm)を使って硬化された。印刷物は、接着性、表面硬度、成形性、及びIMD特性が検討された。
【0066】
(B)実験結果:)
(1)物性)
表1
【0067】
【表8】

*ASTM D3363、BS3900−E19、ISO15184参照
表2
【0068】
【表9】

**1=劣(インク全体が剥離)
5=優(インク剥離なし)
BS3900−E6、ISO2409参照
(2)成形性)
印刷された基材は、最も一般的な技術(真空熱成型、HPFニーブリング、ハイフォドロフォーム、適合金属技術)を使って、成形性が検査された。
表3
【0069】
【表10】

表4
【0070】
【表11】

表5
【0071】
【表12】

表6
【0072】
【表13】

***1=劣(成形できない)
5=優(成形技術の極限範囲内で圧伸可能)
(3)ウォッシュアウト耐性)
印刷された基材は、スプルゲートを使って充填樹脂の直接注入が施された。インクの移動度(ウォッシュアウト)は、視覚的に評価され、ランク付けされた。
表7
【0073】
【表14】

****1=劣(インクウォッシュアウト)
5=優(ウォッシュアウトなし)
(4)注入された充填樹脂に対する接着性)
印刷された基材は、プラークツールを使用したポリカーボネート樹脂の注入が施された。樹脂と印刷された基材との間の結合強度は、ピール強度分析によって検討された。
表8
【0074】
【表15】

(5)熱時効及び環境循環に対する耐性)
熱時効及び環境循環試験は、いかなる変化、例えば、剥離強度、熱/環境循環後の色調特性について、が起きないことを確実にするため、全体のIMD部品に対して行われた。
表9
【0075】
【表16】

表10
【0076】
【表17】

(6)印刷巻上げ)
例1及び例3による単一又は複数層の印刷物は、125μmのBayfol(登録商標)上に調製され、24時間後における基材の巻上げ又は歪曲の度合いが検討された。
表11
【0077】
【表18】

*****インクフィルムの厚みは、デジタルマイクロメーターを使って同定され、基材に対する印刷(いくつかの数のインクを配したもの)及び印刷されていない領域に関し比較された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族若しくは脂肪族ポリカーボネートを有するウレタンアクリレートオリゴマーで構成されるエネルギー硬化性樹脂、追加的反応性モノマー及び/又はオリゴマー、並びに任意に溶媒で構成される鋳型装飾工程用のエネルギー硬化性インク又はニス組成物であって、前記溶媒は、該組成物重量に対して10重量%以下であることを特徴とするところの、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、インクであって、さらに色素若しくは染料で構成されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記色素又は染料は、前記組成物重量に対して1以上40%以下含まれることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
光硬化性であり、かつ、さらに光開始剤で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記光開始剤は、前記組成物重量に対して1以上14%以下含まれることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートは、脂肪族であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネートは、直鎖であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネートを有するウレタンアクリレートオリゴマーの分子量は、1000以上30000以下、好ましくは3000以上15000以下、さらに好ましくは6500以上10000以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネートを有するウレタンアクリレートコンポーネントは、前記組成物重量に対して5以上70%以下含まれることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリカーボネートを有するウレタンアクリレートオリゴマーは、一般式(I)又は(II)
【化1】

であって、
及びRは、OCN−R−NCOなどで示されるジイソシアネート;
Yは、水素原子又はメチル基;
(メタ)クリル酸に結合したR及びRは、ヒドロキシ(メタ)クリル酸機能性不飽和モノマーの残基;
であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
追加的アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーで構成してなる請求項1乃至10のいずれか一項に記載の組成物であって、該アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーは、該組成物重量に対して80%以下含まれることを特徴とするところの、組成物。
【請求項12】
前記アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーは、単一機能性を有することを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
反応性モノマーであるN−2−ピロリドン(NVP)で構成してなる請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物であって、該NVPは、該組成物重量に対して10%以下、好ましくは、5%以下含まれることを特徴とするところの、組成物。
【請求項14】
有機溶媒で構成してなる請求項1乃至13のいずれか一項に記載の組成物であって、該有機溶媒は、該組成物重量に対して、5%以下含まれることを特徴とするところの、組成物。
【請求項15】
有機溶媒を含まないことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のインク又はニス組成物を適用する鋳型装飾方法。
【請求項17】
前記インクは、ポリカーボネート又はポリカーボネート/ポリスチレン基材上に印刷されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インクは、基材上に印刷され、ポリカーボネート又はポリカーボネート/ポリエステル混合充填による該印刷された基材への接着性を供するために、該基材上の前記インクが、ポリカーボネート又はポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂の注入を供されることを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。

【公開番号】特開2012−162719(P2012−162719A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48514(P2012−48514)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2002−552071(P2002−552071)の分割
【原出願日】平成13年9月26日(2001.9.26)
【出願人】(502040409)コーツ ブラザーズ ピーエルシー (1)
【Fターム(参考)】