説明

鋳型造型方法及びその装置

【課題】ブローヘッド1の収容部2内に収容されたガス硬化性鋳物砂41を成形型35のキャビティ36内に吹き込み充填する場合に、その鋳物砂41をキャビティ36内に充填する前に硬化させることなく、良好で安定した充填性を確保する。
【解決手段】収容部2内の鋳物砂41のキャビティ36内への吹き込み充填前に、その鋳物砂41を、撹拌部材21によって、該撹拌部材21の撹拌抵抗値が所定範囲(鋳物砂がブローノズルから効率良く吹き出す最適な嵩密度範囲に対応する範囲)内になるまで撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス硬化性鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填する鋳型造型方法及びその装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示されているように、粘結剤(フェノール樹脂及びポリイソシアネート化合物)及び溶剤(トルエン等)を含むガス硬化性鋳物砂をブローヘッド内に収容しておき、そのブローヘッド内への加圧気体の供給により、上記鋳物砂をブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填し、その後、上記キャビティ内に硬化ガス(トリエチルアミンガス等)を導入して、該キャビティ内に充填された鋳物砂を硬化させることで、鋳型を造型する方法はよく知られている。
【0003】
また、例えば特許文献2に示されているように、ブローヘッド(ホッパ)内の鋳物砂をエアにより浮遊流動化させるとともに、砂だまカッターに通して砂だまを砕き、その後、加圧エアで鋳物砂をキャビティ内に吹き込み充填するようにすることも知られている。
【特許文献1】特開平3−47647号公報
【特許文献2】特開2001−225148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなガス硬化性鋳物砂は、粘結剤によって砂表面に粘着性が生じるため、ブローヘッド内の鋳物砂の嵩密度が安定しておらず、この結果、鋳物砂のキャビティ内への充填性を常に良好に確保することが困難となる。
【0005】
そこで、上記特許文献2のように、鋳物砂をキャビティ内に吹き込み充填する前に、鋳物砂をエアーにより浮遊流動化させとともに、砂だまカッターに通して砂だまを砕くようにすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の方法をガス硬化性鋳物砂に適用すると、以下のような問題が生じる。すなわち、鋳物砂に対し浮遊流動化させるためにエアーを吹き付けると、砂表面に粘結剤と共に付着している溶剤がエアにより飛ばされ、これにより、砂表面の粘結剤の濃度が高くなって硬化反応が加速し、このため、鋳物砂を成形型のキャビティ内に充填する前に硬化することとなって、鋳型の品質が低下してしまう。また、鋳物砂を砂だまカッターに通した場合も、砂表面の溶剤が減少する可能性が高くなる。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようにガス硬化性鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填する場合に、その鋳物砂をキャビティ内に充填する前に硬化させることなく、良好で安定した充填性を確保しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、ブローヘッド内の鋳物砂のキャビティ内への吹き込み充填前に、その鋳物砂を、撹拌部材によって、該撹拌部材の撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで撹拌するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、ガス硬化性鋳物砂を収容する収容部を有するブローヘッドの該収容部内に加圧気体を供給することで、該収容部内の鋳物砂を、収容部に連通するように設けたブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填する吹き込み充填工程と、上記吹き込み充填工程の後に、上記キャビティ内に硬化ガスを導入して、該キャビティ内に充填された鋳物砂を硬化させる硬化工程とを含む鋳型造型方法を対象とする。
【0010】
そして、上記吹き込み充填工程の前に、上記収容部内の鋳物砂を、撹拌部材によって、該撹拌部材の撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで撹拌する撹拌工程を含むものとする。
【0011】
このことにより、鋳物砂のキャビティ内への吹き込み充填前に、収容部内の鋳物砂が撹拌されてほぐされる。ここで、鋳物砂の嵩密度が大きすぎると、鋳物砂がブローノズルに詰まって該ブローノズルから出難くなる一方、鋳物砂をほぐしすぎて嵩密度が小さくなりすぎると、加圧気体がブローノズルから抜けるだけで、このときも鋳物砂がブローノズルから出難くなる。つまり、鋳物砂がブローノズルから効率良く吹き出す最適な嵩密度範囲が存在する。一方、収容部内の鋳物砂を撹拌しなければ、鋳物砂の嵩密度は、通常、最適な嵩密度範囲よりも大きく、吹き込み充填工程の回数が多くなればなるほど、加圧気体の加圧によって鋳物砂の嵩密度はますます大きくなる。そこで、吹き込み充填工程の前に、収容部内の鋳物砂を撹拌部材によって撹拌して鋳物砂の嵩密度を上記の最適な嵩密度範囲になるようにする。すなわち、撹拌部材の撹拌抵抗値は鋳物砂の嵩密度と対応しており、嵩密度が大きくなるほど撹拌抵抗値は大きくなるので、上記最適な嵩密度範囲に対応する撹拌抵抗値の範囲を所定範囲に設定して、その所定範囲内になるまで鋳物砂を撹拌すれば、最適な嵩密度が得られることとなり、これにより、吹き込み充填工程において、鋳物砂がキャビティ内に常に良好に充填される。また、撹拌工程においては、鋳物砂を撹拌するだけであるので、撹拌工程で砂表面の溶剤が減少するようなことはなく、却って粘結剤、溶剤及び砂がより一層均一に混ざって好ましい。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記撹拌工程、吹き込み充填工程及び硬化工程は、繰り返し行われ、上記所定範囲は、上記各撹拌工程毎に設定されたものであるとする。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記所定範囲は、上記各撹拌工程時における上記収容部内の鋳物砂量に基づいて設定されたものであるとする。
【0014】
これら請求項2及び3の発明により、各撹拌工程毎に収容部内の鋳物砂量に応じて所定範囲を適切に設定することができる。すなわち、吹き込み充填工程を1回行うと、キャビティ内に充填された量だけ収容部内の鋳物砂量が少なくなり、収容部内に鋳物砂を補充しない場合には、次の撹拌工程においては、前回の撹拌工程と鋳物砂量が異なることになる。一方、鋳物砂量が異なると、鋳物砂の嵩密度と撹拌部材の撹拌抵抗値との関係も変化するので、鋳物砂量に応じて、最適な嵩密度に対応する撹拌抵抗値を所定範囲に設定することができ、よって、いずれの撹拌工程でも、良好で安定した充填性が得られる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、上記鋳物砂は、粘結剤及び溶剤を含み、上記撹拌工程の前又は撹拌工程中に、上記収容部内に上記溶剤を補充する溶剤補充工程を含むものとする。
【0016】
こうすることで、特に、撹拌工程、吹き込み充填工程及び硬化工程を繰り返し行う場合に、砂表面の溶剤の減少を抑制することができる。すなわち、吹き込み充填工程では、鋳物砂をキャビティ内に吹き込み充填するために収容部内に加圧気体を供給するが、この加圧気体により砂表面の溶剤が或る程度の量だけ飛んで減少することとなる。しかし、この発明では、上記溶剤の減少分を補充することができ、鋳型の品質の低下を抑制することができる。また、このように溶剤を補充しても、撹拌工程における撹拌によって、粘結剤、溶剤及び砂を均一に混ぜることができ、収容部内において部分的に溶剤が多くなりすぎるようなこともない。
【0017】
請求項5の発明は、ガス硬化性鋳物砂を収容する収容部と該収容部に連通するように設けられたブローノズルとを有するブローヘッドと、該ブローヘッドの収容部内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置とを備え、該加圧気体供給装置により上記収容部内に加圧気体を供給することで、該収容部内の鋳物砂を上記ブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填するように構成された鋳型造型装置の発明である。
【0018】
そして、この発明では、上記収容部内の鋳物砂を撹拌する撹拌部材と、上記撹拌部材を駆動する撹拌部材駆動手段と、上記撹拌部材の撹拌抵抗値を検出する撹拌抵抗値検出手段と、上記撹拌部材駆動手段の作動を制御する作動制御手段とを備え、上記作動制御手段は、上記加圧気体供給装置による上記収容部内への加圧気体の供給前に、上記撹拌部材駆動手段を、上記撹拌抵抗値検出手段により検出される撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで作動させるように構成されているものとする。
【0019】
この発明により、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、上記収容部内の鋳物砂量を検出する鋳物砂量検出手段を備え、上記作動制御手段は、上記鋳物砂量検出手段により検出された鋳物砂量に基づいて上記所定範囲を設定するように構成されているものとする。このことにより、請求項2及び3の発明と同様の作用効果が得られる。
【0021】
請求項7の発明では、請求項5の発明において、上記鋳物砂は、粘結剤及び溶剤を含み、上記作動制御手段によって作動制御され、上記収容部内に上記溶剤を噴霧して補充する溶剤噴霧装置を備え、上記作動制御手段は、上記撹拌部材駆動手段の作動前又は作動中に上記溶剤噴霧装置を作動させて、上記収容部内に上記溶剤を補充させるように構成されているものとする。こうすることで、請求項4の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の鋳型造型方法及びその装置によると、ブローヘッドの収容部内に収容された鋳物砂のキャビティ内への吹き込み充填前に、その収容部内の鋳物砂を、撹拌部材によって、該撹拌部材の撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで撹拌するようにしたことにより、鋳物砂をキャビティ内に充填する前に硬化させることなく、鋳物砂のキャビティ内への充填性を良好にかつ安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る鋳型造型装置を概略的に示し、この鋳型造型装置は、コールドボックス鋳型造型装置であって、ガス硬化性鋳物砂41を収容する収容部2を有するブローヘッド1を備えている。上記鋳物砂41は、フェノール樹脂及びポリイソシアネート化合物からなる粘結剤と溶剤とを含み、砂表面が該粘結剤及び溶剤により覆われてなる。上記粘結剤のフェノール樹脂は、ベンジルエーテル基をその分子内に有するフェノール、ノボラック又はこれらから誘導される樹脂である。上記ポリイソシアネート化合物は、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等である。また、上記溶剤は、脂肪族炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系、アルコール系等の有機溶剤の単独又は混合したものからなる。
【0025】
上記鋳物砂41は、上記収容部2の上側に配設した混練部3から収容部2へと供給される。すなわち、混練部3には、上記粘結剤、溶剤及び砂が投入され、これらが、回転駆動される混練機4によって均一に混練されて、上記の如く砂表面が粘結剤及び溶剤により覆われてなる鋳物砂41となる。そして、収容部2と混練部3との間には、シャッター駆動機構6により開閉されるシャッター5が配設されており、このシャッター駆動機構6は、コントローラ31によって作動制御される。上記シャッター5がシャッター駆動機構6により開かれると、鋳物砂41が混練部3から自重で落下して収容部2に供給されることになる。
【0026】
上記ブローヘッド1の下面には、上記収容部2内の鋳物砂41を吹き出すための複数のブローノズル9が該収容部2に連通するように設けられている。このブローノズル2は、本鋳型造型装置の下側にセットされた複数の成形型35で形成されてなるキャビティ36に臨むようになされ、ブローノズル9から吹き出された鋳物砂41がキャビティ36内に充填されて、本鋳型造型装置により造型する鋳型の形状とされる。本鋳型造型装置により造型する鋳型としては、シリンダブロックやシリンダヘッドの鋳型、シリンダヘッドのウォータジャケット用中子等が挙げられる。
【0027】
上記ブローヘッド1における収容部2を構成する側壁面の上部には、加圧気体としての加圧エアを収容部2内に供給するためのエア供給口1aが設けられている。このエア供給口1aは、上記コントローラ31によって作動制御される電磁弁11を介してエアタンク12と接続されており、このエアタンク12内には、工場エアがレギュレータ(図示せず)により一定圧力(0.2MPa〜1MPa程度)とされた状態で供給されて、上記加圧エアとして貯蔵されている。そして、電磁弁11が作動すると、エアタンク12内の加圧エアが収容部2内に供給され、これにより、収容部2内の鋳物砂41が上記ブローノズル9を介して成形型35のキャビティ36内に吹き込み充填されることになる。このことで、電磁弁11、エアタンク12及びコントローラ31は、収容部2内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置を構成する。尚、鋳物砂41と共にキャビティ36内に吹き込まれた加圧エアは、成形型35の下部に設けたエアベント37よりキャビティ36外へと抜け出るようになっている。
【0028】
また、上記収容部2を構成する側壁面の上部には、収容部2内に上記溶剤を補充するための溶剤供給口1bが設けられている。この溶剤供給口1bは、収容部2内に上記溶剤を噴霧して補充する溶剤噴霧装置15と接続されている。この溶剤噴霧装置15は、上記コントローラ31によって作動制御され、後述の撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aの作動前に作動して、収容部2内に所定量の溶剤を噴霧して補充するようになっている。すなわち、前回の鋳物砂41のキャビティ36への吹き込み充填時に、加圧エアにより砂表面の溶剤が或る程度の量だけ飛んで減少しているので、その減少分と略同じ量の溶剤を補充する。
【0029】
さらに、上記ブローヘッド1の収容部2内の上部には、収容部2内の鋳物砂41の量を検出する鋳物砂量検出手段としての鋳物砂量検出センサ16が設けられている。この鋳物砂量検出センサ16は、本実施形態では、赤外線を下方に放出して最上部の鋳物砂41により反射してきた赤外線を受信してその強度によって収容部2内の鋳物砂41の量を検出するものであるが、他の構成のセンサを用いてもよい。この鋳物砂量検出センサ16により検出された収容部2内の鋳物砂41の量の情報が上記コントローラ31に入力されるようになっている。
【0030】
さらにまた、上記ブローヘッド1の収容部2内の下部には、収容部2内の鋳物砂41を撹拌する撹拌部材21が設けられている。この撹拌部材21は、鋳物砂41をほぐして、後述の如く最適な嵩密度にするためのものであって、上下方向に延びかつ回転可能に支持された回転軸21aと、この回転軸21aの下端部に固定されかつ水平方向に延びる基板21bと、この基板21a上に設けられた複数の撹拌棒21cとからなっている。上記回転軸21aの上端部は、撹拌部材駆動手段22と連結されている。この撹拌部材駆動手段22の詳細構成は省略するが、駆動モータ22aと、この駆動モータ22aの回転軸と上記回転軸21aとを連結する、例えば曲げ自在なワイヤ等からなる連結部材と、駆動モータ22aを駆動するための駆動回路等を有している。この駆動回路には、駆動モータ22aに流れる電流値を検出する電流検出部22bが設けられている。
【0031】
上記撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aは、上記コントローラ31によって作動制御される。つまり、コントローラ31は、撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aの作動を制御する作動制御手段を構成する。そして、駆動モータ22aの作動中は、上記電流検出部22bにより検出された電流値の情報が上記コントローラ31に入力される。
【0032】
上記コントローラ31は、収容部2内の鋳物砂41のキャビティ36への吹き込み充填前において、上記駆動モータ22aを、撹拌部材21の撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで作動させるようになっている。本実施形態では、撹拌部材21の撹拌抵抗値を、上記電流検出部22bによって検出する。すなわち、駆動モータ22aの電流値は、上記撹拌部材21を回転するのに必要なモータトルク、つまり撹拌部材21の撹拌抵抗値と対応しており、撹拌部材21の撹拌抵抗値が大きくなるほど駆動モータ22aの電流値は増大する。したがって、上記撹拌抵抗値の所定範囲に対応して所定電流範囲を設定しておき、駆動モータ22aを、上記電流検出部22bにより検出された電流値が所定電流範囲内になるまで作動させるようにしている。このことで、上記電流検出部22bは、撹拌部材21の撹拌抵抗値を検出する撹拌抵抗値検出手段を構成することになる。
【0033】
上記撹拌抵抗値の所定範囲、つまり所定電流範囲は、収容部2内の鋳物砂41がブローノズル9から効率良く吹き出す範囲に設定される。ここで、収容部2内の鋳物砂41の量を一定にしてその鋳物砂41の嵩密度を変化させて、鋳物砂41の嵩密度と、ブローノズル9から吹き出される鋳物砂41の速度及び質量から求まる運動エネルギーとの関係を調べた結果を図2に示す。すなわち、運動エネルギーが最大ないしそれに近い値となる嵩密度範囲、つまり鋳物砂41がブローノズル9から効率良く吹き出す最適な嵩密度範囲が存在する。これは、鋳物砂41の嵩密度が大きすぎると、鋳物砂41がブローノズル9に詰まって該ブローノズル9から出難くなる一方、鋳物砂41をほぐしすぎて嵩密度が小さくなりすぎると、加圧エアがブローノズル9から抜けるだけで、このときも鋳物砂41がブローノズル9から出難くなるからである。
【0034】
また、鋳物砂41の嵩密度と撹拌部材21の撹拌抵抗値(駆動モータのモータトルク)との関係を調べた結果を図3に示す。このように撹拌部材21の撹拌抵抗値は鋳物砂41の嵩密度と対応しており、嵩密度が大きくなるほど撹拌抵抗値は大きくなる。したがって、上記最適な嵩密度範囲に対応する撹拌抵抗値の範囲を上記所定範囲に設定すればよく、この所定範囲に対応する電流範囲を上記所定電流範囲に設定する。
【0035】
上記最適な嵩密度範囲は、収容部2内の鋳物砂41の量によって変わるため、上記鋳物砂量検出センサ16によって鋳物砂41の量を検出するようにしている。すなわち、鋳物砂41の量と最適な嵩密度範囲(つまり上記所定電流範囲)との関係を予め調べてテーブルにしておき、そのテーブルを上記コントローラ31に記憶しておく。そして、コントローラ31は、鋳物砂量検出センサ16からの鋳物砂41の量の情報を受けて、上記テーブルより、その鋳物砂41の量に対応する所定電流範囲を設定する。
【0036】
上記鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量が所定量よりも少なくなったとき、つまり鋳物砂41の残量が少なくてキャビティ36へ充填するだけの充分な量がないときには、コントローラ31がシャッター駆動機構6を作動させて、鋳物砂41を混練部3から収容部2へ供給する。
【0037】
次いで、上記コントローラ31の処理動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
先ず、最初のステップS1で、溶剤噴霧装置15を作動させて、収容部2内に所定量の溶剤を噴霧して補充し、次のステップS2で、所定電流範囲を設定する。すなわち、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量と上記テーブルとに基づいて、所定電流範囲を設定する。
【0039】
続いて、次のステップS3で、撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aを作動させ、次のステップS4で、電流検出部22bにより検出された電流値が所定電流範囲内にあるか否かを判定する。
【0040】
上記ステップS4の判定がNOであるときには、ステップS3に戻る一方、ステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進んで、駆動モータ22aを停止させ、次のステップS6で、電磁弁11を作動させてエアタンク12の加圧エアを収容部2内に供給する。
【0041】
次のステップS7では、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量が所定量よりも少ないか否かを判定し、このステップS7の判定がNOであるときには、本処理動作を終了する。一方、ステップS7の判定がYESであるときには、ステップS8に進んで、シャッタ−駆動機構6を作動させ、しかる後に本処理動作を終了する。
【0042】
次に上記鋳型造型装置により鋳型を造型する方法を説明する。
【0043】
最初に上記鋳型造型装置に成形型35をセットしておき、スイッチ操作等によって鋳型造型装置を作動させる。すると、収容部2内に所定量の溶剤が補充され(溶剤補充工程)、その後、撹拌部材21の基板21bが回転軸21a周りに回転し、その基板21b上に設けられた複数の撹拌棒21cによって、収容部2内の鋳物砂41が撹拌されてほぐされる(撹拌工程)。このとき、粘結剤、溶剤(上記補充分を含む)及び砂が均一に混ぜられる。そして、収容部2内の鋳物砂41の嵩密度は、撹拌部材21の駆動当初は、通常、上記最適な嵩密度範囲よりも大きいが、撹拌部材21による撹拌によって次第に小さくなり、やがて最適な嵩密度範囲内となる。これにより、電流検出部22bにより検出された電流値が所定電流範囲内となって撹拌部材21の駆動が停止される。
【0044】
続いて、エアタンク12の加圧エアが収容部2内に供給され、これにより、収容部2内の鋳物砂41が、ブローノズル9を介して成形型35のキャビティ36内に吹き込み充填される(吹き込み充填工程)。この吹き込み充填工程においては、該吹き込み充填工程の前に、鋳物砂41の嵩密度を、鋳物砂41がブローノズル9から効率良く吹き出す最適な嵩密度範囲内になるようにしたので、鋳物砂41がキャビティ36内に良好に充填される。
【0045】
上記吹き込み充填工程の後は、本実施形態では、上記成形型35を、該成形型35のキャビティ36内に硬化ガスを導入するために別途に設けた不図示の硬化ガス導入装置のところまで移動させて該硬化ガス導入装置にセットする。そして、この硬化ガス導入装置により、キャビティ36内に硬化ガス(例えばトリエチルアミンガス)を導入することで、該キャビティ36内に充填された鋳物砂41を硬化させ(硬化工程)、こうして品質の良好な鋳型の造型が完成する。
【0046】
次の新たな鋳型を造型するために鋳型造型装置に成形型35を再びセットして鋳型造型装置を再び作動させると、上記と同様に、溶剤補充工程、撹拌工程及び吹き込み充填工程が順次行われる。このときの溶剤補充工程においては、前回の吹き込み充填工程における加圧エアによって砂表面の溶剤が或る程度の量だけ飛んで減少しているが、その溶剤の減少分を補充することができる。
【0047】
そして、次の撹拌工程において、粘結剤、溶剤(上記補充分を含む)及び砂がより一層均一に混ぜられる。また、通常、前回の撹拌工程に比べて鋳物砂41の量が少なくなっている(但し、鋳物砂41が混練部3から収容部2に供給されたときには、鋳物砂41の量が多くなっている)が、その鋳物砂41の量に対応した最適な嵩密度範囲(所定電流範囲)が設定される。このように各撹拌工程毎に収容部内の鋳物砂41の量に基づいて最適な嵩密度範囲(所定電流範囲)が設定され、撹拌工程の開始当初は、前回の吹き込み充填工程における加圧エアの加圧によって、収容部2内の鋳物砂41の嵩密度が該最適な嵩密度範囲よりも高くなっているが、撹拌工程終了時には、鋳物砂41の量に対応した最適な嵩密度範囲内となる。これにより、吹き込み充填工程においては、鋳物砂41がキャビティ36内に良好に充填される。そして、吹き込み充填工程の後は、上記と同様に、硬化工程が行われる。このように上記各工程を繰り返すことで、多数の鋳型を造型することができる。
【0048】
尚、各吹き込み充填工程の後、鋳物砂41の量が所定量よりも少なくなった場合には、シャッター駆動機構6の作動によってシャッター5が開状態となって鋳物砂41が混練部3から収容部2へ供給される。
【0049】
したがって、上記実施形態では、鋳物砂41のキャビティ36内への吹き込み充填前に、鋳物砂41を撹拌部材21によって撹拌することで、鋳物砂41の嵩密度を、鋳物砂41がブローノズル9から効率良く吹き出す最適な嵩密度範囲内になるようにしたので、鋳物砂41をキャビティ36内に常に良好に充填することができる。
【0050】
また、撹拌工程においては、鋳物砂41を撹拌するだけであるので、撹拌工程で砂表面の溶剤が減少するようなことはない。一方、前記の吹き込み充填工程で、溶剤が或る程度減少しているが、その減少分を溶剤噴霧装置15の作動によって補充するので、鋳型の品質の低下を抑制することができる。
【0051】
尚、上記実施形態では、撹拌部材21の撹拌抵抗値を、撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aに流れる電流値を検出する電流検出部22bにより検出するようにしたが、これに限らず、例えば撹拌部材21にトルクセンサを設けて、このトルクセンサで撹拌部材21の撹拌抵抗値を検出するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、各撹拌工程において鋳物砂量検出センサ16により鋳物砂41の量を検出するようにしたが、この鋳物砂量検出センサ16を用いないようにすることも可能である。すなわち、多数の同じ鋳型を造型する場合には、1回の吹き込み充填工程で減少する鋳物砂41の量は略一定であるので、吹き込み充填工程を所定回数行ったときに、所定量(所定回数×1回の吹き込み充填工程での減少量)の鋳物砂41を混練部3から収容部2へ供給するようにしておけば、各撹拌工程毎の鋳物砂41の量は予め分かるので、各撹拌工程毎にその鋳物砂41の量に対応する最適な嵩密度範囲(所定電流範囲)を予めコントローラ31に記憶しておけばよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、撹拌工程の前に、収容部2内に溶剤を補充するようにしたが、撹拌工程中に溶剤の補充を行うようにしてもよい。また、シャッター駆動機構6の作動による鋳物砂41の混練部3から収容部2への供給直後は、溶剤の補充を行わないようにしてもよく、溶剤の補充量を少なくしてもよい。さらに、各撹拌工程の前の溶剤補充工程自体をなくしても、吹き込み充填工程での溶剤の減少量は僅かであるので、大きな問題とはならない。
本発明を適用することはできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ガス硬化性鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填する鋳型造型方法及びその装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る鋳型造型装置を示す概略構成図である。
【図2】収容部内の鋳物砂の嵩密度とブローノズルから吹き出される鋳物砂の運動エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図3】収容部内の鋳物砂の嵩密度と撹拌部材の撹拌抵抗値との関係を示すグラフである。
【図4】コントローラの処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 ブローヘッド
2 収容部
9 ブローノズル
11 電磁弁(加圧気体供給装置)
12 エアタンク(加圧気体供給装置)
15 溶剤噴霧装置
16 鋳物砂量検出センサ(鋳物砂量検出手段)
21 撹拌部材
22 撹拌部材駆動手段
22a 駆動モータ
22b 電流検出部(撹拌抵抗値検出手段)
31 コントローラ(作動制御手段)(加圧気体供給装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス硬化性鋳物砂を収容する収容部を有するブローヘッドの該収容部内に加圧気体を供給することで、該収容部内の鋳物砂を、収容部に連通するように設けたブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填する吹き込み充填工程と、
上記吹き込み充填工程の後に、上記キャビティ内に硬化ガスを導入して、該キャビティ内に充填された鋳物砂を硬化させる硬化工程とを含む鋳型造型方法であって、
上記吹き込み充填工程の前に、上記収容部内の鋳物砂を、撹拌部材によって、該撹拌部材の撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで撹拌する撹拌工程を含むことを特徴とする鋳型造型方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋳型造型方法において、
上記撹拌工程、吹き込み充填工程及び硬化工程は、繰り返し行われ、
上記所定範囲は、上記各撹拌工程毎に設定されたものであることを特徴とする鋳型造型方法。
【請求項3】
請求項2記載の鋳型造型方法において、
上記所定範囲は、上記各撹拌工程時における上記収容部内の鋳物砂量に基づいて設定されたものであることを特徴とする鋳型造型方法。
【請求項4】
請求項1記載の鋳型造型方法において、
上記鋳物砂は、粘結剤及び溶剤を含み、
上記撹拌工程の前又は撹拌工程中に、上記収容部内に上記溶剤を補充する溶剤補充工程を含むことを特徴とする鋳型造型方法。
【請求項5】
ガス硬化性鋳物砂を収容する収容部と該収容部に連通するように設けられたブローノズルとを有するブローヘッドと、該ブローヘッドの収容部内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置とを備え、該加圧気体供給装置により上記収容部内に加圧気体を供給することで、該収容部内の鋳物砂を上記ブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填するように構成された鋳型造型装置であって、
上記収容部内の鋳物砂を撹拌する撹拌部材と、
上記撹拌部材を駆動する撹拌部材駆動手段と、
上記撹拌部材の撹拌抵抗値を検出する撹拌抵抗値検出手段と、
上記撹拌部材駆動手段の作動を制御する作動制御手段とを備え、
上記作動制御手段は、上記加圧気体供給装置による上記収容部内への加圧気体の供給前に、上記撹拌部材駆動手段を、上記撹拌抵抗値検出手段により検出される撹拌抵抗値が所定範囲内になるまで作動させるように構成されていることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項6】
請求項5記載の鋳型造型装置において、
上記収容部内の鋳物砂量を検出する鋳物砂量検出手段を備え、
上記作動制御手段は、上記鋳物砂量検出手段により検出された鋳物砂量に基づいて上記所定範囲を設定するように構成されていることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項7】
請求項5記載の鋳型造型装置において、
上記鋳物砂は、粘結剤及び溶剤を含み、
上記作動制御手段によって作動制御され、上記収容部内に上記溶剤を噴霧して補充する溶剤噴霧装置を備え、
上記作動制御手段は、上記撹拌部材駆動手段の作動前又は作動中に上記溶剤噴霧装置を作動させて、上記収容部内に上記溶剤を補充させるように構成されていることを特徴とする鋳型造型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−237234(P2007−237234A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63022(P2006−63022)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】