説明

鋳型造型装置

【課題】ブローヘッド1の収容部2内に収容された鋳物砂41を、加圧気体の供給により成形型35のキャビティ36内に吹き込み充填する鋳型造型装置において、簡単な構成でその充填性を出来る限り向上させる。
【解決手段】収容部2内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部2内への供給中に、少なくとも1回不連続に上昇させる。具体的には、低圧の加圧気体を貯蔵する低圧タンク(第1エアタンク12)と、高圧の加圧気体を貯蔵する高圧タンク(第2エアタンク13)とを設け、上記低圧の加圧気体から収容部2内に供給し始めて、その後に上記高圧の加圧気体を収容部2内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填する鋳型造型装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示されているように、ガス硬化性鋳物砂をブローヘッドの収容部内に収容しておき、その収容部内への加圧気体の供給により、上記鋳物砂をブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填し、その後、上記キャビティ内に硬化ガスを導入して、該キャビティ内に充填された鋳物砂を硬化させることで、鋳型を造型する方法はよく知られている。また、ガス硬化性鋳物砂の代わりに熱硬化性鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填し、その成形型を加熱することで鋳物砂を硬化させる方法もある。
【0003】
上記のように加圧気体により鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填する場合、鋳物砂のキャビティ内への充填性が問題となる。そこで、上記特許文献1では、鋳物砂をキャビティ内へ充填した後、そのキャビティ内を減圧した状態で該キャビティ内に加圧空気を導入して鋳物砂に衝撃圧を作用させることで、鋳物砂の充填密度を高めるようにしている。
【特許文献1】特開平9−141389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、キャビティ内を減圧する減圧装置や、鋳物砂に衝撃圧を作用させる装置が必要となって装置の大型化や多大なコストアップを招いてしまう。
【0005】
そこで、本発明者らは、ブローヘッドの収容部内に供給する加圧気体の圧力に着目して鋭意研究した結果、該加圧気体の圧力を変化させるだけで鋳物砂のキャビティ内への充填性を向上できることを見出した。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようにブローヘッドの収容部内に収容された鋳物砂を、加圧気体の供給により成形型のキャビティ内に吹き込み充填する鋳型造型装置として、簡単な構成でその充填性を出来る限り向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、収容部内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部内への供給中に、少なくとも1回不連続に上昇させるようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、鋳物砂を収容する収容部と該収容部に連通するように設けられたブローノズルとを有するブローヘッドと、該ブローヘッドの収容部内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置とを備え、該加圧気体供給装置により上記収容部内に加圧気体を供給することで、該収容部内の鋳物砂を上記ブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填するように構成された鋳型造型装置を対象とする。
【0009】
そして、上記加圧気体供給装置は、上記収容部内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部内への供給中に、少なくとも1回不連続に上昇させるように構成されているものとする。
【0010】
すなわち、収容部内に供給する加圧気体の圧力が低圧であると、鋳物砂のキャビティ内への充填性が低下する一方、高圧であると、充填性は良好であるものの、鋳物砂が成形型のエジェクタピン孔や加圧気体を抜くためのベントから吹き抜けたりそこに詰まったりする。しかし、加圧気体の収容部への供給開始当初は、収容部内に供給する加圧気体の圧力を低圧とすれば、鋳物砂がエジェクタピン孔やベントから吹き抜けたり詰まったりすることなくエジェクタピン孔やベントの開口を覆い、この状態から、加圧気体の圧力を不連続に上昇させて、加圧気体の圧力を高圧にしても、既に鋳物砂がエジェクタピン孔やベントの開口を覆っているので、鋳物砂がエジェクタピン孔やベントから吹き抜けたり詰まったりすることはない。しかも、加圧気体の圧力を適切な圧力に上昇させれば、良好な充填性が得られる。このように加圧気体の圧力を変更するだけであるので、装置の大型化や多大なコストアップを招くようなことはなく、簡単な構成で済む。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記加圧気体供給装置は、上記収容部内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部内への供給中に1回低圧から高圧へ不連続に上昇させるように構成されているものとする。
【0012】
すなわち、鋳物砂の充填時間は、通常、1秒以内と短いので、加圧気体の圧力を複数回上昇させること自体が1回だけ上昇させる場合に比べて難しくて構成が複雑になるとともに、1回だけ低圧から高圧へ不連続に上昇させるだけでも、十分に良好な充填性が得られる。よって、より一層簡単な構成で、鋳物砂のキャビティ内への充填性を向上させることができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記加圧気体供給装置は、低圧の加圧気体を貯蔵する低圧タンクと、高圧の加圧気体を貯蔵する高圧タンクと、上記低圧タンクの低圧の加圧気体から上記収容部内に供給し始めて、その後に上記高圧の加圧気体を上記収容部内に供給する供給手段とを有しているものとする。
【0014】
このことにより、収容部内に供給する加圧気体の圧力の切換えを瞬時に行うことができ、適切なタイミングで応答性良く、良好な充填性が得られる圧力に切換えることができる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項2又は3の発明において、上記加圧気体供給装置は、上記低圧及び高圧の圧力レベルをそれぞれ変更する圧力変更手段を有しているものとする。
【0016】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、上記収容部内の鋳物砂量を検出する鋳物砂量検出手段を備え、上記圧力変更手段は、上記鋳物砂量検出手段により検出された鋳物砂量に基づいて上記低圧及び高圧の圧力レベルをそれぞれ変更するように構成されているものとする。
【0017】
これら請求項4及び5の発明により、収容部内の鋳物砂量等に応じて低圧及び高圧の圧力レベルを最適な圧力レベルに変更することができる。すなわち、鋳物砂のキャビティ内への吹き込み充填を1回行うと、キャビティ内に充填された量だけ収容部内の鋳物砂量が少なくなり、収容部内に鋳物砂を補充しない場合には、次の吹き込み充填時には、同じ圧力レベルでも、前回よりも鋳物砂量が少なくなった分だけ、ブローノズルからの鋳物砂の吹き出し方が異なり(通常は、鋳物砂量が少ないほど鋳物砂がブローノズルから出易くなる)、充填性も異なる。特に請求項3の発明のように低圧又は高圧タンクから加圧気体を収容部内に供給する場合には、鋳物砂量が少なくなった分だけ収容部内の空間(鋳物砂が存在しない部分)の体積が増大し、この空間の体積の増大も鋳物砂の吹き出し方に影響を及ぼす(通常は、鋳物砂量が少ないほど、つまり上記空間の体積が増大するほど鋳物砂がブローノズルから出難くなる)。しかし、これらの発明では、鋳物砂量等と低圧及び高圧の圧力レベルとの関係を、最良の充填性が得られるように予め調べておけば、吹き込み充填毎に、収容部内の鋳物砂量等に応じて、最良の充填性が得られる圧力レベルに変更することができ、これにより、良好な充填性が常に安定して得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の鋳型造型装置によると、収容部内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部内への供給中に少なくとも1回不連続に上昇させるようにしたことにより、簡単な構成で、鋳物砂のキャビティ内への充填性を向上させることができるとともに、鋳物砂がエジェクタピン孔やベントから吹き抜けたりそこに詰まったりすることがなく、鋳物砂のエジェクタピン孔への詰まりによる該エジェクタピン孔の摩耗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る鋳型造型装置を概略的に示し、この鋳型造型装置は、コールドボックス鋳型造型装置であって、ガス硬化性鋳物砂41を収容する収容部2を有するブローヘッド1を備えている。上記鋳物砂41は、フェノール樹脂及びポリイソシアネート化合物からなる粘結剤と溶剤とを含み、砂表面が該粘結剤及び溶剤により覆われてなる。上記粘結剤のフェノール樹脂は、ベンジルエーテル基をその分子内に有するフェノール、ノボラック又はこれらから誘導される樹脂である。上記ポリイソシアネート化合物は、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等である。また、上記溶剤は、脂肪族炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系、アルコール系等の有機溶剤の単独又は混合したものからなる。
【0021】
上記鋳物砂41は、上記収容部2の上側に配設した混練部3から収容部2へと供給される。すなわち、混練部3には、上記粘結剤、溶剤及び砂が投入され、これらが、回転駆動される混練機4によって均一に混練されて、上記の如く砂表面が粘結剤及び溶剤により覆われてなる鋳物砂41となる。そして、収容部2と混練部3との間には、シャッター駆動機構6により開閉されるシャッター5が配設されており、このシャッター駆動機構6は、コントローラ31によって作動制御される。上記シャッター5がシャッター駆動機構6により開かれると、鋳物砂41が混練部3から自重で落下して収容部2に供給されることになる。
【0022】
上記ブローヘッド1の下面には、上記収容部2内の鋳物砂41を吹き出すための複数のブローノズル9が該収容部2に連通するように設けられている。このブローノズル2は、本鋳型造型装置の下側にセットされた複数の成形型35で形成されてなるキャビティ36に臨むようになされ、ブローノズル9から吹き出された鋳物砂41がキャビティ36内に充填されて、本鋳型造型装置により造型する鋳型の形状とされる。本鋳型造型装置により造型する鋳型としては、シリンダブロックやシリンダヘッドの鋳型、シリンダヘッドのウォータジャケット用中子等が挙げられる。
【0023】
上記ブローヘッド1における収容部2を構成する側壁面の上部には、加圧気体としての加圧エアを収容部2内に供給するためのエア供給口1aが設けられている。このエア供給口1aは、上記コントローラ31によって作動制御される電磁弁11を介して第1エアタンク12及び第2エアタンク13と接続されている。これら第1及び第2エアタンク12,13には、工場エアがレギュレータ(図示せず)により一定圧力とされた状態で供給されて、上記加圧エアとして貯蔵されている。上記第1エアタンク12には、低圧(例えば0.2MPa程度)の加圧エアが貯蔵され、第2エアタンク13には、圧力が第1エアタンク12よりも高い高圧(例えば0.4MPa程度)の加圧エアが貯蔵されている。このことで、第1エアタンク12は低圧タンクに相当し、第2エアタンク13は高圧タンクに相当する。
【0024】
上記電磁弁11は、上記コントローラ31によって、上記第1エアタンク12と収容部2とを連通する状態と、上記第2エアタンク13と収容部2とを連通する状態と、第1及び第2エアタンク12,13のいずれも収容部2とは連通しない状態との3つの状態のうちのいずれか1つの状態とされる。この電磁弁11が上記第1又は第2エアタンク12,13と収容部2とを連通する状態になったときに、加圧エアが収容部2内に供給され、これにより、収容部2内の鋳物砂41が上記ブローノズル9を介して成形型35のキャビティ36内に吹き込み充填されることになる。したがって、電磁弁11、第1及び第2エアタンク12,13並びにコントローラ31は、収容部2内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置を構成する。尚、鋳物砂41と共にキャビティ36内に吹き込まれた加圧エアは、成形型35の下部に設けたエアベント37よりキャビティ36外へと抜け出るようになっている。
【0025】
そして、上記加圧気体供給装置は、収容部2内に供給する加圧エアの圧力を、加圧エアの収容部2内への供給中に少なくとも1回不連続に上昇させるように構成されている。本実施形態では、収容部2内に供給する加圧エアの圧力を、加圧エアの収容部2内への供給中に1回だけ低圧から高圧へ不連続に上昇させる。すなわち、加圧エアの収容部2内への供給開始当初は、電磁弁11が、コントローラ31によって、第1エアタンク12と収容部2とを連通する状態とされ、低圧の加圧エアの収容部2内への供給開始から第1所定時間が経過したときに、第2エアタンク13と収容部2とを連通する状態とされる。これにより、加圧エアの収容部2内への供給途中で、収容部2内に供給する加圧エアが、第1エアタンク12の低圧の加圧エアから第2エアタンク13の高圧の加圧エアに切り換えられる。このことで、電磁弁11及びコントローラ31は、低圧タンクの低圧の加圧気体から収容部2内に供給し始めて、その後に高圧の加圧気体を収容部2内に供給する供給手段を構成することになる。そして、低圧の加圧エアの収容部2内への供給開始から第2所定時間(第1所定時間よりも大きい)が経過したときには、電磁弁11が、第1及び第2エアタンク12,13のいずれも収容部2とは連通しない状態とされる。
【0026】
上記収容部2内に供給する加圧エアの圧力の切換えタイミングである第1所定時間は、鋳物砂41がエジェクタピン孔(図示せず)やエアベントから吹き抜けたりそこに詰まったりすることがなくかつ良好な充填性が得られるような時間に予め設定されており、通常は、0.2〜0.3秒程度である。また、上記第2所定時間は、鋳物砂41がキャビティ36内に完全に充填される時間よりも少し長い時間に予め設定されており、キャビティ36の容積によって変わる。
【0027】
上記第1及び第2エアタンク12,13には、上記コントローラ31によって作動制御される増圧弁14がそれぞれ設けられており、この各増圧弁14の制御により、第1及び第2エアタンク12,13の低圧及び高圧の加圧エアの圧力をそれぞれ変更することが可能になっている。このことで、増圧弁14及びコントローラ31は、低圧及び高圧の圧力レベルをそれぞれ変更する圧力変更手段を構成することになる。尚、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ変更しても、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力の高低関係は変わらない。
【0028】
上記ブローヘッド1の収容部2内の上部には、収容部2内の鋳物砂41の量を検出する鋳物砂量検出手段としての鋳物砂量検出センサ16が設けられている。この鋳物砂量検出センサ16は、本実施形態では、赤外線を下方に放出して最上部の鋳物砂41により反射してきた赤外線を受信してその強度によって収容部2内の鋳物砂41の量を検出するものであるが、他の構成のセンサを用いてもよい。この鋳物砂量検出センサ16により検出された収容部2内の鋳物砂41の量の情報が上記コントローラ31に入力されるようになっている。
【0029】
また、上記ブローヘッド1の収容部2内の下部には、収容部2内の鋳物砂41を撹拌する撹拌部材21が設けられている。この撹拌部材21は、後述の如く収容部2内の鋳物砂41の嵩密度を検出するためのものであって、上下方向に延びかつ回転可能に支持された回転軸21aと、この回転軸21aの下端部に固定されかつ水平方向に延びる基板21bと、この基板21a上に設けられた複数の撹拌棒21cとからなっている。上記回転軸21aの上端部は、撹拌部材駆動手段22と連結されている。この撹拌部材駆動手段22の詳細構成は省略するが、駆動モータ22aと、この駆動モータ22aの回転軸と上記回転軸21aとを連結する、例えば曲げ自在なワイヤ等からなる連結部材と、駆動モータ22aを駆動するための駆動回路等を有している。この駆動回路には、駆動モータ22aに流れる電流値を検出する電流検出部22bが設けられている。
【0030】
上記撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aは、上記コントローラ31によって作動制御される。そして、駆動モータ22aの作動中は、上記電流検出部22bにより検出された電流値の情報が上記コントローラ31に入力される。
【0031】
上記コントローラ31は、収容部2内の鋳物砂41のキャビティ36への吹き込み充填前において、上記駆動モータ22aを作動させるようになっている。そして、コントローラ31は、このときに電流検出部22bにより検出された電流値と、上記鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量とに基づいて、上記各増圧弁14により、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ変更するようになっている。
【0032】
すなわち、鋳物砂41のキャビティ36内への吹き込み充填を1回行うと、キャビティ36内に充填された量だけ収容部2内の鋳物砂41の量が少なくなり、収容部2内に鋳物砂41を補充しない場合には、次の吹き込み充填時には、同じ圧力レベルでも、前回よりも鋳物砂41の量が少なくなった分だけ、ブローノズル9からの鋳物砂41の吹き出し方が異なり、充填性も異なる。特に本実施形態のように、第1又は第2エアタンク12,13から加圧エアを収容部2内に供給する場合には、鋳物砂41の量が少なくなった分だけ収容部2内の空間(鋳物砂41が存在しない部分)の体積が増大し、この空間の体積の増大も鋳物砂41の吹き出し方に影響を及ぼす。通常は、鋳物砂41の量が少ないほど鋳物砂41がブローノズル9から出易くなるため、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力を低くなるように変更するが、上記空間の体積の増大により収容部2内の圧力は小さくなって鋳物砂41の出易さの効果は少なくなるため、上記鋳物砂41の量による圧力の低下量よりも小さい低下量でもって加圧エアの圧力を変更する。
【0033】
また、上記電流値は、撹拌部材21を回転するのに必要なモータトルク、つまり撹拌部材21の撹拌抵抗値と対応しており、この撹拌部材21の撹拌抵抗値は、収容部2内の鋳物砂41の嵩密度と対応する。つまり、電流値が大きいほど嵩密度が大きいことになる。そして、この嵩密度は、吹き込み充填の回数が多くなればなるほど、加圧エアの加圧によって大きくなり、次の吹き込み充填時には、同じ圧力レベルでも、前回よりも嵩密度が大きくなった分だけ、ブローノズル9からの鋳物砂41の吹き出し方が異なり、充填性も異なる。
【0034】
したがって、上記電流値(嵩密度)及び鋳物砂41の量と第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力との関係を、最良の充填性が得られるように予め調べてテーブルにしておき、そのテーブルを上記コントローラ31に記憶しておく。そして、コントローラ31は、電流検出部22bからの電流値及び鋳物砂量検出センサ16からの鋳物砂41の量の情報を受けて、上記テーブルより、最良の充填性が得られる第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ設定して、その圧力になるように増圧弁14を制御する。
【0035】
尚、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量のみに基づいて、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ設定するようにしてもよい。こうすれば、撹拌部材21や撹拌部材駆動手段22は不要となる。
【0036】
また、収容部2内に、該収容部2内の圧力を検出する圧力センサを設けて、電流値及び鋳物砂41の量に加えて、その圧力センサにより検出された収容部2内の圧力に基づいて、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ設定するようにしてもよい。こうすれば、収容部2内の圧力の変化を最適な変化パターンに近づけることができるようになる。
【0037】
さらに、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量(電流検出部22bにより検出された電流値や上記圧力センサにより検出された収容部2内の圧力を含めてもよい)に基づいて、上記収容部2内に供給する加圧エアの圧力の切換えタイミングである第1所定時間を変更するようにしてもよい。
【0038】
上記鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量が所定量よりも少なくなったとき、つまり鋳物砂41の残量が少なくてキャビティ36へ充填するだけの充分な量がないときには、コントローラ31がシャッター駆動機構6を作動させて、鋳物砂41を混練部3から収容部2へ供給する。
【0039】
次いで、上記コントローラ31の処理動作について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0040】
先ず、最初のステップS1で、撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aを、撹拌部材21が所定回転するまで作動させ、次のステップS2で、上記駆動モータ22aの作動中に電流検出部22bにより検出された電流値と、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量とに基づいて、上記テーブルより、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ設定し、各増圧弁14により、その設定した圧力に変更する。
【0041】
次のステップS3では、電磁弁11を、第1エアタンク12と収容部2とを連通する状態にして、第1エアタンク12の低圧の加圧エアを収容部2内に供給し、次のステップS4で、その低圧の加圧エアの供給開始から第1所定時間が経過したか否かを判定する。
【0042】
上記ステップS4の判定がNOであるときには、上記ステップS3に戻る一方、ステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進んで、電磁弁11を、第2エアタンク12と収容部2とを連通する状態にして、第2エアタンク12から高圧の加圧エアを収容部2内に供給し、次のステップS6で、上記低圧の加圧エアの供給開始から第2所定時間が経過したか否かを判定する。
【0043】
上記ステップS6の判定がNOであるときには、上記ステップS5に戻る一方、ステップS6の判定がYESであるときには、電磁弁11を、第1及び第2エアタンク12,13のいずれも収容部2とは連通しない状態にして、加圧エアの供給を停止する。
【0044】
次のステップS8では、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量が所定量よりも少ないか否かを判定し、このステップS8の判定がNOであるときには、本処理動作を終了する。一方、ステップS8の判定がYESであるときには、ステップS9に進んで、シャッタ−駆動機構6を作動させ、しかる後に本処理動作を終了する。
【0045】
次に上記鋳型造型装置により鋳型を造型する方法を説明する。
【0046】
最初に上記鋳型造型装置に成形型35をセットしておき、スイッチ操作等によって鋳型造型装置を作動させる。すると、撹拌部材駆動手段22の駆動モータ22aにより撹拌部材21が所定回転し、このときの駆動モータ22aの電流値と、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量とに基づいて、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力が、増圧弁14により、それぞれ適切な圧力に変更される。
【0047】
続いて、加圧エアの収容部2内への供給が開始する。この供給開始当初は、第1エアタンク12の低圧の加圧エアが収容部2内に供給される。これにより、例えば図3に示すように、収容部2内の圧力が次第に高められて、或る圧力に達すると、収容部2内の鋳物砂41が、ブローノズル9を介して成形型35のキャビティ36内に吹き込み充填開始される。このとき、低圧の加圧エアが収容部2内に供給されているので、収容部2内の圧力は大きくは上昇せず、収容部2内の鋳物砂41に作用する圧力も大きくないので、キャビティ36内に吹き出された鋳物砂41は、エジェクタピン孔やエアベント37から吹き抜けたり詰まったりすることなくエジェクタピン孔やエアベント37の開口を覆い、低圧の加圧エアの供給開始から第1所定時間が経過したときには、それら全ての開口を完全に覆った状態になっている。
【0048】
次いで、上記低圧の加圧エアの供給開始から第1所定時間が経過すると、収容部2内に供給する加圧エアが、第1エアタンク12の低圧の加圧エアから第2エアタンク13の高圧の加圧エアに切り換えられ、第2エアタンク13から高圧の加圧エアが収容部2内に供給される。これにより、図3に示すように、収容部2内の圧力が急激に上昇し、収容部2内の鋳物砂41に大きな圧力が作用して、鋳物砂41が勢い良くブローノズル9から吹き出してキャビティ36内に充填されていく。このときには、既に鋳物砂41が上記開口を覆っているので、鋳物砂41がエジェクタピン孔やエアベント37から吹き抜けたりそこに詰まったりすることはなく、高い充填率でもってキャビティ36内に充填される。
【0049】
上記低圧の加圧エアの供給開始から第2所定時間が経過するまでの間に、鋳物砂41のキャビティ36内への充填が完了し、第2所定時間が経過すると、加圧エアの供給が停止される。図3に示すように、この加圧エアの供給停止後の僅かな間は、収容部2内の圧力は上昇するが、加圧エアが鋳物砂の砂粒間を通ってエアベント37から成形型35の外部へと徐々に抜け出るため、やがて収容部2内の圧力は減少していく。尚、図3の測定を行った装置では、加圧エアを収容部2内から排気するための排気弁が設けられており、この排気弁も作動させているので、圧力の減少速度はかなり速い。
【0050】
上記吹き込み充填の後は、本実施形態では、上記成形型35を、該成形型35のキャビティ36内に硬化ガスを導入するために別途に設けた不図示の硬化ガス導入装置のところまで移動させて該硬化ガス導入装置にセットする。そして、この硬化ガス導入装置により、キャビティ36内に硬化ガス(例えばトリエチルアミンガス)を導入することで、該キャビティ36内に充填された鋳物砂41を硬化させ、こうして品質の良好な鋳型の造型が完成する。
【0051】
次の新たな鋳型を造型するために鋳型造型装置に成形型35を再びセットして鋳型造型装置を再び作動させると、上記と同様に、コントローラ31により各処理動作が行われ、収容部2内の鋳物砂41が成形型35のキャビティ36内に充填される。このときの吹き込み充填時においては、通常、前回の吹き込み充填時に比べて鋳物砂41の量が少なくなっている(但し、鋳物砂41が混練部3から収容部2に供給されたときには、鋳物砂41の量が多くなっている)。つまり、収容部2内において鋳物砂41が存在しない部分の空間の体積が大きくなっている。また、前回の吹き込み充填時における加圧エアの加圧によって、前回の吹き込み充填時に比べて収容部2内の鋳物砂41の嵩密度が高くなっている。しかし、本実施形態では、鋳物砂41の嵩密度(電流検出部22bにより検出された電流値)と、鋳物砂量検出センサ16により検出された鋳物砂41の量とに基づいて、第1及び第2エアタンク12,13の加圧エアの圧力をそれぞれ変更するので、このときの吹き込み充填時においても、鋳物砂41がキャビティ36内に良好に充填される。そして、この吹き込み充填の後は、上記と同様に、鋳物砂41が硬化される。このように上記の各処理動作及び鋳物砂41の硬化を繰り返すことで、多数の鋳型を造型することができる。
【0052】
尚、各吹き込み充填の後、鋳物砂41の量が所定量よりも少なくなった場合には、シャッター駆動機構6の作動によってシャッター5が開状態となって鋳物砂41が混練部3から収容部2へ供給される。
【0053】
したがって、上記実施形態では、収容部2内に供給する加圧エアの圧力を、加圧エアの収容部2内への供給中に1回低圧から高圧へ不連続に上昇させるようにしたので、簡単な構成で、鋳物砂41のキャビティ36内への充填性を向上させることができるとともに、鋳物砂41がエジェクタピン孔やエアベント37から吹き抜けたりそこに詰まったりすることがなく、鋳物砂41のエジェクタピン孔への詰まりによる該エジェクタピン孔の摩耗を防止することができる。
【0054】
尚、上記実施形態では、収容部2内に供給する加圧エアの圧力を、加圧エアの収容部2内への供給中に1回だけ低圧から高圧へ不連続に上昇させるようにしたが、不連続に上昇させる回数は複数回であってもよい。但し、鋳物砂41の充填時間は、通常、1秒以内と短いので、加圧エアの圧力を複数回上昇させること自体が1回だけ上昇させる場合に比べて難しくて構成が複雑になるとともに、1回だけ低圧から高圧へ上昇させるだけでも、十分に良好な充填性が得られるので、鋳型造型装置の構成をより簡単なものにする観点からは、上記実施形態の如く1回だけ低圧から高圧へ上昇させるのがよい。
【0055】
また、上記実施形態では、加圧気体供給装置において、加圧エアを貯蔵する第1及び第2エアタンク12,13を設けて、これら第1及び第2エアタンク12,13から加圧エアを収容部2内に供給するようにしたが、例えば圧力が異なる2つの加圧エア源から収容部2内に低圧及び高圧の加圧エアを順次供給するようにしてもよい。
【0056】
さらに、上記実施形態では、鋳物砂量検出センサ16により鋳物砂41の量を検出するようにしたが、この鋳物砂量検出センサ16を用いないようにすることも可能である。すなわち、多数の同じ鋳型を造型する場合には、1回の吹き込み充填で減少する鋳物砂41の量は略一定であるので、吹き込み充填を所定回数行ったときに、所定量(所定回数×1回の吹き込み充填工程での減少量)の鋳物砂41を混練部3から収容部2へ供給するようにしておけば、吹き込み充填毎の鋳物砂41の量は予め分かるので、その鋳物砂41の量を予めコントローラ31に記憶しておけばよい。
【0057】
さらにまた、上記実施形態では、本発明をコールドボックス鋳型造型装置に適用した例を示したが、本発明は、熱硬化性鋳物砂を成形型のキャビティ内に吹き込み充填し、その成形型を加熱することで鋳物砂を硬化させるシェルモールド鋳型造型装置にも適用することができる。
【0058】
ここで、上記実施形態と同様の鋳型造型装置を用いて、図4に示すように、略U字状に延びる板状鋳型を造型した。このとき、鋳型造型装置のブローノズルは、鋳型の両端部に相当する部分に設け、エアベントは、鋳型の中央部に相当する部分に設けた。
【0059】
そして、上記実施形態と同様に、収容部内に供給する加圧エアの圧力を、加圧エアの収容部内への供給中に1回低圧から高圧へ切り換えた場合(実施例)と、低圧で一定にした場合(比較例1)と、高圧で一定にした場合(比較例2)と、加圧エアの収容部内への供給中に1回高圧から低圧へ切り換えた場合(比較例3)とのそれぞれについて、収容部2内の圧力を測定するとともに、造型した鋳型の重量(つまり鋳物砂の充填量)と、エアベントから吹き抜けた鋳物砂の重量(吹き抜け量)とを測定した。尚、上記比較例1〜3の低圧及び高圧の各圧力レベルは、上記実施例の低圧及び高圧の各圧力レベルとそれぞれ同じである。
【0060】
上記実施例における収容部内の圧力の変化を図5に示す。このときの圧力変化は図3と同様である。また、上記比較例1〜3における収容部2内の圧力の変化を、それぞれ図6〜図8に示す。
【0061】
そして、上記実施例及び比較例1〜3における鋳物砂の充填量及び吹き抜け量の測定結果を図9に示す。このことより、比較例1のように低圧で一定にした場合には、充填量がかなり低くなる。これは、完全な鋳型形状になっておらず、鋳型の両端部が欠けているからである。一方、吹き抜け量は非常に少なくて良好である。また、比較例2のように高圧で一定にした場合には、完全に充填されるが、吹き抜け量がかなり多くなる。さらに、比較例3のように高圧から低圧へ切り換えた場合には、完全な鋳型形状にはなっているものの、エア巻き込みによる不良が生じている(充填率が低いために充填量が比較例2に比べて僅かに少ない)とともに、吹き抜け量は、比較例2よりも少ないが、比較例1よりも多くて良好であるとは言えない。
【0062】
これに対し、実施例のように低圧から高圧へ切り換えた場合には、比較例2と同様に完全に充填されるとともに、吹き抜け量は、比較例1と同等に低レベルとなる。
【0063】
したがって、収容部内に供給する加圧エアの圧力を、加圧エアの収容部内への供給中に低圧から高圧へ切り換えることで、吹き抜け量を少なくしつつ、鋳物砂のキャビティ内への充填性を向上し得ることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ブローヘッドの収容部内に収容された鋳物砂を、加圧気体の供給により成形型のキャビティ内に吹き込み充填するコールドボックス鋳型造型装置やシェルモールド鋳型造型装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態に係る鋳型造型装置を示す概略構成図である。
【図2】コントローラの処理動作を示すフローチャートである。
【図3】収容部内の圧力の変化の例を示すグラフである。
【図4】実際に造型した鋳型を示す図である。
【図5】実施例における収容部内の圧力の変化を示すグラフである。
【図6】比較例1における収容部内の圧力の変化を示すグラフである。
【図7】比較例2における収容部内の圧力の変化を示すグラフである。
【図8】比較例3における収容部内の圧力の変化を示すグラフである。
【図9】実施例及び比較例1〜3における鋳物砂の充填量及び吹き抜け量の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1 ブローヘッド
2 収容部
9 ブローノズル
11 電磁弁(加圧気体供給装置)(供給手段)
12 第1エアタンク(低圧タンク)(加圧気体供給装置)
13 第2エアタンク(高圧タンク)(加圧気体供給装置)
14 増圧弁(圧力変更手段)
16 鋳物砂量検出センサ(鋳物砂量検出手段)
31 コントローラ(加圧気体供給装置)(供給手段)(圧力変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂を収容する収容部と該収容部に連通するように設けられたブローノズルとを有するブローヘッドと、該ブローヘッドの収容部内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置とを備え、該加圧気体供給装置により上記収容部内に加圧気体を供給することで、該収容部内の鋳物砂を上記ブローノズルを介して成形型のキャビティ内に吹き込み充填するように構成された鋳型造型装置であって、
上記加圧気体供給装置は、上記収容部内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部内への供給中に、少なくとも1回不連続に上昇させるように構成されていることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項2】
請求項1記載の鋳型造型装置において、
上記加圧気体供給装置は、上記収容部内に供給する加圧気体の圧力を、加圧気体の収容部内への供給中に1回低圧から高圧へ不連続に上昇させるように構成されていることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項3】
請求項2記載の鋳型造型装置において、
上記加圧気体供給装置は、低圧の加圧気体を貯蔵する低圧タンクと、高圧の加圧気体を貯蔵する高圧タンクと、上記低圧タンクの低圧の加圧気体から上記収容部内に供給し始めて、その後に上記高圧の加圧気体を上記収容部内に供給する供給手段とを有していることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の鋳型造型装置において、
上記加圧気体供給装置は、上記低圧及び高圧の圧力レベルをそれぞれ変更する圧力変更手段を有していることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項5】
請求項4記載の鋳型造型装置において、
上記収容部内の鋳物砂量を検出する鋳物砂量検出手段を備え、
上記圧力変更手段は、上記鋳物砂量検出手段により検出された鋳物砂量に基づいて上記低圧及び高圧の圧力レベルをそれぞれ変更するように構成されていることを特徴とする鋳型造型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−237236(P2007−237236A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63034(P2006−63034)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】