説明

鋳枠内壁清掃スクレーパ装置

【課題】注湯済鋳型が抜き出された鋳枠の内壁を清掃する場合、鋳枠の内壁から除去された鋳物砂がスクレーパ体に堆積して清掃機能を低下させることがないようにした鋳枠内壁清掃装置を提供する。
【解決手段】注湯済鋳型11が抜き出された鋳枠12の内壁12aに付着した鋳物砂21をスクレーパ体19で掻き取って除去する場合、スクレーパ体19は、鋳物砂21が自重で滑り落ちる程度に水平面に対して傾斜されている。これにより、除去された鋳物砂21がスクレーパ体19に堆積して清掃機能を低下させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注湯済鋳型を鋳枠から抜き出した後に鋳枠の内壁に付着した鋳物砂を除去する鋳枠内壁清掃スクレーパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鋳枠内壁清掃スクレーパ装置では、特許文献1の図1、図8に記載されているように、注湯済鋳型Mを保持した鋳枠Fの下方に設置された昇降シリンダ1のピストンロッド1aの先端に、鋳枠内に挿入可能なフレ−ム3が連結され、フレ−ム3の先端に鋳枠Fの内面よりも若干小さく形成された天板6が取り付けられると共に、フレ−ム3の外周側面上下位置に複数のスクレ−パ体7が水平方向では互いに間隔をおいて、上下方向では互いに隙間を補完し合うように配置して取り付けられている。スクレ−パ体7は、左右に間隔をおいた一対のゴムバネ8と、該ゴムバネ8に支持された金属製スクレ−パ9とで構成されている。
【特許文献1】特許第4061578号公報(請求項1、図1、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の鋳枠内壁スクレーパ装置では、スクレーパ体7が水平に配置されているので、特に、フレーム3を下方から上方に移動させて、注湯済鋳型Mが抜き出された鋳枠Fの内壁を上方に向かって清掃する場合、鋳枠Fの内壁から除去された鋳物砂がスクレーパ体7の上方に多量に堆積し、清掃機能が低下する。また、スクレーパ体7に堆積した鋳物砂がスクレーパ体7を過大に回動させることにより、スクレーパ体7が初期の状態に復帰せず、延いてはゴムバネ8が破損に至る場合がある。特に注湯後の鋳型は鋳枠の内壁側に鋳物砂中の水分が凝縮するためべた付いた状態となり、スクレーパ体7への付着も頑固なものとなる。
【0004】
また、フレーム3を上方から下方に移動させて、鋳枠Fの内壁を下方に向かって清掃する場合でも、下降後に上昇する際に、鋳枠Fの内壁に付着した残り砂をスクレーパ体7の裏面で掻き上げるため、堆積量は少ないがスクレーパ体7の裏面に除去された鋳物砂が同様に堆積する。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、注湯済鋳型が抜き出された鋳枠の内壁を清掃する場合、鋳枠の内壁から除去された鋳物砂がスクレーパ体に堆積して清掃機能を低下させることがないようにした鋳枠内壁清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、基台に上下軸線方向に進退可能に装架され注湯済鋳型が抜き出された鋳枠の内壁を通過するフレームと、該フレームを進退させる駆動装置と、該フレームの外周に上下軸線周りに取り付けられた複数のスクレーパ体と、前記複数のスクレーパ体を、鋳物砂が自重で滑り落ちる程度に水平面に対して傾斜した傾斜角度で、隣接するスクレーパ体が上下軸線方向においてオーバーラップする間隔で前記フレームの外周に取り付けるスクレーパ体取付装置と、前記スクレーパ体を前記鋳枠の内壁に弾性的に押圧可能に前記フレームに取り付けるスクレーパ体取付手段と、を備えたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記フレームの先端に、前記注湯済鋳型を前記鋳枠から抜き出すための抜出板が設けられていることである。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、注湯済鋳型が抜き出された鋳枠の内壁に付着した鋳物砂をスクレーパ体で掻き取って除去する場合、スクレーパ体は、鋳枠の内壁から剥離、分断された鋳物砂が自重で滑り落ちる程度に水平面に対して傾斜されているので、除去された鋳物砂がスクレーパ体に堆積して清掃機能を低下させることがない。
【0009】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、注湯済鋳型を抜出板で鋳枠から押し出した直後に、鋳枠の内壁に付着した鋳物砂をスクレーパ体で効率的に良好に掻き取って除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る鋳枠内壁スクレーパ装置10の実施の形態について説明する。図1に示すように、注湯済鋳型11を保持した鋳枠12は、搬送装置によって鋳枠ばらし位置13に搬送され、図略の固定装置によって鋳枠ばらし位置13に固定される。鋳枠ばらし位置13の下方設けられた基台14には、フレーム15が上下軸線方向に進退可能に装架され、注湯済鋳型11が抜き出された鋳枠12内に下方から挿入されて上方に通過するようになっている。基台14には一対のガイド16が固定され、フレーム15の下面に固定されて下方に延在するガイドロッド17がガイド15に嵌合することによってフレーム15は基台14に上下軸線方向に進退可能に装架されている。基台14には、フレーム15を進退させる駆動装置であるシリンダ装置18が一対のガイド16の間に垂直に固定され、シリンダ装置18のピストンロッド18aがフレーム15の下面に固定されている。
【0011】
フレーム15の外周には、複数のスクレーパ体19がスクレーパ取付装置20によって上下軸線周りに取り付けられている。各スクレーパ体19は、鋳物砂21が上方からスクレーパ19の面に落下した場合、自重で下方に滑り落ちる程度に水平面に対して傾斜した傾斜角度αで、隣接するスクレーパ体19が上下軸線方向においてオーバーラップする間隔でフレーム15の外周に取り付けられている。傾斜角度αは、例えば45〜70度にするとよい。スクレーパ取付装置20は、図2に示すように、フレーム5の外周に水平面に対して傾斜角度αで傾斜して外方に突設されたスクレーパ体取付突起22にスクレーパ体19を複数個、例えば4個のボルト22とナット23で固定している。スクレーパ体19の先端は、自由状態においては鋳枠12の内壁12aに食い込むように設定されているので、鋳枠12の内壁12aと当接すると弾性的に後退して内壁12aに押圧される。スクレーパ体15は、鋳枠12の内壁12aに押圧され状態で上下方向に移動されることにより、注湯済鋳型11が抜き出された鋳枠12の内壁12aに付着した鋳物砂21を掻き取って除去する。ボルト22、ナット23等およびスクレーパ体15がゴム等の弾性体で形成されることにより、スクレーパ体15を鋳枠12の内壁12aに対して弾性的に押圧可能にフレーム15に取り付けるスクレーパ体取付手段24が構成されている。
【0012】
フレーム15の先端には、鋳枠12の内周より僅かに小さく形成されて水平断面形状が矩形の抜出板25が一体的に設けられている。抜出板25は、フレーム15がシリンダ装置18によって上昇されると、鋳枠12内に下方から挿入され上方に突き出て注湯済鋳型11を鋳枠12から抜き出す。
【0013】
次に、上述した鋳枠内壁スクレーパ装置10の作動について説明する。注湯済鋳型11を保持する鋳枠12が搬送装置によって鋳枠ばらし位置13に搬送されて固定されると、シリンダ装置18が作動され、ピストンロッド18aが上昇してフレーム15がガイド16とガイドロッド17との嵌合により案内されて上昇される。図3に示すように、フレーム15の上昇により注湯済鋳型11が抜出板25の上面に支持されて上昇され、固定された鋳枠12から抜き出される。フレーム15は、注湯済鋳型11が鋳枠12から抜き出された後も上昇され鋳枠12の内壁12aを通過する。このとき、スクレーパ体19の先端は、鋳枠12の内壁12aに食い込むように設定されているので、内壁12aと当接すると弾性的に後退して内壁12aに押圧されながら上昇し、注湯済鋳型11が抜き出された鋳枠12の内壁12aに付着した鋳物砂21を内壁12aから剥離させていく。内壁12aから剥離された鋳物砂21はある程度長くなると、鋳物砂21の剥離されていない部分から自重によって分断する。スクレーパ体19は剥離、分断した鋳物砂21が自重で滑り落ちる程度に水平面に対して傾斜しているので、掻き取られて除去された鋳物砂21がスクレーパ体19に堆積して清掃機能を低下させることがない。そして、隣接するスクレーパ体19は上下軸線方向においてオーバーラップする間隔でフレーム15の外周に取り付けられているので、鋳枠12の内壁12aは、付着した鋳物砂21が全周に亘って掻き取られ清掃される。さらに、注湯済鋳型11が抜出板25で鋳枠12から押し出した直後に、鋳枠12の内壁12aに付着した鋳物砂21がスクレーパ体19で掻き取って除去されるので、鋳枠12の内壁12aの清掃を効率的に短時間で行うことができる。
【0014】
上記実施の形態では、スクレーパ体19を弾性部材で形成することにより、スクレーパ体15を鋳枠12の内壁12aに弾性的に押圧可能にフレーム15に取り付けるスクレーパ体取付手段24を構成しているが、スクレーパ体を金属で形成し、このスクレーパをゴムばね等の弾性部材を介してフレーム15に取り付けることにより、スクレーパ体取付手段を構成するようにしてもよい。さらに、スクレーパ体をブラシにし、ブラシをフレーム15に取り付けることにより、スクレーパ体取付手段を構成してもよい。
【0015】
また、上記実施の形態では、注湯済鋳型11の抜出しと、鋳枠内壁の清掃とを一台の装置で行っているが、鋳枠の内壁の清掃を単独で行うようにしてもよい。
【0016】
上記実施の形態では、スクレーパ体19が取り付けられたフレーム15をシリンダ装置18によって上昇させることにより、注湯済鋳型11を鋳枠12から抜き出し、鋳枠12の内壁12aに付着した鋳物砂21をスクレーパ体19で掻き取っているが、フレーム15を下降させることにより、注湯済鋳型11を抜き出し、鋳枠12の内壁12aをスクレーパ体19で清掃するようにしてもよい。
【0017】
また、上記実施の形態では、スクレーパ体19が取り付けられたフレーム15をシリンダ装置18によって昇降させているが、フレーム15を固定し、鋳枠を昇降させるようにしてもよい。また、フレーム15をモータ駆動されるボールねじによって昇降させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る鋳枠内壁清掃用スクレーパ装置の実施の形態の側面図。
【図2】スクレーパ体のフレームへの取付け状態を示す図。
【図3】鋳枠内壁清掃用スクレーパ装置の作動状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0019】
10…鋳枠内壁スクレーパ装置、11…注湯済鋳型、12…鋳枠、13…鋳枠ばらし位置、14…基台、15…フレーム、16…ガイド、17…ガイドロッド、18…シリンダ装置、18a…ピストンロッド、19…スクレーパ体、20…スクレーパ取付装置、21…鋳物砂、24…スクレーパ体弾性進退手段、25…抜出板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に上下軸線方向に進退可能に装架され注湯済鋳型が抜き出された鋳枠の内壁を通過するフレームと、
該フレームを進退させる駆動装置と、
該フレームの外周に上下軸線周りに取り付けられた複数のスクレーパ体と、
前記複数のスクレーパ体を、鋳物砂が自重で滑り落ちる程度に水平面に対して傾斜した傾斜角度で、隣接するスクレーパ体が上下軸線方向においてオーバーラップする間隔で前記フレームの外周に取り付けるスクレーパ体取付装置と、
前記スクレーパ体を前記鋳枠の内壁に弾性的に押圧可能に前記フレームに取り付けるスクレーパ体取付手段と、
を備えたことを特徴とする鋳枠内壁清掃スクレーパ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記フレームの先端に、前記注湯済鋳型を前記鋳枠から抜き出すための抜出板が設けられていることを特徴とする鋳枠内壁清掃スクレーパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−23094(P2010−23094A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189081(P2008−189081)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(592089799)メタルエンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】