説明

鋳枠搬送装置

【課題】簡素な機構で構成され、搬送される型枠や鋳枠をスムーズにかつ迅速に搬送することが可能な鋳枠搬送装置を提供する。
【解決手段】直列状に配列された鋳枠群を押出し装置とクッション装置とにより挟み込み、該鋳枠群を1鋳枠分のピッチ間隔ずつ移動させる鋳枠搬送装置において、前記押出し装置は、クランクアームと、前記クランクアームによる回転運動を搬送方向の直進運動に変換する運動変換装置と、前記運動変換装置により変換された搬送方向の直進運動により前記鋳枠群の最後端をプッシュするプッシュ部材と、を有し、前記クッション装置は、前記鋳枠群の最前端に後端部において当接するクッション部材と、前記クッション部材の前端部に対向して設けられ、前記プッシュ部材の直進運動の減速時において前記クッション部材の直進運動を停止させる制動力を徐々に発生させる制動装置とを有していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造ラインにおいて鋳枠又は鋳型を搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造ラインにおいては、連続して鋳枠や鋳型を搬送するため、複数の台車を直列状に配列して搬送される。ところが、配列される各台車相互間に隙間があると鋳枠(鋳型)を搬送させるときに台車が相互に衝突して衝撃を生じ、この衝撃が鋳型に対して型落ち、中子倒れ等の悪影響を与えるため極力衝撃を与えずに搬送する必要があった。そのため、このような各鋳枠相互間の隙間を無くし、搬送の際の衝撃を与えずに直列状に配列された台車群を搬送する装置として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。これは、特許文献1の図1に示すように、油圧プッシャーシリンダ1にコントローラ31により制御される比例制御弁32を設けて、高速、中速、低速制御可能にした油圧配管とし、油圧クッションシリンダ2に、第1電磁弁33を介して制御可能にするとともにロッド12の縮み方向背圧を切り替える第2電磁弁34を設けて、背圧切替により高速搬送中の型枠群3を減速する構成の油圧配管にした搬送装置である。このように、油圧プッシャーシリンダ1側の制御に比例制御弁32を使用し、油圧クッションシリンダ2側の制御に減速用電磁弁33,34を使用した2圧制御方式とすることにより、鋳枠を衝撃なくかつ高速で搬送するというものである。
【0003】
また、その他にも特許文献2に示されるものが知られている。これは、特許文献2の図1に示すように、搬送レール1の一端に設置されて複数の鋳型搬送用台車2群を押し出す押出しシリンダ15と、搬送レール1の他端に設置されて押し出された鋳型搬送用台車2群の移動速度を減殺するクッションシリンダ16と、をいずれも電動サーボ式とするものである。このように、押出しシリンダ15とクッションシリンダ16とを電動サーボ式とすることで、季節による温度変化に影響されることなく、スムーズに鋳枠(鋳型)が搬送できるというものである。
【特許文献1】特許第3680997号公報(第7頁、図1)
【特許文献2】実用登録第2559334号公報(第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1にかかるプッシャーシリンダ及びクッションシリンダは共に油圧式のため、流量制御弁、油圧ユニット、油圧配管など大掛かりな設備を必要とする。これらのシリンダの作動に使われる作動油の粘度が、温度が高いときには小さくなり、温度が低いときには大きくなるので、シリンダによる送り速度が変化して鋳枠の搬送工程のサイクルタイムがばらつくという不具合があった。また、設備として使われる油圧配管は油漏れ防止の保全に手間がかかるものであった。
【0005】
また、特許文献2に係る電動サーボ式の押し出しシリンダ及びクッションシリンダは、シリンダの作動速度、作動距離を細かく設定することができ、搬送作業の始点、終点におけるシリンダの位置決めも高い精度で行うことができる。しかし、押し出しシリンダとクッションシリンダの双方にサーボモータを設け、相互の関係を同調させるための特別な制御を必要とし、その調整も手間がかかった。また、精密な設備が必要であり設備費用が高額となった。
【0006】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡素な機構で構成され、搬送される鋳枠や鋳型をスムーズにかつ迅速に搬送することが可能な鋳枠搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、 直列状に配列された鋳枠群を押出し装置とクッション装置とにより挟み込み、該鋳枠群を1鋳枠分のピッチ間隔ずつ移動させる鋳枠搬送装置において、前記押出し装置は、クランクアームと、該クランクアームによる回転運動を搬送方向の直進運動に変換する運動変換装置と、前記運動変換装置により変換された搬送方向の直進運動により前記鋳枠群の最後端をプッシュするプッシュ部材と、を有し、前記クッション装置は、前記鋳枠群の最前端に後端部において当接するクッション部材と、前記クッション部材の前端部に対向して設けられ、前記プッシュ部材の直進運動の減速時において、前記クッション部材の直進運動を停止させる制動力を徐々に発生させる制動装置と、を有していることである。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記制動装置は、所定以上の圧力が生じると外部に油を排出する排油調節手段と、該排油調節手段によって一定の背圧が生じる油圧シリンダと、前記クッション部材の直進運動を回転運動に変換するクランク機構であって、前記油圧シリンダの背圧に基づく該クランク機構の回転軸周りの力を、クッション部材の直進運動を制動するための回転トルクに変換し、該回転トルクを漸増させることにより前記回転運動を停止させる制動力を徐々に発生させるクランク機構と、を備えていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記制動装置は、前記クッション部材を前記鋳枠群に当接する前の初期状態に復帰させる空気圧シリンダと、前記空気圧シリンダに空気圧を供給させるときに該空気圧を油圧に変換し、該油圧により前記油圧シリンダを前記初期状態に復帰させる空気圧油圧変換装置と、を備えていることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記制動装置は、前記クッション部材の直進運動に対向して働く制動油圧シリンダと、該制動油圧シリンダに、前記制動力として油圧を徐々に発生させる油圧制御装置と、を備えていることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、押出し装置においては、クランクアームの回転運動をプッシュ部材の直進運動に変換し、クランクアームが揺動する始点と終点の位置では略水平位置となるので、搬送方向の速度成分が小さくて低速の搬送となり、クランクアームが死点(上死点又は下死点)を通過する場合には搬送方向の速度成分が大きく高速の搬送になるという運動性を利用して、鋳枠群を搬送方向に押出す。
【0012】
クッション装置においては、高速の搬送においては押出し装置側の過負荷が生じない小さい制動力で鋳枠群の直進運動を受け、減速していく過程において、制動力を徐々に発生させ、鋳枠群相互間に隙間を発生させることなく直進運動を停止させるので、押出し装置のプッシュ部材の運動に滑らかに追従した制動作用を実現させることができる。
【0013】
これらの押出し装置及びクッション装置によって、搬送開始には低速の搬送、搬送途中では高速の搬送、搬送終了時には再度低速の搬送とする理想的な搬送を実現させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、一方で、クランク機構によりクッション部材の直進運動を回転運動に変換し、他方で、油圧シリンダに基づく一定の背圧をクランク機構の軸線周りの力に変換し、この軸線周りの力をクランク機構によりさらに制動力として漸増する回転トルクに変換する。そして、クッション部材の直進運動に基づく前記回転運動を、漸増する前記回転トルクによって停止させる。このような、複雑な制御のない簡素な機構で、押出し装置のクランクアームに基づく送り運動に追従して、鋳枠群を迅速かつスムーズに停止させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、空気圧シリンダのために供給される空気圧が油圧にも変換されるので、空気圧を空気圧シリンダに供給するだけで、クッション部材を初期状態に復帰できるとともに油圧シリンダを初期状態に復帰させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明によると、油圧制御装置により制動油圧シリンダを制御し、押出し装置のクランクアームに基づく鋳枠群の送り運動に追従して制動力を発生できるので、このような簡素なクッション装置により鋳枠群を迅速かつスムーズに停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る鋳枠搬送装置の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は本実施形態における鋳枠搬送装置の概要を示す正面図であり、図2は押出し装置の正面図である。
【0018】
鋳枠搬送装置2は、直列状に配列された鋳枠群4を搬送方向に押出す押出し装置6と、押出し装置6により押出された鋳枠群4の搬送方向の運動を停止させるクッション装置8とから構成される。鋳枠群4の鋳枠は夫々転動する車輪を有する搬送台車7に載置されている。押出し装置6とクッション装置8との間には鋳枠群4を搬送方向に移動させる搬送路9が形成され、搬送路9の始点側(図1において左側)と終点側(図1において右側)には夫々搬送路9に対して直角な方向に搬送台車7(鋳枠)を移動させるトラバーサ11が付設されている。
【0019】
押出し装置6は、図2に示すように、フレーム10の内壁上部に回転軸12が支承されたクランクアーム14が設けられ、クランクアーム14は始点の略水平位置から下死点を通過して反対側の終点の略水平位置まで円弧上を回転運動するように構成されている。クランクアーム14の回転軸12は出力周波数を変えることができるインバータ機能付の駆動装置(モータ)16に図略の減速装置を介して連結されている。クランクアーム14の先端には前記回転軸12に平行な回転軸心を有するローラ18が設けられ、ローラ18は、水平方向に対向して垂直方向に延在する一対のローラガイド20に転動自在に嵌挿されている。ローラガイド20の下部は搬送方向に延在するストロークガイド22に摺動可能に嵌挿され、ストロークガイド22はその先端部と後端部においてフレーム10に固設されている。ローラガイド22はストロークガイド22に対して搬送方向にスライドし、クランクアーム14の回転運動を搬送方向の直進運動に変換するスライダクランク機構を構成する。ストロークガイド22の上部には、ストロークガイド22に平行に設けられた円柱状のプッシュ部材24の後端部が相対移動不能に組み付けられ、プッシュ部材24の中間部はフレーム10に摺動可能に支承されている。プッシュ部材24の先端部には鋳枠群4の最後端に当接する緩衝材26が被着されている。
【0020】
前記クッション装置8は、図4に示すように、前記鋳枠群4の最先端に後端部において当接する円柱状のクッション部材28を備えている。クッション部材28は、フレーム30に中間部において搬送方向に摺動可能に支承され、クッション部材28の後端部には前記鋳枠群4の最前端に当接する緩衝材32が被着されている。クッション部材28の前端部には上下に延在する緩衝部34が設けられ、緩衝部34には後述する揺動アームのローラが上下に転動可能に当接するようになっている。クッション部材28の下方にはガイド部材36が並設され、ガイド部材36は搬送方向に延在するとともにその先端部と後端部とがフレーム30に固設されている。クッション部材28は、その前端下部のスライド部29においてガイド部材36に摺動可能にガイドされるようになっている。ガイド部材36の前側には上方に突出する戻し部材38が搬送方向に摺動可能に設けられ、戻し部材38の後面には後述する揺動アームのローラの前端部が当接するようになっている。戻し部材38の下部側面には搬送方向後方(図4において左側)へ延在する連結棒40の基端が固設されている。連結棒40は前記クッション部材28のスライド部29に設けられた係止部42の係止穴に摺動可能に遊嵌され、連結棒40の先端部には抜け止め防止のストッパ44が設けられている。この連結棒40により、クッション部材28が前方(図4において右側)へ移動するときには、クッション部材28の係止部42は連結棒40の側面を抵抗なく摺動し、クッション部材28が後方(図4において左側)へ移動するときには、ストッパ44により連結棒44の先端を係止して戻し部材38を連動させて後方へ移動させるようになっている。また、クッション部材28には空気圧シリンダとしての空気シリンダ45が並設され、空気シリンダ45は後方へ突出するピストン部47の先端部が連結部材41を介してクッション部材28の後端部に相対移動不能に連結されている。空気シリンダ45のシリンダ部49はフレーム30に固設されている。
【0021】
揺動アーム46は略L字形に形成され、揺動アーム46の上部には搬送方向に直角な方向の回転軸48が相対回転不能に貫設されている。回転軸48は前記フレーム30に回転可能に支承され、揺動アーム46が搬送方向を含む平面内で回動運動可能になっている。揺動アーム46の下部には回転軸48に平行な軸線を有するローラ50が設けられ、該ローラ50は前記クッション部材28の前端部と戻し部材38の後面とに当接可能に構成されている。揺動アーム46の下部先端部にはピン部43が設けられ、ピン部43には油圧シリンダ52のピストン部54の前側先端が回動可能に軸支されている。油圧シリンダ52のシリンダ部56の後側先端はフレーム30の内壁に支持部51において回動可能に軸支されている。シリンダ部56には下方に突出する連結材58を介してバランサ60のピストン部先端が連結されている。バランサ60のシリンダ部の前側先端はフレーム30に回動可能に軸支されている。このバランサ60により油圧シリンダ52が自重で回動するのを防止するようになっている。これらの揺動アーム46、ローラ50及び油圧シリンダ52によりクッション部材28の直進運動を停止させる制動装置としてのクランク機構62を構成する。
【0022】
次に、クッション装置8の油圧・空気圧回路について以下に説明する。前記油圧シリンダ52のシリンダ部56の前端部には油が加圧されて流入するとピストン部54を退縮するように配油管70が接合され、配油管70には排油調節手段としてのリリーフ弁72が連結されている。このリリーフ弁72によって前記油圧シリンダ52に一定の背圧が生じるようになっている。リリーフ弁72にはカット弁74が並列に設けられ、これらのリリーフ弁72及びカット弁74は、バルブ76を介して空気圧油圧変換装置としての空気圧油圧タンク78の油圧側へ連通されている。
【0023】
空気シリンダ45の前端部には、空気が加圧されて流入するとピストン部47が伸長するように配気管80が接合され、配気管80は可変絞り82を介して電磁弁84に連結されている。電磁弁84は空気圧ポンプ86に連通するとともに外気に連通し、外気への排気口には消音器88が設けられている。また、配気管80には前記空気圧油圧タンク78の空気圧側へ可変絞り82を介して連通する配気管90が並列に設けられている。空気シリンダ45のシリンダ部49の後端部には、空気が流入するとピストン部47が退縮するように配気管92が接合され、配気管92は可変絞り82を介して前記電磁弁84に連結されている。電磁弁84は配気管80及び配気管92が外気に連通する中立位置と、配気管80又は配気管92を空気圧ポンプ86に連通させる作動位置との間で切り替わるようになっている。
【0024】
次に上記の構成の鋳枠搬送装置2の作動について図面に基づき以下に説明する。
【0025】
まず、図6に示すように、直列状に配列された鋳枠群4の最後端を押出し装置6のプッシュ部材24が当接するとともに、同鋳枠群4の最前端をクッション装置8のクッション部材28が当接して、鋳枠群4を前後から挟み込む状態になっている。このとき電磁弁48は中立位置に位置決めされ、カット弁74は閉止位置に位置決めされる。
【0026】
次に駆動装置16を駆動させ、クランクアーム14を搬送方向に対して後方(図6において左方向)から前方(図6において右方向)へ回動させる。これによってクランクアーム14の回転運動がローラ18及びローラガイド20を介して直進運動に変換されてプッシュ部材24に伝えられ、プッシュ部材24によって鋳枠群4は搬送方向前方(図6において右方向)に押し出される。この鋳枠群4の直進運動によって、クッション装置8のクッション部材28は退縮されて前方へ移動する。
【0027】
ここで、押出し装置6のクランクアーム14の回転運動は、以下のような特性で搬送方向の直進運動として変換される。まず、搬送開始される回動初期においてクランクアーム14が略水平位置及びその近傍にあり、搬送方向の速度成分が小さいので、鋳枠群4を遅い速度で移動(搬送)させ、搬送の中盤では、クランクアーム14が下死点及びその近傍にあり、搬送方向の速度成分が大きくなるので、早い速度で鋳枠群4が移動(搬送)させ、搬送の終盤では、再度クランクアーム14が略水平位置及びその近傍にあり、搬送方向の速度成分が小さくなるので、遅い速度で移動(搬送)させることとなる。
【0028】
一方、クッション装置8では、鋳枠群4の搬送開始より搬送の中盤までは、クッション部材28は、鋳枠群4の直進運動を受けて前方(図6において右方向)へ移動するが、その前端部には何も当接せずに制動力が生じない状態となっている。前記プッシュ部材24が減速する過程に入る搬送の中盤以降において、図7に示すように、クッション部材24の前端部の緩衝部34が揺動アーム46のローラ50に当接し、揺動アーム46を回転させる回転運動に変換される。一方、この揺動アーム46にはピン部43において油圧シリンダ52が連結され、油圧シリンダ52はリリーフ弁72により一定の背圧が発生じるようになっている。この油圧シリンダ52の背圧は揺動アーム46の回転軸48周りの力に変換され、この回転軸48周りの力により揺動アーム46には制動力としての回転トルクが生じるようになっている。この回転トルクによって揺動アーム46の前記回転運動を制動させる。
【0029】
まず、クッション部材24の緩衝部34がローラ50に当接する時点では、揺動アーム46の回転軸48及びピン部43と油圧シリンダ52の支持部51とが略一直線上になるように構成されているので、制動力としての回転トルクは、ほぼゼロである。そのため、プッシュ部材24がローラ50に当接しても、ほとんど衝撃とならずプッシュ部材24に過負荷を生じさせない。さらに前記緩衝部34がローラ50を押していくと、揺動アーム46は搬送方向前方へ回転し、回転軸48とピン部43を結ぶ直線と、ピン部43と支持部51を結ぶ直線との間に角度が生じて、制動力としての回転トルクが発生する。この制動力としての回転トルクは、当該角度が増加するにつれて徐々に増加する。
【0030】
次に、搬送終盤において、図8に示すように、さらに前記緩衝部34によってローラ50が押され、揺動アーム46が回転していくが、制動力としての回転トルクは、回転軸48とピン部43を結ぶ直線と、ピン部43と支持部51を結ぶ直線との間の角度が90度となるときが最大値となり、本実施形態においては該角度が略90度となる位置において鋳枠群4の搬送方向の動きを停止させる。
【0031】
このようにクッション装置8においては、高速で送られる搬送の中盤において衝撃が生じない小さい制動力で鋳枠群4の直進運動を受け、プッシュ部材24に過負荷を生じさせることがない。そして、プッシュ部材24及び鋳枠群4が減速していく過程(減速時)において制動力を徐々に発生させ、鋳枠群4の相互間に隙間を発生させることなく鋳枠群4の直進運動を停止させる。そのため、搬送される鋳枠群4に極力衝撃を与えず、前記押出し装置6のクランクアーム14の回転運動に基づく鋳枠群4の直進運動に滑らかに追従した制動作用を実現できる。また、これらの押出し装置6及びクッション装置8によって、鋳枠群4の搬送開始には低速の搬送、搬送途中では高速の搬送、搬送終了時には再度低速の搬送とする理想的な鋳枠群4の搬送を実現させることができる。
【0032】
次に、電磁弁84を切替えて(図4において左方向へ)空気シリンダ45のシリンダ部49の後部に空気ポンプ86からの空気を供給し、ピストン部47を退縮させることによりクッション部材28をさらに前方(図8において右方向)へ移動させて鋳枠群4の最前端との間に隙間を設ける。そしてトラバーサ11を作動させて搬送台車7を搬送方向とは直角な方向に移動させる(図略)。
【0033】
次に、電磁弁84を切替え(図4において右方向へ)、配気管80を介して空気シリンダ45のシリンダ部49の前部に空気を供給する。こうして空気シリンダ45のピストン部47を伸長させることにより、クッション部材28を搬送方向後方へ移動させ、クッション部材28を、次の鋳枠群4に当接する前の状態に(初期状態)まで復帰させる。このとき連結棒40を介して戻し部材38を後方(図4及び図8において左方向)へ移動させる。このとき、戻し部材38の後面でローラ50の前端部を押圧しながら移動するので、揺動アーム46は、後方へ回転してクッション部材28の緩衝部34が当接する前の初期状態に復帰する。また同時に配気管90を介して空気圧油圧タンク78に空気が圧力として供給され、その圧力が油圧に変換されて油圧シリンダ52のシリンダ部56の前端部に流入し、ピストン部54を退縮させて揺動アーム46を後方へ回転させるとともに、油圧シリンダ52のシリンダ部56内に油を流入させ、油圧シリンダ52を初期状態の貯油量に復帰させる。この際には配油管70の途中のカット弁74を開放位置に切替えておく。このように、空気シリンダ45のために供給される空気圧が油圧にも変換されるので、空気圧を空気圧ポンプ86で空気シリンダ45に供給するだけで、クッション部材28を初期状態に復帰させることができるとともに油圧シリンダを初期状態に復帰させることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、鋳枠を車輪の付いた搬送台車で搬送するものとしたが、これに限定されず、例えば鋳枠をコロ搬送するものでもよい。
【0035】
また、押出し装置6の駆動装置16はモータとしたが、これに限定されず、例えば空圧や油圧によるロータリ式アクチュエータでもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、プッシュ装置6においてクランクアーム14が鋳枠群4の搬送の中盤において下死点を通過するものとしたが、これに限定されず、該搬送の中盤においてクランクアームが上死点を通過するものとしてもよい。
【0037】
次にクッション装置の他の実施形態について図に基づいて説明する。このクッション装置102は、図9に示すように、ピストン部104の後端部に緩衝材106を設け、シリンダ部108の前端部にはCPU110で制御される電磁比例リリーフ弁112及び空気圧油圧タンク114に連通する配油管116が接合されている。電磁比例リリーフ弁112にはカット弁113が並列に設けられている。シリンダ部108の後端部には電磁弁118を介して空気圧ポンプ120に連通する配気管122が接合されている。ピストン部104及びシリンダ部108により制動油圧シリンダを構成し、電磁比例リリーフ弁112及びCPU110により制御装置を構成する。
【0038】
このクッション装置102によると、シリンダ部108からの背圧を徐々に高めるように電磁比例リリーフ弁112をCPU110で制御することにより、押出し装置の動きに追従させて鋳枠群4を迅速かつスムーズに搬送することができる。また、このように複雑な機構でなく簡素な装置で、容易に鋳枠群4の運動を停止させることができる。その他の作用は前の実施形態と同様であるので省略する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る鋳枠搬送装置の概要を示す正面図。
【図2】押出し装置の正面図。
【図3】同押出し装置の平面図。
【図4】クッション装置の正面図。
【図5】同クッション装置の平面図。
【図6】鋳枠搬送装置の作動を示す図。
【図7】鋳枠搬送装置の作動を示す図。
【図8】鋳枠搬送装置の作動を示す図。
【図9】他の実施形態のクッション装置の正面図。
【符号の説明】
【0040】
2…鋳枠搬送装置、4…鋳枠群、6…押出し装置、8…クッション装置、24…プッシュ部材、28…クッション部材、49…空気圧シリンダ(空気シリンダ)、46…制動装置・クランク機構(揺動アーム)、50…制動装置・クランク機構(ローラ)、52…制動装置(油圧シリンダ)、62…クランク機構、72…排油調節手段(リリーフ弁)、78…空気圧油圧タンク、102…クッション装置、104…制動油圧シリンダ(ピストン部)、108…制動油圧シリンダ(シリンダ部)、110…制御装置(CPU)、112…制御装置(電磁比例リリーフ弁)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列状に配列された鋳枠群を押出し装置とクッション装置とにより挟み込み、該鋳枠群を1鋳枠分のピッチ間隔ずつ移動させる鋳枠搬送装置において、
前記押出し装置は、クランクアームと、
前記クランクアームによる回転運動を搬送方向の直進運動に変換する運動変換装置と、
前記運動変換装置により変換された搬送方向の直進運動により前記鋳枠群の最後端をプッシュするプッシュ部材と、を有し、
前記クッション装置は、前記鋳枠群の最前端に後端部において当接するクッション部材と、
前記クッション部材の前端部に対向して設けられ、前記プッシュ部材の直進運動の減速時において前記クッション部材の直進運動を停止させる制動力を徐々に発生させる制動装置と、
を有していることを特徴とする鋳枠搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制動装置は、
所定以上の圧力が生じると外部に油を排出する排油調節手段と、
該排油調節手段によって一定の背圧が生じる油圧シリンダと、
前記クッション部材の直進運動を回転運動に変換するクランク機構であって、前記油圧シリンダの背圧に基づく該クランク機構の回転軸周りの力を、クッション部材の直進運動を制動するための回転トルクに変換し、該回転トルクを漸増させることにより前記回転運動を停止させる制動力を徐々に発生させるクランク機構と、
を備えていることを特徴とする鋳枠搬送装置。
【請求項3】
請求項2において、前記制動装置は、
前記クッション部材を前記鋳枠群に当接する前の初期状態に復帰させる空気圧シリンダと、
前記空気圧シリンダに空気圧を供給させるときに該空気圧を油圧に変換し、該油圧により前記油圧シリンダを前記初期状態に復帰させる空気圧油圧変換装置と、
を備えていることを特徴とする鋳枠搬送装置。
【請求項4】
請求項1において、前記制動装置は、前記クッション部材の直進運動に対向して働く制動油圧シリンダと、
該制動油圧シリンダに、前記制動力として油圧を徐々に発生させる油圧制御装置と、
を備えていることを特徴とする鋳枠搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−296544(P2007−296544A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125446(P2006−125446)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(592089799)メタルエンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】