説明

鋳砂の抗折強度試験方法及びその装置

【課題】焼成テストピースの抗折強度を正確に測定することができる鋳砂の抗折強度試験方法及びその装置を目的とするものである
【解決手段】鋳砂をシャッタ21により仕切られる定容積筒22に投入し、シャッタ21を開放してその下方に形成された延長筒23内を自由落下させて焼成加熱型30のキャビティ内に充填し、焼成加熱型30を加熱して焼成テストピースPを作成し、この焼成テストピースPを焼成加熱型30から離型し、抗折強度試験機5に移送して抗折強度を測定する鋳砂の抗折強度試験方法及び、筒状体の途中をシャッタ21で区分し、その上方を定容積筒22とし、その下方を延長筒23とし鋳砂を自由落下させて焼成加熱型30のキャビティ内に充填する型込め機構2と、焼成加熱型30で作成された焼成テストピースPを抗折強度試験機5に移送する移送機構4と、焼成テストピースPの抗折強度を測定する抗折強度試験機5とからなる鋳砂の抗折強度試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミダイカスト成形に用いられる鋳型や中子を作成する鋳砂の強度測定を行なう鋳砂の抗折強度試験方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳型材料の強度を検査する装置として、加圧スタンプにより圧縮して製作された焼成テストピースの見掛け密度を、焼成テストピースの重量に基づいて決定したうえ、支持体に置かれている焼成テストピースを加圧手段により加圧し、剪断強度を圧力測定装置により検出する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、見掛け密度を重量測定により得るため重量測定をする装置が必要となるうえに、測定ステップが必要となるため処理に時間がかかるという問題がある。また、剪断強度を測定する焼成テストピースの温度は管理されていないため、正確な剪断強度が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−209156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は焼成テストピースの抗折強度を正確に測定することができる鋳砂の抗折強度試験方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋳砂をシャッタにより仕切られる定容積筒に投入したうえ、シャッタを開放してその下方に形成された延長筒内を自由落下させて焼成加熱型のキャビティ内に充填し、焼成加熱型を加熱して焼成テストピースを作成し、次にこの焼成テストピースを焼成加熱型から離型し、抗折強度試験機に移送して抗折強度を測定する鋳砂の抗折強度試験方法を請求項1の発明とし、請求項1の発明において、焼成テストピースを冷風冷却後、抗折強度を測定する鋳砂の抗折強度試験方法を請求項2の発明とし、筒状体の途中をシャッタで区分し、その上方を定容積筒とし、その下方を延長筒とし鋳砂を自由落下させて焼成加熱型のキャビティ内に充填する型込め機構と、焼成加熱型で作成された焼成テストピースを抗折強度試験機に移送する移送機構と、焼成テストピースの抗折強度を測定する抗折強度試験機とからなる鋳砂の抗折強度試験装置を請求項3の発明とし、請求項3の発明において、抗折強度測定前の焼成テストピースを冷却する冷却機構を設けた焼成テストピースの抗折強度測定装置を請求項4の発明とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、鋳砂をシャッタにより仕切られる定容積筒に投入したうえ、シャッタを開放してその下方に形成された延長筒内を自由落下させて焼成加熱型のキャビティ内に充填するので、焼成加熱型に充填される鋳砂量を安定させることができる。次いで、焼成加熱型を加熱して焼成テストピースを作成し、この焼成テストピースを焼成加熱型から離型し、抗折強度試験機に移送して抗折強度を測定するから、測定データがばらつかず正確な抗折強度を測定することができる。
【0008】
また、請求項2のように、焼成テストピースを冷風冷却後、抗折強度を測定することにより、焼成テストピースの温度変動による抗折強度のばらつきをなくし、精度の高い測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す平面図である。
【図2】型込め機構を示す側面図である。
【図3】同じく正面図である。
【図4】同じく平面図である。
【図5】焼成機構を示す側面図である。
【図6】同じく平面図である。
【図7】移送機構の側面図である。
【図8】同じく平面図である。
【図9】抗折強度試験機を示す正面図である。
【図10】同じく側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
1は鋳砂から焼成テストピースPを焼成して抗折強度を測定する抗折強度試験装置であり、該抗折強度試験装置1は図1に示されるように、鋳砂を焼成型30に投入する型込め機構2と、焼成テストピースPを焼成する焼成型30と、作成された焼成テストピースPを抗折強度試験機5に移送する移送機構4と、焼成テストピースPの抗折強度を測定する抗折強度試験機5とからなる。
【0011】
前記型込め機構2は図2、3、4に示されるように、鋳砂のローダ20と、該ローダ20を鋳砂供給領域から焼成加熱型30の鋳砂投入領域間で往復動させる横行用シリンダ20aと、ローダ20の下面を焼成加熱型30に当接させる昇降用シリンダ20bとからなる。前記ローダ20は筒状体の途中をシャッタ21により区分し、鋳砂の定容積筒22と、定容積筒22の先方部に延長筒23を設けたものであり、該延長筒23の長さに基づいて自由落下距離が設定され、充填される鋳砂量を安定させることができる。また、定容積筒22の容積はキャビティの容積より大としている。24aは焼成加熱型30の砂投入口30aに臨む延長筒23の排出口である。
【0012】
また、図3に示されるように、型込め機構2のフレームにはシュータ24から供給されて溢れた鋳砂を、ローダ20が移動する際に上面から掻き落とすスクレーパ25が取り付けられている。26はローダ20のガイドロッド、27はスクレーパ25により掻き落とされた鋳砂を回収する回収ホッパである。
【0013】
さらに、シャッタ21は図2に示されるように、断面L形として水平な遮蔽板21aと垂直な係止板21bとからなり、遮蔽板21aは貯留部22の底部を開閉自在とし、垂直な係止板21bは外部に張出されて、鋳砂投入領域に達すると後記するシャッタ開閉板28と係止されるようになっている。シャッタ開閉板28は縦方向にシャッタ21を係止する隙間が形成された二股状のもので、鋳砂投入領域にローダ20が移動することにより、シャッタ21の係止板21bは二股状の隙間に差込まれるので、開閉用シリンダ28aを作動させることによりシャッタ開閉板28は前後動してシャッタ21を開閉する。29は充填器20から供給されて焼成型30の上面に溢れている鋳砂を掻き落とすとともに、キャビティ内に鋳砂を押し込み密度を均一にするスクレーパである。
【0014】
また、3は焼成テストピースPを焼成する焼成機構であり、該焼成機構3は図5、6に示されるように、固定の雌型と可動の雄型とからなる焼成加熱型30と、型締めシリンダ31と、焼成加熱型30の雌型側を上向きに回転させるクランク機構32aと、該クランク機構32aを作動させる駆動用シリンダ32とからなる。焼成加熱型30には縦細長方体よりなるキャビティが並設され、焼成テストピースP(縦細板)を2枚焼成できるようになっている。
【0015】
焼成加熱型30には型締め状態で開口される砂投入口30aが並設されている。また、焼成加熱型30は焼成後、型締めシリンダ31により型開きされた後、駆動用シリンダ32によって作動されるクランク機構32aによりキャビティが上向きとなるように雌型が回転され、焼成テストピースPが上向きに露呈されるようになっている。33は焼成加熱型30より焼成テストピースPを離型させるとともに焼成加熱型30上方に焼成テストピースPを浮動させる離型ピンである。34は可動型のガイドロッドである。
【0016】
35は焼成機構3に付設されるレーザセンサであり、該レーザセンサ35は図5に示されるように、焼成テストピースPの移送機構4への移載時、焼成テストピースPにレーザ光を斜めから照射することにより、保持板40aにより焼成テストピースPが持ち上げられると、レーザ光は焼成テストピースPの上面から端部まで自動的にスキャンして、焼成テストピースPが保持板40aの所定位置に確実に保持されているかを検知できることとなる。
【0017】
また、前記移送機構4は焼成加熱型30より離型された焼成テストピースPを抗折試験機5の試験台5a上に搬送するものであり、該移送機構4は図7、8に示されるように、焼成テストピースPを保持する保持板40aを前後進用シリンダ41と昇降用シリンダ42により前後動及び昇降動自在としたヘッド40を横行用シリンダ43により焼成加熱型30位置から抗折強度試験機5位置まで往復動自在とするものであり、該保持板40aは離型ピン32により持ち上げられている焼成テストピースPの下面に進入したのち上昇して並列されている各焼成テストピースPを離型ピン33から持ち上げるものである。
【0018】
そして、焼成テストピースPを持ち上げて保持した保持板40aを後退させたうえ、横行用シリンダ43を作動させることによりヘッド40を抗折強度試験機5位置に移動させることができる。また、抗折強度試験機5位置で前後進用シリンダ41を作動させて保持板40aを試験台5a上方に移動させた上、下降させて焼成テストピースPを試験台5a上に載置することができる。
【0019】
7は焼成テストピースPの冷却機構であり、該冷却機構7は図10に示されるように、ノズルから冷風あるいは空気を各焼成テストピースPに向けて送風して試験台5a上の焼成テストピースPを所定温度まで冷却するものである。
【0020】
抗折強度試験機5は図9、10に示されるように、スタンドに昇降動自在に取り付けられ、試験台5aに載置される焼成テストピースPにゲージの圧子を降下押圧させて折損するまでの力、即ち抗折強度を測定するものであり、下降する抗折強度試験機5の圧子位置に焼成テストピースPの中央部が位置するように試験台5aは配置されている。また、試験台5aは前後スライド自在として、前後の焼成テストピースPが抗折強度試験機5の圧子位置に配置移動できるようになっている。
【0021】
また、抗折強度試験機5には焼成テストピースPに斜め上方からレーザ光を照射する図示しないレーザセンサが設けられている。該レーザセンサは斜めからレーザを照射することにより、焼成テストピースPが試験台5aの上方に移動する際、保持板40aの端部までスキャンして焼成テストピースPが適正に試験台5aに載置することができるかどうかを確認している。50は抗折強度が測定されて折損された焼成テストピースPを排出するため試験台5aを枢動させる払出しシリンダである。
【0022】
このような装置において、焼成テストピースPの抗折強度の測定を行なうには、先ず、鋳砂供給領域に停止されている型込め機構2のシャッタ21が閉じられている定容積筒22にシュータ24より鋳砂を投入する。
【0023】
シュータ24より投入されて定容積筒22の上面に溢れた鋳砂は型込め機構2が移動する際、フレームに固定されているスクレーパ25により掻き落とされて、型込め機構2の下方に配置されている回収ホッパ27内に収容される。
【0024】
型込め機構2のローダ20は横行用シリンダ20aにより鋳砂投入領域の型締めされている焼成機構3の焼成加熱型30上まで移動されて停止する。このときシャッタ21の係止板21bは二股状のシャッタ開閉板28の間隙に係止される。次に、昇降用シリンダ20bを作動させてローダ20を降下させ、焼成加熱型30の砂投入口30aに延長筒23の排出口24aを合わせる。
【0025】
そして、砂投入口30aと排出口24aとを合わせたうえ、開閉用シリンダ28aを作動させて係止板21bに係止されているシャッタ開閉板28を後退させてシャッタ21を開放する。シャッタ21に開放により定容積筒22内に充填されている鋳砂は、延長筒23の距離分自由落下する。この自由落下によりキャビティ内に鋳砂量を安定して充填できる。
【0026】
鋳砂の充填後、型込め機構2を上昇復帰させたうえ、鋳砂供給領域までローダ20を復帰後退させ、次回の鋳砂供給に備える。そして、焼成加熱型30を加熱して充填された 鋳砂を硬化させ、硬化後、焼成機構3の型締めシリンダ31を作動させて焼成加熱型30を型開きする。これと同時に横行用シリンダ43を作動させて移送機構4の保持板40aを焼成加熱型3位置に移動させる。
【0027】
次に、駆動用シリンダ32を作動させてクランク機構32aを駆動すれば焼成加熱型30はキャビティの開口面が上向きとなるように回転する。この状態で離型ピン33を作動させ、板面を露呈させている焼成テストピースPをキャビティより離型させたうえ、キャビティの上方に浮動させる。
【0028】
そして、移送機構4の前後進用シリンダ41を作動させて離型ピン32により浮動されて2列の焼成テストピースPの下面に保持板40aを差し込む。続いて、昇降用シリンダ42を作動させて2列の焼成テストピースPを保持板40aで持ち上げる。このときレーザセンサで焼成テストピースPが保持板40aの所定位置に確実に保持されているかを検出する。そして、横行用シリンダ43を作動させて焼成テストピースPを抗折強度試験機5まで移動させ、試験台5a位置で停止させたうえ、昇降用シリンダ42を作動させて試験台5a上に焼成テストピースPを載置する。このとき焼成テストピースPが所定位置に確実に載置されたかをレーザセンサで検出する。
【0029】
次に、冷却機構7を作動させてノズルより試験台5a上に並列されている各焼成テストピースPに冷却風を噴射して焼成テストピースPの冷却を行なう。
【0030】
焼成テストピースPに一定時間冷却風を送風するか、焼成テストピースPが所定温度まで冷却されたら冷却風を止めて、抗折強度試験機5を降下させて試験台5a上の焼成テストピースPを圧子で加圧し、焼成テストピースPが折損したときの圧力に基づいて抗折強度を測定するものである。
【0031】
一つ目の焼成テストピースPの抗折強度が測定されたら、試験台5aを後退させて、未測定の焼成テストピースPを抗折強度試験機5の測定位置に移動させる。前記と同様の測定を行った後、払出しシリンダ50を作動させて試験台5aを前進させたうえ、前向き傾斜させて折損した各焼成テストピースPを払いだす。このようにして得られた抗折強度に基づいて鋳砂の良否判定を行なうものである。
【符号の説明】
【0032】
1 抗折強度試験装置
2 型込め機構
20 ローダ
20a 横行用シリンダ
20b 昇降用シリンダ
21 シャッタ
21a 遮蔽板
21b係止板
22 定容積筒
23 延長筒
24 シュータ
24a 排出口
25 スクレーパ
26 ガイドロッド
27 回収ホッパ
28 シャッタ開閉板
28a 開閉用シリンダ
29 スクレーパ
3 焼成機構
30 焼成加熱型
30a 砂投入口
31 型締めシリンダ
32 駆動用シリンダ
32a クランク機構
33 離型ピン
34 ガイドロッド
35 レーザセンサ
4 移送機構
40 ヘッド
40a 保持板
41 前後進用シリンダ
42 昇降用シリンダ
43 横行用シリンダ
5 抗折強度試験機
5a 試験台
50 払出しシリンダ
7 冷却機構
P 焼成テストピース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳砂をシャッタにより仕切られる定容積筒に投入したうえ、シャッタを開放してその下方に形成された延長筒内を自由落下させて焼成加熱型のキャビティ内に充填し、焼成加熱型を加熱して焼成テストピースを作成し、次にこの焼成テストピースを焼成加熱型から離型し、抗折強度試験機に移送して抗折強度を測定することを特徴とする鋳砂の抗折強度試験方法。
【請求項2】
焼成テストピースを冷風冷却後、抗折強度を測定することを特徴とする鋳砂の抗折強度試験方法。
【請求項3】
筒状体の途中をシャッタで区分し、その上方を定容積筒とし、その下方を延長筒とし鋳砂を自由落下させて焼成加熱型のキャビティ内に充填する型込め機構と、焼成加熱型で作成された焼成テストピースを抗折強度試験機に移送する移送機構と、焼成テストピースの抗折強度を測定する抗折強度試験機とからなる鋳砂の抗折強度試験装置。
【請求項4】
抗折強度測定前の焼成テストピースを冷却する冷却機構を設けたことを特徴とする鋳砂の抗折強度測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−160007(P2010−160007A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1350(P2009−1350)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】