説明

鋳造用ノズル

【課題】ガス吹き込み用スリットの軸方向の端部の耐衝撃性を強化した鋳造用ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル1は、スリット5の上端部のノズル本体2のノズル内孔3側とノズル外周側とが連続する連続部分14が、多数軸方向に入り込んで形成されるから、ストッパーヘッドSHが流入口4に衝撃的に当接する際に、スリット5の上端に向う衝撃応力の到達距離や時間等が異なって該応力が分散されるとともに、連続部分14が不規則に存在することによりスリット5の上端部の耐衝撃性を強化することができる。因みに、本実施例のノズル1にストッパーヘッドSHをセットして加圧破壊試験を行った結果、連続部分14を形成しない従来のものに比して、約30パーセント強度が増加した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル内孔と同心で軸方向にリング状のガス吹き込み用のスリットを形成してなる鋳造用ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造時にノズル内壁に付着する介在物を除去したり、酸化を防止したりするため、ノズル内孔と同心で軸方向にリング状のスリットを形成して、該スリットにアルゴンガス等の不活性ガスを吹き込むようにした鋳造用ノズルがある。
【0003】
しかしながら、鋳造用ノズルには鋳造開始時の溶鋼流の落下衝撃や、鋳造時の熱衝撃及びノズル内孔閉鎖時のストッパーヘッドの当接衝撃等が繰り返し作用する。このため、ノズル本体内にノズル内孔と同心のガス吹き込み用のスリットが存在すると、これらの熱衝撃やストッパーヘッドの当接衝撃等により、スリット部分に向かって亀裂や割れが発生する場合がある。また、ストッパーヘッドの当接衝撃はスリットの上端部に直接作用するため、該上端部に対する耐衝撃性強化の要請がある。
【特許文献1】無し
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、ガス吹き込み用スリットの軸方向の端部の耐衝撃性を強化した鋳造用ノズルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の鋳造用ノズルは、焼成時、ノズル本体に埋め込んだ円筒形消失型を消失させることにより、ノズル内孔と同心で軸方向に連続するリング状のガス吹き込み用スリットを形成した鋳造用ノズルにおいて、前記円筒形消失型に、軸方向の端部から切り込んだ切り込みを複数円周方向に設け、前記ガス吹き込み用スリットの端部の前記ノズル本体のノズル内孔側とノズル外周側とが連続する連続部分を、複数箇所軸方向に入り込ませて形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1に記載の鋳造用ノズルによれば、ガス吹き込み用スリットの端部のノズル本体のノズル内孔側とノズル外周側とが連続する連続部分を、複数箇所軸方向に入り込ませて形成するから、スリットに向う衝撃応力の到達距離や時間等が異なって該応力が分散されるとともに、連続部分が不規則に存在することによりスリット端部の耐衝撃性を強化することができる。
【実施例】
【0007】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はガス吹き上ノズル(以下、単にノズルという。)1の断面図である。ノズル本体2の軸方向の中心には、ノズル内孔3が形成されている。ノズル内孔3の上端部は、ストッパーヘッドSHにより閉じられる溶鋼の流入口4が形成されている。図1に示すように流入口4は、ノズル内孔3に滑らかに連続する曲面により形成されている。そして、ノズル内孔3と同心で軸方向にリング状のガス吹き込み用のスリット5が形成されている。このスリット5は、不活性ガスを吹き込んでノズル内孔3にアルミナ等が付着するのを抑制するためのものであり、ノズル1の焼成時に消失する紙製の円筒形消失型により形成される。
【0008】
図2は、スリット5を形成するための円筒形消失型11を示したものである。円筒形消失型11は、上端部12から楔形に切り込んだ切込み13が円周方向に多数形成されている。切込み13は一つ置きに切込み深さを異ならせている。
【0009】
上記円筒形消失型11は、ノズル本体2内に埋め込まれノズル1の焼成時に消失し、ノズル本体2にノズル内孔3と同心で軸方向にリング状のガス吹き込み用のスリット5が形成される。図4及び図5に示すようにスリット5は、上端部に円筒形消失型11の上端部12からの切り込み13により、ノズル本体2のノズル内孔3側とノズル外周側とが連続する楔形の連続部分14が、多数軸方向に入り込んで形成される。そして、ノズル1には、スリット5に連通する水平のガス吹き込み路15が形成されている。ガス吹き込み路15には、ガス供給管用接続ポート16が取付けられている。
【0010】
本実施例のノズル1は、スリット5の上端部のノズル本体2のノズル内孔3側とノズル外周側とが連続する連続部分14が、多数軸方向に入り込んで形成されるから、ストッパーヘッドSHが流入口4に衝撃的に当接する際に、スリット5の上端に向う衝撃応力の到達距離や時間等が異なって該応力が分散されるとともに、連続部分14が不規則に存在することによりスリット5の上端部の耐衝撃性を強化することができる。因みに、本実施例のノズル1にストッパーヘッドSHをセットして加圧破壊試験を行った結果、連続部分14を形成しない従来のものに比して、約30パーセント強度が増加した。
【0011】
上記円筒形消失型11に形成した切り込み13は、スリット5の下端部にも形成することができる。また、図6に示すように短冊形の切り込み23等、任意の形状の切り込みを設けることができる。
その他、本発明は、ノズル本体中にガス吹き込み用スリットが形成される鋳造用ノズルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】上ノズルの断面図である。
【図2】円筒形消失型の正面図である。
【図3】切り込みの形状を示した説明図である。
【図4】図1に於けるA−A線断面図である。
【図5】ノズル本体の要部の展開図である。
【図6】切り込みの他の形状を示した説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1...上ノズル
2...ノズル本体
3...ノズル内孔
5...スリット
11...円筒形消失型
12...上端部
13,23...切り込み
14...連続部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に埋め込んだ円筒形消失型を消失させることにより、ノズル内孔と同心で軸方向に連続するリング状のガス吹き込み用スリットを形成する鋳造用ノズルにおいて、
前記円筒形消失型に、軸方向の端部から切り込んだ切り込みを複数円周方向に設け、前記ガス吹き込み用スリットの端部の前記ノズル本体のノズル内孔側とノズル外周側とが連続する連続部分を、複数箇所軸方向に入り込ませて形成することを特徴とする鋳造用ノズル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−100254(P2008−100254A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284468(P2006−284468)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000244176)明智セラミックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】