説明

鋳鉄管外装コンクリートの施工方法及びその方法に用いられる鋳鉄管外装コンクリートの施工装置

【課題】鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施す際に、外装コンクリートの表面に生じる凹みやクラックに対する補修作業の時間を短縮することのできる鋳鉄管外装コンクリートの施工方法及びその方法に用いられる鋳鉄管外装コンクリートの打設装置を提供することを目的とする。
【解決手段】鋳鉄管10と外装コンクリート20とを内含する外装枠30を横設した状態で、外装枠30を鋳鉄管10の管軸周りに回転させて、外装コンクリート20に遠心力を与え、外装コンクリート20の外表面に現れようとする凹部を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳鉄管外装コンクリートの施工方法及びその方法に用いられる鋳鉄管外装コンクリートの施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道や上水道などの管渠工事において、推進管と呼ばれる鋳鉄管を、進行方向に向けて地中に押し込んでゆくことで管路を設ける推進工法が用いられることがある。
ここで、地中に押し込むときの推進抵抗を小さくするために、推進管の管胴部にコンクリートを外装して、管胴部の外径と、管端部における管胴部よりも大径の受口の外径とを等しくしておくことが望ましい。
【0003】
従来、鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施した推進管は、例えば特許文献1に記載されているように、筒状の外装枠内に鋳鉄管を同心状に配置し、鋳鉄管と外装枠との間に形成される間隙に流体状のコンクリートを充填し、このコンクリートを養生することで製造されている。
【特許文献1】特開昭50−091616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術による製造方法では、充填されたコンクリートを養生した際に、流体状のコンクリート内に含まれる空気がコンクリートの表面に浮き上がってくるため、図4に示すように外装コンクリートの表面には多くの凹みが生じてしまう。
【0005】
このような凹みが残ったままの状態では外観が非常に悪いため、完成した推進管の商品価値が低いものとなってしまう。また、凹みが残ったままでは、この推進管を地中に推進させる際の推進性能が低くなるおそれもある。
【0006】
そこで、鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施した後には、表面からこうした凹みをなくすために、補修作業を行う必要があった。
この補修作業は、表面全体をグラインダーなどで研磨した上で、凹みが発生した箇所を一つ一つ調べていって充填材の充填を行うという、非常に手間のかかる作業である。したがって、この作業があるために、鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施した推進管を製造するには多大な時間が掛かってしまい、生産性が非常に低くなってしまっていた。また、表面を研磨する際に全体をムラなく研磨することは困難であるため、研磨によって外装コンクリート表面に角が生じてしまい、外観が悪くなるおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施す際に、外装コンクリートの表面に生じる凹みに対する補修作業の時間を短縮することのできる鋳鉄管外装コンクリートの施工方法及びその方法に用いられる鋳鉄管外装コンクリートの施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、鋳鉄管外装コンクリートの施工方法であって、外装コンクリートの施工対象となる鋳鉄管と、前記鋳鉄管の外周に配置された外装枠と、の間に形成される間隙へ、流体状の外装コンクリートを流し込んだ後に、鋳鉄管と外装コンクリートとを内含する外装枠を横設した状態で、外装枠を鋳鉄管の管軸周りに回転させて、前記鋳鉄管と外装枠との間の外装コンクリートに遠心力を与える工程を有することを特徴とする。
【0009】
このようにすることにより、コンクリートが、凹みの発生原因となる気泡などよりも管径方向外側に移動し、そのため、外装コンクリートが養生された際には表面に凹みが現れず、表面の平滑な外装コンクリートが得られる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、鋳鉄管外装コンクリートの施工装置であって、基台上に複数のローラが設けられており、前記複数のローラによって、外装枠を支持可能であり、前記外装枠は、外装コンクリートの施工対象となる鋳鉄管と、この鋳鉄管と外装枠との間に形成される間隙へ流し込まれた流体状の外装コンクリートとを含むものであり、ローラによって前記鋳鉄管及び流体状の外装コンクリートを内含する外装枠を支持した状態で、ローラを駆動することにより、前記鋳鉄管を内含する外装枠を鋳鉄管の管軸周りに回転させることが可能であることを特徴とする。
【0011】
このような構造により、鋳鉄管を内含する外装枠を、流体状の外装コンクリートが充填された状態で、コンクリートが養生される過程において鋳鉄管の管軸周りに回転させることができて、鋳鉄管と外装枠との間の外装コンクリートに、このコンクリートが凹みの発生原因となる気泡などよりも管径方向外側に移動するための遠心力を与えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋳鉄管外装コンクリートの施工方法及びその方法に用いられる鋳鉄管載置用器具を用いることにより、補修作業を行わずとも平滑な表面の外装コンクリートが得られる。したがって、鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施した推進管の製造工程において、補修作業に多大な時間を費やすことなく、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る鋳鉄管外装コンクリートの施工装置を示す斜視図であり、10は外装コンクリートの施工対象となる鋳鉄管、30は鋳鉄管10の周囲に配置された外装枠、40は鋳鉄管外装コンクリートの施工装置である。
【0014】
図2は鋳鉄管10と外装枠30との間に形成される間隙に外装コンクリート20が充填された状態を示す図であり、この図2の右側においては、鋳鉄管10,外装コンクリート20,外装枠30の位置関係がわかるように、仮想的に透視した図としており、外装枠30は、実際には図2において二点破線で示される位置まで鋳鉄管10及び外装コンクリート20を覆っている。
【0015】
鋳鉄管10に外装コンクリートを施工する際には、まず、外装枠30内に鋳鉄管10を配置し、外装枠30を横設した状態で、外装枠30に設けられた図示しない注入口から流体状の外装コンクリート20を注入する。なお、この注入口にはスライド式の蓋が付いており、開閉自在となっている。
【0016】
ここで、外装枠30は周方向に沿って二つ割に形成されており、外装枠30の各部分枠30a,30bを互いに開動しない状態に固定するための複数のロック部材(ボルトとナットなど)が設けられている。そして、外装枠30の内径は、鋳鉄管10の受口部外径とほぼ等しい寸法に形成されており、外装枠30に鋳鉄管10を挿入するだけで両者が同心状に配置されるようになっている。
【0017】
そして、施工装置40に、鋳鉄管10と外装コンクリート20とを内含する外装枠30を横設した状態で載置する。
施工装置40は、基台41上に複数(ここでは4つ)のローラ42が設けられており、このローラ42によって外装枠30を支持するように構成されている。また、このローラは駆動装置43(モータなど)によって回転させることが可能である。なお、作業中に外装枠30が施工装置40から転がり落ちないように、基台41の四隅には規制柱45が設けられている。
【0018】
また、ローラ42はフランジ部42aと車輪部42bとを有し、フランジ部42aの外径は車輪部42bよりも大きくなっている。外装枠30の管軸方向端部の外周面がこの車輪部42bのトレッドに載せられるようになっており、さらに、外装枠30の管軸方向端面がフランジ部42aの表面に臨むようになっている。ローラ42をこのように構成しておくことにより、外装枠30の管軸方向への移動をフランジ部42aで規制することができるので、外装枠30が管軸方向に移動して施工装置40から飛び出すことがないようにできる。
【0019】
ここで、施工装置40のローラ42が駆動装置43によって回転させられると、載置された外装枠30が鋳鉄管10の管軸周りに回転させられるようになっている。
鋳鉄管10と外装コンクリート20とを内含する外装枠30が、鋳鉄管10の管軸周りに回転させられると、図2に示す鋳鉄管10、外装コンクリート20、外装枠30が一体となって回転し、流体状の外装コンクリート20に、鋳鉄管10の管径方向外向きの遠心力が加えられることになる。
【0020】
すると、外装コンクリート20中に存在する空隙などを形成している空気よりも比重の大きいコンクリートの主成分(セメント、砂、砂利など)が管径方向外向き、つまり外装コンクリート20の表面側へと移動して、外装コンクリート20の表面に現れようとする空隙(凹部)が塞がれていく。
【0021】
このとき、余りに高速で、または長時間にわたって回転させてしまうと、流体状のコンクリートに含まれる水分がコンクリートの主成分と分離して締め固まってしまうため、軽い回転を短時間行うに留めるのが望ましい。例えば、呼び径600〜1200mm程度の鋳鉄管の場合、遠心力による加速度の重力倍数(Gナンバー)が3程度となる回転を30秒ほど行うようにすればよい。
【0022】
以下、回転数の算出方法について述べる。遠心力による加速度の重力倍数(Gナンバー)は、次式で与えられる(例えば、鋳物便覧(改訂4版、丸善)1084ページの(20.4)式)。
【0023】
Gナンバー=回転物体の直径(cm)×(回転数(r.p.m))2/179000
この式から、
回転数(r.p.m)=(179000×Gナンバー/回転物体の直径(cm))1/2
となる。なお、本実施の形態の場合、Gナンバー=3であるから、例えば、呼び径1000mmの鋳鉄管(外装コンクリート外径1200mm=120cm)に必要な回転数は
回転数=(179000×3/120)1/2=67(r.p.m)
となる。
【0024】
図3はこの条件で養生した外装コンクリート20の表面を示す図であり、従来技術に係る方法で養生した外装コンクリートの表面(図4)と比べて、凹部が非常に少なく、小さくなっている。
【0025】
このように、外装コンクリートの施工過程において外装コンクリート20に遠心力を加えることで、図3に示すように、平滑な表面の外装コンクリート20を得ることができる。
【0026】
このように表面が平滑になっていれば、補修作業が非常に簡単に、短時間で済む、あるいは全く行わなくて済むようになるので、鋳鉄管の外周にコンクリートの外装を施した推進管の製造に掛かる作業時間を短縮することができ、生産性が高くなる。また、表面を研磨する必要も少なくなるため、研磨によって外装コンクリート20の表面に角が生じてしまうおそれも、最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る鋳鉄管外装コンクリートの施工装置を示す斜視図
【図2】鋳鉄管10と外装コンクリート20とを含む外装枠30を示す図であり、外装枠30を部分的に透視して示す図
【図3】本発明に係る方法によって施工された外装コンクリートの表面の状態を示す図
【図4】従来技術によって施工された外装コンクリートの表面の状態を示す図
【符号の説明】
【0028】
10 鋳鉄管
20 外装コンクリート
30 外装枠
40 施工装置
42 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鉄管外装コンクリートの施工方法であって、
外装コンクリートの施工対象となる鋳鉄管と、前記鋳鉄管の外周に配置された外装枠と、の間に形成される間隙へ、流体状の外装コンクリートを流し込んだ後に、
鋳鉄管と外装コンクリートとを内含する外装枠を横設した状態で、外装枠を鋳鉄管の管軸周りに回転させて、前記鋳鉄管と外装枠との間の外装コンクリートに遠心力を与える工程を有すること
を特徴とする鋳鉄管外装コンクリートの施工方法。
【請求項2】
鋳鉄管外装コンクリートの施工装置であって、
基台上に複数のローラが設けられており、
前記複数のローラによって、外装枠を支持可能であり、
前記外装枠は、外装コンクリートの施工対象となる鋳鉄管と、この鋳鉄管と外装枠との間に形成される間隙へ流し込まれた流体状の外装コンクリートとを含むものであり、
ローラによって前記鋳鉄管及び流体状の外装コンクリートを内含する外装枠を支持した状態で、ローラを駆動することにより、前記鋳鉄管を内含する外装枠を鋳鉄管の管軸周りに回転させることが可能であること
を特徴とする鋳鉄管載置用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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