説明

鋳鉄管外面の腐食部除去方法、及びその方法に使用する腐食部除去装置

【課題】鋳鉄管外面の付着物と黒鉛化腐食部分の除去作業に要する時間を短縮する。
【解決手段】地中に埋設されたダクタイル鋳鉄管25に向かって掘削坑7を掘り、その掘削坑7内で露出したダクタイル鋳鉄管25の鋳鉄管外面26に付着している付着物と、鋳鉄管外面26の鉄が腐食して鋳鉄管外面26に黒鉛層が残る黒鉛化腐食部分に向けて、ブラスト剤と高圧ポンプから供給される高圧水とを一緒にノズルガン4から噴射することにより、付着物と黒鉛化腐食部分とを鋳鉄管外面26から除去する。このようにすると、ノズルガン4からブラスト剤と高圧水を一緒に噴射する一連の動作だけで、ノズルガン4から噴射したブラスト剤により付着物と黒鉛化腐食部分の両方を鋳鉄管外面26から削り取ることができるので、鋳鉄管外面26の付着物と黒鉛化腐食部分の除去作業に要する時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、掘削坑内に掘上げられたダクタイル鋳鉄管の外面に付着している付着物や、黒鉛化腐食部分に向けてブラスト剤を噴射することにより、付着物や黒鉛化腐食部分を外面から除去するようにした鋳鉄管外面の腐食部除去方法、及びその鋳鉄管外面の腐食部除去方法に使用する腐食部除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されるダクタイル鋳鉄管は、その外面に防食塗装を施して周辺の土壌環境による外面の腐食を防止している。しかし、このようなダクタイル鋳鉄管では、防食塗装が劣化して剥離が生じると、その剥離部分から鋳鉄管外面の鉄が腐食する黒鉛化腐食が発生する場合がある。黒鉛化腐食が発生すると、鋳鉄管外面に黒鉛が多く残存した黒鉛化腐食部分の割合が多くなり、水漏れや破損の原因となる。そこで、水漏れや破損を防止したり、ダクタイル鋳鉄管の更新時期の優先順位を決めたりするなどの管路維持管理を行なうために、適宜鋳鉄管外面の腐食量調査を行なっている。
【0003】
この鋳鉄管外面の腐食量調査は、まず、ダクタイル鋳鉄管を地中から掘起こし、鋳鉄管外面に付着している土壌などの付着物をスクレーパーで削り取り、次いで、ケレンハンマで叩き落とす。付着物を概ね除去できたら、残りの付着物をワイヤブラシで完全に擦り取る。その後、テストハンマの尖った方で鋳鉄管外面の黒鉛化腐食部分を全て剥がし取り、黒鉛化腐食部分を鋳鉄管外面から完全に除去する。次に、黒鉛化腐食部分の深さをデプスゲージで測定し、腐食深さが2.0mm以上ある黒鉛化腐食部分に樹脂を充填し、その後、調査範囲内の鋳鉄管外面に防食塗装を施す手順で行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記鋳鉄管外面の腐食量調査は、スクレーパー、ケレンハンマ、ワイヤブラシ、テストハンマなどの種々の工具を用いて、付着物と黒鉛化腐食部分を順番に除去する必要があるため、その除去作業に多くの時間を費やしていた。特に、調査範囲内にダクタイル鋳鉄管の継手部がある場合は、継手部のボルトやナットなどの細かい部分まで腐食量調査を行なう必要があるので、上記のように工具を用いて手作業で腐食量調査を行なうのは大変であった。
【0005】
そこで、この発明は、鋳鉄管外面の付着物と黒鉛化腐食部分の除去作業に要する時間を短縮することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明の鋳鉄管外面の腐食部除去方法は、地中に埋設されたダクタイル鋳鉄管に向かって掘削坑を掘り、その掘削坑内で露出したダクタイル鋳鉄管の鋳鉄管外面に付着している付着物と、前記鋳鉄管外面の黒鉛化腐食部分に向けて、ブラスト剤と高圧ポンプから供給される高圧水とを一緒にノズルガンから噴射することにより、前記付着物と前記黒鉛化腐食部分とを前記鋳鉄管外面から除去するようにしたのである。
【0007】
このようにすると、鋳鉄管外面の付着物と黒鉛化腐食部分に向けて、ノズルガンからブラスト剤と高圧水を一緒に噴射する一連の動作だけで、ノズルガンから噴射したブラスト剤により付着物と黒鉛化腐食部分の両方を鋳鉄管外面から削り取ることができるので、従来のように、スクレーパー、ケレンハンマ、ワイヤブラシ、テストハンマなどの種々の工具を用いて、付着物と黒鉛化腐食部分を順番に除去する場合と比べて、簡単に鋳鉄管外面から付着物と黒鉛化腐食部分を除去することができる。そのため、鋳鉄管外面の付着物と黒鉛化腐食部分の除去作業に要する時間を短縮することができる。
【0008】
前記ブラスト剤をブラストタンクに貯え、そのブラストタンクに前記ノズルガンに接続されたブラストホースを挿入し、前記高圧ポンプから高圧ホースを介して前記ノズルガンに供給された高圧水の水流によって前記ブラストホースに生じる負圧により、前記ブラスト剤を前記ブラストホースを介して前記ノズルガンに吸引して、そのブラスト剤を前記高圧水と一緒に前記ノズルガンから噴射するようにすることができる。
【0009】
前記ブラストタンクに貯えるブラスト剤として、粒度が46メッシュ〜80メッシュの範囲のアルミナを用いると、付着物と黒鉛化腐食部分の両方の除去性がよく好ましい。アルミナの粒度を46メッシュよりも大きくすると、アルミナが黒鉛化腐食部分の深淵部に衝突しにくくなり、黒鉛化腐食部分の除去性が悪くなる。一方、アルミナの粒度を小さくするほど、アルミナが黒鉛化腐食部分の深淵部に衝突しやすくなり、黒鉛化腐食部分の深淵部まで削り取ることができるので、黒鉛化腐食部分の除去性がよくなる点で好ましいが、アルミナの粒度が80メッシュよりも小さくなると、アルミナによる付着物の削り取り作用が弱くなりすぎ、付着物の除去性が悪くなるからである。
【0010】
前記ブラストタンク内に貯えるブラスト剤として、平均粒度が20メッシュのアルミナと、平均粒度が60メッシュのアルミナとの混合体積比を2:1〜1:2の割合で混合した混合アルミナを用いると好ましい。
【0011】
アルミナの平均粒度が小さいほど、アルミナのブラストホースへの吸引が途中で途切れたり、アルミナの吸引が不連続になることによりブラストホースが脈動したりしてアルミナの吸引が不安定になりやすくなるが、粒度が比較的大きい20メッシュのアルミナと、付着物と黒鉛化腐食部分の両方の除去性が最もよい60メッシュのアルミナとを混合することで、付着物と黒鉛化腐食部分の両方の除去性を確保しつつ、アルミナのブラストホースへの吸引を安定させることができるからである。
【0012】
前記ブラストタンクに貯えるブラスト剤として、粒度が0.7〜1.2mmの範囲の珪砂を用いると、付着物と黒鉛化腐食部分の両方の除去性と、珪砂のブラストホースへの吸引安定性をよくすることができる。このため、粒度が0.7〜1.2mmの範囲の珪砂は、アルミナのように、粒度の異なるものの混合を行わなくても、付着物と黒鉛化腐食部分の除去性と吸引安定性の両方がよいので、最も好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、この発明の腐食部除去装置は、高圧洗浄機と、その高圧洗浄機の高圧ポンプから高圧ホースを介して高圧水が供給されるノズルガンと、そのノズルガンに接続されたブラストホースが上部から挿入され、内部にブラスト剤を貯えたブラストタンクとを有し、前記ブラストタンクの下部に台車を設け、上記の各鋳鉄管外面の腐食部除去方法に使用するようにしたのである。
【0014】
このように、ブラストタンクの下部に台車を設けると、ブラストタンクを台車により移動させることができるので、重量のあるブラストタンクの移動が容易となり、ブラストタンクの現場での設置を簡単にすることができる。また、狭い掘削坑内において、鋳鉄管外面の付着物や黒鉛化腐食部分に向けてノズルガンを取り回していくので、ブラストホースが捩れたり屈曲したりして、ブラスト剤のブラストホースへの吸引が不安定になりやすいが、ノズルガンの取り回しに応じてブラストタンクを台車で動かすことにより、ブラストホースの捩れや屈曲を迅速に解消して、ブラスト剤のブラストホースへの吸引を安定させることができる。
【0015】
前記ブラストホースは、前記ブラストタンクに垂直に挿入すると好ましい。このようにすると、ブラストホースをブラストタンクに斜めに挿入する場合と比べて、ブラスト剤のブラストホースへの吸引が途切れたり、ブラストホースに脈動が生じたりしにくくなるので、ブラスト剤の吸引を安定して行なうことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の鋳鉄管外面の腐食部除去方法によれば、鋳鉄管外面の付着物と黒鉛化腐食部分に向けて、ブラスト剤と高圧ポンプから供給される高圧水とをノズルガンから一緒に噴射することにより、付着物と黒鉛化腐食部分を鋳鉄管外面から除去するようにしたので、ノズルガンからブラスト剤と高圧水を一緒に噴射する一連の動作だけで、ノズルガンから噴射したブラスト剤により付着物と黒鉛化腐食部分の両方を鋳鉄管外面から削り取ることができる。そのため、従来のように、スクレーパー、ケレンハンマ、ワイヤブラシ、テストハンマなどの種々の工具を用いて、付着物と黒鉛化腐食部分を順番に除去する場合と比べて、簡単に鋳鉄管外面から付着物と黒鉛化腐食部分とを除去することができ、鋳鉄管外面の付着物と黒鉛化腐食部分の除去作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態の腐食部除去装置を示す側面図
【図2】図1の腐食部除去装置のノズルガン近傍の拡大側面図
【図3】図1の腐食部除去装置のブラストタンクの拡大分解斜視図
【図4】(a)は図1の腐食部除去装置のブラストタンクにブラスト吸引管を斜めに挿入した状態を示す拡大斜視図であり、(b)は(a)の斜め挿入治具近傍の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態の腐食部除去装置を図面に基づいて説明する。図1に示すように、腐食部除去装置1は、高圧洗浄機2と、先端にノズル3を備えたノズルガン4と、内部にアルミナや珪砂などのブラスト剤を貯えたブラストタンク5とを有する。
【0019】
高圧洗浄機2は、その高圧ポンプ(図示省略)が内部に水を貯えた水供給タンク6と水供給ホースを介して接続されており、高圧ポンプの吐出水圧を140kg/cm以上に設定可能なものが用いられる。例えば、型番:SEC−1520(スーパー工業社製)を挙げることができる。
【0020】
ノズルガン4は、図2に示すように、銃身長Lが800mm、230mm、120mmのものを使用することができるが、銃身長Lが長すぎると、狭い掘削坑7内における管横や管下での取り回しが困難となるため、銃身長Lが8mm程度の短いものを使用してもよい。
【0021】
このノズルガン4には、図1、図2に示すように、把持部8に高圧洗浄機2の高圧ポンプに接続される高圧ホース9が接続されており、高圧ホース9を介して高圧ポンプから吐出水圧が140kg/cm以上の高圧水が供給されるようになっている。また、ノズルガン4には、その先端部にブラストタンク5内のブラスト剤を吸引するためのブラストホース10が接続されている。高圧ホース9とブラストホース10は、掘削坑7内での取り回しや撤収作業の作業性を考慮して、いずれも10mくらいの長さのものを用いると好ましい。
【0022】
ブラストタンク5は、図3に示すように、側面部11が直方体状に形成され、底面部12が下方に向かって容積が小さくなるよう四角錐状に形成されており、側面部11の4つの下端にそれぞれ脚柱13が設けられている。側面部11の内外面と底面部12の内外面には、防錆のためにシリコン溶射されている。これにより、ブラストタンク5内のブラスト剤の滑りがよくなり、ブラスト剤の吸引効果が上昇する。
【0023】
また、ブラストタンク5は、図3の矢印に示すように、その脚柱13が四角形状に形成された荷台の角部4箇所に車輪14を設けた運搬用台車15の上に載せられる。これにより、ブラストタンク5を運搬用台車15により移動させることができるので、重量のあるブラストタンク5の移動が容易となり、ブラストタンク5の現場での設置を簡単にすることができる。
【0024】
ブラストタンク5の上端部には、雨天時でも内部のブラスト剤が濡れないように、上端開口16を閉じる蓋17が装着されており、その蓋17の一部が内部のブラスト剤が見えるようにアクリル板18で形成されている。
【0025】
ブラストタンク5の底面部12の中央には、ブラスト剤を排出するためのドレン19が設けられており、ブラストタンク5の上部には、図1、図3に示すように、ブラストタンク5内のブラスト剤を吸引するブラスト吸引管20と、外部の空気をブラストタンク5の内部に取り込む空気取込管21とが設けられている。
【0026】
ブラスト吸引管20は、ブラストタンク5の上端開口16からドレン19近傍まで垂直に挿入され、蓋17に設けられた支柱22の中央に挿嵌固定されている。また、ブラスト吸引管20は、その上端部にノズルガン4に接続されたブラストホース10が接続されている。これにより、ブラストホース10は、ブラスト吸引管20を介してブラストタンク5に挿入される。また、ブラストホース10のブラスト吸引管20へのガイド部23には、スプリング24が装着されており、ブラストホース10のガイド部23の折れ曲りを防止している。
【0027】
空気取込管21は、ブラストタンク5の上端開口16から垂直に挿入され、その排出口がブラスト吸引管20の吸込口の位置に隣接するように支柱22に挿嵌固定される。これにより、空気取込管21からブラストタンク5の内部に取り込んだ空気がブラスト吸引管20に吸引されやすくなり、ブラスト剤の吸引が不連続になることによるブラストホース10の脈動が軽減される。
【0028】
ブラストタンク5に貯えるブラスト剤は、地中に埋設されたダクタイル鋳鉄管25の鋳鉄管外面26に付着している土壌などの付着物に対する除去性と、鋳鉄管外面26の鉄が腐食して鋳鉄管外面26に黒鉛が多く残存した黒鉛化腐食部分に対する除去性と、ブラスト剤のブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引安定性を考慮して最適な大きさのものを用いるようにする。
【0029】
後述する試験結果から、アルミナでは、平均粒度が20メッシュのアルミナ(♯20)と、平均粒度が60メッシュのアルミナ(♯60)との混合体積比を2:1〜1:2の割合で混合した混合アルミナ(♯20+♯60)を用い、珪砂では、その粒度が0.7〜1.2mm(新特5号A)のものを用いると好ましいことが分かった。
【0030】
次に、上記のように構成された腐食部除去装置1を使用する鋳鉄管外面26の腐食部除去方法について説明する。
【0031】
まず、図1に示すように、地中に埋設されたダクタイル鋳鉄管25に向かって、管横と管下にそれぞれ50cm程度のスペースが確保されるよう断面コ字状の掘削坑7を掘り、掘削坑7内にダクタイル鋳鉄管25を露出させる。
【0032】
次に、高圧洗浄機2の高圧ポンプからの吐出水圧を140kg/cm以上に設定して、高圧水を高圧ホース9を介してノズルガン4に供給する。このとき、ノズルガン4に供給された高圧水の水流によってブラストホース10とブラスト吸引管20に負圧が生じ、この負圧により、ブラスト剤がブラスト吸引管20とブラストホース10を介してノズルガン4に吸引され、そのブラスト剤が高圧水と一緒にノズル3から噴射される。
【0033】
そして、図2に示すように、ノズル3と鋳鉄管外面26との間を50〜100mm程度離した状態で、付着物と黒鉛化腐食部分に向けてノズルガン4を取り回していく。これにより、ノズル3から噴射したブラスト剤が、付着物と黒鉛化腐食部分に衝突して付着物と黒鉛化腐食部分の両方を鋳鉄管外面26から削り取ると同時に、ノズル3から噴射した高圧水がブラスト剤による粉塵の発生を防止する。このようにして、付着物と黒鉛化腐食部分を鋳鉄管外面26から除去する。
【0034】
ここで、上記のように、狭い掘削坑7内において鋳鉄管外面26の付着物や黒鉛化腐食部分に向けてノズルガン4を取り回していくので、ブラストホース10が捩れたり屈曲したりして、ブラスト剤のブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引が不安定になりやすいが、ノズルガン4の取り回しに応じてブラストタンク5を運搬用台車15で移動させることにより、ブラストホース10の捩れや屈曲を迅速に解消して、ブラスト剤のブラストホース10への吸引を安定させることができる。
【0035】
上記鋳鉄管外面26の腐食部除去方法は、鋳鉄管外面26の付着物と黒鉛化腐食部分に向けて、ブラスト剤と高圧水とを一緒にノズル3から噴射する一連の動作だけで、ノズル3から噴射したブラスト剤により付着物と黒鉛化腐食部分の両方を鋳鉄管外面26から削り取ることができる。そのため、従来のように、スクレーパー、ケレンハンマ、ワイヤブラシ、テストハンマなどの種々の工具を用いて、付着物と黒鉛化腐食部分を順番に除去する場合と比べて、簡単に付着物と黒鉛化腐食部分を鋳鉄管外面26から除去することができ、付着物と黒鉛化腐食部分の除去作業に要する時間を短縮することができる。
【0036】
上記実施形態では、ブラスト剤として珪砂やアルミナを用いたが、珪砂やアルミナ以外のブラスト剤を用いてもよい。この場合、ブラスト剤を水とともに水供給タンク6に混入しておき、高圧洗浄機2の高圧ポンプの吐出水圧を高め、その高圧ポンプにより、ブラスト剤と水との混合液をノズルガン4に供給して、その混合液をノズル3から噴射するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、ブラストタンク5に貯めるアルミナとして、平均粒度が20メッシュのアルミナ(♯20)と、平均粒度が60メッシュのアルミナ(♯60)との混合体積比を2:1〜1:2の割合で混合した混合アルミナ(♯20+♯60)を用いたが、ブラストタンク5に貯めるアルミナは、その粒度が46メッシュ〜80メッシュの範囲にあるものを用いてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、ブラスト吸引管20と空気取込管21は、ブラストタンク5の上端開口16からドレン19近傍まで垂直に挿入したが、図4(a)に示すように、ブラストタンク5の側面部11からドレン19近傍まで斜めに挿入してもよい。この場合、ブラスト吸引管20と空気取込管21は、図4(b)に示すように、筒状の斜め挿入治具27を介してブラストタンク5に挿入される。具体的に言うと、斜め挿入治具27は、ブラストタンク5の側面部11にボルト28で固定された四角形状の固定部材29に斜めに挿入されるように固定される。
【0039】
ここで、上述したように、付着物と黒鉛化腐食部分に向けてノズルガン4のノズル3からブラスト剤と高圧水を一緒に噴射するブラストを行ない、ブラスト剤による付着物と黒鉛化腐食部分に対する除去性と、ブラスト剤のブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引安定性とを確認するための試験について説明する。この試験の条件を表1に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
試験の結果を表2に示す。表2に示すように、平均粒度が46メッシュのアルミナ(♯46)、平均粒度が60メッシュのアルミナ(♯60)、平均粒度が80メッシュのアルミナ(♯80)のいずれにおいても、付着物と黒鉛化腐食部分の両方を鋳鉄管外面26からほぼ完全に除去することができた。なお、除去性能は、♯60が最もよく、次いで♯46、♯80の順であった。
【0043】
平均粒度が20メッシュのアルミナ(♯20)では、付着物を鋳鉄管外面26からほぼ完全に除去することができたが、黒鉛化腐食部分がやや残存した。これは、アルミナの粒度が20メッシュになると、アルミナの粒度が大きくなりすぎ、ノズル3から噴射したアルミナ(♯20)が黒鉛化腐食部分の深淵部に衝突しにくくなり、黒鉛化腐食部分の深淵部を除去することが困難となるからである。また、平均粒度が100メッシュのアルミナ(♯100)では、粒度が小さいので、黒鉛化腐食部分の深淵部に衝突しやすく深淵部の除去性が最もよくなる。そのため、黒鉛化腐食部分をほぼ完全に除去することができるが、アルミナによる付着物の削り取り作用が弱くなりすぎ、付着物を鋳鉄管外面26から除去するのが困難となった。
【0044】
一方、アルミナのブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引安定性については、粒度が大きいものほど、吸引が安定しやすく、♯20で最も良好であったが、♯46、♯60、♯80、♯100のいずれもが、ブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引が途中で途切れたり、ブラストホース10が脈動したりして吸引が不安定になった。しかし、平均粒度が20メッシュのアルミナと、平均粒度が60メッシュのアルミナとの混合体積比を2:1〜1:2の割合で混合した混合アルミナ(♯20+♯60)を用いた場合は、付着物の除去性と黒鉛化腐食部分の両方の除去性と吸引安定性が良好であり、全ての点で優れていることが分かった。これは、吸引が最も安定する♯20と、付着物と黒鉛化腐食部分の除去性が最もよい♯60とを混合することで、付着物の除去性と黒鉛化腐食部分の除去性を確保しつつ、アルミナのブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引を安定させることができるからである。
【0045】
珪砂では、その粒度が0.7〜1.2mm(新特5号A)のものを用いた場合に、付着物と黒鉛化腐食部分の両方の除去性と吸引安定性が良好であり、全ての点で優れていることが分かった。
【0046】
また、ブラスト剤のブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引安定性は、図3に示すようにブラスト吸引管20をブラストタンク5に垂直に挿入した場合と、図4に示すようにブラスト吸引管20をブラストタンク5に斜めに挿入した場合とを比較すると、ブラスト吸引管20をブラストタンク5に垂直に挿入する方が、ブラスト剤のブラストホース10とブラスト吸引管20への吸引が安定することが分かった。
【符号の説明】
【0047】
2 高圧洗浄機
4 ノズルガン
5 ブラストタンク
7 掘削坑
9 高圧ホース
10 ブラストホース
15 運搬用台車
25 ダクタイル鋳鉄管
26 鋳鉄管外面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されたダクタイル鋳鉄管(25)に向かって掘削坑(7)を掘り、その掘削坑(7)内で露出したダクタイル鋳鉄管(25)の鋳鉄管外面(26)に付着している付着物と、前記鋳鉄管外面(26)の黒鉛化腐食部分に向けて、ブラスト剤と高圧ポンプから供給される高圧水とを一緒にノズルガン(4)から噴射することにより、前記付着物と前記黒鉛化腐食部分とを前記鋳鉄管外面(26)から除去するようにした鋳鉄管外面の腐食部除去方法。
【請求項2】
前記ブラスト剤をブラストタンク(5)に貯え、そのブラストタンク(5)に前記ノズルガン(4)に接続されたブラストホース(10)を挿入し、前記高圧ポンプから高圧ホース(9)を介して前記ノズルガン(4)に供給された高圧水の水流によって前記ブラストホース(10)に生じる負圧により、前記ブラスト剤を前記ブラストホース(10)を介して前記ノズルガン(4)に吸引して、そのブラスト剤を前記高圧水と一緒に前記ノズルガン(4)から噴射するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の鋳鉄管外面の腐食部除去方法。
【請求項3】
前記ブラストタンク(5)に貯えるブラスト剤は、その粒度が46メッシュ〜80メッシュの範囲のアルミナであることを特徴とする請求項2に記載の鋳鉄管外面の腐食部除去方法。
【請求項4】
前記ブラストタンク(5)に貯えるブラスト剤は、平均粒度が20メッシュのアルミナと、平均粒度が60メッシュのアルミナとの混合体積比を2:1〜1:2の割合で混合した混合アルミナであることを特徴とする請求項2に記載の鋳鉄管外面の腐食部除去方法。
【請求項5】
前記ブラストタンク(5)に貯えるブラスト剤は、粒度が0.7〜1.2mmの範囲の珪砂であることを特徴とする請求項2に記載の鋳鉄管外面の腐食部除去方法。
【請求項6】
高圧洗浄機(2)と、その高圧洗浄機(2)の高圧ポンプから高圧ホース(9)を介して高圧水が供給されるノズルガン(4)と、そのノズルガン(4)に接続されたブラストホース(10)が上部から挿入され、内部にブラスト剤を貯えたブラストタンク(5)とを有し、そのブラストタンク(5)の下部に台車(15)を設けた、請求項1〜5のいずれか一つに記載の鋳鉄管外面の腐食部除去方法に使用する腐食部除去装置。
【請求項7】
前記ブラストホース(10)は、前記ブラストタンク(5)に垂直に挿入することを特徴とする請求項6に記載の腐食部除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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