説明

鋼帯コイルの端部位置の検出方法

【課題】簡単な構成で作業性よく、しかも確実に、鋼帯コイルの払出し側端部を検出可能な鋼帯コイルの端部位置の検出方法を提供する。
【解決手段】コイル搬送手段10により搬送されペイオフリール11のマンドレル12に装着された鋼帯コイル13の払出し側端部14を検知して、ペイオフリール11の上位置に配置されたマグネットコンベアに吸着させる鋼帯コイルの端部位置の検出方法であり、マンドレル12に装着された鋼帯コイル13を払出し方向とは逆方向に回転させながら、巻回状態の鋼帯コイル13から剥がれた払出し側端部14を、コイル搬送手段10に設けられ鋼帯コイル13とは隙間を有して配置された在荷検出用センサー16により検知させ、検知状態が未検知状態となった角度位置を基準として、鋼帯コイル13を予め設定した角度回転させ、鋼帯コイル13の払出し側端部14をマグネットコンベアに吸着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスライン入側における鋼帯コイルのハンドリングの自動化を達成するための鋼帯コイルの端部位置の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、冷延鋼板や熱延鋼板の連続処理ライン、精製ライン等のプロセスラインの入側においては、鋼帯コイルのハンドリングの自動化が行われている。
具体的には、まず、図2(A)に示すように、鋼帯コイル80を、この鋼帯コイル80の払出しを行うペイオフリールのマンドレル81に装着して、払出し方向とは逆方向に回転させ、図2(B)に示すように、鋼帯コイル80の払出し側端部82を、ペイオフリールの上方位置に配置されたマグネットコンベア83に吸着させる。そして、図2(C)に示すように、鋼帯コイル80を払出し方向に回転させることで、巻回状態の鋼帯コイル80を払出し、払出し側端部82をマグネットコンベア83の下流側に配置されたピンチロール84に挟み込むことで、鋼帯コイル80を下流側へ払出している。
【0003】
なお、鋼帯コイル80の払出し側端部82のマグネットコンベア83への吸着は、鋼帯コイル80を払出し方向とは逆方向に回転させながら、鋼帯コイル80の先端をセンサーで検出した後、払出し側端部82がマグネットコンベア83に吸着するように、更に一定角度回転させて停止することで行っている。
ここで、鋼帯コイル80の先端の検出方法としては、例えば、特許文献1に、鋼帯コイルのプロセスラインにおいて、鋼帯コイルを載置するクレードルロールとコイルオープナーの間に、レーザー光等の距離変位計を先端検出器として配置し、変位量の信号をアンプ内に取込み、アンプ内の信号処理により変位量の不連続点を検出し、その検出信号をもって先端検出信号とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−227628号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した変位量の不連続点の判定基準は、払出しを行う鋼帯コイルの径や板厚により変化するため、鋼帯コイルの種類ごとに変更する必要があり、作業性が悪い。また、全ての鋼帯コイルの板厚を、作業者が実測している訳ではないため、例えば、板厚のプロコン(プロセスコンピュータ)等で管理しているコイル情報の板厚と実際のコイル板厚との差異に伴う誤検出対策が必要となる。更に、鋼帯コイルによっては、例えば、折れや凹み、また鋼帯コイルの継ぎ目(溶接部)等が存在する場合があるため、この問題に対する誤検出対策も必要となる。
【0006】
もし、誤検出が発生すれば、図2(D)において、鋼帯コイル80の先端の検出位置がずれるため、鋼帯コイル80を払出し方向とは逆方向に一定角度回転させた際に、図2(E)に示すように、払出し側端部82がマグネットコンベア83に吸着する前に停止する。これにより、図2(F)に示すように、鋼帯コイル80を払出し方向に回転させた際に、鋼帯コイル80の払出し側端部82がピンチロール84に挟み込まれず、鋼帯コイル80を下流側へ払出すことができなくなる。
【0007】
特に、鋼帯コイルの先端の判定基準を、鋼帯コイルの板厚分の不連続点とすることで、鋼帯コイルの板厚が薄くなる(例えば、特に0.4mm以下)に伴い、不連続点と、例えば、板厚のバラツキ、折れや凹み等とを区別することが難しくなり、誤検出が発生し易い。
また、特許文献1に記載の方法を適用するに際しては、距離変位を計測可能な検出器を新たに準備する必要があり、設備コストがかかって不経済である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で作業性よく、しかも確実に、鋼帯コイルの払出し側端部を検出可能な鋼帯コイルの端部位置の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る鋼帯コイルの端部位置の検出方法は、コイル搬送手段によって搬送されてペイオフリールのマンドレルに装着された鋼帯コイルの払出し側端部を検知して、該ペイオフリールの上位置に配置されたマグネットコンベアに吸着させる鋼帯コイルの端部位置の検出方法であって、
前記マンドレルに装着された前記鋼帯コイルを払出し方向とは逆方向に回転させながら、巻回状態の前記鋼帯コイルから剥がれた該鋼帯コイルの払出し側端部を、前記コイル搬送手段に設けられ前記鋼帯コイルとは隙間を有して配置された在荷検出用センサーにより検知させ、該検知状態が未検知状態となった前記鋼帯コイルの角度位置を基準として、該鋼帯コイルを予め設定した角度回転させ、該鋼帯コイルの払出し側端部を前記マグネットコンベアに吸着させる。
【0010】
本発明に係る鋼帯コイルの端部位置の検出方法において、前記コイル搬送手段は前記鋼帯コイルを載せる載置台の昇降手段を備え、該鋼帯コイルを前記マンドレルに装着した後、前記載置台を下降させて、該載置台に設けられた前記在荷検出用センサーと前記鋼帯コイルとの隙間を形成することが好ましい。
【0011】
本発明に係る鋼帯コイルの端部位置の検出方法において、前記載置台の下降位置は、前記在荷検出用センサーが、払出し側領域を除く巻回状態の前記鋼帯コイルに対して非検知で、前記払出し側領域が巻回状態の前記鋼帯コイルから剥がれて垂れ下がった状態に対して検知となる位置に設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋼帯コイルの端部位置の検出方法は、鋼帯コイルを払出し方向とは逆方向に回転させながら、巻回状態の鋼帯コイルから剥がれた払出し側端部を在荷検出用センサーにより検知するので、鋼帯コイルの径や板厚を把握しなくても、払出し側端部の検出状態と未検出状態を明確に区別できる。これにより、払出しを行う鋼帯コイルの種類ごとに、払出し側端部の検知のための判定基準を変更する必要がなくなり、作業性が良好になる。また、例えば、板厚のバラツキ、折れや凹み等に起因する誤検出の発生頻度も低減できるため、これらに起因した誤検出対策が不要となる。
そして、払出し側端部の検知に、コイル搬送手段に設けられた在荷検出用センサーを使用するので、新たな検出器を設ける必要がなく経済的である。この在荷検出用センサーは、コイル搬送手段に鋼帯コイルが存在するか否かを検知するためのものであり、通常、コイル搬送手段に設けられている。
従って、簡単な構成で作業性よく、しかも確実に、鋼帯コイルの払出し側端部を検出できる。これにより、在荷検出用センサーによる払出し側端部の検知状態が未検知状態となった角度位置を基準として、鋼帯コイルを予め設定した角度回転させ、払出し側端部をマグネットコンベアに吸着させることで、鋼帯コイルの払出し作業を安定に実施できる。
【0013】
ここで、コイル搬送手段が鋼帯コイルを載せる載置台の昇降手段を備え、鋼帯コイルをマンドレルに装着した後、載置台を下降させて、載置台に設けられた在荷検出用センサーと鋼帯コイルとの隙間を形成する場合、鋼帯コイルの払出し側端部を検知するための新たな作業工程を行うことなく、鋼帯コイルをペイオフリールに装着する一連の作業過程で、鋼帯コイルの払出し側端部のみを在荷検出用センサーにより検知可能な状態にできる。
【0014】
また、載置台の下降位置が、在荷検出用センサーが、払出し側領域を除く巻回状態の鋼帯コイルに対して非検知で、払出し側領域が巻回状態の鋼帯コイルから剥がれて垂れ下がった状態に対して検知となる位置に設定される場合、在荷検出用センサーの検出感度に応じて、載置台の下降距離を調整できる。これにより、鋼帯コイルの払出し側端部の検出を、簡単な方法で安定に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る鋼帯コイルの端部位置の検出方法の説明図、(D)〜(F)はそれぞれ(A)〜(C)の正面図である。
【図2】(A)〜(C)はそれぞれ正常時における鋼帯コイルの払出しフローの説明図、(D)〜(F)はそれぞれ異常時における鋼帯コイルの払出しフローの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)〜(F)に示すように、本発明の一実施の形態に係る鋼帯コイルの端部位置の検出方法は、コイルカー(コイル搬送手段の一例)10によって搬送されてペイオフリール11のマンドレル12に装着された鋼帯コイル(以下、単にコイルともいう)13の払出し側端部14を検知して、ペイオフリール11の上位置に配置されたマグネットコンベアに吸着させる方法である(図2(A)〜(C)参照)。以下、詳しく説明する。
【0017】
まず、コイル13をコイルカー10の上部に設けられた載置台15に載置して、プロセスラインの入側のオフラインに設置されたペイオフリール11まで搬送する。
コイルカー10は、円筒状に巻回されたコイル13の軸心(回転中心)が水平状態となるように、コイル13を載置台15に載置するものであり、この載置台15には、コイル13が載置台15上に載置されているか否かを検出するための在荷検出用センサー(以下、単にセンサーともいう)16が設けられている。なお、このセンサー16には、例えば、誘導形や静電容量形の近接センサーを利用できる。
【0018】
また、ペイオフリール11は、モータにより回転可能な水平配置されたマンドレル12と、パルスジェネレーター(図示しない)とを有している。このパルスジェネレーター(PLG)は、マンドレル12に装着されたコイル13の回転角度に応じてパルスを発振するものである。
これにより、マンドレル12に装着されたコイル13が回転するに際し、パルスジェネレーターから発振されたパルスを、演算制御装置によりカウントすることで、コイル13の回転角度を検出できる。
【0019】
次に、図1(A)、(D)に示すように、コイル13の軸心位置を、マンドレル12の軸心位置近傍に合わせた後、コイルカー10をペイオフリール11側へ近づく方向に移動させ、マンドレル12にコイル13を装着する。なお、コイル13をマンドレル12に装着した後は、マンドレル12を拡径させて、コイル13を保持する。
そして、図1(B)、(E)に示すように、コイルカー10の昇降手段(図示しない)により載置台15を降下(下降)させることで、コイル13をマンドレル12に片持ち状態で支持させ、コイル13とセンサー16との間に隙間を形成させる。このとき、コイル13の払出し側端部14は自由状態となって、巻回状態のコイル13の表面から剥がれて垂れる。
【0020】
なお、載置台15の降下位置は、センサー16の検出可能距離に応じて、センサー16が、払出し側領域(巻回状態のコイル13から剥がれた部分)を除く巻回状態のコイル13に対して非検知で、払出し側領域が巻回状態のコイル13から剥がれて垂れ下がった状態に対して検知となる位置に設定されている。コイル13のマンドレル12への装着位置からの載置台15の降下距離は、例えば、過去の操業実績から得られる払出し側端部14の垂れ下がった長さを基に、センサー16と、払出し側領域を除く巻回された最大径のコイル13の外周との最短距離が、「(センサー16の検出可能距離)+(5〜20mm程度)」、となるように調整する。このとき、垂れ下がった長さが最も短くなるコイルを基準にしてコイルカー10の降下距離を設定することで、コイルカー10の降下距離をコイルの種類ごとに変更する必要がなくなる。
【0021】
このように、コイルカー10をコイル13の下方へ降下させた後、図1(C)、(F)に示すように、コイル13を払出し方向とは逆方向(図1(D)〜(F)では反時計回り)に回転させる。
これにより、垂れた払出し側端部14が、センサー16の検出可能距離(検出可能範囲)内に入った場合に、センサー16が検知状態となり、この払出し側端部14がセンサー16の検出可能距離内にある時間中は、センサー16による検知状態が連続的に続く。従って、センサー16による検知状態の連続時間を、コイル13の回転速度等に応じて予め設定しておくことで、例えば、ノイズ等による誤検知を除くことができる。
ここで、払出し側端部14の垂れた長さが短く、センサー16が払出し側端部14を検知しない場合は、コイル13を1又は複数回、回転させるのがよい。
【0022】
そして、コイル13の回転により、垂れた払出し側端部14が、センサー16の検出可能距離外まで移動した時に、センサー16による払出し側端部14の検知状態が未検知状態に変わる。そこで、検知状態が未検知状態となった角度位置を基準として、コイル13を予め設定した角度回転させて停止し、コイル13の払出し側端部14をマグネットコンベアに吸着させる(図2(A)〜(C)参照)。このマグネットコンベアは、磁石と、この磁石の長手方向両側に配置されたプーリと、このプーリに架け渡され、内側に位置する磁石の表面を移動する無端状のベルトとを有する従来公知のものであり、磁石を励磁することにより、コイル13をベルトを介して吸着できるものである。
【0023】
ここで、未検知状態となった角度位置からのコイル13の回転角度は、コイル13の払出し側端部14が、予めコイル13側に近づけたマグネットコンベアへの吸着に適した位置で停止するように、例えば、過去の操業実績に基づいて設定できる。この回転角度は、マンドレル12に装着されたコイル13が回転するに際し、パルスジェネレーターから発振されたパルスを、演算制御装置によりカウントすることで検出できる。
なお、コイル13の払出し側端部14のマグネットコンベアへの吸着は、コイル13の回転動作中でもよく、また回転停止と同時でも構わない。
【0024】
上記したように、コイル13の払出し側端部14をマグネットコンベアに吸着させた後は、コイル13を払出し方向(図1(D)〜(F)では時計回り)に回転させ、また、マグネットコンベアのベルトもコイル13を払出す方向に移動させ、払出し側端部14をピンチロールに向けて導いていく(図2(C)参照)。
以上の方法により、簡単な構成で作業性よく、しかも確実に、コイル13の払出し側端部14を検出でき、コイル13を下流側へ払出すことができる。また、払出し側端部14の検出は、変位計より安価な、検出と未検出の判定のみを行うことができるセンサー1台(複数台でもよい)で可能となるため、経済的である。
【0025】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の鋼帯コイルの端部位置の検出方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、コイル搬送手段としてコイルカーを使用し、このコイルカーの載置台にコイルを載置してペイオフリールまで搬送し装着した場合について説明したが、コイルをペイオフリールまで搬送し装着するものであり、しかもコイルの払出し側端部の垂れ下がった部分を検知できるセンサーが設けられていれば、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
10:コイルカー(コイル搬送手段)、11:ペイオフリール、12:マンドレル、13:鋼帯コイル、14:払出し側端部、15:載置台、16:在荷検出用センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル搬送手段によって搬送されてペイオフリールのマンドレルに装着された鋼帯コイルの払出し側端部を検知して、該ペイオフリールの上位置に配置されたマグネットコンベアに吸着させる鋼帯コイルの端部位置の検出方法であって、
前記マンドレルに装着された前記鋼帯コイルを払出し方向とは逆方向に回転させながら、巻回状態の前記鋼帯コイルから剥がれた該鋼帯コイルの払出し側端部を、前記コイル搬送手段に設けられ前記鋼帯コイルとは隙間を有して配置された在荷検出用センサーにより検知させ、該検知状態が未検知状態となった前記鋼帯コイルの角度位置を基準として、該鋼帯コイルを予め設定した角度回転させ、該鋼帯コイルの払出し側端部を前記マグネットコンベアに吸着させることを特徴とする鋼帯コイルの端部位置の検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋼帯コイルの端部位置の検出方法において、前記コイル搬送手段は前記鋼帯コイルを載せる載置台の昇降手段を備え、該鋼帯コイルを前記マンドレルに装着した後、前記載置台を下降させて、該載置台に設けられた前記在荷検出用センサーと前記鋼帯コイルとの隙間を形成することを特徴とする鋼帯コイルの端部位置の検出方法。
【請求項3】
請求項2記載の鋼帯コイルの端部位置の検出方法において、前記載置台の下降位置は、前記在荷検出用センサーが、払出し側領域を除く巻回状態の前記鋼帯コイルに対して非検知で、前記払出し側領域が巻回状態の前記鋼帯コイルから剥がれて垂れ下がった状態に対して検知となる位置に設定されていることを特徴とする鋼帯コイルの端部位置の検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−86245(P2012−86245A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234685(P2010−234685)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】