鋼材のガス圧接方法
【課題】 水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接に適用し、作業性を向上させた、鋼材のガス圧接方法を提供する。
【解決手段】
鋼材のガス圧接方法において、鋼材1,2を突き合わせ、この鋼材1,2の突合せ部3に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にてこの鋼材1,2の突合せ部3を加熱するとともにこの鋼材1,2を加圧し、この鋼材1,2の接合を行う。
【解決手段】
鋼材のガス圧接方法において、鋼材1,2を突き合わせ、この鋼材1,2の突合せ部3に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にてこの鋼材1,2の突合せ部3を加熱するとともにこの鋼材1,2を加圧し、この鋼材1,2の接合を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レールや鉄筋等の鋼材をガス圧接する際に用いられるガス圧接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス圧接方法は、鋼材を突合せ、その突合わせ部を酸素・アセチレン炎にて加熱し、アプセット工程を経て圧接を完了するという接合方法であり、鉄道用レールの接合に広く適用されている。ところが、現行のガス圧接方法で燃料ガスとして用いられているアセチレンガスは、需要が減少傾向にあることから、将来的なガス価格の高騰、あるいは製造メーカー側の採算状況如何によっては製造中止になる可能性が危惧される。また、酸素との燃焼反応に伴い炭酸ガスが発生するため、環境に与える影響が懸念される。したがって、従来のガス圧接方法を将来においても継続利用するためには、アセチレンガスに代わる代替ガスを用いたレールガス圧接方法の確立が必要である。
【0003】
このような状況に鑑み、水素ガスに炭化水素であるヘキサンを混成した水素ヘキサン混合ガスを用いるレールガス圧接方法が検討された経緯がある(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−31465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した水素ヘキサン混合ガスを用いたレールガス圧接方法では、水素ガスとヘキサンを施工現場で混成する必要があり、当該作業に手間を要するため、従来のアセチレンガスを用いた方法より作業性が劣るといった問題があった。
また、水素ガスは、燃焼速度が非常に速く、燃焼炎が安定形成し難い。すなわち、水素ガスを単体でガス圧接に用いることは困難であり、ガス圧接での適用を前提とすれば、適量の炭化水素を混成し、燃焼炎の安定化を図る必要がある。
【0006】
そこで、本発明では、水素ガスと混合してもガスボンベでの保管・運搬が可能であるエチレンガスに注目した。この水素エチレン混合ガスがレールガス圧接作業に適用できれば、水素エチレン混合ガスボンベを従来のアセチレンガスボンベに置き換えることでガス圧接作業が実施できるため、作業性が低下することはない。
本発明は、上記状況に鑑みて、水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接に適用することにより、作業性を向上させるとともに炭酸ガスの発生量を削減した、鋼材のガス圧接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鋼材のガス圧接方法において、鋼材を突き合わせ、この鋼材の突合せ部に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にてこの鋼材の突合せ部を加熱するとともにこの鋼材を加圧し、この鋼材の接合を行うことを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスは予めエチレンガスと水素ガスを混合して製造され、水素エチレン混合ガスボンベ内に封入してガス圧接施工が実施される場所まで運搬されて使用することを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔2〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスのエチレンガスの含有量を38体積%以上45体積%以下とすることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、1MPa以上14.7MPa以下とすることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔3〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、5MPa以上10MPa以下とすることことを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕から〔5〕の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材がレールであることを特徴とする。
【0010】
〔7〕上記〔1〕から〔5〕の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材が鉄筋であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接方法に適用する際、アセチレンガスを用いる従来方法と同性能の継手を炭酸ガス発生量を大幅に削減して作製できる。すなわち、水素エチレン混合ガスをアセチレンガスに代わる代替ガスとして適用できるので、作業性を損なうことなく、ガス圧接作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す鋼材のガス圧接工程の模式図である。
【図2】本発明の実施例を示すレールガス圧接装置の全体模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の鋼材のガス圧接方法は、鋼材を突き合わせ、この鋼材の突合せ部に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にてこの鋼材の突合せ部を加熱するとともにこの鋼材を加圧し、この鋼材の接合を行う。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す鋼材のガス圧接方法の模式図、図2はそのガス圧接装置の全体模式図である。
本発明の鋼材のガス圧接方法の施工手順を図1に示す。
(1)まず、図1(a)に示すように、鋼材1と2を突き合わせる。
【0015】
(2)次に、図1(b)に示すように、鋼材1と2の突合わせ部3を酸素ガスO2 とともに水素エチレン混合ガスH2 +C2 H4 を含む燃焼炎にて加熱する。
(3)次に、図1(c)に示すように、アプセット工程を施す。
(4)次に、図1(d)に示すように、鋼材の接合を完了する。
図2において、11は溶接用ガス発生部、12は酸素ボンベ、13は酸素ガスの供給管、14は酸素ガス流量調整弁、15は水素エチレン混合ガスボンベ、16は水素エチレン混合ガス流量調整弁、17は水素エチレン混合ガスの供給管、18はガス混合室、21は混合ガスの供給管、22は火炎バーナー、23は火炎バーナー22に配列される火口、24はレールである。
【0016】
本発明のガス圧接の施工条件を検討する過程で、ガス燃焼条件の選定が重要となるが、この際、燃焼炎の加熱能力および接合端面の酸化を低減する上で重要となる燃焼炎のシールド性に留意しなければならない。本発明では、これらについてレールのガス圧接に相応しいガス燃焼条件を検討した。なお、水素エチレン混合ガスは、ガス組成が水素:60%、エチレン:40%のものを適用した。表1に本発明における燃焼条件の一例を示す。
【0017】
酸素のガス流量(体積比)は130(L/min)に対して水素エチレン混合ガスのガス流量は145(L/min)である。
【0018】
【表1】
表1に示すガス流量によれば、加熱特性およびシールド性のバランスに優れた燃焼炎を得ることができる。
本発明のガス圧接方法を用いてJIS−60kg普通レールの試験継手を2体作製し、継手品質を調査した。表2に継手作製条件を示す。
【0019】
【表2】
なお、継手品質は磁粉探傷試験および静的曲げ試験により評価した。静的曲げ試験は、支点間距離1m、中央集中荷重で実施し、破断姿勢はHU、HDそれぞれ1本ずつとした。表3に磁粉探傷試験および静的曲げ試験の結果を示す。
【0020】
【表3】
表3に示すように、いずれの試験継手a,bにおいても、磁粉探傷試験で欠陥磁粉模様は観察されなかった。また、静的曲げ試験では、両継手の破断荷重、たわみ量ともJIS−60kg普通レールのガス接合部の曲げ破断基準値を上回っている。
【0021】
また、表2の継手作製条件において、JIS−60kg普通レールを接合する場合の炭酸ガス発生量を、従来のアセチレンガスを用いたガス接合の際の発生量と比較した結果を表4に示す。
【0022】
【表4】
このように、本発明の水素エチレン混合ガスを適用することにより、炭酸ガス発生量を従来のアセチレンガスを用いた方法と比べて40%程度削減できる。
次に、本発明の水素エチレン混合ガスの、エチレンと残部水素及び不可避的不純物ガスの割合について説明する。
【0023】
本発明では、エチレンの含有量を38体積%以上45体積%以下とすることにより、その水素エチレン混合ガスは圧縮ガスの状態で貯蔵、運搬が可能であるため、貯蔵及び輸送、特に集合容器や大型容器を用いた大量輸送が容易である。また、エチレンの含有量が低くなり過ぎると、燃焼時や消火時に逆火が発生する恐れがあるが、エチレンの含有量を38体積%以上とすることにより、逆火が抑制される。このように、本発明の水素エチレン混合ガスによれば、貯蔵、運搬等が容易で、かつガス溶接の加工後の仕上がり状態の高品質化に寄与することが可能になる。
【0024】
また、不可避的不純物ガスは、0.5体積%以下とする。これにより、水素エチレン混合ガスの特性が安定し、本発明の効果をより確実に得ることができる。水素エチレン混合ガスの特性を一層安定化させるためには、不可避的不純物はガスは0.1体積%以下であることが望ましい。
また、本発明の水素エチレン混合ガスは、予めエチレンガスと水素ガスを混合して製造し、容器内に封入された後、当該容器に保持された状態でガス圧接施工が実施される場所まで運搬されて使用することが望ましい。この場合、効率的な運搬を行うためには、容器内の圧力を上昇させることが望ましいが、圧力を上昇させ過ぎると、低温においてエチレンが液化し、使用時にエチレンと水素との所望の混合比を得ることが難しくなる恐れがあるので、この容器内の圧力を35℃において、1MPa以上14.7MPa以下とすることにより、このような問題の発生を抑制するとともに効率的な運搬を行うことができる。また、より効率的な運搬を行うためには、容器内の圧力を35℃において5MPa以上10MPa以下とすることがより好ましい。
【0025】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の鋼材のガス圧接方法は、水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接に適用し、作業性を向上させるとともに炭酸ガスの発生量を削減した、鋼材のガス圧接方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1,2 鋼材
3 鋼材の突合わせ部
11 溶接用ガス発生部
12 酸素ボンベ
13 酸素ガスの供給管
14 酸素ガス流量調整弁
15 水素エチレン混合ガスボンベ
16 水素エチレン混合ガス流量調整弁
17 水素エチレン混合ガスの供給管
18 ガス混合室
21 混合ガスの供給管
22 火炎バーナー
23 火炎バーナーに配列される火口
24 レール
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レールや鉄筋等の鋼材をガス圧接する際に用いられるガス圧接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス圧接方法は、鋼材を突合せ、その突合わせ部を酸素・アセチレン炎にて加熱し、アプセット工程を経て圧接を完了するという接合方法であり、鉄道用レールの接合に広く適用されている。ところが、現行のガス圧接方法で燃料ガスとして用いられているアセチレンガスは、需要が減少傾向にあることから、将来的なガス価格の高騰、あるいは製造メーカー側の採算状況如何によっては製造中止になる可能性が危惧される。また、酸素との燃焼反応に伴い炭酸ガスが発生するため、環境に与える影響が懸念される。したがって、従来のガス圧接方法を将来においても継続利用するためには、アセチレンガスに代わる代替ガスを用いたレールガス圧接方法の確立が必要である。
【0003】
このような状況に鑑み、水素ガスに炭化水素であるヘキサンを混成した水素ヘキサン混合ガスを用いるレールガス圧接方法が検討された経緯がある(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−31465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した水素ヘキサン混合ガスを用いたレールガス圧接方法では、水素ガスとヘキサンを施工現場で混成する必要があり、当該作業に手間を要するため、従来のアセチレンガスを用いた方法より作業性が劣るといった問題があった。
また、水素ガスは、燃焼速度が非常に速く、燃焼炎が安定形成し難い。すなわち、水素ガスを単体でガス圧接に用いることは困難であり、ガス圧接での適用を前提とすれば、適量の炭化水素を混成し、燃焼炎の安定化を図る必要がある。
【0006】
そこで、本発明では、水素ガスと混合してもガスボンベでの保管・運搬が可能であるエチレンガスに注目した。この水素エチレン混合ガスがレールガス圧接作業に適用できれば、水素エチレン混合ガスボンベを従来のアセチレンガスボンベに置き換えることでガス圧接作業が実施できるため、作業性が低下することはない。
本発明は、上記状況に鑑みて、水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接に適用することにより、作業性を向上させるとともに炭酸ガスの発生量を削減した、鋼材のガス圧接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鋼材のガス圧接方法において、鋼材を突き合わせ、この鋼材の突合せ部に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にてこの鋼材の突合せ部を加熱するとともにこの鋼材を加圧し、この鋼材の接合を行うことを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスは予めエチレンガスと水素ガスを混合して製造され、水素エチレン混合ガスボンベ内に封入してガス圧接施工が実施される場所まで運搬されて使用することを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔2〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスのエチレンガスの含有量を38体積%以上45体積%以下とすることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、1MPa以上14.7MPa以下とすることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔3〕記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、5MPa以上10MPa以下とすることことを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕から〔5〕の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材がレールであることを特徴とする。
【0010】
〔7〕上記〔1〕から〔5〕の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材が鉄筋であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接方法に適用する際、アセチレンガスを用いる従来方法と同性能の継手を炭酸ガス発生量を大幅に削減して作製できる。すなわち、水素エチレン混合ガスをアセチレンガスに代わる代替ガスとして適用できるので、作業性を損なうことなく、ガス圧接作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す鋼材のガス圧接工程の模式図である。
【図2】本発明の実施例を示すレールガス圧接装置の全体模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の鋼材のガス圧接方法は、鋼材を突き合わせ、この鋼材の突合せ部に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にてこの鋼材の突合せ部を加熱するとともにこの鋼材を加圧し、この鋼材の接合を行う。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す鋼材のガス圧接方法の模式図、図2はそのガス圧接装置の全体模式図である。
本発明の鋼材のガス圧接方法の施工手順を図1に示す。
(1)まず、図1(a)に示すように、鋼材1と2を突き合わせる。
【0015】
(2)次に、図1(b)に示すように、鋼材1と2の突合わせ部3を酸素ガスO2 とともに水素エチレン混合ガスH2 +C2 H4 を含む燃焼炎にて加熱する。
(3)次に、図1(c)に示すように、アプセット工程を施す。
(4)次に、図1(d)に示すように、鋼材の接合を完了する。
図2において、11は溶接用ガス発生部、12は酸素ボンベ、13は酸素ガスの供給管、14は酸素ガス流量調整弁、15は水素エチレン混合ガスボンベ、16は水素エチレン混合ガス流量調整弁、17は水素エチレン混合ガスの供給管、18はガス混合室、21は混合ガスの供給管、22は火炎バーナー、23は火炎バーナー22に配列される火口、24はレールである。
【0016】
本発明のガス圧接の施工条件を検討する過程で、ガス燃焼条件の選定が重要となるが、この際、燃焼炎の加熱能力および接合端面の酸化を低減する上で重要となる燃焼炎のシールド性に留意しなければならない。本発明では、これらについてレールのガス圧接に相応しいガス燃焼条件を検討した。なお、水素エチレン混合ガスは、ガス組成が水素:60%、エチレン:40%のものを適用した。表1に本発明における燃焼条件の一例を示す。
【0017】
酸素のガス流量(体積比)は130(L/min)に対して水素エチレン混合ガスのガス流量は145(L/min)である。
【0018】
【表1】
表1に示すガス流量によれば、加熱特性およびシールド性のバランスに優れた燃焼炎を得ることができる。
本発明のガス圧接方法を用いてJIS−60kg普通レールの試験継手を2体作製し、継手品質を調査した。表2に継手作製条件を示す。
【0019】
【表2】
なお、継手品質は磁粉探傷試験および静的曲げ試験により評価した。静的曲げ試験は、支点間距離1m、中央集中荷重で実施し、破断姿勢はHU、HDそれぞれ1本ずつとした。表3に磁粉探傷試験および静的曲げ試験の結果を示す。
【0020】
【表3】
表3に示すように、いずれの試験継手a,bにおいても、磁粉探傷試験で欠陥磁粉模様は観察されなかった。また、静的曲げ試験では、両継手の破断荷重、たわみ量ともJIS−60kg普通レールのガス接合部の曲げ破断基準値を上回っている。
【0021】
また、表2の継手作製条件において、JIS−60kg普通レールを接合する場合の炭酸ガス発生量を、従来のアセチレンガスを用いたガス接合の際の発生量と比較した結果を表4に示す。
【0022】
【表4】
このように、本発明の水素エチレン混合ガスを適用することにより、炭酸ガス発生量を従来のアセチレンガスを用いた方法と比べて40%程度削減できる。
次に、本発明の水素エチレン混合ガスの、エチレンと残部水素及び不可避的不純物ガスの割合について説明する。
【0023】
本発明では、エチレンの含有量を38体積%以上45体積%以下とすることにより、その水素エチレン混合ガスは圧縮ガスの状態で貯蔵、運搬が可能であるため、貯蔵及び輸送、特に集合容器や大型容器を用いた大量輸送が容易である。また、エチレンの含有量が低くなり過ぎると、燃焼時や消火時に逆火が発生する恐れがあるが、エチレンの含有量を38体積%以上とすることにより、逆火が抑制される。このように、本発明の水素エチレン混合ガスによれば、貯蔵、運搬等が容易で、かつガス溶接の加工後の仕上がり状態の高品質化に寄与することが可能になる。
【0024】
また、不可避的不純物ガスは、0.5体積%以下とする。これにより、水素エチレン混合ガスの特性が安定し、本発明の効果をより確実に得ることができる。水素エチレン混合ガスの特性を一層安定化させるためには、不可避的不純物はガスは0.1体積%以下であることが望ましい。
また、本発明の水素エチレン混合ガスは、予めエチレンガスと水素ガスを混合して製造し、容器内に封入された後、当該容器に保持された状態でガス圧接施工が実施される場所まで運搬されて使用することが望ましい。この場合、効率的な運搬を行うためには、容器内の圧力を上昇させることが望ましいが、圧力を上昇させ過ぎると、低温においてエチレンが液化し、使用時にエチレンと水素との所望の混合比を得ることが難しくなる恐れがあるので、この容器内の圧力を35℃において、1MPa以上14.7MPa以下とすることにより、このような問題の発生を抑制するとともに効率的な運搬を行うことができる。また、より効率的な運搬を行うためには、容器内の圧力を35℃において5MPa以上10MPa以下とすることがより好ましい。
【0025】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の鋼材のガス圧接方法は、水素エチレン混合ガスを鋼材のガス圧接に適用し、作業性を向上させるとともに炭酸ガスの発生量を削減した、鋼材のガス圧接方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1,2 鋼材
3 鋼材の突合わせ部
11 溶接用ガス発生部
12 酸素ボンベ
13 酸素ガスの供給管
14 酸素ガス流量調整弁
15 水素エチレン混合ガスボンベ
16 水素エチレン混合ガス流量調整弁
17 水素エチレン混合ガスの供給管
18 ガス混合室
21 混合ガスの供給管
22 火炎バーナー
23 火炎バーナーに配列される火口
24 レール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を突き合わせ、該鋼材の突合せ部に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にて該鋼材の突合せ部を加熱するとともに該鋼材を加圧し、該鋼材の接合を行うことを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスは予めエチレンガスと水素ガスを混合して製造され、水素エチレン混合ガスボンベ内に封入してガス圧接施工が実施される場所まで運搬されて使用することを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項3】
請求項2記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスのエチレンガスの含有量を38体積%以上45体積%以下とすることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項4】
請求項3記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、1MPa以上14.7MPa以下とすることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項5】
請求項3記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、5MPa以上10MPa以下とすることことを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材がレールであることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材が鉄筋であることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項1】
鋼材を突き合わせ、該鋼材の突合せ部に酸素ガスとともに水素エチレン混合ガスを吹きつけ、水素エチレン混合ガス炎にて該鋼材の突合せ部を加熱するとともに該鋼材を加圧し、該鋼材の接合を行うことを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスは予めエチレンガスと水素ガスを混合して製造され、水素エチレン混合ガスボンベ内に封入してガス圧接施工が実施される場所まで運搬されて使用することを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項3】
請求項2記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスのエチレンガスの含有量を38体積%以上45体積%以下とすることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項4】
請求項3記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、1MPa以上14.7MPa以下とすることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項5】
請求項3記載の鋼材のガス圧接方法において、前記水素エチレン混合ガスボンベ内の圧力を35℃において、5MPa以上10MPa以下とすることことを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材がレールであることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項記載の鋼材のガス圧接方法において、前記鋼材が鉄筋であることを特徴とする鋼材のガス圧接方法。
【図2】
【図1】
【図1】
【公開番号】特開2013−52398(P2013−52398A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190295(P2011−190295)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
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