説明

鋼材締結用金属部材

【課題】Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の接合に用いられる締結用金属部材に、現実的なめっき厚さで必要な耐蝕性を付与する方法を提供する。
【解決手段】Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の締結に用いられる金属部材であって、該金属部材の表面が純Znめっきからなる上層めっきと、Ni含有率が2.0〜5.0mass%のZn−Ni合金めっきからなる下層めっきの2層の亜鉛系めっきで被覆されており、該上層めっきのめっき厚が2μm以上、10μm以下であり該下層Zn−Ni合金めっきのめっき厚[T]が下式(1)を満たすことを特徴とする鋼材締結用金属部材。
T(μm)≧[(鋼材のZnAlめっきの片面めっき量(g/m2)×4/7−上層純Znめっき厚(μm))/2] (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の締結に用いられる建築用金属部材の耐蝕性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築に用いられる鋼材に、Zn-Al合金溶融めっき鋼材が多く用いられるようになっている。Zn-Al合金をベースとして、これに 数%以下の Mg, Si 等を添加しためっきは、純亜鉛めっきの3-4倍、あるいはそれ以上の耐蝕性を有しており、建築物の長寿命化、メンテフリーなどに寄与している。ところで、Zn-Al合金溶融めっき鋼材を建築に用いるには、ボルトナット等の金属部材による締結、或いは溶接などの方法で、鋼材を接合しなければならない。溶接の場合には、めっきが損耗した部位を補修塗装することが求められる。金属部材を用いた締結では、金属部材を何らかの方法で防食する必要がある。通常は、電気めっき、溶融めっき、塗装などの方法が採用されている。
【0003】
なお、これらの建築用の鋼材、または金属部材の耐触性は、通常は赤錆発生時間で評価されるものであり、以下すべて耐蝕性とは赤錆発生時間のことである。その評価方法は、一般に、同等種のめっきについてはJASO試験(M609−91)のようなSSTを含むサイクル試験で、ZnAlめっきとZnNiめっきのような腐食メカニズムが異なるめっきの比較では暴露試験で行われる。
【0004】
また、めっき付着量は、鋼板のめっき最小両面付着量である。金属部材のめっきは、ねじは頭部、ナットは側面の露出する部分の最小めっき厚とした。
【0005】
めっき鋼材として耐蝕性に優れる合金めっき鋼材を用いる場合、接合用の金属部材も、それに合わせて耐蝕性を向上させることが必要であることは言うまでもない。この場合、鋼材と同じ種類の高耐食めっきを用いれば、耐蝕性の改善は容易である。ただし、これには種々の問題がある。
【0006】
たとえば、大きなボルトナットの場合、通常はどぶづけの溶融Znめっきが行われている。しかし、Zn-Al合金めっきのどぶつけによるめっきは、技術的に未完成であり、多くの場合、純Znめっき−Zn-Al合金めっきの二段めっきをする必要があり、コスト的には大変不利である。従来のどぶづけの溶融Znめっきにおいて亜鉛めっき付着量を大きくすることによっても耐蝕性の改善は可能であるが、この場合は付着量の増加に伴うコストが上昇する問題がある。
【0007】
小さなボルトナットの場合には、さらに問題が大きい。小さなねじ山は、どぶ漬けめっきではめっき金属によって埋もれてしまい、ねじとしての寸法精度を確保できない。このため、ねじ山が小さなボルトナットは一般に電気Znめっき、またはダクロ処理などの特殊な無機系塗装により防食される。
【0008】
まず、ダクロ処理のような特殊な無機塗装は、焼き付け温度が高く締結材の材質に影響する、密着性が悪いという問題がある。また、ダクロ処理に関しては、6価クロムを使用していることも問題である。
【0009】
また電気めっきの場合、防食被膜の密着性は優れるが、耐蝕性を高めるために厚いめっきをするためには、めっきの厚さに比例した時間が必要であるため、生産性が極端に低下し、コストアップを招く。このため、たとえばめっき鋼材の耐蝕性を、Zn-Al合金めっき化により、仮に2倍にした場合、接合に必要な金属部材のめっき時間も2倍になり、めっきのための費用も2倍になってしまう。鋼材の耐蝕性が3倍、4倍となると、めっきに要する時間も3倍、4倍となり、対応する電気Znめっきは困難になってしまう。
【0010】
金属部材のめっきを高耐蝕合金電気めっきとすることは可能であるが、現在、電気めっきで高耐食合金めっきとして実用化されている、Zn-7〜16%Ni合金めっきは、Znめっき、あるいは、Zn-Al合金めっきと接触させた場合、それらのめっきとの電位差が原因で異種金属接触腐食を生じるため、Znめっき鋼材、あるいは、Zn-Al合金めっき鋼材の接合には使えないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の接合に用いられる締結用金属部材に、現実的なめっき厚さで必要な耐蝕性を付与する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、高ニッケル合金めっきは締結用金属部材のめっきには不適であると考えられていた。
【0013】
発明者らは、このような問題点を解決する防食皮膜について検討した。まず、高ニッケル合金めっきされた金属部材をZnAl合金めっき鋼材に接合し、屋外暴露、SST、JASO、その他の乾湿繰り返し等の腐食試験を行った結果、通常の屋外暴露では明らかな異種金損接触腐食が確認できるものの、腐食試験の条件により異種金損接触腐食が抑制されることを確認した。
【0014】
めっきの腐食生成物が蓄積する場合には、この腐食生成物が腐食電流を阻害し、マクロ電池の形成が抑制され、異種金属接触腐食が抑制される。また、鋼材に付着する水の電気伝導度が約100μS/cm以上(NaCl濃度でおよそ60ppm以上)の条件で異種金属接触腐食は発生しており、付着する水の伝導度がそれよりも低い場合にはマクロ電池の形成が抑制され、異種金属接触腐食が抑制される。以上の結果から、(1)生成しためっきの腐食生成物がそのまま蓄積する、(2)潮風が直接当たらないため塩害が生じにくく、たとえ結露しても結露水の電気伝導度は極めて小さい、という2つの条件を満たす環境であれば、[高ニッケル合金めっき金属部材/ZnAl合金めっき鋼材]の組み合わせにおいても異種金属接触腐食の発生は認められず、事実使用上はほとんど問題がないことが分かった。
【0015】
屋内環境であれば、多くの場合にこの条件に当てはまることは明らかである。特に近年の高気密・高断熱の個人住宅、集合住宅、または24時間エアコンが作動している公共施設、あるいは交代で仕事をしている24時間稼働の屋内の職場などでは、結露はほとんど生じない。このため、このような構造物においては異種金属接触腐食が問題になることは考えられないため、高ニッケル合金めっきを施した金属部材を使用することは原理的には問題がないことがわかった。
【0016】
しかし、現実には様々な要因から、腐食が進む可能性も否定できない。とくに、長期間には埃の堆積、雨漏りなど想定が難しい環境となって腐食が進むことが考えられる。また、たとえばエアコンのダクトの近傍など、室内に限定しても結露しやすい場所は存在するため、このような場所では、異種金属接触腐食が生じやすいことは否定できない。また、多方面での長年の使用実績がある純亜鉛めっきに比べて、Zn-Al合金溶融めっきは、耐蝕性に優れることは認められているが、その腐食・防食のメカニズムは亜鉛めっきに比べて複雑であり、必ずしも明らかになっていない未知の部分も多い。また長期使用の実績も少ない。よって、屋内環境でも、[高ニッケル合金めっき金属部材/ZnAl合金めっき鋼材]の組み合わせは、リスクが大きいと考えられる。このため、[高ニッケル合金めっき金属部材/ZnAl合金めっき鋼材]の組み合わせで、さらに腐食が進みにくい改良が必要である。
このため、1)異種金属接触腐食が生じない程度までめっき中のNi%を低下させる、2)合金電気めっきと合金溶融めっきが直接接触しないように、めっきを、Zn−低Ni%めっき(内層)/純Znめっき(外層)の2層構造とすることで、屋内環境でZn-Al合金溶融めっき鋼材の締結に使用する金属部材のめっきを、商業生産が可能な現実的なめっき厚さに制限することができるようにし、本発明を完成したものである。
【0017】
即ち、本発明は、以下のとおりである。

(1)Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の締結に用いられる金属部材であって、該金属部材の表面が純Znからなる上層めっきと、Ni含有率が3.0〜5.0質量%のZn−Ni合金からなる下層めっきの2層の亜鉛系めっきで被覆されており、前記上層めっきのめっき厚が4μm以上、10μm以下であり、前記下層めっき厚[T]が下記(式1)を満たすことを特徴とする鋼材締結用金属部材。
T(μm)≧[(鋼材のZn−Al系合金溶融めっきの片面めっき量(g/m2)×4/7−上層純Znめっき厚(μm))/2] (式1)
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高耐食Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の接合に用いられる建築用金属部材のめっきを薄くすることができるため、通常のめっき処理によって建築用金属部材の防食を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
まず下層めっきであるZnNi合金めっきについて述べる。
【0021】
工業的に成立する厚さまでめっき厚を低減するのが目的であるため、純亜鉛めっきよりも耐食性にすぐれることが要求される。また、建材の場合には、低コストであることも必要である。亜鉛系の高耐食めっきとしては、Zn-Ni合金めっき、Zn-Co合金めっき、Zn-Fe合金めっきが考えられる。ただし、コストの点から、事実上はZn-Ni合金めっきに限定される。めっき組成としては、Zn-Ni合金めっきは、現在は 8%〜15%の種々の範囲で工業的に行われているが、このNi%では、耐食性が高く薄めっき化が可能になる反面、Zn-Al合金溶融めっきと異種金属接触腐食を起こす恐れが高いため、使用にはリスクを伴う。
【0022】
Zn-Al系合金溶融めっきの厚さは、片面40-150g/m2 程度のものが用いられている。Zn-Al系合金溶融めっきが純Znめっきの4倍の耐蝕性を有するとすれば、純亜鉛めっきとしては最大で600g/m2、約76μm に相当する。これが半分の厚さであれば、電気めっきでも現実的な数字になるため、ZnNi合金めっきは、純Znめっきの2倍以上の耐蝕性があればよい。このため、バレルめっき、ラック(ひっかけ)めっきで種々の形状の金物にZnNi合金めっきを行って、0.5%塩水噴霧を含むサイクル試験によって耐蝕性を調査した。この場合の指標となるのは、前述のように、赤錆発生までの時間(サイクル数)である。その結果被めっき物の形状によって、同じNi%でも耐蝕性が異なることが分かった。純Znめっきの2倍の耐蝕性を得るのに必要なNi%は、板、あるいは両端にねじを切った棒(ロッド)のような単純な形状の場合には約1.0%、鍋ねじの場合には約1.5%、皿頭ねじのような角をもち凹凸が多い複雑な形状では、約2.0%であった。このため、現実の製造においては、2.0%以上であれば、被めっき物の形状に関係なく純Znめっきの約2倍の耐蝕性が得られる。より耐食性を得るためには、3.0%以上とすることが好ましい。
【0023】
ZnNi合金めっきは、一般的にNi%が20%以下の範囲であれば、Ni%が大きいほど耐蝕性は良好である。このため、下層のNi%を大きくするほど必要なめっき厚は小さくなる。しかし、Ni%を必要以上に高くすることは、コストアップとともに異種金属接触腐食を生じる可能性がでてくる。このため、実際のめっき処理にあたっては、少なくとも大量生産の場合には、各々の被めっき物について、めっきの耐蝕性とNi%の関係を把握してめっき条件を設定することが望ましい。ここでは、最大Ni%は5%とする。実験によれば、平板のめっきではNi%が5%超えると、電位が貴なZnNi金属間化合物が生成しやすくなることが、X線回折より明らかになったためである。
【0024】
次に、上層めっきである純Znめっきについて述べる。上層の純亜鉛めっきの役割は二つある。まず、Zn-Al合金溶融めっきと、Zn-Al合金溶融めっきよりも電位が貴である下層のZnNi合金めっきが直接接触しないようにして、異種金属接触腐食を防止することである。
【0025】
また、第二の役割は、化成処理の安定化である。低Ni%のZn-Ni合金めっきは、特定の金属間化合物を形成しない、熱力学的には不安定な組成であるため、めっきの組成も必ずしも均一にはならない。このため、ユニクロ処理などの、めっきと反応する化成処理をする場合に、反応が不均一となり、耐蝕性(耐白錆性)・表面外観などの不均一の原因になることがある。このため、合金めっきの表面を純Znめっきで均一に覆うことにより、処理・性能が安定しており、実績もある、純亜鉛めっき用の化成処理を適用することができる。
【0026】
またこれにより、種々の金具毎にNi%が異なる場合であっても外観が変化することもなく、一般的な純亜鉛めっきした材料が混在する場合でも同一の表面外観を得ることができ、外観の統一感が維持できる。また、品質管理面でも有利である。
【0027】
このため、めっきは、被めっき物が完全に覆われて、下層めっきが露出しない厚さであればよい。ただし、鋼材の締結には、ドリルねじを使用する場合もあるため、この場合でも下層めっきが露出しない厚さであることが必要である。めっきの付きまわりは、被めっき物の形状、まためっき浴の種類などのさまざまな要因によって異なる。このため、各部材によって最もめっきがつきにくい部位のめっき厚が、1μm以上あればよい。 現実には、例えばバレルめっきなどめっきのばらつきが生じやい電気めっき方法での製造を慮慮して、めっき厚は最低2μm以上とする。
【0028】
上層めっきの厚さは2μm以上であれば、機能面からはその上限はないが、めっきを薄くするという本発明の本来目的からはずれることになる。また、製造工程、あるいはコストの問題も生じる。本技術の対象となる部材はバレルめっき法でめっきされる可能性があるが、小ねじ等のめっき厚は8μmが基準のものが多いため、同じ設備でめっき処理する場合にはその設備の設定上めっき厚は8μmが基準となる。ただし、めっきの品質のばらつきがバレルめっきでは生じやすいことを考慮し、最大厚さは10μmとする。
【0029】
上層めっきの厚さはこのように、2μm以上10μm以下である。さらに、以下に述べるめっきの合計厚さ、化成処理によって上層めっきが若干溶解する可能性を考慮すれば、3μm以上8μm以下であることが望ましい。
【0030】
めっきの厚さとしては、Zn-Al系合金溶融めっきは、一般に片面で最低40g/m2程度であり、これは、耐食性では純Znめっきの約160g/m2に相当する。上層Znめっきは最大10μmで、これは約70g/m2であるため、この場合はZnNiめっきは最低で純Znめっき90g/m2相当の耐食性が必要であり、ZnNiめっきの耐食性が純Znめっきの2倍であることから、45g/m2が必要めっき量である。これは、約7μmであり、これが下層めっきの最低厚さとなる。これ以下では、ZnAl高耐食合金めっきの締結金具としては耐食性が不足する。なお、必要な最低ZnNiめっき厚は、
[(鋼材のZn−Al系合金溶融めっきの片面めっき量(g/m2)×4/7−上層純Znめっき厚(μm))/2 μm]
であらわされる。
【0031】
ここで、4/7の分子はZn−Al系合金溶融めっきの耐食性を純Znめっきの4倍とした係数、分母は付着量を純Znめっきの厚さに換算するための係数(純Znの密度)であり、1/2は、ZnNiめっきの耐食性を純Znめっきの2倍としたための係数である。
【0032】
また、製造工程、コスト等の観点から、めっき層はなるべく薄いほうが好ましい。 めっきの方法としては、電気めっき方法であれば、ひっかけめっき(ラックめっき)、バレルめっきなど方法は問わない。めっき浴としては、Zn-Niめっき、純Znめっきのバレルめっき方法は、酸性浴、アルカリ性浴等の各種めっき浴で行えばよい。 なお、亜鉛系のめっきの表面は活性が高く、白錆を生じやすいため、化成処理を施す事が必要であることは上述のとおりである。化成処理の種類としては、純亜鉛めっき用の一般的なユニクロメート、グリーンクロメート、有色クロメート、あるいは近年開発されている非クロム系の化成処理を行えばよい。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
M8x50の鍋ねじに、Zn-Ni合金めっきを行った後、純Znめっきを行った。めっきは、市販のアンモニア性の塩化物系のZn-Niめっき浴とZnめっき浴を用いて、バレルめっきにより行った。めっき厚は、ねじ頭部の側面で測定した。同じ組成・厚さのめっきを、バレルめっき法により、M8の座金・ナットに行った。接合するめっき鋼材としては、化成処理を行っていないZn-11%Al-3%Mg-0.2%Siめっき鋼板(板厚:1.6mmm, 片面めっき付着量60g/m2)を用いた。比較材として、同一厚さのZn-9%Ni合金めっき、4倍厚さの純亜鉛めっきしたねじ・座金・ナットと鋼板等を用いた。
【0034】
金具単独の耐食性は、鍋ねじを座金・ナットを用いて樹脂板に固定し、サイクル腐食試験を行った。サイクルは、「0.5%SST(35℃)2時間 → 乾燥2時間(湿度30%, 60℃) → 湿潤2時間(湿度95%,50℃)」を1サイクルとし、ねじ頭部の赤錆発生までのサイクル数で評価した。また、上述のめっき鋼板に座金とナットを使ってねじを取り付け、2年間の屋外暴露試験を行った。ただし、試験時間の短縮のため、0.5%NaCl水溶液のミストを4時間/day散布した。暴露試験の評価は、ねじだけでなく、ねじと鋼材との接合部を含めて観察した。
【0035】
ねじと鋼材を組み合わせた状態の試験方法としては、ねじを接合した鋼板を水平に設置し、気温約30℃の室内で、ミストノズルによる蒸留水の散布(2分間)/送風乾燥(28分間)を繰り返す乾湿繰返腐食試験を5000サイクル行った。めっき鋼板の水分付着量は、8~16g/m2である。 試験終了後、鋼板を表裏ともねじ周囲の3cmx3cmをのこしてテープシールし、 この(ねじ+めっき鋼板9cm2x表裏)の腐食生成物を、重クロム酸アンモニウム添加アンモニア水溶液(12.5%NH3+(NH4)2Cr2O7 2mass%) で溶解し、溶液を分析してめっき腐食量(Zn+Al溶解量)を算出した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1,2の結果から、本発明例が、純亜鉛めっき20μmと比べて薄いめっきで同等以上の耐食性を有するにことが明らかである。実施例では、耐食性試験の評価のために、構造材であるZnAl合金溶融めっき鋼板は、めっき付着量が片面40g/m2と小さいものを選んだ。このめっき付着量が、100g/m2になれば、ねじ、ナット、座金が鋼材と同等の耐食性を維持するために維持するために必要なめっき厚も大きくなり、純Znめっきでは60μmになるため、電気めっきとしては商業的には成立困難である。しかし、本発明であれば、薄いめっき厚で鋼材と同等の耐食性を維持できる。鋼材のめっきが厚く耐食性に優れる場合には相当する純Znめっきの1/2程度のめっき厚で、同等の耐食性が得られるため、電気めっきによる製造が可能である。
(実施例2)
表2と同様のめっきをした4.8x19の平頭ドリルねじに、Zn−55%Al−1.6%Siめっき鋼板 (板厚:1.6mmm, 片面めっき付着量45g/m2)を用いて、実施例1と同様に暴露試験と乾湿繰り返し腐食試験を行った。
【0039】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn-Al系合金溶融めっき鋼材の締結に用いられる金属部材であって、該金属部材の表面が純Znからなる上層めっきと、Ni含有率が2.0〜5.0質量%のZn−Ni合金からなる下層めっきの2層の亜鉛系めっきで被覆されており、前記上層めっきのめっき厚が2μm以上、10μm以下であり、前記下層めっきのめっき厚[T]が下記(式1)を満たすことを特徴とする鋼材締結用金属部材。
T(μm)≧[(鋼材のZn−Al系合金溶融めっきの片面めっき量(g/m2)×4/7−上層純Znめっき厚(μm))/2] (式1)

【公開番号】特開2013−104083(P2013−104083A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247781(P2011−247781)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】