説明

鋼板の製造方法

【課題】鋼板の圧延工程及び圧延された鋼板に付着する圧延油を、アルカリ洗浄液を用いて洗浄する工程を有する鋼板の製造方法であって、高速ラインにより前記洗浄を行う場合において、良好な洗浄性を保持することができる、鋼板の製造方法を提供すること。
【解決手段】前記アルカリ洗浄液として、アルカリ剤(A)、カルボン酸化合物(B−1)及び水を含有し、更に圧延油に含まれる脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩を1.5〜2.5重量%含有するものを用いて、鋼板の洗浄を前記アルカリ洗浄液への連続接触時間が1.0〜1.8秒間の範囲で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延された鋼板の製造方法に関する。本発明の製造方法は、製鉄所等において圧延された、鉄、アルミニウム、銅などからなる鋼板(鋼帯)をアルカリ洗浄液中で連続洗浄する工程において好適に適用される。
【背景技術】
【0002】
鋼板表面のアルカリ洗浄は、酸洗浄と共にメッキ、塗装等の表面処理を行う前処理として必要であり、鋼板の良否を決定づける非常に大きな因子である。鋼板表面に付着している汚れとしては、冷間圧延時に付着する圧延油、防錆油などの油汚れや、鉄粉等の固体汚れ等が挙げられる。
【0003】
アルカリ洗浄に用いられるアルカリ洗浄剤としては、特定のカルボン酸又はその塩を含有する洗浄剤(特許文献1及び2)や、特定のポリオキシエチレンアミノエーテルを含有する洗浄剤(特許文献3)、あるいは特定のアルコールを含有する洗浄剤(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−320962号公報
【特許文献2】特開平1−301799号公報
【特許文献3】特開2001−316693号公報
【特許文献4】特開2007−177265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の世界的競争が激しくなるなか、鋼板の製造においても生産性の向上が急務であり、鋼板の製造における、アルカリ洗浄剤を用いた鋼板の洗浄工程では高速洗浄が行われている。前記鋼板の洗浄工程では、前記各種の鋼板用のアルカリ洗浄剤が知られているが、高速洗浄を行った場合には洗浄時間が短くなるため、前記アルカリ洗浄剤を用いたとしても、十分な洗浄性が得られていない。
【0006】
また鋼板の連続生産ラインにおいて、圧延鋼板を洗浄浴中のアルカリ洗浄液に接触させることにより汚れを除去する場合には、アルカリ洗浄液中に圧延鋼板に付着した油分等の汚れが蓄積されて洗浄性が低下する。そのため、洗浄浴のアルカリ洗浄液の交換は頻繁に行う必要があった。特に、高速ラインで圧延鋼板の洗浄を行った場合には、一般的な速度のラインで洗浄を行った場合に比較してアルカリ洗浄液に蓄積する汚れの量が多くなる。この汚れは、アルカリ洗浄液中において、アルカリ剤である水酸化ナトリウム等と反応することによって脂肪酸石鹸を生じる。この脂肪酸石鹸の濃度が高くなると発泡が多くなって操業ができなくなるため、アルカリ洗浄液を交換して脂肪酸石鹸の濃度を低下させなければならなかった。このように、アルカリ洗浄液により高速洗浄を行った場合には洗浄性に加えて抑泡性が求められるが、アルカリ洗浄液による高速洗浄での洗浄性を高くしようとすると抑泡性が劣るため、高速洗浄において洗浄性と抑泡性の両立は困難であった。
【0007】
本発明は、鋼板の圧延工程及び圧延された鋼板に付着する圧延油を、アルカリ洗浄液を用いて洗浄する工程を有する鋼板の製造方法であって、高速ラインにより前記洗浄を行う場合において、良好な洗浄性を保持しながら、抑泡性を満足することができる、前記鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
鋼板を脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む圧延油の存在下で圧延する工程(1)と、前記工程(1)で得られた圧延された鋼板を洗浄浴中においてアルカリ洗浄液に接触させることにより、前記圧延された鋼板に付着する圧延油を洗浄する工程(2)を含む、鋼板の製造方法であって、
前記洗浄工程(2)における圧延された鋼板の前記アルカリ洗浄液への連続接触時間が、1.0〜1.8秒間であり、かつ、
前記アルカリ洗浄液が、
アルカリ剤(A)、
一般式(1):RCOOM (1)
(式中、Rは全炭素数が9〜24である分岐鎖脂肪族炭化水素基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素数1〜4の脂肪族アンモニウム、アンモニア、又はアルカノールアンモニウムを示す。)で表されるカルボン酸化合物(B−1)及び水を含有し、かつ、前記工程(1)で用いた脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルに由来する塩を1.5〜2.5重量%含有する、鋼板の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鋼板の製造方法によれば、圧延鋼板のアルカリ洗浄液との接触時間を前記範囲に制御してライン速度を高速化した場合においても、アルカリ洗浄液が圧延油に由来する塩を前記所定量有するように制御することで、良好な洗浄性を保持しながら、抑泡性を満足することができ、生産性よく鋼板を製造することができる。
【0010】
従来は、アルカリ洗浄液中の圧延油に由来する塩の含有量が多くなった場合には、アルカリ洗浄液を交換することが常識とされていたが、本発明では、従来のアルカリ洗浄液を交換する時期から、高速洗浄における良好な洗浄性と抑泡性をバランスよく満足することできる。そのため、本発明の鋼板の製造方法によれば、ライン速度の高速化により、鋼板を生産性よく製造することができる他、アルカリ洗浄液中の脂肪酸石鹸の濃度が増加しても発泡することなく操業することができるため、アルカリ洗浄液の寿命(操業における使用期間)をロングライフ化することができ、アルカリ洗浄液の交換頻度を少なくすることができる点でも、生産性よく鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の抑泡性試験に係る試験の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の鋼板の製造方法は、鋼板を脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む圧延油の存在下で圧延する工程(1)と、圧延鋼板に付着する圧延油を、洗浄浴中においてアルカリ洗浄液に接触させることにより洗浄する工程(2)を含む。
【0013】
鋼板を圧延油の存在下で圧延する工程(1)は、冷間圧延、熱間圧延のいずれの圧延工程であってもよいが、より清浄度が要求される冷間圧延への適用が好ましい。圧延工程は、従来より行われている方法を採用できる。例えば、冷間圧延では、冷間圧延機により鋼板を圧延する。
【0014】
なお、鋼板の圧延工程(1)における圧延油供給システムとしては、大量の圧延油エマルションを鋼板とロールへ供給し、使用後の圧延油エマルションを循環使用し鉄摩耗粉を除去しながら長期間使用する循環式圧延油供給システムと少量の圧延油エマルションを圧延鋼板に供給するとともに大量の水をロールに供給し、使用後の圧延油エマルションを循環使用せず排水として処理する直接式圧延油供給システムの2方式がある。本発明の鋼板の製造方法における圧延工程(1)は、いずれの方式も採用できるが、より清浄度が要求される循環式圧延油供給システムを採用する場合に好適である。特に循環使用方式のタンデム冷間圧延機を用いる場合に好適である。
【0015】
前記圧延工程(1)に用いられる圧延油は、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む。 圧延油としては、例えば、パーム油系圧延油、牛脂系圧延油、合成エステル系圧延油、鉱物油系圧延油等の鋼板の圧延工程に適用される各種のものが用いられる。
【0016】
次いで、圧延工程(1)が施され、圧延油が付着する圧延鋼板にアルカリ洗浄液により洗浄する工程(2)を施す。以下、本発明のアルカリ洗浄液に含まれる各成分について説明する。
【0017】
前記洗浄工程(2)では、前記アルカリ洗浄液を含有する洗浄浴中において、圧延鋼板をアルカリ洗浄液に接触させることにより洗浄を行う。前記洗浄工程(2)における圧延された鋼板の前記アルカリ洗浄液への連続接触時間が、1.0〜1.8秒間であり、当該連続接触時間は、実機ラインスピードが800〜1200m/分の高速洗浄に相当する。前記連続接触時間が、1.1〜1.8秒間であるのが好ましく、1.2〜1.8秒間であるのがより好ましい。なお、前記連続接触時間が、2.0〜10.0秒間であれば、実機ラインスピードが100〜600m/分の中速〜低速洗浄に相当する。
【0018】
[アルカリ剤(A)]
本発明において用いられるアルカリ剤(A)は、アルカリ洗浄液としての油汚れの除去性を確保し洗浄性を高める観点から、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。これらは、単一又は2種以上の組み合わせで用いられる。アルカリ洗浄液の油汚れの除去性を確保し洗浄性を高める観点から、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムであり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。アルカリ剤(A)の含有量は、アルカリ洗浄液中、2.0〜10.0重量%であることが好ましく、2.5〜8.0重量%であることがより好ましく、2.5〜6.0重量%であることが更に好ましい。
【0019】
[カルボン酸化合物(B−1)]
本発明のアルカリ洗浄液には、洗浄性を向上させる観点から、
一般式(1):RCOOM (1)
(式中、Rは全炭素数が9〜24である分岐鎖脂肪族炭化水素基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素数1〜4の脂肪族アンモニウム、アンモニア、又はアルカノールアンモニウムを示す。)で表されるカルボン酸化合物(B−1)が含まれる。本発明のアルカリ洗浄液中において、カルボン酸化合物(B−1)のカルボキシル基は、電離していても電離していなくてもよい。また、本発明のアルカリ洗浄液を調製する際には、酸の形態で配合してもよいし、塩の形態で配合してもよい。なお、本発明において、カルボン酸化合物(B−1)を塩の形態で配合する場合、カルボン酸化合物(B−1)の重量は、カルボン酸イオンのカウンターイオンを水素に置き換えた化合物の重量を指すものとする。
【0020】
前記一般式(1)で表わされるカルボン酸化合物(B−1)中、Rで示される分岐脂肪族炭化水素基としては、全炭素数が9〜24であり、炭素数1〜14の分岐鎖を有するアルキル基またはアルケニル基が好ましく、α位にアルキル基を有する分岐鎖脂肪酸がより好ましい。炭素数1〜14の分岐鎖を有し、全炭素数が8〜24のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。かかるカルボン酸化合物の例としては、例えば2,3−ジメチルノナン酸、4,4−ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2−メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、4,10−ジメチルドデカン酸、2−メチル−2−ドデセン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソパルミチン酸、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソステアリン酸、イソドコサン酸及びそれらの前記塩(以後、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、炭素数1〜4の脂肪族アンモニウム塩、アンモニア塩、又はアルカノールアンモニウム塩をあらわす。)が挙げられる。中でも、抑泡性を向上させる観点から、Rが炭素数1〜12の分岐鎖を有し、全炭素数が16〜20である分岐度(分岐しているアルキル基の数)7〜9の分岐脂肪族炭化水素基であるカルボン酸化合物が好ましく、その具体例としては、2−1’−メチル−3’,3’−ジメチルブチル−5−メチル−7,7−ジメチルオクタン酸、2−1’,1’,3’,3−テトラメチルブチル−3−メチル−5,5−ジメチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0021】
前記一般式(1)で表わされるカルボン酸化合物(B−1)としては、下記式(B1):
【化1】

で表わされるカルボン酸化合物が好ましい。
【0022】
前記カルボン酸化合物(B−1)又はそれらの前記塩は、例えば、アルデヒドをアルドール縮合することによって得られるアルコールをオキソ法によって酸化し、次いで必要により塩とすることにより製造できるが、市販のものを使用することもでき、その例としては、日産化学工業社製のイソステアリン酸が挙げられる。
【0023】
前記カルボン酸化合物(B−1)の塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチレントリアミン等の炭素数1〜4の脂肪族アミンとの塩;アンモニアとの塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の炭素数2〜10のアルカノールアミンとの塩などが挙げられる。カルボン酸化合物(B−1)の含有量は、アルカリ洗浄液中、洗浄性向上の観点から、0.05〜3.0重量%であることが好ましく、0.1〜2.7重量%であることがより好ましく、0.1〜2.5重量%であることが更に好ましい。
【0024】
[アルコール(B−2)]
本発明のアルカリ洗浄液には、抑泡性を向上させる観点から、
一般式(2):ROH (2)
(式中、Rは全炭素数が9〜24である分岐鎖脂肪族炭化水素基を示す。)で表されるアルコール(B−2)を含有することができる。洗浄性向上の観点からは、アルコール(B−2)は含まないのが好ましい。
【0025】
前記一般式(2)で表わされるアルコール(B−2)中、Rで示される分岐脂肪族炭化水素基としては、全炭素数が8〜24であり、炭素数1〜14の分岐鎖を有するアルキル基またはアルケニル基が好ましい。中でも、Rが炭素数1〜12の分岐鎖を有し、全炭素数が16〜20である分岐度(アルキル基が分岐している数)が7〜9の分岐脂肪族炭化水素基であるアルコールが好ましい。
【0026】
前記一般式(2)で表わされるアルコール(B−2)としては、下記式(B2):
【化2】

で表わされるアルコールが好ましい。
【0027】
前記アルコール(B−2)は、例えば、アルデヒドをアルドール縮合することにより製造できるが、市販のものを使用することもでき、その例としては、日産化学工業社製のファインオキソコール180等のイソステアリルアルコールが挙げられる。アルコール(B−2)の含有量は、アルカリ洗浄液中、抑泡性の観点から、 0.01〜2.3重量%であることが好ましく、 0.03〜2.1重量%であることがより好ましく、 0.05〜1.9重量%であることが更に好ましい。
【0028】
カルボン酸化合物(B−1)とアルコール(B−2)の合計含有量は、洗浄性及び抑泡性を向上させる観点から、使用時(洗浄時)において、アルカリ洗浄液組成物中、0.05〜2.7重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%であることがより好ましく、0.1〜2.4重量%であることが更に好ましい。
【0029】
本発明のアルカリ洗浄液において、カルボン酸化合物(B−1)とアルコール(B−2)の合計含有量は、アルカリ洗浄液の高速ラインでの洗浄性及び抑泡性の両立を達成する観点から、アルカリ剤(A)100重量部に対して、好ましくは1.1〜60.0重量部、より好ましくは2.2〜56.0重量部、更に好ましくは2.2〜52.0重量部である。
【0030】
本発明のアルカリ洗浄液においては、高速ラインでの洗浄性及び抑泡性の両立を達成する観点から、カルボン酸化合物(B−1)とアルコール(B−2)との重量比{(B−1)/(B−2)}が、98/2〜25/75であり、98/2〜50/50であることが好ましく、98/2〜70/30であることがより好ましく、98/2〜80/10であることが更に好ましく、98/2〜85/15であることが更により好ましい。
【0031】
[キレート剤(C)]
本発明のアルカリ洗浄液には、キレート剤(C)が更に含有されていてもよい。キレート剤(C)は汚れ中の金属原子と結合してこれを除去することにより洗浄効果を高めると共に、本発明のアルカリ洗浄液中の各剤の分散性を向上できると考えられる。キレート剤(C)としては、例えば、グリシン、ニトリロ三酢酸、アスパラギン酸、ジヒドロキシエチレングリシン、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二酢酸、イミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ノルロイシンアミノ酢酸等のアルカリ金属塩若しくは低級アミン塩などのアミノカルボン酸類や、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、粘液酸等のアルカリ金属塩若しくは低級アミン塩などのオキシカルボン酸型キレートビルダー等が挙げられる。これらは、単一又は2種以上の組み合わせで用いられる。これらのうち、洗浄性を向上させる観点から、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、アスパラギン酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等のアルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のキレート剤が好ましく、前記群に含まれるキレート剤を2種以上使用することがより好ましく、グルコン酸とエチレンジアミン四酢酸の組み合わせが更に好ましい。
【0032】
キレート剤(C)の含有量は、アルカリ洗浄液の洗浄性及び分散安定性を向上させる観点から、使用時(洗浄時)において、アルカリ洗浄液中、0.01〜2重量%であることが好ましく、0.01〜1重量%であることがより好ましく、0.05〜1重量%であることが更に好ましい。
【0033】
[非イオン界面活性剤(D)]
本発明のアルカリ洗浄液には、洗浄性を向上させる観点から、非イオン界面活性剤(D)が更に含有されていてもよい。非イオン界面活性剤(D)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルなどのポリオキシアルキレンエーテル系非イオン界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノ(ジ)エステル等のエステル系非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、単一又は2種以上の組み合わせで用いられる。
【0034】
なかでも、非イオン界面活性剤(D)としては、洗浄性を向上させる観点から、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(D−1)が好ましい。
(R)CH−O−{(EO)x1/(PO)y1}(EO)z1−H (3)
(一般式(3)において、R、Rはそれぞれ炭素数1〜14の直鎖アルキル基を示し、RとRの炭素数の和が9〜15であり、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、x1、z1はオキシエチレン基の平均付加モル数、y1はオキシプロピレン基の平均付加モル数であり、かつ、x1、y1、z1は、4≦x1≦7、1≦y1≦3、4≦z1≦7、7≦(x1+z1)≦14を満たす数である。{}内のPOとEOはランダム配列、ブロック配列のいずれでもよい。)
【0035】
前記一般式(3)において、RとRの炭素数は、同じであっても異なっていてもよいが、洗浄性を向上させる観点から、同じであることが好ましい。RとRの炭素数は、好ましくはそれぞれ2〜12であり、より好ましくは5〜7である。また、RとRの炭素数の和は、好ましくは10〜14であり、より好ましくは12〜14である。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(D−1)を得る際に用いられるエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加する前の原料の具体例として、日本触媒化学工業社製の商品名ソフタノール30、ソフタノール50、ソフタノール70、ソフタノール90、ソフタノールEP5035、ソフタノールEP7025、ソフタノールEP7045、ソフタノールEP9050等が挙げられる。
【0037】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(D−1)を得る際において、アルキレンオキサイドを付加する方法としては、公知のアルコキシル化法を採用できる。このアルコキシル化に用いられる触媒は酸触媒であっても塩基触媒であっても良く、また、特開平7−227540号公報に記載のMgO−ZnO、MgO−SnO、MgO−TiO、MgO−SbO等の狭いアルキレンオキサイド付加分布(narrow range)を与える触媒や、特開平1−164437号公報に記載の同様のMg系触媒のような選択的に狭いアルキレンオキサイド付加分布を与える触媒を用いても合成できる。これらの触媒は反応終了後に中和されるか、又は吸着処理により除くことが製品の安定性を向上させる観点から好ましい。塩基触媒に対する中和剤は酢酸、グリコール酸、乳酸、レブリン酸等の低分子量有機酸が好ましい。
【0038】
非イオン界面活性剤(D)の含有量は、アルカリ洗浄液の洗浄性を向上させる観点から、使用時(洗浄時)において、アルカリ洗浄液中、0.005〜1.2重量%であることが好ましく、0.01〜0.6重量%であることがより好ましく、0.01〜0.3重量%であることが更に好ましい。
【0039】
[水溶性高分子カルボン酸類(E)]
本発明のアルカリ洗浄液には、アルカリ洗浄液の分散安定性を向上させる観点及び洗浄性を向上させる観点から、分散剤として水溶性高分子カルボン酸類(E)が更に含有されていてもよい。水溶性高分子カルボン酸類(E)は同様の観点から、下記式(4)で表されるものが好ましい。
【化3】

【0040】
前記式(4)中、R10〜R15は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシル基、COOM、OHのいずれかであり、全て同じでもそれぞれ異なっていてもよい。Mは水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜4のアルキルアミン、炭素数1〜6のアルカノールアミンのいずれかである。前記式(4)の両末端は特に限定されないが、水素原子、OH、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシル基又はSOM(Mは前記の意味を示す)等が挙げられ、同じでも異なっていてもよい。p及びqは、それぞれかっこ内のモノマーのモル数を示し、pは0でも構わない。pが0の楊合は、モル数をqで表すモノマーのホモポリマーとなる。pとqの共重合モル比(p/q)は0/10〜10/1である。前記式(4)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であり、好ましくは3,000〜50,000、より好ましくは4,000〜20,000である。重合形態はブロックでもランダムでもよい。
【0041】
水溶性高分子カルボン酸類(E)の具体例としては、ポリアクリル酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体等、及びこれらのナトリウム塩等のアルカリ金属塩若しくはアミン塩等が挙げられる。好ましくはポリアクリル酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、及びこれらのナトリウム塩等のアルカリ金属塩である。水溶性高分子カルボン酸類(E)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000、更に好ましくは4,000〜20,000である。水溶性高分子カルボン酸類(E)の重合形態はブロックでもランダムでもよい。具体的な製品名としては、花王社製ポイズ540、ポイズ530、ポイズ535、ポイズ521、ポイズ520、日本パーオキサイド社製ペールプラック250、ペールプラック1200、ペールプラック5000、日本ゼオン社製クインフロー540、クインフロー542、クインフロー543、クインフロー560、クインフロー640、クインフロー750、東亞合成社製アロンT‐40、アロンT‐50、クラレ社製イソバン06、イソバン04、イソバン600、日本触媒社製アクアリックDL100等が挙げられる。これらは、単一又は2種以上の組み合わせで用いられる。
【0042】
水溶性高分子カルボン酸類(E)の含有量は、アルカリ洗浄液の分散安定性を向上させる観点及び洗浄性を向上させる観点から、使用時(洗浄時)において、アルカリ洗浄液中、0.01〜2重量%が好ましく、0.05〜1重量%がより好ましく、0.05〜0.5重量%が更に好ましい。
【0043】
一方、アルカリ洗浄液中の水の含有量は、前記成分並びに脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩の残部である。前記水としては、イオン交換水が望ましい。水により、アルカリ洗浄液中の各成分の濃度を制御できる。
【0044】
本発明のアルカリ洗浄液は、洗浄の経過とともに生成する脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩を含有するが、その他の成分は、アルカリ剤(A)及びカルボン酸化合物(B−1)、並びに必要に応じてアルコール(B−2)、キレート剤(C)、非イオン界面活性剤(D)及び/又は水溶性高分子カルボン酸類(E)等と、水とを配合することにより調製される水系組成物である。当該水系組成物は、洗浄性を確保する観点から、好ましくはpHが12以上になるように、より好ましくはpHが13以上、更に好ましくはpHが14以上になるように調整される。pHはアルカリ剤(A)により調整することができる。なお、本発明のアルカリ洗浄液には、前記成分の他に、任意の添加剤を加えることができるが、当該添加剤は、アルカリ剤(A)によりpHを有効に調整できるように、pHへの影響が少ないものが好ましい。
【0045】
本発明のアルカリ洗浄液の調製に用いる水系組成物(洗浄剤組成物)は、使用時(洗浄時)には、アルカリ剤(A)及びカルボン酸化合物(B−1)、並びに必要に応じてアルコール(B−2)、キレート剤(C)、非イオン界面活性剤(D)及び/又は水溶性高分子カルボン酸類(E)等を、前記濃度で含有するものが好ましく用いられるが、製造後の保存安定性、運送効率等を考慮すれば、濃厚組成物として調製することできる。例えば、アルカリ剤(A)及び水を含む組成物(以下、濃厚組成物Aともいう)と、カルボン酸化合物(B−1)、並びにアルコール(B−2)及び水を含む組成物(以下、濃厚組成物Bともいう)とを用意しておき、使用時に両濃厚組成物を混合し、洗浄時に、必要に応じて水で希釈して用いることができる。即ち、本発明のアルカリ洗浄剤キットは、アルカリ剤(A)及び水を含む組成物と、前記一般式(1)で表されるカルボン酸化合物(B−1)、並びに前記一般式(2)で表されるアルコール(B−2)及び水を含む組成物とからなる。濃厚組成物Aと、濃厚組成物Bと、必要に応じて水等との混合は、予めこれら成分を混合してもよいし、使用時に洗浄槽にそれぞれ独立に、又は同時に供給して使用してもよい。
【0046】
前記態様において、濃厚組成物A中、アルカリ剤(A)の含有量は、スラリーとしての安定性の観点、及び洗浄剤組成物を配管で輸送する際の粘度を適正に保つ観点から、好ましくは5〜48重量%、より好ましくは10〜45重量%、更に好ましくは20〜42重量%になるように調整される。
【0047】
また、前記態様において、濃厚組成物B中、カルボン酸化合物(B−1)及び必要に応じて使用されるアルコール(B−2)の合計含有量は、洗浄剤組成物の保存安定性、運送効率の観点から、それぞれ5〜90重量%及び0.1〜68重量%であることが好ましく、10〜70重量%及び0.3〜53重量%であることがより好ましく、20〜50重量%及び0.6〜38重量%であることが更に好ましい。なお、洗浄剤組成物の保存安定性、運送効率の観点から、キレート剤(C)、非イオン界面活性剤(D)、及び/又は水溶性高分子カルボン酸類(E)は、濃厚組成物Aに配合することが好ましい。
【0048】
濃厚組成物Aの一成分としてキレート剤(C)を配合する場合、濃厚組成物Aにおけるキレート剤(C)の含有量は、製造後の洗浄剤組成物の保存安定性、運送効率及びスラリーとしての安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、更に好ましくは1.0〜10重量%である。
【0049】
濃厚組成物Aの一成分として非イオン界面活性剤(D)を配合する場合、濃厚組成物Aにおける非イオン界面活性剤(D)の含有量は、製造後の洗浄剤組成物の保存安定性、運送効率及びスラリーとしての安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1〜15.0重量%、より好ましくは0.1〜10.0重量%、更に好ましくは0.2〜6.0重量%である。
【0050】
濃厚組成物Aの一成分として水溶性高分子カルボン酸類(E)を配合する場合、濃厚組成物Aにおける水溶性高分子カルボン酸類(E)の含有量は、製造後の洗浄剤組成物の保存安定性、運送効率及びスラリーとしての安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%、更に好ましくは0.3〜5重量%である。
【0051】
なお、濃厚組成物Aにおける水の含有量は、30〜75重量%が好ましく、35〜70重量%がより好ましく、40〜60重量%が更に好ましい。
【0052】
一方、濃厚組成物Bにおける水の含有量は、5〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、15〜60重量%が更に好ましい。
【0053】
前記濃厚組成物A及びBは、使用前に、例えば、それらを混合又は更に水を加えて希釈してもよく、各濃厚組成物をそれぞれ単独で洗浄槽に投入し、必要に応じて水で希釈してもよい。
【0054】
本発明のアルカリ洗浄液は、前記の高速洗浄とともに生じる、前記工程(1)に用いた脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩を1.5〜2.5重量%含有するように制御される。本発明の鋼板の製造方法では、圧延鋼板に付着している脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを、洗浄工程(2)において洗浄除去するが、当該洗浄除去された脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルが、アルカリ洗浄液中において形成する塩の含有量を制御することで、圧延鋼板が、高速ライン速度で連続生産される場合においても、洗浄性及び抑泡性を満足することができる。前記アルカリ洗浄液が含有する、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩の割合は、洗浄性及び抑泡性を満足させる観点から1.6〜2.4重量%であるのが好ましく、更には1.7〜2.3重量%であるのが好ましい。なお、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩の含有量は、通常、鋼板の製造が連続して行われるに従って累積して2.5重量%を超えるが、このような場合には、洗浄浴内のアルカリ洗浄液を交換して、鋼板の製造方法を再開する。かかるアルカリ洗浄液の再調製は、洗浄浴中のアルカリ洗浄液が使用されて少なくなった場合に繰り返し行うことができ、洗浄工程の連続性を確保できる。
【0055】
本発明の洗浄工程(2)では、前記のようにアルカリ洗浄液中の前記工程(1)に用いた脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩の割合は前記範囲に制御される。一方、アルカリ洗浄液中の水並びに脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩以外の成分の合計含有量は、アルカリ洗浄液中、2.0〜16.0重量%であることが好ましく、2.3〜13.0重量%であることがより好ましく、2.5〜11.0重量%であることが更に好ましい。
【0056】
洗浄工程(2)において、アルカリ洗浄液の温度は特に制限されない。通常、40〜90℃程度であるのが好ましく、より好ましくは50〜80℃である。なお、アルカリ洗浄液は、予め加温しておくことや、調製されたアルカリ洗浄液を加温することも当然行うことができる。
【0057】
一般の鋼板洗浄ラインは、浸漬洗浄→ブラシ洗浄→電解洗浄→ブラシ洗浄→リンス→乾燥という構成を取るが、前記洗浄工程は、浸漬洗浄、電解洗浄のいずれにも適用でき、これら洗浄工程が施された後には、常法に従って、ブラシ洗浄工程や、その後のリンス工程、乾燥工程等を施すことができる。前記連続洗浄工程では、アルカリ洗浄液中において、圧延された鋼板に対して、製品品質の向上を目的とした電解洗浄時の高電流密度化を行うこともできる。
【実施例】
【0058】
実施例1〜6及び比較例1〜14
水酸化ナトリウム4.5重量%の水溶液に、パーム油と牛脂の混合物(パーム油:牛脂の重量比が1:1)を表1に示す割合(0〜4.0重量%)になるように添加した。更に、成分(B−1)、成分(B−2)、成分(C)、成分(D)、成分(E)を表1に示す割合になるように添加してアルカリ洗浄液を調製した。表1に示すアルカリ洗浄液について下記洗浄性及び抑泡性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1に記載の非イオン界面活性剤(D)におけるオキシエチレン基、オキシプロピレン基の平均付加モル数の測定は、イソプロピルアルコールに非イオン界面活性剤(D)を3重量%溶解させたものをサンプルとして、下記の装置、カラム測定条件で行った。
【0059】
GC装置:Agilent Technologies製の6850SERIESII
カラム:Agilent 19091A‐102E ULTRA 1メチルシロキサン
測定条件:60℃で2分間ホールドした後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温させ、300℃で20分間ホールド
【0060】
<洗浄性>
(1)被洗浄鋼板
被洗浄鋼板は全て以下の手順で調製した。即ち、合成エステル系圧延油(グリセリン脂肪酸エステル[パーム油]:70重量%、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル:30重量%)で冷間圧延された厚さ0.5mmの鋼板を、25mm×50mmの大きさに切断したものを被洗浄鋼板とした。被洗浄鋼板の付着油分量は、100mg/m2であった。
【0061】
(2)洗浄試験手順
洗浄試験は全て以下の手順で行った。各例で調製したアルカリ洗浄液は、温度70℃、60℃、50℃に設定した恒温槽の中で保持した。そのアルカリ洗浄液中に被洗浄鋼板を、それぞれ表1に示す時間ずつ浸漬洗浄した。次いで、洗浄後の鋼板を水でスプレーリンス(60℃の水をスプレー圧0.2MPaで2秒間スプレー)した後、温風乾燥した。次いで、洗浄試験後の鋼板表面に残存する付着油分量(残存付着油分量)を、鋼板付着油量測定装置EMIA−111(堀場製作所社製)を用いて測定した。測定値は5回測定した際の平均値とした。残存付着油分量が少ないほど、洗浄性に優れるアルカリ洗浄液であると評価できる。
【0062】
<抑泡性>
図1に示す循環発泡試験機に表1に記載のアルカリ洗浄液を3kg仕込み、設定温度をそれぞれ70℃、60℃、50℃の条件下にて、循環流量:10L/分にてアルカリ洗浄液を循環しながら、液面上にアルカリ洗浄液を落下させた。アルカリ洗浄液が液面に落下したことによって発生する泡の体積(泡沫量)を目視で測定した。泡の体積(泡沫量)が少ないほど、抑泡性に優れるアルカリ洗浄液であると評価できる。
【0063】
なお、洗浄性の評価では、パーム油と牛脂の混合物が全て塩になるものと考え脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩を調整し、洗浄時間が短いこと(浸漬時間の違い)で高速洗浄の代替評価を行っている。ただし、洗浄性の評価は鋼板が移動しない静的な評価である。一方、抑泡制の評価では、鋼板が移動することにより生じる評価を行うために、流量により、動的な評価を行っている。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果から、本発明の製造方法によれば、高速洗浄において、良好な洗浄性及び抑泡性を満足することが確認された。また、アルカリ洗浄液が、成分(B−1)と成分(B−2)を所定の割合で含有する場合には、抑泡性がより良好であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む圧延油の存在下で圧延する工程(1)と、前記工程(1)で得られた圧延された鋼板を洗浄浴中においてアルカリ洗浄液に接触させることにより、前記圧延された鋼板に付着する圧延油を洗浄する工程(2)を含む、鋼板の製造方法であって、
前記洗浄工程(2)における圧延された鋼板の前記アルカリ洗浄液への連続接触時間が、1.0〜1.8秒間であり、かつ、
前記アルカリ洗浄液が、
アルカリ剤(A)、
一般式(1):RCOOM (1)
(式中、Rは全炭素数が9〜24である分岐鎖脂肪族炭化水素基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素数1〜4の脂肪族アンモニウム、アンモニア、又はアルカノールアンモニウムを示す。)で表されるカルボン酸化合物(B−1)及び水を含有し、かつ、前記工程(1)で用いた脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルに由来する塩を1.5〜2.5重量%含有する、鋼板の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ洗浄液は、更に、一般式(2):ROH (2)
(式中、Rは全炭素数が9〜24である分岐鎖脂肪族炭化水素基を示す。)で表されるアルコール(B−2)を含有し、かつ、
前記カルボン酸化合物(B−1)と、前記アルコール(B−2)との重量比{(B−1)/(B−2)}が、98/2〜25/75である、請求項1記載の鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸化合物(B−1)と前記アルコール(B−2)の合計含有量が、前記アルカリ剤(A)100重量部に対して1.1〜60.0重量部である、請求項1又は2記載の鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ洗浄液は、前記水並びに脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル由来の塩以外の成分の合計含有量が、アルカリ洗浄液中、2.0〜16.0重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ洗浄液は、更に、キレート剤(C)、非イオン界面活性剤(D)及び水溶性高分子カルボン酸類(E)のいずれか少なくとも1つを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−201918(P2012−201918A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66354(P2011−66354)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】