説明

鋼板印字装置

【課題】一対のレールの間に設置された被印字鋼板に印字ヘッドにより正確に印字を行うことができる鋼板印字装置を得ることを目的とする。
【解決手段】所定の位置に配置された被印字鋼板Aに沿って印字ヘッド8が往復移動して被印字鋼板Aに目的の印字を施す鋼板印字装置であって、印字ヘッド8が被印字鋼板Aの表面上を往復移動する毎に、被印字鋼板Aにドット印字データを基に印字ヘッド8により印字するよう制御する印字制御装置31とを備え、印字制御装置31は、印字ヘッド8の移動速度を一定とし、印字ヘッド8のノズルから噴射される塗料のドットの噴射圧力を所定の値とし、印字ヘッド8のノズル10と被印字鋼板Aとの距離に応じて求めた位置ずれ量により予め与えられたオフセット量に基づいて印字を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼板印字装置、更に詳しくは例えば被印字鋼板の表面に正確に印字することができる鋼板印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、造船所などでは、鋼板を切断し、折り曲げ、溶接する作業が中心である。このため、鋼板の表面に該鋼板の引当情報や対応する図面番号、或いは切断線や溶接線及び溶接相手の部材情報や図面情報などの情報を印字することが行われている。
このような印字は、数値制御(NC)切断装置に印字ヘッドを搭載しておき、このNC切断装置の印字機能と切断機能とを選択的に利用して行うのが一般的である。
【0003】
最近では、印字を専用に行うマーキング装置も開発され、利用されている。
このようなマーキング装置は、平行に走る一対のレールと、これらレールの上をレールと同じ方向に移動するガーダと、ガーダにその長手方向に沿ってスキャン・データのスキャン数に対応して等間隔に一直線上に配列された多数のマーキング手段とから主に構成されている。
そして、マーキングの対象物たる鋼板は一対のレールの間に設置され、その鋼板上をガーダが鋼板の長手方向に移動することにより、ガーダに搭載されている多数のマーキング手段が鋼板上を移動しつつ、鋼板上にマーキングしていくものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭54−134900号公報(第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のマーキング装置は、マーキングの対象物たる鋼板は一対のレールの間に設置され、その鋼板上をガーダが鋼板の長手方向に移動することにより、ガーダに搭載されている多数のマーキング手段が鋼板上を移動しつつ、鋼板上にマーキングしていくものである。
そのマーキング手段のノズルから噴射されるドット(液滴)は、マーキング手段の走行方向に対しマーキングヘッドの移行速度に応じた速度を持っており、一方マーキング手段は鋼板の上方に一定の間隔を持って走行しているため、ドットが鋼板に付着する位置はドットがマーキングヘッドから噴射される位置とは異なり、所望の位置に正確にマーキングすることができなくなるという問題があった。
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、一対のレールの間に設置された鋼板に正確に印字を行うことができる鋼板印字装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る鋼板印字装置は、所定の位置に配置された被印字鋼板に沿って印字ヘッドが往復移動し、前記被印字鋼板に目的の印字を施す鋼板印字装置であって、前記印字ヘッドが被印字鋼板の表面上を往復移動する毎に、被印字鋼板にドット印字データを基に前記印字ヘッドにより印字するよう制御する印字制御装置を備え、前記印字制御装置は、前記印字ヘッドの移動速度を一定とし、前記印字ヘッドのノズルから噴射される塗料のドットの噴射圧力を所定の値とし、前記印字ヘッドのノズルと被印字鋼板との距離に応じて求めた位置ずれ量により予め与えられたオフセット量に基づいて印字を行うように制御するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る鋼板印字装置は、所定の位置に配置された被印字鋼板に対して往動する印字ヘッドによって印字を行う場合に、印字ヘッドの移動速度を一定とし、印字ヘッドのノズルから噴射される塗料のドットの噴射圧力を所定の値とし、印字ヘッドのノズルと被印字鋼板との距離に応じて求めた位置ずれ量を予めオフセット量として与えて印字ヘッドにより印字を行うように制御することにより、被印字鋼板の所望の位置に正確に印字を行うことができるという効果がある。
また、印字ヘッドの復動の際に印字を行う場合、往動の場合とは逆の方向にオフセット量を与えて印字ヘッドにより印字を行うことにより、復動の際にも印字ヘッドのノズルから塗料のドットを噴射して被印字鋼板の所望の位置に正確に印字を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の実施の形態1の鋼板印字装置の要部を概略的に示す斜視図、図2は同鋼板印字装置の平面図、図3は同鋼板印字装置の制御系のブロック図、図4は同鋼板印字装置に用いられる印字データの作成過程を示したフローチャート、図5は同鋼板印字装置における印字ヘッドと被印字鋼板との距離に応じた印字ヘッドから噴射されるドットの位置ずれデータを示すグラフ、図6は同鋼板印字装置における印字ヘッドから噴射されるドットの位置のオフセット量を示す説明図である。
図1及び図2において、鋼板受取エリアAR1には、鋼板置き場Sから複数の電磁石を吊り下げた天井クレーン(図示省略)により運ばれてきた被印字鋼板Aを受け取り、鋼板受取エリアAR1の片側に片寄せして次の搬送エリアAR2に送る鋼板受取装置1が設置されている。
【0008】
鋼板受取エリアAR1の下流側である次の鋼板搬送エリアAR2には、鋼板受取装置1から送られてきた被印字鋼板Aを鋼板搬送エリアAR2の片側に片寄せして次の鋼板印字エリアAR3に搬送する鋼板搬送装置2が設置されている。
鋼板搬送エリアAR2の下流側である次の鋼板印字エリアAR3には、鋼板搬送装置2から送られてきた被印字鋼板Aに印字を行うために、該被印字鋼板Aを鋼板印字エリアAR3の片側の片寄せ位置で後述するレールに対して平行に位置決めして停止させる鋼板位置決め装置3が設置されている。
【0009】
さらに、鋼板印字エリアAR3には被印字鋼板Aに印字を行う鋼板印字装置4が設けられている。
その鋼板印字装置4は、鋼板印字エリアAR3の両側に平行に敷設された一対のレール5と、一対のレール5に載置されて走行する走行台車6と、走行台車6に搭載されてレール5の設置方向と直交する方向に横行する横行キャリッジ7と、横行キャリッジ7に設けられた複数の印字ヘッド8と、走行台車6を被印字鋼板Aに沿って走行させると共に、印字ヘッド8が被印字鋼板Aを通過する毎に横行キャリッジ7を印字ヘッド8の印字可能寸法に対応させて横行させる後述する走行駆動装置とを有して構成されている。
【0010】
前述の鋼板受取装置1、鋼板搬送装置2及び鋼板位置決め装置3は、鋼板受取エリアAR1、鋼板搬送エリアAR2及び鋼板印字エリアAR3にまたがる1つの細長い長方形のローラ支持枠11に形成されている。
鋼板受取装置1は、鋼板受取エリアAR1に位置するローラ支持枠11の一部と、そのローラ支持枠11の一部に延長方向に所定の間隔を置いて回転自在に取り付けられた多数の直行ローラ12と、ローラ支持枠12の一側部に所定の間隔を置いて配設され、被印字鋼板Aの一側部を上下方向でガイドする回転自在な多数の裁頭円錐形のガイドローラ13と、多数の直行ローラ12を回転駆動するローラ駆動モータ14とで構成されている。
【0011】
鋼板搬送装置2は、鋼板搬送エリアAR2に位置するローラ支持枠11の一部と、そのローラ支持枠11の一部に延長方向に所定の間隔を置いて回転自在に取り付けられた多数の斜行ローラ15と、ローラ支持枠11の一側部に所定の間隔を置いて配設され、多数の斜行ローラ15によって鋼板搬送エリアAR2の片側に片寄せされた被印字鋼板Aの一側部をガイドする回転自在な多数の円柱形のガイドローラ16と、多数の斜行ローラ15を回転駆動するローラ駆動モータ14とで構成されている。この鋼板搬送装置2のローラ駆動モータ14は鋼板受取装置1のローラ駆動モータ14と共用である。
鋼板搬送装置2の斜行ローラ15の傾斜角度は0.5〜1.0度である。
【0012】
鋼板位置決め装置3は鋼板印字エリアAR3に位置するローラ支持枠11の一部と、そのローラ支持枠11の一部に延長方向に所定の間隔を置いて回転自在に取り付けられた多数の直行ローラ17と、ローラ支持枠11の一側部に所定の間隔を置いて配設され、鋼板搬送装置2によって鋼板搬送エリアAR2の片側に片寄せされて搬送されてきた被印字鋼板Aの一側部を鋼板印字エリアAR3の片側にそのままガイドする回転自在な多数の円柱形のガイドローラ18と、多数の直行ローラ17を回転駆動するローラ駆動モータ19とで構成されている。そのガイドローラの18の頭部の高さは、印刷時に邪魔にならないように直行ローラ18上の被印字鋼板Aの上面より突出しない高さに設定されている。
【0013】
次に、鋼板印字装置4の各構成部材について説明する。
走行台車6は、印字ヘッド8をレール5に沿って略一定の速度で走行させると共に被印字鋼板Aの端部に到達した後、前記走行方向とは反対方向に略一定の速度で走行させるためのものである。
この走行台車6の一対のレール5に沿った往復走行の過程で印字ヘッド8を予め入力された印字データに従って駆動することで、被印字鋼板Aの表面に所望の無地、直線或いは曲線、更に他の情報を印字するものである。
このため、走行台車6は、一対のレール5上に載置され、内部に走行駆動装置9の1つである走行モータ22を設けたサドル21と、レール5と直交する方向に設置され、両端がそれぞれサドル21に接続されたガーダー23とを有して構成されており、サドル21に印字制御装置31を内蔵した制御盤24が設けられている。
【0014】
横行キャリッジ7は、印字を開始する際に、先ず、被印字鋼板Aの端部に配置された印字ヘッド8(8a)の位置を被印字鋼板Aにおける印字開始位置であるマーキング座標の基準位置に一致させ、その後、前記位置を維持して走行台車6を走行させて印字を行い、1列の印字が終了した後、印字ヘッ8の幅方向の寸法分横行させ、更に、この位置を維持して走行台車6を走行させて印字を行うものである。
従って、横行キャリッジ7は、走行台車6が被印字鋼板Aに対する1列の印字を終了する毎に、印字ヘッド8の幅に応じて横行し、これらの印字ヘッド8を新たな印字すべき位置に横行させるものである。
このため、横行キャリッジ7は、ガーダー23に設けた横行レール26に沿ってレール5と直交する方向に横行させる回転駆動装置の1つである横行モータ27を有して構成されている。
1台の横行キャリッジ7に複数の印字ヘッド8を予め設定された間隔に保持固定して設け、この印字ヘッド8の間隔と被印字鋼板Aに対する印字回数とに応じて横行させるようにしている。
【0015】
印字ヘッド8は、走行台車6の走行に伴って図示しない塗料供給装置から供給された塗料を短時間噴射して被印字鋼板Aの表面にドット状のマークを形成し、このマークの連続によって目的の文字、直線、曲線を印字するものである。
このため、印字ヘッド8は、走行台車6の横行レール26と平行方向に1列に配置された複数のノズル(図示省略)を有し、各ノズル毎に印字制御装置31によって開閉が制御される電磁弁等を介して塗料供給装置(図示省略)が接続されている。
印字ヘッド8におけるノズルのピッチや数は特に限定するものではなく、ノズルから噴射された塗料が被印字鋼板Aに至るまでの広がり率や、印字ヘッド8の被印字鋼板Aからの距離などの条件に応じて適宜設定される。
【0016】
また、印字ヘッド8に配置された複数のノズル10の幅方向の寸法(横行レール16に沿った方向の寸法)は、予め設定された被印字材鋼板Aの幅寸法と、被印字鋼板Aを印字するのに要する回数(往復回数)と、被印字鋼板Aに対する分割数(印字ヘッド8の数)とに応じて設定される。
例えば、幅2mの被印字鋼板Aを2往復で印字を行うものとし、且つ印字ヘット8の数を4とした場合、複数のノズル10の幅方向の寸法は、2m/(4×4)から125mmに設定され、隣接する印字ヘッド8の間隔は500mmに設定される。
本実施の形態1において、印字ヘッド8は、ノズル10の径が15mm、各印字ヘッド8における複数のノズル10の幅寸法が125mm、ピッチが17.86mmで形成され、印字ヘッド8の数は4個に設定されている。
【0017】
次に、図3により鋼板印字装置4の制御系について説明する。
図3において、31は制御盤24に内蔵されている印字制御装置である。
この印字制御装置31は鋼板受取装置1に被印字鋼板Aが送られてから鋼板搬送装置2により鋼板位置決め装置3に被印字鋼板Aが位置決めされて固定され、鋼板印字装置4により被印字鋼板Aの表面に印字が行われるまでの独自のプログラムが記憶された記憶部31aと、後述するキーボード等からなる入力部材或いはCDROMドライブ等からのデータを一時記憶する一時記憶部31bと、各種入力に基づいて独自のプログラムを実行する演算部31cとを有して構成されている。
【0018】
その印字制御装置31に接続されたインターフェース32の入力側に、鋼板受取装置1に被印字鋼板Aが送られてきたことを検出する光センサ等の鋼板検出センサ33と、鋼板位置決め装置4に搬送された被印字鋼板Aの先端部を検出する先端部検出センサ34と、鋼板位置決め装置4に搬送された被印字鋼板Aの端面を検出する端面検出センサ35と、鋼板位置決め装置4に搬送された被印字鋼板Aの表面の高さを検出する高さ検出センサ36と、CDROMドライブ37と、外部からデータを受け取って入力する通信装置38と、キーボード等からなる入力装置39とが接続されている。
また、インターフェース32の出力側には、走行モータ22と、横行モータ27と、印字ヘッド8の高さを制御する高さ制御モータ39と、鋼板受取装置1及び鋼板搬送装置2のローラ駆動モータ14と、鋼板位置決め装置4のローラ駆動モータ19と、印字ヘッド8とが接続されている。
【0019】
次に、本発明の鋼板印字システムに用いられる印字データ(文字データ・図形データ)の作成過程について説明する。
図4は印字データの作成過程を示したフローチャートであり、これは設計システムと印字情報創成システムの2段階を含んでいる。設計システムはCAD等によって設計される段階であり、印字情報創成システムは設計システムにより設計されたデータに基づいて印字データを作成する段階である。
【0020】
まず、設計システムの段階について説明する。
製造対象物の構造データを作成し(S1)、その構造データに基づいて切断すべき部材を計画し(S2)、その計画された部材を被印字鋼板Aに無駄なく割り付けるためのネスティングを行い、切断計画図及びNC切断データを作成する(S3)。この切断計画図は例えばプリントされ、NC切断データは被印字鋼板Aを切断する際のNCデータとして用いられる。ネスティングされて作成された配置図に基づいて印字下図を作成し、それをDXFファイルに変換する(S4)。
なお、ネスティングされて作成された配置図の文字は、文字の内容(部品名称、取付部材名称・・・)と文字の大きさを規定してレイヤー番号(1,2・・・)が関連付けられており、その関係を変更することにより文字の大きさを任意に編集できるように構成されている。また、DXFファイルの文字データについては、文字形状、サイズ、位置情報等が含まれている。
【0021】
次に、印字情報創成システムの段階について説明する。
上記のDXFファイルを編集する(S5)。この編集に際しては、文字や図形の移動、修正、追加及び移動処理がなされる。編集後のDXFファイルから文字データ及び図形データを抽出する(S6)。そして、抽出された文字データ及び図形データをドットマップに変換しNC印字用データを作成する(S7)。このNC印字用データをCDROMに格納する。
そのCDROMに格納したNC印字用データをCDROMドライブ37で読み込んで印字制御装置31に伝達されるようにしている。或いは、NC印字用データをネットワーク(図示省略)を介して図3の通信装置38が受信して印字制御装置31に伝達されるようにしてもよい。
【0022】
次に、被印字鋼板Aが鋼板受取エリアAR1に送られから鋼板印字エリアAR3において被印字鋼板Aに印字が行われる手順について図1〜図3に基づいて説明する。
まず、印字制御装置31に対し、入力装置39から被印字鋼板Aの板厚や、幅、長さのデータが入力される。このデータはインターフェース32を介して印字制御装置31に伝達され、一時記憶部31bに一時記憶される。また、CDROMドライブ37からNC印字用データを入力し、一時記憶部31bに記憶させておく。
次に、鋼板置き場Sから天井クレーンによって吊り下げられて鋼板受取エリアAR1に運ばれてきた被印字鋼板Aを鋼板受取装置1の多数の直行ローラ12上に載置させる。
このとき、天井クレーンは、被印字鋼板Aの一側が裁頭円錐形のガイドローラ13の傾斜周面に接触するように降ろすと、鋼板受取エリアAR1の片側、即ちローラ支持枠11の一方側に片寄せされた状態で多数の直行ローラ12上に載置されることとなる。
【0023】
このように、多数の直行ローラ12上に被印字鋼板Aが載置されると、鋼板受取装置1に設けた鋼板検出センサ33が多数の直行ローラ12上に載置された被印字鋼板Aの存在を検出し、その検出信号を印字制御装置31に送る。
そうすると、鋼板検出センサ33の検出信号を受けた印字制御装置31はローラ駆動モータ14とローラ駆動モータ19を回転駆動させる。
ローラ駆動モータ14の回転駆動により、鋼板受取装置1の多数の直行ローラ12と鋼板搬送装置2の多数の斜行ローラ15が回転させられる。
また、ローラ駆動モータ19の回転駆動により、鋼板位置決め装置3の多数の直行ローラ17も回転させられる。
【0024】
鋼板受取装置1の多数の直行ローラ12の回転により、被印字鋼板Aはローラ支持枠11の一方側に片寄せされた状態で鋼板搬送装置2に送られる。
鋼板搬送装置2に送られた被印字鋼板Aは、鋼板搬送装置2の斜行ローラ15の回転により、ローラ支持枠11の一方側に片寄せするように搬送され、多数のガイドローラ16により、ローラ支持枠11の一方側に片寄せされた被印字鋼板Aはその状態が維持されて搬送されることとなる。
【0025】
このようにして鋼板搬送装置2によって搬送された被印字鋼板Aは、鋼板搬送装置2に連設された鋼板位置決め部3に送られる。
鋼板位置決め部3では、多数の直行ローラ17を回転させて被印字鋼板Aの先端部が例えば鋼板印字エリアAR3の真ん中から少し下流寄りの所定の位置に来たところで、先端部検出センサ34が被印字鋼板Aの先端部を検出し、その検出信号を印字制御装置31に送る。
そうすると、先端部検出センサ34の検出信号を受けた印字制御装置31はローラ駆動モータ14とローラ駆動モータ19との回転駆動を停止させ、被印字鋼板Aを所定の位置に停止させる。
【0026】
次いで、印字制御装置31は走行モータ22を回転駆動させて鋼板印字装置4の走行台車6を走行させ、図示しない位置に設けた端面検出センサ35によって被印字鋼板Aの端面を検出し、その検出信号を印字制御装置31に送る。
そうすると、端面検出センサ35の検出信号を受けた印字制御装置31では、端面検出センサ35が検出した端面位置と被印字鋼板Aのローラ支持枠11の一方側に片寄せされた既知の一側位置とに基づいて被印字鋼板Aにおけるマーキング座標の基準位置を求め、その基準位置と印字データの座標軸を一致させる、即ち横行キャリッジ3における端部側の印字ヘッド8(8a)の位置を被印字鋼板Aの端部における印刷開始位置であるマーキング座標の基準位置に一致させる。
それと同時に、図示しない位置に設けた高さ検出センサ36によって被印字鋼板Aの表面を検出し、その検出信号を受けた印字制御装置31は横行キャリッジ7に設けた高さ制御モータ40を駆動して印字ヘッド8を被印字鋼板Aから予め設定された高さに保持する。
【0027】
上記の如くして被印字鋼板Aのマーキング座標の基準位置を求めると共に印字ヘッド4の高さを保持した後、横行キャリッジ3における端部側の印字ヘッド8aを被印字鋼板Aの端部におけるマーキング座標の基準位置に一致させるように横行キャリッジ3を横行させ、これにより印字作業の準備が完了する。
本実施の形態1に係る鋼板印字装置4では、4つの印字ヘッド8(8a〜8d)を被印字鋼板Aに対して2往復(印字回数4)させて印字を行う。この場合、印字制御装置31では、記憶部31aに記憶された被印字鋼板Aに対するNC印字用データを演算部31cで読み出すと共に、各走行行程毎に必要な幅に分割して印字ヘッド8に形成されたノズル10の駆動データを演算するプログラムが実行され、この駆動データは各印字ヘッド8に伝達される。
【0028】
即ち、被印字鋼板Aは4つの印字ヘッド8によってそれぞれ印字される領域を4つに分け、さらに各印字ヘッド8が2往復することで各印字ヘッド8の領域を4つに分けるため、合計で16の領域に分割され、被印字鋼板Aに設定されたNC印字用データのドットマップが各領域毎に分割され、走行台車6の行程と同期させてノズルに対する駆動データが演算される。
従って、走行台車6の往復走行に伴う各行程毎に走行台車6の走行と同期して印字ヘッド8のノズル10を駆動することで、被印字鋼板Aに対して1/4の印字面の印字を行い、走行台車2が2往復したとき、被印字鋼板Aに目的の印字が行われることになる。
【0029】
このように、印字ヘッド8が被印字鋼板Aの上を走行しながら印字を行うため、印字ヘッド8から噴射される塗料のドットは、印字ヘッド8の走行方向に対し印字ヘッド8の移動速度に応じた速度を持っている。
一方、印字ヘッド8は被印字鋼板Aの上方に一定の間隔を持って走行しているため、塗料のドット(液滴)が被印字鋼板Aに付着する位置はドットが印字ヘッド8から噴射される位置とは異なり、位置ずれを起こす。
そこで、予め印字ヘット8の移動速度が例えば毎秒600mm/secで一定とし、印字ヘッド8のノズル10からの塗料のドットの噴射圧力が0.3MPaの場合に、被印字鋼板Aと印字ヘッド8のノズル10との距離を変化させたときのノズル直下位置に対するドットが付着する位置ずれ量を測定してプロットしたものが図5のグラフである。
【0030】
この図5のグラフを見ても分かるように、被印字鋼板Aと印字ヘッド8のノズル10との距離が増えるに従い、それに比例して塗料のドットが付着する位置ずれ量も増加することが分かる。
また、図6は、矢印方向に走行する印字ヘッド8から噴出された塗料のドットが、印字ヘッド8の走行方向に移動しながら降下して被印字材である被印字鋼板Aに付着する状況を示している。図6において、白丸は等速運動の場合の仮想のドットの軌跡を、黒丸は空気抵抗等の影響により放物線状に降下する実際のドットの軌跡を示す。
図5のグラフに実際のHとLの関係の例を示す。この例では、例えば被印字鋼板Aの表面から印字ヘッド8のノズルまでの高さHを40mmに設定した場合、位置ずれ量であるオフセット量Lは約2mmとなる。
そこで、塗料のドットを目標とする位置に位置ずれなく付着させるためには、印字ヘッド8の往動の際に印字を行う場合に、一定距離手前にオフセットした位置で噴射させるように調整するようにしたのである。
【0031】
また、印字ヘッド8の復動の際に印字を行う場合、往動の場合とは逆の方向にオフセット量を与えておくことにより、復動の際にも印字ヘッド8のノズルから塗料を噴射して被印字鋼板Aの所望の位置に正確に印字を行うことができる。
このように、往復動作により印字を行う場合は、往方向・復方向それぞれのドットの位置を走行方向に対して一致させるためには、この調整が必要となる。
こうして、鋼板印字領域AR3において、鋼板印字装置4により所定の印字が行われた後は、天井クレーンによって印字された被印字鋼板Aが鋼板印字領域AR3から印字鋼板保管場所Pに運ばれて被印字鋼板Aに対する一連の印字作業が終了する。
【0032】
この実施の形態1においては、一対のレール5に対して平行に位置決めして停止させられた被印字鋼板Aに対し、一対のレール5に沿って往復走行する走行台車6に搭載されたレール直交方向に横行する横行キャリッジ7に設けられた複数の印字ヘッド8によって印字を行う場合に、印字ヘッド8の走行速度を例えば秒速600mm/secで一定とし、ノズル10からの塗料の噴射圧力を例えば0.3MPaとして印字ヘッド8のノズル10と被印字鋼板Aとの距離に応じて求めた位置ずれ量を予めオフセット量として与えておくことにおより、印字ヘッド8のノズル10から塗料を噴射して被印字鋼板Aの所望の位置に正確に印字を行うことができる。
また、印字ヘッド8の復動の際に印字を行う場合、往動の場合とは逆の方向にオフセット量を与えておくことにより、復動の際にも印字ヘッド8のノズル10から塗料を噴射して被印字鋼板Aの所望の位置に正確に印字を行うことができる。
【0033】
上記実施の形態1では、印字ヘッド8は、ノズル10の径が15mmとし、印字ヘッド8の走行速度を秒速600mm/secで一定とし、ノズル10からの塗料の噴射圧力を例えば0.3MPaとして印字ヘッド8のノズル10と被印字鋼板Aとの距離に応じて求めた位置ずれ量を求めたものであるが、ノズル10の径、印字ヘッド8の走行速度、ノズル10からの塗料の噴射圧力が異なれば位置ずれ量も異なることはいうまでもない。
このため、予め種々の条件に応じて位置ずれ量を求めておき、設定した条件に対応した位置ずれ量をオフセット量として設定して印字を行えばよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1の鋼板印字装置の要部を概略的に示す斜視図。
【図2】同鋼板印字装置の平面図。
【図3】同鋼板印字装置の制御系のブロック図。
【図4】同鋼板印字装置に用いられる印字データの作成過程を示したフローチャート。
【図5】同鋼板印字装置における印字ヘッドと被印字鋼板との距離に応じた印字ヘッドから噴射されるドットの位置ずれデータを示すグラフ。
【図6】同鋼板印字装置における印字ヘッドから噴射されるドットの位置のオフセット量を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
4 鋼板印字装置、5 レール、6 走行台車、7 横行キャリッジ、8 印字ヘッド、10 ノズル、21 サドル、22 走行モータ、23 ガーダ、24 制御盤、26 横行レール、27 横行モータ、31 印字制御装置、31a 記憶部、31b 一時記憶部 、31c 演算部、32 インターフェース、36 高さ検出センサ、37 CDROMドライブ、38 通信装置、39 入力装置、40 高さ制御モータ、A 被印字鋼板、AR3 鋼板印字エリア、L オフセット量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に配置された被印字鋼板に沿って印字ヘッドが往復移動し、前記被印字鋼板に目的の印字を施す鋼板印字装置であって、
前記印字ヘッドが被印字鋼板の表面上を往復移動する毎に、被印字鋼板にドット印字データを基に前記印字ヘッドにより印字するよう制御する印字制御装置を備え、
前記印字制御装置は、前記印字ヘッドの移動速度を一定とし、前記印字ヘッドのノズルから噴射される塗料のドットの噴射圧力を所定の値とし、前記印字ヘッドのノズルと被印字鋼板との距離に応じて求めた位置ずれ量により予め与えられたオフセット量に基づいて印字を行うように制御することを特徴とする鋼板印字装置。
【請求項2】
所定の位置に配置された被印字鋼板に沿って印字ヘッドが往復移動し、前記被印字鋼板に目的の印字を施す鋼板印字装置であって、
鋼板印字エリアの両側に敷設された一対のレールと、
前記一対のレールに沿って往復走行する走行台車と、
前記走行台車に搭載されたレール直交方向に横行する横行キャリッジと、
前記横行キャリッジに搭載され、レール直行方向に配列した複数のノズルを有する複数の印字ヘッドと、
前記走行台車を前記被印字鋼板に沿って走行させると共に、前記印字ヘッドが前記被印字鋼板を通過する毎に前記横行キャリッジを前記印字ヘッドの印字可能寸法に対応させて横行させる走行駆動装置と、
前記走行駆動装置によって前記走行台車が前記被印字鋼板に沿って走行する毎に、前記被印字鋼板に印字すべき印字データから変換されたドットマップのドット印字データを基に、前記被印字鋼板から求めたマーキング座標の基準位置に基づいて前記印字ヘッドにより印字するように制御する印字制御装置とを備え、
前記印字制御装置は、前記印字ヘッドの移動速度を一定とし、前記印字ヘッドのノズルから噴射される塗料のドットの噴射圧力を所定の値とし、前記印字ヘッドのノズルと前記被印字鋼板との距離に応じて求めた位置ずれ量により予め与えられたオフセット量に基づいて印字を行うように制御することを特徴とする鋼板印字装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−551(P2010−551A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159586(P2008−159586)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【出願人】(000185374)小池酸素工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】