説明

鋼板用防錆塗料組成物

【課題】 貯蔵安定性が良好であり、かつ、特に、塗膜の耐酸性や耐アルカリ性、加工性、防錆性等に優れる鋼板用防錆塗料組成物を提供すること。
【解決手段】ポリカーボネートポリオールを含むポリオール類(a1−1)、アニオン性官能基含有ポリオール類(a1−2)、脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート類(a2)、活性水素含有基を有するアクリル化合物(a3)、ならびにポリアミン類および/またはポリヒドラジン類(a4)を反応成分とするポリウレタン樹脂(A)、ならびに水の存在下で、一般式(1):CH=CRCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(b1)を含む重合性単量体(B)を重合反応させて得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液、を用いてなる鋼板用防錆塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル−ポリウレタンウレア樹脂系の鋼板用防錆塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板は、建築材や自動車材、家電品、生活用品等の用途に広く供されており、これらを錆から防ぎ、その美観を保つ目的で、従来、反応型クロメート処理剤や塗布型クロメート処理剤が用いられてきた。しかし、これらクロメート処理剤を用いる場合には、水質汚染防止法に規定される特別な排水処理が必要となり、また近年ではクロメート化合物(六価クロム等)が有する毒性自体について問題提起がなされている。
【0003】
そこで斯界では、クロメート化合物を用いない水系防錆塗料が種々提案されている。そのような水系防錆塗料には、塗膜の防錆性(耐塩水性)が優れることの他、耐アルカリ性や、塗装後の鋼板を成形加工する際の追従性(加工性)、鋼板との密着性等、種々の性能が要求される。
【0004】
そうした水系防錆塗料としては、例えば、特定酸価のポリウレタンの存在下でラジカル重合性単量体を重合してなる水分散液(エマルジョン)を用いてなるもの(例えば特許文献1)が知られており、特に防錆性に優れるとされている。しかし、当該エマルジョンは貯蔵安定性が不良であり、エマルジョン型の水系防錆塗料としての基本的な性能を欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−30057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、貯蔵安定性が良好であり、かつ、塗膜の防錆性や加工性、耐アルカリ性等に優れる鋼板用防錆塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、下記のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を用いれば、前記課題を解決できる鋼板用防錆塗料組成物を提供できることを見出した。
【0008】
即ち本発明は、ポリカーボネートポリオールを含むポリオール類(a1−1)、アニオン性官能基含有ポリオール類(a1−2)、脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート類(a2)、活性水素含有基を有するアクリル化合物(a3)、ならびにポリアミン類および/またはポリヒドラジン類(a4)を反応成分とするポリウレタン樹脂(A)、ならびに水の存在下で、一般式(1):CH=CRCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(b1)を含む重合性単量体(B)を重合反応させて得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液、を用いてなる鋼板用防錆塗料組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る鋼板用防錆塗料組成物は、長期間保存しても外観や粘度に変化が殆ど生じないなど、貯蔵安定性が良好である。また、これにより得られる塗膜は、塩水雰囲気やアルカリ性雰囲気に置いても白化や膨潤したりせず、基材(鋼鈑)に錆を生じさせないなど、防錆性や耐アルカリ性に優れる。さらに、かかる塗膜は、成形加工に付されても割れや剥がれ等の損傷が生じないなど、加工性にも優れる。他にも、かかる塗膜は耐アルコール性にも優れる。そのため、該鋼板用防錆塗料組成物は、建築材や自動車材、家電製品、生活用品等の用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る鋼板用防錆塗料組成物(以下、単に組成物という)は、前記したように、ポリカーボネートポリオールを含むポリオール類(a1−1)(以下、(a1−1)成分という)、アニオン性官能基含有ポリオール類(a1−2)(以下、(a1−2)成分という)、脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート類(a2)(以下、(a2)成分という)、活性水素含有基を有するアクリル化合物(a3)(以下、(a3)成分という)、ならびにポリアミン類および/またはポリヒドラジン類(a4)(以下、(a4)成分という)を反応成分とするポリウレタン樹脂(A)、ならびに水の存在下で、一般式(1):CH=CRCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(b1)(以下、(b1)成分という)を含む重合性単量体(B)を重合反応させて得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を用いてなるものである。なお、以下、便宜的に、(a1−1)成分と(a1−2)成分を(a1)成分と総称することがある。
【0011】
(a1−1)成分をなすポリカーボネートポリオールとしては、各種公知のものを特に制限なく用い得る。具体的には、例えば、多価アルコールとジメチルカーボネートの脱メタノール縮合反応物や、多価アルコールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応物、多価アルコールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応物等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。本発明の組成物は、ポリカーボネートポリオールを必須とすることにより、貯蔵安定性、塗膜の防錆性、耐アルカリ性、加工性および耐アルコール性が良好となっている。
【0012】
該多価アルコールとしては、各種公知のものを特に制限なく用い得る。具体的には、例えば、脂肪族グリコール〔1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等〕、脂環族グリコール〔1,4−シクロヘキサンジグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等〕等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0013】
なお、ポリカーボネートポリオールの物性は特に限定されないが、例えば、数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値をいう。以下、同様。)は、塗膜の防錆性や、基材に対する密着性等を考慮して、通常、500〜3000程度であるのが好ましい。
【0014】
また、(a1−1)成分が、さらにビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物を含有する場合には、特に塗膜の耐アルカリ性、加工性および耐アルコール性等が良好となる。該付加物をなすビスフェノール類としては、2,2−ビス(4’−オキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’イソプロピリデンビスフェノール、4,4’ヒドロキシビスフェノール、4,4’スルフォニルビスフェノール、4,4’ヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。また、該ビスフェノール類に付加反応させるアルキレンオキシド化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。該付加物としては、塗膜の防錆性の観点より、特に、ビスフェノールAとプロピレンオキシドとの付加反応物が好ましい。なお、該ビスフェノール類に対する該アルキレンオキシド化合物の付加モル数は、通常2〜100程度である。また、当該付加物の数平均分子量は、通常、300〜6000程度である。
【0015】
なお、(a1−1)成分中のポリカーボネートポリオールと、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物との含有量は特に限定されないが、組成物の貯蔵安定性や、塗膜の防錆性、特に耐アルカリ性および加工性等の観点より、前者が10〜99重量%、および後者が90〜1重量%程度であるのが好ましい。
【0016】
(a1−2)成分は、アクリル−ポリウレタンウレア樹脂に水分散性を付与するために用いる。具体例としては、カルボキシル基含有ポリオール〔2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等〕やその中和塩、スルホン基含有ジカルボン酸〔5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等〕やその中和塩等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。これらの中でも該カルボキシル基含有ポリオールが好ましく、特に前記2,2−ジメチロールプロピオン酸および/または2,2−ジメチロールブタン酸は入手が容易であることから好ましい。
【0017】
なお、前記したカルボキシル基含有ポリオールの中和塩及びスルホン基含有ジカルボン酸の中和塩を形成させるために用いる塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物〔水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等〕、アルカノールアミン〔トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−アルキルジエタノールアミン、N,N’−ジアルキルモノエタノールアミン、N−アルキルジイソプロパノールアミン、N,N’−ジアルキルモノイソプロパノールアミン等〕、3級アミン〔トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等〕、アンモニア等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0018】
(a2)成分は、脂肪族ジイソシアネートを必須としており、このことにより、塗膜の防錆性、耐アルカリ性、加工性および耐アルコール性等が良好となる。該脂肪族ジイソシアネートとしては、具体的には、分岐状ジイソシアネートおよび/または非分岐状ジイソシアネートが挙げられる。
【0019】
該分岐状ジイソシアネートとは、具体的には、「アルキル基で置換されたアルキレン基」を分子内に有するジイソシアネート類であって、後述する他のジイソシアネート類を除いたものをいい、各種公知のもの、好ましくは、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを用い得る。また、これらはアダクト体、アロファネート体等であってもよい。
【0020】
また、該非分岐状ジイソシアネートとは、「アルキル基で置換されていないアルキレン基」を分子内に有するジイソシアネート類であって、後述する他のジイソシアネート類を除いたものをいい、各種公知のもの、好ましくは、ブタン−1,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらはアダクト体、アロファネート体等であってもよい。該非分岐状ジイソシアネートのうち、特に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体は、特に塗膜の耐アルコール性等の点より好ましい。
【0021】
なお、(a2)成分には、他のジイソシアネート類を含ませることができる。具体的には、例えば、芳香族系ジイソシアネート〔1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等〕、脂環族系ジイソシアネート〔シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等〕、トリイソシアネート化合物〔トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等〕等を含むことができ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。また、対応するものについてはアダクト体や、アロファネート体等であってもよい。これらの使用量は、(a2)成分中を100重量%とした場合において、通常0〜100重量%程度の範囲で用い得る。
【0022】
(a3)成分は、具体的には、分子内に(メタ)アクリロイル基と活性水素含有基(例えば水酸基)を少なくとも一つずつ有する重合性単量体をいい、各種公知のもの、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を好ましく用い得る。なお、該(a3)成分を用いないと、得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液の貯蔵安定性や、塗膜の防錆性等が不良となる。
【0023】
(a4)成分は、ポリウレタン樹脂(A)の鎖伸長剤および/または鎖長停止剤として作用する成分であり、各種公知のものポリアミン類および/またはポリヒドラジン類を特に制限なく用い得る。該ポリアミン類としては、具体的には、例えば、芳香族ポリアミン〔トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン等〕、脂環族ポリアミン〔イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン等〕、脂肪族ポリアミン〔エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等〕、水酸基含有ポリアミン〔2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等〕が挙げられる。また、該ポリヒドラジン類としては、脂肪族ジカルボン酸ヒドラジド〔コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等〕、芳香族ジカルボン酸ヒドラジド〔イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド等〕が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0024】
なお、本発明では、鎖長停止剤として各種公知のモノアミン類(a5)(以下、(a5)成分という)を用い得る。具体的には、例えば、モノアルキルモノアミン〔モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノ−n−プロピルアミン、モノイソプロピルアミン、モノ−n−ブチルアミン、モノイソブチルアミン等〕、ジアルキルモノアミン〔ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等〕、これら以外の水酸基含有モノアミン〔モノエタノールモノアミン、ジエタノールモノアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等〕等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0025】
ポリウレタン樹脂(A)の製造方法は特に限定されず、例えば、前記(a1)成分〜(a4)成分(および必要に応じて(a5)成分)を通常50〜150℃程度の温度で一括反応させる方法や、前記(a1)成分〜(a3)成分を通常50〜150℃程度の温度で一旦反応させてウレタンプレポリマー(A’)(以下、ウレタンプレポリマー(A’)という)を製造し、次いで、該ウレタンプレポリマー(A’)と前記(a4)成分(および必要に応じて(a5)成分)とを、必要に応じて前記塩基性化合物の存在下で、通常50〜100℃程度の温度で反応させる方法が挙げられる。
【0026】
(a1)成分〜(a4)成分(および必要に応じて(a5)成分)の使用量は特に限定されないが、通常は、(a2)成分のイソシアネート基の当量値(NCO)と、(a1)成分、(a3)成分および(a4)成分(ならびに必要に応じて(a5)成分)の活性水素含有基の当量値の合計値(X)との比(NCO/X)が、1/2〜2/1程度、好ましくは1/1.5〜1.5/1程度となる範囲であればよい。
なお、「イソシアネート基の当量値(NCO)」とは、(a2)成分1モルのグラム数(g)を該(a2)成分のイソシアネート基数で割って得た値をいう。
また、「活性水素含有基の当量値(X)」とは、(a1)成分1モルのグラム数(g)を該(a1)成分の水酸基数で割って得た値(Xa1)と、(a3)成分1モルのグラム数(g)を該(a3)成分の水酸基数で割って得た値(Xa3)と、(a4)成分1モルのグラム数(g)を該(a4)成分のアミノ基および/またはヒドラジド基で割って得た値(Xa4)とを合計した値(Xa1+Xa3+Xa4)、又は、当該合計値に、必要に応じて更に、(a5)成分1モルのグラム数(g)を該(a5)成分のアミノ基数で割って得た値(Xa5)を加えた値(Xa1+Xa3+Xa4+Xa5)をいう。
【0027】
こうして得られるポリウレタン樹脂(A)の物性は特に限定されないが、通常、得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液の貯蔵安定性等の観点より、酸価(JIS−K−0070)が10〜50mgKOH/g程度、二重結合当量値が通常2000〜55000程度である。なお、「二重結合当量値」とは、(a3)成分に由来する重合性炭素−炭素二重結合一つあたりのポリウレタン樹脂(A)のグラム数(固形分換算)をいう。
【0028】
重合性単量体(B)における(b1)成分は、一般式(1):CH=CRCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、またRは炭素数1〜18のアルキル基を表す。なお、Rは分岐構造を有していてもよい。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類である。
【0029】
該(b1)成分の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸イソミリスチルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0030】
なお、重合性単量体(B)は、(b1)成分以外のラジカル重合性単量体(以下、(b2)成分という)を含み得る。(b2)成分としては、例えば、脂環族(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸2−シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等〕、芳香族(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、α−メチルスチレン等〕、ハロゲン元素含有(メタ)アクリレート〔(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等〕等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。(b2)成分は、重合性単量体(B)中、50モル%未満であるのが好ましい。
【0031】
本発明に係るアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液は、ポリウレタン樹脂(A)および水の存在下で、重合性単量体(B)を重合反応させることにより得ることができる。なお、重合性単量体(B)は、ポリウレタン樹脂(A)と水を含む反応系に外部より添加する態様だけでなく、前記ウレタンプレポリマー(A’)に予め混合させておく態様で利用することができ、特に後者の態様は、(b1)成分として疎水性の強いもの(Rの炭素数が多いもの)を用いる場合に好ましい。
【0032】
水としては、市水、蒸留水、脱イオン水等が挙げられる。また、水とともに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−アミルアルコール、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール系溶剤を用い得る。
【0033】
重合性単量体(B)を重合させる際の反応温度は、通常60〜100℃程度である。また、ポリウレタン樹脂(A)(固形分換算)に対する重合性単量体(B)の使用量は特に限定されないが、得られる水分散液の貯蔵安定性の観点より、通常3〜50重量%程度である。
【0034】
前記重合反応の際には、各種公知の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば、有機過酸化物〔過酸化ベンゾイルやイソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ラウリルパーオキサイド、ジーtーブチルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジンカーボネイト等〕、アゾ化合物〔アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル等〕、無機パーオキサイド化合物〔過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウム、過酸化水素等〕が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。該重合開始剤の使用量は、重合性単量体(B)に対して通常0.1〜5重量部程度である。
【0035】
こうして得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液は、実用上の観点より、固形分濃度が通常20〜50重量%程度、粘度が10〜10000mPa・s/25℃程度であり、pHが6〜10程度である。また、該アクリル−ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量は、貯蔵安定性の観点より、通常1000〜1000000程度である。
【0036】
該アクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液は、通常はそのままでも鋼板用防錆塗料組成物として用い得るが、必要に応じて、各種公知の架橋剤(メラミン、イソシアネート、フェノール等)や、着色剤、耐ブロッキング剤、フッ素系化合物、消泡剤等を併用することもできる。また、塗膜の防錆効果を向上させるため、或いは塗膜と鋼板との密着性を向上させるために、各種シリカゾルやシランカップリング剤を併用できる。
【0037】
本発明の組成物の塗装対象である鋼板としては、普通鋼板や、アルミめっき鋼板、ステンレス鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板等の処理鋼板が挙げられる。なお、亜鉛合金めっきとしては、Zn−Al、Zn−Mg、Zn−Ni、Zn−Al−Mg等が挙げられる。また、鋼板には、当該組成物からなる塗膜の密着性を向上させるために、下塗層(ポリエステル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、エポキシ変性ポリエステル樹脂系塗料等の塗膜層)が予め設けられていてもよい。
【0038】
前記塗装手段としては特に限定されず、例えば、ナチュラルロールコート法、リバースロールコート、カーテンフローコート法等を例示できる。なお、該鋼板用防錆塗料組成物の塗装は、前記表面処理鋼板が未成形の段階で行ってもよく(プレコート法)、また、前記表面処理鋼板を成形加工した後に行ってもよい(ポストコート法)。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例を通じて本発明をより具体的に説明するが、これらにより本発明が限定されないことはもとよりである。
【0040】
実施例1
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、市販ポリカーボネートポリオール(製品名「クラレポリオールC2090」、数平均分子量2000;クラレ(株)製)287.7重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物(製品名「VESTANAT TMDI」、エボニックデグサジャパン(株)製)172.7重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12.2重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のウレタンプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン35.8重量部、アジピン酸ジヒドラジド40.8重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.5重量部、水1237.1重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合し、60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.7重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度40mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0041】
実施例2
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」287.7重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、「VESTANAT TMDI」172.7重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12.2重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸ラウリル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン35.8重量部、アジピン酸ジヒドラジド40.8重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.5重量部、水1237.1重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.7重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度60mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0042】
実施例3
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」218.6重量部、市販ビスフェノールA・プロピレンオキシド付加物(製品名「アデカポリエーテルBPX−55」;数平均分子量790;(株)ADEKA製)54.6重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、「VESTANAT TMDI」187.2重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12.3重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.2重量部、アジピン酸ジヒドラジド46.7重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1248.9重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度60mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0043】
実施例4
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」218.6重量部、「アデカポリエーテルBPX−55」54.6重量部、「VESTANAT TMDI」187.2重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12.3重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸ラウリル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.2重量部、アジピン酸ジヒドラジド46.7重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1248.9重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部、)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度70mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0044】
実施例5
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」213重量部、2,2−ジメチロールブタン酸36.3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(製品名「デュラネートD−201」、旭化成ケミカルズ(株)製)301重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約3重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル138重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の680部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン9重量部、アジピン酸ジヒドラジド19.3重量部、トリエチルアミン24.6重量部、ジエタノールアミン2.2重量部、水1626重量部、イソプロピルアルコール41重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分30重量%、粘度200mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0045】
実施例6
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」229重量部、2,2−ジメチロールブタン酸36.3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(製品名「デュラネートX−3136」、旭化成ケミカルズ(株)製)284.4重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約3重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル138重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の680部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン9重量部、アジピン酸ジヒドラジド25.2重量部、トリエチルアミン24.6重量部、ジエタノールアミン2.2重量部、水1641重量部、イソプロピルアルコール41重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分30重量%、粘度150mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0046】
比較例1
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」279.7重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、イソホロンジイソシアネート180.8重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチルを12.3部仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.0重量部、アジピン酸ジヒドラジド44.2重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1243.9重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度100mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0047】
比較例2
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」279.7重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、イソホロンジイソシアネート180.8重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを12.3部仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸ラウリル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.0重量部、アジピン酸ジヒドラジド44.2重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1243.9重量部イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度120mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0048】
比較例3
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」211.9重量部、「アデカポリエーテルBPX−55」53.0重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、イソホロンジイソシアネート195.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル12.4重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.4重量部、アジピン酸ジヒドラジド50.2重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1255.8重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度130mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0049】
比較例4
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールC2090」211.9重量部、「アデカポリエーテルBPX−55」53.0重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、実施例1と同様の4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート195.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル12.4重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸ラウリル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.4重量部、アジピン酸ジヒドラジド50.2重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1255.8重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度140mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0050】
比較例5
実施例1と同様の4つ口フラスコに、市販ポリエステルジオール(製品名「クラレポリオールP2010」、数平均分子量2000;クラレ(株)製)218.6重量部、「アデカポリエーテルBPX−55」54.6重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、「VESTANAT TMDI」187.2重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル12.3重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、別途用意した同様の4つ口フラスコ内の、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.2重量部、アジピン酸ジヒドラジド46.7重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1248.9重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度60mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0051】
比較例6
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールP2010」218.6重量部、「アデカポリエーテルBPX−55」54.6重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、「VESTANAT TMDI」187.2重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル12.3重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸ラウリル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.2重量部、アジピン酸ジヒドラジド46.7重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1248.9重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度80mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0052】
比較例7
実施例1と同様の4つ口フラスコに、「クラレポリオールP2010」211.9重量部、「アデカポリエーテルBPX−55」53.0重量部、2,2−ジメチロールブタン酸39.6重量部、イソホロンジイソシアネート195.5重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル12.4重量部を仕込み、70℃で6時間ウレタン化反応を行い、遊離イソシアネート基の含有量が約5.0重量%のプレポリマーを得た。次いで、メタクリル酸メチル125.0重量部を添加し、混合した。次いで、得られた混合物の620.0部を、攪拌状態にある鎖伸長剤水溶液(イソホロンジアミン36.4重量部、アジピン酸ジヒドラジド50.2重量部、トリエチルアミン26.8重量部、ジエタノールアミン5.6重量部、水1255.8重量部、イソプロピルアルコール37.3重量部)へと徐々に滴下して、反応系全体を混合した。その後、反応系を60℃で2時間攪拌保持して、鎖伸長反応を行なった。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.8重量部を添加し、反応系を70℃で3時間攪拌保持して重合反応を行なった。こうして固形分35.0重量%、粘度150mPa・s/25℃のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を得た。
【0053】
【表1】

【0054】
表中、各記号は下記の化合物を表す。;
C2090:ポリカーボネートポリオール
BPX−55:ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物
DMBA:2,2−ジメチロールブタン酸
TMDI:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物
HDIアダクト:ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体
HDIアロファネート:ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体
IPDI:イソホロンジイソシアネート
2−HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
IPDA:イソホロンジアミン
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
MMA:メタクリル酸メチル
LMA:メタクリル酸ラウリル
【0055】
〔貯蔵安定性の評価〕
上記実施例および比較例で得られた各アクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液を、40℃にて30日間放置し、外観及び粘度の変化を以下の基準で評価した。
結果を表1に示す。
○:外観や粘度の変化がほとんどない。
×:外観において不溶物の沈殿がみられる。
【0056】
〔塗工液の調製〕
実施例1のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液と、市販シリカゾル(商品名「スノーテックスN」、日産化学(株)製)と、市販シランカップリング剤(商品名「KBM‐403」、信越化学(株)製)とを、74:24.5:1.5の固形分重量比で配合し、塗工液を調製した。実施例2〜6、および比較例1〜7のアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液についても同様にして、塗工液を調製した。
【0057】
〔塗装試験片の作製〕
実施例1に係る塗工液を、亜鉛めっき鋼板(厚さ0.8mm、幅70mm、長さ150mm)に、乾燥膜厚が1μmになるようにバーコーターにて塗布し、250℃で20秒乾燥して試験片を作製した。実施例2〜6、および比較例1〜7に係る塗工液についても同様にして、試験片を作製した。
【0058】
〔防錆性の評価〕
各試験片を、塩水噴霧試験機(35℃、塩水濃度5%、噴霧時間48時間)にかけた後、水洗いし、塗膜面の錆の発生具合を目視観察し、以下の基準により評価した。
◎:錆の発生が全く認められない。
○:部分的に若干の錆の発生が認められる。
△:全体的に錆の発生が認められる。
【0059】
〔耐アルカリ性の評価〕
各試験片を、アルカリ水溶液(日本ペイント製SD−270、濃度20g/L)に23℃で3分間浸漬した後、塩水噴霧試験機(35℃、塩水濃度5%、噴霧時間48時間)にかけた。その後、各試験片を水洗いし、塗膜面の錆の発生具合を目視観察し、以下の基準により評価した。
◎:アルカリ浸漬部に錆の発生が全く認められない。
○:アルカリ浸漬部に若干の錆の発生が認められる。
△:アルカリ浸漬部の全体に錆の発生が認められる。
×:アルカリ浸漬部の全体に酷い錆の発生が認められる。
【0060】
〔加工性の評価〕
各試験片について、エリクセン押し出し試験機(押し出し量7mm)により押し出し加工を行なった後、塩水噴霧試験機(35℃、塩水濃度5%、噴霧時間48時間)にかけた。その後、各試験片を水洗いし、塗膜面の錆の発生具合を目視観察し、以下の基準により評価した。
◎:加工部に錆の発生が全く認められない。
○:加工部に若干の錆の発生が認められる。
△:加工部の全体に錆の発生が認められる。
【0061】
〔耐アルコール性の評価〕
各試験片を、エタノールに23℃で3分間浸漬した後、塩水噴霧試験機(35℃、塩水濃度5%、噴霧時間48時間)にかけた。その後、各試験片を水洗いし、塗膜面の錆の発生具合を目視観察し、以下の基準により評価した。
◎:エタノール浸漬部に錆の発生が全く認められない。
○:エタノール浸漬部に若干の錆の発生が認められる。
△:エタノール浸漬部の全体に錆の発生が認められる。
【0062】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオールを含むポリオール類(a1−1)、アニオン性官能基含有ポリオール類(a1−2)、脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート類(a2)、活性水素含有基を有するアクリル化合物(a3)、ならびにポリアミン類および/またはポリヒドラジン類(a4)を反応成分とするポリウレタン樹脂(A)、ならびに水の存在下で、一般式(1):CH=CRCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(b1)を含む重合性単量体(B)を重合反応させて得られるアクリル−ポリウレタンウレア樹脂水分散液、を用いてなる鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項2】
ポリオール類(a1−1)が、さらにビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物を含有する、請求項1に記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項3】
ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物成分が、ビスフェノールAとプロピレンオキシドとの付加反応物である、請求項2に記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項4】
ポリオール類(a1−1)中、ポリカーボネートポリオールが10〜99重量%、およびビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が90〜1重量%である、請求項2または3に記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項5】
脂肪族ジイソシアネートが分岐状ジイソシアネートおよび/または非分岐状ジイソシアネートである、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項6】
分岐状ジイソシアネートが、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項5に記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項7】
非分岐状ジイソシアネートが、1,6ヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項5に記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項8】
活性水素含有基を有するアクリル化合物(a3)が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項9】
ポリウレタン樹脂(A)が、更にモノアミン類(a5)を反応成分とするものである、請求項1〜8のいずれかに記載の鋼板用防錆塗料組成物。
【請求項10】
ポリウレタン樹脂(A)の酸価が10〜50mgKOH/gである、請求項1〜9のいずれかに記載の鋼板用防錆塗料組成物。

【公開番号】特開2010−53340(P2010−53340A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146091(P2009−146091)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】