説明

鋼殻の接合装置、鋼殻、外殻及び外殻先行トンネル工法

【課題】鋼殻の推進精度を向上させ、使用する鋼殻の数を少なくすることで施工時間を短く、労力を小さくすることができ、加えて鋼殻の接合部への土砂等の流入を防止することで鋼殻間の密着性を向上させて外殻の構造強度の向上を図る。
【解決手段】本発明に係る鋼殻の接合装置114は、先行して設置される先行鋼殻115に設けられた先行側断面C形溝117と、先行鋼殻115に続いて設置される後行鋼殻116に設けられた後行側断面C形溝118と、前記C形溝117、118にスライド可能に挿入され、係止部126、127を両端に有する連結金具125であって、後行鋼殻設置の際に、両端の係止部126、127がそれぞれ前記C形溝117、118に挿入された状態で、後行鋼殻116と共に進行する連結金具125と、両者の締結用基端面121、122を締結固定する締結手段123、124とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置、鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の構造物が林立し、網目状に道路や軌道(本明細書ではこれらを総称して路線という)が張り巡らしている都市部では、地上の構造物や路線等に影響を与えることなく、その地下においてトンネルを構築し、新たな路線等を敷設するいわゆる「アンダーパス工事」が広く行われている。このようなアンダーパス工事では、地下の比較的浅い個所にトンネルを設けることから、周辺地山の崩落等を防止する目的で外殻を構築する外殻先行トンネル工法が採用されている。
【0003】
図9乃至図11は、従来のトンネル工法の概略を示す説明図である。図9に示すトンネル工法は、直径80cm程度の円形鋼管101を多数本使用して門型のパイプルーフ102を形成し、パイプルーフ102の内部にトンネル骨格構造体103を構築するようにしたものである。
また図10に示すトンネル工法は、口径80cm程度のプレキャストコンクリート桁105を多数本使用して、プレキャストコンクリート桁105によって外殻106を形成するようにしたものである。尚、プレキャストコンクリート桁105には凹凸係合構造107が設けられており、この凹凸係合構造107によって後行のプレキャストコンクリート桁105の挿入を案内し、プレキャストコンクリート桁105の設置を容易にしている。
また図11に示すトンネル工法は、端部に係合構造110を有する鋼製エレメント111を使用し、係合構造110同士を係合することによって鋼製エレメント111を接続し、内部の空洞に中詰めコンクリート112を充填し、固化させることによって外殻113を形成するようにしたものである。
【0004】
一方、地中深くに大型の矩形断面のトンネルを形成する場合には、下記特許文献1に示すように上記円形鋼管101やプレキャストコンクリート桁105より更に口径の大きな鋼殻を外殻用下穴に設置し、隣接する鋼殻をボルト、ナットにより締結固定することによって外殻を形成する工法も発案されている。
【0005】
しかし、図9乃至図11に示す円形鋼管101、プレキャストコンクリート桁105ないし鋼製エレメント111を使用する工法にあっては、各エレメント(ここでは円形鋼管101、プレキャストコンクリート桁105ないし鋼製エレメント111を意味する)の口径ないし幅寸法が小さいため、多数のエレメントを使用しなければならず、しかも各エレメントを1本ずつ設置しなければならなかった。従って、外殻を完成させるのに多大な施工時間と労力を必要としていた。
【0006】
また、すべてのエレメントを締結固定して初めて外殻は所望の構造強度を発揮するものであるから、最終締結までの時間が長く、その間に地上の構造物や路線等に影響を及ぼすおそれが懸念されていた。
【0007】
また上記エレメントは、油圧式の元押しジャッキを使用して地山中に押し込まれるのが一般的であるが、継手に制約され、方向制御が難しい場合やエレメント継手間に土砂が付着し、構造的に課題を残す場合があった。
【0008】
一方、特許文献1は、鋼殻の位置ずれや傾きによって生ずるボルト孔のずれをテーパーワッシャー等を使用することによって対処しようとする発明を開示するものであるが、鋼殻は根本的に密着された状態で接合されることによって所望の構造強度を発揮するものであるから、理想的には鋼殻は位置ずれや傾きを生じることなく設置されることが好ましい。また、先行して設置した先行鋼殻に沿わせるようにして隣接する後行鋼殻を設置するものであるが、その際、両者の接合部位に土砂や石が入り込む場合があり、これによって鋼殻が破損したり、鋼殻間の密着状態が得られず所望の構造強度が得られないという場合も生じていた。
【0009】
【特許文献1】特開2001−288991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このような背景技術及び背景技術が抱える問題点の存在を踏まえてなされたものであって、外殻形成の位置だし用の基準鋼殻として大開口の鋼殻(エレメント)を用いることで、その推進精度を向上させると共に使用する鋼殻の数を少なくして外殻形成に掛かる施工時間を短く、労力を小さくすることができ、尚且つ外殻形成時の地上の構造物や路線等に及ぼす影響を小さくできる、また、各鋼殻の接合部への土砂等の流入を防止することで各鋼殻間の密着性を向上させて外殻の構造強度の向上を図ることのできる新規且つ有用な鋼殻の接合装置、鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の第1の態様に係る鋼殻の接合装置は、掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置であって、先行して設置される先行鋼殻に設けられた先行側断面C形溝と、先行鋼殻に続いて設置される後行鋼殻に設けられた後行側断面C形溝と、先行側断面C形溝と後行側断面C形溝内にスライド可能に挿入され、前記スライド方向と直行する方向には、抜出不能にする係止部を両端に有する連結金具であって、後行鋼殻設置の際に、両端の係止部がそれぞれ先行側断面C形溝と後行側断面C形溝に挿入された状態で、後行鋼殻と共に進行する連結金具と、を備えていることを特徴とすることを特徴とするものである。
ここで、先行鋼殻と後行鋼殻が設置された後において先行鋼殻の先行側断面C形溝の連結用基端面と、後行鋼殻の後行側断面C形溝の締結用基端面とを固定する締結手段を備えているものが望ましい。
【0012】
ここで、前記先行側断面C形溝あるいは前記後行側断面C形溝におけるC形溝とは、前記連結金具の両端の係止部と係合し、該連結金具の前記スライド方向と直行する方向には、前記係止部を抜出不能にするような形状のものであり、前記係止部が引っかかるように、溝の断面の最大幅部分よりも、開口部の幅が狭いような形状の溝のことをいう。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、連結金具、先行側断面C形溝及び後行側断面C形溝の組み合わせにより、先行鋼殻と後行鋼殻は連結金具で連結されるので、先行鋼殻と後行鋼殻の間に自由度があり、水平方向及び鉛直方向の変位を吸収できる。尚且つ、後行鋼殻と先行鋼殻とが連結金具を介して連結され、後行鋼殻推進時のガイド機能が得られる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る鋼殻の接合装置は、第1の態様において、前記連結金具、前記先行側断面C形溝、前記後行側断面C形溝及びそれぞれの締結用基端面によって区画される空間に中詰めコンクリートを充填し、固化させることによって形成される固着構造を備えていることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、固着構造の採用によって鋼殻間の接合は更に強固になる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る鋼殻の接合装置は、第1または第2の態様において、前記係止部と、前記C形溝とは、互いの当接部が係止部に前記抜出方向に力が作用したときに、前記C形溝の開口を閉じるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、連結金具の係止部と先行側断面C形溝または後行側断面C形溝との当接部が、係止部に前記抜出方向に力が作用したときに、C形溝の開口を閉じるように構成されているので、連結金具が先行側及び後行側断面C形溝から抜け難く、連結金具に水平な力に対して耐力を有し、母材と同程度の継手耐力を確保できる。
【0017】
本発明の第4の態様に係る鋼殻の接合装置は、第1乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記先行側断面C形溝は、該溝内へ土砂が流入するのを防止し、前記後行鋼殻を設置する際に、前記連結金具を挿入することによって除去される被覆体によって覆われていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、被覆体の採用により先行側断面C形溝内への土砂の流入が確実に防止される。このことによって、先行側断面C形溝内を連結金具が進行する際に、連結金具が安定して移動できる。
【0019】
本発明の第5の態様に係る鋼殻の接合装置は、掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置であって、先行して設置した先行鋼殻に対して後行鋼殻の一部を係合させ、両者を密着させた状態で後行鋼殻を設置し得るようにする係合手段と、を備えていることを特徴とするものである。
ここで、設置後の先行鋼殻と後行鋼殻とを締結固定する締結手段を備えているものが望ましい。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、係合手段の採用によって、後行鋼殻は先行鋼殻に密着した状態で高い推進精度によって挿入され設置される。これに伴って締結手段による締結固定が確実に行われるようになり、鋼殻間への土砂の流入が防止され、接合した鋼殻の構造強度が向上する。
【0021】
本発明の第6の態様に係る鋼殻の接合装置は、第5の態様において、前記係合手段は、係合部と被係合部とからなり、該被係合部は、鋼殻間及び鋼殻内へ土砂が流入するのを防止する、土砂流入防止手段を備えていることを特徴とするものである。
本発明の第6の態様によれば、土砂流入防止手段により、係合部から鋼殻間や鋼殻溝内へ土砂が流入するのが確実に防止される。
【0022】
本発明の第7の態様に係る鋼殻の接合装置は、掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置であって、先行して設置した先行鋼殻に対して後行鋼殻の一部が入り込むように先行鋼殻に対して設けられる受入凹部と、後行鋼殻に対して設けられる延長突出部と、後行鋼殻設置のための後行掘削時に重合空間内へ土砂が流入するのを防止し、後行鋼殻の進行に伴って推進方向にスライドする土留め用スライド板と、を備えていることを特徴とするものである。
ここで、先行鋼殻と後行鋼殻が設置された後において受入凹部の基端面と、延長突出部の基端面とを締結固定する締結手段を備えているものが望ましい。
【0023】
本発明の第7の態様によれば、受入凹部と延長突出部の採用によって、後行鋼殻の一部が先行鋼殻に入り込んだ状態で挿入され、尚且つ土留め用スライド鋼板の採用により鋼殻間ないし鋼殻内への土砂の流入が確実に防止される。また締結手段の採用によって鋼殻間の接合は更に強固になる。
【0024】
本発明の第8の態様に係る鋼殻の接合装置は、第7の態様において、前記受入凹部、前記延長突出部及びそれぞれの前記基端面によって区画される重合空間に中詰めコンクリートを充填し、固化させることによって形成される固着構造を備えていることを特徴とする。
本発明の第8の態様によれば、固着構造の採用によって鋼殻間の接合は更に強固になる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る鋼殻の接合装置は、第7または第8の態様において、前記受入凹部と延長突出部との間には、滑り支承、あるいは転がり支承によって構成されるガイド構造が設けられていることを特徴とするものである。
本発明の第9の態様によれば、上記ガイド構造の採用によって後行鋼殻は先行鋼殻に接触抵抗小さく密着した状態になる。従って高い推進精度によってスムースに挿入され、設置されるから接合した鋼殻の構造強度が向上する。
【0026】
本発明の第10の態様に係る鋼殻は、掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻であって、前記掘削手段は複数のカッター要素を組み合わせることによって構成されてなり、前記鋼殻は前記掘削手段によって掘削される口径の大きなあるいは特異な形状の外殻用下穴に対応した大きさないし形状を成しており、接合される鋼殻の接合部位には、接合された状態で前記第1乃至第9の態様のいずれかに記載の鋼殻の接合装置となる要素構造部が設けられていることを特徴とするものである。
本発明の第10の態様によれば、エレメント(鋼殻)のサイズを大きく設定できるから、使用するエレメント(鋼殻)の数を少なくでき、外殻形成に掛かる施工時間を大幅に短縮して、労力を軽減することができる。また鋼殻の推進精度の向上も図られる。
【0027】
本発明の第11の態様に係る外殻は、掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される外殻であって、該外殻は前記第7の態様に係る鋼殻を適宜組み合わせて接合し、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、固化させることによって形成されていることを特徴とするものである。
本発明の第11の態様によれば、少ない工数で短時間に外殻を形成でき、中詰めコンクリートの充填により外殻の構造強度の一層の向上を図ることが可能となる。
【0028】
本発明の第12の態様に係る外殻は、第10の態様において、外殻の隅角部に位置し、他の鋼殻より開口面積が大きく形成された複数の大開口の鋼殻と、該大開口の鋼殻間を連接する一種または複数種の連接鋼殻との2種類を有しており、前記複数の大開口の鋼殻のうち一つの隅角部に位置する大開口の鋼殻は、他の鋼殻に先行して設置される位置だし用の基準鋼殻であると共に、隣接する他の鋼殻を設置する際のガイドとして機能するように構成されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第12の態様によれば、鋼殻は大開口の鋼殻と連接鋼殻との2タイプの鋼殻を有しているから、鋼殻の構成が簡単になって鋼殻の設置、接合に掛かる施工時間が短くなって労力が軽減される。また外殻の一つの隅角部となる位置に大開口の鋼殻を位置だし用の基準鋼殻として配置することで、続いて設置される鋼殻の位置ずれや傾きが極めて小さくなる。すなわち設置する鋼殻の推進精度の向上と、外殻の構造強度の向上が図られる。
【0030】
本発明の第13の態様に係る外殻は、第12の態様において、前記連接鋼殻と、前記複数の大開口の鋼殻のうち、前記位置出し用の基準鋼殻である大開口の鋼殻以外の他の大開口の鋼殻は、これら鋼殻の中における先行して設置された先行鋼殻をガイドとして、前記隣接する他の後行鋼殻を設置するように構成されていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第13の態様によれば、連接鋼殻と、複数の大開口の鋼殻のうち位置出し用の基準鋼殻である大開口の鋼殻以外の他の大開口の鋼殻の中において、先行して設置された先行鋼殻をガイドとして、隣接する他の後行鋼殻を設置することによって、続いて配置される鋼殻の位置ずれや傾きが極めて小さくなる。すなわち設置する鋼殻の推進精度の向上と、外殻の構造強度の向上が図られる。
【0032】
本発明の第14の態様に係る外殻は、第12または第13の態様において、前記複数の大開口の鋼殻には、外殻内掘削時に除去される構造の仮設鋼殻が各大開口の鋼殻の一部に設けられていることを特徴とするものである。
本発明の第14の態様によれば、仮設鋼殻の採用により、該仮設鋼殻を除去することで、隅角部に設置される大開口の鋼殻の推進精度を向上しつつ、容易にトンネルの骨格構造体の形状に合わせることができる。
【0033】
本発明の第15の態様に係る外殻は、第11乃至第14の態様のいずれかにおいて、前記鋼殻間の接合位置を外殻に荷重が掛かった場合の曲げモーメント曲線における+方向の曲げと−方向の曲げの変化点付近に設定したことを特徴とするものである。
本発明の第15の態様によれば、外殻の設計強度を更に高く設定でき、またボルト締結を減らすことが可能になり、以て部品コストの削減を図ることができる。
【0034】
本発明の第16の態様に係る外殻先行トンネル工法は、複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される横型パッケージ推進機ないし縦型パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、外殻用下穴を先行掘削する外殻用下穴先行掘削工程と、当該先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴内に順次先行鋼殻を押し込みながら設置して行く先行鋼殻設置工程と、複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される横型パッケージ推進機ないし縦型パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、先行掘削した外殻用下穴に隣接する外殻用下穴を後行掘削する外殻用下穴後行掘削工程と、当該後行掘削と同時に先行して設置した先行鋼殻に対してその一部を係合させた状態で当該推進方向後方の外殻用下穴内に順次後行鋼殻を押し込みながら設置して行く後行鋼殻設置工程と、設置した鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻を形成する外殻形成工程と、形成した外殻内部の地山を掘削し、トンネルを貫通させる外殻内部掘削工程と、を備えていることを特徴とするものである。
ここで、前記外殻形成工程において、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填する前に、設置した複数本の鋼殻を締結固定するのが望ましい。
【0035】
本発明の第16の態様によれば、後行鋼殻は先行鋼殻に密着した状態で高い推進精度によって挿入され設置される。これに伴って締結手段による締結固定が確実に行われるようになり、鋼殻間への土砂の流入が防止され、外殻の構造強度が向上する。またエレメント(鋼殻)のサイズを大きく設定できるから、使用するエレメント(鋼殻)の数を少なくでき、外殻形成に掛かる施工時間を大幅に短縮して、労力の軽減を図ることができる。またパイプルーフや特別な補助工事等を必要としないため、工数の削減を図ることができる。
【0036】
本発明の第17の態様に係る外殻先行トンネル工法は、複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される隅角部用パッケージ推進機を使用して一つの隅角部の地山を掘削し、基準となる外殻用下穴を先行掘削する外殻用下穴先行掘削工程と、当該先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴内に順次先行鋼殻としての基準鋼殻を押し込みながら設置して行く先行鋼殻設置工程と、複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される天井、床部用パッケージ推進機ないし側部用パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、先行掘削した外殻用下穴に隣接する外殻用下穴を後行掘削する外殻用下穴後行掘削工程と、当該後行掘削と同時に先行して設置した先行鋼殻としての基準鋼殻に対して設けられる受入凹部に、延長突出部を嵌合させた状態で当該推進方向後方の外殻用下穴内に順次後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻ないし側部用鋼殻を押し込み、後行鋼殻の進行と同時に推進方向に土留め用スライド鋼板をスライドさせながら後行鋼殻を設置して行く後行鋼殻設置工程と、他の隅角部に前記先行鋼殻と同構造の鋼殻を設置する工程と、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する外殻形成工程と、形成した外殻内部の地山を掘削すると同時に前記各隅角部に位置する各鋼殻の一部に設けられている仮設鋼殻を除去してトンネルを貫通させる外殻内部掘削工程と、を備えていることを特徴とするものである。
ここで、前記外殻形成工程において、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填する前に、受入凹部の基端面と、延長突出部の基端面とを締結固定するのが望ましい。
【0037】
本発明の第17の態様によれば、受入凹部と延長突出部の採用によって、後行鋼殻の一部が先行鋼殻に入り込んだ状態で挿入され、尚且つ土留め用スライド鋼板の採用により鋼殻間ないし鋼殻内への土砂の流入が防止される。また締結手段の採用によって鋼殻間の接合が更に強固になって外殻の構造強度が向上する。また鋼殻を先行鋼殻と後行鋼殻(天井、床部用鋼殻ないし側部用鋼殻)との2タイプの鋼殻によって構成できるから、鋼殻の構成が簡単になって鋼殻の設置、接合に掛かる施工時間が短くなって労力が軽減される。
【0038】
また外殻の角隅部の一つに基準鋼殻を配置することで鋼殻の位置ずれや傾きが極めて小さくなり、鋼殻の推進精度の向上と、外殻の構造強度の向上が図られる。更に基準鋼殻として大きなサイズのものが使用できるから基準鋼殻ないし後行鋼殻の推進精度及び設置精度が更に向上する。また仮設鋼殻の採用により、外殻内を掘削する際に該仮設鋼殻を除去することで、基準鋼殻としての推進精度を向上しつつ、容易にトンネルの骨格構造体の形状に合わせることができる。更にまたパイプルーフや特別な補助工事等を必要としないため、工数の削減を図ることができる。
【0039】
本発明の第18の態様に係る外殻先行トンネル工法は、第17の態様において、前記外殻形成工程は、受入凹部、延長突出部及びそれぞれの基端面によって区画される重合空間に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する工程を含んでいることを特徴とする。
本発明の第18の態様によれば、固着構造の採用によって、鋼殻間の接合が更に強固になって外殻の構造強度が向上する。
【0040】
本発明の第19態様に係る外殻先行トンネル工法は、複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される隅角部用パッケージ推進機を使用して一つの隅角部の地山を掘削し、基準となる外殻用下穴を先行掘削する外殻用下穴先行掘削工程と、当該先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴内に順次先行鋼殻としての基準鋼殻を押し込みながら設置して行く先行鋼殻設置工程と、複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される天井、床部用パッケージ推進機ないし側部用パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、先行掘削した外殻用下穴に隣接する外殻用下穴を後行掘削する外殻用下穴後行掘削工程と、先行して設置した先行鋼殻としての基準鋼殻に対して設けられた先行側断面C形溝と、先行鋼殻に続いて後行掘削と同時に設置される後行鋼殻に設けられた後行側断面C形溝内に、当該後行掘削と同時にスライドさせて挿入されると共に、前記スライド方向と直行する方向には、抜出不能にする係止部を両端に有する連結金具の一方の係止部を、後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻ないし側部用鋼殻に対して設けられる後行側断面C形溝に挿入した状態で、当該進行方向後方の外殻用下穴内に順次前記後行鋼殻を押し込みながら、前記連結金具の他方の係止部を前記先行鋼殻の先行側断面C形溝内に挿入し、該連結金具は、後行鋼殻と共に進行していく後行鋼殻設置工程と、他の隅角部に前記先行鋼殻と同構造の鋼殻を設置する工程と、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する外殻形成工程と、形成した外殻内部の地山を掘削してトンネルを貫通させる外殻内部掘削工程と、を備えていることを特徴とするものである。
ここで、前記外殻形成工程において、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填する前に、先行鋼殻の締結用基端面と、後行鋼殻の締結用基端面とを締結固定することが望ましい。
【0041】
本発明の第19の態様によれば、先行鋼殻と後行鋼殻の接合に、連結金具、先行側断面C形溝及び後行側断面C形溝を採用したことによって、先行鋼殻と後行鋼殻の間に自由度を持たせ、水平方向及び鉛直方向の変位を吸収することできる。更に、後行鋼殻設置工程において、後行鋼殻は先行鋼殻に挿入した連結金具に案内され、前記先行鋼殻に沿って正確に配置することができる。
【0042】
本発明の第20の態様に係る外殻先行トンネル工法は、第19の態様において、前記外殻形成工程は、連結金具、先行側断面C形溝、後行側断面C形溝及びそれぞれの締結用基端面によって区画される空間に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する工程を含んでいることを特徴とするものである。
本発明の第20の態様によれば、固着構造の採用によって、鋼殻間の接合が更に強固になって外殻の構造強度が向上する。
【0043】
本発明の第21の態様に係る外殻先行トンネル工法は、第19または20の態様において、前記係止部と、前記C形溝とは、互いの当接部が係止部に前記抜出方向に力が作用したときに、C形溝の開口を閉じることを特徴とするものである。
本発明の第21の態様によれば、外殻先行トンネル工法において、上記した第2の態様と同等の効果が得られる。
【0044】
本発明の第22の態様に係る外殻先行トンネル工法は、第19乃至第21の態様のいずれかにおいて、前記後行鋼殻設置工程では、後行鋼殻の進行と同時に推進方向に先行側断面C形溝の被覆体を連結金具で除去しながら後行鋼殻を設置して行くことを特徴とするものである。
本発明の第22の態様によれば、外殻先行トンネル工法において、上記した第3の態様と同等の効果が得られる。
【0045】
本発明の第23の態様に係る外殻先行トンネル工法は、第16乃至第22の態様のいずれかにおいて、前記外殻先行トンネル工法は、地上の構造物や路線等に影響を与えることなく、その地下にトンネルを構築し、新たな路線等を敷設するいわゆるアンダーパス工事において使用されることを特徴とするものである。
本発明の第23の態様によれば、従来基準となるエレメントのサイズが小さく多大の施工時間と労力を必要としていた施工現場において、エレメントのサイズの大きな鋼殻を使用できるようにし、施工時間の大幅な短縮と、労力の削減を図ることができる。また鋼殻の採用により外殻の構造強度も向上する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、連結金具、先行側断面C形溝及び後行側断面C形溝の組み合わせにより、先行鋼殻と後行鋼殻は連結金具で連結されるので、先行鋼殻と後行鋼殻の間に自由度があり、水平方向及び鉛直方向の変位を吸収できる。尚且つ、後行鋼殻と先行鋼殻とが連結金具を介して連結され、後行鋼殻推進時のガイド機能が得られる。また、外殻形成時において生ずる地上の構造物や路線等に及ぼす影響を小さくでき、また鋼殻間への土砂等の流入を防止することで鋼殻間の密着性を向上させて外殻の構造強度の向上を図ることができる。また、外殻を形成する場合の位置だし用の基準鋼殻として最終的に設置されるサイズよりも大きい大開口鋼殻を用いることで、基準鋼殻およびそれに続いて設置される他の鋼殻の推進精度を向上させることができる。また大開口鋼殻の採用により使用する鋼殻の数を少なくすることができ、外殻形成に掛かる施工時間の短縮と労力の削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本願発明に係る鋼殻の接合装置、鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法について下記の実施例1と実施例2を例にとって説明する。尚、下記の実施例1及び2では、地上の構造物や路線等に影響を与えることなく、その直下の比較的浅い地下にトンネルを構築してトンネル内に新たな路線等を敷設するいわゆる「アンダーパス工事」において本発明の鋼殻の接合装置、鋼殻、外殻及び外殻先行トンネル工法を適用する場合を想定して説明する。
【0048】
尚、本明細書において使用する「先行」、「後行」とは、比較する2つの対象ないし行為のうち、先に実行される対象ないし行為について使用する場合が「先行」、後に実行される対象ないし行為について使用する場合が「後行」であり、相対的な意味で使用するものである。具体的には、先に設置された鋼殻のことを「先行鋼殻」、先行鋼殻を設置するために先に外殻用下穴を形成する行為を「先行掘削」という。そして当該先行鋼殻に接合された後に設置される鋼殻のことを「後行鋼殻」、後行鋼殻を設置するために先に形成した外殻用下穴と隣接する他の外殻用下穴を後に形成する行為を「後行掘削」という。
【0049】
また、本明細書において使用する「エレメント」とは外殻を形成するための要素になるものを意味する。具体的には、本発明では鋼殻がエレメントであり、図9では円形鋼管101、図10ではプレキャストコンクリート桁105、そして図11では鋼製エレメント111がそれぞれエレメントである。
【0050】
[実施例1]
本実施例では、図3に示す鋼殻の接合装置と鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法について説明する。図1は実施例1に係る外殻を示す正面側から見た縦断面図で説明を解りやすくするため一部に推進機を残して描いてある。図2は推進機単体の概略を示す側断面図である。図3は転がり支承を適用したガイド構造を備えた実施例1に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図(a)と、滑り支承を適用したガイド構造を備えた実施例1に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図(b)である。また図4は実施例1に係る外殻先行トンネル工法の施工手順を段階的に示す説明図、図5は実施例1に係る外殻に荷重が掛かった場合の曲げモーメント図である。
【0051】
最初に図1に基づいて外殻1の基本的構成について説明する。外殻1は、周辺地山の崩落や地上の構造物や路線等に与える影響を防止するために設けられる構造体であり、最終的にはトンネルの骨格構造体になるものである。そして本実施例では外殻1は矩形枠状に形成されており、外殻1の隅角部に設けられる4つの大開口の鋼殻2と上下または左右に位置して前記大開口の鋼殻2間を連接する2つずつ設けられる天井、床部用鋼殻3と側部用鋼殻4からなる2種類2組の連接鋼殻5とを接合することによって構成されている。
【0052】
また、大開口の鋼殻2と連接鋼殻5は、後述する本実施例に係る鋼殻の接合装置6によって接合され、各鋼殻2、3、4内には、中詰めコンクリート7が充填され、養生、固化させることによって外殻1の骨格は形成されている。そして、各大開口の鋼殻2には後述するように、その一部に仮設鋼殻8が設けられており、外殻内の地山掘削の際に該仮設鋼殻8を除去することによって、外殻1は矩形枠形状に整形される。尚、各鋼殻2、3、4内に充填される中詰めコンクリート7としては、高流動コンクリートが一例として使用される。
【0053】
次に、このような外殻1を形成するのに先立って行われる外殻用下穴100の掘削に使用される掘削手段の一例である推進機、すなわち複数のカッター要素9を組み合わせることによって構成される隅角部用パッケージ推進機10、天井・床部用パッケージ推進機11及び側部用パッケージ推進機12の概略について説明する。本発明において使用する各推進機10,11,12は、各鋼殻の断面形状が図1に示すように矩形状をしていることから矩形断面の外殻用下穴100を掘削できる構造を有している。
【0054】
具体的には図1、図2に示すように、推進機10,11,12は、所定の角度範囲内において往復揺動されるカッタービット固定揺動板13と、カッタービット固定揺動板13に多数設けられ、直接地山を掘削するカッタービット14と、カッタービット固定揺動板13を駆動するカッター揺動油圧ジャッキ15と、カッタービット固定揺動板13に対して出没自在に設けられ、カッタービット14の掘削残部を掘削するコピーカッター16と、コピーカッター16を駆動するコピーカッター油圧ジャッキ17と、推進機の推進方向を調整する推進方向修正油圧ジャッキ18と、掘削した土砂を推進方向後方に搬出するスクリューコンベヤ19とを備えることによって構成されている。
【0055】
尚、本明細書において使用するカッター要素9は、上記カッタービット固定揺動板13、カッタービット14、コピーカッター16の総称である。また、推進機10,11,12としては、本出願人が既に出願して公開された特開2000−45689号公報の翼型シールド掘進機において採用した翼型のカッター要素を備えるものが一例として使用できる。因みに、この翼型シールド掘進機におけるカッター要素は、カッタービット固定揺動板13を翼形状とし、その揺動中心を外殻用下穴100の中心より上部に位置させたことにより、カッタービット固定揺動板13を鳥の翼の羽ばたきのように上下方向に揺動させることができるため効率的な掘削が可能である。従って、本発明のように横または縦に長い矩形断面の外殻用下穴100を掘削するのに好適なカッター要素ということができる。
【0056】
そして、隅角部用パッケージ推進機10にあっては、安定して精度良く外殻用下穴100が形成されるよう、比較的大型のカッター要素9を左右1対1組使用している。また、天井、床部用パッケージ推進機11にあっては、比較的小型のカッター要素9を左右1対4組使用して、先行して設置される基準鋼殻となる大開口鋼殻2の案内作用によって推進精度の調整が図られている。また、側部用パッケージ推進機12にあっては、これらの中間の大きさのカッター要素9を片側2組使用して、上記天井、床部用パッケージ推進機11と同様先行して設置される基準鋼殻となる大開口鋼殻2の案内作用によって推進精度の調整が図られている。ここで「大開口」とは、外殻1の構成要素として機能する時点の対応する鋼殻の大きさより大きい共に、後述する天井、床部用鋼殻3や側部用鋼殻4の横長開口や縦長開口のような扁平な形状に偏っていなければよいことを意味する。
【0057】
次に、隅角部用パッケージ推進機10によって掘削された口径の大きな矩形断面の外殻用下穴100に設置される大開口鋼殻2と、天井、床部用パッケージ推進機11によって掘削された横に長い矩形断面の外殻用下穴100内に設置される天井、床部用鋼殻3と、側部用パッケージ推進機12によって掘削された縦に長い矩形断面の外殻用下穴100内に設置される側部用鋼殻4について説明する。大開口鋼殻2は、天井、床部用鋼殻3及び側部用鋼殻4より開口面積が大きく、大開口鋼殻2のうち少なくとも一つは、これらの天井、床部用鋼殻3及び側部用鋼殻4に先行して最初に設置される位置だし用の基準鋼殻である。他の鋼殻は、該基準鋼殻に案内されつつ設置され、更に既設の先行鋼殻に案内されて順次設置される。
【0058】
また大開口鋼殻2には、図1に示すようにトンネルが掘削される内方の隅角部に仮設鋼殻8が設けられている。仮設鋼殻8は、最終的には外殻内の地山掘削時において切除或いは締結解除などによって除去される部分であるが、隅角部において安定した推進精度が得られる比較的大型の隅角部用パッケージ推進機10を使用する必要から採られた構成である。仮設鋼殻8としては、所定の構造強度を有し、その後のトンネル掘削時において使用する掘削手段によって切除可能な材料で形成するのが望ましい。例えば、合成樹脂発泡体を無機繊維で強化した複合材が適用でき、より具体的には、硬質ウレタン樹脂によって構成される合成樹脂発泡体をガラス長繊維によって構成される無機繊維で強化したもの、例えば、市販されている軽量耐食構造材であるエスロンネオランバーFFU(商品名:積水化学工業株式会社製)のうち、品種記号FFU−74等が好適である。
【0059】
天井、床部用鋼殻3は、図1に示すように外殻1の天井部と床部に配置される横に長い矩形断面の鋼殻であって、図示のように左右の大開口鋼殻2に対して水平な姿勢で連接されている。また側部用鋼殻4は、図1に併せて示すように外殻1の左右の側壁として配置される縦に長い矩形断面の鋼殻であって、図示のように上下の大開口鋼殻2に対して垂直な姿勢で連接されている。
【0060】
そして、これらの大開口鋼殻2と、天井、床部用鋼殻3及び側部用鋼殻4との接合部21は、図5に示すように、曲げモーメント曲線22の+方向の曲げと−方向の曲げの変化点23に設けるようにする。因みに上記変化点23に接合部21を配置した場合には、接合部21において設けられる本発明の鋼殻の接合装置6に係る曲げモーメントが最も小さくなり、外殻1の設計強度を向上させることができる。また、鋼殻の接合装置6の構成部材であるボルト締結構造を減らすことが可能となり、以て部品コストの削減を図ることができる。
【0061】
次に、上記鋼殻2、3、4の接合部21に設けられる本実施例に係る鋼殻の接合装置6について図3に基づいて説明する。本実施例に係る鋼殻の接合装置6は、先行して設置された先行鋼殻としての基準鋼殻となる大開口鋼殻2に対して後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻3あるいは側部用鋼殻4の一部が入り込むようにして設けられている。以下図3に示す左下隅角部に位置している基準鋼殻となる大開口鋼殻2と、床部に位置している天井、床部用鋼殻3との間の接合部21に設けられる鋼殻の接合装置6を例にとって説明する。
【0062】
この鋼殻の接合装置6は、基準鋼殻となる大開口鋼殻2に対して設けられる受入凹部24と、天井、床部用鋼殻3に対して設けられる延長突出部27と、当該受入凹部24の基端面25と延長突出部27の基端面28とを締結固定する締結手段としてのボルト30及びナット31と、上記受入凹部24、延長突出部27及びそれぞれの基端面25、28によって区画される重合空間32に中詰めコンクリート7を充填し、養生、固化させることによって形成される固着構造33と、後行掘削時に重合空間32内に土砂Rが流入するのを防止する土留め用スライド鋼板34とを備えることによって構成されている。
【0063】
受入凹部24は、基準鋼殻となる大開口鋼殻2の右下のコーナー部に形成されており、上下に2枚の水平板26を有し、水平板26の左端に垂直に基端面25が形成されている。尚、受入凹部24の上方に設けられているのが仮設鋼殻8、受入凹部24の左方に位置しているのが基準鋼殻となる大開口鋼殻2の区画された内部空間である。
一方、延長突出部27は、天井、床部用鋼殻3の左端部に形成されており、上下に2枚、水平方向に延長形成されている部材で、上記受入凹部24の水平板26の内側に中嵌めされている。また、延長突出部27の右端において垂直に形成されているのが基端面28であり、基端面28の右方に位置しているのが天井、床部用鋼殻3の区画された内部空間である。
【0064】
ボルト30は、基端面25と基端面28を架け渡すことのできるような長寸のボルトであって、両端に雄ネジが形成された頭部のない軸のみのボルトを一例として使用する。そして、ボルト30の両端を上記基準鋼殻となる大開口鋼殻2の内部空間及び天井、床部用鋼殻3の内部空間まで貫通させ、2個のナット31によって外方より締結固定する。尚、上記1本のボルト30と2個のナット31からなる締結手段は、上下2組配置され、更に鋼殻2、3の伸張方向に適宜の間隔を空けて複数組配置される。
【0065】
また、重合空間32内に充填される中詰めコンクリート7としては、各鋼殻内に充填されるものと同じ高流動コンクリートが一例として使用できる。土留め用スライド鋼板34は、天井、床部用鋼殻3を設置するための外殻用下穴100を後行掘削する際に、当該外殻用下穴100の左側に位置している重合空間32の部分から土砂が重合空間32内に流入しないようにせき止める役割をする平板状の部材である。また、土留め用スライド鋼板34は、後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻3の進行に伴ってその延長突出部27の先端部に押されて推進方向にスライドするように構成されており、天井、床部用鋼殻3が最終的に設置されるまでの間、土砂Rの流入を防止している。
【0066】
以上が実施例1に係る鋼殻の接合装置6の基本的な構成であるが、更に図3に示すようなガイド構造35を設けることが可能である。例えば図3(a)では、延長突出部27の一部を矩形状に凹陥させて、その内部に転がり支承の一例であるローラ支承36を設け、このローラ支承36が上下の水平板26の下面及び上面を転動するように構成したガイド構造35を示している。
また図3(b)では、延長突出部27の先端を連結して突出端面29を形成し、基端面25に設けた断面T字形の係合突起37を突出端面29に刻設した係合溝38に係合させた滑り支承によるガイド構造35を示している。
【0067】
次に、本実施例に係る外殻先行トンネル工法について図4に基づいて説明する。外殻先行トンネル工法は、トンネルの構築に先立って周辺地山の崩落を防止し、地上の構造物や路線等への影響を小さくするための先ず外殻1を構築するようにした工法である。そして本実施例では、上述の鋼殻の接合装置6を備えた鋼殻、即ち大開口鋼殻2と連接鋼殻5としての天井、床部用鋼殻3及び側部用鋼殻4を適宜組み合わせることによって外殻1を構築している。
【0068】
具体的には外殻用下穴先行掘削工程と、先行鋼殻設置工程と、外殻用下穴後行掘削工程と、後行鋼殻設置工程と、外殻形成工程と、外殻内部掘削工程とを備えることによって本実施例に係る外殻先行トンネル工法は構成されている。このうち外殻用下穴先行掘削工程は、上記隅角部用パッケージ推進機10を使用して外殻1の隅角部となる部位の地山を掘削し、基準となる外殻用下穴100を先行掘削する工程である(図4(a)参照)。本実施例では矩形枠状の外殻1を形成することから隅角部は外殻1の四隅に生じるが、その四隅の内の最初に掘削される位置が基準外殻用下穴100となる。
【0069】
また、先行鋼殻設置工程は、上記隅角部における基準外殻用下穴100の先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴100内に順次先行鋼殻としての基準鋼殻(大開口鋼殻)2を、図示しない元押しジャッキを使用して徐々に押し込みながら設置して行く工程である(図4(b)参照)。
【0070】
外殻用下穴後行掘削工程は、天井、床部用パッケージ推進機11ないし側部用パッケージ推進機12を使用して、先行して掘削した隅角部の外殻用下穴100に隣接する外殻用下穴100を後行掘削する工程である(図4(c)参照)。
【0071】
また後行鋼殻設置工程は、上記外殻用下穴100の後行掘削と同時に、先行して設置した先行鋼殻としての基準鋼殻2に対して設けられる受入凹部24に延長突出部27を嵌合させた状態で、当該基準鋼殻2に案内されつつ当該推進方向後方の外殻用下穴100内に順次後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻3ないし側部用鋼殻4を図示しない元押しジャッキを使用して徐々に押し込みながら設置して行く工程である(図4(d)参照)。そして、この工程では、後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻3ないし側部用鋼殻4の進行と同時に天井、床部用パッケージ推進機11ないし側部用パッケージ推進機12の推進方向に土留め用スライド鋼板34をスライドさせながら天井、床部用鋼殻3ないし側部用鋼殻4を設置して行くようにして重合空間32内への土砂の流出を防止した状態で作業を進める。
【0072】
続いて、設置された前記天井、床部用鋼殻3ないし側部用鋼殻4を先行鋼殻として、該先行鋼殻に案内されつつ、他の大開口鋼殻2が同様の掘削及び鋼殻設置工程を経て設置され、以下同様にして最終的に図1の外殻1が形成される。尚、側部用鋼殻4を先行鋼殻として他の大開口鋼殻2をその上に設置する場合は、該側部用鋼殻4の内側付近であって前記他の大開口鋼殻2の下方領域部分の地盤を硬化処理しておくことが、当該他の大開口鋼殻2を確実に支える上で望ましい。
【0073】
外殻形成工程は、受入凹部24の基端面25と延長突出部27の基端面28とをボルト30とナット31を使用して締結固定し、重合空間32及び各鋼殻2、3、4の内部空間内に中詰めコンクリート7を充填し、養生、固化させることによって外殻1の骨格を形成する工程である(図4(e)参照)。尚、この工程終了時点では内隅部に位置する仮設鋼殻8はそのまま残っており、内側に張り出した状態になっている。
【0074】
そして、外殻内部掘削工程は、形成した外殻1の内部の地山を掘削する工程であり、地山の掘削と同時に大開口鋼殻2の内隅部に設けられている仮設鋼殻8を除去して、トンネルを貫通させる工程である。このように本実施例に係る外殻先行トンネル工法は、極めて少ない鋼殻を使用して効率良く外殻1を形成でき、施工時間の短縮と外殻1の形成に必要な労力を大幅に軽減できる極めて利用価値の高い工法ということができる。
【0075】
[実施例2]
本実施例では、図7に示す鋼殻の接合装置と、該接合装置を備えた鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法について説明する。図6は実施例2に係る外殻を示す横断面図、図7は接合前の実施例2に係る鋼殻の接合装置を示す横断面図(a)と、接合後の実施例2に係る鋼板の接合装置を示す横断面図(b)である。

最初に図6に基づいて本実施例に係る外殻41の基本的構成について説明する。外殻41は、矩形枠状に形成されており、外殻41の天井部及び床部に2つずつ設けられる計4つの横型鋼殻42と、左右の側壁部に2段ずつ設けられる計4つの縦型鋼殻43とを接合することによって構成されている。また横型鋼殻42と縦型鋼殻43は、後述する本実施例に係る鋼殻の接合装置46によって接合され、各鋼殻42、43内には、中詰めコンクリート7が充填され、養生、固化させることによって外殻1が形成されている。尚、各鋼殻42、43内に充填される中詰めコンクリート7としては、高流動コンクリートが一例として使用される。
【0076】
次に、このような外殻1を形成するのに先立って行われる外殻用下穴100の掘削に使用される横型パッケージ推進機50と縦型パッケージ推進機51の概略について簡単に説明する。尚、カッター要素9としては、実施例1において述べたような翼型のカッター要素を備えるものが一例として使用できる。横型パッケージ推進機50は、図6に示すように比較的小型のカッター要素9を左右一対4組並設することによって構成されている。また縦型パッケージ推進機51は、図6において併せて示すように横型パッケージ推進機50において使用したカッター要素9より幾分大型のものを左右互い違いに2組段積みにすることによって構成されている。
【0077】
次に、横型パッケージ推進機50によって掘削された外殻用下穴100に設置される横型鋼殻42と縦型パッケージ推進機51によって掘削された外殻用下穴100に設置される縦型鋼殻43について説明する。横型鋼殻42は、図6に示すように外殻41の天井部と床部に2個並設して設けられる横に長い矩形断面の鋼殻であって、図示のように水平な姿勢で連接されている。また縦型鋼殻43は、図6に併せて示すように外殻41の左右の側壁として配置される縦に長い矩形断面の鋼殻であって、図示のように上下に2個段積みにされて垂直な姿勢で連接されている。
【0078】
次に、上記横型鋼殻42と縦型鋼殻43の各接合部61に設けられる本実施例に係る鋼殻の接合装置46について図7に基づいて説明する。本実施例に係る鋼殻の接合装置46は、先行して設置された先行鋼殻(横型鋼殻42の場合と縦型鋼殻43の場合の両方の場合がある)に対して後行鋼殻(横型鋼殻42の場合と縦型鋼殻43の場合の両方の場合がある)の一部を係合させ、両者を密着させた状態で後行鋼殻を設置し得るようにする係合手段64と、設置後の先行鋼殻と後行鋼殻とを締結固定する締結手段としてのボルト70及びナット71とを備えることによって構成されている。
【0079】
係合手段64は、図7に示すように一例として接近して位置する先行鋼殻に対して設けられる断面T字形の有底の溝穴を有する、被係合部である係合溝66と、一例として右側に位置する後行鋼殻に対して設けられる断面T字形の、係合部である係合突起65とによって構成されている。このように、被係合部を有底の溝穴とすることで、鋼殻内への土砂の流入を防止することができる。また、該係合溝66の有底の溝穴を、係合突起65が挿入されることによって除去される被覆体によって覆うことで、前記有底の溝内への土砂の流入を防止することができ、以って鋼殻間及び鋼殻内への土砂の流入も防止される。溝穴を前記被覆体で覆うことで鋼殻間及び鋼殻内への土砂の流入は防止できるが、被係合部を有底の溝穴とすることと組み合わせるとより効果的である。
【0080】
また、上記係合手段64は、先行鋼殻と後行鋼殻の中間付近の高さに設けられている。そして、係合手段64を挟むようにその上下に1個ずつボルト孔72が設けられており、このボルト孔72に一例として軸部が短く、頭部を備えるボルト70が貫通されナット71を螺合させることによって先行鋼殻と後行鋼殻は締結固定される。
【0081】
次に、本実施例に係る外殻先行トンネル工法について説明する。本実施例では、上述の鋼殻の接合装置46を備えた4本の横型鋼殻42と4本の縦型鋼殻43を矩形枠状に組み合わせることによって外殻41を構築している。具体的には、外殻用下穴先行掘削工程と、先行鋼殻設置工程と、外殻用下穴後行掘削工程と、後行鋼殻設置工程と、外殻形成工程と、外殻内部掘削工程とを備えることによって本実施例に係る外殻先行トンネル工法は構成されている。
【0082】
このうち外殻用下穴先行掘削工程は、横型パッケージ推進機50ないし縦型パッケージ推進機51を使用して地山を掘削し、外殻用下穴100を先行掘削する工程である。また先行鋼殻設置工程は、当該外殻用下穴100の先行掘削と同時に、掘進方向後方の外殻用下穴100内に順次先行鋼殻を図示しない元押しジャッキを使用して徐々に押し込みながら設置して行く工程である。
【0083】
外殻用下穴後行掘削工程は、横型パッケージ推進機50ないし縦型パッケージ推進機51を使用して地山を掘削し、上記先行掘削した外殻用下穴100に隣接する外殻用下穴100を掘削する工程である。また後行鋼殻設置工程は、上記外殻用下穴100の後行掘削と同時に先行して設置した先行鋼殻に対して係合手段64を係合させた状態で当該推進方向後方の外殻用下穴100内に順次図示しない元押しジャッキを使用して徐々に押し込みながら設置して行く工程である。
【0084】
外殻形成工程は、設置した複数本の鋼殻42、43を締結手段としてのボルト70とナット71とを使用して締結固定し、鋼殻42、43内に中詰めコンクリート7を充填し、養生、固化させることによって外殻41を形成する工程である。そして外殻内部掘削工程は、形成した外殻41の内部の地山を掘削し、トンネルを貫通させる工程である。このように本実施例に係る外殻先行トンネル工法は、実施例1に係る工法と同様、極めて少ない鋼殻を使用して効率良く外殻41を形成でき、施工時間の短縮と外殻41の形成に必要な労力を大幅に軽減できる極めて利用価値の高い工法ということができる。
【0085】
[実施例3]
本実施例では、図12に示す鋼殻の接合装置と、該接合装置を備えた鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法における、後行鋼殻設置工程及び外殻を構成する鋼殻の施工ステップについて説明する。
【0086】
図12は実施例3に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図、図13及び図14は実施例3に係る鋼殻の接合装置の作用を説明するための要部拡大図、図15は実施例3に係る鋼殻の接合装置の連結金具を示す斜視図、図16及び図17は、他の実施例に係る連結金具を用いた鋼殻の接合装置の要部縦断面図、図18は連結金具のさらに他の実施例を示す斜視図、図19(A)(B)、図20(A)(B)及び図21(A)(B)は、実施例3に係る鋼殻を使用して先行鋼殻を設置した後の、後行鋼殻設置工程を示す施工ステップを説明する図、図22乃至図27は、実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図、図28は図23の要部拡大図、図29は図25の要部拡大図、図30は図29の要部拡大図である。
【0087】
最初に、本実施例に係る鋼殻の接合装置114について図12に基づいて説明する。
この鋼殻の接合装置114は、先行して設置される先行鋼殻115に設けられた先行側断面C形溝117と、先行鋼殻115に続いて設置される後行鋼殻116に設けられた後行側断面C形溝118と、先行側断面C形溝117と後行側断面C形溝118内にスライド可能に挿入され、前記スライド方向と直行する方向には、抜出不能にする係止部126,127を両端に有する連結金具であって、後行鋼殻116設置の際に、両端の係止部126,127がそれぞれ先行側断面C形溝117と後行側断面C形溝118に挿入された状態で、後行鋼殻116と共に進行する連結金具125と、先行鋼殻115と後行鋼殻116が設置された後において先行鋼殻115の先行側断面C形溝117の締結用基端面121と、後行鋼殻116の後行側断面C形溝118の締結用基端面122とを締結固定する締結手段としてのボルト123及びナット124とを備えている。
【0088】
更に、本実施例では、連結金具125、先行側断面C形溝117、後行側断面C形溝118及びそれぞれの締結用基端面121、122によって区画される空間128に中詰めコンクリート(図示せず)を充填し、固化させることによって形成される固着構造(図示せず)を備えている。
【0089】
前記連結金具125は、先行側断面C形溝117及び後行側断面C形溝118にスライドさせて挿入された後、前記スライド方向と直交する方向には抜出不能にする断面球状の係止部126、127を、両端に備えている(図13及び図15参照)。
【0090】
先行鋼殻115に続いて後行鋼殻116を設置する際には、前記連結金具125の一方の係止部127を、後行側断面C形溝118に挿入した状態で、進行方向に順次前記後行鋼殻116を押し込みながら、前記連結金具125の他方の係止部126を前記先行鋼殻115の先行側断面C形溝117内に挿入する。そして、該連結金具125が、後行鋼殻116と共に進行していくことによって、先行側断面C形溝117が連結金具125をガイドし、該先行鋼殻115に対して正確に配置される。
【0091】
次に、図12において、ボルト123は、締結用基端面121と締結用基端面122を架け渡すことのできるような長寸のボルトであって、両端に雄ネジが形成された頭部のない軸のみのボルトを一例として使用する。そして、ボルト123の両端を上記先行鋼殻115の内部空間及び後行鋼殻116の内部空間まで貫通させ、2個のナット124によって外方より締結固定する。尚、上記1本のボルト123と2個のナット124からなる締結手段は、上下2組配置され、更に鋼殻115、116の伸張方向に適宜の間隔を空けて複数組配置される。
【0092】
ここで、締結手段として前記ボルト123を用いる方法の他に、前記連結金具を挿入した後の先行側C形溝117内の空間141および後行側断面C形溝118内の空間142に、グラウトを充填することにより、先行鋼殻と後行鋼殻を固定することもできる。グラウトとは、セメントに水を加えてペースト状にしたものである。グラウトとしては、高強度無収縮グラウトを用いるのが好ましい。
先行側の空間141および後行側の空間142に前記グラウトを充填することにより、連結金具による接合部119が強固に固定される。これによって前記接合部119には十分な強度が確保でき、ボルトによる締結固定に代えることができる。
また、前記グラウトによる固定法によれば、連結金具125と先行側C形溝117または連結金具125と後行側断面C形溝118との間に存在する隙間を埋めることができ、該隙間からの浸水を防止できるため、止水効果と腐食防止効果も期待できる。
【0093】
また、空間128内に充填される中詰めコンクリート(図示せず)としては、各鋼殻内に充填されるものと同じ高流動コンクリートが一例として使用できる。
【0094】
尚、締結用基端面121と締結用基端面122を接近させて、前記空間128がほとんどない構造にすることも可能である。この場合には、締結用基端面121と122で作られる空間が小さくなるので、両基端面の間にコンクリートを流し込む工程を要しない。
【0095】
次に、図13乃至図15を用いて、本実施例における鋼殻の接合装置114の作用を説明する。
図13のように、先行鋼殻115と後行鋼殻116は、先行側断面C形溝117及び後行側断面C形溝118に、連結金具125の係止部126及び127が挿入されて連結されている。連結金具125は、上述のように、該連結金具125の係止部126、127をC形溝117、118へスライドさせて挿入される。そのため、先行側断面C形溝117及び後行側断面C形溝118は、係止部126及び127が安定して進行できるような余裕を持たせた形状となっている。
【0096】
このC形溝117及び118の形状によって、先行鋼殻115と後行鋼殻116の間には水平方向及び鉛直方向への自由度ができる。図14は先行鋼殻115と後行鋼殻116の間の鉛直方向への自由度を示す図である。
【0097】
前記水平方向及び鉛直方向への自由度の度合いは、連結金具125の長さ及びC形溝117及び118の深さによって決まる。本実施の形態においては、先行側断面C形溝117との後行側断面C形溝118の先端が互いに接触することなく離間して配置され、図14のように後行鋼殻116が先行鋼殻115に対して変位した場合に、水平方向に30mm、鉛直方向に8mm程度の変位量を吸収できるように構成されている。
【0098】
また、連結金具125の係止部126、127の形状は、図15の態様に限るものではなく、図16ような断面台形状とすることも可能である。
図16の前記係止部126、127と前記C形溝117、118は、係止部126とC形溝117または係止部127とC形溝118の互いの当接部において、該係止部126、127に抜出方向(先行側断面C形溝117と後行側断面C形溝118内にスライドさせて挿入された連結金具125の、スライド方向と直交する方向)に力が作用したときに、前記C形溝117または118の開口を閉じるように構成されている。即ち、前記係止部126、127と前記C形溝117、118とはその組み合わせによって自己閉じ作用を有するように構成されている。
【0099】
この自己閉じ作用によって、係止部126または127に前記抜出方向に力が作用したときに、C形溝117または118の開口を閉じるので、連結金具125が該C形溝117、118から抜け難く、これにより、連結金具125に水平に加わる力に対して充分な耐力を発揮し、母材と同程度の継手耐力を確保できる。
自己閉じ作用を示す係止部の他の形状としては、図18のようなハート形状が挙げられる。
【0100】
また、先行側断面C形溝117と後行側断面C形溝118は、図16のように、C形溝の形状を同形状とすれば、前記C形溝117及び118は共通化でき、コスト削減が可能である。尚、図17のように、先行側断面C形溝117と後行側断面C形溝118の形状が異なっていてもよい。
【0101】
次に、図19乃至図21に基づいて、上記接合装置を備えた鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法における、後行鋼殻設置工程の施工ステップを説明する。本実施例に係る外殻先行トンネル工法を構成する他の工程、即ち、外殻用下穴先行掘削工程と、先行鋼殻設置工程と、外殻用下穴後行掘削工程と、外殻形成工程と、外殻内部掘削工程については、実施例1と同様であるため、その説明は省略する。
【0102】
図19乃至図21は先行鋼殻115として隅角部が設置された後、後行鋼殻116として床部用鋼殻を設置する場合である。
【0103】
まず、STEP1において、先行鋼殻115と矩形推進機130とは、接合部119において、接合装置114によって接合される[図19(A)]。前記接合装置114は、上述のように、先行鋼殻115の先行側断面C形溝117と後行鋼殻116の後行側断面C形溝118に連結金具125を挿入して連結するものであり、前記矩形推進機130には後述する後行鋼殻116と同様に後行側断面C形溝118が設けられている。
前記矩形推進機130の後行側断面C形溝118には前記連結金具125の一方の係止部127が挿入され、矩形推進機130と連結金具125とを、ジャッキ131を用いて同時に推進させつつ、連結金具125の他方の係止部126を先行鋼殻115の先行側断面C形溝117に挿入し、ジャッキ131の1ストローク分、矩形推進機130を先方に推進させる。
【0104】
次に、STEP2において、ジャッキ131を戻し、矩形推進機130に続く後行鋼殻116aを、該後行鋼殻116aの後行側断面C形溝に連結金具の一方の係止部を挿入した状態で、矩形推進機130の後方位置に設置する[図19(B)]。
【0105】
続いて、STEP3において、前記後行鋼殻116aと後行側断面C形溝挿入された前記連結金具を、ジャッキ131を用いて同時に推進させつつ、連結金具の他方の係止部を先行鋼殻115の先行側断面C形溝に挿入し、ジャッキ131の1ストローク分、後行鋼殻116aを先方に推進させる[図20(A)]。
【0106】
次に、STEP4において、ジャッキ131を戻し、後行鋼殻116aに続く次位の後行鋼殻116bを、該後行鋼殻116bの後行側断面C形溝に連結金具の一方の係止部を挿入した状態で、後行鋼殻116aの後方位置に設置する[図20(B)]。
【0107】
STEP5において、STEP3と同様に、次位の後行鋼殻116bと後行側断面C形溝挿入された前記連結金具を、ジャッキ131を用いて同時に推進させ、連結金具の他方の係止部を先行鋼殻115の先行側断面C形溝に挿入し、ジャッキ131の1ストローク分、後行鋼殻116bを先方に推進させる[図21(A)]。
【0108】
後行鋼殻116bに続く後行鋼殻をSTEP4とSTEP5の繰り返しによって設置し、STEP6のように全ての後行鋼殻116a、116b、…を前記先行鋼殻115と接合して設置し、後行鋼殻設置工程を完了する[図21(B)]。
【0109】
このとき、先行側断面C形溝に被覆体132が設けられていれば、先行鋼殻設置工程の際や後行鋼殻を設置するための外殻用下穴(図示せず)を後行掘削する際に、先行側断面C形溝内へ土砂が流入するのを防止できる。被覆体132は、後行鋼殻の進行に伴って連結金具に押されて除去されるように構成され、後行鋼殻が最終的に設置されるまでの間、土砂の流入を防止するように形成することが望ましい。前記被覆体132は、発泡スチロール等の柔らかい素材であれば、除去が容易である。
【0110】
次に、図22乃至図29に基づいて、本実施例に係る外殻を構成する鋼殻の施工ステップを説明する。
鋼殻を矩形枠状に組み合わせることによって構築される外殻は、四隅に配置される隅角部と、天井、床部用鋼殻と、左右の側部用鋼殻からなっている。
【0111】
まず、他の鋼殻に先行して設置される位置だし用の基準鋼殻として、左下隅角部の大開口鋼殻134が前述の外殻用下穴先行掘削工程と先行鋼殻設置工程によって設置される(図22)。
【0112】
次に、前記左下隅角部の大開口鋼殻134を先行鋼殻とし、後行鋼殻である床部用鋼殻137を、前述の外殻用下穴後行掘削工程と後行鋼殻設置工程によって設置する(図23、図28)。
ここで、後行鋼殻設置工程において、先行鋼殻115と後行鋼殻116の接合には、前述の先行鋼殻115と後行鋼殻116に設けられたC形溝117、118と連結金具125の組み合わせによる接合装置114を用いているため、位置だし用の基準鋼殻である左下隅角部の大開口鋼殻134(先行鋼殻115)に設けられた先行側断面C形溝117に連結金具125がガイドされ、後行鋼殻である床部用鋼殻137は、該左下隅角部の大開口鋼殻134(先行鋼殻)に対して正確に配置することができる。
【0113】
次に、床部用鋼殻137を先行鋼殻とし、右下隅角部の大開口鋼殻135を後行鋼殻として、外殻用下穴先行掘削工程と先行鋼殻設置工程により同様に設置する(図24)。
以下同様に、先行鋼殻を左下隅角部の大開口鋼殻134、後行鋼殻を左側部用鋼殻138とするステップ(図25、図29)、先行鋼殻を左側部用鋼殻138、後行鋼殻を左上隅角部の大開口鋼殻136とするステップ(図26)、先行鋼殻を右下隅角部の大開口鋼殻135、後行鋼殻を右側部用鋼殻139とするステップ及び先行鋼殻を左上隅角部の大開口鋼殻136、後行鋼殻を天井用鋼殻140とするステップ(図27)を経て、最後に右側部用鋼殻139と天井用鋼殻140を先行鋼殻として、後行鋼殻である右上隅角部の大開口鋼殻(図示せず)を設置し、外殻が構築される。
【0114】
図28乃至図30に示したように、鋼殻を矩形枠状に組み合わせる接合部は、本発明に係るC形溝117及び118に連結金具125が挿入されて接合されていることにより、接合された鋼殻同士の間に自由度があり、垂直方向及び鉛直方向の変位を吸収することができる。特に、本実施例のような大型の鋼殻を矩形枠状に組み合わせる際には有効である。
【0115】
更に、先行側断面C形溝117及び後行側断面C形溝118は、図28乃至図30に示したように、締結用基端面121、122から突出しない形状とすることもできる。このような構造であれば、前記C形溝117、118が邪魔にならず、鋼殻を運搬する際等の取扱がし易くなる。また、前記C形溝117、118が締結用基端面121、122から突出していると、取扱の際に突出した前記C形溝117、118に衝撃や力が加わり、前記C形溝117、118が変形したり曲がったりする虞があるが、図28乃至図30に示した構造であれば、前記C形溝117、118は外部からの衝撃の影響を受けることが少ない。そして、前記締結用基端面121と122を対面させることによって、先行側断面C形溝117と後行側断面C形溝118も対向して配置されるので、後行鋼殻設置工程が容易になる。
【0116】
[他の実施例]
本願発明に係る鋼殻の接合装置、鋼殻、該鋼殻を使用した外殻及び該外殻を使用した外殻先行トンネル工法は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。例えば、実施例1に係る外殻1において使用した大開口鋼殻2における仮設鋼殻8の範囲を、図8(a)に示すように拡大して、外殻用下穴100の後行掘削の際に、図8(b)(c)に示すように同時に切削し、外殻1の内部掘削時に残りの部分を図8(d)に示すように同時に切削するようにすることも可能である。因みに、このように構成した場合には、鋼殻の接合装置として、図7に示す係合手段64と締結手段としてのボルト70及びナット71とからなる比較的シンプルな構成が採用可能となる。
【0117】
また掘削手段としては、前記実施例において述べた元押しジャッキによる押し込み動作によって推進する推進機9の他、前述の説明の中でも例示したシールド掘進機のように自ら掘削しながら前進する機能を備えたもの、更に高度な機能を備えるシールドマシン等を使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本願発明は、アンダーパス工事等が行われているトンネル施工現場、より具体的には、施工時間を短く、少ない労力で効率良く外殻を使用した外殻先行トンネル工法を実行したい場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施例1に係る外殻を示す正面から見た縦断面図である。
【図2】推進機単体の概略を示す側断面図である。
【図3】転がり支承を適用したガイド構造を備えた実施例1に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図(a)と、滑り支承を適用したガイド構造を備えた実施例2に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図(b)である。
【図4】実施例1に係る外殻先行トンネル工法の施工手順を段階的に示す説明図である。
【図5】実施例1に係る外殻に荷重が掛かった場合の曲げモーメント図である。
【図6】実施例2に係る外殻を示す正面から見た縦断面図である。
【図7】接合前の実施例2に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図(a)と、接合後の実施例2に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図(b)である。
【図8】基準鋼板における仮設鋼板の範囲を拡大した他の実施例において仮設鋼板が段階的に切削されて行く様子を示す縦断面図である。
【図9】予めパイプルーフを設ける従来の外殻先行トンネル工法を示す説明図である。
【図10】プレキャストコンクリート桁を使用した従来の外殻先行トンネル工法を示す説明図である。
【図11】鋼製エレメントを使用した従来の外殻先行トンネル工法を示す説明図である。
【図12】実施例3に係る鋼殻の接合装置を示す縦断面図である。
【図13】実施例3に係る鋼殻の接合装置の作用を説明するための要部拡大図である。
【図14】実施例3に係る鋼殻の接合装置の作用を説明するための要部拡大図である。
【図15】実施例3に係る鋼殻の接合装置の連結金具を示す斜視図である。
【図16】他の実施例に係る連結金具を用いた鋼殻の接合装置の要部縦断面図である。
【図17】他の実施例に係る連結金具を用いた鋼殻の接合装置の要部縦断面図である。
【図18】連結金具のさらに他の実施例を示す斜視図である。
【図19】実施例3に係る鋼殻を使用して先行鋼殻を設置した後の、後行鋼殻設置工程を示す施工ステップを説明する図である。
【図20】実施例3に係る鋼殻を使用して先行鋼殻を設置した後の、後行鋼殻設置工程を示す施工ステップを説明する図である。
【図21】実施例3に係る鋼殻を使用して先行鋼殻を設置した後の、後行鋼殻設置工程を示す施工ステップを説明する図である。
【図22】実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図である。
【図23】実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図である。
【図24】実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図である。
【図25】実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図である。
【図26】実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図である。
【図27】実施例3に係る外殻を構成する鋼殻の施工工程を説明する施工ステップを説明する図である。
【図28】図23の要部拡大図である。
【図29】図25の要部拡大図である。
【図30】図29の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0120】
1 外殻、2 大開口鋼殻(基準鋼殻)、3 天井、床部用鋼殻、4 側部用鋼殻、
5 連接鋼殻、6 (鋼殻の)接合装置、7 中詰めコンクリート、8 仮設鋼殻、
9 推進機(掘削手段)、10 隅角部用パッケージ推進機、
11 天井、床部用パッケージ推進機、12 側部用パッケージ推進機、
13 カッタービット固定揺動板、14 カッタービット、
15 カッター揺動油圧ジャッキ、16 コピーカッター、
17 コピーカッター油圧ジャッキ、18 推進方向修正油圧ジャッキ、
19 スクリューコンベヤ、21 接合部、22 曲げモーメント曲線、23 変化点、24 受入凹部、25 基端面、26 水平板、27 延長突出部、28 基端面、
29 突出端面、30 ボルト(締結手段)、31 ナット(締結手段)、
32 重合空間、33 固着構造、34 土留め用スライド鋼板、35 ガイド構造、
36 ローラ支承(転がり支承)、37 係合突起(滑り支承)、
38 係合溝(滑り支承)、41 外殻、42 横型鋼殻、43 縦型鋼殻、
46 (鋼殻の)接合装置、50 横型パッケージ推進機、
51 縦型パッケージ推進機、61接合部、64 係合手段、65 係合突起、
66 係合溝、70 ボルト(締結手段)、71 ナット(締結手段)、
72 ボルト孔、100 外殻用下穴、R 土砂
114 接合装置、115 先行鋼殻、116 後行鋼殻、117 先行側断面C形溝、
118 後行側断面C形溝、119 接合部、120 水平板、
121、122 締結用基端部、123 ボルト(締結手段)、124 ナット(締結手段)、
125 連結金具、126、127 係止部、130 矩形推進機、
131 ジャッキ、132 被覆体、134 大開口鋼殻(左下隅角部)、
135 大開口鋼殻(右下隅角部)136 大開口鋼殻(左上隅角部)、
137 床部用鋼殻、138 左側部用鋼殻、139 右側部用鋼殻、
140 天井用鋼殻、141、142 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置であって、
先行して設置される先行鋼殻に設けられた先行側断面C形溝と、
先行鋼殻に続いて設置される後行鋼殻に設けられた後行側断面C形溝と、
先行側断面C形溝と後行側断面C形溝内にスライド可能に挿入され、前記スライド方向と直行する方向には、抜出不能にする係止部を両端に有する連結金具であって、後行鋼殻設置の際に、両端の係止部がそれぞれ先行側断面C形溝と後行側断面C形溝に挿入された状態で、後行鋼殻と共に進行する連結金具と、を備えていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項2】
請求項1において、前記連結金具、前記先行側断面C形溝、前記後行側断面C形溝及びそれぞれの締結用基端面によって区画される空間に中詰めコンクリートを充填し、固化させることによって形成される固着構造を備えていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記係止部と、前記C形溝とは、互いの当接部が係止部に前記抜出方向に力が作用したときに、前記C形溝の開口を閉じるように構成されていることを特徴とする鋼殻の接合装置
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、前記先行側断面C形溝は、該溝内へ土砂が流入するのを防止し、前記後行鋼殻を設置する際に、前記連結金具を挿入することによって除去される被覆体によって覆われていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項5】
掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置であって、
先行して設置した先行鋼殻に対して後行鋼殻の一部を係合させ、両者を密着させた状態で後行鋼殻を設置し得るようにする係合手段と、を備えていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項6】
請求項5において、前記係合手段は、係合部と被係合部とからなり、該被係合部は、鋼殻間及び鋼殻内へ土砂が流入するのを防止する、土砂流入防止手段を備えていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項7】
掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻の接合装置であって、
先行して設置した先行鋼殻に対して後行鋼殻の一部が入り込むように先行鋼殻に対して設けられる受入凹部と、後行鋼殻に対して設けられる延長突出部と、
後行鋼殻設置のための後行掘削時に重合空間内へ土砂が流入するのを防止し、後行鋼殻の進行に伴って推進方向にスライドする土留め用スライド板と、を備えていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項8】
請求項7において、前記受入凹部、前記延長突出部及びそれぞれの基端面によって区画される重合空間に中詰めコンクリートを充填し、固化させることによって形成される固着構造を備えていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項9】
請求項7または8において、前記受入凹部と延長突出部との間には、滑り支承、あるいは転がり支承によって構成されるガイド構造が設けられていることを特徴とする鋼殻の接合装置。
【請求項10】
掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される鋼殻であって、
前記掘削手段は複数のカッター要素を組み合わせることによって構成されてなり、前記鋼殻は前記掘削手段によって掘削される口径の大きなあるいは特異な形状の外殻用下穴に対応した大きさないし形状を成しており、
接合される鋼殻の接合部位には、接合された状態で請求項1〜9のいずれか1項に記載の鋼殻の接合装置となる要素構造部が設けられていることを特徴とする鋼殻。
【請求項11】
掘削手段によって地山を掘削し、外殻用下穴を掘削すると共に、掘削した外殻用下穴内に順次鋼殻を設置して行き、設置した複数本の鋼殻を接合することによって周辺地山の崩落防止手段である外殻を構築するようにした外殻先行トンネル工法において適用される外殻であって、
請求項10に記載の鋼殻を適宜組み合わせて接合し、鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、固化させることによって形成されていることを特徴とする外殻。
【請求項12】
請求項11において、外殻の隅角部に位置し、他の鋼殻より開口面積が大きく形成された複数の大開口の鋼殻と、該大開口の鋼殻間を連接する一種または複数種の連接鋼殻との2種類を有しており、
前記複数の大開口の鋼殻のうち一つの隅角部に位置する大開口の鋼殻は、他の鋼殻に先行して設置される位置だし用の基準鋼殻であると共に、隣接する他の鋼殻を設置する際のガイドとして機能するように構成されていることを特徴とする外殻。
【請求項13】
請求項12において、前記連接鋼殻と、前記複数の大開口の鋼殻のうち、前記位置出し用の基準鋼殻である大開口の鋼殻以外の他の大開口の鋼殻は、これら鋼殻の中における先行して設置された先行鋼殻をガイドとして、前記隣接する他の後行鋼殻を設置するように構成されていることを特徴とする外殻。
【請求項14】
請求項12または13において、前記複数の大開口の鋼殻には、外殻内掘削時に除去される構造の仮設鋼殻が各大開口の鋼殻の一部に設けられていることを特徴とする外殻。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項において、前記鋼殻間の接合位置を外殻に荷重が掛かった場合の曲げモーメント曲線における+方向の曲げと−方向の曲げの変化点付近に設定したことを特徴とする外殻。
【請求項16】
複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される横型パッケージ推進機ないし縦型パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、外殻用下穴を先行掘削する外殻用下穴先行掘削工程と、
当該先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴内に順次先行鋼殻を押し込みながら設置して行く先行鋼殻設置工程と、
複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される横型パッケージ推進機ないし縦型パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、先行掘削した外殻用下穴に隣接する外殻用下穴を後行掘削する外殻用下穴後行掘削工程と、
当該後行掘削と同時に先行して設置した先行鋼殻に対してその一部を係合させた状態で当該推進方向後方の外殻用下穴内に順次後行鋼殻を押し込みながら設置して行く後行鋼殻設置工程と、
設置した鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻を形成する外殻形成工程と、
形成した外殻内部の地山を掘削し、トンネルを貫通させる外殻内部掘削工程と、を備えていることを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項17】
複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される隅角部用パッケージ推進機を使用して一つの隅角部の地山を掘削し、基準となる外殻用下穴を先行掘削する外殻用下穴先行掘削工程と、
当該先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴内に順次先行鋼殻としての基準鋼殻を押し込みながら設置して行く先行鋼殻設置工程と、
複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される天井、床部用パッケージ推進機ないし側部用パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、先行掘削した外殻用下穴に隣接する外殻用下穴を後行掘削する外殻用下穴後行掘削工程と、
当該後行掘削と同時に先行して設置した先行鋼殻としての基準鋼殻に対して設けられる受入凹部に、延長突出部を嵌合させた状態で当該推進方向後方の外殻用下穴内に順次後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻ないし側部用鋼殻を押し込み、後行鋼殻の進行と同時に推進方向に土留め用スライド鋼板をスライドさせながら後行鋼殻を設置して行く後行鋼殻設置工程と、
他の隅角部に前記先行鋼殻と同構造の鋼殻を設置する工程と、
鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する外殻形成工程と、
形成した外殻内部の地山を掘削すると同時に前記各隅角部に位置する各鋼殻の一部に設けられている仮設鋼殻を除去してトンネルを貫通させる外殻内部掘削工程と、を備えていることを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項18】
請求項17において、前記外殻形成工程は、受入凹部、延長突出部及びそれぞれの基端面によって区画される重合空間に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する工程を含んでいることを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項19】
複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される隅角部用パッケージ推進機を使用して一つの隅角部の地山を掘削し、基準となる外殻用下穴を先行掘削する外殻用下穴先行掘削工程と、
当該先行掘削と同時に、推進方向後方の外殻用下穴内に順次先行鋼殻としての基準鋼殻を押し込みながら設置して行く先行鋼殻設置工程と、
複数のカッター要素を組み合わせることによって構成される天井、床部用パッケージ推進機ないし側部用パッケージ推進機を使用して地山を掘削し、先行掘削した外殻用下穴に隣接する外殻用下穴を後行掘削する外殻用下穴後行掘削工程と、
先行して設置した先行鋼殻としての基準鋼殻に対して設けられた先行側断面C形溝と、先行鋼殻に続いて後行掘削と同時に設置される後行鋼殻に設けられた後行側断面C形溝内に、当該後行掘削と同時にスライドさせて挿入されると共に、前記スライド方向と直行する方向には、抜出不能にする係止部を両端に有する連結金具の一方の係止部を、後行鋼殻としての天井、床部用鋼殻ないし側部用鋼殻に対して設けられる後行側断面C形溝に挿入した状態で、当該進行方向後方の外殻用下穴内に順次前記後行鋼殻を押し込みながら、前記連結金具の他方の係止部を前記先行鋼殻の先行側断面C形溝内に挿入し、該連結金具は、後行鋼殻と共に進行していく後行鋼殻設置工程と、
他の隅角部に前記先行鋼殻と同構造の鋼殻を設置する工程と、
鋼殻内に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する外殻形成工程と、
形成した外殻内部の地山を掘削してトンネルを貫通させる外殻内部掘削工程と、を備えていることを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項20】
請求項19において、前記外殻形成工程は、連結金具、先行側断面C形溝、後行側断面C形溝及びそれぞれの締結用基端面によって区画される空間に中詰めコンクリートを充填し、養生、固化させることによって外殻の骨格を形成する工程を含んでいることを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項21】
請求項19または20において、前記係止部と、前記C形溝とは、互いの当接部が係止部に前記抜出方向に力が作用したときに、C形溝の開口を閉じることを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項22】
請求項19から21のいずれか1項において、前記後行鋼殻設置工程では、後行鋼殻の進行と同時に推進方向に先行側断面C形溝の被覆体を連結金具で除去しながら後行鋼殻を設置して行くことを特徴とする外殻先行トンネル工法。
【請求項23】
請求項16から22のいずれか1項において、前記外殻先行トンネル工法は、地上の構造物や路線等に影響を与えることなく、その地下にトンネルを構築し、新たな路線等を敷設するいわゆるアンダーパス工事において使用されることを特徴とする外殻先行トンネル工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−161544(P2006−161544A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303150(P2005−303150)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】