説明

鋼用結晶粒微細化剤、その製造方法及び使用方法

本発明は、粒状複合材料の形態の新型の鋼用結晶粒微細化剤において、該鋼の凝固工程と後続の熱的機械的処理とが行われる間に、鉄結晶を得るための強力な不均一核形成部位として作用する目的で、オーダーメイドの分散粒子を高体積率で含有する、上記結晶粒微細化剤に関する。該材料は、X又はX(式中、Xは、群:Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeから選ばれている1種類以上の元素であり、Sはイオウであり、Oは酸素である)と、1種類以上の元素Xとを含有する粒子の組成物を含有し、しかも、該材料は、酸素、イオウ、炭素及び窒素を更に含有しており、イオウ(又は酸素)の含有率が該材料の2〜30重量%の間であり、酸素(又はイオウ)、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であり、しかも、該材料は、金属マトリックスX中に埋め込まれた、微細に分散されたX又はXの粒子を高体積率で含有している。本発明は更に、前記複合材料の製法及び使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼用結晶粒微細化複合材料と、そのような鋼用結晶粒微細化複合材料の製造方法と、鋼の結晶粒微細化方法とに関する。該鋼は、フェライト及びオーステナイト鋼の両方であってもよい。
【背景技術】
【0002】
特性の最適な組合せを有する、より高い性能の材料に対する要求は、確実により切実なものとなっている。鋼の微細構造は、結果として得られる機械特性を制御し、従って、望ましい特性プロフィール(property profile)は、適切に調整された微細構造の開発を必要としている。強度と靭性との最適な組合せを生じさせる微粒子の微細構造を作り出す従来の方法は、熱的機械的処理(thermomechanical processing)によるものである。そのような処理を行えば、5μmよりも十分に小さい有効なフェライト結晶粒度を容易に得ることができ、厚肉鋼板においてもそうである。加えて、脱酸素及び脱硫を行うための最新式取鍋精錬技術(ladle refining techniques)を使用すれば、鋼の酸素含有率及びイオウ含有率が概して減少することによって、品質は更に改善される。不純物濃度は、鋼中で酸化物及び硫化物として結合されている非金属混在物(non-metallic inclusions)の量を示す。鋼の諸特性に及ぼす混在物の悪影響は、使用中、該混在物が微小空洞及び開裂(cleavage)の開始部位として作用し得ることに起因する。従って、清浄鋼を使用することは一般に、靭性の観点からは好都合であると考えられる。
【0003】
混在物は、鋼に対して必ずしも問題を引き起こす訳ではない。混在物はフェライト及びオーステナイトのような様々な種類の変態生成物のための強力な不均一核形成部位として作用することができるので、凝固工程の間と、固体状態の間との両方において、微細構造の発達に対して該混在物の触媒効果を利用することができる。この場合、重要な問題は、製造段階の間、混在物の粒度分布を制御することであり、このことは大きな難問である。従って、成功的な結果は、鋳放し鋼(as-cast steel)中の混在物の最大直径と最小直径との両方だけでなく平均粒度をも非常に狭い(特定の)範囲内に維持し得ることを条件とする。
【0004】
このことは、相反する2つの必要条件に基づく。一方において、湾曲界面(curved interface)は不均一核形成に対応するエネルギー障壁を増大させるので、約0.2〜0.4μmより小さいサブミクロンの粒度は、諸混在物がそれらの核形成能(nucleation potency)を喪失し始めることを意味する。他方において、混在物の粒度が2〜4μmよりかなり大きい場合、該混在物は靭性にとって有害となる。同時に、数密度は、急速に低下し、ひいては、仕上げ鋼における結晶粒度を増大させる。そのような状況下では、変態速度論(transformation kinetic)の観点から言えば、鋼中の潜在的な結晶粒微細化能(grain refining potential)は、混在物による結晶粒微細化を不可能にする程度に減少する。
【0005】
鋼中の活性な混在物による結晶粒微細化を促進するためには、可能性のある2つの方法に従うことができる。従来の方法は、過去において広範囲にわたって検討されてきたが、製鋼工程の間、使用される脱酸素及び脱硫の工程を一部変更することによって、系内部に核形成性混在物を作り出すものである。これは、新たな鋼種の開発につながったものであり、結晶粒微細化の重要な部分は、活性混在物の部位でフェライト又はオーステナイトの不均一核形成を行い、次いで、様々な変態温度範囲で冷却することによって達成される。残念ながら、凝固工程の前、溶鋼中の混在物が制御されることなく結晶粒粗大化することは、工業的製鋼が行われる間、依然として大きな課題である。このことは、これらの新たな鋼種には広い用途が見出だされなかったということを意味する。しかし、新たな方法に従うことによって、且つ、核形成性粒子(nucleating particles)の微細分配物(fine distribution)を含有する、特別に設計された結晶粒微細化剤を利用することによって(該粒子は次いで、鋳造工程を行う前、溶鋼に添加される)、後続の製鋼プロセスを行う間に、靭性が低下することなく、結晶粒微細化のための改善された条件を達成することができる。このことは、アルミニウム合金の鋳造において十分に実証された技術である。この技術は、その後、鉄分野に移されている。結果として得られる粒子の数密度と体積率とがほぼ的確な大きさであるという条件で、もし上記の結晶粒微細化剤がそれ自体、製鋼プロセスに負の影響を与えなければ、該結晶粒微細化剤を使用することによって、新たな鋼種の全規模生産(full-scale production)を行うことができる。国際公開WO01/57280号パンフレットには、酸素又はイオウを0.001〜2重量%含有する鋼用結晶粒微細化合金が記述されている。この文脈における用語「合金(alloy)」は非金属元素O及びSが常に低い金属基結晶粒微細化剤(metal-based grain refiner)を意味することに留意されたい。
【0006】
しかし、鋼の結晶粒微細化において、酸素及びイオウは、核形成性混在物の粒子体積率と数密度とを制御する重要な要素である。従って、後続の製鋼プロセスが行われる間、所望する程度の結晶粒微細化を達成するためには、国際公開WO01/57280号パンフレットに記述される結晶粒微細化合金を、溶鋼の少なくとも1重量%を超える量で添加する必要がある。この濃度の添加は、鋼の連続鋳造法では容認されず、鋼の連続鋳造法において、タンディッシュ(tundish)又は鋳型の中で結晶粒微細化合金を融解し混合することに関連する諸問題を回避するための、結晶粒微細化合金の最大限度は典型的には、溶鋼の0.2〜0.3重量%である。より多くの量の(>0.5重量%の)低温合金(cold alloy)を溶鋼に添加すれば、鋼は更に、それが鋳型のインレットダイ(inlet die)の中で凝固し始める程度に冷却され、そうされることによって、鋳造工程は損なわれるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、従来の結晶粒微細化技術を飛躍的に発展させるためには、工業的製鋼における構成概念(concept:基本的な考え方)の潜在性を十分に利用する必要がある。本発明の目的は、鋼の連続鋳造技術であって、錬鋼製品を得るための支配的な鋳造法であり、世界中の鉄鋼生産量の90%超を担っている該鋳造技術を変えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
背景技術から分かるように、以前に特許請求された、国際公開WO01/57280号パンフレットに記述されている結晶粒微細化合金に比べて遥かに高く濃縮された結晶粒微細化剤であって、活性な混在物によって連続鋳造鋼の結晶粒微細化を可能にする結晶粒微細化剤が必要とされている。例えば、結晶粒微細化剤をタンディッシュ又は鋳型の中に添加することが適切であるようにするためには、該結晶粒微細化剤中のイオウ又は酸素の含有率は、2〜30重量%以上、好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは10〜15重量%であることが望ましい。国際公開WO01/57280号パンフレットに開示されている従来の結晶粒微細化合金技術を用いて、この必要条件を満たすことは不可能である。高度に濃縮された新たな結晶粒微細化剤であって、実際には粒状の複合材料であり、分散粒子が全体積の30〜70%を占める結晶粒微細化剤は、軽妙な設計によってのみ製造することができる。本発明による、新規な製造方法と組み合わされた新たな結晶粒微細化剤の設計は、それら複合材料中の粒径分布であって、その化学組成と相俟って成形鋳造と錬鋼製品との両方に対するそれら結晶粒微細化剤の結晶粒微細化効率を制御する該粒径分布を厳重に管理することによって、結晶粒微細化技術を更に改善するであろう。従って、これらの新たな粒子状複合材料は、(一定の数密度の核形成性粒子を含有する従来の合金である)国際公開WO01/57280号パンフレットに記載の従来の品質等級の結晶粒微細化剤と比較して、それら複合材料が目的に応じてオーダーメイドで作られ、且つ、製鋼プロセスを妨げることなく、鋼の連続鋳造に即して使用されることが可能であるという意味では、次世代の結晶粒微細化剤を表す。
【0009】
本発明は第1の態様では、鋼を結晶粒微細化するための材料において、該材料は、1種類以上の元素Xと、X(式中、a及びbは任意の正の数であり、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれている1種類以上の元素であり、Sはイオウである)とを含有し、しかも、該材料は、酸素、炭素及び窒素を更に含有することができ、且つ、イオウ含有率が該材料の2〜30重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該材料の98〜70重量%の間であり、しかも、該材料は、金属マトリックス(X)中に非金属粒子(X)を含有する複合材料の形態である、上記結晶粒微細化材料を提供する。
【0010】
1つの実施態様において、前記イオウ含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との前記総含有率は、該複合材料の90〜85重量%の間である。もう1つの実施態様において、前記イオウ含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素の含有率は該複合材料の0.1重量%未満であり、且つ、該複合材料は、残余濃度の、群Xからの前記の他の元素を更に含有している。Xは、Ce、La、Pr、Nd、Al及びFeから選ばれている少なくとも1種類の元素であってもよい。
【0011】
本発明は第2の態様では、鋼を結晶粒微細化するための材料において、その複合材料は、1種類以上の元素XとX(式中、a及びbは任意の正の数であり、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれている1種類以上の元素であり、Oは酸素である)を含有する組成物を含有しており、しかも、該材料はイオウ、炭素及び窒素を更に含有することができ、酸素含有率は該材料の2〜30重量%の間であり、イオウと、群Xからの他の元素との総含有率は該材料の98〜70重量%の間であり、しかも、該材料は、金属マトリックス(X)中に非金属粒子(X)を含有する複合材料の形態である、上記結晶粒微細化材料を提供する。前記酸素含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、イオウ、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率は、該複合材料の90〜85重量%の間であることが好ましい。更なる実施態様において、前記酸素含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、イオウ、炭素及び窒素の含有率は該複合材料の0.1重量%未満であり、且つ、該複合材料は、残余濃度の、群Xからの前記の他の元素を更に含有している。更なる実施態様において、前記Xの元素は、Y、Ti、Al、Mn、Cr及びFeの群から選ばれている1種類以上の元素であってもよい。
【0012】
前記複合材料は、該複合材料の1mm当り少なくとも10個の、X又はX(式中、a及びbは任意の正の数である)を含有する粒子を含有している。前記のX又はXを含有する分散粒子は、0.2〜5μmの範囲の平均粒径


と、


且つ、


の粒径分布範囲(total spread in the particle diameters)とを更に有することができる。
更なる実施態様において、前記のX又はXを含有する分散粒子は、0.5〜2μmの間の平均粒径


dを有することができ、しかも、粒径分布範囲は限界


且つ、


を超えないことが望ましい。
もっと更なる実施態様において、前記のX又はXを含有する分散粒子は、約1μmの平均粒径と、0.2〜5μmの範囲の最大粒径分布とを有しており、しかも、1mm当り約10個の粒子を含有している。もう1つの実施態様において、前記のX又はXを含有する分散粒子は、約2μmの平均粒径と、0.4〜10μmの範囲の最大粒径分布とを有している。
【0013】
前記複合材料は、X又はXを含有する分散粒子であって、球状単相結晶性化合物、球状複相結晶性化合物、ファセット単相結晶性化合物又はファセット複相結晶性化合物である分散粒子を含有することが好ましい。前記のX又はXを含有する粒子は、その表面に、Xタイプ又はXタイプの少なくとも1種類の第2の相を更に有することができ、且つ、下記の結晶相:CeS、LaS、MnS、CaS、Ti、AlCeO、γ−Al、MnOAl、Y、Ce、La、TiN、BN、CrN、AlN、Fe(B,C)、V(C,N)、Nb(C,N)、B、TiC、VC又はNbCの少なくとも1種類を含有することができる。
【0014】
本発明は第3の態様では、鋼を結晶粒微細化する方法において、結晶粒微細化複合材料は、1種類以上の元素XとXとを含有する組成物(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる1種類以上の元素であり、Sはイオウである)を含有し、しかも、該複合材料は、酸素、炭素及び窒素を更に含有することができ、イオウ含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、酸素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であり、しかも、該複合材料は、該鋼の0.05〜5重量%の間の量で溶鋼に添加し、その後、該鋼は連続的に又は回分式で鋳造する、上記方法を提供する。
【0015】
本発明は第4の態様では、鋼を結晶粒微細化する方法において、結晶粒微細化複合材料は、1種類以上の元素XとXとを含有する組成物(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる1種類以上の元素であり、Oはイオウである)を含有し、しかも、該複合材料は、イオウ、炭素及び窒素を更に含有することができ、酸素含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、イオウ、炭素及び窒素と、群Xからの他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であり、しかも、該複合材料は、該鋼の0.05〜5重量%の間の量で溶鋼に添加し、その後、該鋼は連続的に又は回分式で鋳造する、上記方法を提供する。
【0016】
本発明は1つの実施態様では、鋼を結晶粒微細化する方法において、結晶粒微細化複合材料は、X又はXを含有する組成物の1mm当り約10個の粒子を含有しており、平均粒径が約1μmであり、且つ、最大粒径分布が0.2〜5μmの範囲である、上記方法を提供する。前記複合材料中の粒子の対応体積率は、約0.5である。当該複合材料は、前記鋼の連続鋳造工程の前、溶鋼の約0.3重量%の量で該溶鋼に添加されて、1mm当り約3×10個の粒子の、該溶鋼中の分散粒子の典型的な数密度を提供することが好ましい。この粒子数密度は、仕上げ鋼に所望の結晶粒微細化効果を提供するのに十分高い。当該複合材料は、添加工程の前、イオウと酸素との総含有率が清浄溶鋼の0.002重量%未満である該清浄溶鋼に添加することが好ましい。
前記複合材料は、粉砕されたSi粒子又はFeSi粒子を更に含有する芯線の形態で、アルミニウム外皮を有する芯線の形態で、前記溶鋼に添加することができるか、又は、鋳造工程の直前に若しくは鋳造工程の間に、取鍋又はタンディッシュの中の前記溶鋼に添加することができるか、又は、鋳型の中の前記溶鋼に添加することができる。
【0017】
本発明は第5の態様では、1種類以上のX元素とXとを含有する組成物を含有する鋼用結晶粒微細化複合材料を製造する方法において、
次の工程:
Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる少なくとも1種類のX元素と、イオウ源と、場合によっては酸素源とを混合して、混合物を得る工程と、
保護ガスで遮蔽された炉の中で、前記混合物を融解する工程と、
前記の融解された混合物を過熱する工程と、
前記の過熱された融解物を少なくとも500℃/秒の速度で急冷して複合材料を得る工程であって、該複合材料は、イオウ含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、且つ、酸素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率は該複合材料の98〜70重量%の間である、該複合材料を得る工程と、
を含む、上記方法を提供する。
前記の少なくとも1種類のX元素を、Ce、La、Pr及びNdからを選ぶとき、前記の遮蔽用ガスは窒素、アルゴン又はヘリウムとなる場合があり、且つ、急冷工程は融解紡糸又はガス噴霧によって行うことができる。
【0018】
本発明は第6の態様では、1種類以上の元素Xと、Xとを含有する組成物を含有する鋼用結晶粒微細化複合材料を製造する方法において、次の工程:
Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる少なくとも1種類のX元素と、酸素源と、場合によってはイオウ源とを混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を圧縮成形して、ペレットを提供する工程と、
前記ペレットを調節雰囲気中、600℃〜1200℃の間の温度で還元して、金属マトリックス中に安定な酸化物を含有する複合材料を提供する工程であって、酸素含有率は前記複合材料の2〜30重量%の間であり、且つ、酸素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率は該複合材料の98〜70重量%の間である、該複合材料を提供する工程と、
を含む、上記方法を更に提供する。少なくとも1種類のX元素を、Mg、Ti、Al、Mn、Cr及びFeの群から選ぶ場合、前記ペレットは、CO及び/又はHを含有するガス雰囲気中で還元することができ、鉄マトリックス中に安定な酸化物を含有する複合材料を提供する。該雰囲気はNを更に含有することができる。
【0019】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】結晶粒微細化能を有する粒子(黒点)が母材マトリックス(灰色領域)に埋め込まれた状態を示す、本発明の実施態様によるPCGR(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)の金属組織部分の概略図である。
【図2】PCGRsに含有される粒子の形態と複相の結晶性とを示す概略図である。
【図3】PCGRs内の諸粒子の粒径分布を特徴付けるために用いられる3個のパラメータの定義を示す。
【図4】本発明の実施態様による、PCGRsを製造するために用いられる様々な方法、即ち、(a)融解及び急冷の方法、(b)粉末冶金の方法、の概要を提供する。
【図5】本発明の実施態様によって製造されたCeSベースPCGRの光学顕微鏡写真であって、Ce+Feマトリックス中に埋め込まれた黄色CeS粒子を示す写真である。
【図6】本発明の実施態様によって部分還元されたチタン鉄鉱を通したラインスキャンであって、酸化物の芯の周囲に金属殻が形成されていることを示すラインスキャンである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔詳細な記述〕
本発明は、鋼(フェライト鋼とオーステナイト鋼との両方)を結晶粒微細化するための、金属マトリックス中に非金属粒子を含有する新規な粒状複合材料であって、そのような鋼の連続鋳造、造塊(ingot casting)及びニアネットシェイプ鋳造(near-net-shape casting)を含む様々な鋳造工程で使用するのに十分有効である該複合材料の製造並びに使用方法に関する。この粒子状複合材料の結晶粒微細化剤(Particulate Composite Grain Refiners)(以下、PCGRsと略する)は、
・ 第1の構成相を形成する、元素記号Sによって表されるイオウ及び元素記号Oによって表される酸素の、PCGRs中の含有率、並びに、第2の構成相を形成する、元素記号Cによって表される炭素及び元素記号Nによって表される窒素の、PCGRs中の含有率、
・ 集合記号X(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれてる1種類以上の元素である)によって表される他の合金元素並びに不純物元素の、PCGRs中の含有率、
・ 結果として得られる、化学組成X又はX(式中、a及びbは、任意の正の数を表す)を有する分散粒子の体積率


、数密度


及び粒径分布であって、PCGRs中の元素S、O、C、N及びXの総含有率によって決定される体積率


、数密度


及び粒径分布、
・ 結果として得られる、分散粒子内部の第1の構成相及び第2の構成相(即ち、X、X、X及びX)の化学的性質並びに結晶構造であって、非金属元素S、O、C、N及びXの、PCGRs中の総含有率によって決定される化学的性質並びに結晶構造、
によって特徴付けられる。
【0022】
本発明では、用語「複合材料」を用いる。複合材料は、2種類以上の構成材料で作られた設計材料(engineered materials:工学技術で設計された材料)であって、顕微鏡レベルでは分離されていて識別可能であり、且つ、顕微鏡学的に単一成分を形成している設計材料である。2つのカテゴリーの構成材料、即ち、マトリックス及び粒子が存在する。マトリックス材料は、結晶粒微細化剤が溶鋼に融解している間、分散粒子がその融解物中でクラスター化も凝集化もしないように、該分散粒子を取り囲んで保護する。本発明において、これらの粒子は、分散質(dispersoids)とも称される。分散質は、鋼の凝固工程及び後続の熱的機械的処理の間、鉄の結晶を得るための強力な不均一核形成部位として作用する。このことは、金属基であり、低濃度の(2重量%未満の)非金属元素O及びSを含有する、国際公開WO01/57280号パンフレットに記載の結晶粒微細化合金と著しく相違する。従って、該結晶粒微細化合金の成功的な使用は、結晶粒微細化剤を鋼溶融物に添加する前、これらの元素が、触媒相の形成を容易にするのに十分な量で、既に溶鋼中に存在することによって決まる。
【0023】
PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)のより詳細な記述は、以下に示す。
2.粒子状複合材料の結晶粒微細化剤
2.1 PCGRsの化学組成
本発明は、元素XとS又はOとを含有する、鋼用PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)の製造及び使用方法に関する。(第1の)イオウベースPCGRsにおいて、イオウ含有率は結晶粒微細化剤の2〜30重量%の間であり、Oと、群Xからの他の元素との総含有率は該結晶粒微細化剤の98〜70重量%の間である。同様に、酸素ベースPCGRsにおいて、酸素含有率は結晶粒微細化剤の2〜30重量%の間であり、イオウと、群Xからの他の元素との総含有率は該結晶粒微細化剤の98〜70重量%の間である。とりわけ、イオウ及び酸素を高含有率で含有する結晶粒微細化複合材料を使用すれば、低濃度で(即ち、溶鋼の0.5重量%未満で)添加しても強力な結晶粒微細化効果が得られるという特別な利点が提供される。このことは、先に説明したように、鋼の連続鋳造を行う場合、タンディッシュ又は鋳型の中での融解、混合及び凝固の問題を回避するために達成しなければならない最も重要な関心事である。
【0024】
1つの好ましい実施態様によると、イオウベースPCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は、イオウを10〜15重量%の間で含有することが望ましく、Oと、群Xからの他の元素との総含有率は、該結晶粒微細化剤の90〜85重量%の間であることが望ましい。もう1つの好ましい実施態様によると、10〜15重量%のイオウ含有率によって特徴付けられる同様のイオウベースPCGRsは、酸素を0.1重量%未満で含有し、且つ、群Xからの他の元素を残余濃度(balanced level)で含有することが望ましい。
同様に、好ましい実施態様によると、酸素ベースPCGRsは、酸素を10〜15重量%の間で含有することが望ましく、イオウと、群Xからの他の元素との総含有率は、該結晶粒微細化剤の90〜85重量%の間であることが望ましい。もう1つの好ましい実施態様によると、10〜15重量%の酸素含有率によって特徴付けられる同様の酸素ベースPCGRsは、イオウを0.1重量%未満で含有し、且つ、群Xからの他の元素を残余濃度で含有することが望ましい。
【0025】
2.2 埋め込まれた粒子の構成要素及び相
PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)において、X又はX(式中、a及びbは、任意の正の数を表す)を含有する粒子は、残余濃度の元素を含有するマトリックスの中に埋め込まれる。これらのマトリックス元素は、固溶体の形態で存在するか、又は、別個の金属化合物及び金属間化合物として存在する。図1は、PCGRの金属組織部分の概略図であり、母材マトリックス中に埋め込まれている、Xタイプ又はXタイプの粒子を示している。図2に概略的に示されるように、X又はXを含有する粒子は、球状単相結晶性化合物、球状複相結晶性化合物、ファセット単相結晶性化合物又はファセット複相結晶性化合物であってもよい。
【0026】
加えて、それらの粒子は、表面でXタイプ又はXタイプの、1つ若しくは幾つかの第2の相を含有することができる。いずれの場合にも、異なる構成相は、独特の化学組成と、高分解能電子顕微鏡検査を利用するX線回折法によって決定し得る明確な結晶構造とを有する。
PCGRsの中の粒子は、次の結晶相:CeS、LaS、MnS、CaS、Ti、Y、AlCeO、γ−Al、MnOAl、Ce、La、TiN、BN、CrN、AlN、Fe(B,C)、V(C,N)、Nb(C,N)、B、TiC、VC又はNbC、の少なくとも1種類を含有することが望ましい。
【0027】
2.3 PCGRs中の粒子の粒径分布
鋼に対するPCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)の結晶粒微細化効率を、靭性を低下させることなく最大化するために、PCGRs中の粒子は、明確な粒径分布であって、該粒径分布内の平均粒径


と、更に最大粒径dmax及び最小粒径dminとによって特徴付けられる該粒径分布を有することが望ましい。これらのパラメータは、図3に定義されるが、光学顕微鏡法又は高分解能電子顕微鏡検査法を利用して実験的に測定される。
PCGRsの粒子分布は、0.2μmから5μmの範囲で変わる平均粒径


と、


且つ


の範囲で変わる粒径分布範囲(total spread in the particle diameters)とによって特徴付けられる。
好ましい実施態様によると、PCGRsの粒子分布は、0.5〜2μmの間の平均粒径


を生じることが望ましく、しかも、粒径分布範囲は、限界


且つ


を超えないことが望ましい。
【0028】
2.4 PCGRs中の粒子の体積率及び数密度
粒子の体積率


は、方程式:
【数1】


(式中、元素S及びOの濃度は、重量%で与えられる)
の結果として、PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)中のイオウと酸素との総含有率に関連する。
次には、PCGRsの単位体積当りの全粒子数


は、関係式:
【数2】


で計算される。
【0029】
先の、組成上の必要条件と粒径分布の必要条件とから判断すると、最適化されたPCGR(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は典型的には、1mm当り約10個の粒子を含有し、平均粒径が約1μmであり、粒径の最大分布(maximum spread)が0.2〜5μmの範囲であるということになる。該PCGR中の諸粒子の対応体積率は、約0.5である。そのような結晶粒微細化剤が、鋼の0.3重量%の濃度で溶鋼に添加されるとき、鋼溶融物の対応粒子数密度は、1mm当り約3×10個の粒子となる。上記に規定されるように、触媒結晶相がそれら粒子の表面に存在するという条件で、後続の製鋼工程の間、後者の数密度によって、広範囲にわたる結晶粒微細化が促進される。
【0030】
3.PCGRsの製造
図4に例示されるように、PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)を製造し得る2つの異なる方法が存在する。融解及び急冷の方法は、先ず、異なる成分を混合し、次いで、保護ガス(例えば、窒素、アルゴン又はヘリウム)で遮蔽した炉の中で融解し、次いで、過熱して、S及びOを包含する全ての元素が確実に融解状態になるようにすることを意味する。この過熱された融解物は、次いで、(500℃/秒超で)急冷して、PCGRs中の粒子の所望の分布を達成させる。代替的に、粉末冶金方法を採用することができる。付加価値のあるDRI(直接還元鉄)法は、酸化鉄粉(任意的には、鉄粉)を他の金属又は酸化物と混合する工程を含む。続いて、これらの混合物から作ったペレットは、調節雰囲気中、H、CO又はCHを用いて、600℃〜1200℃の間の温度で還元して過剰酸素を除去し、鉄マトリックス中に安定な酸化物の微細分散体(fine dispersion)を後に残す。代替的に、調節雰囲気中、混合された成分の溶体化熱処理(solution heat treatment)を行い、次いで、幾分より低い温度で人工時効(artificial ageing)を行い、析出を通して粒子を生じさせることによって、所望の粒径分布を得ることができる。
【0031】
好ましい実施態様によると、イオウベースPCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は、希土類金属Ce、La、Pr若しくはNdの1種類又は幾種類と適切なイオウ源(例えば、FeS又はCe)とを、(任意的に)ある種のAlと一緒に混合することによって作ることが望ましい。その混合物は、次いで、Arで遮蔽された、化学的に不活性なTaるつぼ又はBNるつぼで融解する。その融解物は、(それの融点より50〜200℃高く)過熱した後、融解紡糸又はガス噴霧によって(500℃/秒超で)急冷し、セクション2.3に概説されるように、PCGRs中の希土類硫化物粒子の所望の粒径分布と数密度とを得る。
【0032】
同様に、好ましい実施態様によると、酸素ベースPCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は、(+0.5μm−5μmの範囲で)適切にサイジングされた高純度酸化物(例えば、FeTiO、FeMn、FeCr又はFeAl)から作ることが望ましい。鉱物粉末を圧縮成形した後、ペレットは、CO及び/又はHを含有するガス雰囲気中、600℃〜1200℃の間の温度で還元し、鉄マトリックス中に残留酸化物成分(例えば、Ti、Mn、Cr又はAl)の微細分散体を得ることが望ましい。もう1つの好ましい実施態様によると、前記ガス雰囲気にNを添加して、酸化物粒子の表面に特定タイプの窒化物(例えば、TiN、CrN又はAlN)が形成されるのを促進することによって、同様の酸素ベースPCGRsを作ることが望ましい。
【0033】
3.工業的製鋼におけるPCGRsの効率的使用方法
工業的製鋼におけるPCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)の効率的使用方法は、次の工程と手順とを含む。
3.1 溶鋼の予備処理
溶鋼は、PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)を添加する前、適切に脱酸素又は脱硫を行うことが望ましい。同時に、これらの反応の結果として形成される混在物は、添加を行う前、鋼浴から分離することが望ましい。更に、鋼組成は、PCGRsを添加する前、適切に調整して、該結晶粒微細化剤を介して添加されている諸粒子が、それらの新たな環境中で熱力学的に確実に安定となるようにすることが望ましい。逆に言えば、PCGRsに含有されている粒子の元の分配物が、鋳放し鋼中の目標分配物と比べて、より微細であるか又はより粗い場合は、溶鋼組成を操作して、それらの粒子を、制御された方法で成長させるか又は部分的に融解させることが望ましい。溶鋼の適切な予備処理を行うことにより、粒子と溶鋼との間の交換反応(exchange reaction)を促進することによって、PCGRsを介して添加された粒子の化学的性質及び結晶構造を変化させることも可能である。この場合、交換反応とは、(例えば、全反応 Ce+MnS=CeS+Mn により、MnをCeで置換することによって、)X又はXの中の元の金属成分が、前記同一群のX元素の中のもう1つの金属成分であって、溶鋼中に既に含有されている金属成分で置換されることを意味する。
【0034】
好ましい実施態様によると、PCGRsは、清浄溶鋼であって、イオウと酸素との全含有率が、添加工程の前に該鋼の0.002重量%未満であることを特徴とする清浄溶鋼に添加することが望ましい。溶鋼中の酸素及びイオウは、添加される粒子に悪影響を及ぼすので、清浄溶鋼が望ましい。
【0035】
3.2 PCGRsを溶鋼に添加する方法
PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は、様々な成分を溶鋼の中に確実に迅速に融解して混合するために、粉末形態で、ペレットとして、又は、適切なサイジング(sizing:寸法選別)を行ったチップ(chips)若しくは薄いリボンとして、該溶鋼に添加することが望ましい。
イオウベースPCGRsの好ましい実施態様によると、これらPCGRsは、芯線の形態で溶鋼に添加することが望ましい。もう1つの好ましい実施態様によると、芯線は、アルミニウム外皮を有することが望ましい。更にもう1つの好ましい実施態様によると、溶鋼を局所的に過熱することによって、様々な成分が該溶鋼の中に融解し混合するのを容易にするために、粉砕されたSi粒子又はFeSi粒子を、PCGRsと一緒に芯線に添加することが望ましい。
酸素ベースPCGRsの好ましい実施態様によると、これらPCGRsは、ペレットとして溶鋼に添加することが望ましい。
【0036】
3.3 溶鋼に添加されるPCGRsの濃度
結晶粒微細化のための好都合な条件を提供するために、PCGRs(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は、溶鋼の0.05〜5重量%の範囲の様々な濃度で該溶鋼に添加することが望ましい。後続の凝固が行われる間、鋼の結晶粒微細化は、結晶粒微細化剤によって添加された分散粒子の位置での、フェライト結晶又はオーステナイト結晶のエピタキシャル核形成(epitaxial nucleation)の過程によって生じる。結晶粒微細化は、固体状態では、前記分散粒子の位置でのフェライト又はオーステナイトの不均一核形成(heterogeneous nucleation)の過程を経て生じる。
好ましい実施態様によると、連続鋳造の前、溶鋼に添加されるPCGRsの量は、該鋼の0.1〜0.5重量%の範囲、好ましくは0.2〜0.3重量%の間であることが望ましい。結晶粒微細化剤によって添加される分散粒子の過剰成長(extensive growth)又は結晶粒粗大化を回避するために、PCGRsは、タンディッシュ又は鋳型の中に添加することが望ましい。
【実施例1】
【0037】
CeSベースPCGRの製造
図5に示されるCeSベースPCGR(粒子状複合材料の結晶粒微細化剤)は、実験室において融解及び急冷の方法によって製造した。出発点として、金属Ceの小さいチップをFeSと混合して、約5重量%の目標イオウ含有率を達成した。この混合物は、次いで、Taるつぼの中で、純アルゴンで遮蔽して誘導加熱を使用し、(該混合物の融点を超える約100℃で)融解し過熱した。その融解物は、過熱工程の後、高速回転する銅輪(copper wheel)に当てて急冷した。後続の、冷却した金属リボンの金属組織学的試験によって、図5の光学顕微鏡写真によって示されるように、Ce+Feマトリックス中に埋め込まれているCeS粒子の非常に微細な分散体が明らかになった。この場合、CeS粒子の平均直径


は、約2μmであり、最大粒径及び最小粒径は、それぞれ、限界


及び、


の範囲以内であった。
【実施例2】
【0038】
TiベースPCGRの製造
図6は、部分還元されたチタン鉄鉱(FeTiO)を通したラインスキャン(line scan)であって、酸化物中心の周囲に金属殻が形成されていることを示すラインスキャンである。チタン鉄鉱中の鉄は該粒子の表面まで拡散しており、且つ、チタンはルチル(TiO)の形態で後に残されていることが分かる。出発材料は、チタン鉄鉱石の粒子から作られたチタン鉄鉱ペレットであり、空気中800℃で酸化し、続いて、90体積%CO(気体)と1体積%CO(気体)との雰囲気中、950℃で還元した。その還元工程は、2時間後、該チタン鉄鉱に含有される鉄の約50%が金属鉄に転化して、鉄が該粒子の表面まで移動するのが分かった段階で中断した。更に還元すれば、チタン鉄鉱の芯が犠牲となって、金属外殻だけでなくルチルも増大し、金属によって囲まれたルチルの芯から本質的に成る最終生成物が提供されるであろう。
【0039】
本発明の好ましい実施態様を記述してきたが、それらの概念を組み入れた他の実施態様を使用することができることは、当業者には明白である。上記に例示される、本発明に関するこれらの実施例及び他の実施例は、単なる一例として意図されており、本発明の実際の範囲は、特許請求の範囲によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼を結晶粒微細化するための材料であって、
前記結晶粒微細化材料は、金属マトリックスX中に非金属粒子X(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる1種類以上の元素であり、Sはイオウである)を含有する複合材料の形態であり、しかも、該複合材料は、酸素、炭素及び窒素を更に含有しており、イオウ含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であることを特徴とする、上記結晶粒微細化材料。
【請求項2】
前記イオウ含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との前記総含有率は、該複合材料の90〜85重量%の間である、請求項1に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項3】
前記イオウ含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素の含有率は該複合材料の0.1重量%未満であり、且つ、該複合材料は、残余濃度の、群Xからの前記の他の元素を更に含有している、請求項1に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項4】
前記Xは、Ce、La、Pr、Nd、Al及びFeの群から選ばれる1種類以上の元素である、請求項1に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項5】
結晶粒微細化材料であって、
前記結晶粒微細化材料は、金属マトリックスX中に非金属粒子X(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeからなる群から選ばれる1種類以上の元素であり、Oは酸素である)を含有する複合材料の形態であり、しかも、該複合材料は、イオウ、炭素及び窒素を更に含有しており、酸素含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、イオウ、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であることを特徴とする、上記結晶粒微細化材料。
【請求項6】
前記酸素含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、イオウと、群Xからの前記の他の元素との前記総含有率は、該複合材料の90〜85重量%の間である、請求項5に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項7】
前記酸素含有率は前記複合材料の10〜15重量%の間であり、イオウ、炭素及び窒素の含有率は該複合材料の0.1重量%未満であり、且つ、該複合材料は、残余濃度の、群Xからの前記の他の元素を更に含有している、請求項5に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項8】
前記Xは、Y、Ti、Al、Mn、Cr及びFeの群から選ばれている1種類以上の元素である、請求項5に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項9】
前記複合材料は、該複合材料の1mm当り少なくとも10個の、X又はXを含有する粒子を含有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項10】
前記のX又はXを含有する分散粒子は、0.2〜5μmの範囲の平均粒径


と、


且つ、


の粒径分布範囲(total spread in the particle diameters)とを有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項11】
前記のX又はXを含有する分散粒子は、0.5〜2μmの間の平均粒径


を有しており、しかも、粒径分布範囲は限界


且つ、


を超えないことが望ましい、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項12】
前記のX又はXを含有する粒子は、約1μmの平均粒径と、0.2〜5μmの範囲の最大粒径分布とを有しており、しかも、1mm当り約10個の粒子を含有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項13】
前記のX又はXを含有する粒子は、約2μmの平均粒径と、0.4〜10μmの範囲の最大粒径分布とを有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項14】
前記のX又はXを含有する粒子は、球状単相結晶性化合物、球状複相結晶性化合物、ファセット単相結晶性化合物又はファセット複相結晶性化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項15】
前記のX又はXを含有する粒子は、その表面に、Xタイプ又はXタイプの少なくとも1種類の第2の相を有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項16】
前記のX又はXを含有する粒子は、下記の結晶相:CeS、LaS、MnS、CaS、Ti、AlCeO、γ−Al、MnOAl、Ce、La、Y、TiN、BN、CrN、AlN、Fe(B,C)、V(C,N)、Nb(C,N)、B、TiC、VC又はNbCの少なくとも1種類を含有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶粒微細化材料。
【請求項17】
鋼を結晶粒微細化する方法であって、
結晶粒微細化複合材料は、非金属粒子Xと金属マトリックスXとを含有する組成物(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる1種類以上の元素であり、Sはイオウである)を含有し、しかも、該複合材料は、酸素、炭素及び窒素を更に含有し、イオウ含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、酸素、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であり、しかも、該複合材料は、該鋼の0.05〜5重量%の間の量で溶鋼に添加し、その後、該鋼は連続的に又は回分式で鋳造することを特徴とする、上記方法。
【請求項18】
鋼を結晶粒微細化する方法であって、
前記結晶粒微細化複合材料は、非金属粒子Xと金属マトリックスXとを含有する組成物(式中、Xは、Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる1種類以上の元素であり、Oはイオウである)を含有し、しかも、該複合材料は、イオウ、炭素及び窒素を更に含有し、酸素含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、イオウ、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間であり、該複合材料は該鋼の0.05〜5重量%の間の量で溶鋼に添加し、その後、該鋼は連続的に又は回分式で鋳造することを特徴とする、上記方法。
【請求項19】
前記複合材料は、前記鋼の連続鋳造を行う前、該鋼の0.1〜0.5重量%の間の量で溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
1mm当り約10個の粒子を含有する複合材料は、前記鋼の連続鋳造を行う前、溶鋼の約0.3重量%の量で該溶鋼に添加され、それによって、1mm当り約3×10個の粒子の、該溶鋼中の分散粒子の数密度を提供する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記複合材料は、添加工程の前、イオウと酸素との総含有率が清浄溶鋼の0.002重量%未満である該清浄溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
前記複合材料は、粉末形態で、ペレットとして、又は、薄いリボン若しくはチップとして、前記溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項23】
前記複合材料は、アルミニウム外皮を有する芯線の形態で、前記溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項24】
前記複合材料は、粉砕されたSi粒子又はFeSi粒子を更に含有する芯線の形態で、前記溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項25】
前記複合材料は、鋳造工程の直前に又は鋳造工程の間に、取鍋又はタンディッシュの中の前記溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項26】
前記複合材料は、鋳型の中の前記溶鋼に添加する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項27】
非金属粒子Xと金属マトリックスXとを含有する組成物を含有する鋼用結晶粒微細化複合材料を製造する方法であって、
次の工程(溶融工程及び急冷工程):
Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる少なくとも1種類Xの元素と、イオウ源と、場合によっては酸素源とを混合して、混合物を得る工程と、
保護ガスで遮蔽された炉の中で、前記混合物を融解する工程と、
前記の融解された混合物を過熱する工程と、
前記の過熱された融解物を(500℃/秒超で)急冷して複合材料を得る工程であって、該複合材料は、イオウ含有率が該複合材料の2〜30重量%の間であり、且つ、酸素、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率が該複合材料の98〜70重量%の間である、該複合材料を得る工程と、
を特徴とする、上記方法。
【請求項28】
Ce、La、Pr及びNdの群から少なくとも1種類のX元素を選ぶ工程を含み、しかも、前記の遮蔽用ガスは窒素、アルゴン又はヘリウムであり、且つ、急冷工程は融解紡糸又はガス噴霧によって行う、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
非金属粒子Xと金属マトリックスXとを含有する組成物を含有する鋼用結晶粒微細化複合材料を製造する方法であって、
次の工程:
Ce、La、Pr、Nd、Y、Ti、Al、Zr、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Mn、Cr、V、B、Nb、Mo及びFeの群から選ばれる少なくとも1種類のX元素と、酸素源と、場合によってはイオウ源とを混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を圧縮成形して、ペレットを提供する工程と、
前記ペレットを調節雰囲気中、600℃〜1200℃の間の温度で還元して、金属マトリックス中に安定な酸化物の複合材料を提供する工程であって、酸素含有率は前記複合材料の2〜30重量%の間であり、且つ、イオウ、炭素及び窒素と、群Xからの前記の他の元素との総含有率は該複合材料の98〜70重量%の間である、該複合材料を提供する工程と、
を特徴とする、上記方法。
【請求項30】
Mg、Ti、Al、Mn、Cr及びFeの群から少なくとも1種類のX元素を選ぶ工程と、CO及び/又はHを含有するガス雰囲気中で前記ペレットを還元して、鉄マトリックス中に安定な酸化物を含有する複合材料を提供する工程とを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記雰囲気はNを更に含有する、請求項30に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−538990(P2009−538990A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513080(P2009−513080)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000189
【国際公開番号】WO2007/139393
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508355068)
【Fターム(参考)】