説明

鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域の掘削排土方法

【課題】鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域において、掘削排土が難しい鋼矢板又は鋼管矢板の近傍も含め確実に所定の深さまで掘削排土ができる掘削排土方法を提供する。
【解決手段】鋼矢板又は鋼管矢板Xから1〜2m離れた位置までの水底を掘削排土すると共に鋼矢板又は鋼管矢板Xの近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土した後に、鋼矢板又は鋼管矢板Xの奥部に当接される突部面の左右にそれぞれ鋼矢板又は鋼管矢板Xの突状部に当接される側部面を有するクリーナー体1を、鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の上部に当接させ、バックホウ3のショベル3aを鋼矢板又は鋼管矢板Xに沿って所定深さの水底まで押し下げ、クリーナー体1で鋼矢板又は鋼管矢板Xに付着した土砂等を掻き落とし、次いでバックホウ3のショベル3aによって水底の土砂をより深く掘削排土した位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域において、掘削排土が難しい鋼矢板又は鋼管矢板の近傍も含め確実に所定の深さまで掘削排土ができる掘削排土方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から海、河川、湖等において、護岸や岸壁等を目的として、鋼矢板や鋼管矢板の打設が行われてきた。このような鋼矢板や鋼管矢板が打設される場所では、その近傍に土砂が堆積し易く、特に岸壁として利用されるような場合には水底が浅くなり船舶の停留が難しくなるという問題がある。
【0003】
このような鋼矢板や鋼管矢板の近傍に堆積した土砂をグラブ等を利用して掘削排土する場合、グラブ等が鋼矢板や鋼管矢板に接触することによって、鋼矢板や鋼管矢板そのものが破損等することがあった。
【0004】
このような問題に対して、処理対象となる鋼管矢板側面に密着するようにアール加工が施された上べらと下べらとを有する土ベらが支柱に取り付けられており、前記鋼管矢板側面に付着する付着土に対してジェットウォーターを吹き付けるジェットノズルが、前記上ベらの下面及び前記下ベらの上面に装備されていることを特徴とする鋼管矢板側面付着土の排土装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この排土装置では、アール加工が施された上べらと下べらとによって、鋼管矢板側面の付着土が掻き取られるが、べらのような薄い板の先端を押し当てただけでは十分に掻き取ることが難しいため、付着土を掻き取りやすくするためにジェットノズルによるジェットウォーターを併用しなければならないのである。更にこの排土装置には上下方向に案内するためのガイド装置が設けられているが、このガイド装置は鋼管矢板の腹起しに嵌着されて使用されるため(特許文献1 段落番号0012,図3,図4)、腹起しの無い鋼管矢板には利用できないという問題もある。
【0006】
このような問題に対し、ジェットウォーターが不要で腹起しの無い鋼管矢板にも利用できる鋼管矢板の表面の掃除機としては、鋼管矢板内へ挿入される芯管材と、鋼管矢板外周に密接可能な短い半円筒状の掃除板をその下方に設けた掃除フレームとが、それぞれの上端を横部材で互いにほぼ平行するごとく一体的に連結して掃除機本体をなすとともに該掃除機本体はクレーンの主巻索により上下動可能に懸吊され、前記芯管材の下方にはクレーンの補巻索の巻上げ巻戻しにより鋼管矢板の内壁に圧接または離反するローラを有する複数のクランク装置を前記芯管材の中心に関し半径方向に設け、前記掃除板の内側には前記ローラが鋼管矢板内壁に圧接した際に鋼管矢板外周に密着するように掃除具を設けたことを特徴とする掃除機がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
この掃除機では掃除板としてワイヤロープ等を編込んだ掃除具が使用されていて、比較的高い掻き取り性能を有しているためジェットウォーターが不要で、またこの鋼管矢板の掃除機は鋼管矢板内へ挿入された芯管材によって上下方向に案内されるため、腹起しの無い鋼管矢板にも利用できるのである。
【0008】
しかしながら、この鋼管矢板の掃除機では、鋼管矢板内へ挿入される芯管材と、鋼管矢板の外周を掃除する掃除フレームとがそれぞれの上端が横部材で一体的に連結された構成となっており、この掃除機を水深深くまで降ろそうとすると、この横部材が鋼管の上端に当たって降ろすことができなくなるため、鋼管と同程度の非常に長尺の掃除フレーム等を使用しない限り、鋼管矢板の下方側に付着した土砂等を掻き取ることは難しいのである。更に、この掃除機は鋼管矢板内へ挿入される芯管材が必要であるので、鋼矢板には適用できないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3528149号公報
【特許文献2】実開平1−102224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の問題に鑑み、鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域において、掘削排土が難しい鋼矢板又は鋼管矢板の近傍も含め確実に所定の深さまで掘削排土ができる掘削排土方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面が、水域側から見て陸地側に位置する奥部と、奥部の側方から水域側に向けて突出した突状部とが交互に位置するように、鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域において、中央部に鋼矢板又は鋼管矢板の奥部に当接される突部面をまた突部面の左右にそれぞれ鋼矢板又は鋼管矢板の突状部の幅方向の少なくとも半分の部位に当接される側部面を有し、突部面及び側部面の下端が水域に位置せしめた船上のバックホウのショベルの開口側と反対の面の下端と一致するように取り付けられていて、突部面及び側部面がそれぞれ所定高さを有するクリーナー体を、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の上部に当接させて使用すれば、正確な操作が容易にできるバックホウのショベルを鋼矢板又は鋼管矢板に沿って所定深さの水底まで押し下げるだけで、鋼矢板又は鋼管矢板に付着した土砂を容易に掻き落とすことができるから、ガイド部等が不要で腹起しの有無や鋼矢板や鋼管矢板の構成や形状に関係なく広く利用することができ、また実際に掘削排土する際、先ず掘削排土を行う水域の鋼矢板又は鋼管矢板から1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土すると共にこの掘削排土される水底のうち鋼矢板又は鋼管矢板の近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土すれば、バックホウに取り付けられたクリーナー体によって鋼矢板又は鋼管矢板に付着した土砂を掻き落としながら、水底に堆積した土砂にクリーナー体を押し当てることで、前記より深く掘削排土しておいた水底へと崩し落とすことでき、また最終的にバックホウのショベルによって鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の近傍の水底の土砂を前記深く掘削排土した位置に移動させることで、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面近傍の水底を十分な深さまで掘削排土することができることを究明して本発明を完成させたのである。
【0012】
即ち本発明は、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面が、水域側から見て陸地側に位置する奥部と、奥部の側方から水域側に向けて突出した突状部とが交互に位置するように、鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域の掘削排土方法であって、
掘削排土を行う水域の鋼矢板又は鋼管矢板から1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土すると共にこの掘削排土される水底のうち鋼矢板又は鋼管矢板の近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土した後に、
中央部に鋼矢板又は鋼管矢板の前記奥部に当接される突部面をまた突部面の左右にそれぞれ鋼矢板又は鋼管矢板の前記突状部の幅方向の少なくとも半分の部位に当接される側部面を有し、突部面及び側部面の下端が水域に位置せしめた船上のバックホウのショベルの開口側と反対の面の下端と一致するように取り付けられていて、突部面及び側部面がそれぞれ所定高さを有するクリーナー体を、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の上部に当接させた後、
バックホウのショベルを鋼矢板又は鋼管矢板に沿って所定深さの水底まで押し下げることによって、クリーナー体で鋼矢板又は鋼管矢板に付着した土砂等を掻き落とし、次いでバックホウのショベルによって鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の近傍の水底の土砂を前記深く掘削排土した位置に移動させることを特徴とする鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域の掘削排土方法である。
【0013】
またより深く掘削排土した位置であって、バックホウのショベルによって鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の近傍の水底の土砂を移動させた結果、所定深さより水底が浅くなった位置がある場合には、その位置のみを再度掘削排土すれば所定の深さに容易にすることができ、更にクリーナー体として、突部面と側部面とが金属製の枠体に固定された木製の板材から形成されているクリーナー体を使用すれば、比較的柔らかい木製の板材で摺接されるので、鋼矢板又は鋼管矢板の外面を傷つけることがなく、また強度のある金属製の枠体を使用することで、堆積した土砂等を先に掘削排土した水底へと崩し落とし易く、また中実ではないので土砂等の通過が可能で、堆積した土砂等に遮られてクリーナー体の昇降ができなくなるようなこともなくて好ましいのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る掘削排土方法は、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面が、水域側から見て陸地側に位置する奥部と、奥部の側方から水域側に向けて突出した突状部とが交互に位置するように、鋼矢板又は鋼管矢板が打設されている水域の掘削排土方法であって、中央部に鋼矢板又は鋼管矢板の奥部に当接される突部面をまた突部面の左右にそれぞれ鋼矢板又は鋼管矢板の突状部の幅方向の少なくとも半分の部位に当接される側部面を有し、突部面及び側部面の下端が水域に位置せしめた船上のバックホウのショベルの開口側と反対の面の下端と一致するように取り付けられていて、突部面及び側部面がそれぞれ所定高さを有するクリーナー体が、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の上部に当接させて使用されるから、正確な操作が容易にできるバックホウのショベルを鋼矢板又は鋼管矢板に沿って所定深さの水底まで押し下げるだけで、鋼矢板又は鋼管矢板に付着した土砂等を容易に掻き落とすことができ、ガイド部等が不要で腹起しの有無や鋼矢板や鋼管矢板の構成や形状に関係なく広く利用することができ、また実際に掘削排土する際、先に掘削排土を行う水域の鋼矢板又は鋼管矢板から1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土すると共にこの掘削排土される水底のうち鋼矢板又は鋼管矢板の近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土するから、バックホウに取付られたクリーナー体によって鋼矢板又は鋼管矢板に付着した土砂等を掻き落としながら、水底に堆積した土砂等にクリーナー体が押し当てることによって、先により深く掘削排土した水底へと崩し落とすことでき、また最終的にバックホウのショベルによって鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の近傍の水底の土砂等を前記深く掘削排土した位置に移動させることで、鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面近傍の水底を十分な深さまで掘削排土することができるのである。
【0015】
またより深く掘削排土した位置であって、バックホウのショベルによって鋼矢板又は鋼管矢板の水域側面の近傍の水底の土砂等を移動させた結果、所定深さより水底が浅くなった位置がある場合に所定の深さまで再度掘削排土する態様では、その水底の浅くなった位置のみを再度掘削排土するだけで容易に所定の深さを保つことができ、更にクリーナー体が、突部面と側部面とが金属製の枠体に固定された木製の板材から形成されているクリーナー体である態様では、比較的柔らかい木製の板材で摺接されるので、鋼矢板又は鋼管矢板の外面を傷つけることがなく、また強度のある金属製の枠体を使用することで、堆積した土砂等を先に掘削排土した水底へと崩し落とし易く、また中実ではないので土砂等の通過が可能で、堆積した土砂等に遮られてクリーナー体の昇降ができなくなるようなこともないのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る掘削排土方法による施工の様子を示す概略図である。
【図2】図1の状態のクリーナー体を所定深さの水底まで押し下げた様子を示す概略図である。
【図3】本発明に係る掘削排土方法に使用されるクリーナー体の正面図である。
【図4】図3のクリーナー体の平面図である。
【図5】図3のクリーナー体を鋼管矢板に当接させた状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る掘削排土方法に使用される他のクリーナー体を鋼矢板に当接させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明に係る掘削排土方法について詳細に説明する。
【0018】
図面中、Xは鋼矢板又は鋼管矢板であり、この鋼矢板又は鋼管矢板Xは、その水域側面が、水域側から見て陸地側に位置する奥部Xaと、奥部Xaの側方から水域側に向けて突出した突状部Xbとが交互に位置するように形成されていて、本発明に係る掘削排土方法はこのような鋼矢板又は鋼管矢板Xが打設されている水域において行われる。
【0019】
1は中央部に鋼矢板又は鋼管矢板Xの前記奥部Xaに当接される突部面1aをまた突部面1aの左右にそれぞれ鋼矢板又は鋼管矢板Xの前記突状部Xbの幅方向の少なくとも半分の部位に当接される側部面1bを有し、突部面1a及び側部面1bがそれぞれ所定高さを有するクリーナー体である。このクリーナー体1は、突部面1a及び側部面1bの下端が水域に位置せしめた後述する船2上のバックホウ3のショベル3aの開口側と反対の面の下端と一致するように取り付けられている。そしてこのようなクリーナー体1としては、図3〜6のように突部面1aと側部面1bとが金属製の枠体4に固定された木製の板材5から形成されているクリーナー体であれば、比較的柔らかい木製の板材5で摺接されるので、鋼矢板又は鋼管矢板Xの外面を傷つけることがなく、また強度のある金属製の枠体4を使用することで、堆積した土砂等を先に掘削排土した水底へと崩し落とし易く、また中実ではないので土砂等の通過が可能で、堆積した土砂等に遮られてクリーナー体1の昇降ができなくなるようなこともなくて好ましいのである。
【0020】
2は水域に位置せしめた船であり、例えば台船や浚渫船等が使用できる。またこの船2は、掘削排土を行う水域の鋼矢板又は鋼管矢板Xから1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土する際や、この掘削排土される水底のうち鋼矢板又は鋼管矢板Xの近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土する際にも使用することができる。
【0021】
3は水域に位置せしめた船2上のバックホウであり、上述のクリーナー体1がこのバックホウ3のショベル3aの開口側と反対の面に取り付けた状態で鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の上部に当接され、このバックホウ3のショベル3aを鋼矢板又は鋼管矢板Xに沿って所定深さの水底まで押し下げることによって、クリーナー体1で鋼矢板又は鋼管矢板Xに付着した土砂等が掻き落とされ、またクリーナー体1を堆積した土砂等に押し当てることによって前もってより深く掘削排土した水底へと崩し落とすことできる。またバックホウ3のショベル3aによって鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の近傍の水底の土砂等をより深く掘削排土した位置に移動させることにより、鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面近傍の水底を十分な深さまで掘削排土することができるのである。
【0022】
本発明に係る掘削排土方法は、鋼矢板又は鋼管矢板Xが打設されている水域の掘削排土方法であり、この鋼矢板又は鋼管矢板Xとしては、その水域側面が、水域側から見て陸地側に位置する奥部Xaと、奥部Xaの側方から水域側に向けて突出した突状部Xbとが交互に位置するように形成されたものが使用できる。なおこのような形状は特別な形状ではないから、鋼矢板又は鋼管矢板Xとしては一般的なものが使用でき、また腹起し等のようなものを別途取り付ける必要もない。
【0023】
このような鋼矢板又は鋼管矢板Xが打設されている水域において、本発明に係る掘削排土方法を実際に行うには、先ず、掘削排土を行う水域の鋼矢板又は鋼管矢板Xから1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土すると共にこの掘削排土される水底のうち鋼矢板又は鋼管矢板Xの近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土する。この掘削排土は、水域側からバックホウやグラブによって土砂を掬い上げたり、掘削装置と吸引装置とによって土砂を水上へと吸い上げたりすることによって行うことができる。なおこのように鋼矢板又は鋼管矢板Xから1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土するのは、バックホウやグラブが鋼矢板又は鋼管矢板Xに接触等する危険が少ない位置であって、後述するように水底に堆積した土砂等を崩し落とすことができるように近い位置まで掘削排土する必要があるからである。
【0024】
このような掘削排土が終わった後に、例えば図1の如く、船2(図1では台船)を水域の所定位置へと移送し、スパッドによって固定した状態で、船2上にバックホウ3を設置する。このバックホウ3のショベル3aの開口側と反対の面には、突部面1a及び側部面1bがそれぞれ所定高さを有し、突部面1a及び側部面1bの下端が水域に位置せしめた船2上のバックホウ3のショベル3aの開口側と反対の面の下端と一致するようにクリーナー体1が取り付けられていて、このクリーナー体1はその中央部に鋼矢板又は鋼管矢板Xの奥部Xaに当接される突部面1aが、また突部面1aの左右にそれぞれ鋼矢板又は鋼管矢板Xの突状部Xbの幅方向の少なくとも半分の部位に当接される側部面1b設けられた構成となっている。
【0025】
そしてこのようなバックホウ3に取り付けられたクリーナー体1を、鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の上部に当接させ、バックホウ3のショベル3aを鋼矢板又は鋼管矢板Xに沿って所定深さの水底まで押し下げることによって、鋼矢板又は鋼管矢板Xに付着した土砂等を掻き落とすのである。なお鋼矢板又は鋼管矢板Xは順次継手を介して連結されており、例えば図5のような鋼管矢板では突部面1aが対向する部分に継手(図5ではP−P型)が、図6のような鋼矢板の場合には、側部面1bが対向する部分に継手があり、これらの継手によって、その継手部分には凹凸や段差ができ必ずしも平坦ではないので、クリーナー体1の突部面1aや側部面1bを密着するように当接させることはできない。しかしながら、このクリーナー体1は突部面1a及び側部面1bがそれぞれ所定高さを有しており、薄い板状のものとは異なり、鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面に沿って十分に摺接させることができるから、鋼矢板又は鋼管矢板Xに付着した土砂等をしっかりと掻き落とすことができるのである。
【0026】
なお単に土砂等を掻き落とすだけでは、鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の近傍に土砂等が堆積するだけで、十分な水深を確保することができない。これに対して本発明に係る掘削排土方法では、予め鋼矢板又は鋼管矢板Xの近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土されているから、バックホウ3のショベル3aを鋼矢板又は鋼管矢板Xに沿って押し下げることによって、土砂等を掻き落としていきながら、堆積した土砂等を先に掘削排土した水底へと崩し落とすことができるのである。
【0027】
またクリーナー体1としては、例えば図4のように、突部面1aと側部面1bとが金属製の枠体4に固定された木製の板材5から形成されているものが使用でき、このような構成にすることにより、比較的柔らかい木製の板材5で摺接されるので、鋼矢板又は鋼管矢板Xの外面を傷つけることがなく、また強度のある金属製の枠体4を使用することで、堆積した土砂等を先に掘削排土した水底へと崩し落とし易く、また中実ではないので土砂等の通過が可能で、堆積した土砂等に遮られてクリーナー体1の昇降ができなくなるようなこともないのである。
【0028】
またこのクリーナー体1を鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の上部に当接させ、所定深さの水底まで押し下げる際、正確な操作が容易にできるバックホウ3が使用されるから、当接させる位置の調整が容易にでき、また上下方向に移動させる際も非常に正確に移動させることができるので、上下方向に案内する部材等も必要ないのである。
【0029】
次に図2の如くバックホウ3のショベル3aが所定深さの水底に達した後に、バックホウ3のショベル3aによって鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の近傍の水底の土砂等を深く掘削排土した位置に移動させて、鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面近傍の水底を十分な深さまで掘削排土するのである。またこのようにバックホウ3のショベル3aを移動させることによって、このバックホウ3のショベル3aを水上に向けて引き上がる際に、鋼矢板又は鋼管矢板Xに接触して破損等させるようなこともないのである。
【0030】
またバックホウ3のショベル3aによって鋼矢板又は鋼管矢板Xの水域側面の近傍の水底の土砂等を移動させた結果、より深く掘削排土しておいた位置の水底が所定深さより浅くなったような場合であっても、その位置のみを再度掘削排土すれば所定の深さに容易にすることができるのである。
【符号の説明】
【0031】
X 鋼矢板又は鋼管矢板
Xa 奥部
Xb 突状部
1 クリーナー体
1a 突部面
1b 側部面
2 台船
3 バックホウ
3a ショベル
4 枠体
5 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板又は鋼管矢板(X)の水域側面が、水域側から見て陸地側に位置する奥部(Xa)と、該奥部(Xa)の側方から水域側に向けて突出した突状部(Xb)とが交互に位置するように、該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)が打設されている水域の掘削排土方法であって、
掘削排土を行う水域の該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)から1〜2m離れた位置までの水底を所定深さまで掘削排土すると共にこの掘削排土される水底のうち該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)の近傍に位置する水底についてはより深く掘削排土した後に、
中央部に該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)の前記奥部(Xa)に当接される突部面(1a)をまた該突部面(1a)の左右にそれぞれ該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)の前記突状部(Xb)の幅方向の少なくとも半分の部位に当接される側部面(1b)を有し、該突部面(1a)及び該側部面(1b)の下端が該水域に位置せしめた船(2)上のバックホウ(3)のショベル(3a)の開口側と反対の面の下端と一致するように取り付けられていて、該突部面(1a)及び該側部面(1b)がそれぞれ所定高さを有するクリーナー体(1)を、該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)の水域側面の上部に当接させた後、
該バックホウ(3)のショベル(3a)を該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)に沿って所定深さの水底まで押し下げることによって、該クリーナー体(1)で該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)に付着した土砂等を掻き落とし、次いで該バックホウ(3)のショベル(3a)によって該鋼矢板又は該鋼管矢板(X)の水域側面の近傍の水底の土砂等を前記深く掘削排土した位置に移動させることを特徴とする鋼矢板又は鋼管矢板(X)が打設されている水域の掘削排土方法。
【請求項2】
より深く掘削排土した位置であって、バックホウ(3)のショベル(3a)によって鋼矢板又は鋼管矢板(X)の水域側面の近傍の水底の土砂等を移動させた結果、所定深さより水底が浅くなった位置がある場合には、所定の深さまで再度掘削排土する請求項1に記載の掘削排土方法。
【請求項3】
突部面(1a)と側部面(1b)とが金属製の枠体(4)に固定された木製の板材(5)で形成されているクリーナー体(1)を使用する請求項1又は2に記載の掘削排土方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−256549(P2011−256549A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129901(P2010−129901)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【出願人】(510158576)株式会社坂口工業 (2)
【Fターム(参考)】