説明

鋼矢板及び鋼矢板遮水壁、並びに止水材の損傷防止方法

【課題】鋼矢板を地盤に打設する際に、鋼矢板の継手部の内側に地盤構成物が浸入することを防止する。
【解決手段】鋼矢板10の止水構造52では、先行鋼矢板10Pにおける一方の継手部16のポケット溝22に止水ゴム28が嵌挿された状態で、一方の継手部16の内側に保護充填材34が充填される。これにより、先行鋼矢板10Pを地盤26中に打設する先行打設工程にて、保護充填材34により開口19を通して継手部16の内側に石、土砂等の地盤構成物が浸入することが阻止される。従って、先行鋼矢板10Pを地盤26中に打込む際に、先行鋼矢板10Pにおけるポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28に地盤構成物との摩擦により欠損、破断等の損傷が生じることを効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の鋼矢板の継手部と連結可能とされた継手部と、この継手部の内面側に形成されたポケット溝とを有する鋼矢板に関する。
また本発明は、他の鋼矢板の継手部と連結可能とされた継手部と、この継手部に形成されたポケット溝と、を有する鋼矢板が複数枚、用いられて構築された鋼矢板遮水壁に関する。
【0002】
さらに本発明は、他の鋼矢板の継手部と連結可能とされた継手部と、この継手部の内面側に形成されたポケット溝とを有する鋼矢板を地盤に打設する際に、鋼矢板のポケット溝に嵌挿された止水材の損傷発生を防止するための止水材の損傷防止方法に関する。
【背景技術】
【0003】
鋼矢板は、その幅方向の両端側それぞれに設けられた継手部を他の鋼矢板の継手部に嵌合させ、他の鋼矢板に連結することにより、高い耐久性を有する壁体を形成できる。このような複数枚の鋼矢板からなる壁体を汚染水等の拡散を防止する遮水壁として用いる場合には、遮水壁に対して極めて高い止水性が求められる。このような高い止水性を発揮できる鋼矢板としては、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載された鋼矢板は、細長いプレート状のウェブ部と、このウェブ部の幅方向に沿った一端側及び他端側にそれぞれ設けられたフランジ部と、フランジ部の先端部に形成されたラルゼン型の継手部と、この継手部の内面側に形成されたポケット溝と、を有している。この鋼矢板を用いて遮水壁を構築する際には、例えば、遮水壁を構成する複数枚の鋼矢板の各ポケット溝に水膨張性を有する棒状の止水ゴムをそれぞれ嵌挿した後、複数枚の鋼矢板を順次地盤中に打設する。この際、鋼矢板(後続鋼矢板)の継手部を、既に地盤中に打設された他の鋼矢板(先行鋼矢板)の継手部に嵌合させつつ、後続鋼矢板を地盤中に打設し、後続鋼矢板を先行鋼矢板に連結する。このようにして構築された遮水壁では、各鋼矢板の止水ゴムが地盤中の水分を吸収して膨張することにより、膨張した止水ゴムにより継手部間の隙間が閉塞されて、継手部間の止水性が確保される。
【0005】
特許文献1に記載された鋼矢板では、継手部の断面がフック状に形成されており、継手部の長手方向に沿った両端(上端及び下端)がそれぞれ開口端とされると共に、継手部の爪先側に鋼矢板の長手方向(打設方向)に沿って細長いスリット状の開口が形成されている。
【特許文献1】特開2003−160929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような鋼矢板では、先行鋼矢板を地盤に打込む際に、継手部の爪先側の開口を通して地盤を構成する石、土砂等の地盤構成物が、継手部の内側に浸入することがある。先行鋼矢板における継手部の内側に地盤構成物が浸入した状態で、後続鋼矢板を地盤中に打込むと、浸入した地盤構成物との摩擦等により継手部のポケット溝に嵌挿された止水ゴムに破断、欠損等の損傷が発生するおそれがある。これにより、止水ゴムによる継手部間の止水の信頼性が低下する。
【0007】
本発明の目的は、上記事実を考慮し、鋼矢板が地盤に打設される際に、継手部の内側に地盤構成物が浸入することを効果的に防止できる鋼矢板及び、この鋼矢板を用いて構築された鋼矢板遮水壁を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記事実を考慮し、鋼矢板を地盤に打設する際に、鋼矢板の継手部の内側に地盤構成物が浸入することを効果的に防止できる鋼矢板に用いられる止水材の損傷防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る鋼矢板は、プレート状のウェブ部と、前記ウェブ部の側端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部の先端部に形成されたラルゼン型の継手部と、前記継手部に形成されたポケット溝と、を有する鋼矢板であって、水と反応して体積が膨張する水膨張性ゴムにより形成され、前記ポケット溝内に装填されて、前記継手部と該継手部に嵌合する他の鋼矢板の継手部との間を止水する止水材と、外圧により圧縮可能な材料又は塑性的に流動可能な粘土状材料により形成され、前記ポケット溝に前記止水材が嵌挿された状態で、前記継手部の内側に充填される保護充填材と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に係る鋼矢板では、継手部のポケット溝に止水材が嵌挿された状態で、保護充填材が継手部の内側に充填されることにより、鋼矢板(先行鋼矢板)を地盤中に打設する際に、継手部内側の保護充填材により継手部の爪先側の開口を通して継手部の内側に石、土砂等の地盤構成物が浸入することを阻止できる。
このとき、保護充填材が外圧により圧縮可能な材料又は塑性的に流動可能な粘土状材料により形成されていることに加え、止水材がポケット溝内に装填されていることから、例えば、止水材が継手部の内面側に塗布され、又は貼り付けられている場合と比較し、後続鋼矢板の継手部を先行鋼矢板の継手部に嵌合させつつ、後続鋼矢板を地盤中に打込む際に、後続鋼矢板の継手部からの押圧力により先行鋼矢板の継手部内の保護充填材が下方へ圧縮され、又は移動しても、この保護充填材との摩擦により止水材が下方へ移動し、及び継手部から脱落することを効果的に防止できる。
【0010】
また、保護充填材を外圧により圧縮可能な材料又は塑性的に流動可能な粘土状材料により形成したこと、及び止水材を水と反応して体積が膨張する水膨張性ゴムにより形成したことにより、鋼矢板を地盤中に打設した後に、ポケット溝に嵌挿された止水材に地盤中に含まれる水を吸収させ、止水材をポケット溝内から外側へ膨張させることができる。
この結果、鋼矢板を地盤中に打設する際には、止水材全体をポケット溝内に収納しておき、止水材が保護充填材や他の鋼矢板の継手部との摩擦により損傷することを効果的に防止でき、また鋼矢板を地盤に打設した後には、止水材をポケット溝内から継手部間の隙間へ膨張させ、この隙間を止水材により確実にシール(止水)できる。
【0011】
また請求項2に係る鋼矢板は、請求項1記載の鋼矢板において、前記保護充填材を、発砲スチロールにより形成したことを特徴とする。
また請求項3に係る鋼矢板は、請求項1又は2記載の鋼矢板において、前記保護充填材は、幅方向に沿った断面視にて複数個の分割片からなる分割構造を有することを特徴とする。
【0012】
上記請求項3に係る鋼矢板では、保護充填材がウェブ部の幅方向に沿った断面視にて複数個の分割片からなる分割構造を有することにより、後続鋼矢板の継手部を先行鋼矢板の継手部に嵌合させつつ、後続鋼矢板を地盤中に打込む際に、後続鋼矢板の継手部により先行鋼矢板の継手部内の保護充填材が圧縮されて硬化した場合でも、複数の分割片間には切目ができることから、この切目を通して止水材をポケット溝から継手部間の隙間内へ突出させ、止水材により継手部間を正常に止水できる。すなわち、水膨張性ゴムにより形成された止水材が継手部内の隙間に確実に膨張するため、高い止水性を損なうことがない。
【0013】
また請求項4に係る鋼矢板は、請求項1の鋼矢板において、前記保護充填材として、藁を綯って作られた藁縄を用いたことを特徴とする。
また請求項5に係る鋼矢板は、請求項1乃至4の何れか1項記載の鋼矢板において、前記継手部の爪先側の開口を閉止して、該継手部の内側から前記保護充填材が脱落することを防止する保持部材を有することを特徴とする。
【0014】
上記請求項5に係る鋼矢板では、保持部材が継手部の爪先側の開口を閉止して、この継手部の内側から保護充填材が脱落することを防止することにより、鋼矢板を地盤へ打設する際に、鋼矢板の継手部から保護充填材が脱落することを防止できる。
また本発明の請求項6に係る鋼矢板遮水壁は、複数枚の鋼矢板を有し、隣接する鋼矢板の継手部同士が連結されて構築された鋼矢板遮水壁であって、前記鋼矢板として、請求項1乃至5の何れか1項記載の鋼矢板を用いたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に係る止水材の損傷防止方法は、プレート状のウェブ部と、前記ウェブ部の側端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部の先端部に形成されたラルゼン型の継手部と、前記継手部に形成されたポケット溝と、を有する鋼矢板に用いられる止水材の損傷防止方法であって、前記ポケット溝内に、前記継手部と該継手部に嵌合する他の鋼矢板の継手部との間を止水するための止水材を装填した後、前記継手部の内側に、外圧により圧縮可能な材料又は塑性的に流動可能な粘土状材料により形成された保護充填材を充填する装填工程と、前記装填工程の完了後に、前記保護充填材により前記継手部の爪先側の開口を通して、該継手部の内側に地盤構成物が浸入することを阻止しつつ、後続鋼矢板に対して先行鋼矢板を地盤に打設する先行打設工程と、前記先行打設工程の完了後に、後続鋼矢板の継手部を先行鋼矢板の継手部に嵌合すると共に、後続鋼矢板の継手部により先行鋼矢板の継手部内側の保護充填材を圧縮又は流動させつつ、後続鋼矢板を地盤に打設する後続打設工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
上記請求項7に係る止水材の損傷防止方法では、先行打設工程にて、装填工程の完了後に、保護充填材により前記継手部の爪先側の開口を通して、該継手部の内側に石、土砂等の地盤構成物が浸入することを阻止しつつ、後続鋼矢板に対して先行鋼矢板を地盤に打設することにより、鋼矢板(先行鋼矢板)を地盤中に打設する際に、継手部の内側に浸入した地盤構成物との摩擦等により止水材が損傷することを効果的に防止できる。
【0017】
また後続打設工程にて、後続鋼矢板の継手部を先行鋼矢板の継手部に嵌合すると共に、後続鋼矢板の継手部により先行鋼矢板の継手部内側の保護充填材を圧縮又は流動させつつ、後続鋼矢板を地盤に打設することにより、後続鋼矢板を地盤中へ正常に打込むことができる。
このとき、止水材がポケット溝内に装填されていることから、止水材が継手部の内面側に塗布され、又は貼り付けられている場合と比較し、後続鋼矢板の継手部を先行鋼矢板の継手部に嵌合させつつ、後続鋼矢板を地盤中に打込む際に、後続鋼矢板の継手部により先行鋼矢板の継手部内の保護充填材が下方へ圧縮され、又は流動しても、この保護充填材との摩擦により止水材が下方へ移動し、又は継手部から剥離することを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る鋼矢板及び鋼矢板遮水壁によれば、鋼矢板が地盤に打設される際に、継手部の内側に地盤構成物が浸入することを効果的に防止できる。
さらに、本発明に係る止水材の損傷防止方法によれば、鋼矢板を地盤に打設する際に、鋼矢板の継手部の内側に地盤構成物が浸入することを効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る鋼矢板、鋼矢板遮水壁及び鋼矢板に用いられる止水材の損傷防止方法について図面を参照して説明する。
図1には本発明の実施形態に係る鋼矢板が示され、図2には本発明の実施形態に係る鋼矢板の継手部が拡大されて示されている。
本実施形態に係る鋼矢板10は、図1に示されるように、全体として一方向へ細長いプレート状に形成されており、略U字状の断面形状を有している。鋼矢板10には、幅方向(矢印W方向)中央部に長手方向(図1(B)の矢印L方向)に沿って細長く、一定の幅を有する平板状のウェブ部12が全長に亘って形成されると共に、このウェブ部12における幅方向の一端部及び他端部からそれぞれ斜め方向へ屈曲されたフランジ部14が形成されている。一対のフランジ部14は、それぞれ幅方向Wに沿って外側へ広がるテーパ状に形成されており、ウェブ部12の幅方向中心に対して互いに対称となる形状を有している。
【0020】
図1(A)の断面図に示されるように、フランジ部14の先端部には、幅方向Wに沿った断面形状が略フック状となったラルゼン型の継手部16が形成されている。この継手部16には、フランジ部14の先端部から幅方向Wに沿って外側へ突出する底板部17が形成されると共に、この底板部17の先端部から鋼矢板10の厚さ方向(矢印T方向)に沿ってウェブ部12側へ突出する爪部18が形成されている。爪部18は、幅方向Wに沿って内側(フランジ部14側)へ傾斜しており、その先端側の断面形状が略楔状になっている。この爪部18の内側には略平面状の噛合面20が形成されている。
【0021】
図2に示されるように、継手部16には、底板部17の内側面に凹状のポケット溝22が全長に亘って形成されている。ポケット溝22は、その深さ方向が厚さ方向Tと略一致しており、断面形状が略台形状に形成されている。ここで、ポケット溝22は、図2(B)に示されるように、入口側の幅方向Wに沿った幅(開口幅)WEが底面側の幅より若干狭くなっている。
【0022】
本実施形態に係る鋼矢板10は、図7に示されるように垂直遮水壁等の壁体24の構造部品として用いられるものである。この壁体24は、複数枚の鋼矢板10を順次、地盤26中に打込み、これらの鋼矢板10を幅方向Wに沿って直線的に配列することにより構築されている。このとき、互いに隣接する一対の鋼矢板10は、図7(B)及び(C)の部分拡大図に示されるように、継手部16同士が互いに噛合うように地盤26中に打込まれており、これらの継手部16を介して十分な強度で互いに連結されている。
【0023】
本実施形態に係る壁体24は、特に、廃棄物最終処分場や汚染土壌等から流出する汚染水の拡散を防止する用途に用いられるものであり、非常に高い止水性(例えば、換算透水係数が1×10-6cm/s以下)が要求されている。このため、鋼矢板10におけるポケット溝22には、図2(B)に示されるように、定形のシール材である止水ゴム28が嵌挿されている。止水ゴム28は、断面が略円形の丸棒状に成形されている。止水ゴム28の成形材料としては、水に接触して吸水反応を生じることにより、その体積が数倍まで膨張可能な所謂、水膨張性ゴム(広義には、水膨張性を有するエラストマ)が用いられており、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム等に、澱粉系、セルロース系、ポリアクリル酸塩系、ポリビニルアルコール系等の高分子物質を配合したものが用いられる。
【0024】
止水ゴム28の外径はポケット溝22の開口幅WEよりも僅かに大径とされており、ポケット溝22の深さは、止水ゴム28の外径よりも若干長くなっている。これにより、ポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28は、その外周面の一部がポケット溝22内の開口端付近に圧接した状態になり、弾性的な復元力によりポケット溝22の底面側へ付勢されると共に、ポケット溝22内から脱落し難いようになっている。
【0025】
図2に示されるように、ポケット溝22の底面部付近には、止水ゴム28が挿入される直前に、接着剤が塗布されて接着層32が形成される。これにより、止水ゴム28は、ポケット溝22に嵌挿されると、接着層32を介してポケット溝22の底面部に接着固定される。
図3に示されるように、鋼矢板10の継手部16の内側には、ポケット溝22に止水ゴム28が嵌挿された後に、保護充填材34が充填される。保護充填材34は、幅方向Wに沿った断面視にて2個の分割片36、38からなる分割構造を有しており、分割片36、38は、それぞれ長手方向Lに沿って細長い丸棒状に形成されている。分割片36、38は、それぞれ直径が約20mmとされており、長さが継手部16の全長と略等しくなっている。
【0026】
ここで、分割片36、38は、それぞれ柔軟性及び弾性を有する発泡スチロールにより形成されている。2個の分割片36、38は、それぞれ継手部16の内側に充填されると、幅方向W及び厚さ方向Tに沿って圧縮されて断面積が縮小し、外周面の一部を継手部16の内面部へそれぞれ圧接させ、継手部16の内面部との間に圧接力に対応する摩擦力を発生させる。
【0027】
上記のように、弾性及び柔軟性を有する保護充填材34(分割片36、38)を継手部16の内側に圧縮状態として充填しておくと、分割片36、38が経時的に徐々に復元し、分割片38が継手部16の爪先側の開口19から部分的に食み出したり、分割片36、38が継手部16の開口19を通して脱落するおそれがある。
このため、本実施形態では、図3(B)に示されるように、継手部16の内側への分割片36、38の充填を完了すると、図4に示されるように、保持テープ40の一端側及び他端側をそれぞれ継手部16の外面部及びフランジ部14の外側面に貼付け、保持テープ40により継手部16の開口19を部分的に閉止する。保持テープ40としては、例えば、ポリエチレン繊維等の織布を基材とし、片面側に接着層又は粘着層が形成された所謂、養生テープを用いることができる。上記のような保持テープ40は、例えば、鋼矢板10の長手方向Lに沿って1mピッチで鋼矢板10に貼り付けられる。なお、打設時の最初と最後の各1枚を除く中間の鋼矢板10に関しては、両側の継手部16のうちの片側にのみ保護充填材34を充填することが望ましい。
【0028】
次に、上記のように構成された鋼矢板10により壁体24を構築する方法について説明する。
壁体24を構築する際には、鋼矢板10に対する止水ゴム28及び保護充填材34の装填工程が行われる。この装填工程では、図2(A)に示されるように、鋼矢板10におけるポケット溝22の底面付近に接着剤を塗布して接着層32を形成した後、図2(B)に示されるように、止水ゴム28をポケット溝22内に嵌挿する。このとき、例えば、円形ローラを備えたロール治具(図示省略)により止水ゴム28を一端部から他端側へ向かって連続的に押圧して行くことにより、止水ゴム28を一端部から他端側へ向かって徐々にポケット溝22内へ圧入して行き、最終的に止水ゴム28を全長に亘ってポケット溝22内に嵌挿する。ポケット溝22内に嵌挿された止水ゴム28は、ポケット溝22における底面部及び両側面部へそれぞれ圧接する。これにより、止水ゴム28が接着層32によりポケット溝22の底面部に接着される。
【0029】
引き続いて、装填工程では、止水ゴム28をポケット溝22に嵌挿した後、一方の継手部16については、爪先側の開口19を通して内側に分割片36、38からなる保護充填材34を充填する。このとき、1個の分割片36を継手部16内側の奥側(幅方向Wの外側)へ押し込んだ後に、残りの分割片38を継手部16内側の外側(幅方向Wの内側)へ押し込む。この直後に、予め略一定長に切断された保持テープ40を鋼矢板10に貼付け、継手部16の開口19を長手方向Lに沿って一定ピッチ毎に閉止する。これにより、鋼矢板10には、図3(B)に示されるように、止水ゴム28、この止水ゴム28をポケット溝22に接着固定した接着層32、保護充填材34及び、保持テープ40により止水構造52が構成される。
【0030】
このとき、保護充填材34が分割片36、38からなる分割構造とされていることから、保護充填材が一体構造である場合と比較し、継手部16内側の奥行が深いときでも、保護充填材34(分割片36、38)を容易に継手部16内側の所定部位へ挿入することができる。また上記のように、一定のピッチ毎に保持テープ40により継手部16の開口19を閉止することにより、分割片38の一部が開口19から外側へ食み出したり、分割片36、38が開口19を通して継手部16の内側から脱落することを防止できる。
【0031】
上記のような装填工程は、好ましくは、鋼矢板10を地盤26へ打設する直前に行われる。これは、止水ゴム28が雨、湿気等により打設前に膨張することを確実に防止するためである。
図7に示されるように、鋼矢板10を地盤26に打設する際には、クローラクレーン54のクレーン56に吊り下げられたバイブロハンマ58により鋼矢板10の上端部を把持し、バイブロハンマ58により鋼矢板10を上下方向へ振動させつつ、クレーン56によりバイブロハンマ58を所定の打込み速度で鋼矢板10と共に下降させる。これにより、鋼矢板10の自重及び振動の衝撃力により鋼矢板10が地盤26に所定の打込み速度で打込まれる。
【0032】
このとき、図5に示されるように、後続鋼矢板10Fは、その他方の継手部16が先行鋼矢板10Pの一方の継手部16に嵌合した状態とされつつ、地盤26中に打込まれて行く。これにより、先行鋼矢板10Pに後続鋼矢板10Fがそれぞれの継手部16を介して連結されて、後続鋼矢板10Fにより壁体24が幅方向Wへ延長される。
また継手部16の内側に充填された保護充填材34は、後続鋼矢板10Fの継手部16の先端部により開口19側の一部が削り取られて下方へ圧縮され、又は幅方向W及び厚さ方向Tに沿って圧縮される。これにより、図6(A)に示されるように、一対の継手部16間の隙間の大部分が圧縮状態となった保護充填材34により満たされた状態となる。このとき、保護充填材34が2個の分割片36、38により構成されていることから、保護充填材34には分割片36、38間に切目42が形成される。この切目42は、概ねポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28に対向するように位置する。なお、このとき、先行鋼矢板10Pの継手部16に嵌合する側の後続鋼矢板10Fの継手部16には、保護充填材34は充填されていない。後続鋼矢板10Fは、他端側の継手部16に保護充填材34が充填されている。
【0033】
鋼矢板10が地盤26中に打込まれると、ポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28は、地盤26に含まれる水分を徐々に吸収して、図6(B)に示されるように、ポケット溝22内から膨張する。このとき、保護充填材34が分割片36、38間の切目42を止水ゴム28に対向させていることから、止水ゴム28が、その膨張圧により切目42を押し開きながら、この広がった切目42を通って継手部16間の隙間内へ容易に膨張できる。
【0034】
この結果、保護充填材34に切目42が無く、止水ゴム28が継手部16内へ膨張するには、その膨張圧により保護充填材34を剪断等により破断する必要がある場合と比較し、膨張した止水ゴム28により互いに嵌合した継手部16間の隙間を確実にシール(止水)できるようになる。
特に、継手部16の内側に充填された保護充填材34が圧縮されて硬化した場合には、止水ゴム28がその膨張圧により保護充填材34を押し除けつつ、膨張することが困難になるが、このような場合にも、保護充填材34に切目42があることにより、止水ゴム28がポケット溝22内から継手部16間の隙間へ膨張可能になる。
【0035】
但し、保護充填材として、その素材を適宜選択することにより、分割構造を有していない一体構造のものを用いることも可能である。例えば、保護充填材として、打設後に水との反応により徐々に脆化するような材料を用いた場合には、止水ゴム28の膨張圧により保護充填材を剪断し、又は継手部16間から排除することが可能になるので、止水ゴム28による継手部16間の止水性を確保できる。また保護充填材自体が十分に高い遮水性を有する弾性材料を用いた場合には、止水ゴム28の膨張圧により保護充填材が圧縮され、継手部16が止水ゴム28及び保護充填材34により止水することが可能になる。
【0036】
また保護充填材を継手部16の内側へ充填する際の作業性を良くするために、保護充填材として、幅方向Wに沿った断面視にて、3個以上の分割片からなる分割構造を有するものを用いることもできる。
【0037】
次に、本実施形態に係る鋼矢板における止水構造52及び止水ゴム28の損傷防止方法の作用について説明する。
本実施形態に係る鋼矢板10の止水構造52では、先行鋼矢板10Pにおける一方の継手部16のポケット溝22に止水ゴム28が嵌挿された状態で、一方の継手部16の内側に保護充填材34が充填されることにより、先行鋼矢板10Pを地盤26中に打設する先行打設工程にて、保護充填材34により開口19を通して継手部16の内側に石、土砂等の地盤構成物が浸入することを効果的に阻止できる。
【0038】
従って、本実施形態に係る鋼矢板10の止水構造52及び止水ゴム28の損傷防止方法によれば、先行鋼矢板10Pを地盤26中に打込む際に、先行鋼矢板10Pにおけるポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28に地盤構成物との摩擦により欠損、破断等の損傷が生じることを効果的に防止できる。
また、後続鋼矢板10Fを地盤26中に打込む後続打設工程にて、後続鋼矢板10Fの継手部16からの摩擦力が地盤構成物を介して先行鋼矢板10Pの止水ゴム28に伝達されることも防止できるので、後続鋼矢板10Fの継手部16からの摩擦力により先行鋼矢板10Pの止水ゴム28に損傷が生じることも効果的に防止できると共に、後続鋼矢板10Fの継手部16を先行鋼矢板10Pの継手部16に嵌合させつつ、継手部16内の地盤構成物に阻害されることなく、後続鋼矢板10Fを円滑に地盤26中に打込むことができる。
【0039】
このとき、止水ゴム28がポケット溝22内に嵌挿されて、ポケット溝22内に格納された状態になっていることから、例えば、不定形の止水材が継手部16の内面側に塗布され、又はテープ状の止水材が貼り付けられている場合と比較し、後続鋼矢板10Fの継手部16を先行鋼矢板10Pの継手部16に嵌合させつつ、後続鋼矢板10Fを地盤26中に打込む際に、後続鋼矢板10Fの継手部16により先行鋼矢板10Pの継手部16内の保護充填材34が下方へ圧縮され、又は移動しても、この保護充填材34との摩擦により止水ゴム28が下方へ移動することや、継手部16から脱落することを効果的に防止できる。
【0040】
(止水構造の変形例)
次に、本発明の実施形態に係る鋼矢板における止水構造の変形例について説明する。図8には本実施形態に係る鋼矢板における止水構造の第1の変形例が示されている。なお、図8に示される止水構造60では、図3に示される止水構造52と同一の部分について同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
この止水構造60では、図8(A)及び(B)に示されるように、継手部16の内側に充填される保護充填材62として、2本の藁縄64が用いられている。このような藁縄64は、稲、小麦等のイネ科植物の茎を原料とした藁を綯って作られたものである。また藁縄64は比較的低廉であり、水を含む地盤26中では微生物等により比較的短時間で分解されるという特性を有している。
【0042】
保護充填材62は、所定のピッチで、鋼矢板10の外側に貼り付けられた保持テープ40により継手部16の内側に保持されている。また保護充填材62は、継手部16に内側で、2本の藁縄64間の切目68を止水ゴム28に対向させている。これにより、図3に示される保護充填材34(分割片36、38)の場合と同様に、鋼矢板10が地盤26中に打込まれた後に、止水ゴム28が、その膨張圧により藁縄64間の切目68を押し開きながら、この切目68を通って継手部16間の隙間内へ容易に膨張できる。
【0043】
この結果、保護充填材62に切目68が無く、止水ゴム28が継手部16内へ膨張するには、その膨張圧により保護充填材62を剪断等により破断する必要がある場合と比較し、膨張した止水ゴム28により互いに嵌合した継手部16間の隙間を確実にシール(止水)できるようになる。
また、保護充填材62を藁縄64により構成したことにより、鋼矢板10を地盤26中に打込んだ後には、地盤26中で藁縄64が経時的に分解されるので、鋼矢板10の打込直後に、止水ゴム28が継手部16間に十分に膨張しなかった場合でも、その後に、止水ゴム28の膨張が継続することで、保護充填材62が継手部16間から徐々に排除され、止水ゴム28を継手部16間に十分膨張させ、十分な止水性が得られる。
【0044】
止水構造60によっても、図3に示される止水構造52と同様に、鋼矢板10(先行鋼矢板10P)を地盤26に打設する際に、保護充填材62により先行鋼矢板10Pの継手部16の内側に石、土砂等の地盤構成物が浸入することを阻止できる。
ここで、藁縄64は、発泡スチロール、発泡ウレタン等の発泡樹脂材料と比較し、引張り強度、剪断強度等の強度の点で優れていることから、石、土砂等の地盤構成物との摩擦等により破断、欠損等の損傷が生じることが少なく、継手部16の内側への地盤構成物の浸入をより効果的に防止できる。
【0045】
この結果、先行鋼矢板10Pを地盤26中に打込む際に、先行鋼矢板10Pにおけるポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28に地盤構成物との摩擦により欠損、破断等の損傷が生じることを効果的に防止でき、また後続鋼矢板10Fを地盤26中に打込む際に、後続鋼矢板10Fの継手部16からの摩擦力が地盤構成物を介して先行鋼矢板10Pの止水ゴム28に伝達されることも防止できるので、後続鋼矢板10Fの継手部16からの摩擦力により先行鋼矢板10Pの止水ゴム28に損傷が生じることも効果的に防止できると共に、後続鋼矢板10Fの継手部16を先行鋼矢板10Pの継手部16に嵌合させつつ、後続鋼矢板10Fを円滑に地盤26中に打込むことができる。
【0046】
なお、止水構造60では、止水ゴム28の膨張容易性及び作業性を考慮して、保護充填材62を2本の藁縄64により構成したが、前述したように、藁縄が地盤26中で容易に分解するものであることから、保護充填材62を1本の藁縄により構成して良く、また作業性を更に良好とするため、3本以上の藁縄により構成しても良い。
【0047】
次に、本発明の実施形態に係る鋼矢板における止水構造の第2の変形例について説明する。図9(A)には本発明の実施形態に係る鋼矢板における止水構造の第3の変形例が示され、図9(B)には、第3の変形例に係る止水構造が適用された互いに嵌合する一対の鋼矢板が示されている。なお、図9に示される止水構造70では、図3に示される止水構造52と同一の部分について同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
この止水構造70では、図9(A)に示されるように、継手部16の内側に充填される保護充填材72として、塑性的に流動可能なベントナイト、土質系遮水材等の粘土状材料が用いられている。
ここで、ベントナイトは、モンモリロナイト(粘土鉱物の一種)を主成分とし、石英、長石、クリストバライトなどが混在した粘土状材料(乾燥状態では、粉末)であり、水に対して極めて親和性が強く、吸水により膨張する性質(水膨張性)及び遮水性を有している。
【0049】
また土質系遮水材は、海生粘土を主成分とし、これにベントナイト、ゲル化剤等を添加したものであり、高い遮水性を有している。これら以外にも、保護充填材72を形成する粘土状材料としては、止水ゴム28の膨張圧を受けて塑性的に流動可能なものならば、他のものも用いることができるが、好ましくは水膨張性又は遮水性を有するものが用いられる。
【0050】
止水構造70では、保護充填材72が継手部16の内側に充填されて、塑性変形した状態になることから、保持テープ40等の保持部材を用いなくても、保護充填材72自体の変形抵抗により継手部16の内側に保持され、地盤26中への打込み時に保護充填材72が継手部16からの脱落が防止される。
以上説明した止水構造70では、保護充填材72が止水ゴム28の膨張圧を受けて塑性的に流動可能な粘土状材料により形成されている。このことから、先行鋼矢板10Pが地盤26中に打込まれた後、後続鋼矢板10Fが地盤26中に打込まれると、先行鋼矢板10Pの継手部16内側に充填されていた保護充填材72は、後続鋼矢板10Fの継手部16からの加圧力により継手部16の下方又は外側へ流動するので、後続鋼矢板10Fが継手部16を先行鋼矢板10Pの継手部16に嵌合させつつ、円滑に地盤26中に打込まれる。
【0051】
先行鋼矢板10P及び後続鋼矢板10Fの打設完了後には、図9(B)に示されるように、先行鋼矢板10Pの止水ゴム28が吸水すると共に、その膨張圧により保護充填材72を塑性変形させつつ、継手部16間の隙間内へ膨張するので、膨張した止水ゴム28により互いに嵌合した継手部16間の隙間を確実にシール(止水)できる。
また、保護充填材72を、塑性的な流動性に加え、遮水性を有する粘土状材料により形成したことから、止水ゴム28の膨張完了後に、保護充填材72が止水ゴム28と継手部16との間に充填されることで、この保護充填材72により継手部16間の止水性を更に向上できる。
【0052】
図9に示される止水構造70によっても、図3に示される止水構造52と同様に、鋼矢板10(先行鋼矢板10P)を地盤26に打設する際に、保護充填材72により先行鋼矢板10Pの継手部16の内側に石、土砂等の地盤構成物が浸入することを阻止できる。
この結果、先行鋼矢板10Pを地盤26中に打込む際に、先行鋼矢板10Pにおけるポケット溝22に嵌挿された止水ゴム28に地盤構成物との摩擦により欠損、破断等の損傷が生じることを効果的に防止でき、また後続鋼矢板10Fを地盤26中に打込む際に、後続鋼矢板10Fの継手部16からの摩擦力が地盤構成物を介して先行鋼矢板10Pの止水ゴム28に伝達されることも防止できるので、後続鋼矢板10Fの継手部16からの摩擦力により先行鋼矢板10Pの止水ゴム28に損傷が生じることも効果的に防止できると共に、後続鋼矢板10Fの継手部16を先行鋼矢板10Pの継手部16に嵌合させつつ、後続鋼矢板10Fを円滑に地盤26中に打込むことができる。
【0053】
なお、本実施形態に係る鋼矢板10は、一対のテーパ状のフランジ部14を有しており、断面形状が所謂U字状のものであったが、これ以外にも、一対のフランジ部の先端側が幅方向外側へそれぞれ屈曲され、このフランジ部の先端部に継手部が形成されて、断面形状が所謂ハット状とされた鋼矢板であっても、止水構造52、60、70及び、この止水構造52、60、70を用いた止水ゴム28の損傷防止方法を適用できる。
【0054】
また、本実施形態に係る鋼矢板10では、長手方向に延在するポケット溝22が継手部16における底板部17の内面側(図2参照)に形成されている例を示したが、図10(A)に示されるように、一方の鋼矢板10における底板部17の内面側と対向する、他の鋼矢板10における爪部18の先端付近にポケット溝80が形成されている場合や、図10(B)に示されるように、一方の鋼矢板10におけるフランジ部14の継手部16との境界付近における爪部18の外面側にポケット溝82が形成されている場合についても、本発明に係る止水構造52、60、70を適用すれば、止水ゴム28に欠損、破断等の損傷が生じることを効果的に防止できる。
【実施例】
【0055】
次に、止水構造52及び止水構造60を備えた鋼矢板10を地盤26に打設した実験結果の一例を実施例1及び実施例2として説明する。
鋼矢板10としては、有効幅WR=600mm、有効高さHR=210mm(図1(A)参照)、長さ16.5mのものを用いた。
止水ゴム28としては、直径=12mm、引張り強さ=2.94MPa以上、切断時伸び=500%以上、硬さ=A34±10、体積変化率=175±75%のものを用いた。
【0056】
止水ゴム28をポケット溝22の底面部に接着する接着剤としては、主成分が合成ゴム、主溶剤がトルエン及びn−ヘキサンのものを用い、これを刷毛によりポケット溝22の底面部に均一の厚さに塗布した。
第1実施例では、保護充填材34を2個の分割片36、38により構成した。分割片36、38としては、発泡スチロール製で、直径が20mmで、長さが約16.5mとされた丸棒状のものを用いた。保持テープ40としては、ポリエチレン繊維等の織布を基材とし、片面側に接着層が形成された養生テープを用い、これを長手方向に沿って1mピッチで鋼矢板10に貼り付け、これらの保持テープ40により1mピッチで開口19を閉止した。
【0057】
第2実施例では、保護充填材62を2本の藁縄64により構成した。保持テープ40としては、第1実施例と同じものを用いた。
実施例1及び実施例2では、それぞれ鋼矢板10を、バイブロハンマを用いて地盤26中へ打込んだ。
実施例1では、4枚の鋼矢板10をそれぞれ地盤26に打込み、壁体24(継手部16の嵌合箇所:3箇所、止水ゴム28の総数:8本)を構築した後、4枚の鋼矢板10を地盤26から引き抜き、止水ゴム28の損傷の有無を目視にて検査した結果、止水ゴム28には欠損、破断等の損傷が観察されなかった。
【0058】
実施例2では、4枚の鋼矢板10をそれぞれ地盤26に打込み、壁体24(継手部16の嵌合箇所:3箇所、止水ゴム28の総数:8本)を構築した後、4枚の鋼矢板10を地盤26から引き抜き、止水ゴム28の損傷の有無を目視にて検査した結果、止水ゴム28には欠損、破断等の損傷が観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼矢板の構成を示す幅方向に沿った断面図及び斜視図である。
【図2】図1に示される鋼矢板及び、この鋼矢板に装着される止水ゴムの構成を示す幅方向に沿った断面図である。
【図3】図1に示される鋼矢板及び、この鋼矢板に適用される止水構造の構成を示す幅方向に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る鋼矢板及び止水構造の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る一対の鋼矢板が互いに嵌合した状態を示す幅方向に沿った断面図及び斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る一対の鋼矢板における互いに嵌合した継手部及び止水ゴムを示す幅方向に沿った断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る鋼矢板により構築された壁体及び、この壁体の構築方法を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る鋼矢板に適用される止水構造の第2の変形例を示す幅方向に沿った断面図である。
【図9】(A)は本発明の実施形態に係る鋼矢板に適用される止水構造の第3の変形例を示す幅方向に沿った断面図、(B)は第3の変形例に係る止水構造が適用された一対の鋼矢板の継手部が互いに嵌合した状態を示す幅方向に沿った断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る鋼矢板におけるポケット溝及び止水ゴムの配置についての他の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 鋼矢板
10F 後続鋼矢板
10P 先行鋼矢板
12 ウェブ部
14 フランジ部
16 継手部
17 底板部
18 爪部
19 開口
20 噛合面
22 ポケット溝
24 壁体
26 地盤
28 止水ゴム
32 接着層
34 保護充填材
36、38 分割片
40 保持テープ
42 切目
52 止水構造
54 クローラクレーン
56 クレーン
58 バイブロハンマ
60 止水構造
62 保護充填材
64 藁縄
68 切目
70 止水構造
72 保護充填材
80、82 ポケット溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状のウェブ部と、前記ウェブ部の側端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部の先端部に形成されたラルゼン型の継手部と、前記継手部に形成されたポケット溝と、を有する鋼矢板であって、
水と反応して体積が膨張する水膨張性ゴムにより形成され、前記ポケット溝内に装填されて、前記継手部と該継手部に嵌合する他の鋼矢板の継手部との間を止水する止水材と、
外圧により圧縮可能な材料又は塑性的に流動可能な粘土状材料により形成され、前記ポケット溝に前記止水材が嵌挿された状態で、前記継手部の内側に充填される保護充填材と、
を有することを特徴とする鋼矢板。
【請求項2】
前記保護充填材を、発砲スチロールにより形成したことを特徴とする請求項1記載の鋼矢板。
【請求項3】
前記保護充填材は、幅方向に沿った断面視にて複数個の分割片からなる分割構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の鋼矢板。
【請求項4】
前記保護充填材として、藁を綯って作られた藁縄を用いたことを特徴とする請求項1記載の鋼矢板。
【請求項5】
前記継手部の爪先側の開口を閉止して、該継手部の内側から前記保護充填材が脱落することを防止する保持部材を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の鋼矢板。
【請求項6】
複数枚の鋼矢板を有し、隣接する鋼矢板の継手部同士が連結されて構築された鋼矢板遮水壁であって、
前記鋼矢板として、請求項1乃至5の何れか1項記載の鋼矢板を用いたことを特徴とする鋼矢板遮水壁。
【請求項7】
プレート状のウェブ部と、前記ウェブ部の側端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部の先端部に形成されたラルゼン型の継手部と、前記継手部に形成されたポケット溝と、を有する鋼矢板に用いられる止水材の損傷防止方法であって、
前記ポケット溝内に、前記継手部と該継手部に嵌合する他の鋼矢板の継手部との間を止水するための止水材を装填した後、前記継手部の内側に、外圧により圧縮可能な材料又は塑性的に流動可能な粘土状材料により形成された保護充填材を充填する装填工程と、
前記装填工程の完了後に、前記保護充填材により前記継手部の爪先側の開口を通して、該継手部の内側に地盤構成物が浸入することを阻止しつつ、後続鋼矢板に対して先行鋼矢板を地盤に打設する先行打設工程と、
前記先行打設工程の完了後に、後続鋼矢板の継手部を先行鋼矢板の継手部に嵌合すると共に、後続鋼矢板の継手部により先行鋼矢板の継手部内側の保護充填材を圧縮又は流動させつつ、後続鋼矢板を地盤に打設する後続打設工程と、を有することを特徴とする止水材の損傷防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−84385(P2010−84385A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253558(P2008−253558)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【出願人】(390001993)みらい建設工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】