説明

鋼管杭および鋼管杭の施工方法

【課題】均質な根固め部を築造することが可能な鋼管杭およびその鋼管杭の施工方法を提供すること。
【解決手段】先端部の周方向に間隔をおいて複数の噴射ノズルを設置した鋼管杭1において、前記複数の噴射ノズルの内、少なくとも一つの噴射ノズルが鋼管杭内面に向かって噴射するように配置された内向き噴射ノズル2とされている鋼管杭1。さらには前記のような鋼管杭1を使用した鋼管杭の施工方法であって、バイブロハンマを用い、かつ鋼管杭貫入方向に噴射する噴射ノズル6および内向き噴射ノズル2の各噴射ノズルより高圧水を噴射して、鋼管杭1を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、前記各噴射ノズルから流動性固化材を噴射し、鋼管杭先端に流動性固化材を固化させた根固め部を築造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ノズルを用いて鋼管杭の先端に根固め部を築造するための鋼管杭およびその鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭の施工において、バイブロハンマを用いて、鋼管杭に振動力を与えて、地盤の抵抗を軽減しながら、地中に打設する工法が一般に用いられるが、地盤が固い場合にはウォータージェットを併用する方法がある。
【0003】
ウォータージェットを併用する鋼管杭の施工方法は、鋼管杭の先端部に複数の噴射ノズルを配置し、各々の噴射ノズルに配管ホースが接続され、噴射ノズルから高圧水を噴射することにより、地盤を掘削し、杭の打設抵抗を軽減する工法である。なお、一般的にウォータージェットは、鋼管杭の先端部から下方のみに向かって噴射される。
【0004】
しかし、ウォータージェットを併用した施工方法においては、鋼管杭の下方の地盤内に空洞が発生したり、鋼管杭先端部の閉塞が不十分となるために、鋼管杭の施工後に、先端支持力を確保することができない。
そこで、噴射ノズルを用いて高圧水を噴射しながら、所定の支持層まで鋼管杭を施工後に、噴射ノズルから流動性固化材を噴射することにより、杭先端部に根固め部を築造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、噴射ノズルの高圧水の噴射方向を杭打設方向および打設方向と垂直外側方向に配置することにより、大きな根固め部を築造できることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−270157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼管杭の先端支持力を確保するためには、前記のように、杭先端部に根固め部を築造することが必要である。その方法としては、噴射ノズルからセメントミルクなどの流動性固化材を高圧水と同じ圧力で噴射する方法がある。流動性固化材を高圧で噴射することにより鋼管杭先端部に大きな根固め部を築造することができる。
鋼管杭から地盤への荷重伝達方法としては、鋼管杭から鋼管杭のずれ止めを介して根固め部に荷重伝達され、さらに根固め部から先端地盤へ荷重伝達される。
しかし、鋼管杭を地盤に打設する場合に、鋼管杭にずれ止めを備えている形態では、ずれ止めの外面に土砂が付着する。
図9に示すように、鋼管杭20のずれ止め7に土砂10が付着した状態であれば、根固め部12に確実に荷重伝達を図ることができない。また、根固め部(ソイルセメント又はコンクリート)12内に土塊11などが介在した不均質なものであれば、根固め部12内に局部的に脆弱な部分が存在し、根固め部12での破壊が発生するために、先端地盤14へ確実に荷重伝達が図れないことになる。
【0007】
本発明者は、鋼管杭先端部から根固め部を介して先端地盤に荷重伝達させる場合について種々研究した結果、鋼管杭の外面に設けたずれ止め(図示省略)を介して先端地盤に荷重を伝達させる場合に比べて、鋼管杭の内面に設けたずれ止めを介して先端地盤に荷重を伝達させる場合の方が、数倍の荷重伝達が可能である知見を得た。また、特に、鋼管杭により横断面で閉鎖された鋼管杭内側に設けられるソイルセメントあるいはコンクリート等の根固め部は、拘束された状態であるため、鋼管杭外側の根固め部よりも支圧力を高めることができる知見を得た。
【0008】
したがって、鋼管杭の内面のずれ止めから根固め部へ確実に鉛直力を伝達可能にする上で、鋼管杭の内面に設けるずれ止めの外面全体と根固め部とが直接確実に接触して、初めて大きな鉛直力を鋼管杭から根固め部に伝達可能になる。しかも、均質な根固め部が形成されていることで、根固め部全体で鋼管杭を均等に支承し、そのような根固め部を介して地盤に均等に荷重を伝達することができる。
【0009】
鋼管杭と根固め部の荷重伝達を図るために、前記のように、鋼管杭先端部に土砂が固着している状況では、荷重伝達が不十分となることから、セメントミルク等の流動性固化材の噴射の前に、鋼管杭先端(鋼管の場合には鋼管内面)の土砂を洗浄する必要がある。
【0010】
すなわち、噴射ノズルを用いた根固め部の築造においては、セメントミルク等の流動性固化材の噴射の前に、鋼管杭内空の土塊を破砕し、鋼管杭内面の土砂を洗浄することが重要である。さらにセメントミルク等の流動性固化材の噴射時には、鋼管杭内空の土砂と流動性固化材を均質に混練することが重要である。
【0011】
本発明は、噴射ノズルを備えた鋼管杭を、その噴射ノズルを用いて鋼管杭を打設後、鋼管杭内の土塊の破砕および洗浄を行い、かつ、均質な根固め部を築造することが可能な鋼管杭およびその鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の鋼管杭では、先端部の周方向に間隔をおいて複数の噴射ノズルを設置した鋼管杭において、前記複数の噴射ノズルの内、少なくとも一つの噴射ノズルが鋼管杭内面に向かって高圧水を噴射するように配置された内向き噴射ノズルであることを特徴とする。
第2発明では、第一発明の鋼管杭において、前記内向き噴射ノズルのノズル孔が前期鋼管杭内にあることを特徴とする。
第3発明では、第1発明または第2発明の鋼管杭において、内向き噴射ノズルの内、少なくとも1つの内向き噴射ノズルのノズル孔の中心軸線を、鋼管杭の中心軸からずらして配置したことを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの鋼管杭において、鋼管杭先端部内面にずれ止めが設けられていることを特徴とする。
第5発明の鋼管杭の施工方法においては、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼管杭を使用し、バイブロハンマを用い、鋼管杭貫入方向に高圧水を噴射する鋼管杭の施工方法であって、前記鋼管杭貫入方向に噴射する噴射ノズルおよび前記内向き噴射ノズルより高圧水を噴射して、鋼管杭を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、前記各噴射ノズルから流動性固化材を噴射し、鋼管杭先端に流動性固化材を固化させた根固め部を築造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果が得られる。
先端部の周方向に間隔をおいて複数の噴射ノズルを設置した鋼管杭において、前記複数の噴射ノズルの内、少なくとも一つの噴射ノズルが鋼管杭内面に向かって噴射するように配置された内向き噴射ノズルとすることにより、鋼管杭内の土塊を容易に破砕し、かつ鋼管杭内面に付着する土砂を容易に洗浄することができる鋼管杭とすることができる。ここで、前記内向き噴射ノズルのノズル孔が前記鋼管杭内にあれば、洗浄がさらに容易になる。さらに、高圧水と破砕された土砂が混合した土砂混合水(アブレイシブウォータージェット)として鋼管杭内面に向かって噴射されることにより、鋼管杭内面の研磨効果が増加し、鋼管杭内面に付着する土砂の「はつり性」を向上することができる。
また、内向き噴射ノズルの内、少なくとも1つの内向き噴射ノズルのノズル孔の中心軸線を、鋼管杭の中心軸からずらして配置されている場合、このような内向き噴射ノズルから噴射される高圧水あるいは高圧の流動性固化材が、鋼管杭の中心から鋼管杭内の偏位した位置を通るように斜めに噴射されるため、鋼管杭内における土砂混合水を対流させ、鋼管杭内での高圧水による土砂に対する回転トルクを発生し、鋼管杭内に強制対流を生じる効果と、高圧水と鋼管杭内の土砂が混合されることにより鋼管杭内の研磨効果(アブレイシブウォータージェット効果)の相乗効果により、鋼管杭内面に付着する土砂の「はつり性」が向上することができる。さらに、土砂と流動性固化材との混合体を鋼管杭内において強制対流させて均一に混合させて均質な混合体とすることができる。
すなわち、内向き噴射ノズルの内、少なくとも1つの内向き噴射ノズルのノズル孔の中心軸線を、鋼管杭の中心軸からずらして配置されている場合には、少なくとも一つの内向き噴射ノズルにより鋼管杭内面方向に噴射することにより、鋼管杭内面の土塊の破砕および鋼管杭内面の土砂の洗浄を飛躍的に改善できる。
また、噴射ノズルから流動性固化材を噴射することにより、土砂とセメントミルク等の流動性固化材の混練を均一になるように改善することができ、均質な根固め部を築造することができる。
さらに、鋼管杭内面にずれ止めが設けられている場合は、鋼管杭から根固め部に確実に荷重伝達されることができる。
このように、本発明は、鋼管杭の先端支持力を飛躍的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1および図2には、本発明の第1実施形態の鋼管杭1が示され、図3には、図1および図2における鋼管杭1における内向き噴射ノズル2を有する鋼管杭1の横断平面図が示され、図4には、図1の一部が拡大して示されている。第1実施形態では内向き噴射ノズル2のノズル孔が鋼管杭内部にあるが、鋼管杭1の内面に向かって噴射できるのであれば、必ずしも鋼管杭内部でなくてもよい。
【0016】
図3に示すように、鋼管杭1における先端面から上部方向に離れた杭先端部外周面1aには、周方向に等角度間隔をおいて、高圧水または流動性固化材を噴射する内向き噴射ノズル2を有する噴射部3を備えている。
【0017】
さらに図1および図4を参照して説明すると、前記の噴射部3は、図示の形態では、杭貫入方向に噴射する貫入方向噴射ノズル6と、杭貫入方向に交差するように配置され、鋼管杭内面に向かって噴射し、鋼管杭内面を洗浄するための内向き噴射ノズル2とを備えた噴射部3である。図示の形態では、前記の内向き噴射ノズル2の中心軸線(噴射孔の中心軸線)C1は、杭貫入方向に対して直角な水平面内において、鋼管杭の中心軸からずらし、相対する直径P(噴射ノズル先端を通る半径に対し、垂直に交わる直径P)に対して斜めに交差するように配置されている。
なお、前記の内向き噴射ノズル2の中心軸線(噴射孔の中心軸線)C1は、杭貫入方向に対して直角な水平面に対して多少傾斜させて、上下方向の運動成分を付与するようにしてもよい。
【0018】
前記の噴射部3は、鋼管杭外面に溶接等の固定手段により固定される。前記の内向き噴射ノズル2は、鋼管杭1先端部に、鋼管杭周方向に等角度間隔をおいて設けられた貫通孔4に挿入配置された状態で、噴射部3が鋼管杭1の外面に溶接により固定(または図示を省略するが着脱可能に固定)されることにより、所定の位置に設置される。
【0019】
図示の形態では、噴射部3における基端側の高圧水供給孔5から横方向に分岐されて、貫入方向噴射孔6aと、内向き噴射孔2aとを備え、鋼管杭の先端部から鋼管杭貫入方向に噴射する貫入方向噴射ノズル6と、水平方向等の横方向に噴射する内向き噴射ノズル2とを備えている。
【0020】
前記の噴射部3は、貫入方向噴射ノズル6を備えた噴射部と、内向き噴射ノズル2を備えた噴射部とがそれぞれ独立別個に設置され、それぞれ独立した別個の高圧水・流動性固化材供給パイプ等を設ける形態でもよい。
【0021】
図1に示すように、鋼管杭1の本体を形成している鋼管の内面には、周方向内面に沿って丸鋼が溶接により固定されてなるずれ止め7が設けられている。前記のずれ止め7は上下方向に間隔をおいて複数段設けられている。ずれ止め7としては、例えば、図7に示すように、縞鋼板における凹凸部8を利用するようにしてもよい。このような場合には、凹凸部8を鋼管内面側となるように配置して構成した内面突起付き鋼管9を鋼管杭1として用いればよい。
【0022】
本発明においては、先端部の周方向に間隔をおいて複数の噴射ノズルを設置した鋼管杭において、前記複数の噴射ノズルの内、少なくとも一つの噴射ノズルが鋼管杭内面に向かって噴射するように配置された内向き噴射ノズル2である必要がある。
内向き噴射ノズル2は、設置個数が多いほど、これらから噴射される高圧水により鋼管杭1内を掘削すると共に、鋼管杭1の内面を洗浄して、鋼管杭内面に付着している土砂を確実に洗浄して落とすことができる。また、鋼管杭1内の土砂と高圧水とが混合した土砂混合水として鋼管杭内面に噴射されることにより、鋼管杭内面の研磨効果(アブレイシブウォータージェット効果)が増加し、鋼管杭1の内面側に付着する土砂を洗浄性が高まる。
【0023】
図3に示すように、前記の内向き噴射ノズル2の内の少なくとも1つの内向き噴射ノズル2のノズル孔2aの中心軸線C1は、鋼管杭1の直径Pに対して斜めにして、鋼管杭1の中心軸Oをはずして鋼管杭内の偏位した位置を通るように配置されている。
【0024】
このように内向き噴射ノズル2のノズル孔の中心軸線C1を鋼管杭の中心軸Oからずらし、相対する直径Pに対して斜めに交差するように配置することにより、前記内向き噴射ノズル2から高圧水を噴射させ、鋼管杭内面または鋼管杭内面に付着している土砂10(図9参照)を掘削する。
この場合には、前記のように高圧水と破砕された土砂が混合した土砂混合水(アブレイシブウォータージェット)として鋼管杭内面に向かって噴射されることにより、鋼管杭内面の研磨効果(アブレイシブウォータージェット効果)が増加することに加えて、鋼管杭内では土砂混合水に強制対流(例えば、図3のAに示すような方向の強制対流)を積極的に起こし、この強制対流により鋼管杭内面または鋼管杭内面に付着している土砂10の洗浄性を飛躍的に向上することができる。
また、前記内向き噴射ノズル2から流動性固化材を噴射する場合には、鋼管杭1内(および鋼管杭1の下方)での土砂10あるいは土塊11を含む鋼管杭内部の掘削土を含む流動性固化材16の強制対流を積極的に起す。そして塊状の土砂10(図9参照)あるいは土塊11を積極的に破砕して細粒化し、均一に混合可能にする。
【0025】
鋼管杭内において鋼管杭内部掘削土混合水を対流させる場合に、鋼管杭中心Oを通るように噴射すると、鋼管杭中心を境にして、左右2分した対流になってもよいが、好ましくは、図3に矢印Aで示すように、鋼管杭内において一方向に流れる対流が生じるようにするのが好ましい。すなわち、直径Pに対して斜めに配置した内向き噴射ノズル2を複数個設置する場合には、配置方向を同じ方向にすることが好ましい。ただし、斜めにする角度を一致させる必要はない。
【0026】
内向き噴射ノズル2は、鋼管杭1中心をとおる鋼管杭半径方向の中心を通る直径Pに対して傾斜するように配置されている。
複数の内向き噴射ノズル2より噴射した場合、各内向き噴射ノズル2の噴射孔中心軸線が同レベルに対向するように配置されていると、対向配置されている噴射ノズル2から噴射されている各高圧水が干渉し、高圧水の運動エネルギーが減少することが懸念される場合には、鋼管杭1の内側において、各内向き噴射ノズル2の上下方向あるいは横方向(例えば、横水平方向)の噴射角度に差を設けて、干渉しないようにしてもよい。
【0027】
このように内向き噴射ノズル2が配置されていることにより、鋼管杭内面における対流を強制的に促進し、対流現象による鋼管杭内の洗浄効果が飛躍的に改善される。
【0028】
鋼管杭内の対流を促進する上では、内向き噴射ノズル2の中心軸線C1を相対する直径Pに対して斜めに交差させ、その交差角度は、例えば、噴射ノズルからの噴射のひろがり角度は約10度であるために、対向する噴射ノズルは相対する直径Pに対して垂直から約5度以上にすれば良い。
【0029】
内向き噴射ノズル2の相対する直径Pに対して垂直から斜めにする角度を大きくするほど、鋼管杭内の対流は良好になるが、土塊の破砕力が弱まるために、45度以下にすることが望ましい。
【0030】
前記の内向き噴射ノズル2は複数配置されていてもよく、例えば、鋼管杭周方向に等角度間隔をおいて、2つ、3つ、4つ、8つ等複数配置されていてもよい。例えば、内向き噴射ノズル2を4つ配置する場合、図示の形態のように、90度の等角度間隔をおいて設置されていてもよい。
【0031】
さらに、例えば、複数の内向き噴射ノズル2を配置する場合、鋼管杭1の外径にもよるが、鋼管杭1の外径が600mm〜2000mmの場合、2個〜8個の内向き噴射ノズル2を等角度間隔をおいて鋼管杭1の周方向に設けるようにする。
【0032】
貫入方向噴射ノズル6は、例えば、前記のような外径の鋼管杭1の場合に、鋼管杭1の周方向に等角度間隔をおいて、4個〜8個設けるようにすればよい。
【0033】
前記の各貫入方向噴射ノズル6および内向き噴射ノズル2は、杭打込み時には、バイブロハンマと併用して、例えば圧力3〜15MPaの高圧水(例えば清水)を噴射し、バイブロハンマの振動力による土の流動性および鋭敏性を活用したウォータージェットカッタとして機能する。また、杭先端の根固め部12と杭周面の地盤強度の増大のために利用する流動性固化材注入工法においては、バイブロハンマを駆動しつつかつ貫入方向噴射ノズル6および内向き噴射ノズル2から例えば圧力15MPa程度以下(高圧水と同程度の圧力)で流動性固化材16を噴射する。
なお、後述する本発明の施工方法においては、バイブロハンマの駆動を停止して流動性固化材を噴射する工程も含まれている。
配管(またはホース)18は、切り替えバルブ(図示を省略)を介して、グラウト(流動性固化材)ポンプ(図示省略)とウォータージェットカッタ装置(図示省略)に接続される。
【0034】
噴射ノズルの構造としては、1本の配管に対して、貫通孔を鋼管杭貫入方向(軸方向)下方と、これに直角な水平方向あるいは横方向等の直角方向に配置することにより、2方向に噴射することができる。
【0035】
1本の配管で2方向に噴射した場合に、流量が確保できない場合には、鋼管杭軸方向と直角方向に独立した噴射ノズルを配置してもよい。
【0036】
噴射部3には、地上等に設置される高圧水供給ポンプ(図示を省略した)に接続された高圧水(例えば清水)兼流動性固化材供給管(またはホース)18が接続されている。
【0037】
鋼管杭1の先端部外面側に噴射部3を固定し、鋼管杭1の外側から噴射するようにして前記の噴射部3は、鋼管杭内面に固定してもよく、鋼管杭内面に固定された噴射部3における貫入方向噴射ノズル6および内向き噴射ノズル2から、それぞれ水(または流動性固化材に切り替える場合は、流動性固化材)を噴射するようにしてもよい。
【0038】
次に、本発明の鋼管杭を用いた鋼管杭の施工方法について説明する。
【0039】
図8は、本発明の鋼管杭1を用いた鋼管杭の施工方法の一例の各工程を説明するための工程図である。なお、打込深度が非常に深い場合には、順次溶接しながら打ち込みを行う。
【0040】
図8に示す工程について簡単に説明すると、(a)に示す第1工程は、鋼管杭1の打込工程である。高圧水を貫入方向噴射ノズル6および内向き噴射ノズル2から噴射し、鋼管杭1とバイブロハンマ(図示省略)の質量で、例えば5D〜10D(Dは鋼管杭の外径)程度を自重自沈させ、その後バイブロハンマを運転し、振動と水の力で連続的に地盤13に打設する。
連続打設速度は、例えば100cm/分で、支持層17内への打込速度は、例えば60cm/分程度以下とする。支持層17の確認は、事前に行われた地質調査結果や地層断面図で行うほか、予め推定した支持層17に杭先端が近づいたら、バイブロハンマの全荷重を鋼管杭1に預け、打込速度と打込抵抗の変化(例えば電動式バイブロハンマの場合は負荷電流)を読み取ることで行う。
【0041】
鋼管杭1の先端が、中間層と支持層17の界面(支持層深度)を通過した後、打込掘削深度で打ち止める(図8(b)参照)。ここで、ウォータージェットを停止する。図示省略のバイブロハンマは、一旦停止してもよいが、引き続く第2工程のために運転したままとしてもよい。
【0042】
第2工程は、流動性固化材振動撹拌工程である。図示省略の高圧水と流動性固化材のそれぞれのタンクへの配管の切替バルブを操作して、流動性固化材流路に切り替える。セメントサイロからセメントを供給し、その他の注入材を配合してW/C(水/セメント比)が50%〜150%の流動性固化材(セメントミルク等)を調製しておく。このような流動性固化材16を噴射圧力最大15MPa程度以下で噴射を開始し、バイブロハンマを運転して鋼管杭1を、引上深度まで引き上げる(図示省略)。例えば、鋼管杭1を支持層深度より1.0D程度浅い位置まで引き上げている。
【0043】
さらに図8(c)に示す第3工程において、流動性固化材を噴射しつつ引上深度から定着深度まで鋼管杭1を打ち込む。例えば、定着深度は、支持層深度より1.0D程度深く、第1工程の打込掘削深度よりも浅い。その際の鋼管杭1の移動速度は、50〜200cm/分程度である。
【0044】
上記の連続する第2及び第3工程は、1回のみ行ってもよく、地盤13の硬軟度等の状況に応じて複数回繰り返してもよい。硬い地盤13の場合は、地盤13の攪拌のため適宜繰り返すことが好ましい。この第2及び第3工程の繰り返し工程においては、流動性固化材16又は高圧水のいずれを噴射してもよい。これにより、鋼管杭1先端において固化体の拡大された根固め部12を確実に形成することができ、先端支持力を増大させることができる。
【0045】
そして、図8(d)に示す第3工程のように、鋼管杭1を定着深度にて打ち止めた後、バイブロハンマを停止する。その後、鋼管杭1を定着深度に停止したまま、根固め工程として所定時間、流動性固化材16を噴射し、均質な根固め部(根固め球根)12を構築する。
【0046】
なお、貫入方向噴射ノズル6および内向き噴射ノズル2を備えた噴射部3および高圧水兼流動性固化材供給管18は残置させた状態としてもよく、噴射部3が鋼管杭1から分離可能な形態では、流動性固化材16を噴射しながら引き抜くようにしてもよい。このようにして、鋼管杭1の外側に流動性固化材16の固化体を形成し、これにより周面摩擦力を増大させる。
【0047】
図6または図7は、本発明の鋼管杭1による鋼管杭の施工方法によって形成される杭基礎(合成杭)の断面図である。前記のような本発明の実施形態の施工方法によれば、杭先端部には、鋼管杭1に比して拡径された略柱状のソイルセメント固化体15が形成される。ソイルセメント固化体15下端の深度は、打込深度又はそれ以上まで達している。
【0048】
なお、本発明における鋼管杭には、鋼管杭、コンクリート部を備えた鋼管杭や、横断面が矩形あるいは横断面多角形の角鋼管からなる鋼矢板(鋼管矢板)は当然含まれる。
また、図6のずれ止め7は、鋼管杭内面のみに配置されているが、鋼管杭外面に別途ずれ止めやリブを設けても良い(図示せず)。
【0049】
前記のように、本発明の鋼管杭1を使用した本発明の施工方法により地盤13に築造された鋼管杭1では、鋼管杭1のずれ止め7の近傍に土砂10が付着していないので、根固め部12に確実に荷重伝達される。また、根固め部(ソイルセメント又はコンクリート)12内に土塊11などが介在した不均質なものでなく、均質な根固め部12となるため、根固め部12内に局部的に脆弱な部分が存在しないようになる。
そのため、根固め部12での破壊が発生しないため、先端地盤14へ確実に荷重伝達を図ることができる。
そして、鋼管杭1から先端地盤14への荷重伝達方法としては、鋼管杭1のずれ止め7から、根固め部12に荷重伝達され、根固め部12から先端地盤14へ荷重伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の鋼管杭の先端部付近を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の鋼管杭を示す概略正面図である。
【図3】本発明の鋼管杭の内向き噴射ノズル付近を示す横断平面図である。
【図4】貫入方向噴射ノズルおよび内向き噴射ノズルを備えた噴射部の一例を示し、噴射部付近を示す拡大縦断正面図である。
【図5】本発明の鋼管杭の内向き噴射ノズルの配置形態の他の例を示す横断平面図である。
【図6】本発明の鋼管杭により形成される根固め部付近を拡大して示す拡大縦断正面図である。
【図7】本発明の他の形態の鋼管杭に根固め部を形成した状態を示す拡大縦断正面図である。
【図8】本発明の鋼管杭の施工方法を示す工程図を示す概略縦断正面図である。
【図9】鋼管杭内のずれ止めに土砂が付着した状態で根固め部が形成された状態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼管杭
1a 杭先端部外周面
2 内向き噴射ノズル
3 噴射部
4 貫通孔
5 高圧水供給孔
6 貫入方向噴射ノズル
7 ずれ止め
8 凹凸部
9 内面突起付き鋼管
10 土砂
11 土塊
12 根固め部
13 地盤
14 先端地盤
15 ソイルセメント固化体
16 流動性固化材
17 支持層
18 高圧水兼流動性固化材供給管(またはホース)
19 管内閉塞土
20 鋼管杭
P 内向き噴射ノズルの噴射孔に相対する直径
C1 内向き噴射ノズルの中心軸線(噴射孔の中心軸線)
O 鋼管杭の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部の周方向に間隔をおいて複数の噴射ノズルを設置した鋼管杭において、前記複数の噴射ノズルの内、少なくとも一つの噴射ノズルが鋼管杭内面に向かって高圧水を噴射するように配置された内向き噴射ノズルであることを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
前記内向き噴射ノズルのノズル孔が前記鋼管杭内にあることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
内向き噴射ノズルの内、少なくとも1つの内向き噴射ノズルのノズル孔の中心軸線を、鋼管杭の中心軸からずらして配置したことを特徴とする請求項1または2記載の鋼管杭。
【請求項4】
鋼管杭先端部内面にずれ止めが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管杭。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の鋼管杭を使用し、バイブロハンマを用い、鋼管杭貫入方向に高圧水を噴射する鋼管杭の施工方法であって、前記鋼管杭貫入方向に噴射する噴射ノズルおよび前記内向き噴射ノズルより高圧水を噴射して、鋼管杭を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、前記各噴射ノズルから流動性固化材を噴射し、鋼管杭先端に流動性固化材を固化させた根固め部を築造することを特徴とする鋼管杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−280966(P2009−280966A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131102(P2008−131102)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(391002122)調和工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】