説明

鋼管杭の打設騒音低減工法及び打設騒音低減ブロック

【課題】鋼管杭の打設騒音を効果的に低減させる。
【解決手段】内部に通気性を有する吸音手段18が装填され、かつ、吸音手段18に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロック14を、鋼管杭10内の開口端部又はその近傍に配置する。この鋼管杭10を油圧ハンマ12により打設する際の衝撃の結果、鋼管杭10内の空気を伝播する振動が円柱状のブロック14を通過し、鋼管杭10の開口端部における振動の振幅を効率的に減衰させ、騒音低減を促す。同様に、内部に通気性を有する吸音手段20が装填され、かつ、吸音手段20に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロック16を、鋼管杭10内の中間部に配置する。鋼管杭10内の空気を伝播する振動が円柱状のブロック16を通過し、この際、鋼管杭10の中間部における振動媒質の粒子速度を効率的に減衰させ、騒音低減を促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の打設騒音低減工法及び打設騒音低減ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧ハンマを用いた鋼管杭の打設工が広く実施されており、この際に生じる打設騒音の低減対策も種々に試みられている。例えば、鋼管杭に止水シートや防振マットを巻き付けて打設を行い、又は、鋼管杭の内部に吸音材を巻き付けたフロートや、ジャイアントバルーン等の詰物を装填して打設を行う手法等が試されている。(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】秤谷 哲治、他1名、”鋼管杭打撃工法における騒音低減対策(佐伯港−14m岸壁築造工事)”[online]平成16年7月26日、九州国土交通研究会、[平成23年3月15日検索]、インターネット〈URL: http://www.qsr.mlit.go.jp/n-event/kenkyu/pdf/ii-9.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋼管杭を打設する工区によっては、従来の鋼管杭の打設騒音低減工法による騒音低減効果が十分とはいえないような場合があり、更に効果的な騒音低減手法が望まれている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋼管杭の打設騒音をより効果的に低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)鋼管杭を油圧ハンマにより打設する際に、鋼管杭の端部から鋼管杭内に挿通自在な直径を有し、内部に通気性を有する吸音手段が装填され、かつ、該吸音手段に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロックを、鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部の少なくとも一方の位置に配置する鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項1)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、内部に通気性を有する吸音手段が装填され、かつ、吸音手段に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロックを、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置して、この鋼管杭を油圧ハンマにより打設するものである。この油圧ハンマによる打設の際の衝撃の結果、鋼管杭内の空気を伝播する振動が円柱状のブロックを通過し、この際、鋼管杭の開口端部における振動の振幅を効率的に減衰させ、騒音低減を促すものである。又、円柱状のブロックを、鋼管杭内の中間部に配置し、鋼管杭を油圧ハンマにより打設すると、鋼管杭内の空気を伝播する振動が円柱状のブロックを通過し、この際、鋼管杭の中間部における振動媒質の粒子速度を効率的に減衰させ、騒音低減を促すものである。
【0007】
(2)上記(1)項において、前記吸音手段を、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて、筒状の吸音材を複数並列配置して構成することを特徴とする鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項2)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、円柱状ブロックを鋼管杭内に挿通することで、円柱状のブロックの中軸方向(円柱中心部を長手方向に通る仮想の基準軸の延びる方向)に向けて、複数並列配置した筒状の吸音材の各中心軸が、鋼管杭の軸方向と並行になる。そして、鋼管杭内の空気を伝播する振動が筒状の吸音材を通過する際、筒状の吸音材の内筒部における空気の円滑な流動を許容しつつ、吸音材内部で振動の振幅又は振動媒質の粒子速度を減衰させるものである。
【0008】
(3)上記(2)項において、前記筒状の吸音材を含む円柱状のブロックを、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置する鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項3)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置した筒状の吸音材を含む円柱状のブロックの、筒状の吸音材の内筒部を通過する際、鋼管杭内の空気を伝播する振動の振幅を効果的に減衰させるものである。
【0009】
(4)上記(1)から(3)項において、前記吸音手段を、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて、円盤状の吸音材を積層し、又は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて、ロール状の吸音材を複数並列配置して構成する鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項4)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、円柱状ブロックを鋼管杭内に挿通することで、円柱状のブロックの中軸方向に向けて積層した円盤状の吸音材が、鋼管杭の軸方向と直交して密に(隙間なく)詰まった設置態様となる。そして、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、円柱状のブロックの中軸方向に向けて積層した円盤状の吸音材を通過する際、空気の流動を制限して、振動の振幅又は振動媒質の粒子速度を減衰させるものである。
又、円柱状のブロックの中軸方向に向けて、複数並列配置されたロール状の吸音材が、密に(隙間なく)詰まった設置態様となり、円盤状の吸音材と同様に機能するものである。
【0010】
(5)上記(4)項において、前記円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックを、鋼管杭内の中間部に配置する鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項5)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、鋼管杭内の中間部に配置した、円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックの、円盤状の吸音材を通過する際、鋼管杭内の振動媒質の粒子速度を効果的に減衰させるものである。
【0011】
(6)上記(1)から(5)項において、前記円柱状のブロックの外表面を、有底円筒状の金網籠とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋とで構成する鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項6)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、円柱状のブロックの外表面を、有底円筒状の金網籠とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋とで構成することで、鋼管杭内の空気を伝播する振動が金網の網目を介して円柱状のブロックを通過し、この際、鋼管杭内の空気を伝播する振動の振幅又は振動媒質の粒子速度を減衰させるものである。又、様々な材質や形態の吸音材を適宜選択して有底円筒状の金網籠に装填し、金網蓋で塞ぐことで、騒音低減機能及び製作コストのいずれにおいても最適な、円柱状のブロックを構成することができる。
【0012】
(7)上記(6)項において、前記金網籠又は前記金網蓋の少なくとも一方に吊ワイヤを連結して、前記円柱状のブロックを前記鋼管杭内の所定の場所に吊下げる鋼管杭の打設騒音低減工法(請求項7)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、金網籠又は金網蓋の少なくとも一方に吊ワイヤを連結して、円柱状のブロックを鋼管杭内の上記所定の場所に吊下げることで、鋼管杭内の空気を伝播する振動の振幅又は振動媒質の粒子速度を減衰させるものである。
【0013】
(8)上記(1)から(7)項において、前記鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置されるブロック同士を、吊ワイヤにて連結する鋼管杭の打設騒音低減工法
(請求項8)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減工法は、鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置されるブロック同士を、吊ワイヤにて連結することで、これらのブロックを鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置する作業、並びに、これらのブロックを鋼管杭内から取り出す作業を、一時に行うものである。
【0014】
(9)鋼管杭の端部から鋼管杭内に挿通自在な直径を有し、内部に通気性を有する吸音手段が装填され、かつ、該吸音手段に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロックであって、鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部の少なくとも一方の位置に配置される鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項9)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、内部に通気性を有する吸音手段が装填され、かつ、吸音手段に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロックであり、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置して用いるものである。この円柱状のブロックを配置した鋼管杭を油圧ハンマにより打設する際の衝撃の結果、鋼管杭内の空気を伝播する振動が円柱状のブロックを通過し、この際に、鋼管杭の開口端部における振動の振幅を効率的に減衰させ、騒音低減が促進される。又、円柱状のブロックを鋼管杭内の中間部に配置した鋼管杭を、油圧ハンマにより打設すると、鋼管杭内の空気を伝播する振動が円柱状のブロックを通過し、この際、鋼管杭の中間部における振動媒質の粒子速度を効率的に減衰させ、騒音低減が促進される。
【0015】
(10)上記(9)項において、前記吸音手段は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて複数並列配置された筒状の吸音材を含む鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項10)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、鋼管杭内に配置されると、円柱状のブロックの中軸方向に向けて、複数並列配置した筒状の吸音材の各中心軸が、鋼管杭の軸方向と並行になる。そして、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、円柱状のブロックの中軸方向に向けて、複数並列配置した筒状の吸音材を通過する際、筒状の吸音材の内筒部における空気の円滑な流動が許容されつつ、振動の振幅又は振動媒質の粒子速度が減衰されるものである。
【0016】
(11)上記(10)項において、前記筒状の吸音材を含む円柱状のブロックが、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置されるものである鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項11)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、筒状の吸音材を含む円柱状のブロックが、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置されることで、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、筒状の吸音材の内筒部を通過する際、鋼管杭内の空気を伝播する振動の振幅が効果的に減衰されることとなる。
【0017】
(12)上記(8)から(11)項において、前記吸音手段は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて積層された円盤状の吸音材、又は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて複数並列配置されたロール状の吸音材を含む鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項12)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、鋼管杭内に配置されると、円柱状のブロックの中軸方向に向けて積層した円盤状の吸音材が、鋼管杭の軸方向と直交して密に(隙間なく)詰まった設置態様となる。そして、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、円柱状のブロックの中軸方向に向けて積層した円盤状の吸音材を通過する際、空気の流動が制限され、振動の振幅又は振動媒質の粒子速度が減衰されるものである。
又、円柱状のブロックの中軸方向に向けて複数並列配置されたロール状の吸音材が、密に(隙間なく)詰まった設置態様となり、円盤状の吸音材と同様に機能するものである。
【0018】
(13)上記(12)項において、前記円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックが、鋼管杭内の中間部に配置されるものである鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項11)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックが、鋼管杭内の中間部に配置されることで、鋼管杭内の空気を伝播する振動が、円盤状の吸音材を通過する際、鋼管杭内の振動媒質の粒子速度が効果的に減衰されることとなる。
【0019】
(14)上記(9)から(13)項において、前記円柱状のブロックの外表面は、有底円筒状の金網籠とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋とからなる鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項14)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、鋼管杭内に配置されると、鋼管杭内の空気を伝播する振動は、有底円筒状の金網籠とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋の網目を介して金網の網目を介して円柱状のブロックを通過し、この際、鋼管杭内の空気を伝播する振動の振幅又は振動媒質の粒子速度が減衰するものである。又、様々な材質や形態の吸音材を適宜選択して有底円筒状の金網籠に装填し金網蓋で塞ぐことで、騒音低減機能及び製作コストのいずれにおいても最適な、円柱状のブロックが構成される。
【0020】
(15)上記(14)項において、前記金網籠又は前記金網蓋の少なくとも一方に連結された吊ワイヤを含む鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項15)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、金網籠又は金網蓋の少なくとも一方に吊ワイヤを連結して、円柱状のブロックを鋼管杭内の上記所定の場所に吊下げることで、鋼管杭内に設置されるものである。そして、鋼管杭内の空気を伝播する振動の振幅又は振動媒質の粒子速度が、上記所定の場所にて減衰されるものとなる。
【0021】
(16)上記(9)から(15)項において、前記鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置されるブロック同士が、吊ワイヤによって連結されている鋼管杭の打設騒音低減ブロック(請求項16)。
本項に記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロックは、鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置されるブロック同士が、吊ワイヤによって連結されていることから、各ブロックを鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置する作業、並びに、これらのブロックを鋼管杭内から取り出す作業を、一時に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明はこのように構成したので、鋼管杭の打設騒音をより効果的に低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る、鋼管杭の打設騒音低減工法に用いられる、油圧ハンマ、鋼管杭及び打設騒音低減ブロックを示す模式図である。
【図2】図1に示される、吸音手段として筒状の吸音材を含む円柱状のブロックの単体図であり、(a)は側面図、(b)は内部の吸音材の側面図である。
【図3】図1に示される、吸音手段として円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックの単体図であり、(a)は側面図、(b)は内部の吸音材の側面図である。
【図4】図1に示される、吸音手段としてロール状の吸音材を含む円柱状のブロックの単体図であり、(a)は側面図、(b)は内部の吸音材の側面図である。
【図5】図1に示される鋼管杭及び打設騒音低減ブロックを抽出した断面図であり、(a)は全体断面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態は、図1に示されるように、鋼管杭10を油圧ハンマ12により打設する際に、円柱状のブロック14、16を、鋼管杭10内の開口端部(上端部)又はその近傍と、中間部とに配置するものである。円柱状のブロック14、16は、鋼管杭10の端部10a(図5(b))から鋼管杭10内に挿通自在な直径を有している。例えば、鋼管杭の内径が1000mmである場合には、円柱状のブロック14、16の直径φは、鋼管杭10に対する挿通性のみならず、吸音効果も考慮して800mm〜900mmとされる。なお、円柱状のブロック14、16の長さは、取り扱い性及び吸音効果を考慮して適宜決定され、上述の数値例との対応では、全長Lは1000mm〜1050mmとなっている。又、円柱状のブロック14、16の内部には、通気性を有する吸音手段18、20が装填されている。
【0025】
更に、吸音手段18、20に対する音の伝播を阻害しない外表面が、有底円筒状の金網籠22とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋24とで構成されている。金網籠22及び金網蓋24を固定する手法は、溶接や適切な固定具等により行われる。金網籠22及び金網蓋24を構成する金網の材質は、鉄、ステンレス、アルミ等の金属のみならず、適宜、樹脂材料によるものも選択可能である。又、金網籠22及び金網蓋24を構成する金網の直径や網目のピッチについては、吸音手段18、20を安定保持し、かつ、耐久性も考慮した上で決定される。
【0026】
ところで、鋼管杭10内の開口端部又はその近傍に配置される、円柱状のブロック14において、有底円筒状の金網籠22の内部に配置された吸音手段18は筒状をなしており(以下、筒状の吸音材18ともいう。)、円柱状のブロック14の中軸方向に向けて複数並列配置したものである。一方、鋼管杭10内の中間部に配置される、円柱状のブロック16においては、有底円筒状の金網籠22の内部に配置された吸音手段20は円盤状をなしており(以下、円盤状の吸音材20ともいう。)、ブロック16の中軸方向に向けて複数積層されたものである。これら吸音手段18、20には、グラスウール、ロックウール、ポリエステル繊維素材等が用いられる。
又、筒状の吸音材18は、JIS規格に規定された複数の直径から、適宜選択して使用するものであり、円柱状のブロック14の金網籠22の、直径方向及び中軸方向のいずれにも最小限の隙間となるように、直径及び長さを合せて使用されるものである。又、円盤状の吸音材20は、ロール状又はボード状の吸音材から、適切な直径の円盤状に切り出して、円柱状のブロック16の金網籠22の、直径方向及び中軸方向のいずれにも最小限の隙間となるように、直径及び長さを合せて使用されるものである。
【0027】
なお、図2に示されるように、円柱状のブロック14の中軸方向両端部に円盤状の吸音材20を配置し、筒状の吸音材18の両端部を挟み込むように設置することとしても良い。又、図3に示されるように、積層された円盤状の吸音材20のうち、円柱状のブロック16の、中軸方向中央部の密度を最も密に、中軸方向両端部の密度を最も粗にすることとしても良い。なお、図2、図3において、円盤状の吸音材20の密度の例として、96k〜24k(k:kg/m)を示している。又、円柱状のブロック16については45k〜90kが用いられる。
又、図4に示されるように、円柱状のブロック16の中軸方向両端部に円盤状の吸音材20を配置し、ロール状の吸音材21の両端部を挟み込むように配置することとしても良い。ロール状の吸音材21は、例えば、ロール状の吸音材のロール形態が崩れないように梱包材を残した状態で、金網籠22内に密に詰め込むものである。
【0028】
更に、図2、図3、図4の例では、円柱状のブロック14、16を貫通するようにして、金網籠22及び金網蓋24の中心部に吊ワイヤ26を連結している。そして、鋼管杭10内の開口端部又はその近傍に配置される円柱状のブロック14の、吊ワイヤ26の上下両端部にシャックル28が固定されている。一方、鋼管杭10内の中間部に配置される円柱状のブロック16のつりワイヤ26には、その上端部にのみシャックル28が固定されている。
そして、図5に示されるように、円柱状のブロック14の、吊ワイヤ26の上端部のシャックル28は、鋼管杭10内の開口端部10a近傍に固定された金具(吊ピース)30に取付けられたシャックル28と連結される。又、円柱状のブロック14の吊ワイヤ26の下端部に固定されたシャックル28と、円柱状のブロック16の吊ワイヤ26の上端部に固定されたシャックル28とが、吊ワイヤ32の両端部に固定されたシャックル28で連結される。なお、吊ワイヤ32の長さは、円柱状のブロック16が鋼管杭10の全長の中間部に位置するように調整される。
【0029】
ここで、鋼管杭10の内部に円柱状のブロック14、16を設置する手順は以下の通りである。
S1:予め製作しておいた円柱状のブロック14、16を、図5の如く吊ワイヤ32で連結する。
S2:横に倒した状態の鋼管杭10内部に、円柱状のブロック16、14の順で挿入する。この際、円柱状のブロック16を挿入する側の開口端部とは反対側の開口端部から引っ張り込むことで、円柱状のブロック16に続き、円柱状のブロック16に対して吊ワイヤ32で連結された円柱状のブロック14も、鋼管杭10の内部に引き込まれる。
S3:鋼管杭10内の開口端部10a近傍(上段部分)に、吊ピース30を溶接する。
S4:吊ピース30のシャックル28に、円柱状のブロック16の吊ワイヤ26の上端部に固定されたシャックル28を連結する。
【0030】
S5:上記S4までの工程が完了した鋼管杭10を、図1に示されるように立て掛けると、円柱状のブロック14、16は何れも自重により、鋼管杭10内部で、吊ワイヤ26、32が張設状態となる状態で吊り下がる。従って、本発明の実施の形態における、円柱状のブロック14を設置する鋼管杭10内の、開口端部10a又はその近傍とは、上記設置方法にて設置可能な、開口端部10aの近傍の範囲を意味するものである。
S6:図1の油圧ハンマ12による鋼管杭10の打設完了後、吊ピース30からシャックル28を外し、吊ワイヤ32を鋼管杭10の開口端部10aから引き出すことで、吊ワイヤ26、32により連結された円柱状のブロック14、16は、何れも鋼管杭10の内部から引き出される。このようにして、鋼管杭10から引き出された円柱状のブロック14、16は、再利用可能である。一方、吊ピース30は鋼管杭10内に残される。
【0031】
なお、S2〜S4のステップについては、常時数本の鋼管杭10に対して施しておくことで、鋼管杭10の打設作業を円滑に進行することが出来る。又、状況に応じて、鋼管杭10の内部における円柱状のブロック14、16の位置を交換しても良く、円柱状のブロック14、16何れか一方を二つ用いることとしても良い。更には、円柱状のブロック14、16何れか一方を、鋼管杭10内の上端部又はその近傍、中間部の何れかに設けることとしても良い。
更に、図1の例は鋼管杭10を斜杭として打設する例を示しているが、当然にそれ以外の杭の打設工法にも、同様に適用可能である。
【0032】
さて。上記構成をなす、本発明の実施の形態により得られる作用効果は、以下の通りである。
本発明の実施の形態に係る鋼管杭の打設騒音低減工法は、内部に通気性を有する吸音手段18が装填され、かつ、吸音手段18に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロック14を、鋼管杭10内の開口端部10a又はその近傍に配置し、この鋼管杭10を油圧ハンマ12により打設する際の衝撃の結果、鋼管杭10内の空気を伝播する振動が円柱状のブロック14を通過する。この際、鋼管杭10の開口端部10aにおける振動の振幅を効率的に減衰させ、騒音低減を促すことができる。又、内部に通気性を有する吸音手段20が装填され、かつ、吸音手段20に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロック16を、鋼管杭10内の中間部に配置し、鋼管杭10を油圧ハンマ12により打設すると、鋼管杭10内の空気を伝播する振動が円柱状のブロック16を通過し、この際、鋼管杭10の中間部における振動媒質の粒子速度を効率的に減衰させ、騒音低減を促すことができる。
【0033】
しかも、円柱状ブロック14を鋼管杭10内に挿通することで、円柱状のブロック14の中軸方向に向けて、複数並列配置した筒状の吸音材18の各中心軸が、鋼管杭の軸方向と並行になる。そして、鋼管杭10内の空気を伝播する振動が、円柱状のブロック14の筒状の吸音材18を通過する際、筒状の吸音材18の内筒部における空気の円滑な流動を許容しつつ、吸音材18内部で振動の振幅を効率的に減衰させることができる。
【0034】
又、円柱状ブロック16を鋼管杭10内に挿通することで、円柱状のブロック16の中軸方向に向けて積層した円盤状の吸音材20が、鋼管杭の軸方向と直交して密に詰まった設置態様となる。そして、鋼管杭10内の空気を伝播する振動が、鋼管杭10内の中間部に配置した円柱状のブロック16の、中軸方向に向けて積層した円盤状の吸音材20を通過する際、空気の流動を制限して、振動媒質の粒子速度を効率的に減衰させるものである。
又、円柱状のブロック16の中軸方向に向けて、複数並列配置されたロール状の吸音材21が、密に詰まった設置態様となり、円盤状の吸音材20と同様に機能するものである。
【0035】
なお、円柱状のブロック14、16のいずれかを、鋼管杭10内の如何なる位置に設置するかについては、閉管を構成する鋼管杭10内の固有振動に応じて決定されるものであり、特に振動の振幅の大きい部分には、筒状の吸音材18を含む円柱状のブロック14を配置することで、振動の振幅を効率的に減衰させ、特に振動媒質の粒子速度が速い部分には、円盤状の吸音材20を含む円柱状のブロック16を配置することで、振動媒質の粒子速度を効率的に減衰させ、鋼管杭10の打設騒音を効果的に低減させることが可能となる。しかしながら、諸条件を勘案して、円柱状のブロック14、16を、これとは逆の態様で設置する場合や、いずれか一方を使用する場合もある。
【0036】
又、円柱状のブロック14、16の外表面を、有底円筒状の金網籠22とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋24とで構成することで、鋼管杭10内の空気を伝播する振動が金網の網目を介して円柱状のブロック14、16を通過し、この際、鋼管杭19内の空気を伝播する振動の振幅又は振動媒質の粒子速度を減衰させることができるものとなる。又、様々な材質や形態の吸音手段18、20を適宜選択して、有底円筒状の金網籠22に装填し金網蓋24で塞ぐことで、騒音低減機能及び製作コストのいずれにおいても最適な、円柱状のブロック14、16を構成することができる。
【0037】
又、筒状の吸音材18を含む円柱状のブロック14と、円盤状の吸音材20を含む円柱状のブロック16とを、吊ワイヤ26、32にて連結することで、筒状の吸音材18を含む円柱状のブロック14を、鋼管杭10内の開口端部10a又はその近傍に配置する作業と、円盤状の吸音材20を含む円柱状のブロック16を鋼管杭10内の中間部に配置する作業、並びに、これらのブロック14、16を鋼管杭10内部から取り出す作業を、一時に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
10:鋼管杭、12:油圧ハンマ、 14、16:円柱状のブロック、18:筒状の吸音材、20:円盤状の吸音材、21:ロール状の吸音材、22:金網籠、24:金網蓋、 26、32:吊ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭を油圧ハンマにより打設する際に、鋼管杭の端部から鋼管杭内に挿通自在な直径を有し、内部に通気性を有する吸音手段が装填され、かつ、該吸音手段に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロックを、鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部の少なくとも一方の位置に配置することを特徴とする鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項2】
前記吸音手段を、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて、筒状の吸音材を複数並列配置して構成することを特徴とする請求項1記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項3】
前記筒状の吸音材を含む円柱状のブロックを、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置することを特徴とする請求項2記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項4】
前記吸音手段を、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて、円盤状の吸音材を積層し、又は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて、ロール状の吸音材を複数並列配置して構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項5】
前記円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックを、鋼管杭内の中間部に配置することを特徴とする請求項4記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項6】
前記円柱状のブロックの外表面を、有底円筒状の金網籠とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋とで構成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項7】
前記金網籠又は前記金網蓋の少なくとも一方に吊ワイヤを連結して、前記円柱状のブロックを前記鋼管杭内の所定の場所に吊下げることを特徴とする請求項6記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項8】
前記鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置されるブロック同士を、吊ワイヤにて連結することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の鋼管杭の打設騒音低減工法。
【請求項9】
鋼管杭の端部から鋼管杭内に挿通自在な直径を有し、内部に通気性を有する吸音手段が装填され、かつ、該吸音手段に対する音の伝播を阻害しない外表面を有する円柱状のブロックであって、鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部の少なくとも一方の位置に配置されることを特徴とする鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項10】
前記吸音手段は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて複数並列配置された筒状の吸音材を含むことを特徴とする請求項9記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項11】
前記筒状の吸音材を含む円柱状のブロックが、鋼管杭内の開口端部又はその近傍に配置されるものであることを特徴とする請求項10記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項12】
前記吸音手段は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて積層された円盤状の吸音材、又は、前記円柱状のブロックの中軸方向に向けて複数並列配置されたロール状の吸音材を含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項13】
前記円盤状の吸音材を含む円柱状のブロックが、鋼管杭内の中間部に配置されるものであることを特徴とする請求項12記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項14】
前記円柱状のブロックの外表面は、有底円筒状の金網籠とその開口部を塞ぐ円形の金網蓋とからなることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項15】
前記金網籠又は前記金網蓋の少なくとも一方に連結された吊ワイヤを含むことを特徴とする請求項14記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。
【請求項16】
前記鋼管杭内の開口端部又はその近傍、及び、中間部に配置されるブロック同士が、吊ワイヤによって連結されていることを特徴とする請求9から15のいずれか1項記載の鋼管杭の打設騒音低減ブロック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−197612(P2012−197612A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62865(P2011−62865)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】