説明

鋼管杭の現場溶接用防風設備及び該防風設備を用いた鋼管杭の現場溶接方法

【課題】鋼管杭の現場溶接において、防風対策を確実に行なうことができると共に取り扱いが容易な鋼管杭の現場溶接用防風設備及び該防風設備を用いた現場溶接方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る鋼管杭の現場溶接用防風設備1は、鋼管杭3の周囲をその全周あるいは一部を囲むように配置可能な棒状のリング部材5と、リング部材5を支持する複数の柱部材7とを備えた自立可能な骨組材9と、上端部がリング部材5に支持されて骨組材9の周囲を覆う防風シート11とを備えてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の現場溶接に用いる防風設備及び該防風設備を用いた鋼管杭の現場溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を現場で継手施工する方法として、現場で鋼管杭を円周方向に溶接する方法がある。この現場溶接方法に関し、従来の鋼管杭(TS〜490N/mm2級(SKK400及びSKK490))では、JASPPジョイントを用いたセルフシールドアーク半自動溶接(ノンガス溶接)が既に標準化されている。
一般に、溶接施工の際に用いる溶接ワイヤは鋼管母材の強度と同等以上の強度を有するものを使用するが、従来の鋼管杭の強度に対応した、セルフシールド用フラックス入りワイヤ(TS〜550N/mm2級)も既に商品化されている(神戸製鋼所OW-56Aなど)。
【0003】
セルフシールドアーク溶接は、フラックスが溶着金属を覆って外気から保護するため、作業可能風速が10m/s以下と風に強く、現場円周溶接には適用しやすい溶接方法である。施工実績も豊富で、JIS A 5525(鋼管ぐい)、道路橋示方書・同解説(IV下部構造編)や杭基礎施工便覧などに、その方法が記載されている。
【0004】
したがって、鋼管杭を現場円周溶接する場合には、風に強いセルフシールドアーク溶接(ノンガス溶接)を適用できるのが望ましい。
しかしながら、現在存在するセルフシールドアーク溶接に用いるセルフシールド用フラックス入りワイヤは、従来の鋼管杭(TS〜490N/mm2級(SKK400及びSKK490))のものであり、例えば、TS570N/mm2級の高強度鋼管杭まで対応可能なセルフシールド用フラックス入りワイヤが存在していない。
【0005】
よって、この場合、高強度鋼管杭の現場円周溶接による方法として、強度を優先させるとすれば、TS570N/mm2級まで対応可能な炭酸ガスシールドアーク溶接を用いることが考えられる。溶接ワイヤにはTS590N/mm2級のものが商品化されている(神戸製鋼所MG-60など)。
しかし、炭酸ガスシールドアーク溶接方法は、建築用鉄骨など高強度鋼の溶接で一般的に用いられているが、溶着金属の保護にシールドガスを用いているため風に非常に弱く、作業可能風速は2m/s以下となっている。
したがって、屋外での現場溶接施工を行う際には、風対策として防風設備の使用が必要となる。しかしながら、このような防風設備に特化したものはなく、類似技術として、現場溶接のための雨天時作業用設備として、例えば特許文献1、2に記載されたものがある。
特許文献1に記載のものは、鋼管杭の周囲にスカート状に広がる天幕本体と、その広がりを保持するリング状の縁骨とを組み合わせたものである。
また、特許文献2に記載のものは、鋼管杭を中心としてその周囲に円錐状に拡開する防水カバーと、鋼管杭を中心として放射状に配置され前記防水カバーを裏側から支える複数の傘骨を備え、前記防水カバーを分割カバーから構成することで、杭径が異なる場合にも適用できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2609045号公報
【特許文献2】特許第3930417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載のものは、共に鋼管杭の周囲に天幕あるいは防水カバーを円錐状に巻き付けて屋根を形成している点で共通する構造である。このような構造を採用しているのは、特許文献1、2のものが共に雨天での作業を可能にすることをも目的としているため、屋根を必要としているためであると考えられる。
そのため、防風を目的として屋根の周囲に防風用の壁を設けたとすれば、作業空間が閉塞した空間となり溶接作業時に酸欠の危険が生ずるため、上記のものは防風対策としては必ずしも好ましいものではない。
また、特許文献1、2のものでは、接合する上側の鋼管杭に円錐状のカバーを取り付ける必要があり、その取り扱いが煩雑であり、雨天でなく防風のみの対策が必要な場合には、その取り扱いが煩雑で作業性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鋼管杭の現場溶接において、防風対策を確実に行なうことができると共に取り扱いが容易な鋼管杭の現場溶接用防風設備及び該防風設備を用いた現場溶接方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る鋼管杭の現場溶接用防風設備は、鋼管杭の周囲をその全周あるいは一部を囲むように配置可能な棒状の囲繞部材と、該囲繞部材を支持する複数の柱部材とを備えた自立可能な骨組材と、上端部が前記囲繞部材に支持されて前記骨組材の周囲を覆う防風シートとを備えてなることを特徴とするものである。
なお、棒状の囲繞部材は、単一の湾曲または屈曲した部材で形成してもよいし、また真直ぐな棒状材を連結したものでもよいし、あるいは湾曲した棒状のものを連結したものでもよい。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記囲繞部材はカーテンレールを備え、前記防風シートの上端に前記カーテンレールを走行する走行部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記囲繞部材は、リング状に形成されてなることを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記囲繞部材は、複数の棒材の端部がヒンジ結合して形成され、両端が開放してなることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明に係る鋼管杭の現場溶接方法は、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の鋼管杭の現場溶接用防風設備を用いた溶接方法であって、
下杭を打設する下杭打設工程と、該下杭を囲むように前記現場溶接用防風設備を立設する防風設備立設工程と、前記下杭の上端に該下杭に継杭する上杭の下端を位置合わせして保持する上杭位置合わせ工程と、炭酸ガスシールドアーク溶接を用いて前記下杭の上端と前記上杭の下端を溶接する溶接工程とを備えたことを特徴とするものである。
なお、防風設備立設工程と、上杭位置合わせ工程の順番は、特に限定されるものではなく、防風設備立設工程の後で上杭位置合わせ工程を行なってもよいし、あるいは上杭位置合わせ工程の後で防風設備立設工程を行ってもよい。
【0014】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記溶接工程において、狭開先溶接を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鋼管杭の現場溶接用防風設備は、鋼管杭の周囲をその全周あるいは一部を囲むように配置可能な棒状の囲繞部材と、該囲繞部材を支持する複数の柱部材とを備えた自立可能な骨組材と、上端部が前記囲繞部材に支持されて前記骨組材の周囲を覆う防風シートとを備えてなるので、溶接現場に風がある状況でも防風シート内は無風に近い状態となり、炭酸ガスシールドアーク溶接を可能にできる。また、自立型であることから杭の施工に際して簡単に設置することができ、その取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る現場溶接用防風設備の説明図である。
【図2】図1の矢視A−A図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る現場溶接方法の説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る現場溶接方法の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る現場溶接方法の効果の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る現場溶接方法の他の態様の説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の他の態様の説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の他の態様の説明図である。
【図12】本発明の一の実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の他の態様の説明図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る現場溶接用防風設備の説明図である。
【図14】図13の矢視B−B図である。
【図15】本発明の他の実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の説明図である。
【図16】本発明の他の実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の説明図である。
【図17】本発明の他の実施の形態に係る現場溶接用防風設備を用いた現場溶接方法の説明図である。
【図18】本発明の他の実施の形態に係る防風設備の他の態様の説明図である。
【図19】本発明の他の実施の形態に係る防風設備の他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
本発明の一実施の形態に係る鋼管杭現場溶接用防風設備を図1、図2に基づいて説明する。
本実施の形態に係る鋼管杭現場溶接用防風設備1は、鋼管杭3を取り囲むように配置可能なリング部材5(本発明の囲繞部材に相当する)と該リング部材5を支持する複数の柱部材7とを備えた自立可能な骨組材9と、上端部が前記リング部材5に支持されて前記骨組材9の周囲を覆う防風シート11とを備えてなるものである。
各構成をさらに詳細に説明する。
【0018】
<リング部材>
リング部材5は、図2に示すように、円形リングからなる。もっとも、矩形リングにしてもよい。リング部材5は、連続したリング部材5から形成してもよいし、各柱部材7で柱部材7を介して連続するような構造にしてもよい。
リング部材5は、防風シート11の上端部を保持できるようになっている。防風シート11の上端部を保持する構造としては、リング部材5にカーテンレールを設置し、防風シートの上端部に設けた走行部材が前記カーテンレールを走行できるようにするのが好ましい。
【0019】
リング部材5は柱部材7で支持され、柱部材7の周囲が防風シート11で囲まれ、防風シート11で囲まれた空間が溶接の作業空間となる。したがって、リング部材5の形状は、防風シート11を設置したときにそれに囲まれる空間が溶接空間として支障のない程度の空間にできるようなものとする。
【0020】
<柱部材>
柱部材7はリング部材5を支持する機能を有する。柱部材7の上端はリング部材5に連結されている。柱部材7は、この例では、4本設けられ、それらが等間隔に配置されている。
なお、柱部材7の本数は特に限定されるものではなく、自立できるような構造になっていればよい。
【0021】
<防風シート>
防風シート11は、図1に示すように、リング部材5に支持されて骨組材9の周囲を覆う機能を有する。なお、図1において、防風シート11の外面側を濃い目の色で示し、内面側を薄い色で示している。防風シート11で囲まれた空間が溶接作業空間となることから、防風シート11には不燃性の材質のものを用いる。
前述したように、防風シート11の上端部に、カーテンレールを走行する走行部材を設け、リング部材5に設けたカーテンレールを走行させたカーテン形式にするのが好ましい。
また、防風シート11は防滴の材質のものにするのが好ましい。
【0022】
次に、上記のように構成された鋼管杭現場溶接用防風設備1を用いて鋼管杭の溶接を行う方法を図3乃至図8に基づいて説明する。
図3に示すように、油圧ハンマあるいはバイブロハンマなどの杭打ち機13によって下杭15の上端を保持して下杭15を打設する。
下杭15の上端部を約1m程度地上に延出させた状態で、杭打ち機13を撤去し、下杭15を囲むように、鋼管杭現場溶接用防風設備1を設置する。鋼管杭現場溶接用防風設備1は、自立型であり単に置くだけなので、取り扱いが極めて容易である。
次に、下端部に開先17を設けた上杭19を図示しない杭打ち機13で保持して、下杭15の上端に位置合わせする(図5参照)。上杭19に設ける開先17は、図6及び図6の丸で囲んだ部位の拡大断面図である図7に示すように、JASPPジョイントとして標準化されているように、開先角度が45°でルートギャップは1〜4mmとする。また、溶接部には裏当てリング部材21を設置する。
【0023】
鋼管杭現場溶接用防風設備1の防風シート11によって杭周囲を覆い、その内部が作業可能風速である2m/s以下であることを風速計を用いて確認する。風速が2m/s以下であることが確認されると、溶接施工を開始する。なお、施工中は常時風速を計測して、作業空間内の風速を監視しておくのが望ましい。
溶接施工は、例えば、TS570N/mm2級まで対応可能な炭酸ガスシールドアーク溶接を用いて円周方向に溶接を行う。溶接ワイヤにはTS590N/mm2級のものが商品化されているので、それを用いる(例えば、神戸製鋼所MG-60など)。
これにより、防風シート11外で2m/s以上の風が生じていても、内部はほぼ無風状態の良好な溶接施工環境を得ることができる。なお、外部が風速2m/s以下のほぼ無風状態であれば、防風設備なしでも溶接施工は理論上可能であるが、気象条件の変化も考慮して、所定の溶接継手性能確保を優先し、防風設備は原則として常に用いる。
なお、防風シート11で囲まれた作業空間の上方は開放されているので、酸欠の心配はない。
【0024】
鋼管杭現場溶接用防風設備1の効果を確認するため、高強度鋼管杭(φ700×t12、TS570N/mm2)を対象に、炭酸ガスシールドアーク溶接を用いて現場円周溶接を実施し、防風シートの有無及び風速をパラメーターとして、継手性能(継手溶接部TS)を確認した。
図8はこの実験結果をグラフで示したものであり、縦軸が継手溶接部TS(N/mm2)を示し、横軸が外部風速(m/s)を示している。
【0025】
図8から分かるように、防風シート有りの場合は、溶接箇所の風速はほぼ0m/sであり、継手性能も要求性能を満足している。これに対して、防風シート無しの場合は、風速2m/sを境に要求性能を満足できなくなっている。
上記の実験結果から、防風設備の有効性が確認された。
【0026】
なお、高強度鋼管杭を適用する場合は、従来の鋼管杭よりも設計上、薄肉化が可能である。しかし、従来の鋼管杭で設計が成立しないような大荷重を受ける柱などの支持杭として高強度鋼管杭を用いる場合には、大径・厚肉化することも考えられる。
そこでこのような場合にはコスト低減の観点から狭開先溶接を用いるのが好ましい。
もっとも、狭開先溶接は、開先断面積の低減と溶接施工時間の短縮が可能であるが、初層溶接における開先底部での安定したアーク発生および積層溶接における開先面へのスパッタ付着防止が重要な課題となる。
この課題を解決する方法として、発明者は、スパッタの発生が少なくアークの集中と安定性に優れるJ-STAR(登録商標)Weldingを用いることを考えた。
J-STAR(登録商標)Weldingは、極性を従来の棒プラスに対して逆の棒マイナスとし、適量の希土類金属(rare
earth metal)を添加したワイヤを用いる炭酸ガスシールドアーク溶接法である。この溶接法は250A以上の高電流溶接においてワイヤ先端を頂点とする円錐状のアークプラズマを形成することで、ワイヤ先端から溶融池へ移行する溶滴は微細かつ連続化した微細スプレー移行を達成し、従来比1.5倍の深い溶込みが得られる。
【0027】
J-STAR(登録商標)Weldingを用いることで、狭開先溶接を行う場合には、以下のような効果が得られる。
従来のJASPPジョイントの標準開先は、開先角度45°/ルートギャップ1〜4mmであるのに対して、狭開先とした場合は、図9に示すように、開先角度25°/ルートギャップ2mmでよい。これにより、溶接ワイヤコストは従来よりも高くなるが、狭開先による溶着金属量の低減と施工能率の向上による溶接施工時間の短縮により、トータル施工コストとしては従来の約1/2となる。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、防風設備を用いることで防風対策が容易にかつ確実におこなうことができるので、炭酸ガスシールドアーク溶接による高強度鋼管杭の現場溶接が可能となる。また、狭開先を用いることで、溶接施工時間が長くなりがちな大径・厚肉の鋼管杭の場合に、その施工時間を大きく短縮することができる。
【0029】
なお、上記の実施の形態では、杭施工機として杭の頭部を保持して施工する油圧ハンマあるいはバイブロハンマを用いた例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、杭の全周を保持して施工する全周回転式の杭施工機23を用いる場合であっても適用が可能である。
【0030】
全周回転式の杭施工機23を用いた場合の施工手順を図10〜図12に基づいて説明する。なお、図10〜図12において、図1〜図5と同一部分には同一の符号を付してある。
図10に示すように、全周回転式の杭施工機23によって下杭15の上端を保持して下杭15を打設する。
下杭15の上端部を杭施工機のデッキ25よりも上方に所定長さ、例えば1m延出させた状態にする。この状態で、図11に示すように、杭施工機のデッキ25上に、下杭15を囲むように鋼管杭現場溶接用防風設備1を設置する。このように、全周回転式の杭施工機23を用いる場合にも、鋼管杭現場溶接用防風設備1は、自立型であり単に置くだけなので、取り扱いが極めて容易である。
【0031】
次に、下端部に開先17を設けた上杭19を図示しない杭保持機械で保持して、下杭15の上端に位置合わせする(図12参照)。
防風シート11で杭周囲を覆い、その内部が作業可能風速である2m/s以下であることを風速計を用いて確認し、溶接を施工する。溶接施工に関しては、実施の形態1と同様である。
【0032】
[実施の形態2]
本発明の一実施の形態に係る鋼管杭現場溶接用防風設備27を図13、図14に基づいて説明する。なお、図13、図14において、図1、図2と同一部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係る鋼管杭現場溶接用防風設備27は、杭施工機として、円筒状のポールからなるリーダ29を2本のバックスティで支えて施工する三点支持式杭打ち機を用いる場合に好適なものである。
本実施の形態に係る鋼管杭現場溶接用防風設備27は、図13、図14に示すように、リング部材5を、分割された半割りリング部材31の一端をヒンジ33によって結合してなる構造にしたものである。
このような構造にすることで、下杭15を打設後、上杭19を下杭上端に建込んだ後に鋼管杭現場溶接用防風設備27をリーダ29の側方から挿入するようにして設置することができる。
【0033】
その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0034】
次に、上記のように構成された鋼管杭現場溶接用防風設備27を用いて鋼管杭の溶接を行う方法を図15乃至図17に基づいて説明する。
図15に示すように、三点支持式杭打ち機によって、下杭15の上端部を約1m程度地上に延出させた状態まで施工する。次に、上杭19を下杭上端に、位置合わせをして建て込む(図16参照)。この状態で、鋼管杭現場溶接用防風設備27を杭及びリーダ29の側方から挿入するようにして設置する(図17参照)。
防風シート11で杭周囲を覆い、その内部が作業可能風速である2m/s以下であることを風速計を用いて確認し、溶接を施工する。溶接施工に関しては、実施の形態1と同様である。
【0035】
以上のように、本実施の形態の鋼管杭現場溶接用防風設備27であれば、三点支持式杭打ち機による杭施工の場合にも適用できる。しかも、杭及びリーダ29の側方から挿入するように設置すればよく、設置が極めて容易であり、取り扱いが極めて容易である。
【0036】
上記の実施の形態2においては、分割された半割りリング部材31の一端をヒンジ結合した構造のものを示した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図18に示すように、2本の直線状の棒材35の一端をヒンジ33によって結合し、柱部材7で自立型として、それぞれの棒材35に防風シート11を設置するようにしてもよい。
また、図19に示すように、3本の棒材35を平面視でコ字状になるようにヒンジ33によって結合するようにしてもよい。
つまり、三点支持式杭打ち機を用いる場合には、リーダ29を避けることができるようにその部分が開口し、他の部分に防風シート11を設置できるような構造であればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 鋼管杭現場溶接用防風設備
3 鋼管杭
5 リング部材
7 柱部材
9 骨組材
11 防風シート
13 杭打ち機
15 下杭
17 開先
19 上杭
21 裏当てリング部材
23 全周回転式の杭施工機
25 デッキ
27 鋼管杭現場溶接用防風設備
29 リーダ
31 半割りリング部材
33 ヒンジ
35 棒材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の周囲をその全周あるいは一部を囲むように配置可能な棒状の囲繞部材と、該囲繞部材を支持する複数の柱部材とを備えた自立可能な骨組材と、上端部が前記囲繞部材に支持されて前記骨組材の周囲を覆う防風シートとを備えてなることを特徴とする鋼管杭の現場溶接用防風設備。
【請求項2】
前記囲繞部材はカーテンレールを備え、前記防風シートの上端に前記カーテンレールを走行する走行部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭の現場溶接用防風設備。
【請求項3】
前記囲繞部材は、リング状に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭の現場溶接用防風設備。
【請求項4】
前記囲繞部材は、複数の棒材の端部がヒンジ結合して形成され、両端が開放してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭の現場溶接用防風設備。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鋼管杭の現場溶接用防風設備を用いた溶接方法であって、
下杭を打設する下杭打設工程と、該下杭を囲むように前記現場溶接用防風設備を立設する防風設備立設工程と、前記下杭の上端に該下杭に継杭する上杭の下端を位置合わせして保持する上杭位置合わせ工程と、炭酸ガスシールドアーク溶接を用いて前記下杭の上端と前記上杭の下端を溶接する溶接工程とを備えたことを特徴とする鋼管杭の現場溶接方法。
【請求項6】
前記溶接工程において、狭開先溶接を行うことを特徴とする請求項5記載の鋼管杭の現場溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−73044(P2011−73044A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227115(P2009−227115)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】