説明

鋼管杭

【課題】鋼管杭の圧入時における圧入作業の効率を向上させることが可能な鋼管杭を提供する。
【解決手段】本発明に係る鋼管杭(100)は、中空の円筒状の杭本体(110)と、杭本体の一端の開口に取り付けられたプレート状のブレード(120)と、からなり、ブレードは、杭本体の長手方向において、一端が杭本体の内部に、他端が杭本体の外部に位置するように取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物を建設する地盤の強度を補強するために地中に埋設される鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物が建設される地盤の強度を向上させるため、鋼管杭を地中に埋設することにより、地盤の補強を行うことが従来から行われている。
【0003】
例えば、特開平9−291528号公報(特許文献1)にはそのような鋼管杭の一例が記載されている。
【0004】
図6は同公報に記載されている鋼管杭の斜視図である。
【0005】
図6に示す鋼管杭は、内径D及び一定強度を有する中空円筒状の本体1と、本体1の開口した先端から所定の深さ(例えば、深さD/2)において本体1の内周面に溶着された直径がほぼDの寸法を有する円盤状の底蓋2と、所定の高さ(例えば、高さD)を有し、底蓋2の下面に垂直に起立した状態で溶着された刃3と、から構成されている。
【0006】
この鋼管杭を地中に圧入すると、底蓋2によって、圧入時に土壌が本体1の内部に進入することが防止される。このため、圧入作用の無駄が少ない効率的な圧入作業が可能になるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−291528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鋼管杭を地中に圧入する際には、鋼管杭の圧入力に対する土壌の抵抗力が大きいため、できる限り多くの量の土壌を地表に掘り出すことが必要である。土壌の掘り出し作業は時間とエネルギーの双方を要する作業であるため、掘り出すべき土壌の量は少なければ少ないほど鋼管杭の圧入作業の効率を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、図6に記載したような従来の鋼管杭においては、土壌は本体1の内部には進入できない構造であるため、鋼管杭の全容量に相当する量の土壌を掘り出すことが必要であった。このため、図6に記載した従来の鋼管杭を使用した場合には、圧入作業の効率を向上させることは極めて困難であった。
【0010】
本発明は、以上のような従来の鋼管杭における問題点に鑑みてなされたものであり、鋼管杭の圧入時における圧入作業の効率を向上させることが可能な鋼管杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、「発明を実施するための最良の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明を実施するための最良の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、地中に埋設する鋼管杭(100)であって、中空の円筒状の杭本体(110)と、前記杭本体(110)の一端の開口に取り付けられたプレート状のブレード(120)と、からなり、前記ブレード(120)は、前記杭本体(110)の長手方向において、一端が前記杭本体(110)の内部に、他端が前記杭本体(110)の外部に位置するように取り付けられた鋼管杭(100)を提供する。
【0013】
前記杭本体(110)の外部に位置している前記ブレード(220)の部分(221)の先端は鋭角をなしていることが好ましい。
【0014】
前記ブレード(320)は前記杭本体(110)の長手方向と直交する方向における断面が波形であることが好ましい。
【0015】
前記ブレード(320)は前記杭本体(110)の長手方向と直交する方向における断面がジグザグ状であることが好ましい。
【0016】
前記ブレード(420)には、少なくとも、その先端から前記ブレード(420)の他端に向かって前記杭本体(110)の長手方向に延びる切り込み(421)が形成されており、前記切り込み(421)により分断された前記ブレード(420)の二つの領域(423、424)は前記ブレード(420)の平面と直交する方向において相互に逆方向に屈曲していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る鋼管杭によれば、鋼管杭を地中に圧入する際に、土壌が杭本体の内部に進入可能である。このため、掘り出すべき土壌の量を少なくすることが可能であり、その結果として、鋼管杭の圧入時における圧入作業の効率を向上させることができる。
【0018】
さらに、杭本体の内部に土壌が存在することにより、杭本体は、杭本体の外側にある土壌から外圧を受けるとともに、内部に存在する土壌から内圧を受けることになり、鋼管杭が地中内において直立している状態を安定させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第一の実施形態に係る鋼管杭の斜視図である。
【図2】図2は本発明の第二の実施形態に係る鋼管杭の斜視図である。
【図3】図3(A)は本発明の第三の実施形態に係る鋼管杭におけるブレードの縦断面図であり、図3(B)はブレードの縦断面の他の例を示す断面図である。
【図4】図4(A)は、本発明の第四の実施形態に係る鋼管杭を上方から見た場合の平面図であり、図4(B)は本実施形態に係る鋼管杭を水平方向(図1の矢印Aの方向)から見た場合のブレードのみの正面図である。
【図5】図5(A)は、本発明の第四の実施形態の変形例に係る鋼管杭を上方から見た場合の平面図であり、図5(B)は本実施形態に係る鋼管杭を水平方向(図1の矢印Aの方向)から見た場合のブレードのみの正面図である。
【図6】図6は従来の鋼管杭の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る鋼管杭100の斜視図である。
【0021】
本実施形態に係る鋼管杭100は、中空の円筒状の杭本体110と、杭本体110の一端(図1の左端)の開口に取り付けられたプレート状のブレード120と、から構成されている。
【0022】
ブレード120は、杭本体110の長手方向において、一端が杭本体110の内部に、他端が杭本体110の外部に位置するように取り付けられている。すなわち、ブレード120は、杭本体110の長手方向において、半分の長さの領域が杭本体110の内部において杭本体110に対して溶接されており、残りの半分の長さの領域が杭本体110の外部に突出している。
【0023】
本実施形態に係る鋼管杭100によれば、ブレード120が取り付けられている側の杭本体110の一端は杭本体110の長手方向において開放されている。このため、鋼管杭100を地中に圧入する際には、鋼管杭100により排斥される土壌が杭本体110の内部に進入することが可能である。
【0024】
このように、本実施形態に係る鋼管杭100によれば、土壌が杭本体110の内部に進入可能であるため、掘り出すべき土壌の量を少なくすることが可能であり、その結果として、鋼管杭100の圧入時における圧入作業の効率を向上させることができる。
【0025】
さらに、杭本体110の内部に土壌が存在することにより、杭本体110は、杭本体110の外側にある土壌から外圧を受けるとともに、内部に存在する土壌から内圧を受けることになり、鋼管杭100が地中内において直立している状態を安定させることが可能である。
【0026】
(第二の実施形態)
図2は、本発明の第二の実施形態に係る鋼管杭200の斜視図である。
【0027】
本実施形態に係る鋼管杭200は、第一の実施形態に係る鋼管杭100と比較して、ブレード220の形状に関してのみ異なっている。このため、第一の実施形態に係る鋼管杭100と同一の構成要素に対しては同一の参照符号を使用する。
【0028】
本実施形態におけるブレード220は、図2に示すように、杭本体110の外部に突出している部分221が三角形をなしており、その三角形形状の先端は杭本体110の長手方向中心軸上において杭本体110に対して外側を向いている。
【0029】
本実施形態に係る鋼管杭200によれば、ブレード220の先端が鋭角をなしているため、鋼管杭200を地中に圧入する際に土壌から受ける抵抗を小さくすることが可能である。
【0030】
なお、ブレード220の杭本体110の外部に突出している部分の形状は三角形形状に限定されるものではなく、鋭角状の先端を有する形状である限りにおいて、任意の形状を選択することが可能である。
【0031】
(第三の実施形態)
図3(A)は、本発明の第三の実施形態に係る鋼管杭におけるブレード320の縦断面図である。
【0032】
本実施形態に係る鋼管杭においては、ブレード320は、図3(A)に示すように、杭本体110の長手方向と直交する方向における断面(すなわち、図1の矢印Aの方向から見た断面)が波形になっている。ブレード320の縦断面が波形の形状であることを除いて、第三の実施形態に係る鋼管杭は第一の実施形態に係る鋼管杭100と同一の形状を有している。
【0033】
本実施形態に係る鋼管杭によれば、ブレード320の先端が波形をなしているため、第一の実施形態に係る鋼管杭100におけるブレード120のように縦断面が直線状である場合と比較して、鋼管杭を地中に圧入する際に土壌から受ける抵抗を小さくすることが可能である。
【0034】
なお、ブレード320の断面形状は波形には限定されない。
【0035】
図3(B)はブレード320の縦断面の他の例を示す断面図である。
【0036】
図3(B)に示すように、ブレード320の縦断面はジグザグ状にすることも可能である。
【0037】
ブレード320の縦断面をグザグ状にすることによっても、第一の実施形態に係る鋼管杭100におけるブレード120のように縦断面が直線状である場合と比較して、鋼管杭を地中に圧入する際に土壌から受ける抵抗を小さくすることが可能である。
【0038】
(第四の実施形態)
図4(A)は、本発明の第四の実施形態に係る鋼管杭400を上方から見た場合の平面図であり、図4(B)は本実施形態に係る鋼管杭400を水平方向(図1の矢印Aの方向)から見た場合のブレード420のみの正面図である。
【0039】
本実施形態に係る鋼管杭400におけるブレード420には、図4(A)に示すように、切り込み421が形成されている。
【0040】
切り込み421は、ブレード420の中点(杭本体110の長手方向と直交する方向における中点)においてブレード420の先端からブレード420の他端に向かって(すなわち、杭本体110に向かって)杭本体110の長手方向において所定の長さだけ延びている。
【0041】
切り込み421により分断されたブレード420の二つの三角形状の領域423、424はブレード420の平面と直交する方向において相互に逆方向に屈曲している。すなわち、図4(B)に示すように、領域423は切り込み421に対して上方に折り曲げられており、領域424は切り込み421に対して下方に折り曲げられている。
【0042】
本実施形態に係る鋼管杭400によっても、第一の実施形態に係る鋼管杭100におけるブレード120のように縦断面が直線状である場合と比較して、鋼管杭を地中に圧入する際に土壌から受ける抵抗を小さくすることが可能である。
【0043】
図5(A)は、本発明の第四の実施形態の変形例に係る鋼管杭401を上方から見た場合の平面図であり、図5(B)は本変形例に係る鋼管杭401を水平方向(図1の矢印Aの方向)から見た場合のブレード420のみの正面図である。
【0044】
本変形例に係る鋼管杭401におけるブレード420には、図5(A)に示すように、切り込み421に追加して第二の切り込み422が形成されている。
【0045】
第二の切り込み422は、切り込み421の先端から、切り込み421と直交する方向に所定の長さだけ延びている。
【0046】
第四の実施形態に係る鋼管杭400と同様に、切り込み421と第二の切り込み422により囲まれたブレード420の二つの矩形状の領域423、424はブレード420の平面と直交する方向において相互に逆方向に屈曲している。すなわち、図5(B)に示すように、領域423は切り込み421に対して上方に折り曲げられており、領域424は切り込み421に対して下方に折り曲げられている。
【0047】
本変形例に係る鋼管杭401によっても、第四の実施形態に係る鋼管杭400と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
100 第一の実施形態に係る鋼管杭
110 杭本体
120 ブレード
200 第二の実施形態に係る鋼管杭
220 ブレード
320 ブレード
400 第四の実施形態に係る鋼管杭
420 ブレード
421 第一の切り込み
422 第二の切り込み
401 第四の実施形態の変形例に係る鋼管杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設する鋼管杭であって、
中空の円筒状の杭本体と、
前記杭本体の一端の開口に取り付けられたプレート状のブレードと、
からなり、
前記ブレードは、前記杭本体の長手方向において、一端が前記杭本体の内部に、他端が前記杭本体の外部に位置するように取り付けられた鋼管杭。
【請求項2】
前記杭本体の外部に位置している前記ブレードの部分の先端は鋭角をなしていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
前記ブレードは前記杭本体の長手方向と直交する方向における断面が波形であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項4】
前記ブレードは前記杭本体の長手方向と直交する方向における断面がジグザグ状であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項5】
前記ブレードには、少なくとも、その先端から前記ブレードの他端に向かって前記杭本体の長手方向に延びる切り込みが形成されており、
前記切り込みにより分断された前記ブレードの二つの領域は前記ブレードの平面と直交する方向において相互に逆方向に屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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