説明

鋼管杭

【課題】貫入性能が高いうえに、貫入時の直進性能に優れた鋼管杭を提供する。
【解決手段】先端部に貫入促進手段が形成された鋼管杭71である。
この鋼管杭71の先端部は、下端が開口されるとともに、貫入促進手段として管軸方向Zに交差する一方向に傾斜する斜め刃部2が形成されている。そして、その管側面には管の内外を連通させる側面孔72,・・・が形成される。
さらに、側面孔72,・・・よりも上方の管内には、斜め刃部2の傾斜と逆方向に傾斜する逆勾配面部としての斜め蓋部3が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅などの建物の基礎などに使用される鋼管杭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に鋼管杭を回転圧入することで住宅などの小規模の建物の杭基礎を構築することが知られている。そして、このように鋼管杭を貫入する際の貫入抵抗を低減させるために、鋼管杭の先端部に貫入促進手段を設ける場合がある(特許文献1−3など参照)。
【0003】
例えば、特許文献1の鋼管杭では、管の周囲に螺旋状の突起を設けるとともに、先端部を一方向の角度で斜めに切断することで刃先を形成し、地盤への貫入抵抗を低減させている。
【0004】
また、特許文献2では、鋼管杭の先端部をノコ歯状に形成することで貫入促進手段とし、特許文献3では、三角形状の切削刃が形成された杭シューを鋼管杭の先端部に取り付けることで貫入促進手段としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−41526号公報
【特許文献2】特開平1−146011号公報
【特許文献3】実用新案登録第3052267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような一方向に傾斜された刃先であれば、押し込み圧力を刃先に集中させ易く、貫入性能を向上させることができるが、鋼管杭の一方側の貫入が先行することになって地中に垂直に打ち込むことが難しくなる。
【0007】
また、杭が斜めに打設されると、鉛直支持力が低減されるおそれがあるうえに、隣接して打設される他の杭と干渉して、打設に支障をきたすおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、貫入性能が高いうえに、貫入時の直進性能に優れた鋼管杭を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の鋼管杭は、先端部に貫入促進手段が形成された鋼管杭であって、前記先端部は下端が開口されるとともに、前記貫入促進手段として管軸方向に交差する一方向に傾斜する斜め刃部が形成され、その管側面には管の内外を連通させる側面孔が形成されることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記側面孔よりも上方の管内に、前記斜め刃部の傾斜と逆方向に傾斜する逆勾配面部が形成される構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の鋼管杭では、先端部の下端が開口されるとともに、一方向に傾斜する斜め刃部が形成され、管側面には管の内外を連通させる側面孔が形成されている。
【0012】
このため、斜め刃部によって容易に地中に貫入できるとともに、先端の開口から管内に土砂が取り込まれても、取り込まれた土砂の一部や水分が側面孔から外部に排出されるので、高い貫入性能を確保することができる。
【0013】
さらに、側面孔よりも上方の管内に、斜め刃部の傾斜とは逆勾配の逆勾配面部が形成されることで、鋼管杭の傾きを制御することができるので、鋼管杭を真っ直ぐに地中に打ち込むことができる。また、開口から取り込まれた土砂が逆勾配面部で圧縮され、水分が側面孔から排出されることで圧密されるので、軟弱地盤に鋼管杭を打ち込んだ場合であっても、圧密された土砂によって高い先端支持力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態の鋼管杭の構成を説明する説明図である。
【図2】鋼管杭の先端部の構成を説明する図であって、(a)は図1のA−A矢視方向で見た正面図、(b)は斜視図である。
【図3】実施例1の鋼管杭の先端部の構成を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図4】実施例1の鋼管杭の先端部の構成を説明する図であって、(a)は図3(a)のB−B矢視方向で見た正面図、(b)は斜視図である。
【図5】実施例2の鋼管杭の先端部の構成を説明する図であって、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【図6】実施例2の鋼管杭の作用を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施例3の鋼管杭の構成を説明する説明図である。
【図8】本発明の実施例3の鋼管杭の先端部の構成を説明する図であって、(a)は図7のC−C矢視方向で見た正面図、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を説明するための実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
まず、図1,2を参照しながら、本実施の形態の鋼管杭1の構成について説明する。
【0017】
この鋼管杭1は、戸建て住宅などの小規模な建物の杭基礎を構成するものであって、例えば直径が70mm−140mm程度の小口径杭への適用が特に適している。
【0018】
この鋼管杭1は、先端部には貫入促進手段として斜め刃部2が形成され、管内には斜め刃部2の傾斜と逆方向に傾斜する逆勾配面部としての斜め蓋部3が形成される。
【0019】
この斜め刃部2は、図1に示すように管軸方向Zに交差する一方向に傾斜しており、その傾斜面2aは管軸方向Zに直交する管軸直交方向Xに対して傾斜角θで傾いている。この傾斜角θは、10度−60度程度に設定することが可能で、図1では傾斜角θを30度にしている。
【0020】
この斜め刃部2は、例えば円筒形の鋼管の略中央を所定の傾斜角θで切断して形成すれば、一度の切断で2つの鋼管杭の斜め刃部を形成することができる。
【0021】
また、斜め蓋部3は、図2(b)の斜視図に示すように、管内を斜めに蓋状に遮蔽する楕円形状の鋼板で形成される。この斜め蓋部3の逆勾配面3aは、図1の側面図に示すように、斜め刃部2の傾斜面2aとは交差する反対方向に傾斜している。
【0022】
例えば、この逆勾配面3aは、斜め刃部2の上端2cと交差する管軸直交方向Xに平行な対称軸Sに対して、傾斜面2aと側面視略線対称になる角度に形成される。
【0023】
また、図2(a)には、図1のA−A矢視方向で見た正面図を示した。この図2(a)と図1に示すように、斜め刃部2の上端2cの上方の管内面に斜め蓋部3の下端3bを溶接などで固定し、斜め刃部2の下端2bの上方の管内面に斜め蓋部3の上端3cを溶接などで固定する。また、この斜め蓋部3は、全周にわたって管内面に溶接などで固定する。
【0024】
次に、本実施の形態の鋼管杭1の作用について説明する。
【0025】
このように構成された本実施の形態の鋼管杭1では、先端部に一方向に傾斜する斜め刃部2が形成されている。このため、鋼管杭1を圧入、又は回転圧入させるために鋼管杭1の杭頭(図示せず)に荷重をかけると、斜め刃部2の下端2bに荷重が集中して地盤に斜め刃部2が埋もれていくことになるので、容易に鋼管杭1を地中に貫入させることができる。特に、軟弱地盤に鋼管杭1を打設する場合においては、斜め刃部2による貫入性能の向上の効果が大きい。
【0026】
また、管内には斜め刃部2の傾斜面2aとは逆勾配になる逆勾配面3aを有する斜め蓋部3が形成されている。そして、鋼管杭1の先端開口1aから土砂が取り込まれると、斜め蓋部3と傾斜面2aとの間の管内に土砂が集積されて締め固められることになる。ここで、この斜め蓋部3と傾斜面2aとの間に形成される空間は、図1に示すように斜め刃部2の下端2bと斜め蓋部3の上端3cとの間で最も広くなり、斜め刃部2の上端2cと斜め蓋部3の下端3bとの間で最も狭くなる。
【0027】
このため、斜め刃部2の下端2b上方では取り込まれた土砂から大きな抵抗を受け、斜め刃部2の上端2cでは土砂がほとんど取り込まれないので、抵抗は小さくなる。そして、この取り込まれた土砂の抵抗によって、鋼管杭1の斜め刃部2の下端2b側への傾きが抑えられることになる。
【0028】
すなわち、この斜め蓋部3の傾斜角度及び斜め刃部2の傾斜面2aの傾斜方向との相対的な方向関係を調整することによって、鋼管杭1の姿勢を制御することが可能になる。
【0029】
また、このような姿勢制御のための斜め蓋部3の傾斜角度及び方向の調整は、鋼管杭1を打ち込む土質毎におこなうこともできる。
【0030】
そして、このように斜め刃部2を設けることによって容易に鋼管杭1を地中に貫入できるとともに、斜め蓋部3によって鋼管杭1の傾きを制御することができるので、鋼管杭1を真っ直ぐに地中に打ち込むことができる。
【0031】
また、斜め刃部2のように管軸直交方向Xで鋼管杭1から突起する部分がなく、本実施の形態の鋼管杭1のように管周面に螺旋状突起や螺旋翼などが設けられていなければ、地盤と鋼管杭1周面との付着が鋼管杭1の全長に亘って確保できる。
【0032】
このため、鋼管杭1の支持力を算定する際に、地盤と杭周面との周面摩擦力を加算することができ、摩擦杭として機能させることができる。また、摩擦杭として支持力を算定できれば、鋼管杭1の杭長を短くすることができ、このような短い杭が貫入される浅い地盤であれば軟らかい地盤も多く、斜め刃部2で充分に鋼管杭1を貫入させることができる。
【0033】
また、斜め蓋部3が管内を遮蔽する蓋状部材であれば、鋼管杭1の先端が閉塞されるので、地盤と杭先端との接触面積が大きくなる。ここで、鋼管杭1の先端支持力は、地盤の地耐力と杭先端面積との積となるので、斜め蓋部3を設けることによって大きな先端支持力を確保することができる。
【0034】
さらに、斜め刃部2の上端2cの上方に斜め蓋部3の下端3bを設け、斜め刃部2の下端2bの上方に斜め蓋部3の上端3cを設けるのであれば、斜め蓋部3を取り付ける際の位置合わせが容易である。また、このような位置合わせをおこなえば、傾斜面2aの傾斜方向と正反対の方向に傾斜する逆勾配面3aを容易に形成することができる。
【0035】
さらに、斜め刃部2の傾斜と斜め蓋部3の傾斜を、側面視略線対称となる角度に形成すれば、直進性能に優れた鋼管杭1になる可能性が高く、土質などの違いによって所望する直進性能が得られない場合にも、この角度を基準にして容易に調整することができる。
【実施例1】
【0036】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について図3,4を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0037】
この実施例1の鋼管杭51は、先端部には貫入促進手段として斜め刃部52が形成され、管内には斜め刃部52の傾斜と逆方向に傾斜する逆勾配面部としての斜め帯部53が形成される。
【0038】
この斜め刃部52は、図3(a)に示すように管軸方向Zに交差する一方向に傾斜している。
【0039】
また、斜め帯部53は、図3(b)及び図4に示すように、管内に斜め架け渡される帯状の鋼板で形成される。この斜め帯部53の逆勾配面53aは、図3(a)の側面図に示すように、斜め刃部52の傾斜面52aとは交差する反対方向に傾斜している。
【0040】
例えば、この逆勾配面53aは、斜め刃部52の上端52cと交差する管軸直交方向Xに平行な対称軸Sに対して、傾斜面52aと側面視略線対称になる角度に形成される。
【0041】
また、図4(a)には、図3(a)のB−B矢視方向で見た正面図を示した。この図4(a)と図3(a)に示すように、斜め刃部52の上端52cの上方の管内面に斜め帯部53の下端53bを溶接などで固定し、斜め刃部52の下端52bの上方の管内面に斜め帯部53の上端53cを溶接などで固定する。
【0042】
そしてこのように取り付けられた斜め帯部53の両側には、図3(b)及び図4(b)に示すように、鋼管杭51の先端開口51aに連通される隙間が形成され、先端開口51aから管内に侵入する土砂や地下水は、その隙間を通って斜め帯部53より上方の管内に取り込ませることができる。
【0043】
このように構成された実施例の鋼管杭51は、逆勾配面部として管内に架け渡される斜め帯部53が帯状部材であるため、鋼管杭51の先端開口51aから取り込まれた土砂の一部を管内に取り込むことができる。
【0044】
このため、鋼管杭51を貫入する際に、先端開口51aから土砂が取り込まれて貫入抵抗が大きくなると、取り込まれた土砂の一部が斜め帯部53の両側の隙間をすり抜けて管内に取り込まれるので、貫入抵抗を低減することができる。
【0045】
このような斜め帯部53の幅と隙間の大きさは、地盤の硬さや粘性などの土質に応じて調整することができる。例えば、鋼管杭51を貫入させる地盤が硬い場合は隙間を大きくして締め固められた土砂が杭先端に集積されにくい構造にして貫入抵抗を低減させる。反対に、軟らかく流動性が高い地盤に鋼管杭51を貫入させる場合は、隙間を小さくして締め固められた土砂を杭先端に集積させて高い先端支持力が得られるようにする。
【0046】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0047】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例2について図5,6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0048】
この実施例2の鋼管杭61は、先端部の下端が開口された先端開口61aとなっている。また、先端部の管側面には、貫入促進手段として複数の側面孔62,・・・が形成されている。
【0049】
この側面孔62,・・・は、管の内外を連通させる貫通孔で、この実施例2では、管の周方向に等間隔で4箇所に形成されている。また、これらの側面孔62,・・・は、それぞれの対向する位置に別の側面孔62が設けられた左右対称の配置となっている。
【0050】
さらに、この側面孔62,・・・より上方の管内には、蓋状部材としての蓋部63が架け渡されている。この蓋部63は、上下方向の管内を遮蔽するように、管内径と略同じ大きさの直径を有する円形の鋼板で形成される。また、この蓋部63は、溶接などによって鋼管杭61の管内面に固定される。
【0051】
また、この蓋部63と先端開口61aとの距離を調整することで、管内に収容可能な土砂の量を調整することができる。
【0052】
このように構成された実施例2の鋼管杭61は、先端部の下端が先端開口61aとして開放されるとともに、管側面に管の内外を連通させる側面孔62,・・・が複数、形成されている。
【0053】
そして、図6に示すように、鋼管杭61をW方向に回転させながら軟弱地盤に貫入すると、先端開口61aから水分を多く含んだ土砂Gが管内に取り込まれることになる。
【0054】
このようにして管内に土砂Gが取り込まれると、その土砂G及び水分Mの一部は側面孔62,・・・から管の外部に排出されるので、貫入抵抗が低減されて高い貫入性能を確保することができる。
【0055】
また、管内に残った土砂Gは、鋼管杭61の貫入に伴って相対的に上昇して蓋部63の下面に押し付けられることになる。さらに、この土砂Gの水分Mは、側面孔62,62から外部に排出される。
【0056】
この結果、水分が排出された圧密された土砂Gが蓋部63の下方に堆積することになり、この強度の大きな圧密された土砂Gによって、鋼管杭61の先端支持力が増加することになる。
【0057】
また、この先端支持力の大きさは、圧密された土砂(締め固められた土砂)を管内に収容できる量を増やすことによって増加させることができる。
【0058】
さらに、側面孔62,・・・は、対向する位置にそれぞれ設けられて、鋼管杭61の形状は左右対称となっているので、貫入させる際の直進性能に優れている。
【0059】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0060】
以下、本発明の実施の形態である実施例3について図7,8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0061】
この実施例3の鋼管杭71は、前記実施の形態で説明したのと同様に、先端部には貫入促進手段として斜め刃部2が形成され、管内には斜め刃部2の傾斜と逆方向に傾斜する逆勾配面部としての斜め蓋部3が形成される。
【0062】
また、この鋼管杭71は、先端部の下端が開口された先端開口71aとなっており、先端部の管側面には、貫入促進手段として複数の側面孔72,72が形成されている。
【0063】
この側面孔72,72は、管の内外を連通させる貫通孔で、この実施例3では、斜め刃部2を構成する管の周面の2箇所に形成されている。また、これらの側面孔72,72は、傾斜面2aから所定の長さ上方に入った位置であって、斜め蓋部3よりも傾斜面2a側に配置される。
【0064】
このように構成された実施例3の鋼管杭71は、先端開口71aされるとともに、一方向に傾斜する斜め刃部2が形成され、管側面には管の内外を連通させる側面孔72,72が形成されている。
【0065】
このため、斜め刃部2によって容易に地中に貫入できるとともに、先端開口71aから管内に土砂Gが取り込まれても、取り込まれた土砂Gの一部や水分が側面孔72,72から外部に排出されるので、高い貫入性能を確保することができる。
【0066】
さらに、側面孔72,72よりも上方の管内に、斜め刃部2の傾斜とは逆勾配の斜め蓋部3が形成されることで、鋼管杭71の傾きを制御することができるので、鋼管杭71を真っ直ぐに地中に打ち込むことができる。
【0067】
また、先端開口71aから取り込まれた土砂が斜め蓋部3で圧縮され、水分が側面孔72,72から排出されることで圧密されるので、軟弱地盤に鋼管杭71を打ち込んだ場合であっても、圧密された土砂によって高い先端支持力を得ることができる。
【0068】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0069】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0070】
例えば、前記実施の形態又は前記実施例1では、円筒形の鋼管を加工して鋼管杭1,51に直接、斜め刃部2,52を設けたが、これに限定されるものではなく、斜め刃部2が加工された先端シューを円筒形の鋼管の先に取り付けて先端部としてもよい。
【0071】
また、前記実施の形態又は前記実施例1では、斜め刃部2と斜め蓋部3又は斜め刃部52と斜め帯部53を対称軸Sに対して線対称に形成したが、これに限定されるものではなく、鋼管杭1,51の直進性能が向上するように、任意の角度及び方向の斜め蓋部3又は斜め帯部53に調整することができる。
【0072】
また、前記実施の形態又は前記実施例2では、斜め蓋部3(又は蓋部63)によって管内を遮蔽したが、これに限定されるものではなく、斜め蓋部3(又は蓋部63)に一つ又は複数の貫通孔を設け、鋼管杭1(61)の先端開口1a(61a)から侵入する土砂や地下水を、斜め蓋部3(又は蓋部63)より上方の管内に取り込ませることができる。このよう貫通孔を設けることによって、土砂の一部が管内に取り込まれて鋼管杭1(61)の貫入抵抗が低減されたり、先端開口1a(61a)から取り込まれた土砂が脱水されて鋼管杭1(61)の先端支持力が増加したりする。特に、軟弱地盤に鋼管杭1(61)を打設する場合は、脱水による締め固め効果(圧密効果)が大きい。
【0073】
さらに、前記実施の形態又は前記実施例1では、斜め蓋部3及び斜め帯部53の下端3b,53bは、斜め刃部2,52の上端2c,52cにほとんど隙間を開けることなく取り付けたが、これに限定されるものではなく、斜め蓋部3及び斜め帯部53の下端3b,53bは斜め刃部2,52の上端2c,52cから離れた上方にあってもよい。このように、斜め蓋部3及び斜め帯部53を先端開口1a,51aから離れた鋼管杭1,51の内部に設けることで、管内に貫入時の圧力によって締め固められた土砂を収容する量を増やすことができ、鋼管杭1,51の先端支持力を増加させることができる。
【0074】
また、前記実施の形態又は前記実施例では、管軸直交方向Xに突起のない鋼管杭1,51,61について説明したが、これに限定されるものではなく、螺旋状突起を鋼管杭1,51,61の周面に設けて回転貫入がしやすい構造にすることもできる。
【0075】
さらに、前記実施例3では、前記実施の形態と同様の斜め刃部2と斜め蓋部3を備えた鋼管杭71の管側面に側面孔72,72を設けることについて説明したが、これに限定されるものではなく、前記実施例1で説明した斜め刃部52と斜め帯部53を備えた鋼管杭51の管側面に側面孔を設けることもできる。また、斜め蓋部3や斜め帯部53が設けられていない斜め刃部2を備えた鋼管杭の管側面に側面孔を設けるものであってもよい。また、前記実施例2の鋼管杭61の先端部に斜め刃部を設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
Z 管軸方向
X 管軸直交方向
S 対象軸
1 鋼管杭
2 斜め刃部(貫入促進手段)
2a 傾斜面
2b 下端
2c 上端
3 斜め蓋部(逆勾配面部)
3a 逆勾配面
3b 下端
3c 上端
51 鋼管杭
52 斜め刃部(貫入促進手段)
52a 傾斜面
52b 下端
52c 上端
53 斜め帯部(逆勾配面部)
53a 逆勾配面
53b 下端
53c 上端
61 鋼管杭
61a 先端開口(開口)
62 側面孔(貫入促進手段)
63 蓋部(蓋状部材)
71 鋼管杭
71a 先端開口(開口)
72 側面孔(貫入促進手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に貫入促進手段が形成された鋼管杭であって、
前記先端部は下端が開口されるとともに、前記貫入促進手段として管軸方向に交差する一方向に傾斜する斜め刃部が形成され、その管側面には管の内外を連通させる側面孔が形成されることを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
前記側面孔よりも上方の管内に、前記斜め刃部の傾斜と逆方向に傾斜する逆勾配面部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−158979(P2012−158979A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96875(P2012−96875)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2008−160196(P2008−160196)の分割
【原出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】