説明

鋼管杭

【課題】支持層まで杭先端を確実に到達させることのできる鋼管杭を提供する。
【解決手段】鋼管杭10を、杭本体12とインサートパイル14とで構成する。杭打機により杭本体12を回転させることで螺旋翼18によって地盤56が掘削され、杭本体12が地盤56に貫入される。螺旋翼18が目的とする支持層よりも浅い位置にある硬い中間層に突き当たり、杭本体12の貫入が出来なくなった場合には、杭本体12にインサートパイル14を挿入して尖った形状の先端部34を中間層に突き当て、インサートパイル14の上端を打撃することで、螺旋翼18で地盤56を堀削できるように硬い中間層を破壊することができる。その後、杭本体12を回転させれば中間層が掘削され、最終到達点である支持層に杭本体12の先端が到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎に用いる鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の弱い土地に、住宅等の建物を建てる場合には、地中に杭を打ち込み、その上に基礎を施工している。
その杭として、先端に螺旋状の翼を設けた鋼管杭が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−142122号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この鋼管杭は、翼を設けることによって、地盤内への貫入を容易にする、先端の杭面積を大きくすることによって杭の支持力を大きくする、等の目的を持っている。
鋼管杭工法は、平成6年の建設大臣認定(阪住指発第59号)を取得しており、広く用いられている。
【0005】
例えば、貫入深さ3.25〜4.25m付近に、硬くかつ層厚の薄い中間層があり、6.75m以深に層厚のある安定した層がある地盤の場合、該中間層を杭先端とせず、6.75m以深の層厚のある安定した層を杭先端の支持層とするのが一般的な施工方法である。
【0006】
しかしながら、翼付きの鋼管杭を用いて回転貫入を行うと、この中間層を抜くことが出来ずに止まってしまい、目的とする本来の支持層(地盤調査から導いた適切な支持層。あるいは設計深度。)まで杭先端を到達させることが出来ない場合がある。
【0007】
即ち、回転貫入した鋼管杭の杭先端が中間層に到達した段階で、地盤が固くかつ先端の面積が大きくなっているため、それ以上の深さに鋼管杭を回転貫入させることが出来なくなり、目的とする本来の支持層まで鋼管杭を打設することが出来なくなる。本来の支持層まで鋼管杭を打設していないと、その後の不具合の原因となる虞がある。
【0008】
なお、無理に貫入させる目的で、鋼管杭自体を打撃して貫入させようとすると、杭外周部の地盤との周面摩擦力による貫入抵抗が大きいため打撃力を大きくとる必要があり、また、翼に無理な力が掛かって翼を破損させる問題がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、大きな打撃力を必要とせず、翼を破損させることなく目的とする本来の支持層まで杭先端を確実に到達させることのできる鋼管杭の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の鋼管杭は、中空状に形成され地盤への貫入方向端側の外周に翼を備えた杭本体と、地盤への貫入方向端側に尖った形状を有し、前記杭本体に挿入される打撃手段と、を有する。
【0011】
次に、請求項1に記載の鋼管杭の作用を説明する。
杭本体を地中に貫入するには、杭打機により杭本体を回転させることにより、翼によって地盤が掘削されながら杭本体が地盤に貫入される。
【0012】
ここで、杭本体の先端側に設けた翼が、本来の支持層よりも浅い位置にある硬い中間層に突き当たり、大きな抵抗により杭本体の貫入が出来なくなる場合がある。このような場合には、杭本体に打撃手段を挿入して尖った形状の部分を中間層に突き当て、打撃手段の上端を打撃することで、翼で地盤を堀削できるように硬い中間層を破壊することができる。
【0013】
その後、杭本体を回転させて中間層を掘削して、最終到達点である支持層に杭本体の先端を到達させる。
杭本体を打撃することが無いので、大きな打撃力を必要とせず、また、翼の破損も防止できる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鋼管杭において、前記打撃手段は、地盤への貫入方向端側に尖った形状を有する先端部と、前記先端部の貫入方向とは反対側に連結される軸部とを有し、前記軸部の端部には、継ぎ足し用の軸部を連結するための軸部連結手段の一部が設けられている。
【0015】
次に、請求項2に記載の鋼管杭の作用を説明する。
中間層までの深さは様々であるため、必要に応じて打撃手段の長さを伸ばす必要がある。請求項2に記載の鋼管杭では、打撃手段の端部に継ぎ足し用の軸部を連結するための軸部連結手段の一部が設けられているので、この軸部連結手段を用いて延長用の軸部を連結し、打撃手段の長さを伸ばすことができる。これによって、深さの異なる様々な中間層に対応することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鋼管杭において、前記先端部は、側面視で貫入方向端側に向けて幅が狭くなる複数の三角形の板部材を軸心側で連結することで形成されている。
【0017】
次に、請求項3に記載の鋼管杭の作用を説明する。
側面視で貫入方向端側に向けて幅が狭くなる複数の三角形の板部材を軸心側で連結することで、尖った形状を有する先端部を容易に形成することができる。
板部材は、例えば鋼板を用いることができ、三角形に切断した鋼板を溶接することで先端部を簡単に形成することが出来る。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の鋼管杭において、前記打撃手段の最大径は、前記杭本体の内径よりも小さく設定されている。
【0019】
次に、請求項4に記載の鋼管杭の作用を説明する。
打撃手段の最大径を、杭本体の内径よりも小さく設定することで、必要に応じて後から打撃手段を杭本体に挿入することができる。
例えば、杭本体のみを地盤に回転貫入させ、杭本体が硬い中間層に到達した場合に打撃手段を杭本体に挿入し、硬い中間層を打撃手段で破壊することが出来る。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の鋼管杭において、前記杭本体の端部には、継ぎ足し用の鋼管を連結するための杭本体連結手段の一部が設けられている。
【0021】
次に、請求項5に記載の鋼管杭の作用を説明する。
支持層までの深さは様々であるため、必要に応じて杭本体の長さを伸ばす必要がある。
請求項5の鋼管杭では、杭本体の端部に継ぎ足し用の鋼管を連結するための杭本体連結手段の一部が設けられているので、この杭本体連結手段を用いて延長用の鋼管を連結し、杭本体の長さを伸ばすことができる。これによって、深さの異なる様々な支持層に対応することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように請求項1に記載の鋼管杭によれば、目的とする支持層まで容易かつ確実に杭先端を到達させることが出来る、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項2に記載の鋼管杭によれば、深さの異なる様々な中間層に対応することができる。
【0024】
請求項3に記載の鋼管杭によれば、尖った形状を有する先端部を容易に形成することができる。
【0025】
請求項4に記載の鋼管杭によれば、必要に応じて後から打撃手段を杭本体に挿入することができる。
【0026】
請求項5に記載の鋼管杭によれば、深さの異なる様々な支持層に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る鋼管杭の側面図である。
【図2】杭本体の断面図である。
【図3】(A)は延長軸の斜視図であり、(B)は先端部の斜視図であり、(C)は鋼管杭の上端付近の断面図である。
【図4】鋼管杭を取り付けた杭打機の側面図である。
【図5】中間層の破壊時における鋼管杭の先端付近の断面図である。
【図6】他の実施形態に係るインサートパイルの斜視図である。
【図7】第2の実施形態に係る鋼管杭の先端付近の斜視図である。
【図8】第2の実施形態に係る鋼管杭の軸線に沿った断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、クラッチの側面図である。
【図10】第2の実施形態に係る鋼管杭の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態に係る鋼管杭10を図1乃至図6にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態の鋼管杭10は、中空の杭本体12と、杭本体12の内部に配置されるインサートパイル14とを含んで構成されている。
【0029】
(杭本体)
杭本体12は、先端となる先端杭本体12Aに、延長用の延長用杭本体12Bを連結することで、その長さを延長することができるようになっている。
【0030】
先端杭本体12Aは、断面円形の鋼管で形成されており、一端側の外周には鋼板からなる螺旋翼18が溶接等で接合されている。螺旋翼18は、本実施形態では鋼管の外周に2枚設けられているが、1枚であっても良く、3枚以上であっても良い。本実施形態の螺旋翼18の形状は、軸方向から見て扇形状であるが、他の形状であっても良く、公知の形状を採用することができる。
【0031】
図2に示すように、先端杭本体12Aの他端側の内面には、延長用杭本体12Bを接続するための雌螺子22が形成されている。
【0032】
延長用杭本体12Bも断面円形の鋼管で形成されており、一端側の外面には雄螺子24が形成され、他端側の内面には雌螺子26が形成されている。
【0033】
先端杭本体12A、及び延長用杭本体12Bの他端には、杭打機54(図4参照)のモータと係合させるための係合部30が形成されている。本実施形態の係合部30は切り込みであるが、突起等、他の形状であっても良く、公知の構成を採用することが出来る。
【0034】
(インサートパイル)
図3(A),(B)に示すように、インサートパイル14は、先端部34と、軸40及び延長軸42によって構成される軸部32とを有している。
【0035】
本実施形態の先端部34は、鋼板で形成された円板36の一方側の面に、三角形に形成した鋼板からなる矢尻部材38を複数枚溶接することで構成されており、側面視で先細り形状となっており、軸方向から見て矢尻部材38が十字形状に組み合わされている。
なお、本実施形態の先端部34の外径は、鋼管杭10の内径よりも小さく設定されている。
【0036】
先端部34の円板36には、矢尻部材38の溶接されている側とは反対側に、円板36と同軸的に、円板36よりも径の小さい軸40が溶接等で接合されている。
軸40には、先端部34とは反対側の端部に、後述する延長用の延長軸42を連結するための雄螺子44が形成されている。
なお、先端部34と軸40とを接合したものを本実施形態では、先端パイル45と呼ぶ。
【0037】
延長用の延長軸42は、一端側に雌螺子46が形成され、他端側に雄螺子48が形成されている。
図3(C)に示すように、軸40の雄螺子44側、及び延長軸42の雄螺子48側には、雄螺子44、雄螺子48を保護する鋼製の保護キャップ50を被せることができる。保護キャップ50は、円柱状に形成され、一端側に、雄螺子44,48を挿入可能な穴52が形成されている。なお、保護キャップ50は、打撃によって変形しないように、鋼等で形成することが好ましく、焼き入れ等をして硬度を増しても良い。また、保護キャップ50は、軸40、及び延長軸42よりも硬いことが好ましい。
【0038】
次に、杭本体12、及びインサートパイル14の長さについて説明する。
杭本体12の先端杭本体12Aの全長L1は、保護キャップ50を取り付けたインサートパイル14の先端パイル45の全長L2(図3(A)参照)よりも短く形成されている。なお、雄螺子24を除く延長用杭本体12Bの全長L3(図2参照。)は、雄螺子48を除く延長軸42の全長L4(図3(A)参照。)と同じ長さに設定されている。
【0039】
したがって、本実施形態の鋼管杭10は、図1に示すように、杭本体12にインサートパイル14を挿入し、杭本体12の下端とインサートパイル14の下端(先端部34の先端)とを同一レベルとしたときに、インサートパイル14の保護キャップ50を取り付けた上端が杭本体12の上端よりも突出するようになっている。
【0040】
(作用)
次に、本実施形態の鋼管杭10を用いた施工方法を説明する。
(1) 図4に示すように、杭打機54に先端杭本体12Aのみを保持させ、杭打機54で先端杭本体12Aを押し下げながら地盤56に回転貫入させる。なお、途中で杭本体12の長さが不足した場合には、先端杭本体12Aに延長用杭本体12Bを連結することで杭本体12を延長する。
【0041】
(2) 先端杭本体12Aの先端が、層厚が薄く硬い中間層(例えば、N値6〜15の硬い層、あるいは砂礫交じりの層)に突き当たり、それ以上の貫入が出来ない場合には、図1に示すように、先端部34を下に向けたインサートパイル14の上端を保持して杭本体12に挿入し、先端部34を先端杭本体12Aの中間層に突き当てる。なお、杭本体12は中空であるが、例えば、住宅用に用いる杭本体12の径は比較的細く、地盤56に回転貫入させる際に杭本体内部に堀削した後の土砂等が入ることは殆ど無く、先端部34を中間層へ難無く到達させることが出来る。
【0042】
インサートパイル14の長さが不足する場合には、延長軸42を連結してインサートパイル14を延長する。そして、先端部34が中間層に突き当たった際に、インサートパイル14の上端が、杭本体12の上端よりも上に突出するようにする。
【0043】
インサートパイル14の軸部32及び先端部34の外径は杭本体12の内径よりも小さく形成されているので、杭本体12の内部へインサートパイル14を挿入する際、インサートパイル14の長手方向中間部分を地盤56に接触させることなく、先端部34を中間層の上部へ容易に到達させることが出来る。
【0044】
そして、インサートパイル14の軸部32の上端に保護キャップ50を被せた後(図3(C)参照)、保護キャップ50をハンマー等で打撃して図5に示すように先端部34を杭本体12の下端から突出させて硬い中間層を破壊する。なお、杭本体12の内部に多少の土砂が入っていても、インサートパイル14を打撃するので、先端部34を杭本体12の下端から中間層に向けて容易に突出させることが出来る。
【0045】
先端部34は、尖った形状とされているので、中間層に対して打撃力を局所的に集中させることができ、硬い中間層を破壊するのに適した形状である。
また、インサートパイル14は、杭本体12の内部を貫通させているため、地盤の周面摩擦力が零であり、打撃力は最小限で済む。
【0046】
(3) 次に、インサートパイル14を引き抜き、再び杭本体12を回転させる。杭先端側の中間層はインサートパイル14で既に破壊されているので、杭本体12を支持層に向けて容易に回転貫入させることができる。
【0047】
(4) その後、杭本体12の先端が目的の支持層に達するまで杭本体12の回転貫入を行う。
このように、本実施形態の鋼管杭10を用いることで、硬い中間層を破壊して目的の支持層まで杭本体12を容易かつ確実に到達させることができる。
また、本実施形態の鋼管杭10を用いることで、杭本体12自体を打撃することが無いので、螺旋翼18に無理な力が掛かって損傷することも無い。
【0048】
なお、本実施形態のインサートパイル14では、軸部32の断面形状が円形であったが、軸部32の断面形状は円形以外であっても良く、例えば図6に示すように、軸部32は断面形状が十字形状であっても良い。
軸部32が十字形状断面を有する場合、軸40、及び延長軸42に螺子孔70を形成し、アングル72を軸40、及び延長軸42に沿って配置し、アングル72に形成した孔74からボルト76を挿通して軸部32の螺子孔70にボルト76を捩じ込むことで、軸部32を容易に延長することが出来る。
【0049】
なお、上記実施形態では、インサートパイル14を打撃する際にインサートパイル14の上端に保護キャップ50を被せたが、インサートパイル14の上端が焼き入れ等で強化されており、打撃によって変形等が生じない場合には、保護キャップ50は必ずしも必要としない。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、本発明の鋼管杭10の第2の実施形態を図7乃至図10にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図7、及び図8に示すように、本実施形態の鋼管杭10は、一方向の回転力は伝達し、他方向の回転力は伝達しない、いわゆるワンウエイのクラッチ58を備えている。
【0051】
本実施形態のインサートパイル14の先端部60は、全体的に円錐形状を呈しており、先端部60の外周面に螺旋溝60Aが形成されて、先端部60が略ドリル形状とされている。
【0052】
クラッチ58は、杭本体12の端部に形成される多数の三角形状の歯62Aからなる環状の歯部62と、先端部60に形成される多数の三角形状の歯64Aからなる環状の歯部64と、コイル状のスプリング66とから構成されている。
【0053】
図9は、歯部62、及び歯部64を展開した図である。
図9(A)に示す様に、杭本体12の端部に形成される歯部62の歯62Aは、側面視で、径方向(軸と直角方向)に対する角度θ1(<90°)が大きい急傾斜辺62Aaと、径方向に対する角度θ2(<θ1)が小さい緩傾斜辺62Abとを有する三角形状を呈している。なお、本実施形態の歯62Aは、外周側から見て、急傾斜辺62Aaが右側、緩傾斜辺62Abが左側に形成されている。歯62Aは、円板36の外周縁に沿って複数形成されており、鋼管端部を切削加工等することで形成することが出来る。
【0054】
図8に示すように、本実施形態では、先端部60の外径が杭本体12の鋼管の内径よりも大きく、先端部60の外径が鋼管の外径と同一径とされている。また、インサートパイル14は、軸部32が予め杭本体12に挿入され、先端部60が杭本体12の螺旋翼18側の端部から突出している。
【0055】
図7、及び図8に示すように、先端部60には、杭本体12の歯部62と対抗する位置に前述した環状の歯部64が形成されている。歯部64の歯64Aは、杭本体12の歯62Aと同様の三角形状であるが、杭本体12の歯62Aとは反対向きに形成されている。なお、先端部60の歯64Aは、鋼板を切断する等して形成することができ、先端部60に溶接等で接合されている。
杭本体12の内周面は、下端側の一部分に大径部68が形成されている。大径部68は、鋼管の内周面を旋盤等で切削加工することで形成することが出来る。
【0056】
図8に示すように、本実施形態の鋼管杭10では、先端部60の外径が、杭本体12の鋼管の外径と同一径とされており、インサートパイル14は、軸部32が予め杭本体12に挿入され、先端部60が杭本体12の螺旋翼18側の端部に突出している。
【0057】
杭本体12の大径部68には、スプリング66が挿入されている。スプリング66は、一端が大径部68の段部に、他端が先端部60に接触しており、通常は、図8、及び図9(A)に示すように、歯部62と歯部64とが軸方向に離間して隙間が形成される。
【0058】
そして、図9(A)に示すように、歯部62と歯部64とが軸方向に離間して隙間が形成されている状態では、図8に示すように、インサートパイル14の保護キャップ50の上端と、杭本体12の上端とは、略面一となる。
【0059】
(作用)
次に、本実施形態の鋼管杭10を用いた施工方法を説明する。
(1) 先ず、杭本体12とインサートパイル14とを組み合わせた鋼管杭10を杭打機54に取り付け、鋼管杭10を押し下げながら回転させ、図10に示すように、鋼管杭10を地盤56に回転貫入させる(図10では、杭打機54は図示せず。)。
【0060】
図7に示すように、杭本体12を矢印C方向(外周側から見て歯62Aは左方向に移動)に回転させることで、図9(B)に示すように杭本体12の歯62Aが先端部60の歯64Aに接触して、歯62Aと歯64Aとが完全に噛み合い(クラッチが繋がる)、スプリング66は圧縮され、杭本体12の回転力が先端部60に伝達される。
【0061】
先端部60には螺旋溝60Aが形成されているので、鋼管杭10の螺旋翼18と共に、地盤56を掘削することができ、第1の実施形態よりも効率的に堀削することが可能となる。
【0062】
本実施形態の場合も、途中で鋼管杭10の長さが不足した場合には、図10に示すように、先端杭本体12Aに延長用杭本体12Bを連結して杭本体12を延長すると共に、インサートパイル14も延長軸42を連結して延長する。
【0063】
(2) 先端杭本体12Aの先端が、硬い中間層に突き当たり、それ以上の貫入が出来ない場合には、鋼管杭10の上端から杭打機54のモータを外す。
モータを外し、回転を止めることで、杭本体12は、スプリング66の付勢力で上方に移動されて図9(A)に示すように、杭本体12の歯62Aが先端部60の歯64Aから上方に離間し、歯62Aと歯64Aの間に隙間が形成される。
そして、インサートパイル14の上端に保護キャップ50を被せる。
【0064】
なお、本実施形態の鋼管杭10は、鋼管杭10に負荷を与えていない状態、即ち、杭打機のモータを鋼管杭10から離間させた状態で、保護キャップ50の上端と、杭本体12の上端とが面一乃至略面一となるように、軸部32、スプリング66、杭本体12の各々の長さが予め設定されている。
【0065】
鋼管杭10の上方からモータを退避させた後、面一乃至略面一となった保護キャップ50の上端と杭本体12の上端をハンマー等で打撃して中間層を破壊する。
【0066】
打撃する際に、杭本体12の下端と先端部60とは軸方向に離間しており、杭本体12と先端部60との間にはスプリング66が設けられているので、打撃時にスプリング66が緩衝材の役目をし、先端部60の上部(歯64A)、及び杭本体12の下端(歯62A)が損傷することは無く、打撃力は、殆どがインサートパイル14を介して先端部60に伝達され、螺旋翼18に無理な力を掛けること無く硬い中間層を破壊することが出来る。
【0067】
(3) このようにして中間層を破壊した後、杭打機54のモータを鋼管杭10に係合して再び鋼管杭10を回転させる。硬い中間層はインサートパイル14で破壊されているので、鋼管杭10を支持層に向けて難無く貫入させることができる。
【0068】
(4) その後、鋼管杭10の先端が支持層に達するまで鋼管杭10の回転貫入を行う。
本実施形態の鋼管杭10を用いることで、第1の実施形態と同様に硬い中間層を破壊して目的の支持層まで杭本体12を容易に回転貫入させることができる。
【0069】
本実施形態の鋼管杭10には、予めインサートパイル14が組み込まれているので、堀削途中でインサートパイル14を抜き差しする手間が係らず、その分、第1の実施形態よりも作業が容易になる。
【0070】
なお、図9(C)に示すように、杭本体12を矢印D方向(外周側から見て歯62Aは右方向に移動)に回転させると、杭本体12の歯62Aは、先端部60の歯64Aの急傾斜辺64Aaを三角形の頂点に向けて摺動し、歯62Aと歯64Aの噛み合いが外れるので、連続して杭本体12を矢印D方向へ回転させることができる(即ち、クラッチが外れる)。
【0071】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
10 鋼管杭
12 杭本体
12A 先端杭本体
12B 延長用杭本体
14 インサートパイル(打撃手段)
18 螺旋翼(翼)
22 雌螺子(杭本体連結手段)
24 雄螺子(杭本体連結手段)
32 軸部
34 先端部
38 矢尻部材(三角形の板部材)
40 軸(軸部)
42 延長軸(軸部)
44 雄螺子(軸部材連結手段)
46 雌螺子(軸部材連結手段)
48 雄螺子(軸部材連結手段)
60 先端部
70 螺子孔(軸部材連結手段)
72 アングル(軸部材連結手段)
74 孔(軸部材連結手段)
76 ボルト(軸部材連結手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に形成され地盤への貫入方向端側の外周に翼を備えた杭本体と、
地盤への貫入方向端側に尖った形状を有し、前記杭本体に挿入される打撃手段と、を有する鋼管杭。
【請求項2】
前記打撃手段は、地盤への貫入方向端側に尖った形状を有する先端部と、前記先端部の貫入方向とは反対側に連結される軸部とを有し、
前記軸部の端部には、継ぎ足し用の軸部を連結するための軸部連結手段の一部が設けられている、請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
前記先端部は、側面視で貫入方向端側に向けて幅が狭くなる複数の三角形の板部材を軸心側で連結することで形成されている、請求項2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
前記打撃手段の最大径は、前記杭本体の内径よりも小さく設定されている、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の鋼管杭。
【請求項5】
前記杭本体の端部には、継ぎ足し用の鋼管を連結するための杭本体連結手段の一部が設けられている、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の鋼管杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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